説明

透明導電膜のパターニング方法及び該方法による透明導電パターン膜

【課題】
透明導電膜の微細パターニングを可能とするリフトオフ法によるパターニング方法、及び該パターニング方法を用いて形成された透明導電パターン膜を提供する。
【解決手段】
基材上に有機溶媒可溶性でかつ水不溶性のフォトレジストパターンを形成するパターンレジスト形成工程、前記フォトレジストパターンが形成された基材上の全面に導電性酸化物微粒子と無機バインダーと溶媒とからなる透明導電膜形成用塗布液を塗布、乾燥、硬化して導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程、前記フォトレジストパターンを有機溶媒で溶解除去による現像をすることでフォトレジストパターン上に形成された透明導電膜を除去して透明導電パターン膜を得る透明導電膜パターニング工程を具備し、前記透明導電膜形成用塗布液の溶媒は、水又は水−アルコール混合溶液を主成分とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性酸化物微粒子と無機バインダーと溶媒とからなる透明導電膜形成用塗布液で得られる透明導電膜のリフトオフ法によるパターニング方法、及び該パターニング方法を用いて形成された透明導電パターン膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)等の表示素子透明電極、タッチパネル、太陽電池等の透明電極、熱線反射、電磁波シールド、帯電防止、防曇等の機能性コーティングに用いられる透明導電膜の形成材料としては、インジウム錫酸化物(以下、「ITO」と表記する場合がある)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、錫アンチモン酸化物(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)等が知られているが、中でもITOは高い可視光線透過率と優れた導電性を有するため、最も広く用いられている。
【0003】
かかるITO透明導電膜の製造方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の物理的手法が広く用いられており、これらの方法により、透明性と導電性に優れた均一なITO透明導電膜(例えばスパッタリングITO膜)を基板上に形成することができる。
しかしながら、これらに使用する膜形成装置は真空容器をベースとするため非常に高価であり、また、基板成膜毎に製造装置内の成分ガス圧を精密に制御しなければならないため、製造コストと量産性に問題があるという欠点があった。
【0004】
このため、上記問題を解決する製造方法として、ITO微粒子を溶媒に分散させた透明導電膜形成用塗布液を用いる方法(以下、「塗布法」と表記する場合がある)が採用されている。この方法では、透明導電膜形成用塗布液の基板上への塗布、乾燥、(加熱)硬化という簡単な製造工程でITO透明導電膜を形成することができるという利点があり、具体的には、ITO微粒子を含有するシリカゾル液(特許文献1参照)や、ITO微粒子とバインダー用シリケートと極性溶媒からなる塗布液(特許文献2参照)を用いて、ガラス等の基材上にスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング等の方法で塗布・乾燥・焼成して、ITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)バインダーマトリックスを主成分とするITO透明導電膜を形成する製造方法が知られている。
【0005】
ところで、上記塗布法によって透明導電膜を形成する際に、微細パターンを直接塗布形成する方法の一つにインクジェット印刷法がある。例えば、ITO微粒子とバインダー用シリケートと溶媒からなるインクジェット印刷可能な塗布液(特許文献3参照)が提案されている。しかしながら、インクジェット印刷法で、単に塗布液を基板上にパターン印刷しただけでは基板上で塗布液が塗り広がって50μm以下の微細パターン膜を得ることは難しく、例えば、予め基板上に親油−撥油の微細パターンの表面処理を施すなどの余分な工程が必要である。この点からすれば、透明導電パターン膜を得る方法として、インクジェット印刷法は必ずしも簡便な方法とは言えない。
【0006】
そこで、上述のスパッタリングITO膜等の微細パターニングに広く用いられているフォトエッチングプロセスの適用が考えられる。ここで、上記スパッタリングITO膜のフォトエッチングプロセスは以下の一連の工程から成り立っている。
まず、パターニングを施す対象のスパッタITO膜上にフォトレジスト(感光性樹脂)を塗布・乾燥した後、所定微細パターンを有するマスクを用いて露光、現像を行い、スパッタリングITO膜上にフォトレジスト微細パターンを形成する。次に、上記フォトレジスト微細パターンをエッチングレジストとして用い、露出しているITO膜部分だけを所定のエッチング液(エッチャント;多くの場合はITOを溶解できる塩酸系やシュウ酸系等の酸溶液)でエッチング除去し、最後にフォトレジストパターンを剥離又は溶解(一般にアルカリ溶液や有機溶媒を用いる)して微細パターンITO膜を得るものである。
【0007】
ところが、上記フォトエッチングで、前述のITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)バインダーマトリックスを主成分とするITO透明導電膜の微細パターニングを行った場合には、スパッタリングITO膜の場合と異なり、微細パターニングをうまく行うことが困難である。その理由は、先ず、スパッタリングITO膜用のエッチング液はITO透明導電膜中のITO微粒子は溶解できるものの、無機バインダー成分であるシリカ(酸化ケイ素)を全く溶解できないためであり、更には、透明導電膜中のITO微粒子が無機バインダー成分で保護されていて、透明導電膜中の隅々までエッチング液が染み渡ることが困難で一層ITO微粒子の溶解を抑制しているためである。
【0008】
したがって、ITO透明導電膜のエッチング除去されるべき部分に、一部のITO微粒子がシリカ(酸化ケイ素)バインダーマトリックスと共に残留することとなり、多くの場合には、本来パターニングにより電気的に絶縁となるべき透明導電パターン膜同士の間に導通が残る結果となり、微細パターニングが達成できない結果となるのが現状であった。
また、上記ITO透明導電膜のITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)等の無機バインダーの双方をエッチング除去できる適切なエッチング液も見つかっていない。フッ酸系のエッチング液は、ITO微粒子と無機バインダーの双方を溶解できるが、同時にガラス等の基材も溶解してしまうために適切ではなく、更に有害性の観点からも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−312136号公報
【特許文献2】特開平8−176794号公報
【特許文献3】特開2006−114396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような状況の中で、本発明の目的は、導電性酸化物微粒子と無機バインダーと溶媒とからなる透明導電膜形成用塗布液で得られる導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電膜の微細パターニングを可能とするリフトオフ法によるパターニング方法、及び該パターニング方法を用いて形成された導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電パターン膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、導電性酸化物微粒子と、無機バインダーと、溶媒とからなる透明導電膜形成用塗布液を基材に塗布・乾燥・硬化して得られる導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電膜のパターニング方法において、フォトレジストを用いたリフトオフ法が適用された場合に、溶媒として水、又は水−アルコール混合溶液を主成分とする透明導電膜形成用塗布液を、有機溶媒に可溶性で、かつ、水に不溶性のフォトレジストと組合せることで、透明導電膜形成用塗布液によるフォトレジストパターンの溶解等の劣化が効果的に抑制でき、微細かつパターン精度が良好な透明導電パターン膜を形成できることを見出して発明を完成するに至った。
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係る透明導電膜のパターニング方法において、その請求項1に係る発明は、導電性酸化物微粒子、無機バインダー、および溶媒とからなる透明導電膜形成用塗布液を基材に塗布、乾燥、硬化して得られる導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電膜のパターニング方法であって、前記パターニング方法は、前記基材上に有機溶媒に可溶性で、かつ水に不溶性のフォトレジストパターンを形成するパターンレジスト形成工程、前記フォトレジストパターンが形成された基材上の全面に前記透明導電膜形成用塗布液を塗布、乾燥、硬化して透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程、および前記フォトレジストパターンを有機溶媒を用いて溶解除去することでフォトレジストパターン上に形成された透明導電膜を除去して透明導電パターン膜を得る透明導電膜パターニング工程を具備し、前記透明導電膜形成用塗布液の溶媒は、水又は水−アルコール混合溶液を主成分とすることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の透明導電膜のパターニング方法において、前記導電性酸化物微粒子に対する前記無機バインダーの配合割合が、該導電性酸化物微粒子100重量部に対し、2〜10重量部であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の透明導電膜のパターニング方法において、前記導電性酸化物微粒子が、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛の少なくとも一種以上を主成分として含有していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の透明導電膜のパターニング方法において、前記導酸化インジウムを主成分とする電性酸化物微粒子が、インジウム錫酸化物微粒子であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電膜のパターニング方法において、前記無機バインダーが、シリカゾルを主成分とすることを特徴とするものである。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜のパターニング方法において、前記透明導電膜パターニング工程が、有機溶媒を用いて超音波照射下で前記フォトレジストパターンを溶解除去することで、フォトレジストパターン上に形成された透明導電膜を除去して透明導電パターン膜を形成することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明が提供する導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電パターン膜において、その請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜のパターニング方法を用いて得られることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る透明導電膜のパターニング方法によれば、透明導電膜形成用塗布液を基材に塗布、乾燥、硬化して得られる導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電膜の微細パターニングを行うことが可能となる。また、このパターニング方法を用いて形成された導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電パターン膜は微細パターンとすることが可能なため、LCD、ELD、PDP、電子ペーパーなどの各種ディスプレイの透明電極、タッチパネルや太陽電池等の透明電極に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来の透明導電膜のパターニングの製造工程の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に係る透明導電膜のパターニングの製造工程の一例を示す模式図である。
【図3】実施例1に係る透明導電パターン膜の光学顕微鏡写真(暗視野像)である。
【図4】実施例2に係る透明導電パターン膜の光学顕微鏡写真(暗視野像)である。
【図5】実施例2に係る透明導電パターン膜のオプティカルプロファイラー観察による鳥瞰図である。
【図6】実施例2に係る透明導電パターン膜のオプティカルプロファイラー観察による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明では、導電性酸化物微粒子、無機バインダー、および溶媒とからなる透明導電膜形成用塗布液を、基材に塗布、乾燥、硬化して得られる導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電膜のパターニング方法において、フォトレジストを用いたリフトオフ法を適用する場合に、溶媒として水又は水−アルコール混合溶液を主成分とする透明導電膜形成用塗布液を、有機溶媒に可溶性で、かつ、水に不溶性のフォトレジストと組合せることで、透明導電膜形成用塗布液によるフォトレジストパターンの溶解等の劣化を効果的に抑制でき、微細かつパターン精度が良好な透明導電パターン膜を形成できることを見出して発明を完成するに至っている。
【0022】
即ち、図1にフォトエッチングを用いた従来の透明導電膜のパターニングの製造工程の一例を示す。これに対し、本発明では、図2に示すように、リフトオフ方式で透明導電膜のパターニングを行うものである。
【0023】
図2に示すリフトオフ方式の透明導電膜のパターニングでは、まず、パターンレジスト形成工程として、基材1上に有機溶媒に可溶性で、かつ、水に不溶性のフォトレジストを用いてレジストパターン6を形成し、フォトリソグラフィー(レジスト塗布・露光・現像)により図2(1)のフォトレジストパターンを形成する。
次に、透明導電膜形成工程として、上記フォトレジストパターンが形成された基材上の全面に、上記透明導電膜形成用塗布液を塗布し、大気中乾燥、硬化させ、ITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスを主成分とする図2(2)に示す透明導電膜2を形成する。
最後に、透明導電膜パターニング工程として、上記フォトレジストパターンと透明導電膜が形成された基材のフォトレジストパターンを有機溶媒で溶解除去し、フォトレジストパターン上に形成された透明導電膜を除去して、ITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスを主成分とする実施例1に係る図2(3)の透明導電パターン膜5を得る。
【0024】
上記有機溶媒は、水に不溶性のフォトレジストを溶解して除去する作用があればよく、例えば、ジアセトンアルコール(DAA)等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、トルエン等のベンゼン誘導体、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン等、及びこれらのいくつかの混合液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
尚、ジアセトンアルコール(DAA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン等の様に水と相溶する水性有機溶媒を用いる場合には、フォトレジストパターンを有機溶媒で溶解除去した後、純水で有機溶媒を洗浄除去してもよい。安価な純水を洗浄に用いると、高価な有機溶媒の使用量を削減でき、更には、導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電膜中に水溶性の不純物(Na等のアルカリ、塩素等のハロゲン)が含まれている場合には、それらを洗浄除去する作用もある。
【0025】
ここで、有機溶媒を用いた上記フォトレジストパターンの溶解除去において、透明導電膜に超音波照射を施しながら、その溶解除去を行うと、フォトレジストパターン上に形成された透明導電膜だけを細かく砕くことができ、したがって不要の透明導電膜が除去し易くなり、透明導電膜のパターニング不良を防止すると同時にパターニング精度を高めることが可能となる。
この超音波照射における超音波の照射強度並びに照射時間は、基材上に形成された透明導電膜、すなわち、透明導電パターン膜として残留する部分が基材から剥離したり、損傷を受けたりすることがない範囲内で適宜設定すれば良い。
【0026】
上記基材には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ウレタン、フッ素系樹脂、ポリイミド(PI)等の各種プラスチックフィルム、又は、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等の無機耐熱基板を用いることができる。更に、本発明の透明導電パターン膜は、必要とされる機能にもよるが、基材として、上記各種プラスチックフィルムや無機耐熱基板上に真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の物理的手法で透明導電膜を形成したもの(例えば、スパッタリングITOフィルムやスパッタリングITO膜付ガラス基板)に適用することも可能である。
【0027】
ここで、有機溶媒に可溶性で、かつ、水に不溶性のフォトレジストを用い、透明導電膜形成用塗布液の溶媒として水、又は水−アルコール混合溶液を主成分とするのは、上記リフトオフ方式において、フォトレジストパターン上に塗布する透明導電膜形成用塗布液によってフォトレジストパターンが溶解等の劣化を効果的に抑制するためである。
尚、上記有機溶媒に可溶性で、かつ、水に不溶性のフォトレジストとしては、例えば、ポジ型レジストとして広く用いられているナフトキノンジアジド系レジスト(ナフトキノンジアジド−ノボラック樹脂混合系等)が適用できるが、これに限定されるものではない。上記ナフトキノンジアジド系レジストとしては、具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ製のAZ RFP 201K等が挙げられる。
【0028】
また、上記導電性酸化物微粒子は、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛の少なくとも一種以上を主成分とする導電性酸化物微粒子であって、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素アンチモン酸化物(FTO)、燐アンチモン酸化物(PTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)等が挙げられるが、透明性と導電性を具備していれば良く、これらに限定されない。ただし、これらの中でもITOが最も高特性であり、好ましい。
【0029】
上記ITO微粒子は、還元処理が施され酸素空孔が導入された低比抵抗値を有する青色系のITO微粒子でも良いが、更に、この青色系のITO微粒子を酸素含有雰囲気下で加熱・酸化処理されて得られた黄緑色系、又は黄色系微粒子であることが好ましい(ITO微粒子の製造段階で、空気中で加熱処理されただけの、黄緑色系、又は黄色系の未還元処理ITO微粒子でも良い。)。これは、上記黄緑色系、又は黄色系ITO微粒子を用いると、窒素雰囲気下で焼成して得られる透明導電膜の抵抗値をより低下できるからである。この現象の詳細なメカニズムはわかっていないが、酸化処理によりITOの格子定数が小さくなっているため、窒素雰囲気下で焼成した場合に、ITO微粒子が還元されて僅かに膨張し微粒子同士間に強い圧縮力が作用するためと考えられる。
【0030】
上記導電性酸化物微粒子の平均粒径は10〜100nmであることが好ましい。平均粒径が10nm未満では導電性酸化物微粒子の安定分散が困難となると同時に、得られる透明導電膜の抵抗値が悪化してしまう。一方、平均粒径が100nmを越えると、透明導電膜形成用塗布液を室温に放置した場合に、粒子の沈降が起き易くなるため好ましくない。
【0031】
また、上記無機バインダーとしては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ等を主成分とし、例えば、塗布液への配合は該成分のゾルとして添加することが好ましい。中でもシリカを主成分としたシリカゾルとして配合することが好ましく、その平均重量分子量(ポリスチレン換算)は、3000〜150000が良く、更に好ましくは5000〜30000が良い。3000未満であると、得られる膜の表面抵抗値が悪化する傾向に有り、一方、150000を越えると、重合が進み過ぎてバインダーゾルが固化する可能性があり、しかも、得られる透明導電膜の強度が低下する場合があるからである。
【0032】
ところで、上記導電性酸化物微粒子に対する無機バインダーの配合割合は、導電性酸化物微粒子100重量部に対し、2〜20重量部であることが好ましい。無機バインダーが2重量部未満であると、バインダー添加の効果が不十分で、透明導電膜の導電性の悪化、及び膜強度の低下が生じ、逆に無機バインダーが20重量部を超えると、バインダーが過剰となり透明導電膜の導電性の悪化を引き起こすからである。ここで、無機バインダー量は、上記各種ゾル液における無機成分の値であり、例えば、シリカゾル液における無機バインダー量はシリカゾル液中のシリカ(酸化ケイ素)の量を示している。
【0033】
次に、本発明で用いる透明導電膜形成用塗布液の製造方法を説明する。
まず、無機バインダーと溶媒を所望の割合で混合した後に、導電性酸化物微粒子を分散処理することにより導電膜形成用塗布液を得る。ここで、無機バインダーを分散剤として用いているため、特に他の分散剤の添加は必要ないが、導電性酸化物微粒子の導電性を阻害しない範囲で、シリコンカップリング剤等の各種カップリング剤、各種高分子分散剤、アニオン系、ノニオン系、カチオン系等の各種界面活性剤を極少量添加しても良く、さらに、これらの分散剤の界面活性剤とは別に、塗布性を改善するために微量の界面活性剤等の添加剤を透明導電膜形成用塗布液に加えても良い。
【0034】
この塗布性改善の場合の界面活性剤は、フッ素系、シリコーン系等の市販されている界面活性剤から選定すれば良いが、シリコーン系界面活性剤が種類も多く、添加による副次的影響も少なく好ましい。界面活性剤の透明導電膜形成用塗布液への添加量は、透明導電膜形成用塗布液100重量部に対し、0.01〜0.5重量部が良く、更に好ましくは0.02〜0.1重量部が良く、この範囲内であれば、透明導電膜の抵抗悪化を引き起こさず、成膜性が改善できる。
【0035】
尚、上記シリコーン系界面活性剤としては、例えば疎水基にジメチルポリシロキサン、親水基にポリアルキレンオキサイドで構成されるものや、その一部に各種官能基を導入したもの等が挙げられ、そのHLB値(親水性−親油性バランス)が10〜20であることが好ましい。HLB値が10未満であると透明導電膜形成用塗布液を塗布・成膜して得られる膜の均一性が不十分となる傾向が見られるため好ましくない。20を超えるシリコーン系界面活性剤は一般に市販されておらず入手が困難である。
【0036】
ここで、透明導電膜形成用塗布液の塗布方法としては、スピンコート、ブレードコート、カーテンコート、ディップコート、スリットコート、インクジェット印刷といった各種塗布方法が適用できるが、中でも均一な膜を形成できる点で、スピンコートやスリットコートによる塗布法が好ましい。
【0037】
有機溶媒可溶性のフォトレジストパターンが形成された基板上に塗布した透明導電膜形成用塗布液の乾燥、硬化は、基板やフォトレジストの耐熱性にもよるが、例えば、塗布液が塗布された基板ごと80〜150℃の温度で5〜60分、好ましくは10〜30分保持することにより行われる。このITO透明導電膜の導電性は、乾燥・硬化温度が高いほどITO粒子同士が強く結合するため向上する。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
[透明導電膜形成用塗布液の作製]
平均粒径30nmのITO微粒子(住友金属鉱山(株)製、SUFP−HX、還元処理された青色系のITO微粒子)23.5gを、シリカゾル液14.1g、水46.8g、エタノール13.3g、イソプロピルアルコール2.3g、界面活性剤(HLB値=14)0.01gと混合した後、ペイントシェーカーを用いて分散処理を行い、透明導電膜形成用塗布液を得た。レーザー散乱法で測定した透明導電膜形成用塗布液中のITO微粒子の分散粒径は130nmであった。
この透明導電膜形成用塗布液の粘度は、B型粘度計を用いて測定し、約4mPa・s(25℃)であった。
尚、使用したシリカゾル液は、メチルシリケート51(コルコート社製商品名)を19.6g、エタノール57.8g、純水14.7g、1重量%硝酸水溶液7.9gと混合し、SiO(酸化ケイ素)固形分濃度が10重量%で、重量平均分子量が12000のものを調製して得ている。
【0040】
[フォトレジストパターンの形成]
フォトレジストパターン形成工程として、コロナ放電処理の易接着処理が施された基材(厚さ:100μmのPETフィルム)上に有機溶媒可溶性のフォトレジストを用い、フォトリソグラフィー(レジスト塗布、露光、現像)によりフォトレジストパターンを形成した。
【0041】
具体的には、上記基材(PETフィルム;10cm×10cm×厚さ100μm)上の全面にジアゾナフトキノン(DNQ)−ノボラック樹脂系のポジ型フォトレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ製、AZ RFP 201K)を希釈溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で希釈した後、スピンコーティング(基板温度:25℃、1000rpm×60秒)し、100℃で10分間乾燥し、室温まで冷却した後、線幅/線間=20μm/20μmのライン状パターンのフォトマスクを設置してプロキシミティ露光(g線、h線、i線混合の高圧水銀ランプ;i線[波長365nm]強度=16mW/cm×5sec[大気中])した後、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイト(TMAH)を2.38重量%含有する水溶液で現像(液温:25℃、60秒現像)して露光部分を溶解除去し、更に純水で十分に洗浄し、乾燥した。このようにして、基材(PETフィルム)上に、線幅/線間=約20μm/約20μmで、かつパターン精度の良好なライン状フォトレジストパターン(膜厚=約1.5μm)を得た。
【0042】
[透明導電膜の形成]
次に、透明導電膜形成工程として、上記フォトレジストパターンが形成された基材(PETフィルム)上の全面に、上記透明導電膜形成用塗布液をスピンコーティング(基材温度:25℃、750rpm×30秒)し、大気中100℃で10分間乾燥、硬化して、ITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスを主成分とする透明導電膜を形成した。
【0043】
[透明導電パターン膜の形成]
最後に、透明導電膜パターニング工程として、上記フォトレジストパターンと透明導電膜が形成された基材(PETフィルム)のフォトレジストパターンを有機溶媒(N−メチル−2−ピロリドン[NMP])で溶解除去(液温:25℃、約20秒現像)し、フォトレジストパターン上に形成された透明導電膜を除去して、ITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスを主成分とする実施例1に係る透明導電パターン膜を得た。この透明導電パターン膜の膜厚は約0.9μmであった。
【0044】
作製した透明導電パターン膜の膜特性は、可視光透過率:96.3%、ヘイズ値:1.4%、表面抵抗値:約300kΩ/□(オーム・パー・スクエアと読む)を示した。また、図3に得られた透明導電パターン膜の光学顕微鏡写真(暗視野像)を示すが、線幅/線間=約20μm/約20μmの微細なライン状の透明導電パターン膜が得られていることがわかり、パターン精度も良好であることがわかる。さらに、上記透明導電パターン膜において、個々のラインパターン透明導電膜間は電気的に絶縁であることを確認している。
【0045】
尚、上述の透明導電パターン膜の透過率は、透明導電パターン膜だけの(可視光線)透過率であって、以下のようにして求めている。
透明導電パターン膜の透過率(%)=[(透明導電パターン膜と基材とを併せて測定した全体の透過率)/基材のみの透過率]×100
【0046】
また、透明導電パターン膜のヘイズ値も、透明導電パターン膜だけの透過率で、以下のように求めている。
透明導電パターン膜のヘイズ値(%)=(透明導電パターン膜と基材とを併せて測定した全体のヘイズ値)−(基材のみのヘイズ値)
【0047】
膜特性の評価に際して、透明導電パターン膜の表面抵抗は、三菱化学(株)製の表面抵抗計ロレスタAP(MCP−T400)を用いて測定した。
ヘイズ値と可視光透過率は、日本電色工業(株)製のヘイズメーター(NDH5000)を用い、JIS K7136(ヘイズ値)、JIS K7361−1(透過率)に基づいて測定した。
フォトレジストパターンと透明導電パターン膜の膜厚は、オプティカルプロファイラー(Zygo社製 NewView6200)による膜断面観察により求めている。
【実施例2】
【0048】
[フォトレジストパターンの形成]
フォトレジストパターン形成工程として、基材(厚さ:2mmのソーダライムガラス基板)上に有機溶媒可溶性のフォトレジストを用い、フォトリソグラフィー(レジスト塗布、露光、現像)によりフォトレジストパターンを形成した。
【0049】
具体的には、基材(ソーダライムガラス基板;10cm×10cm×厚み2mm)上の全面にジアゾナフトキノン(DNQ)−ノボラック樹脂系のポジ型フォトレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ製、AZ RFP 201K)を希釈溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で希釈した後、スピンコーティング(基材温度:25℃、1000rpm×60秒)し、100℃で10分間乾燥し、室温まで冷却した後、線幅/線間=20μm/380μmの格子状パターンのフォトマスクを設置してプロキシミティ露光(g線、h線、i線混合の高圧水銀ランプ;i線[波長365nm]強度=16mW/cm×5sec[大気中])した後、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイト(TMAH)を2.38重量%含有する水溶液で現像(液温:25℃、60秒現像)して露光部分を溶解除去し、更に純水で十分に洗浄し、乾燥した。このようにして、基材(ガラス基板)上に、線幅/線間=約20μm/約380μmで、かつパターン精度の良好な格子状のフォトレジストパターン(膜厚=約1.5μm)を得た。
【0050】
[透明導電膜の形成]
次に、透明導電膜形成工程として、上記フォトレジストパターンが形成された基材(ガラス基板)上の全面に、実施例1の透明導電膜形成用塗布液をスピンコーティング(基板温度:25℃、750rpm×30秒)し、大気中100℃で10分間乾燥、硬化して、ITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスを主成分とする透明導電膜を形成した。
【0051】
[透明導電パターン膜の形成]
最後に、透明導電膜パターニング工程として、上記フォトレジストパターンと透明導電膜が形成された基材(ガラス基板)を有機溶媒(N−メチル−2−ピロリドン[NMP])に浸漬し、透明導電膜に超音波照射(卓上超音波洗浄器;出力150W)しながらフォトレジストパターンを溶解除去(液温:25℃、約20秒現像)し、フォトレジストパターン上に形成された透明導電膜を除去して、ITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスを主成分とする実施例2に係る透明導電パターン膜を得た。この透明導電パターン膜の膜厚は約1.0μmであった。
【0052】
作製した透明導電パターン膜の膜特性は、可視光透過率:96.0%、ヘイズ値:1.7%、表面抵抗値:約300kΩ/□(オーム・パー・スクエア)を示した。また、図4には得られた透明導電パターン膜の光学顕微鏡写真(暗視野像)を示し、図5、及び図6には得られた透明導電パターン膜をオプティカルプロファイラー(Zygo社製 NewView6200)で観察した場合の鳥瞰図及び断面図を、それぞれ示す。これらの図から、線幅/線間=約20μm/約380μmの格子状に溝が切られた微細な透明導電パターン膜(約380μm角の正方形パターン透明導電膜が約20μmの間隔を隔てて整列したパターン膜)が得られていることがわかり、パターン精度も良好であることがわかる。尚、上記透明導電パターン膜において、個々の正方形パターン透明導電膜間は電気的に絶縁であることが確認された。
【0053】
(比較例1)
[透明導電膜の形成]
まず、比較例1の透明導電膜は、コロナ放電処理の易接着処理が施された基材(PETフィルム;10cm×10cm×厚さ100μm)上の全面に、実施例1の透明導電膜形成用塗布液をスピンコーティング(基板温度:25℃、750rpm×30秒)し、大気中100℃で10分間乾燥、硬化して、ITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスを主成分とする透明導電膜を形成した。
【0054】
上記透明導電膜の膜特性は、可視光透過率:96.2%、ヘイズ値:1.3%、表面抵抗値:約300kΩ/□(オーム・パー・スクエア)であった。
尚、上述の透明導電膜の透過率およびヘイズ値は、実施例1のときと同様に透明導電膜だけの(可視光線)透過率およびヘイズ値である。
【0055】
[レジストパターンの形成]
次に、上記基材(PETフィルム)上に形成された上記透明導電膜上の全面に、有機溶媒に可溶性のフォトレジストを用い、フォトリソグラフィー(レジスト塗布、露光、現像)によりエッチングレジストパターンを形成した。
【0056】
具体的には、上記透明導電膜上の全面にジアゾナフトキノン(DNQ)−ノボラック樹脂系のポジ型フォトレジスト(クラリアントジャパン製、AZ RFP 201K)を希釈溶媒のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)で希釈した後、スピンコーティング(基板温度:25℃、1000rpm×60秒)し、100℃で10分間乾燥し、室温まで冷却した後、線幅/線間=50μm/50μmのライン状パターンのフォトマスクを設置してプロキシミティ露光(g線、h線、i線混合の高圧水銀ランプ;i線[波長365nm]強度=16mW/cm×5sec[大気中])した後、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイト(TMAH)を2.38重量%含有する水溶液で現像(液温:25℃、60秒現像)して露光部分を溶解除去し、更に純水で十分に洗浄し、乾燥を行い、透明導電膜上に線幅/線間=約40μm/約60μmで、ややパターン線幅の細くなったライン状エッチングレジストパターン(膜厚=約1.5μm)を形成した。
ここで、パターン線幅が細くなった理由は、露光時にフォトレジスト膜の下地である透明導電膜のヘイズ(光散乱)によって、露光光線が一部散乱して(ハレーション)、本来露光されない部分のフォトレジストの一部が露光されたためと考えられる。
【0057】
[透明導電パターン膜の形成]
次に、上記エッチングレジストパターンを透明導電膜上に形成した基材(PETフィルム)を、スパッタリングITO膜用エッチング液(関東化学(株)製、S50278[塩化鉄と塩酸を含む溶液])に50℃で2分間浸漬してエッチング処理を行った後、純水洗浄、乾燥し、最後にエッチングレジストパターンを有機溶媒(N−メチル−2−ピロリドン[NMP])で溶解除去(液温:25℃、10秒現像)して、ITO微粒子とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスを主成分とする比較例1に係る透明導電パターン膜を作製した。この透明導電パターン膜の膜厚は約0.9μmであった。
【0058】
得られた透明導電パターン膜は、線幅/線間=約40μm/約60μmの微細なライン状パターン模様が光学顕微鏡で観察されたものの、透明導電パターン膜の線間の部分には、ITO微粒子の一部とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスが残留しており、パターン精度が不十分な上に、それぞれのライン状透明導電パターン膜間が完全に絶縁となっていなかった。
尚、上記スパッタリングITO膜用エッチング液の浸漬時間を5分間まで延長しても、残留するITO微粒子が減少するたけで、パターン精度が不十分でライン状透明導電パターン膜間の絶縁不良は同様であった。
【0059】
実施例からも明らかなように、各実施例と比較例1を比べると、以下のことが判る。
すなわち、実施例1の本発明の透明導電パターン膜は、線幅/線間=約20μm/約20μmという微細かつパターン精度が良好なライン状透明導電パターン膜が得られ、更に実施例2の本発明の透明導電パターン膜では、線幅/線間=約20μm/約380μmの格子状に溝が切られた微細かつパターン精度が良好な格子状透明導電パターン膜(約380μm角の正方形パターン透明導電膜が約20μmの間隔を隔てて整列したパターン膜)が得られる。いずれの場合もパターン透明導電膜間の電気的絶縁が確保されている。
【0060】
一方、比較例1の透明導電パターン膜は、線幅/線間=50μm/50μmと比較的粗いライン状パターンマスクを用いた場合であってもパターン精度が不十分で、かつライン状透明導電パターン膜の線間の部分にITO微粒子の一部とシリカ(酸化ケイ素)マトリックスが残留してパターン膜間の絶縁不良が生じており、透明導電パターン膜として機能していないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る透明導電膜のパターニング方法によれば、透明導電膜形成用塗布液を基材に塗布・乾燥・硬化して得られる導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電膜の微細パターニングを行うことが可能となるため、精密で、複雑なパターンが要求される液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイ(PDP)などの各種ディスプレイの透明電極、タッチパネルや太陽電池の透明電極に適用することで、これらのデバイスの製造に利用可能であり、その他パターン帯電防止膜の製造等広範な利用が期待できる。
【符号の説明】
【0062】
1 基材(PETフィルム、ガラス基板等)
2 透明導電膜(導電性酸化物微粒子+無機バインダーマトリックス)
3 エッチングレジストパターン
4 エッチング処理された透明導電膜(透明導電膜成分が残留した部分)
5 透明導電パターン膜
6 フォトレジストパターン(有機溶媒可溶性でかつ水不溶性のレジスト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性酸化物微粒子、無機バインダー、および溶媒とからなる透明導電膜形成用塗布液を基材に塗布、乾燥、硬化して得られる導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電膜のパターニング方法であって、
前記パターニング方法は、
前記基材上に有機溶媒に可溶性で、かつ水に不溶性のフォトレジストパターンを形成するパターンレジスト形成工程、前記フォトレジストパターンが形成された基材上の全面に前記透明導電膜形成用塗布液を塗布、乾燥、硬化して透明導電膜を形成する透明導電膜形成工程、および前記フォトレジストパターンを有機溶媒を用いて溶解除去することでフォトレジストパターン上に形成された透明導電膜を除去して透明導電パターン膜を得る透明導電膜パターニング工程を具備し、前記透明導電膜形成用塗布液の溶媒は、水又は水−アルコール混合溶液を主成分とすることを特徴とする透明導電膜のパターニング方法。
【請求項2】
前記導電性酸化物微粒子に対する前記無機バインダーの配合割合が、該導電性酸化物微粒子100重量部に対し、2〜10重量部であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜のパターニング方法。
【請求項3】
前記導電性酸化物微粒子が、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛の少なくとも一種以上を主成分として含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電膜のパターニング方法。
【請求項4】
前記酸化インジウムを主成分とする導電性酸化物微粒子が、インジウム錫酸化物微粒子であることを特徴とする請求項3に記載の透明導電膜のパターニング方法。
【請求項5】
前記無機バインダーが、シリカゾルを主成分とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電膜のパターニング方法。
【請求項6】
前記透明導電膜パターニング工程が、有機溶媒を用いて超音波照射下で前記フォトレジストパターンを溶解除去することで、フォトレジストパターン上に形成された透明導電膜を除去して透明導電パターン膜を形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜パターニング方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜のパターニング方法を用いて得られることを特徴とする導電性酸化物微粒子と無機バインダーマトリックスを主成分とする透明導電パターン膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−232628(P2010−232628A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193683(P2009−193683)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】