説明

透明導電膜形成方法及び有機電界発光素子の製造方法

【課題】
有機薄膜上にスパッタリング法により、透明導電膜を成膜した場合、高エネルギー粒子である反跳Arイオン、γ電子、ターゲット粒子などの飛散・衝突により有機薄膜の分子構造が破壊(結合断裂)され、有機発光材料本来の発光ポテンシャルが低下するという問題があった。
【解決手段】
基板上にマスクを設け、スパッタリング法により基板上に透明導電膜をパターン形成する透明導電膜形成方法において、ターゲットと基板間にマグネットからなるピンを備えたトラップ電極を設け、スパッタリング法により前記基板上にターゲット形成材料からなる透明導電膜をパターン形成することを特徴とする透明導電膜形成方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング法を用いた透明電極形成方法に関し、また透明電極形成方法を用いた有機電界発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電膜の応用分野は光通信、半導体レーザー、各種ディスプレイ、記録メディア、民生用機器(デジタルカメラ、プロジェクター、携帯電話、レンズ、ミラー、ランプ等)など多様化しており、透明導電膜の製造技術においては歩留まり向上などの量産時の安定性、また多層膜形成時の膜性能について重要な要求項目となってきている。
【0003】
有機電界発光素子は、2つの電極間に有機発光層を挟持した構造を有し、電極間に電流を流すことにより有機発光層を発光させるものであるが、発光した光を取り出すために、どちらか一方の電極を透明にする必要がある。そして、透明電極としてインジウム・錫酸化物(ITO)からなる透明導電膜等を用いることが提案されている(例えば、特許文献1、2、3、4)。
【0004】
上部光取り出し(トップエミッション)型の有機電界発光素子は、基材と反対側の電極を透明電極とするものであるが、このとき金属薄膜上に透明導電膜を形成することにより、陰極の保護と配線抵抗の低抵抗化を図ることが提案されている。また、透明導電膜を陰極とするために下地の有機発光層の保護や電子注入障壁低減を目的として、有機発光層と透明導電膜の間にバッファー層を挟持することが提案されている。透明導電膜形成には従来から行われている蒸着法、並びに近年光通信関連で利用されているプラズマやイオンビームによるアシスト蒸着法やイオンプレーティング法、イオンビームスパッタ法などが主に使用されており、その他としてsol/gel法、スプレー法などの湿式法を用いる場合もある。一方、半導体やフラットパネルディスプレイ、電子部品などの薄膜製造工程における量産装置に使用されている方式としてスパッタリング法がある。スパッタリング法は成膜速度や膜組成などが安定しており、また大面積基板への均一な成膜が可能であるため、量産化に適した方式として広く利用されている。更に膜厚及び導電性・透明性の均一性が高く、微細エッチング特性にも優れることから、主流ともなっている。
【0005】
以下に公知文献を示す。
【特許文献1】特開2003−901158号公報
【特許文献2】特開2001−250678号公報
【特許文献3】特許第2850906号公報
【特許文献4】特開2005−68501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸着法により基板上に導電膜をパターン形成する場合、蒸着法は熱的なエネルギーのみで基板に粒子を堆積させるため、基板に入射する粒子のエネルギーは0.1eV程度である。これに対し、スパッタリング法にて基板上に透明導電膜をパターン形成する場合、基板に入射する粒子のエネルギーは600eV程度と非常に高い。一般的に基板に入射する粒子のエネルギーが50eV程度以上になると、粒子が基板内に入り込んだり、基板を構成する原子が叩き出されたり、あるいは基板に欠陥を発生させるといった問題が発生する。
【0007】
特に、有機薄膜上にスパッタリング法により、透明導電膜を成膜した場合、高エネルギ
ー粒子である反跳Arイオン、γ電子、ターゲット粒子などの飛散・衝突により有機薄膜の分子構造が破壊(結合断裂)され、有機発光材料本来の発光ポテンシャルが低下するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決させるために請求項1に係る発明としては、基板上にマスクを設け、スパッタリング法により基板上に透明導電膜をパターン形成する透明導電膜形成方法において、ターゲットと基板間にマグネットからなるピンを備えたトラップ電極を設け、スパッタリング法により前記基板上にターゲット形成材料からなる透明導電膜をパターン形成することを特徴とする透明導電膜形成方法としたことによりγ電子を捕獲できるようにした。
【0009】
また、請求項2に係る発明としては、前記マグネットが円錐形状であり、該マグネットをトラップ外周部に円をなすように複数本並べ、且つ前記マグネットの極性を、トラップ電極面内に磁力線が張り巡らされるように配向させることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜形成方法とした。
【0010】
また、請求項3に係る発明としては、前記マグネット付トラップ電極に基板よりプラス電位を印加することで、静電誘導によりマグネット先端およびトラップ電極にプラズマ荷電粒子を引き付け、荷電粒子の極性を中和させる、若しくはトラップ電極面内に張り巡らされるように配向させた磁力線にプラズマ荷電粒子を引き付けることを特徴とする請求項2記載の透明導電膜形成方法としたことによりγ電子などの基板へのダメージを低減できるようにした。
【0011】
また、請求項4に係る発明としては、透明導電膜形成中に、前記基板がペルチェ素子によって冷却されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の透明導電膜形成方法とした。
【0012】
また、請求項5に係る発明としては、基材上に第一電極と有機発光層と第二電極を少なくともこの順に備え、電極間に電流を流すことにより有機発光層を発光させる有機電界発光素子の製造方法において、第一電極若しくは第二電極の少なくとも一方を請求項1乃至4のいずれかに記載の方法によりパターン形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法とした。
【0013】
また、請求項6に係る発明としては、基材上に反射電極と有機発光層と透明電極を少なくともこの順に備え、電極間に電流を流すことにより有機発光層を発光させるトップエミッション型有機電界発光素子の製造方法において、透明電極を請求項1乃至4のいずれかに記載の方法により形成することを特徴とするトップエミッション型有機電界発光素子の製造方法とした。
【0014】
また、請求項7に係る発明としては、請求項5または請求項6に記載の有機電界発光素子の製造方法において、前記有機発光層形成材料を溶媒に溶解または分散させインキとする工程と、該インキを用いて凸版反転オフセット印刷法により基材上に有機発光層を形成する工程を備えることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法とした。
【0015】
また、請求項8に係る発明としては、請求項5または請求項6に記載の有機電界発光素子の製造方法において、前記有機発光層形成材料を溶媒に溶解または分散させインキとする工程と、該インキを用いて凸版印刷法により基材上に有機発光層を形成する工程を備えることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法とした。
【0016】
また、請求項9に係る発明としては、請求項5、6、7、8に記載の有機電界発光素子の製造方法において、前記有機発光層及び電極を形成した基材上に、ガラスにCaOを形成した基材を封止基材として、両者を貼り合わせすることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法としたことにより基材に吸湿効果を付与させる事ができ、封止工程において改めて乾燥剤を挿入する事が不要となる。
【発明の効果】
【0017】
マグネットからなる円錐形状のピンを備えたトラップ電極を用いてスパッタリング法により基板上に透明導電膜を成膜することにより、Arイオンをターゲットに衝突させた際に放出される反跳Arイオン、二次電子であるγ電子、ターゲット粒子のうち、特に二次電子であるγ電子の基板への入射を低減することが可能となった。マグネット付トラップ電極に正電圧を印加することで、電気力線集中部であるマグネット先端に静電引力によりγ電子が引き付けられ、γ電子の基板への入射が低減される。
【0018】
マグネット付トラップ電極に負電圧を印加した場合には、反跳Arイオンやターゲットに衝突しない余剰Arイオンがマグネット先端に静電引力により引き付けられ、極性が中和される(消滅する)ため、Arイオンの基板への入射が低減される。
【0019】
γ電子の基板への入射を低減することにより、例えば、基板が有機薄膜を有しており、該有機薄膜上に透明導電膜を形成する場合においては、該有機薄膜を破壊することなく、有機薄膜上に透明導電膜を形成することが可能になった。
【0020】
また、スパッタリング法を用いてメタルマスクにより透明導電膜をパターン形成する場合、プラズマ閉じ込めによりターゲット表面のプラズマ荷電粒子密度が増加することで生じる温度上昇に伴い、熱輻射(赤外線輻射)、更に漏れプラズマの一部がマスク表面に入射するなどで、マスクが熱膨張し、変形するため、正確なパターニングができないという問題がある。本発明にあっては、スパッタリング法による透明導電膜を成膜する際に、γ電子を始めとするプラズマ荷電粒子を捕獲することで、ターゲット表面の過度のプラズマ荷電粒子密度上昇を低減させることが可能となり、特に、マスクの熱膨張、熱変形を抑制することが可能となった。よって、基板上に正確なパターンを形成することが可能となった。
【0021】
また、有機電界発光素子の製造方法において、本発明の透明導電膜形成方法を用いることにより、基材にダメージを与えることなく透明電極を形成することが可能となり、発光特性の良い有機電界発光素子を得ることができた。特に、トップエミッション型の有機電界発光素子において、有機発光層といった有機薄膜上にダメージを与えることなく透明電極を形成することが可能となり、発光特性が良く、低駆動電圧の有機電界発光素子を得ることができた。
【0022】
また、凸版反転オフセット印刷法は、ブランケットを用い、ブランケットをブラン胴に固定し、ブランケット表面にあるパターン化されたインキを被転写体に転写させるものであり、インキのパターン形状及び膜厚が制御しやすいという利点がある。有機電界発光素子の製造方法において、有機発光層を凸版反転オフセット印刷法を用いて形成することにより、パターン形状の優れた有機発光層を得ることができた。
【0023】
また、凸版印刷法は、印刷版としての凸版に、インキを供給した後に、被転写体に転写させるものであり、版材に柔軟性が高い材料を使用できる為、ガラス基板などの割れ易い基材に有機電界発光素子を形成する製造方法として優れている。
【0024】
また、有機電界発光素子の製造方法において、本発明の有機発光層及び電極を形成した
基材上に、ガラスにCaOを形成した基材を封止基材として、両者を貼り合わせすることにより、乾燥剤を挿入せず封止を行うことが可能になった。また、ガラスを直接、基材上部に貼り合わせすることから、封止基材での光吸収やキャップ構造のガラスを用いた場合に生じる光路長の変化が起きず、光取り出し効率を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0026】
本願発明に用いられる透明導電膜の用途は多岐にわたる。中でもオプトエレクトロニクスデバイス用の電極として使用する場合、種々デバイスの使用条件に応じた要求を満たさなければならない。特に、透明導電膜形成材料は電気的特性と可視光領域の光学的特性の両方は最低限満足する材料でなければならない。本発明における透明導電膜形成材料としては、酸化インジウム系のITO(In23にSnをドーパントとして添加)、その他には酸化スズ系ではSnO2(ドーパント添加)、酸化亜鉛系ではAZO(ZnOにAlをドーパントとして添加)、GZO(ZnOにGaをドーパントとして添加)、IZO(ZnOにInをドーパントとして添加)などを用いることができる。
【0027】
また、これらの他にCdO系、酸化ガリウム系の材料を用いることが可能である。しかし、CdO系に関しては、Cdが毒性を有するために実用化は困難である。また酸化ガリウム系の透明導電膜もワイドバンドギャップを持つなど数々の特徴を有するが、インジウム同様、ガリウムは資源の観点からは豊富な材料とは言い難い。このように透明導電膜形成材料は材料設計の指針として環境面を最優先しなければならない社会的背景がある。
【0028】
ITOはIndium tin oxideと呼ばれているが、その母結晶はIn23である。Snを酸化物換算で5〜10wt%添加した組成のITO(In23:Sn)は絶縁体のように透明でありながら、導電性が高く(10+3S/cm)、吸収も少ない。透明性と導電性は互いに関係があるが、1対1の対応があるわけではない。透明性はIn23結晶の構造的な完全性が高く、バンドギャップ内の電子捕獲準位が非常に少ないということであるが、それは結晶内の原子が結晶系の座標点(格子点位置)に正しく、過不足なく位置しているか否かで決まることである。In23試薬は黄白色であり、酸素をわずかに含む(分圧で10-1Pa以下)雰囲気中で蒸着またはスパッタ成膜すれば透明導電膜を得る。しかし、化合物としては酸素を手放しやすく、真空中加熱や数%の水素を含むような還元雰囲気中での加熱によって容易に還元され、還元が進めば青黒から黒、更に茶褐色にまで変色していく。導電性は母結晶のIn原子やSn原子で置換してやるか、酸素原子を必要十分に与えない条件の下で成膜することで発現する。
【0029】
ITOの透明性の物理的意味は半導体としてのバンドギャップが可視域の短波長限界400nm付近にあることに帰せられる。しかし、これだけでは不十分で、高い透明性を確保するにはバンドギャップ内に常温で電子が常駐するような準位が少ないか無視できるということである。このようなバンドギャップ内準位は酸素空孔や、In位置に置換したSn原子以外のIn、Sn原子または原子集団(クラスター)による格子欠陥に由来するものであり、母結晶自体が良質の結晶格子を形成しやすいものでなくてはならない。酸化性が極度に弱い雰囲気で成膜しない限り、In23はこの要件を満たす。実際、In23はガラス基板温度を300℃程度にしておけば、酸素がやや不足した雰囲気条件であっても、厚さ数十nmの段階から半値幅の狭い良く整ったX線回折パターンを示す。この結晶化しやすい特徴はSnを添加していっても、数十%程度までは失われない。SnO2膜やZnO膜とは大きく異なる特徴である。
【0030】
次に、本発明の透明導電膜形成方法について示す。本願発明は、スパッタリング法により基板上に透明電極を形成するものであり、スパッタリング法としては、イオンビームス
パッタリング法、直流スパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法等を用いることが可能である。
【0031】
マグネトロンスパッタは電流密度が高く、600eVもの高エネルギーでイオンが電子と衝突するので、透明導電膜を高速で成膜できる。また、低圧力のためスパッタされた粒子の平均自由行程も長く、ターゲットと対向配置の基板上にスパッタ粒子を捕集して薄膜を堆積させることができる。しかし、高エネルギープロセスのため、有機薄膜上へ透明導電膜を成膜する場合、下地の有機薄膜に反跳Arイオンやγ電子、更には加速されたターゲット粒子が衝突し大きなダメージを与えるという問題を有している。
【0032】
本発明の透明導電膜形成に用いるDCマグネトロンスパッタ装置の模式図を図1に示した。図1において、基板(1)とターゲット(10)の間にはトラップ電極(2)が設けられている。トラップ電極(2)は、マグネットピン(3)が備えられている。また、ターゲット(10)は、バッキングプレート(OFC)(11)に固定されており、更にバッキングプレート(11)のターゲット(10)と反対側の面には、カソードマグネット(12)が備えられている。なお、装置内は成膜時には一度、高真空に排気した後、スパッタリングガスとしてアルゴンガス或いはアルゴンガスに酸素や窒素などの反応性ガスを添加したガスが、スパッタリングに適した圧力まで導入された状態となる。
【0033】
トラップ電極(2)には、電圧が印加される。トラップ電極(2)に電圧を印加することで、プラズマ荷電粒子の捕獲(消滅)が可能になる。従って、マスクへのプラズマ荷電粒子の入射頻度も低下させることができ、キャリアトラップ機構として作用する。
【0034】
本発明においては、透明導電膜形成材料からなるターゲット(10)と基板間にマグネットピン(3)を備えたトラップ電極を設けることを特徴とする。ターゲット(10)−基板(1)間にマグネット(3)付トラップ電極(2)を設置し、トラップ電極に正電圧を印加することで、マグネットピン先端に静電引力によりγ電子を引き付け、更に引き付けきれなかったγ電子については、トラップ面内に張り巡らされるように形成された磁力線に補足させることで、基板への電子衝突によるスパッタダメージや基板チャージアップを抑制することが可能となる。特に、基板が表面に有機薄膜を有し、有機薄膜表面に透明導電膜を形成する場合において、有機薄膜のスパッタダメージを低減させ、有機薄膜上に透明導電膜を形成することができる。
【0035】
本発明における磁力線とは、トラップ電極(2)に設置させたマグネットによって形成された磁力線であり、トラップ電極面内に張り巡らされるように形成される。γ電子やその他の荷電粒子を捕獲するのに必要なその磁束密度は、有機薄膜に垂直な方向の電子の速度をvとした場合、サイクロトロン運動のラーモア半径(Larmor radius)rLは、rL=mv/qBと表される。mは荷電粒子の質量、qはその電荷量、Bは磁束密度である。このラーモア半径がスパッタリングターゲットと基板間距離より小さい場合は、磁力線により荷電粒子が捕獲される事が期待される。そのような条件を満たす様にマグネットの仕様や配置関係を設計する事が必要である。具体的には、γ電子が基板に垂直な方向に50eVのエネルギーを持っていて、基板間距離130mmとした場合、ラーモア半径がこの距離と同等になる為の磁束密度Bは、B=mv/qrLから、必要な磁束密度は1.8×10-4 Wb/m2となる。これは市販されている永久磁石でも容易に作り出すことができる条件である。
【0036】
マグネットとしては、公知の永久磁石を用いることができる。マグネットの形状としては円錐状であることが望ましい。円錐状である事が望ましい理由は、静電誘導現象を利用して効率よくプラズマ電子を捕獲することができるためである。
【0037】
図2に発明の透明導電膜形成方法における基板周辺部の説明図を示した。基板(1)はマスク(17)及びマスクフレーム(19)とマグネットホルダー(16)によって挟まれ、密着した構造となっている。基板(1)は、マスクと密着した面に透明導電膜がマスクの開口形状に応じて、パターニングされる。本発明の透明導電膜形成方法にあっては、透明導電膜形成中に基板がペルチェ素子(15)によって冷却されている。ペルチェ素子は、マグネットホルダー上に設けられる。
【0038】
ペルチェ素子はかつ真空下で密着基板上部に据付けることで容易に基板及びマスク冷却が可能となる半導体素子である。ペルチェ素子を設けるにあっては装置の大幅改造が不必要であり、簡単に基板及びマスクを冷却することができる。例えば、有機電界発光素子において有機発光層等が設けられた基板に対して透明電極を設ける場合、プラズマの輻射熱等により基板温度が上昇することにより、基板上に設けられた有機発光層の特性が劣化する場合がある。また、マスク温度が上昇した場合には、マスク材料の熱膨張によりマスクと透明電極が設けられる基板の間でズレが生じてしまい、正確な透明電極パターンを形成することが困難となる場合がある。ペルチェ素子により基板及びマスクを冷却することによりこれらの問題の発生を防ぐことができる。
【0039】
図3にペルチェ素子の説明断面図を示した。図3に示したとおり、ペルチェ素子はセラミック基板(21)間にP型半導体(23a)、N型半導体(23b)を金属電極(22)を介して交互にΠ型に配列したものである。P型半導体とN型半導体を交互に用いると、P型の熱電能はプラス、N型の熱電能はマイナスの符号を持ち、その相対熱電能は非常に大きいので、大きな熱電効果が得られることになる。
【0040】
次に、本発明の有機電界発光素子の製造方法について述べる。本発明の有機電界発光素子においては、基材上に第一電極、有機発光層、第二電極がこの順に設けられている。また、第一電極・第二電極間には発光補助層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等が必要に応じて設けられる。また、基材上に設けられた第一電極、有機発光層、第二電極は、両電極及び有機発光層等を環境中の水分等から保護することを目的として、封止される。封止としては、ガラスキャップ、金属キャップを基材と貼り合わせる方法や、第一電極、有機発光層、第二電極が設けられた基材を、バリア層等により被覆する方法を用いることができる。
【0041】
また、第一電極及び第二電極の一方は陽極であり、もう一方が陰極となる。有機電界発光素子とは、電極間に電流を流すことにより有機発光層を発光させるものであるが、発光した光を基材側から取り出す方式をボトムエミッション方式、基材と反対側から取り出す方式をトップエミッション方式という。ボトムエミッション方式においては、有機発光層を基準として基材側の層は有機発光層で発光した光を透過させるために透明とする必要がある。すなわち、基材及び第一電極は透明性を有する必要がある。一方、トップエミッション方式の有機電界発光素子においては、有機発光層を基準として基材と反対側の層は有機発光層で発光した光を透過させるために透明とする必要がある。すなわち、第二電極は透明性を有する必要があり、また、封止によって光が遮断されないようにする必要がある。
【0042】
図4にトップエミッション方式の有機電界発光素子の説明断面図を示した。基材(25)上には、第一電極として反射電極(26)がパターン形成され、反射電極(26)間には隔壁(27)が形成され、反射電極(26)上に正孔輸送層(28)、有機発光層(29a、29b、29c)がこの順で設けられ、更に有機発光層(29a、29b、29c)上に電子注入性保護層(32)、第二電極として透明電極(33)が設けられている。そして、反射電極(26)、隔壁(27)、正孔輸送層(28)、有機発光層(29a、29b、29c)、電子注入性保護層(32)、透明電極(33)が設けられた基材は、バリア層(34)、樹脂層(35)、封止基材(36)で封止されている。また、反射電極、隔壁、正孔輸送層、有機発光層、電子注入性保護層、透明電極が設けられた基材を、乾燥剤としてCaOを成膜したガラス基板と直接貼り合わせ、封止しても良い。
【0043】
本発明のトップエミッション型有機電界発光素子において、基材(25)としては、ガラス基材やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。プラスチックフィルムを用いれば、巻き取りにより有機電界発光素子の製造が可能となり、安価に素子を提供できる。そのプラスチックフィルム材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、電極を成膜しない側にセラミック蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等の他のガスバリア性フィルムを積層しても良い。また、有機電界発光素子をアクティブマトリクス方式の有機電界発光素子とする場合、基板は薄膜トランジスタ(TFT)を備えたTFT基材を用いる必要がある。
【0044】
有機電界発光素子の駆動方法としては、パッシブマトリクス方式とアクティブマトリクス方式があるが、本発明の有機電界発光素子はパッシブマトリクス方式の有機電界発光素子、アクティブマトリクス方式の有機電界発光素子のどちらにも適用可能である。パッシブマトリクス方式とはストライプ状の電極を有機発光層を挟んで直交させるように対向させ、その交点を発光させる方式であるのに対し、アクティブマトリクス方式は画素毎にトランジスタを形成した、いわゆる薄膜トランジスタ(TFT)基板を用いることにより、画素毎に独立して発光する方式である。薄膜トランジスタ(TFT)としてはアモルファスシリコンまたはポリシリコンの薄膜トランジスタ(TFT)が用いられる。
【0045】
パッシブマトリクス方式の有機電界発光素子では、走査するストライプ状の電極数が大きくなるほど各画素における点灯時間は短くなるため、ON状態では瞬間発光輝度を大きくする必要がある。瞬間発光輝度を大きくした場合には素子寿命が低下するので、走査するストライプ上の電極数が数百〜千数百本も必要な大容量ディスプレイには適さない。対して、各アクティブマトリクス方式の有機電界発光素子では、画素毎にスイッチング素子とメモリ素子(アクティブ素子)を設けているため、1回の走査周期の間動作状態を保持することができるため、ディスプレイを大型化しても瞬間発光輝度は小さくても良く、耐久性にも優れる。また、ディスプレイなどの高速応答が要求される動画表示に有利である。
【0046】
第一電極である反射電極(26)は、陽極として、Mg、Al、Cr等の金属材料を蒸着法やスパッタリング法といった真空成膜法により形成することができる。また、反射電極としては、Mg、Al、Cr等の反射電極とITO等の透明電極との2層構成としても良い。このとき、ITOは陽極界面層として設けられる。
【0047】
反射電極(26)形成後、反射電極縁部を覆うようにして反射電極間に隔壁(27)が形成される。隔壁は絶縁性を有する必要があり、感光性材料等を用いることができる。感光性材料としてはポジ型であってもネガ型であっても良く、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができ、フォトリソグラフィー法により露光工程、現像工程を経て、隔壁は形成される。
【0048】
そして、反射電極(26)上には、正孔輸送層(28)が設けられる。正孔輸送層形成材料としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等を用いることができる。PEDOT/PSSは水に溶解させ塗工液とし、スピンコート法等により基板上に塗工され、乾燥される。
【0049】
正孔輸送層(28)上には、有機発光層(29a、29b、29c)が設けられる。有機電界発光素子をフルカラー表示させる場合には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、それぞれの発光色を有する有機発光層を画素毎にパターニングする必要があり、図4においては、赤色有機発光層(29a)、緑色有機発光層(29b)、青色有機発光層(29c)を有している。有機発光層形成材料としてはポリパラフェニレンビニレン(PPV)やポリフルオレン(PF)等を用いることができる。これらの有機発光材料は、トルエン等の芳香族系有機溶媒に溶解させインキとし、印刷法を用いることにより、3色にパターニングされる。
【0050】
印刷方法としては、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法等を用いることが可能であるが、中でも凸版反転オフセット印刷法を好適に使用することができる。図6に凸版反転オフセット印刷法における印刷工程の模式図を示した。
【0051】
図6において本体フレーム(37)上にあるブラン胴(38)の周囲にはブランケット(39)が装着してある。また、(40)は印刷ステージであり、印刷時には原版である凸版(41)及び被印刷基材(43)を固定する。また、印刷ステージ(40)は本体フレーム(37)上を一軸方向に移動可能になっている。また図中に示す(42)はインキである。被印刷基材には、基材上に第一電極、隔壁、正孔輸送層が予め形成されている。
【0052】
印刷ステージ(40)上には凸版(41)が固定されており、ブランケット(39)には予めインキ(42)が図示しないインキ供給手段により、カーテンコート法、バーコート法、ワイヤーコート法、スリットコート法等のコーティングを用いて塗布されている(図6(a))。印刷ステージ(40)が移動しブラン胴を回転させることにより、ブランケット(39)上のインキ膜を所望のパターンのネガパターンである凸版(41)により除去され、ブランケット上のインキが所望のパターンにパターン化される(図6(b))。ついで、印刷ステージ(40)が移動しブラン胴を回転させることにより、被印刷基材(43)上にブランケット上のインキパターンが転移し、印刷工程を終了する(図6(c)、(d))。
【0053】
なお、凸版反転オフセット印刷装置は、ブラン胴が固定され、凸版及び被印刷基材を備えたステージが移動する方式であるが、本発明の凸版反転オフセット印刷装置は、印刷時においてステージが固定されブラン胴が移動する方式であっても構わない。
【0054】
本発明における印刷用ブランケットとしては、高分子フィルムやゴムのようにある程度の柔軟性を有する材料で構成されることが好ましく、シリコーンゴムを用いることができる。
【0055】
またもう一つの好適な印刷方法として、凸版印刷法を採用することができる。凸版印刷法により被印刷基板表面にインキパターンを形成する印刷物の製造方法について示す。図7に本発明の印刷物の製造に用いられる凸版印刷装置の概略図を示した。ステージ107には被印刷基板106が固定されており、印刷用凸版104は版胴105に固定され、印刷用凸版104はインキ供給体であるアニロックスロール103と接しており、アニロックスロール103はインキ補充装置101とドクター102を備えている。
【0056】
まず、インキ補充装置101からアニロックスロール103へインキを補充し、アニロックスロール103に供給されたインキ108のうち余分なインキは、ドクター102により除去される。インキ補充装置101には、滴下型のインキ補充装置、ファウンテンロール、スリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクター102にはドクターブレードの他にドクターロールといった公知の物を用いることもできる。また、アニロックスロール103は、ク
ロム製やセラミックス製のものを用いることができる。また、印刷用凸版へのインキ供給体としてシリンダー状のアニロックスロールではなく、平版のアニロックス版を用いることも可能である。平版のアニロックス版は、例えば、図7の被印刷基板106の位置に配置され、インキ補充装置によりアニロックス版全面にインキを補充した後、版胴を回転させることにより被印刷基板へのインキの供給をおこなうことができる。
【0057】
印刷用凸版へのインキ供給体であるアニロックスロール103表面にドクターによって均一に保持されたインキは、版胴105に取り付けられた印刷用凸版104の凸部パターンに転移、供給される。そして、版胴105の回転に合わせて印刷用凸版104の凸部パターンと基板は接しながら相対的に移動し、インキ108はステージ107上にある被印刷基板106の所定位置に転移し被印刷基板にインキパターン108aを形成する。被印刷基板にインキパターンが設けられた後は、必要に応じてオーブンなどによる乾燥工程を設けることができる。
【0058】
なお、印刷用凸版上にあるインキを被印刷基板に印刷するときにおいては、版胴105の回転にあわせ被印刷基板106が固定されたステージ17を移動させる方式であってもよいし、図7上部の版胴105、印刷用凸版104、アニロックスロール103、インキ補充装置101からなる印刷ユニットを版胴の回転に合わせ移動させる方式であってもよい。また、本発明の印刷用凸版は版胴15上に樹脂層を形成し、直接製版し、凸部パターンを形成してもよい。
【0059】
なお、図7は1枚毎に被印刷基板にインキパターンを形成する枚葉式の凸版印刷装置であるが、本発明の印刷物の製造方法にあって被印刷基板がウェブ状で巻き取り可能である場合には、ロール・ツゥー・ロール方式の凸版印刷装置を用いることもできる。ロール・ツゥー・ロール方式の凸版印刷装置を用いた場合には連続してインキパターンを形成することが可能となり、製造コストを低くすることが可能となる。
【0060】
次に、有機発光層(29a、29b、29c)上に電子注入性保護層(32)を設ける。電子注入性保護層形成材料としては、CaやBa等の低仕事関数である希土類元素を用いることができ、これらの希土類元素を真空蒸着法により成膜し、電子注入性保護層を形成する。
【0061】
次に、電子注入性保護層(32)上に陰極として透明電極(33)を設ける。透明電極の形成にあっては、先程示した本発明の透明導電膜形成方法を用いることができる。トップエミッション型の有機電界発光素子においては、透明電極を形成する際に本発明の透明導電膜形成方法を好適に用いることができる。本発明の透明導電膜形成方法は、スパッタリング法で成膜する際に、有機発光層といった有機薄膜へのダメージを低減させることができるため、発光特性の優れた有機電界発光素子を得ることができる。また、本発明の透明導電膜形成方法は成膜中のパターニング用マスクの温度上昇を抑えることができる。従って、マスクの熱膨張や熱変形を抑えることができ、透明電極を正確にパターニングすることも可能となる。なお、本発明の有機電界発光素子は、反射電極を陰極、透明電極を陽極としても良い。
【0062】
次に、反射電極(26)、隔壁(27)、正孔輸送層(28)、有機発光層(29a、29b、29c)、電子注入性保護層(32)、透明電極(33)が形成された基材(25)に対し、封止を行う。まず、基材(25)全体にバリア層(34)を形成する。
【0063】
バリア層(34)としては、窒化珪素膜、酸化珪素膜、窒化酸化珪素膜等を用いることができる。バリア膜はCVD法により形成される。CVD法は膜にしたい元素を含む気化させた化合物(ソースガス)をそのまま、あるいは水素・窒素などのキャリアガスと混ぜ
、高温加熱した基板表面にできるだけ均一になるように送り込み、基板表面で分解、還元、酸化、置換などの化学反応を起こさせ、基材上に薄膜を作る方法である。
【0064】
更に、バリア層(34)が設けられた基材は、樹脂層(35)を介して、封止基板(36)と貼り合わされる。封止基板(36)としては、透明性を有していれば良く、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラスやプラスチック材料を用いることができる。または、上記ガラスにCaOを形成した基材を封止基材として、両者を貼り合わせしても良い。これにより、乾燥剤を挿入せず封止を行うことが可能である。また、ガラスを直接、基材上部に貼り合わせすることから、封止基材での光吸収やキャップ構造のガラスを用いた場合に生じる光路長の変化が起きず、光取り出し効率を向上させることもできる。樹脂層(35)としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EEA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることもできる。
【0065】
貼り合わせ方法については、加熱したロールによる圧着による方法を用いることができる。また、樹脂層として光硬化型接着性樹脂を用いた場合には、紫外光等を照射することにより貼り合わせることができる。
【0066】
また、本発明の有機電界発光素子においては、基材及び封止基材に可とう性のあるプラスチック基材を用いることにより、フレキシブル有機電界発光素子とすることができる。
【0067】
また、本願発明の有機電界発光素子においては、両電極を透明電極とし、基材を透明基材とし、封止を透明材料により行うことにより、透明有機電界発光素子とすることができる。図5に透明有機電界発光素子の説明断面図を示した。図5では、透明基材(25)上に第一電極として透明電極(26)が形成され、更に図4と同様に、隔壁(27)、正孔輸送層(28)、有機発光層(29a、29b、29c)、電子注入性保護層(32)、透明電極(33)が形成されている。更に、透明性を有するバリア層(34)、樹脂層(35)、封止基材(36)によって封止されている。透明有機電界発光素子においては、基板側、基板と反対側の両面から画像を表示することが可能となる。
【実施例】
【0068】
基板としてガラス基板を用い、基板上に陽極である反射電極としてCr、陽極界面層としてITOをスパッタリング法により積層形成した。得られた基板上のCr及びITOの積層膜はフォトリソ法によりパターニングを行い、ストライプパターンとした。次に、ストライプ状のCrの端部を覆うように、ポリイミド材料を用い、フォトリソ法により隔壁を形成した。次に、正孔輸送材料としてPEDOT/PSSを用い、これを水に溶解し塗工液とし、スピンコート法により正孔輸送層を形成した。
【0069】
次に、ポリフルオレン(PF)からなる緑色有機発光材料を用い、この緑色有機発光材料をトルエンに溶解しインキとし、凸版反転オフセット印刷法によりストライプ状に有機発光層を形成した。次に、蒸着法により有機発光層上にCa、Alからなる電子注入性保護層を、陽極のCrストライプパターンと直交するようにマスクを用いて成膜した。
【0070】
次に、本発明の透明導電膜形成方法を用いて透明電極を形成した。スパッタリング装置としては、DCマグネトロンスパッタリング装置を用いた。このとき、DCマグネトロンスパッタリング装置内には基板とターゲット間にマグネットからなるピンを備えたステンレス製の円形トラップを設け、また、基板上と接触するようにマスクを設け、マスクはマグネットホルダーにより固定した。また、基板の透明電極成膜面と反対側にはペルチェ素
子を設けた。スパッタリング条件は、ガス圧力が1.0Pa、ガス流量比がAr/O2=100/1.0、放電パワー密度が0.21W/cm2、ターゲット−基板間距離が130mmである。このとき、透明電極であるITOは電子注入性保護層と重なり、反射電極であるCrのストライプパターンと直交するように150nmの膜厚となるように設けた。なお、スパッタリング成膜中においてのマスク温度は50℃であった。
【0071】
次に、有機電界発光素子の発光領域全面にCVD法により酸化珪素膜を設け、更にCaO膜を介してガラス基板と貼り合わせることにより封止を行い、トップエミッション型有機電界発光素子を得た。
【0072】
得られた有機電界発光素子の素子特性は、最高輝度が2000cdm-2、最大電流効率は2.2cdA-1である。
(比較例)
実施例と同様に反射電極、隔壁、正孔輸送層、有機発光層、電子注入性保護層を形成したガラス基板に対し、実施例と同様にDCマグネトロンスパッタリング装置を用い、透明電極の成膜を行った。但し、DCマグネトロンスパッタリング装置において、ターゲットと基板間に円形トラップを設けなかった。更に、基板に対してペルチェ素子も設けなかった。なお、スパッタリングに際し、この他のスパッタリング条件は実施例と同じである。
【0073】
このとき、スパッタリング中のマスク温度は60℃であり、実施例1と比較して10℃程度高い結果となった。また、透明電極が形成された基板に対し、実施例と同様に封止を行い、有機電界発光素子を得た。得られた有機電界発光素子の最高輝度は200cdm-2、であり、最大電流効率は0.05cdA-1であった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は本発明の透明導電膜形成に用いるDCマグネトロンスパッタ装置の模式図である。
【図2】図2は本発明の透明導電膜形成方法における基板周辺部の説明図である。
【図3】図3はペルチェ素子の説明断面図である。
【図4】図4はトップエミッション型有機電界発光素子の説明断面図である。
【図5】図5は透明有機電界発光素子の説明断面図である。
【図6】図6は本発明の凸版反転オフセット印刷法による印刷工程の模式図である。
【図7】図7は本発明の凸版印刷法による印刷工程の模式図である。
【符号の説明】
【0075】
1 基板
2 トラップ電極
3 マグネットピン
4 2点極性切替機構(トラップ)
5 プラズマ
6 γ電子
7 Arイオン
8 磁力線
9 電子捕獲軌道(ラーモア半径)
10 ターゲット
11 バッキングプレート(OFC)
12 カソードマグネット
13 チラー
14 アース
15 ペルチェ素子
16 マグネットホルダー
17 マスク
17a マスクの開口部
19 マスクフレーム
20 リード線
21 セラミック基板
22 金属電極
23a P型半導体
23b N型半導体
25 基材
26 反射電極(第一電極)
27 隔壁
28 正孔輸送層
29a 赤色(R)有機発光層
29b 緑色(G)有機発光層
29c 青色(B)有機発光層
32 電子注入性保護層
33 透明電極(第二電極)
34 バリア層
35 樹脂層
36 封止基材
37 本体フレーム
38 ブラン胴
39 ブランケット
40 印刷ステージ
41 凸版
42 インキ
43 被転写基板
L 発光
101 インキ補充装置
102 ドクター
103 アニロックスロール
104 印刷用凸版
105 版胴
106 被印刷基板
107 ステージ
108 インキ
108a インキパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にマスクを設け、スパッタリング法により基板上に透明導電膜をパターン形成する透明導電膜形成方法において、ターゲットと基板間にマグネットからなるピンを備えたトラップ電極を設け、スパッタリング法により前記基板上にターゲット形成材料からなる透明導電膜をパターン形成することを特徴とする透明導電膜形成方法。
【請求項2】
前記マグネットが円錐形状であり、該マグネットを該トラップ電極外周部に円をなすように複数本並べ、且つ前記マグネットの極性を、トラップ電極面内に磁力線が張り巡らされるように配向させることを特徴とする請求項1記載の透明導電膜形成方法。
【請求項3】
前記マグネット付トラップ電極に電圧を印加することで、静電引力によりマグネット先端にプラズマ荷電粒子を引き付け、荷電粒子の極性を中和させる、若しくはトラップ電極面内に張り巡らされるように配向させた磁力線にプラズマ荷電粒子を引き付けることを特徴とする請求項2記載の透明導電膜形成方法。
【請求項4】
透明導電膜形成中に、前記基板がペルチェ素子によって冷却されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の透明導電膜形成方法。
【請求項5】
基材上に第一電極と有機発光層と第二電極を少なくともこの順に備え、電極間に電流を流すことにより有機発光層を発光させる有機電界発光素子の製造方法において、第一電極若しくは第二電極の少なくとも一方を請求項1乃至4のいずれかに記載の方法によりパターン形成することを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項6】
基材上に反射電極と有機発光層と透明電極を少なくともこの順に備え、電極間に電流を流すことにより有機発光層を発光させるトップエミッション型有機電界発光素子の製造方法において、透明電極を請求項1乃至4のいずれかに記載の方法により形成することを特徴とするトップエミッション型有機電界発光素子の製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の有機電界発光素子の製造方法において、前記有機発光層形成材料を溶媒に溶解または分散させインキとする工程と、該インキを用いて凸版反転オフセット印刷法により基材上に有機発光層を形成する工程を備えることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項8】
請求項5または請求項6に記載の有機電界発光素子の製造方法において、前記有機発光層形成材料を溶媒に溶解または分散させインキとする工程と、該インキを用いて凸版印刷法により基材上に有機発光層を形成する工程を備えることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。
【請求項9】
請求項5または請求項6または請求項7または請求項8に記載の有機電界発光素子の製造方法において、前記有機発光層及び電極を形成した基材上に、ガラスにCaOを形成した基材を封止基材として、両者を貼り合わせすることを特徴とする有機電界発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−27648(P2008−27648A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196688(P2006−196688)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】