説明

遊技機の制御基板の封印部材、これを用いた遊技機及び不正防止方法

【課題】 不正に制御基板の封印が解かれたかの判定が容易にできるとともに、複製(偽造)を困難とした封印部材、遊技機及び不正行為の防止方法を提供すること。
【解決手段】 樹脂中に紫外線又は赤外線を照射することで可視光下の色とは異なる色に変化したり、発色したりする物質を分散させたり、樹脂成型体の表面に前記物質を塗布又は付着させたりすることで封印部材を作成し、これを用いて制御基板をケース内に封印するようにすることで、紫外線又は赤外線を照射するだけで、無断で封印が解かれたか否かを判定することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシン、パチンコ機などの遊技機を制御するための制御基板の封印部材、これを用いた遊技機及び制御基板に対する不正行為の防止方法に関する。なお、本明細書中における制御基板とは、遊技機が備える各種表示器が搭載された回路基板などをも含む広い概念を意味する。
【背景技術】
【0002】
周知のようにスロットマシンやパチンコ機などの遊技機の筐体内には、CPU、ROM、RAMなどの電子部品が実装され、遊技機の作動を制御する制御基板が配置されている。例えば、スロットマシンの場合、制御基板として主にスロットマシンの基本動作やリール制御などバード面を制御するためのプログラムが収められたメイン制御基板及び演出やサウンドなどのソフト面を制御するなどメイン制御基板で処理しきれない部分を補うプログラムが納められたサブ制御基板が取り付けられている。
【0003】
このような制御基板に対して、制御プログラムを格納するROMを不正なものに置き換えたり、搭載された電子部品に対して不正なアプローチをしたりすることで、遊技結果を本来と異ならせ、多くの出玉を得るなどの不正行為が問題となっている。
【0004】
このような不正行為を防止すべく、近年の遊技機においては、制御基板を基板ケース内に封印した上で遊技機の筐体内に設置するようにされている。基板ケースは、樹脂製で、その中に収納される制御基板が視認できるように、透明なものとされるとともに、封印部材により封印され、この封印部材を破壊しないと開封できないようにされ、封印部材が破壊されることで開封の痕跡が残るようされている。
【0005】
このような封印部材は、樹脂製とされ、一度挿入すると抜けないようなフック状の係合部を有し、これを差し込むことで基板ケースを封印できる形状のピン状のもの、基板ケースの周縁部に設けられた係合孔を用いてインシュロック方式により結束できるバンド状のもの、螺子止めにより基板ケースを閉じる当該螺子を外せないように螺子のヘッドを覆って抜けないキャップ状のものなど色々工夫されたものが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平10−249024号公報
【特許文献2】特開2001−161891号公報
【特許文献3】特開2007−267886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜3に開示されているような、ピン状、結束バンド状、キャップ状の封印部材を用いたとしても、これら封止部材の複製品を作られてしまえば、基板ケースを開封し、制御基板上のROMを不正ROMに置き換えたり、不正な電子部品を接続したりした後、複製した封印部材で再度封印して元の状態に戻せば、開封の痕跡が見られず、不正を発見するのに時間を要することとなる。
【0008】
このような封印部材の複製品を作ることは、不正なROMなどの電子部品を作ることに比べれば極めて容易なことであり、このような封印部材を用いて効果的に不正行為を防止するためには、ライフサイクルの短い遊技機の製造に合わせて頻繁に封止部材及び基板ケースの構造を変更させる必要があるが、そのためには、基板ケースや封印部材を成型するための金型をその都度製造する必要があるために製造コストが上昇してしまい、実用的な方法とはいえない。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、不正に制御基板の封印が解かれたかの判定が容易にできるとともに、複製(偽造)を困難とした封印部材、遊技機及び不正行為の防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る遊技機の制御基板の封印部材は、紫外線又は赤外線を照射することにより、蛍光灯下又は可視光下での呈色と異なる色に発色又は発光することを特徴とする。また、本発明は、この封印部材を用いて制御基板が封印されていることを特徴とする遊技機に係るものである。
【0011】
本発明の封印部材によれば、遊技機の筐体の扉を開放し、その中に配置されている制御基板の封印部材に、例えば、紫外線ライト(ブラックライト)、赤外線ライトなどを用いて紫外線又は赤外線を照射すれば、蛍光灯などの室内灯による目視できる色とは異なる色に発色又は発光するので、本物の封印部材が装着されているか否かを容易に判別することができる。また、ハンディタイプの紫外線ライトを用いることで、遊技ホールの閉店後、開店前に、並設された遊技機の制御基板に不正行為が行われていないかを短時間に且つ簡単に見廻ることができる。
【0012】
さらに、本発明の封印部材は、既存の封印部材の構造、形状を変更する必要なく、同一形状で適用することができるので、封印部材を成型するための新たな金型を製造する必要がなく、低コストでセキュリティを向上することができる。
【0013】
本発明において、封印部材の形態としては、前記制御基板を収納する基板ケースの開封を阻止するための形状を有するもの、前記制御基板を収納するカバー又はケース形状を有するものなどとされ得、前者の場合は、ピン形状、キャップ形状、結束バンド形状などの小型部品とし得るので材料費の上昇負担を僅かとでき、後者であっても、全体的に紫外線又は赤外線を照射することにより、蛍光灯下又は可視光下での呈色と異なる色に発色又は発光するようにする必要はなく、部分的に用いることで製造コストの上昇を抑えることができる。
【0014】
本発明の封印部材は、樹脂中に紫外線又は赤外線を照射することで可視光下の色とは異なる色に変化したり、発色したりする物質を分散させたり、樹脂の表面に前記物質を塗布又は付着させたりすることで製造することができる。より具体的には、例えばEu(III)錯体、Tm(III)錯体、Tb(III)錯体等の発光性の希土類錯体、フォトクロミック化合物などのような紫外線発色又は赤外線発色する公知の物質を分散させたABS樹脂、PC樹脂など透明又は光透過性の樹脂を所定の形状に成型したり、Eu(III)錯体、Tm(III)錯体、Tb(III)錯体等の発光性の希土類錯体、フォトクロミック化合物などの紫外線発色又は赤外線発色する公知の物質を適当な有機媒体に分散させた塗料を所定の形状に成型した樹脂成型体の表面に、当該樹脂成型体の透明性又は光透過性が損なわれないように塗布したりすることで製造することができる。これら紫外線又は赤外線を照射することで異なる色に変化したり、発色したりする物質の含有量及び/又は混合する組合せにより、紫外線下又は赤外線下の呈色の色相、明度又は彩度を多様に変化させることもできる。なお、Eu(III)錯体、Tm(III)錯体、Tb(III)錯体等の発光性の希土類錯体は適当な有機媒体に均一に溶解できるため、有機媒体に溶かした上でABS樹脂に添加し発光性プラスチック成型体とし得える。
【0015】
また、本発明は、遊技機の制御基板に対する不正防止方法であって、前記制御基板を、封印部材の材料として、紫外線又は赤外線を照射することにより、蛍光灯下又は可視光下での呈色と異なる色に発色又は発光する封印部材を用いて封印するとともに、前記封印部材の前記紫外線下又は赤外線下の呈色の色相、明度又は彩度が定期的又は不定期に異なるようにすることを特徴とする不正防止方法にも係るものである。
【0016】
このように、遊技機の種類又は遊技機の製造時期など経時的に、封印部材の前記紫外線下又は赤外線下の呈色の色相、明度又は彩度を、定期的又は不定期に異ならせていくことで、封印部材の偽造や複製が、遊技機の製品ライフサイクルに追いつけないようにすることができ、制御基板に対する不正行為を効果的に予防又は防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の封印部材によれば、不正に制御基板の封印が解かれたかの判定を容易且つ迅速に行うことができる。また、既存の封印部材の製造設備を用いて製造することができ、新たに成型金型などを用意する必要がないので、低コストで実現可能である。さらに、本発明の不正防止方法によれば、使用する封印部材の発色性を定期的又は不定期に変更するようにしているので、不正を行おうと封印部材の偽造をしようとしても、封印部材の変色、発色特性が頻繁に変更されるので、不正を行う機会を与えないようにでき、制御基板に対する不正行為を効果的に予防又は防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態1〜3においては、スロットマシンにおける制御基板に対して本発明を適用した場合の例について示すが、本発明はこれに限られることなく、パチンコ機などの他の遊技機にも適用可能である。
【0019】
<実施の形態1>
[外観構成]
図1を参照して、本実施の形態1に係るスロットマシン1は、前面が開放している箱形の筐体2と、この筐体2に対して開閉自在に取り付けられている前扉3とを備えている。
【0020】
前扉3の中央部正面には、正面パネル4が装着されている。この正面パネル4の主要部には、表示窓5が形成されている。それゆえ、この正面パネル4は、表示窓5の枠体として機能する。
【0021】
表示窓5は、主として、筐体2内の3つの回転リール6L,6C,6Rを観察するためのものであって、各リール6L,6C,6Rの外周面には、それぞれ、ボーナス役図柄、小役図柄及びリプレイ役図柄を含む、複数種類の役図柄が周方向に沿って描かれている。これらの図柄は、表示窓5を通して3つずつ観察される。表示窓5及び各リール6L,6C,6Rの両者は、正面パネル4上において遊技者に対面している。
【0022】
表示窓5の左側には、5つの賭けライン表示ランプ7A,7B,7C,7D,7Eが設けられている。これら5つの賭けライン表示ランプ7A〜7Eは、1遊技における有効ラインを示すために点灯するランプである。他方、表示窓5の右側には、スタートランプ8、投入指示ランプ9、リプレイタイム告知ランプ10、アシストタイム(AT)告知ランプ11及びゲームオーバーランプ12が設けられている。スタートランプ8は、遊技が開始できる状態となった場合に点灯又は点滅するランプである。投入指示ランプ9は、メダルをスロットマシン1に投入できる状態である場合に点灯又は点滅するランプである。RT告知ランプ10は、遊技状態が高確率再遊技状態(RT)に移行した場合に点灯又は点滅するランプである。AT告知ランプ11は、遊技状態が画像や音などにより役の入賞を支援する情報が報知される状態に移行した場合に点灯又は点滅するランプである。ゲームオーバーランプ12は、遊技が終了したときに点灯又は点滅するランプである。これらランプ8〜12は、正面パネル4の上方から下方に向かってこの順で配置されている。
【0023】
表示窓5上には、当該表示窓5の窓面を通過する5本の賭けラインが設けられている。具体的には、第1の賭けラインは、表示窓5の中段において水平に延びており、この賭けラインの左端に第1の賭けライン表示ランプ7Aが配置されている。第2の賭けラインは、表示窓5の上段において水平に延びており、この賭けラインの左端に第2の賭けライン表示ランプ7Bが配置されている。第3の賭けラインは、表示窓5の下段において水平に延びており、この賭けラインの左端には第3の賭けライン表示ランプ7Cが配置されている。第4の賭けラインは、表示窓5の左上段から右下段に向かって斜め下方向に延びており、この賭けラインの左端には第4の賭けライン表示ランプ7Dが配置されている。第5の賭けラインは、表示窓5の左下段から右上段に向かって斜め上方向に延びており、この賭けラインの左端には第5の賭けライン表示ランプ7Eが配置されている。
【0024】
表示窓5の下方には、払出数表示器14及びクレジット数表示器15が設けられている。払出数表示器14は、入賞が発生した場合に遊技者に対して払い出されるメダル数を表示する表示器である。クレジット数表示器15は、遊技者が所有する有価価値としてスロットマシン1にクレジットされているメダル数を表示する表示器である。これら表示器14、15は、7セグメント表示器であって、正面パネル4上で左から右に向かってこの順で配置されている。
【0025】
前扉3の上部には、上パネル17が装着されている。この上パネル17の中央部には、液晶表示装置(以下、「LCD」という)18が設けられている。このLCD18は、遊技に関する種々の演出などを表示により行うための手段であって、例えば遊技中の演出画像を各種遊技状態のとき毎に異なるものとして表示したり、ボーナス役が内部当選している旨を画像表示により告知したり、遊技にリンクした演出情報などを表示する。LCD18を挟んだ左右両側には、スピーカー19A,19Bが配置されており、この左右一対のスピーカー19A,19Bは、上パネル18に嵌め込まれている。これらのスピーカー19A,19Bは、LCD18に表示された演出画像に対応した演出音、遊技状態に応じた効果音等を出力するための手段である。他方、前扉3の下部には、下パネル20が装着されている。この下パネル20には、機種名及びイメージデザイン等が印刷されており、その下方には、メダル払出口21及びメダル受け皿22が設けられている。
【0026】
正面パネル4と下パネル20との間には、操作部23が設けられている。この操作部23には、メダル投入口24、ベットボタン25、始動レバー26、停止ボタン27L,27C,27R及び精算ボタン28が備えられている。メダル投入口24は、操作部23の上面の右側に配置されている。ベットボタン25は、投入口24から投入されたメダルを何枚賭けるかを設定する際に使用されるボタンであって、操作部23の上面において始動レバー26及び左停止ボタン27Lの両者の中間位置に配置されている。始動レバー26は、遊技を開始する際に使用されるレバーであり、他方停止ボタン27L,27C,27Rは、リール6L,6C,6Rの回転を停止させる際に使用されるボタンである。具体的には、左停止ボタン27Lを操作すると、左リール6Lの回転が停止する。中停止ボタン27Cを操作すると、中リール6Cの回転が停止する。右停止ボタン27Rを操作すると、右リール6Rの回転が停止する。これら停止ボタン27L,27C,27Rは、操作部23の正面中央部において各リール6L,6C,6Rに対応して配置されている。これに対して、始動レバー26は、操作部23の正面において停止ボタン27L,27C,27Rの左側に配置されている。精算ボタン28は、スロットマシン1にクレジットされたメダルを精算する際に使用されるボタンであって、操作部23の正面において始動レバー26の左側に配置されている。
【0027】
本スロットマシン1では、遊技はクレジットモードで進行される。すなわち、1遊技毎にベットボタン25が1回押されると、3枚のメダルが賭け対象となり、上記の5本の賭けラインの全てが有効化される。このとき、上記の5つの賭けライン表示ランプ7A〜7Eが点灯する。
【0028】
かかるクレジットモードでは、上記有効化された賭けライン(有効ライン)の何れかのライン上で入賞図柄の組合せが揃い、それによって入賞が成立した場合には、この入賞の発生に伴いクレジットの上限を超えない範囲で払い出されるメダル数がクレジットとしてスロットマシン1にストアーされる。クレジットの上限を超える場合には、その上限を超えた数のメダルが払出口21から受け皿22に払い出される。
【0029】
上記のクレジットモードの手順に則して賭け対象となるメダルの枚数が設定されると、図示しない制御部は、この設定された賭け枚数分のメダルを取り込む。このメダルの取り込みにより、遊技を開始する条件が整う。このとき、スタートランプ8が点灯又は点滅する。このスタートランプ8の作動状態において、始動レバー26が操作されると、制御部は、全てのリール6L,6C,6Rを一斉に回転させる。
【0030】
各停止ボタン27L,27C,27Rを押圧操作すると、その操作に対応するリールの回転が停止する。全リール6L,6C,6Rの回転が停止したときに、有効ライン上に入賞図柄の組合せの1つが停止表示する(揃う)と、制御部は、成立した入賞役の種類に従って、予め定められている枚数のメダルを上記メダルの入力モードに応じた態様で遊技者に払い出す。
【0031】
[内部構成]
図2を参照して、筐体2内には、リール6L,6C,6R、各リール6L,6C,6Rの駆動源であるステッピングモーター、ホッパー30及び確率設定ボックス31が備えられている。
【0032】
リール6L,6C,6Rは、筐体2内の中央部に配置されており、これらリール6L,6C,6Rを基準として、ホッパー30及び確率設定ボックス31の設置箇所が決定されている。各リール6L,6C,6Rの回転軸は、それぞれ、筐体2内のブラケットに回転自在に支持されており、当該各回転軸の端部が各ステッピングモーターの出力軸に結合されている。
【0033】
ホッパー30は、メダルの貯留・放出を行うための手段であって、リール6L,6C,6Rの下方において、筐体2の底面に取り付けられている。他方、確率設定ボックス31は、ホッパー30の左側において、筐体2の底面に取り付けられている。
【0034】
リール6L,6C,6Rの上方で筐体2の背面には、スロットマシン1の基本動作やリール制御などを司るプログラムが収められたROM、CPU、RAMなどが搭載されたメイン制御基板が収められた主基板ケース100が取り付けられており、リール6L,6C,6Rを支持するブラケットの側面には、特に図示しないが、サブ制御基板が収められたサブ基板ケースが取り付けられている。
【0035】
また、前扉3に装着されたLCD18の裏側には、LCD18に表示する画像を制御するための映像表示基板が収められた映像表示基板ケース200が取り付けられており、前扉3に装着された表示窓5の正面パネル4の裏側には、カバー体50が装着されている。このカバー体50は、上記の払出数表示器14及びクレジット数表示器15並びにコネクタ等が搭載される回路基板を覆う。
【0036】
[映像表示基板の封印構造]
以下、実施の形態1の映像表示基板の封印構造について説明する。図3及び図4を参照して、映像表示基板204は、下端同士がヒンジ203で接続されたベースケース201とカバーケース202とからなる映像表示基板ケース200の内空間に収められている。具体的には、ベースケース201の内側面に映像表示基板204などの電子部品が搭載された回路基板が取り付けられ、ベースケース201の上端縁には2つの係止ツメ205a、205aが形成されている。一方、カバーケース202の上端縁には、ベースケース201の係止ツメ205a、205aと対向するように2つの被係止部205b、205bが形成されている。カバーケース202は、被係止部205b、205bとベースケース201の係止ツメ205a,205aに係止させることにより、ベースケース201に取り付けられた回路基板を覆うように封止する。
【0037】
ベースケース201及びカバーケース202は、従来より用いられる樹脂製のものでよく、カバーケース202は中の映像表示基板204などの電子部品の様子が視認できるように透明とされている。
【0038】
ベースケース201とカバーケース202とは、閉じら状態で左右上部の2箇所で互いに螺子止めされ、螺子208の頭部は、外部からアプローチできないように封印部材であるシールドキャップ209で覆われる。シールドキャップ209は、一度カバーケース202に対して係合されると、破壊しない限り外部から外すことができないような構造とされており、螺子止めを解いて映像表示基板ケース200を開けることができないようになっている。
【0039】
図5及び図6を参照して、ベースケース201とカバーケース202との封印状態を具体的に説明する。カバーケース202の左右上部には、それぞれ外側からシールドキャップ209が挿着できるように係合穴207が形成されている。係合穴207の底部には、螺子208によりカバーケース202をベースケース201に固定するために螺子208の先部が挿通できる螺子孔210及び螺子208の頭部が収まる座ぐり210aが、ベースケース201に形成された螺子穴(図示略)に対向して形成されている。また、係合穴207には、その中途ほどに後述するシールドキャップ209の鉤部209aが係合する係合段部211が形成されている。
【0040】
シールドキャップ209は、円筒状のキャップ形状を有し、その周側部に対向するように1対のフック状の鉤部209a、209aが形成され、これら鉤部209a,209aは軸部と頭部とからなり、頭部には外向きに張り出した鉤が形成され、軸部が撓むことで径方向に広がったり閉じたり自在とされている。また、シールドキャップ209の周側部には、カバーケース202の係合穴207に形成された位置決め溝に対応する位置決め凸スリット部209bが設けられ、上面中央部には窪み部209cが形成されている。このようにしてなるシールドキャップ209は、カバーケース202の係合穴207及び螺子孔210を介して螺子208がベースケース201の螺子穴に螺着された後、係合穴207に挿入され、鉤部209a,209aと係合段部211,211とが互いに係合することで取り付けられることにより、係合穴207内にある螺子208の頭部を外部から操作できないように覆い、映像表示基板が映像表示基板ケース200に封印されることになる。
【0041】
本発明の封印部材としてのシールドキャップ209は、樹脂中に紫外線又は赤外線を照射することで蛍光灯下又は可視光下の色とは異なる色に変化したり、発色したりする物質を分散させたものである。例えば、ABS樹脂にEu(III)錯体を分散させて金型で成型することにより、紫外線により赤色に発光する樹脂成型体を製造することができる。このようにしてなるシールドキャップ209は、蛍光灯下又は可視光下では透明であるが、紫外線又は赤外線を照射することで橙色、青色を呈することになる。フォトクロミック化合物などの紫外線又は赤外線発色成分を分散させる量を異ならせることで、紫外線又は赤外線を照射したときの発色濃度などを適宜変更することができ、複数種類の発色成分を混合して用いることで色相などを変えることもできる。
【0042】
なお、映像表示基板ケース200は、再利用のために開封されるが、そのときは、シールドキャップ209の上面部を破壊して係合穴207の中の螺子208を外せばよい。例えば、螺子208を止めたり外したりするためのドライバーの先端をシールドキャップ209の窪み部209cに押し当てた状態でドライバーの把持部先端をハンマーで叩くことでシールドキャップ209の上面部を割ることで穴をあけることができ、ここからドライバーを差し込んで螺子を回すことができる。映像表示基板ケース200を開封した後、内側からピンセットでシールドキャップ209の鉤部209a、209aを摘むことで、シールドキャップ209の残骸を取り除くことができる。そして、再利用するときは、新たなシールドキャップを用いることで、再度封印して用いることができる。再利用するときは、前のシールドキャップ209とは異なる紫外線又は赤外線発色性のシールドキャップを用いることが好ましい。紫外線発色性又は赤外線発色性の異なる複数種類のシールドキャップをランダムに取り替えて用いることで、シールドキャップの偽造、複製に要する時間が遊技機のライフサイクルに間に合わないようにでき、回路基板に対する不正を予防及び防止できる。
【0043】
<実施の形態2>
上述の実施の形態1では、螺子208のシールドキャップ209を紫外線又は赤外線を照射することで蛍光灯下又は可視光下の色とは異なる色に変化又は発色するものとした例について示したが、本実施の形態では、封印部材としてインシュロック方式による結束バンドを用いて封印する例について説明する。なお、実施の形態2は、結束バンドを用いて封印する以外は、概ね実施の形態1と同様であり、以下実施の形態1と相違するところについて主に説明する。
【0044】
図3,4を参照して、ベースケース201とカバーケース202の上端縁の中央部には、それぞれ結束孔206a,206bが形成されており、これら結束孔206a,206bは、映像表示基板ケース200を閉じることで合わさって1つの結合孔206を形成する。
【0045】
図7を参照して、結合孔206には、結束バンド212が挿通され、インシュロックされ、映像表示基板ケース200が開封できないようにされる。つまり、一旦映像表示基板ケース200が結束バンド212により封印されると、結束バンド212を切断しない限り開封できないようにされる。したがって、実施の形態2では、シールドキャップ209は、実施の形態1のときのように、本願発明の形態とする必要はなく、不用ともできる。
【0046】
結束バンド212は、実施の形態1のシールドキャップ209と同様の材質で製造されたものを用いることができる。
【0047】
<実施の形態3>
次に、ロックピン方式による封印をスロットマシン1の主(メイン)基板ケース100に適用した例について説明する。図8(a)及び(b)を参照して、主基板ケース100は、上ケース101と下ケース102とからなり、メイン制御基板103は上ケース101と下ケース102との間に挟み込まれるようにして封印されている。メイン制御基板103には、CPU、ROM、RAMなどの電子部品の他、サブ制御基板や映像表示基板204などに制御信号を送出するためのコネクタが搭載され、コネクタの挿着口が露出されて主基板ケース100により封印されている。
【0048】
上ケース101及び下ケース102は、従来より用いられる樹脂製のものでよく、同様に内部に封印されたメイン制御基板103が外部から視認できるように透明とされている。
【0049】
下ケース102の上端中央部には、封印部材としてのロックフック部材104が取り付けられている。下ケース102とロックフック部材104とは、下ケース102の上端中央部に形成された2つの溶着突起片をロックフック部材104の取付板104aに形成された2つの溶着孔に挿通し、熱溶着することで取り付けられている。
【0050】
ロックフック部材104は、取付板104aから延びる2つの腕部104b、104bとその先端部に形成されたフック状のロックピン104cを有する。ロックフック部材104は、弾性変形可能な合成樹脂を素材として作製された一体成形品である。そして、ロックピン104cは、頭部及び軸部を備えており、軸部の先端の頭部には、笠が形成されている。この笠は、スリットにより2分割された羽根片からなり、これら羽根片が径方向に拡縮自在とされている。
【0051】
上ケース101の上端中央部には、ロックピン104cの頭部を受け入れる係合穴105が形成されており、この係合穴105にロックピン104cの頭部を押し込むと、ロックピン104cの頭部の羽根片は当初縮みつつ押し込まれ、その後係合穴105内で広がり、破壊しない限り2度と抜き取ることができないようになる。
【0052】
こうしてなるロックフック部材も、実施の形態1のシールドキャップ209と同様の材質で製造されたものを用いることができる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態1〜3を用い、映像表示基板ケース200や主基板ケース100をこれとは別体の封印部材209、212、104により封印する例について示したが、本発明はこれに限られることなく、例えば、映像表示基板ケースや主基板ケース自体にフック状の係合部及びこれを挿通する被係合部を形成し、これらケースを閉じることで封印ができるようにしておき、これらケースの全部又は一部を紫外線又は赤外線を照射することにより、蛍光灯下又は可視光下での呈色と異なる色に発色又は発光する樹脂製とすることで封印部材としてもよい。
【0054】
また、通常の樹脂製の封印部材の表面に紫外線又は赤外線を照射することにより蛍光灯下又は可視光下での呈色と異なる色に発色又は発光する物質を塗布又は付着させたりするようにしてもよい。例えばフォトクロミック化合物などの紫外線発色又は赤外線発色する公知の物質を分散させた塗料を所定の形状に成型した封印部材の樹脂成型体の表面に、当該樹脂成型体の透明性又は光透過性が損なわれないように塗布したりすることで製造することができる。その他、本明細書に添付の特許請求の範囲内での種々の設計変更及び修正を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、既存の設備を用いて封印部材を製造することができるので、遊技機の制御を行う回路基板に対する不正の予防乃至防止を低コスト且つ効果的に図る上で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】スロットマシンの外観構成を示す斜視図である。
【図2】スロットマシンの内部構成を示す斜視図であって、前扉を開けた状態を示す。
【図3】実施の形態1の映像表示基板ケースの外観構成を示す斜視図である。
【図4】同映像表示基板ケースの内部構成を示す斜視図であって、開封した状態を示す。
【図5】同映像表示基板ケースに封印部材を取り付ける構造を説明するための部分拡大斜視図である。
【図6】図5のA−A部分断面図である。
【図7】実施の形態2の封印構造を説明するための映像表示基板ケースの部分斜視図である。
【図8】実施の形態3の(A)主基板ケースの斜視図及び(B)そのB−B部分断面図である。
【符号の説明】
【0057】
100 主基板ケース
101 上ケース
102 下ケース
104 ロックフック部材
105,207 係合穴
200 映像表示基板ケース
201 ベースケース
202 カバーケース
206 結合穴
209 シールドキャップ
212 結束バンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機の制御基板の封印部材であって、紫外線又は赤外線を照射することにより、蛍光灯下又は可視光下での呈色と異なる色に発色又は発光することを特徴とする遊技機の制御基板の封印部材。
【請求項2】
前記封印部材は、前記制御基板を収納する基板ケースの開封を阻止するための形状を有することを特徴とする請求項1に記載の封印部材。
【請求項3】
前記封印部材は、前記制御基板を収納するカバー又はケース形状を有することを特徴とする請求項1に記載の封印部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の封印部材を用いて制御基板が封印されていることを特徴とする遊技機。
【請求項5】
遊技機の制御基板に対する不正防止方法であって、前記制御基板を、封印部材の材料として、紫外線又は赤外線を照射することにより、蛍光灯下又は可視光下での呈色と異なる色に発色又は発光する封印部材を用いて封印するとともに、前記封印部材の前記紫外線下又は赤外線下の呈色の色相、明度又は彩度が定期的又は不定期に異なるようにすることを特徴とする不正防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−195487(P2009−195487A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40471(P2008−40471)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(301073598)株式会社SNKプレイモア (116)
【Fターム(参考)】