説明

通信モジュール、リーダライタ

【課題】部品を内蔵できる配線板を有する通信モジュールであって、アンテナの特性に応じて整合の調整が可能な通信モジュールおよびこれを用いたリーダライタを提供すること。
【解決手段】配線板と、配線板に備えられた通信処理用ICと、通信処理用ICに電気的に接続されて配線板に備えられた、外部に設けられるアンテナとの整合をとる整合回路と、を具備し、整合回路が、キャパシタまたはインダクタを少なくとも含む受動素子回路網の回路であり、該受動素子回路網を構成する回路エレメントのうちの少なくともひとつが、配線板に内蔵された第1の受動素子部品と、配線板の面上に実装された、該第1の受動素子部品と同じ種の受動素子部品である第2の受動素子部品との並列接続または直列接続でできた回路エレメントである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナとの整合をとる回路を含む通信モジュールおよびこれを用いたリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、近距離無線通信(NFC;near field communication)では、その応用される機器の用途から、機器に内蔵の近距離無線通信処理用の部品(アンテナやモジュール)に対し、その小型、省スペース化を求められる場合が多い。そのような要求に応えて、モジュールとして、部品内蔵配線板を利用して一部の回路部品を基板内蔵化し、小型化を図ることができる。一方、アンテナは、一般に、モジュールより大きなスペースを必要とするが、応用される機器に応じて利用可能なスペースは一定ではなく、実際の機器に応じて設計することも多く行われている。
【0003】
アンテナを駆動することになるモジュールには、アンテナの特性との整合を行う整合回路(マッチング回路)が必要になる。整合回路が配線板内蔵の回路部品により構成された場合、モジュールとしてその小型化に都合がよいが、一方で、種々のアンテナの特性に応じた整合回路とすることが、製造された配線板の段階ではできなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−235884号公報
【特許文献2】特開2003−188340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した事情を考慮してなされたもので、部品を内蔵できる配線板を有する通信モジュールであって、アンテナの特性に応じて整合の調整が可能な通信モジュールおよびこれを用いたリーダライタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である通信モジュールは、配線板と、前記配線板に備えられた通信処理用ICと、前記通信処理用ICに電気的に接続されて前記配線板に備えられた、外部に設けられるアンテナとの整合をとる整合回路と、を具備し、前記整合回路が、キャパシタまたはインダクタを少なくとも含む受動素子回路網の回路であり、該受動素子回路網を構成する回路エレメントのうちの少なくともひとつが、前記配線板に内蔵された第1の受動素子部品と、前記配線板の面上に実装された、該第1の受動素子部品と同じ種の受動素子部品である第2の受動素子部品との並列接続または直列接続でできた回路エレメントであることを特徴とする。
【0007】
すなわち、この通信モジュールでは、アンテナ用の整合回路が、次のようになっている。まず、この整合回路は、キャパシタまたはインダクタを少なくとも含む受動素子回路網の回路であり、そして、この受動素子回路網を構成する回路エレメントのうちの少なくともひとつが、配線板に内蔵された第1の受動素子部品と、配線板の面上に実装された、第1の受動素子部品と同じ種の受動素子部品である第2の受動素子部品との並列接続または直列接続でできた回路エレメントになっている。したがって、内蔵の受動素子部品のみで仮に設定の素子定数を、面上に実装の受動素子部品により調整することができる。よって、アンテナの特性に応じて整合の調整が可能な通信モジュールとなる。
【0008】
また、本発明の別の態様であるリーダライタは、配線板と、前記配線板に備えられた、データ読み書きの通信処理用ICと、前記通信処理用ICに電気的に接続されて前記配線板に備えられたアンテナ整合用の整合回路と、を具備し、前記整合回路が、キャパシタまたはインダクタを少なくとも含む受動素子回路網の回路であり、該受動素子回路網を構成する回路エレメントのうちの少なくともひとつが、前記配線板に内蔵された第1の受動素子部品と、前記配線板の面上に実装された、該第1の受動素子部品と同じ種の受動素子部品である第2の受動素子部品との並列接続または直列接続でできた回路エレメントであるリーダライタ回路モジュールと、前記リーダライタ回路モジュールの前記整合回路に接続されたアンテナとを具備することを特徴とする。
【0009】
このリーダライタは、上記の通信モジュールが有する通信処理用ICを特にデータ読み書きの通信処理用ICとして、さらにアンテナを設けることでリーダライタとした構成である。よって、アンテナの特性に応じて整合の調整が可能なリーダライタ回路モジュールを用いたリーダライタとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、部品を内蔵できる配線板を有する通信モジュールであって、アンテナの特性に応じて整合の調整が可能な通信モジュールおよびこれを用いたリーダライタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である通信モジュールを示す構成図。
【図2】図1に示した通信モジュールを配線板の構造を含めて示す模式的な断面図。
【図3】図1に示した通信モジュールが有する配線板の、外面実装/内蔵の部品レイアウト図。
【図4】図1に示した通信モジュールを、特性の異なる各アンテナに適用した場合の整合回路の設計例を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施態様として、前記整合回路の前記受動素子回路網が、前記通信処理用ICから直列に接続された回路エレメントを第1の回路エレメントとして該第1の回路エレメントである第1のキャパシタンスエレメントと、該第1のキャパシタンスエレメントを通過したノードとグラウンドとの間に接続された回路エレメントを第2の回路エレメントとして該第2の回路エレメントである第2のキャパシタンスエレメントと、前記ノードに一端が接続され、他端にはアンテナが接続されるべき回路エレメントを第3の回路エレメントとして該第3の回路エレメントである抵抗エレメントとを有して構成されている、とすることができる。
【0013】
この態様は、整合回路が、キャパシタンスエレメントと抵抗エレメントとで構成される受動素子回路網である場合の一例である。キャパシタンスを得るためのキャパシタ、および抵抗は、部品として小さく、特に通信モジュールとして小型化に向いている。
【0014】
また、実施態様として、前記第1の回路エレメントである前記第1のキャパシタンスエレメントが、前記配線板に内蔵された前記第1の受動素子部品である第1のキャパシタと、前記配線板の面上に実装された前記第2の受動素子部品である第2のキャパシタとの並列接続でできた回路エレメントであり、前記第2の回路エレメントである前記第2のキャパシタンスエレメントが、前記配線板に内蔵された前記第1の受動素子部品である第3のキャパシタと、前記配線板の面上に実装された前記第2の受動素子部品である第4のキャパシタとの並列接続でできた回路エレメントである、とすることができる。
【0015】
この態様は、キャパシタンスエレメントを、配線板に内蔵されたキャパシタと、配線板の面上に実装されたキャパシタとの並列接続で得た回路エレメントとして実現する態様である。キャパシタンスエレメントの場合その容量値の調整は、容量値の加算値が合成キャパシタンス値となる並列接続の方がやりやすい。
【0016】
また、実施態様として、前記第3の回路エレメントである前記抵抗エレメントが、前記配線板に内蔵された前記第1の受動素子部品である第1の抵抗と、前記配線板の面上に実装された前記第2の受動素子部品である第2の抵抗との直列接続である、とすることができる。
【0017】
この態様は、抵抗エレメントを、配線板に内蔵された抵抗と、配線板の面上に実装された抵抗との直列接続で得た回路エレメントとして実現する態様である。抵抗エレメントの場合、その抵抗値の調整は、抵抗値の加算値が合成抵抗値となる直列接続の方がやりやすい。
【0018】
また、実施態様として、前記通信処理用ICが、前記整合回路を介して前記アンテナに向けて、13.56MHzの周波数帯の送信信号を生成する、とすることができる。13.56MHzの周波数帯は、NFCで使用されるひとつの規格周波数帯である。周波数帯の異なるほかの規格でも、考え方は同じである。
【0019】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態である通信モジュールを示す構成図である。この通信モジュール10は、その有する具体機能として、情報を担持する媒体(データキャリア)との間で、データを非接触で読み取りまたは書き込みを行う機能のモジュール(=リーダライタ回路モジュール)である。
【0020】
図1に示すように、この通信モジュール10は、通信処理用IC、クリスタル部品12、電源部品13、その他部品14、EMC(electro-magnetic compatibility )フィルタ15、整合回路16を有する。これらの構成物は、後述する部品内蔵配線板(図2)に実装されている。リーダライタ回路モジュール10にはアンテナ17が接続されるが、このアンテナ17は、応用される機器が有する利用可能なスペースに応じてその形態等(例を後述する;図4)が設計されている。
【0021】
通信処理用IC11は、データ読み書きの処理を行うICである。このモジュール10が応用される機器が有するホストとの間で、データや制御情報などを必要に応じてやり取りする。ホストから得たデータは、近距離無線通信に適合するように変調され送信信号としてEMCフィルタ15および整合回路16の側に出力される。また、逆に、データキャリア(不図示)からアンテナ17および整合回路16を介して入力されるRF信号を受けて復調などの処理を行い、その処理で得られるデータを必要に応じてホストの側に渡す。
【0022】
クリスタル部品12は、通信処理用IC11に電気的に接続して設けられた、通信処理用IC11のクロック生成に必要な周辺部品である。電源部品13は、通信処理用ICに電気的に接続して設けられた、通信処理用ICへの安定した給電に必要な周辺部品である。その他部品14は、通信処理用IC1に電気的に接続して設けられた、そのほかの機能のための周辺部品である。この機能には、例えば、データ読み取りの場合にはEMCフィルタ15の機能を介さないで通信処理用IC11に受信RF信号を導くことが挙げられる。
【0023】
EMCフィルタ15は、通信に用いる周波数帯より高い周波数帯をカットする機能を有するローパスフィルタである。すなわち、通信処理用IC11からの出力信号に特定特性の濾波を行ってこれを整合回路16に出力する。このモジュール10は、通信のため中心周波数が例えば13.56MHzの周波数帯を用いるものとすることができ、そこでEMCフィルタ15においては、これを中心に広がる周波数帯幅を考慮してカットオフ周波数が設定される。ここで使用のEMCフィルタ15は、図示するように、LとCとによる2次のローパスフィルタであり、その出力側をアンテナ17の両端のそれぞれに接続するため、グラウンドを対称中心とした回路構成になっている。
【0024】
整合回路16は、アンテナ17との電力の整合をとるための回路である。整合が不十分の場合、アンテナ17に十分な電力を供給することができず(または、外部からアンテナ17が受けた電力を効率よく取り込むことができず)、モジュール10として通信性能が低下する。一般にアンテナを用いる場合、そのアンテナとの電力整合は無線通信において必須である。
【0025】
ここでの整合回路16は、その構成部品のひとつとして、図示するように、通信処理用IC11から直列に、EMCフィルタ15を介して接続されたキャパシタC3、C4(C5、C6)を有する。また、このキャパシタC3、C4を通過したノードとグラウンドとの間に接続されたキャパシタC7、C8(C9、C10)を有する。さらに、上記ノードに一端が接続され、他端にはアンテナ17が接続される抵抗R1(R2)を有する。整合回路16の出力側をアンテナ17の両端のそれぞれに接続するため、グラウンドを対称中心とした構成の回路になっている点は、EMCフィルタ15と同じである。
【0026】
この整合回路16は、回路エレメントとして見ると、3つのエレメント、すなわちシリーズ接続のキャパシタンスエレメント、対地接続のキャパシタンスエレメント、およびシリーズ接続の抵抗エレメントを有する構成である。ただし、これらの回路エレメントのそれぞれが、2つの部品の合成で所望値を得るように回路構成されている。より具体的に、キャパシタンスエレメントについては、図示するとおり、それぞれ2つの部品の並列接続で構成される。抵抗エレメントについては、可能性として2つの部品の直列接続で構成され得る(破線で描いている)が、ここでは単一の部品の構成としている。
【0027】
各回路エレメントとして機能する2つの部品は、その一方がこのモジュール10を構成している配線板に内蔵して設けられ、他方が同配線板の外面に実装されている。このように配置することで、外面に実装の方の部品定数を変え、アンテナ17の特性に応じて整合の調整が可能になっている。図1において、C3、C7(C5、C9)が配線板に内蔵されたキャパシタであり、C4、C8(C6、C10)が配線板の外面に実装されたキャパシタである。なお、EMCフィルタ15を構成する部品であるキャパシタC1(C2)も、ここでは内蔵部品として設けている。EMCフィルタ15、整合回路16のそのほかの部品は配線板の外面に実装される。
【0028】
このリーダライタ回路モジュール10によれば、部品内蔵配線板を用いて小型化を進めた上で、外面に実装される部品の定数を変えるだけで、各アンテナ17の特性に応じて整合の調整が可能である。すなわち、アンテナ17の特性の変化に対して汎用性のある部品内蔵配線板を使用できることになる。
【0029】
整合回路16の構成としては、上記したRCによる特定の受動素子回路網のほか、一般に、整合回路として公知の別の構成を利用することもできる。例えばキャパシタを少なくとも含む受動素子回路網((1)C、(2)CR、(3)CL、(4)CLR)、またはインダクタを少なくとも含む受動素子回路網((5)L、(6)LR、(7)LC、(8)LCR)である。このような場合にも、各回路エレメントについて、内蔵の部品と定数調整用の副次的な部品とを互いに並列または直列に設け、定数調整用の部品を外面実装とすれば、所望の調整が配線板上で可能になる。
【0030】
並列接続とするか、直列接続にするかについては、以下である。回路エレメントとしてキャパシタの場合は、並列接続の方が設計が容易になる。並列接続の場合、容量値の加算値が合成キャパシタンス値となるためである。一方、回路エレメントとしてインダクタまたは抵抗の場合は、直列接続のほうが設計が容易になる。直列接続の場合、インダクタンス値または抵抗値の加算値が合成インダクタンス値または合成抵抗値になるためである。ただし、設計の容易でない方の接続を用いても、各アンテナ17の特性に応じて整合の調整が可能である効果を得る点は変わらない。
【0031】
図2は、図1に示した通信モジュール10を配線板の構造を含めて示す模式的な断面図である。図1に示した通信モジュール10は、例えば、この図2中に示すような構造の配線板を用いて構成され得る。この通信モジュール10は、内蔵部品として表面実装型受動素子部品41を、表面実装部品として表面実装型受動素子部品71をそれぞれ備えている。部品41がC3、C7(C5、C9)およびC1(C2)に対応し、部品71がC4、C8(C6、C10)、R1(R2)、およびL1(L2)に対応する。
【0032】
この通信モジュール10は、表面実装型受動素子部品41、71のほか、外部接続用の端子電極を含む裏面の配線パターン21、表面の配線パターン26、内層の配線層(内層配線パターン)22、同23、同24、同25、絶縁層1、同2、同3、同4、同5、層間接続導体31、同32、同34、同35、スルーホール導電体33、ソルダーレジスト61、同62、はんだ51、同81を有する。この通信モジュール10が利用している配線板は、絶縁層1〜5によって隔てられる配線層が6つ存在する6層基板である。
【0033】
絶縁層1〜5は、それぞれ、例えばガラスエポキシ樹脂でできたリジッドな層である。表裏面の配線パターン21、26および内層の配線層22〜25は、それぞれ、例えば、銅箔を周知のフォトリソグラフィ技術で所望にパターニング加工して得られた層である。層間接続導体31、32、34、35は、それぞれ、絶縁層1、2、4、5を貫通して配線パターン間に挟設された導電性組成物の接続体であり、これにより、縦方向の電気的接続路として機能する。
【0034】
さらに、ソルダーレジスト61、62は、はんだが載るべき領域を除いて絶縁層1または絶縁層5上に全面的に形成された保護膜である。スルーホール導電体33は、絶縁層3を貫通するスルーホールの内壁面に銅めっき層として形成された縦方向の電気的接続路である。
【0035】
この通信モジュール10の製造プロセスは、概略、以下である。
【0036】
はじめに、配線パターン26、配線層25、絶縁層5、層間接続導体35(導電性組成物印刷による導電性バンプを由来とする)を有する第1の部分積層体と、配線層21、配線層22、絶縁層1、層間接続導体31(導電性組成物印刷による導電性バンプを由来とする)を有する第2の部分積層体と、配線層23、配線層24、絶縁層3、スルーホール導電体33を有する第3の部分積層体とがそれぞれ形成される。第3の部分積層体は、通常の両面銅張り基板にスルーホールを形成し、その内壁面に銅のめっき層を成長させてスルーホール導電体33とし、形成することができる。
【0037】
第1の部分積層体上には、層間接続導体34(導電性組成物印刷による導電性バンプ)、絶縁層(プリプレグ段階)4を形成する。また、第3の部分積層体上にも、層間接続導体32(導電性組成物印刷による導電性バンプ)、絶縁層(プリプレグ段階)2を形成する。その後、第3の部分積層体には、部品41の位置に合わせて開口を形成しておく。
【0038】
第2の部分積層体上には、配線層22上所定位置に部品41をはんだ51を用いて実装する。これには、通常の部品表面実装と同様に、例えば、はんだ51とすべきクリームはんだのスクリーン印刷、部品41のマウンタによる載置、クリームはんだのリフローという手順を採用できる。
【0039】
その後、上記の第2(下)、第3(中)、第1(上)の部分積層体を重ねて配置しプレス機で加圧、加熱する。これにより、絶縁層2とすべきプリプレグおよび絶縁層4とすべきプリプレグが完全に硬化して全体が一体化し、5層の絶縁層を有する積層体を得る。この一体化では加熱により得られる各プリプレグの流動性により、部品41の周りの空間およびスルーホール導電体33内部の空間には各プリプレグが変形進入し空隙は発生しない。また、配線層22、24は、層間接続導体32、34にそれぞれ電気的に接続される。
【0040】
その後、ソルダーレジスト61、62の層をこの積層体両面に形成する。さらに、部品71などの電気/電子部品をはんだ81を用いて通常の表面実装プロセスを実行して実装し、図2に示すような通信モジュール10に仕上げる。なお、表裏面の配線パターン21、26については、そのパターニングを全体の積層のあとに行うこともできる。また、表裏面の配線パターン21、26のうち、その上にソルダーレジスト61、62が形成されない領域には、はんだ接続に適するように表面にNi/Auのめっき処理を行うのが適当である。
【0041】
通信モジュール10を構成するのに、その配線板として上記のような部品内蔵配線板を用いれば部品実装面積の節約が達せられるので、より小型の通信モジュールとすることができる。これは、応用される機器の小型化に都合がよくその点で価値が高い。
【0042】
図3は、図1に示した通信モジュール10が有する配線板の、外面実装/内蔵の部品レイアウト図である。上側の図示が外面実装の部品レイアウトであり、下側が内蔵の部品レイアウトである。配線板として大きさは、8.8mm×9.5mmである。この配線板に部品をすべて実装したあとの最大厚みは、1.65mmである。図3に示すように、この配線板による通信モジュールは、部品の内蔵および外面への高密度実装により、全体としての小型化が非常に進んでいる。これにかかわらず、接続され得るアンテナの特性の変化に対応できる利点がある。
【0043】
図4は、図1に示した通信モジュール10を、特性の異なる各アンテナに適用した場合の整合回路の設計例を示す表である。ここでは、アンテナ17として、図示するような形態および特性を有する2つの場合を示している。アンテナ17の巻き数などの形態は、一般に、応用される機器で必要とされる通信性能や、用意される設置のスペースに応じて決定される。また、アンテナ17の等価直列抵抗などの特性は、決定された形態に基づき製造されたアンテナを用い、一般に、ネットワークアナライザなどの測定機器を用いて同定される。
【0044】
EMCフィルタの部品定数は、すでに説明したように、使用する周波数帯の帯域幅を考慮してその外側にカットオフ周波数が設定されるように決定される。整合回路の部品定数は、同様に、アンテナ17との電力の整合が十分になるように決定される。具体的には、スミスチャートを利用して容易に決定することができる。
【0045】
この結果として、図4に示すように、アンテナ#1の場合は、C3(C5)とC4(C6)とで33pFが必要な定数であり、アンテナ#2の場合は、同様に、60pFが必要な定数である。そこで、ここでは、C3(C5)=33pFを内蔵のキャパシタとし、C4(C6)は、アンテナ#1を用いる場合は0pF(ダミー部品を使用するか部品を実装しない)とし、アンテナ#2を用いる場合は27pFとしている。この場合、C3(C5)は、33pFより小さい値とすることもできる。
【0046】
また、図4に示すように、アンテナ#1の場合は、C7(C9)とC8(C10)とで101pF(≒100pF)が必要な定数であり、アンテナ#2の場合は、同様に、253pF(≒250pF)が必要な定数である。そこで、ここでは、C7(C9)=33pFを内蔵のキャパシタとし、C8(C10)は、アンテナ#1を用いる場合は68pFとし、アンテナ#2を用いる場合は220pFとしている。この場合、C7(C9)は、33pFではなく、100pF以下の別の定数のものとすることもできる。
【0047】
なお、R1(R2)については、図4に示すように、アンテナ#1の場合は、R1(R2)として3Ωが必要な定数であり、アンテナ#2の場合は、R1(R2)として0Ω(ダミー部品を用いる)が必要な定数である。ここでは、R1(R2)を外面に実装の部品としているので、接続されるアンテナに応じて、必要な定数の部品を外面に実装する。
【符号の説明】
【0048】
1,2,3,4,5…絶縁層、10…通信モジュール(リーダライタ回路モジュール)、11…通信処理用IC(データ読み書きの通信処理用IC)、12…クリスタル部品、13…電源部品、14…その他部品、15…EMCフィルタ、16…整合回路、17…アンテナ、21…配線層(外層配線パターン)、22,23,24,25…配線層(内層配線パターン)、26…配線層(外層配線パターン)、31,32…層間接続導体(導電性組成物印刷による導電性バンプを由来とする)、33…スルーホール導電体、34,35…層間接続導体(導電性組成物印刷による導電性バンプを由来とする)、41…表面実装型受動素子部品(内蔵部品)、51…はんだ、61,62…ソルダーレジスト、71…表面実装型受動素子部品(外面実装部品)、81…はんだ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線板と、
前記配線板に備えられた通信処理用ICと、
前記通信処理用ICに電気的に接続されて前記配線板に備えられた、外部に設けられるアンテナとの整合をとる整合回路と、を具備し、
前記整合回路が、キャパシタまたはインダクタを少なくとも含む受動素子回路網の回路であり、該受動素子回路網を構成する回路エレメントのうちの少なくともひとつが、前記配線板に内蔵された第1の受動素子部品と、前記配線板の面上に実装された、該第1の受動素子部品と同じ種の受動素子部品である第2の受動素子部品との並列接続または直列接続でできた回路エレメントであること
を特徴とする通信モジュール。
【請求項2】
前記整合回路の前記受動素子回路網が、前記通信処理用ICから直列に接続された回路エレメントを第1の回路エレメントとして該第1の回路エレメントである第1のキャパシタンスエレメントと、該第1のキャパシタンスエレメントを通過したノードとグラウンドとの間に接続された回路エレメントを第2の回路エレメントとして該第2の回路エレメントである第2のキャパシタンスエレメントと、前記ノードに一端が接続され、他端にはアンテナが接続されるべき回路エレメントを第3の回路エレメントとして該第3の回路エレメントである抵抗エレメントとを有して構成されていることを特徴とする請求項1記載の通信モジュール。
【請求項3】
前記第1の回路エレメントである前記第1のキャパシタンスエレメントが、前記配線板に内蔵された前記第1の受動素子部品である第1のキャパシタと、前記配線板の面上に実装された前記第2の受動素子部品である第2のキャパシタとの並列接続でできた回路エレメントであり、
前記第2の回路エレメントである前記第2のキャパシタンスエレメントが、前記配線板に内蔵された前記第1の受動素子部品である第3のキャパシタと、前記配線板の面上に実装された前記第2の受動素子部品である第4のキャパシタとの並列接続でできた回路エレメントであることを特徴とする請求項2記載の通信モジュール。
【請求項4】
前記第3の回路エレメントである前記抵抗エレメントが、前記配線板に内蔵された前記第1の受動素子部品である第1の抵抗と、前記配線板の面上に実装された前記第2の受動素子部品である第2の抵抗との直列接続であることを特徴とする請求項3記載の通信モジュール。
【請求項5】
前記通信処理用ICが、前記整合回路を介して前記アンテナに向けて、13.56MHzの周波数帯の送信信号を生成することを特徴とする請求項1記載の通信モジュール。
【請求項6】
配線板と、前記配線板に備えられた、データ読み書きの通信処理用ICと、前記通信処理用ICに電気的に接続されて前記配線板に備えられたアンテナ整合用の整合回路と、を具備し、前記整合回路が、キャパシタまたはインダクタを少なくとも含む受動素子回路網の回路であり、該受動素子回路網を構成する回路エレメントのうちの少なくともひとつが、前記配線板に内蔵された第1の受動素子部品と、前記配線板の面上に実装された、該第1の受動素子部品と同じ種の受動素子部品である第2の受動素子部品との並列接続または直列接続でできた回路エレメントであるリーダライタ回路モジュールと、
前記リーダライタ回路モジュールの前記整合回路に接続されたアンテナと
を具備することを特徴とするリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−147190(P2012−147190A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3225(P2011−3225)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】