説明

通信システム、通信方法、中継装置およびその処理方法とプログラム

【課題】複数の下位装置全体での単位時間当たりのデータ通信量を増やすことができる通信システムを提供する。
【解決手段】複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りのデータ通信を上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置が、複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りのデータ通信を上位中継装置へ中継する第2の中継装置が上りのデータ通信を行っているかを判定する。そして、第2の中継装置が上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信する。また第1の中継装置は、第2の中継装置が上りのデータ通信を行っていると判定した場合には、接続された下位装置へ通信中断指示情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ通信の川上に位置する上位装置と、データ通信の川下に位置する複数の下位装置との間の通信を制御する通信システム、通信方法、中継装置およびその処理方法とプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)におけるTCPを通信プロトコルとして用いたデータ通信では、通信先からのACK(Acknowledgement信号)の返信なしに一度に送信できる送信データ量をウィンドウサイズにより管理している。このウィンドウサイズは、送信元装置が送信するデータパケット内にも格納される情報でもあり、最大のウィンドウサイズ(送信可能データ量)から、送信済みのデータ量を徐々に減じてパケット内に格納する。そして、送信元装置は、そのウィンドウサイズが0になった場合には、既に送信済みのパケットに対するACKを受信しなければ、次のパケットを送信することができない。
なお、関連する技術として、TCPの通信において、コストを抑えながらフレームの高速転送を可能とする通信システムの技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第06/093021号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなTCPを通信プロトコルとして用いた人工衛星通信について考える。現在用いられている人口衛星を用いた通信システムでは、例えば、洋上と陸との通信システムがある。この通信システムでは、データ通信の川上に位置する陸側の上位装置と、データ通信の川下に位置する複数の洋上艦それぞれに設置された下位装置とを有しており、上位装置から複数の下位装置への下りのデータ通信にはブロードバンド(1対N通信)を用い、また、下位装置から上位装置への上りのデータ通信に1対1通信を用いている。
【0005】
ここで、この通信システムでは、洋上の下位装置から上位装置に対して通信を行った場合、下位装置から上位装置に対しては1対1通信であるため、他の洋上艦に備えられている下位装置は、現在通信を行っている下位装置が通信を中止するまで、上位装置との間で通信することができない。従って、このような通信システムにおいて、複数の下位装置全体での単位時間当たりのデータ通信量を増やすことが望まれている。
【0006】
そこでこの発明は、データ通信の川上に位置する上位装置と、データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを有し、上位装置から下位装置への下りのデータ通信にブロードバンドを用い、下位装置から上位装置への上りのデータ通信に1対1通信を用いる通信システムにおいて、複数の下位装置全体での単位時間当たりのデータ通信量を増やすことができる通信システム、通信方法、中継装置およびその処理方法とプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムであって、前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置が、前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定する他装置通信有無判定手段と、前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信する通信開始可能情報送信手段と、を備えることを特徴とする通信システムである。
【0008】
また本発明は、上述の通信システムにおいて、前記第1の中継装置が、前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていると判定した場合には、前記接続された下位装置へ通信中断指示情報を送信する通信中断指示情報送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述の通信システムにおいて、前記第1の中継装置の前記通信開始可能情報送信手段は、前記第2の中継装置が前記上位中継装置へ送信しているデータ通信におけるパケット内に格納されたウィンドウサイズを検出し、当該ウィンドウサイズが0となったこと、または前記第2の中継装置がウィンドウサイズ0を当該第2の中継装置に接続された下位装置へ送信したことを検出した場合に、前記通信開始可能情報を前記接続された下位装置へ送信することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述の通信システムにおいて、前記第1の中継装置の前記通信開始可能情報送信手段は、前記上位中継装置へ送信しているデータ通信におけるパケット内に格納されたウィンドウサイズを検出し、当該ウィンドウサイズが0となった場合に、接続された下位装置へ前記通信開始可能情報を送信することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上述の通信システムにおいて、前記通信開始可能情報は前記ウィンドウサイズ0を示す情報であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、上述の通信システムにおいて、前記第1の中継装置に接続された下位装置は、前記通信中断指示情報の受信に基づいて前記データ通信を中断するデータ通信中断手段と、その後の前記通信開始可能情報の受信に基づいて、中断した前記データ通信を再開するデータ通信再開手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムにおける通信方法であって、前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置の他装置通信有無判定手段が、前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定し、前記第1の中継装置の通信開始可能情報送信手段が、前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信することを特徴とする通信方法である。
【0014】
また本発明は、データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムの、前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置であって、前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定する他装置通信有無判定手段と、前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信する通信開始可能情報送信手段と、を備えることを特徴とする中継装置である。
【0015】
また本発明は、データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムの、前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置の処理方法であって、前記第1の中継装置の他装置通信有無判定手段が、前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定し、前記第1の中継装置の通信開始可能情報送信手段が、前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信することを特徴とする処理方法である。
【0016】
また本発明は、データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムの、前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置のコンピュータを、前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定する他装置通信有無判定手段、前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信する通信開始可能情報送信手段、として機能させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、端末にウィンドウサイズ0または0以外の情報を衛星GW装置から通知するだけでデータ通信の中断や再開を制御することができる。
また、複数の下位装置のうちのデータ通信を行った下位装置がACKの受信を待っている間に、他の下位装置がデータ通信の再開を行うことができるため、複数の下位装置についての単位時間のデータ通信量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】衛星GW装置B−2,C−2の機能構成を示すブロック図である。
【図3】通信システムの処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態による通信システムを図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による通信システムの構成を示すブロック図である。
この図において、符号1は人工衛星である。そして本実施形態における通信システムは、人工衛星1を介して、陸上に設置されたデータ通信の川上に位置する端末A−1,A−2(上位装置)と、複数の洋上艦それぞれに設置されたデータ通信の川下に位置する端末B−1(データ通信中断手段、データ通信再開手段),端末C−1(データ通信中断手段、データ通信再開手段)とを有しており、端末A−1,A−2から端末B−1,端末C−1への下りのデータ通信にはブロードバンド(1対N通信)を用い、また、端末B−1,端末C−1から端末A−1,A−2への上りのデータ通信に1対1通信を用いるものとする。また、端末A−1,A−2は衛星GW装置A(上位中継装置)と接続されており、端末A−1,A−2からの下りのデータ通信は、この衛星GW装置Aが中継する。なお端末A−1,端末A−2,衛星GW装置Aのまとまりを陸上側通信機材(地球局A)と呼ぶこととする。また端末B−1は衛星GW装置B−2と接続されており、端末B−1からの上りのデータ通信は、この衛星GW装置B−2が中継する。端末B−1,衛星GW装置B−2のまとまりを地球局B局機材と呼ぶこととする。また端末C−1は衛星GW装置C−2と接続されており、端末C−1からの上りのデータ通信は、この衛星GW装置C−2が中継する。端末C−1,衛星GW装置C−2のまとまりを地球局C局機材と呼ぶこととする。
【0020】
図2は同実施形態による衛星GW装置B−2,C−2の機能構成を示すブロック図である。
この図が示すように、川下装置である端末B−1,端末C−1にそれぞれ接続されている衛星GW装置B−2,C−2は、データ送受信部11、他装置通信有無判定部12(他装置通信有無判定手段)、Window更新通知送信部13(通信開始可能情報送信手段、通信中継指示情報送信手段)、記憶部14を備えている。
データ送受信部11は、端末から送信されたデータを受信して、人工衛星1へ転送する処理部である。
また他装置通信有無判定部12は、他の衛星GW装置のデータ通信の有無を判定する処理部である。
またWindow更新通知送信部13は、自装置に接続されている端末に対して、ウィンドウサイズを格納したWindow更新通知を生成して端末へ送信する処理部である。
また記憶部15は、各種情報を記憶している。
【0021】
そして、本実施形態における通信システムは、複数の洋上艦それぞれに設置された端末のうち、一つの洋上艦に設置された端末からの上りのデータ通信を当該端末に接続された衛星GW装置が、端末A−1または端末A−2に接続された衛星GW装置Aへ中継送信し、当該衛星GW装置は、複数の洋上艦それぞれに設置された端末のうち、他の洋上艦に設置された端末からの上りのデータ通信を端末A−1または端末A−2に接続された衛星GW装置Aへ中継する他の衛星GW装置が、その端末A−1または端末A−2に接続された衛星GW装置Aに対してデータ通信を行っているかを判定する。そして、衛星GW装置は、他の衛星GW装置が、端末A−1または端末A−2に接続された衛星GW装置Aに対して上りのデータ通信を行っていないと判定した場合、または、当該他の衛星GW装置が、端末A−1または端末A−2に接続された衛星GW装置Aに対して行っているデータ通信のウィンドウサイズが0となった場合に、接続された端末へウィンドウサイズが0を示すWindow更新通知を送信する。
これにより、本実施形態における通信システムでは、データ通信の川上に位置する上位装置と、データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを有し、上位装置から下位装置への下りのデータ通信にブロードバンドを用い、下位装置から上位装置への上りのデータ通信に1対1通信を用いる通信システムにおいて、複数の下位装置全体での単位時間当たりのデータ通信量を増やす処理を行う。
【0022】
図3は本実施形態による通信システムの処理フローを示す図である。
次に、本実施形態における通信システムの処理フローの詳細について説明する。
図3の処理フローにおいては、破線が地球局B側の通信フローを示し、実線が地球局C側の通信フローを示している。
まず、洋上艦Bに設置されている端末B−1が、衛星GW装置B−2、人工衛星1、衛星GW装置Aを介して端末A−1とデータ通信を行っているとする。この場合、衛星GW装置B−2は、端末B−1からPUSHフラグを付与されたパケットを受信し、衛星GW装置Aへ送信する(ステップS1)。このとき、衛星GW装置B−2のWindow更新通知送信部13は、当該送信したPUSHフラブの付与されたパケットのデータ量を算出し、端末B−1の送信するデータ通信における規定のパケットのウィンドウサイズが示すデータ量から前記算出したデータ量を順に削除した値を、一連のパケットを識別するための識別情報(IPヘッダなどに格納されている)に対応付けて、記憶部15などに記憶しておく。また、陸上側の衛星GW装置Aは、PUSHフラグの付与された各パケットを受信し、当該各パケットに対するACKパケットを送信する(ステップS2)。
【0023】
上記ステップS1の、PUSHフラグの付与されたパケットを衛星GW装置B−2が衛星GW装置Aへ送信している間に、洋上艦Cに設置されている端末C−1が通信を開始したとする(ステップS3)。この通信開始によるSYNパケットは、当該端末C−1に接続されている衛星GW装置C−2が受信する。また、SYNパケットに基づく、端末C−1と衛星GW装置C−2との間のSYN−ACK,ACKの3ハンドシェイクの各パケットが、端末C−1と衛星GW装置C−2の間で送受信される。そして、その後、端末C−1がPUSHフラブを付与したパケットを衛星GW装置C−2へ送信する(ステップS4)。衛星GW装置C−2のデータ送受信部11は、PUSHフラグが付与されたパケットを受信する。
【0024】
衛星GW装置C−2では、PUSHフラブの付与された1つ目のパケットを受信すると、他装置通信有無判定部12が、他の衛星GW装置B−2と衛星GW装置Aとの間でデータ通信を行っているか否かを判定する。この判定は、例えば、衛星GW装置B−2から無線送信されたデータ通信を傍受すればよい。そして、衛星GW装置B−2と衛星GW装置Aとの間で、データ通信を行っていると判定した場合には、衛星GW装置C−2のWindow更新通知送信部13は、PUSHフラブの付与したデータ通信の中断を端末C−1に指示するための、ウィンドウサイズ0を示すWindow更新通知(通信中断指示情報)を生成し、端末C−1へ送信する(ステップS5)。なお、衛星GW装置C−2の他装置通信有無判定部12は、端末C−1からのデータ通信の要求を中断したことを示す中断情報を記憶部14等に格納して記憶しておく。また、衛星GW装置C−2のデータ送受信部11は、PUSHフラブの付与されたパケットはその中継を中断するものの、端末C−1からのデータ通信の要求に基づいて、SYNフラブの付与したパケットを衛星GW装置Aへ送信して、衛星GW装置Aとの間で3ハンドシェイク(ステップS6−1〜ステップS6−3)のパケットの送受信を行って、端末C−1からのデータ通信の開始に基づくTCP接続を確率しておく。
【0025】
次に、ステップS2の処理によるACKを衛星GW装置B−2が受信すると、当該衛星GW装置B−2のWindow更新通知送信部13は、ステップS1によるパケットの送信に基づいて、自装置の記憶部15において更新された、該パケットの識別情報に対応付けられているウィンドウサイズを読み取り、そのウィンドウサイズを格納したWindow更新通知(通信開始可能情報)を端末B−1へ送信する(ステップS7)。今、このWindow更新通知に格納されているウィンドウサイズは0以外であるとする。すると、端末B−1は、ウィンドウサイズが0でないため、ACKの受信なしのデータ送信の継続が可能と判断し、データ通信において未送信のデータのパケットにPUSHフラブを付与して、衛星GW装置B−2へ送信する(ステップS8)。そして、該衛星GW装置B−2のデータ送受信部11がPUSHフラブの付与されたパケットを衛星GW装置Aへ送信する(ステップS9)。衛星GW装置B−2のWindow更新通知送信部13は、衛星GW装置Aへ送信したPUSHフラブ付きのパケットのデータ量を算出し、記憶部14において当該パケットの識別情報に対応付けて記録されているウィンドウサイズから削除して更新する。このとき、ウィンドウサイズが0になったものとする。
【0026】
端末B−1が衛星GW装置B−2を介して行っているデータ通信のウィンドウサイズが0になった場合、当該衛星GW装置B−2のWindow更新通知送信部13は、ウィンドウサイズ0を示すWindow更新通知(通信中断指示情報)を生成し、端末B−1へ送信する(ステップS10)。つまり、衛星GW装置B−2は端末B−1にデータ通信の中断を指示する。そして、この時、他の衛星GW装置C−2は、衛星GW装置B−2のデータ通信においてウィンドウサイズが0になったことを検出する。この検出手法は、例えば、衛星GW装置B−2が衛星GW装置A宛てに送信しているパケットを衛星GW装置C−2の他装置通信有無判定部12が傍受して、該他装置通信有無判定部12が、当該パケットのヘッダに格納されているウィンドウサイズを読み取ることにより行うことができる。そして、衛星GW装置C−2の他装置通信有無判定部12は、記憶部14に、接続された端末C−1からのデータ通信の要求を中断したことを示す情報が記録されているかを判定する。衛星GW装置C−2の他装置通信有無判定部12は、衛星GW装置B−2が行うデータ通信において、ウィンドウサイズが0に達し、また、記憶部14に、端末C−1からのデータ通信の要求を中断したことを示す情報が記録されている場合には、端末C−1からのデータ通信において規定されたウィンドウサイズ(0以外)を示すWindow更新通知(通信開始可能情報)を端末C−1へ送信する(ステップS11)。それ以外の場合には、衛星GW装置B−2の送信するデータ通信の傍受を再開する。なお、ステップS10の中断の指示に基づき、衛星GW装置B−2の他装置通信有無判定部12は、衛星GW装置C−2の送信するデータ通信の傍受を開始する。
【0027】
端末C−1は、衛星GW装置C−2より0以外のウィンドウサイズを示すWindow更新通知を受信した場合には、ステップS5のWindow更新通知に基づいて中断していたデータ通信を再開し、PUSHフラブを付与したパケット(端末A−2宛て)を、衛星GW装置C−2へ送信する(ステップS12)。すると、衛星GW装置C−2のデータ送受信部11は、受信したパケットを衛星GW装置Aへ送信する(ステップS13)。ここで、衛星GW装置C−2のWindow更新通知送信部13は、パケットを衛星GW装置Aへ送信する際に、当該送信したPUSHフラブの付与されたパケットのデータ量を算出し、端末C−1によるデータ通信において規定されているパケットのウィンドウサイズが示すデータ量から前記算出したデータ量を順に削除した値を、一連のパケットを識別するための識別情報(IPヘッダなどに格納されている)に対応付けて、記憶部15などに記憶しておく。そして、このときウィンドウサイズ(規定のパケットのウィンドウサイズが示すデータ量から順に削除した値)が0に達したとする。すると、衛星GW装置C−2のWindow更新通知送信部13は、ウィンドウサイズ0を示すWindow更新通知(通信中断指示情報)を生成し、端末C−1へ送信する(ステップS14)。そして、この、ウィンドウサイズ0を示すWindow更新通知の送信に基づいて、衛星GW装置C−1の他装置通信有無判定部12は、端末C−1からのデータ通信の要求を中断したことを示す中断情報を記憶部14等に格納して記憶しておく。そして、この中断に基づき衛星GW装置C−2の他装置通信有無判定部12は、衛星GW装置B−2の送信するデータ通信の傍受を開始する。
【0028】
ここで、衛星GW装置C−2がステップS13の処理おいてパケットを衛星GW装置へ送信している間に、ステップS9で衛星GW装置B−2が衛星GW装置Aへ送信したパケットのACKが、当該衛星GW装置Aから衛星GW装置B−2へ送信されたとする(ステップS15)。このとき、衛星GW装置B−2の他装置通信有無判定部12は、衛星GW装置C−2が衛星GW装置A宛てに送信しているパケットを傍受して、当該パケットのヘッダに格納されているウィンドウサイズを読み取ることにより、衛星GW装置C−2のデータ通信においてウィンドウサイズが0になったことを検出する。そして、衛星GW装置B−2の他装置通信有無判定部12は、記憶部14に、接続された端末B−1からのデータ通信の要求を中断したことを示す情報が記録されているかを判定する。衛星GW装置B−2の他装置通信有無判定部12は、衛星GW装置C−2が行うデータ通信において、ウィンドウサイズが0に達し、また、記憶部14に、端末B−1からのデータ通信の要求を中断したことを示す情報が記録されている場合には、端末B−1からのデータ通信において規定されたウィンドウサイズ(0以外)を示すWindow更新通知(通信開始可能情報)を端末B−1へ送信する(ステップS16)。それ以外の場合には、衛星GW装置C−2の送信するデータ通信の傍受を再開する。なお、ステップS14の中断の指示に基づき、衛星GW装置C−2の他装置通信有無判定部12は、衛星GW装置B−2の送信するデータ通信の傍受を開始する。
【0029】
端末B−1は、衛星GW装置B−2より0以外のウィンドウサイズを示すWindow更新通知を受信した場合には、中断していたデータ通信を開始し、PUSHフラブを付与したパケット(端末A−1宛て)を、衛星GW装置B−2へ送信する(ステップS17)。すると、衛星GW装置B−2のデータ送受信部11は、受信したパケットを衛星GW装置Aへ送信する(ステップS18)。
【0030】
そして、衛星GW装置B−2および衛星GW装置C−2は、接続された端末からのパケットの送信が完了するまで、上述のように、PUSHフラブの付与されたパケットの送信の処理を交互に行う。
【0031】
ここで、通信信システムが、データ通信の川上に位置する上位装置(端末A−1,A−2,衛星GW装置A)と、データ通信の川下に位置する複数の下位装置(地球局B(端末B−1,衛星GW装置B−2),地球局C(端末C−1,衛星GW装置C−2))とを備え、上位装置から下位装置への下りのデータ通信にブロードバンド(1対N)を用い、下位装置から上位装置への上りのデータ通信に1対1通信を用いる図1で示すような通信システムである場合において、川下側の複数の下位装置のうちの一つが、川上側の上位装置とデータ通信している際には、通常は、他の下位装置はデータ通信中であることを検知することができない。したがって、そのような検知ができない場合には、データ通信中の下位装置以外の下位装置はデータを一時蓄積しておく機能を備えたり、1対1通信を複数回線用意する必要があった。
【0032】
しかしながら、上述の処理によれば、他の下位装置がデータ通信中かどうか、また他の下位装置によるデータ通信においてウィンドウサイズが0となったかを検知して、ウィンドウサイズが0になった場合に、自装置側の通信を開始している。
したがって、ウィンドウサイズによる制御を行うことができるため、端末にウィンドウサイズ0または0以外の情報を衛星GW装置から通知するだけでデータ通信の中断や再開を制御することができる。
また、データ通信を行った下位装置がACKの受信を待っている間に、他の下位装置がデータ通信の再開を行うことができるため、複数の下位装置についての単位時間のデータ通信量を増やすことができる。
【0033】
なお、上述の各装置は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0034】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0035】
1・・・人工衛星、A−1,A−2,B−1,B−2・・・端末、A,B−2,C−2・・・衛星GW装置、11・・・データ送受信部、12・・・他装置通信有無判定部、13・・・Window更新通知送信部、14・・・記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムであって、
前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置が、
前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定する他装置通信有無判定手段と、
前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信する通信開始可能情報送信手段と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記第1の中継装置が、
前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていると判定した場合には、前記接続された下位装置へ通信中断指示情報を送信する通信中断指示情報送信手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1の中継装置の前記通信開始可能情報送信手段は、
前記第2の中継装置が前記上位中継装置へ送信しているデータ通信におけるパケット内に格納されたウィンドウサイズを検出し、当該ウィンドウサイズが0となったこと、または前記第2の中継装置がウィンドウサイズ0を当該第2の中継装置に接続された下位装置へ送信したことを検出した場合に、前記通信開始可能情報を前記接続された下位装置へ送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記第1の中継装置の前記通信開始可能情報送信手段は、
前記上位中継装置へ送信しているデータ通信におけるパケット内に格納されたウィンドウサイズを検出し、当該ウィンドウサイズが0となった場合に、接続された下位装置へ前記通信開始可能情報を送信する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の通信システム。
【請求項5】
前記通信開始可能情報は前記ウィンドウサイズ0を示す情報であることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の通信システム。
【請求項6】
前記第1の中継装置に接続された下位装置は、
前記通信中断指示情報の受信に基づいて前記データ通信を中断するデータ通信中断手段と、
その後の前記通信開始可能情報の受信に基づいて、中断した前記データ通信を再開するデータ通信再開手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムにおける通信方法であって、
前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置の他装置通信有無判定手段が、前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定し、
前記第1の中継装置の通信開始可能情報送信手段が、前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信する
ことを特徴とする通信方法。
【請求項8】
データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムの、
前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置であって、
前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定する他装置通信有無判定手段と、
前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信する通信開始可能情報送信手段と、
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項9】
データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムの、
前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置の処理方法であって、
前記第1の中継装置の他装置通信有無判定手段が、前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定し、
前記第1の中継装置の通信開始可能情報送信手段が、前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信する
ことを特徴とする処理方法。
【請求項10】
データ通信の川上に位置する上位装置と、前記データ通信の川下に位置する複数の下位装置とを備え、前記上位装置から前記下位装置への下りの前記データ通信にブロードバンドを用い、前記下位装置から前記上位装置への上りの前記データ通信に1対1通信を用いる通信システムの、
前記複数の下位装置のうちの接続された一つの下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位装置に接続された上位中継装置へ中継送信する第1の中継装置のコンピュータを、
前記複数の下位装置のうちの接続された他の下位装置からの上りの前記データ通信を前記上位中継装置へ中継する第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っているかを判定する他装置通信有無判定手段、
前記第2の中継装置が前記上りのデータ通信を行っていないと判定した場合に、前記接続された下位装置へ通信開始可能情報を送信する通信開始可能情報送信手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−239219(P2010−239219A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82393(P2009−82393)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】