説明

速度警告装置、その制御方法及び制御プログラム

【課題】長い下り坂や上り坂で速度の超過や低下を警告することにより、事故を防止し渋滞を緩和する。
【解決手段】比較部46は、地図ROM3から読み出す坂道情報(長い下り坂情報と長い上り坂情報)の位置範囲に自車位置がさしかかると、その長い下り坂情報又は長い上り坂情報に対応付けられた基準速度と、現時点の自車速度との比較により、自車速度が基準速度の一定範囲に達しているか否か判断する。この比較の結果、自車速度が基準速度の一定範囲に達したと判断された場合、報知部48は、ユーザーにその旨を音声メッセージなどにより報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長い下り坂や上り坂で速度の超過や低下を警告することにより、事故を防止し渋滞を緩和する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPSなど情報処理技術の進展に伴い、ナビゲーションシステムが急速に普及した。ナビゲーションシステムは、GPSなどを用いて逐次特定する自車位置を周辺地図上に画面表示したり、画面のカーソル操作や施設検索で指定される目的地への経路を探索し、その経路に沿って進行方向など誘導案内を出力するものである。
【0003】
このようなナビゲーションシステムでは、従来から、車両の電子制御系や航法センサ群における車速パルスや加速度センサを用いて、速度や加速、減速を検出することが可能であり、これらを利用して速度の超過や低下をアナウンスする技術は提案されていた。例えば、ユーザが予め設定した速度に達するとスピーカから「10km/Hオーバーです」など音声で知らせる例(例えば特許文献1)や、運転者の意に反する車速低下をスピーカ等で知らせる例がある(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平6−231392
【特許文献2】特開平11−222050
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、平地の一般道など通常の場所では、道路状況や速度の変化、近くの対象物がもともと多く、速度超過や速度低下は運転者自ら気付きやすいため、一律の警告は必要性が低い割に煩わしいという問題があった。むしろ、意図せぬ速度の超過や低下が多発するのは高速道路等における長い下り坂や長い上り坂であるが、従来、この事実を考慮した警告の技術は無かった。このため、長い下り坂で生じがちな速度超過による事故の防止や、長い上り坂で生じがちな速度低下による渋滞の緩和が潜在的に切望されていた。
【0005】
本発明は、上記のような従来技術の課題を解決するもので、その目的は、長い下り坂や上り坂で速度の超過や低下を警告することにより、事故を防止し渋滞を緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は(請求項1、3、5)、航法センサ群と、情報の記憶部及び出力部と、前記各部の制御を含む情報処理を行う制御部と、を備えた速度警告装置(その制御方法、制御プログラム)であって、経路探索用又は地図表示用の地図情報と、道路において所定以上の勾配が一定距離以上続く長い下り坂及び長い上り坂の少なくとも一方についてその始点を含む位置範囲と基準速度を含む坂道情報と、を所定の地図情報記憶手段に予め記録しておき、前記航法センサ群からの出力又は車両の電子制御系からの出力を用いて、自車がどのくらいの速度で走行しているのかの自車速度を検出する自車速度検出手段(処理)と、前記航法センサ群からの出力を用いて、自車位置が地図上のどこにあるのか検出する自車位置検出手段(処理)と、前記地図情報記憶手段から読み出す前記坂道情報の前記位置範囲に前記自車位置がさしかかると、その前記基準速度と前記自車速度との比較により、自車速度が前記基準速度の一定範囲に達しているか否か判断する比較判断手段(処理)と、前記比較の結果、自車速度が前記基準速度の一定範囲に達したと判断された場合、ユーザーにその旨を前記出力部により報知する報知手段(処理)と、を前記制御部が実現することを特徴とする。
【0007】
このように、地図情報とともに、長い下り坂や長い上り坂の情報を予め保持し、それぞれの場所にさしかかったときに、長い下り坂では速度超過を、長い上り坂では速度低下を検出しユーザーに知らせることにより、真に必要な場合に事故防止や渋滞緩和を図ることが可能となる。
【0008】
本発明の他の態様は(請求項2、4、6)、上記各態様において、前記坂道情報は、長い下り坂又は長い上り坂に対し、始点及び終点で区切られる前記位置範囲と、速度超過判断用又は速度低下判断用の基準速度を対応付けたものであり、前記比較判断手段(処理)は、前記始点から前記終点までの位置範囲を自車が走行中に上記比較により、その位置範囲に対応付けられた前記基準速度を前記自車速度が所定幅以上、上回り又は下回った場合に、ユーザーにその旨を報知するように前記報知手段(処理)を制御することを特徴とする。
【0009】
このように、始点と終点で区切られた位置範囲と、それに対応付けられた基準速度に基いた単純な条件判断により、簡素な構成と少ない処理負荷で事故防止や渋滞緩和が効率よく実現可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、長い下り坂や上り坂で速度の超過や低下を警告することにより、事故を防止し渋滞を緩和することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、背景技術や課題での説明と共通の前提事項は繰り返さない。
【0012】
〔1.構成〕
本実施形態は、速度警告装置(以下「本装置」と呼ぶ)に関するもので、ナビゲーションシステムと一体でも別体でもよく、また、本装置の制御方法及び制御プログラムとしても把握可能である。
【0013】
まず、本装置の構成を図1に示す。このうち、インタフェース部2は、車両における図示しない電子制御系(ECUなど)や航法センサ群(GPSやジャイロなど)から情報を受け取る部分で、例えば、スピードパルスである車両スピード信号1などを受け付ける。また、ナビゲーションコントロールCPU4(単に「CPU4」とも呼ぶ)は、各部の制御を含む情報処理を行う制御部であり、図1に示す後述の各部42〜48の機能作用を実現する処理手段である。
【0014】
また、地図ROM3(地図情報記憶手段)は、図示しない情報の記憶部(HDD、DVD−ROMなど)上に確保した記憶領域で、この地図ROM3に、経路探索用又は地図表示用の地図情報と、道路において所定以上の勾配が一定距離以上続く長い下り坂及び長い上り坂の少なくとも一方についてその始点を含む位置範囲と基準速度を含む坂道情報(それぞれ、「長い下り坂情報」「長い上り坂情報」と呼ぶ)と、を予め記録しておく。
【0015】
また、本装置は、情報の出力部として、まず音声出力のためには、音声合成IC(5)と、音声コントロールIC(DSP、電子ボリューム等)6と、パワーアンプ7と、音声出力装置である車両のスピーカー8と、を備え、また、表示出力のためには、描画IC(9)と、液晶パネルなどのディスプレイ(10)と、を備える。
【0016】
〔2.作用効果〕
上記のような本装置のCPU4において、自車速度検出部42(自車速度検出手段)は、航法センサ群や電子制御系からインタフェース部2などにより受け取る車両スピード信号1などの出力を用いて、自車がどのくらいの速度で走行しているのかの自車速度を検出する(自車速度検出処理)。また、自車位置検出部44(自車位置検出手段)は、GPSなど前記航法センサ群からの出力を用いて、マップマッチングなどにより、自車位置が地図上のどこにあるのか検出する(自車位置検出処理)。
【0017】
そして、比較部46(比較判断手段)は、地図ROM3から読み出す前記坂道情報(長い下り坂情報と長い上り坂情報)の前記位置範囲に前記自車位置がさしかかると、その長い下り坂情報又は長い上り坂情報に対応付けられた基準速度と、現時点の自車速度との比較により、自車速度が前記基準速度の一定範囲に達しているか否か判断する(比較判断処理)。この比較の結果、自車速度が基準速度の一定範囲に達したと判断された場合、報知部48(報知手段)は、ユーザーにその旨を前記出力部により報知する(報知処理)。
【0018】
より具体的には、地図ROM3に記録された坂道情報は、長い下り坂又は長い上り坂に対し、始点及び終点で区切られる前記位置範囲と、速度超過判断用又は速度低下判断用の基準速度を対応付けたものであり、比較部46は、その始点から終点までの位置範囲を自車が走行中に上記比較により、その位置範囲に対応付けられた基準速度を自車速度が所定幅以上、上回り又は下回った場合に、ユーザーにその旨を報知するように報知部48を制御する。
【0019】
以上のように、地図情報とともに、長い下り坂や長い上り坂の情報を予め保持し、それぞれの場所にさしかかったときに、長い下り坂では速度超過を、長い上り坂では速度低下を検出しユーザーに知らせることにより、真に必要な場合に事故防止や渋滞緩和を図ることが可能となる。
【0020】
また、以上のように、始点と終点で区切られた位置範囲と、それに対応付けられた基準速度に基いた単純な条件判断により、簡素な構成と少ない処理負荷で事故防止や渋滞緩和が効率よく実現可能となる。
【0021】
〔3.フローチャートの例〕
上記のような処理の手順を図2のフローチャートに例示する。すなわち、走行状態において(ステップ10)、現在位置に坂道情報があれば(ステップ20)、下り坂か(ステップ30、40)上り坂か(ステップ30、140)に応じて以下のような処理を行う。
【0022】
まず、必須ではないが、自車速度が、その坂道情報に設定された基準速度の一定範囲内の場合(ステップ50、150)、それに応じた警告メッセージを出力することが望ましい(ステップ60、160)。例えば、下り坂の始点で、例えば法定最高制限速度までの余地が10km/H未満の場(ステップ50)、「この先長い下り坂です。速度超過にご注意ください。」のようなメッセージを流す(ステップ60)。一方、上り坂の始点で、例えば法定最高制限速度より10km/H以上下回っていれば(ステップ150)、「この先長い上り坂です。速度低下にご注意ください。」などのメッセージを流す(ステップ160)。
【0023】
その後、スピード信号から逐次計算する自車速度から速度超過と(ステップ70)速度低下を(ステップ170)逐次比較判断し、長い下り坂で所定の速度超過の場合(ステップ80)、「制限速度10km/H超過しています。」のようにスピーカからの音声の警告メッセージなどでユーザーに速度超過であることを警告する(ステップ90)。
【0024】
一方、長い上り坂で所定の速度低下(例えば、始点での自車速度や法定最高制限速度より10km/Hダウンなど)の場合(ステップ180)、「速度が低下しています、ご注意ください。」のような警告メッセージを出力する(ステップ190)。なお、どの程度減速すればメッセージを出すのかは、基準速度や始点での自車速度をもとに、速度低下の率や幅など任意で決定可能であり、例えば、5秒間で5km/H減速したときなども考えられ、速度超過についても同様である。
【0025】
さらに、警告に至らなくても速度超過や速度低下の可能性が高い状態(例えば、所定秒数内の加速量や減速量、制限速度への急接近など)を検出したとき「速度が超過しそうです」、「速度が著しく低下しそうです」等の予測案内を行えば、長い下り坂での速度超過や事故の防止、長い上り坂での速度低下による渋滞緩和が一層効果的となる。
【0026】
〔4.他の実施形態〕
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するもの及びそれ以外の他の実施形態も含むものである。例えば、各図に示した構成、数値、処理手順といったどのような要素も説明のための一例に過ぎず、適宜変更実施可能であって、例えば、上記の例では音声による警告としたが、画面表示や、ブザー音やビープ音などによる警告も同様に可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す機能ブロック図。
【図2】本発明の実施形態における処理手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0028】
1…車両スピード信号
2…インタフェース部
3…地図ROM
4…ナビゲーションコントロールCPU
42…自車速度検出部
44…自車位置検出部
46…比較部
48…報知部
5…音声合成IC
6…音声コントロールIC
7…パワーアンプ
8…スピーカ
9…描画IC
10…ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航法センサ群と、情報の記憶部及び出力部と、前記各部の制御を含む情報処理を行う制御部と、を備えた速度警告装置であって、
経路探索用又は地図表示用の地図情報と、道路において所定以上の勾配が一定距離以上続く長い下り坂及び長い上り坂の少なくとも一方についてその始点を含む位置範囲と基準速度を含む坂道情報と、を予め記録した地図情報記憶手段と、
前記航法センサ群からの出力又は車両の電子制御系からの出力を用いて、自車がどのくらいの速度で走行しているのかの自車速度を検出する自車速度検出手段と、
前記航法センサ群からの出力を用いて、自車位置が地図上のどこにあるのか検出する自車位置検出手段と、
前記地図情報記憶手段から読み出す前記坂道情報の前記位置範囲に前記自車位置がさしかかると、その前記基準速度と前記自車速度との比較により、自車速度が前記基準速度の一定範囲に達しているか否か判断する比較判断手段と、
前記比較の結果、自車速度が前記基準速度の一定範囲に達したと判断された場合、ユーザーにその旨を前記出力部により報知する報知手段と、
を前記制御部が実現することを特徴とする速度警告装置。
【請求項2】
前記坂道情報は、長い下り坂又は長い上り坂に対し、始点及び終点で区切られる前記位置範囲と、速度超過判断用又は速度低下判断用の基準速度を対応付けたものであり、
前記比較判断手段は、前記始点から前記終点までの位置範囲を自車が走行中に上記比較により、その位置範囲に対応付けられた前記基準速度を前記自車速度が所定幅以上、上回り又は下回った場合に、ユーザーにその旨を報知するように前記報知手段を制御すること
を特徴とする請求項1に記載の速度警告装置。
【請求項3】
航法センサ群と、情報の記憶部及び出力部と、前記各部の制御を含む情報処理を行う制御部と、を備えた速度警告装置の制御方法であって、
経路探索用又は地図表示用の地図情報と、道路において所定以上の勾配が一定距離以上続く長い下り坂及び長い上り坂の少なくとも一方についてその始点を含む位置範囲と基準速度を含む坂道情報と、を前記記憶部を用いる所定の地図情報記憶手段に予め記録しておき、
前記航法センサ群からの出力又は車両の電子制御系からの出力を用いて、自車がどのくらいの速度で走行しているのかの自車速度を検出する自車速度検出処理と、
前記航法センサ群からの出力を用いて、自車位置が地図上のどこにあるのか検出する自車位置検出処理と、
前記地図情報記憶手段から読み出す前記坂道情報の前記位置範囲に前記自車位置がさしかかると、その前記基準速度と前記自車速度との比較により、自車速度が前記基準速度の一定範囲に達しているか否か判断する比較判断処理と、
前記比較の結果、自車速度が前記基準速度の一定範囲に達したと判断された場合、ユーザーにその旨を前記出力部により報知する報知処理と、
を前記制御部が実行することを特徴とする速度警告装置の制御方法。
【請求項4】
前記坂道情報は、長い下り坂又は長い上り坂に対し、始点及び終点で区切られる前記位置範囲と、速度超過判断用又は速度低下判断用の基準速度を対応付けたものであり、
前記比較判断処理は、前記始点から前記終点までの位置範囲を自車が走行中に上記比較により、その位置範囲に対応付けられた前記基準速度を前記自車速度が所定幅以上、上回り又は下回った場合に、ユーザーにその旨を報知するように前記報知処理を制御すること
を特徴とする請求項3に記載の速度警告装置の制御方法。
【請求項5】
航法センサ群と、情報の記憶部及び出力部と、前記各部の制御を含む情報処理を行う制御部と、を備えた速度警告装置の制御プログラムであって、
経路探索用又は地図表示用の地図情報と、道路において所定以上の勾配が一定距離以上続く長い下り坂及び長い上り坂の少なくとも一方についてその始点を含む位置範囲と基準速度を含む坂道情報と、を前記記憶部を用いる所定の地図情報記憶手段に予め記録しておき、
前記航法センサ群からの出力又は車両の電子制御系からの出力を用いて、自車がどのくらいの速度で走行しているのかの自車速度を検出する自車速度検出処理と、
前記航法センサ群からの出力を用いて、自車位置が地図上のどこにあるのか検出する自車位置検出処理と、
前記地図情報記憶手段から読み出す前記坂道情報の前記位置範囲に前記自車位置がさしかかると、その前記基準速度と前記自車速度との比較により、自車速度が前記基準速度の一定範囲に達しているか否か判断する比較判断処理と、
前記比較の結果、自車速度が前記基準速度の一定範囲に達したと判断された場合、ユーザーにその旨を前記出力部により報知する報知処理と、
を前記制御部に実行させることを特徴とする速度警告装置の制御プログラム。
【請求項6】
前記坂道情報は、長い下り坂又は長い上り坂に対し、始点及び終点で区切られる前記位置範囲と、速度超過判断用又は速度低下判断用の基準速度を対応付けたものであり、
前記比較判断処理は、前記始点から前記終点までの位置範囲を自車が走行中に上記比較により、その位置範囲に対応付けられた前記基準速度を前記自車速度が所定幅以上、上回り又は下回った場合に、ユーザーにその旨を報知するように前記報知処理を制御すること
を特徴とする請求項5に記載の速度警告装置の制御プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−11454(P2007−11454A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188093(P2005−188093)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】