説明

運動の能動補正を備えた光学回転継手

本発明は、第1光ファイバーを接続する第1コリメーター装置及び第2光ファイバーを接続する第2コリメーター装置を有する光学回転継手に関する。この場合、この第2コリメーター装置は、第1コリメーター装置に対して回転軸線の周りに回転可能に軸支されている。これらのアクチュエーター装置は、2つの軸線に沿って調整可能な1つのアクチュエーターを有するコリメーターを備える。機械公差が補正され、これらのコリメーター装置間の光学減衰量が最少であるように、制御ユニットがこれらのアクチュエーターを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向している回転可能なユニット間の光信号を伝達する、ロータリージョイント又は回転継手とも呼ばれる装置に関する。特に複数の光信号が、当該装置によって複数のチャネル内に同時に伝達され得る。
【背景技術】
【0002】
相対回転可能なユニット間の光信号を伝達するため、様々な伝達システムが公知である。
【0003】
米国特許第5,568,578号明細書では、ドーブプリズムを有する複数のチャネル用の光学回転継手が開示されている。複数の光ファイバーからの光を入射又は出射させるため、複数のGRINレンズが設けられている。このドーブプリズムは、精確な歯車装置によって対向している回転可能な2つのユニット間の半分の角速度で正確に回転される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,568,578号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0100268号明細書
【特許文献3】米国特許第7,106,925号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、光信号を伝達する公知の従来の技術の回転継手を改良すること及び特に経費のかかる歯車装置が省略又は簡略化され得るように公知の従来の技術を構成することにある。さらに、軸受のより大きい機械公差が許容され得るように、当該装置が特に構成されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決手段は、独立請求項に記載されている。本発明のその他の構成は、従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明の装置は、2つのコリメーター装置10,14を有する。このコリメーター装置10,14は、回転軸線の周りに相対回転可能に配置されている。光を伝達する光路が、第1コリメーター装置10とこの第1コリメーター装置10に対向して配置された第2コリメーター装置14との間に存在する。少なくとも1つの非回転式光学素子、例えばドーブプリズム3が、この光路内に存在する。このドーブプリズムは、当該2つのコリーメーター装置10,14間の回転運動に左右されずに第1コリメーター装置10から出射された光を第2コリメーター装置14に投影させ、同様に第2コリメーター装置14から出射された光を第1コリメーター装置10に投影させる。これに対して、ドーブプリズムは、第1コリメーター装置10及び第2コリメーター装置14の回転の半分の角速度で回転される。
【0008】
各コリメーター装置10,14は、少なくとも1つのコリメーター及びこの少なくとも1つのコリメーターを保持する少なくとも1つの手段を有する。ここでのコリメーターの概念は、最も広い意味でビームガイド素子又はビーム生成素子を示す。このようなコリメーターの目的は、光ファイバー、例えばシングルモード光ファイバー又はマルチモード光ファイバー中に送られた光を、回転継手、特に非回転素子を透過され得るビーム路に変換することにある。このビーム路は、自由空間内のビーム路又は例えばガラス若しくはオイルのような光学媒体内のビーム路に相当する。同様に、逆方向の変換、すなわち回転継手内のビーム路から光ファイバー内への変換も、コリメーターによって実施され得る。明らかに、コリメーターの内部では、双方向の同時の変換も考えられる。その結果、双方向の信号が伝達され得る。当該コリメーターレンズは、一般にはマイクロレンズアレイの好適な屈折率分布レンズ(GRINレンズ)や特に好適なレンズである。コリメーター装置は、任意の数の光学チャネルに対して仕様設計され得る。最も簡単な場合では、このコリメーター装置は、ただ1つのチャネルに対して、しかしながら好ましくは2つ以上のチャネルに対して仕様設計されている。したがって、第1光ファイバー群2及び第2光ファイバー群5の概念は、少なくとも1つの光ファイバー、好ましくは複数の光ファイバーに相当する。
【0009】
本発明は、基本的には全ての非回転式光学素子に対して構成可能である。分かりやすさのため、ここでは、ドーブプリズムが示されている。しかし同様に、アッベケーニッヒプリズム又はミラー装置も、非回転式光学素子として使用可能である。
【0010】
本発明のコリメーター装置は、2つの軸線に沿って調整可能な1つのアクチュエーターを有する少なくとも1つのコリメーターを含む。ビームの傾け及び/又はビームのシフトが、このアクチュエーターによって実現される。例えば、光ファイバーの位置が、コリメーターレンズの前方でシフトすると、コリメーターレンズの後方のビームが傾く。光路の減衰量(伝達損失)が最少であるように、当該ビームが、このアクチュエーターによって調整され得る。オプションでは、この少なくとも1つのコリメーターは、1つの軸線内だけで使用されてもよく又はより多くの数の軸線内で調整可能である。この少なくとも1つのアクチュエーターを制御するため、制御ユニット11,13が設けられている。このアクチュエーターが、プリセットされている位置を占めるように、このアクチュエーターは、この制御ユニットによって制御される。このプリセットされている位置は、一定の位置でもよい。この代わりに、この位置は、時間に依存若しくは回転角度に依存又はコリメーター装置若しくは構造部品の温度のようなその他のパラメーターに依存してもよい。この位置は、光学伝達パラメーターに依存してもよい。
【0011】
単一の制御ユニットが、各コリメーター装置に選択的に割り当てられ得る。2つのコリメーター装置の2つの制御ユニットは、好ましくは、選択的に光信号を用いて、容量式に結合された信号を用いて又はスリップリングを通じて伝達される電気信号を用いて交信する。このため、対応する光学式、容量式又は誘導式のカプラ12が設けられている。存在する光学チャネルのうちの1つの光学チャネルも、信号を送るために使用されてもよい。この代わりに、1つの共通の制御ユニットが、当該交信のために2つのコリメーター装置に対して設けられてもよい。
【0012】
本発明は、光ファイバーアレイとマイクロレンズアレイとを組み合わせた場合に特に有益である。光ファイバーアレイは、通常は非常に精確であるものの、マイクロレンズアレイに位置決めされる必要がある。一様な斜視角度が、マイクロレンズアレイに対する光ファイバーアレイの(回転なしの)シフトによって生じる。この斜視角度は、アクチュエーターによってコリメーターユニット全体に対して補正され得る。
【0013】
本発明の特に好適な構成では、アクチュエーターが、補正処理中の調整のために設けられている。すなわち、補正が、例えば、コリメーター装置の始動前に最初に実施され、その後の動作中に所定の間隔で実施される。さらに、光路の減衰量が測定され、アクチュエーターが当該測定に応じて調整される。このアクチュエーターは、進行する動作中は調整されない。すなわち、補正データが、記憶器、特にマイクロコントローラー内に記憶され、進行する動作に対して呼び出され得る。したがって、制御ユニットは、動作中に一定で同じ値を送信する。コリメーター装置の光学式の調整が、このような構成によって著しく簡略化され得る。複数のステップで減衰値を算出し、これに応じてコリメーターが調整つまり固定される経費のかかる機械式の調整の代わりに、全自動式又は少なくとも部分自動式の補正が実施され得る。動作中の変動が補正され得ないので、確かにここでも、軸受及び歯車装置の交差に対する要求は依然として比較的高い。
【0014】
本発明の別の好適な構成では、アクチュエーターが、動作中にコリメーター装置を連続して調整するために構成されている。すなわち、光路の最少減衰量を達成するため、アクチュエーターが、コリメーター装置の回転中に連続して再調整される。この場合、例えば、光学受信器の信号振幅が評価され得る。この代わりに、1つの基準チャネルが設けられてもよい。既知の強度の光信号が、この基準チャネル内に入射される。次いで、回転継手の減衰量が、この基準チャネルの光路の別の端部に対する受信信号から算出され得る。しかし、1つ又は複数のチャネルの信号振幅は、モニター受信器によって監視されてもよい。このため、第1モニター受信器が、第1コリメーター装置に割り当てられていて、第2モニター受信器が、第2コリメーター装置に割り当てられている場合、僅かな割合、伝達すべき信号の例えば1%が、光学カプラによって出射され、モニター受信器に供給される。制御ユニット11,13のうちの少なくとも1つの制御ユニット内では、当該測定されている値の比を計算することによって、減衰量が推測され得る。
【0015】
このとき、少なくとも1つのアクチュエーターが、振幅及び減衰量の測定に基づいて再調整され得る。その結果、減衰量が、最少になるか又はプリセットされている限界値を少なくとも下回る。コリメーターの位置のこの動勢的な調整又は制御によって、コリメーター装置の比較的大きい機械公差を伴う動作中でも、低い伝達減衰量が達成され得る。すなわち、ここでも、軸受内及び/又は歯車装置内のより大きいクリアランスが許容され得る。
【0016】
ただ1つのコリメーター装置が、アクチュエーターを本発明に応じて備える場合、安価な装置が構成される。2つのコリメーター装置が、アクチュエーターを本発明に応じて備える場合、特に低い伝達減衰量を達成することができる。光送信機の側面がアクチュエーターを備えることが特に好ましい。その結果、出射された光ビームが、常にコリメーター内に別のコリメーター装置に応じて焦点合わせされる。ドーブプリズム又はミラーのような非回転素子が、各反射時の斜視角度を二倍にするので、このことは、斜視角度の著しい改良をもたらす。
【0017】
本発明の別の好適な構成では、制御ユニットが、2つのコリメーター装置間の角度位置を算出するセンサを有する。さらにこの制御ユニットは、記憶器を有する。この記憶器は、補正データを有する。これらの補正データは、位置に依存して少なくとも1つのアクチュエーター内に記憶される。その結果、第1コリメーター装置と第2コリメーター装置との間の光学伝達減衰量が最初である。
【0018】
本発明の好適な構成では、少なくとも1つのアクチュエーターが、静電アクチュエーター、電磁アクチュエーター、圧電アクチュエーター又は熱アクチュエーターとして構成されている。
【0019】
本発明の別の好適な構成では、少なくとも1つのコリメーター装置が、例えば米国特許出願公開第2005/0100268号明細書中で開示されているように光ファイバー位置決めユニットを有する。この明細書の内容は、関連技術によって一緒に記載されている。
【0020】
本発明の別の好適な構成では、少なくとも1つのコリメーター装置が、例えば米国特許第7,106,925号明細書中に記載されているように光ファイバーユニットを有する。この明細書の内容は、関連技術によって一緒に記載されている。
【0021】
本発明の別の対象は、光学回転継手で使用されるコリメーター装置である。
【0022】
別の本発明の対象は、軸線6の周りを相対回転可能に配置されている2つのコリメーター装置10,14を有する光学回転継手である。光を伝達する光路が、この第1コリメーター装置10とこの第1コリメーター装置10に対向して回転可能に配置された第2コリメーター装置14との間に存在する。前述した構成とは違って、非回転光学素子が、当該両コリメーター装置間に存在しない。むしろ、少なくとも1つのコリメーターが、2つの軸線に沿って調整可能なアクチュエーターを非回転のために有する。したがって、この調整可能なアクチュエーターを有する少なくとも1つのコリメーターが、制御ユニットによって回転運動に応じて作動される。その結果、このコリメーターは、対応する別のコリメーターユニットの対応するコリメーターに常に整合されている。ここでも、このような本発明のコリメーターは、1つのコリメーター装置内だけに、特に2つのコリメーター装置内だけに設けられ得る。
【0023】
例えばドーブプリズムとしての非回転光学素子が、この発明の応じて不要であるので、多くの利点が得られる。2つのコリメーター装置間の距離が減少する。この必要な距離は、最大可能偏向角度及びコリメーター装置の大きさによってプリセットされる。著しい重量の削減が、プリズムを省略することによって生じる。さらに、コリメーター装置の機械公差に対する要求が著しく少ない。また、当該コリメーター装置間の距離が僅かであり且つこれに対応するより僅かな収束で済むので、より簡単なコリメーターも使用され得る。すなわち、例えばレンズ形に構成された光ファイバー端部又は光ファイバーテーパーで十分である。
【0024】
上述したように、ここでは、光ファイバーアレイとマイクロレンズアレイとの組み合わせも特に良好である。ここでは、斜視角度が自動的に補正され得る。これによって、取り付け時のより大きい公差が可能になり、したがってより僅かな製造コストが可能になる。
【0025】
別の本発明の構成では、1つのコリメーターユニットの個々のコリメーターが、少なくとも2つの軸線に沿って調整不可能である。むしろ、このコリメーターユニットの当該光学構成群の全体が、少なくとも2つの軸線に沿って位置決めされる。すなわち、例えば、多数のコリメーターを支持する1つのマイクロ光学系が、少なくとも2つの軸線に沿って調整され得る。
【0026】
別の本発明の構成では、当該位置決めが、2つ以上の軸線に沿って実施される。すなわち、例えばもう1つの調整が、回転軸線に対して平行に、すなわちコリメーターの長軸に沿って実施され得る。
【0027】
本発明の別の好適な構成では、少なくとも1つのコリメーターを調整するため、微視力学的な調整装置が設けられている。この調整装置は、例えばマイクロ歯車装置として構成され得る。これによって、コリメーター自体又は光ファイバーが、コリメーターレンズの前方に配置され得る。
【0028】
本発明の別の構成は、良好な運動トラック、特に短い運動トラックが得られるように、個々のコリメーターが、第1コリメーター装置10及び第2コリメーター装置14に相互に配置されていることを提唱する。例えば、第1コリメーター装置の外側のコリメーターが、第2コリメーター装置の回転中心に沿った内側のコリメーター上に結像され得る。これらのコリメーター装置の個々のチャネルの対称な配置又は完全に等しい配置は必要でない。
【0029】
本発明の別の構成では、制御ユニット11,13のうちの少なくとも1つの制御ユニットが、個々のチャネルをオン又はオフにできるか又はチャネルの割り当てを変更できるように、当該制御ユニットは構成されている。すなわち、例えばアクチュエーターを適切に制御することによって、第1コリメーター装置10の1つの光学チャネルが、第2コリメーター装置14のプリセットされているもう1つのチャネル上に結像される。必要な場合は、第2コリメーター装置14のもう1つのチャネルに切り替えられ得る。本発明の回転継手は、これに応じて、本発明の回転継手は、切替マトリックスとして使用可能である。したがって、例えば時分割多重式の様々なチャネルが実現され得る。例えば、チャネルが、間違った順序で結線された場合に、又は、個々のチャネルが、光ファイバー内に若しくは例えばコリメーター装置のような回転継手の構成要素内に欠陥を有する場合に、当該装置の再構成も可能である。
【0030】
本発明の別の観点に応じて、少なくとも1つのMEMS(微小電子機械システム)ミラーアレイが、選択的にビーム偏向するために設けられている。個々の光ファイバーからの個々の光ビームの適切な偏向も、このようなMEMSミラーアレイを用いて可能である。したがって、例えばドーブプリズムのような非回転光学素子と組み合わせた場合にも、コリメーター装置の機械公差が補正され得る。同様に、個々のミラーが、回転運動に応じて制御される時に、非回転も可能である。
【0031】
少なくとも1つのMEMSミラーアレイ15,1が、第1光ファイバー群2と第2光ファイバー群5との間に設けられている。このMEMSミラーアレイ15,1は、少なくとも1つの制御ユニット11,13によって制御され、一方の光ファイバー群2,5のうちの少なくとも1つの光ファイバーからの光を他方の光ファイバー群5,2のうちの1つの所定の光ファイバーの方向に回転に関係なく偏向させる。
【0032】
好ましくは、1つの光ビームが、1つのミラー上に入射するように、複数のミラーが、個々の光ファイバーからの光ビームに対して整向される。しかし、この代わりに、1つの光ビームが、複数のミラー上に入射してもよい。その結果、冗長なミラー系が構成され得る。このミラー系は、1つのミラーが故障した場合でも常に機能する。しかも、1つの光ビームが、このようなミラー系によって複数の光ビームに分割され得る。
【0033】
ここで説明した構成の様々なバリエーションが互いに組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の装置の概略を図示する。
【図2】従来の技術の代表的な装置を示す。
【図3】本発明の装置の別の実施の形態を示す。
【図4】電気式回転継手を有する図3の構成を示す。
【図5】調整可能なコリメーター、非回転式光学素子及び固定式コリメーター装置を有する装置の配置を示す。
【図6】光を90°だけ偏向させるコリメーター装置を有する図5に類似の装置を示す。
【図7】調整可能なコリメーター及び固定式のコリメーター装置を有するものの非回転式の光学素子を有しない装置を示す。
【図8】光を90°だけ偏向させるコリメーター装置を有する図7に類似の装置を示す。
【図9】2つのMEMSミラーアレイを有する装置を示す。
【図10】MEMSミラーアレイと調整可能なコリメーターを有するコリメーター装置を備えた装置を示す。
【図11】MEMSミラーアレイとコリメーター配置とを有する装置を示す。
【図12】固定式コリメーターと非回転式光学素子とコリメーター装置を有するMEMSミラーアレイとを備えた装置を示す。
【図13】マトリックス式のコリメーター装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の装置の回転軸線6に沿った断面を概略的に示す。本発明の光学回転継手は、第1光ファイバー群2を接続する第1コリメーター装置10及び第2光ファイバー群5を接続する第2コリメーター装置14を有する。非回転光学素子、ここではドーブプリズムが、第1コリメーター装置10と第2コリメーター装置14との間に配置されている。3つの光ビーム7,8,9のビーム路が、本発明の装置の機能を具体的に示す。すなわち、光が、例えば第1光ファイバー群2のうちの1つの光ファイバーを通じて入射され得る。この光は、第1コリメーター装置10内で回転軸線に対して平行な方向にコリメートされる。このコリメーター装置10は、2つの軸線に沿って調整可能なアクチュエーターを有するコリメーターを備える。ここでは、全てのコリメーターが、2つの軸線に沿って別々に調整され得る。これらのコリメーターは、制御ユニット11によって制御される。同様に、第2コリメーター装置14は、2つの軸線に沿って調整可能なアクチュエーターを有するコリメーターを備える。ここでも、全てのコリメーターが、2つの軸線に沿って別々に調整可能である。当該制御のため、第2制御ユニット13が設けられている。
【0036】
図2は、従来の技術の装置を概略的に示す。この光学回転継手は、第1光ファイバー2を接続する第1コリメーター装置1及び第2光ファイバー5を接続する第2コリメーター装置4を有する。この第2コリメーター装置4は、第1コリメーター装置1に対して軸線6の周りに回転可能に軸支されている。回転運動を補正するため、ドーブプリズム3としての非回転光学素子が、第1コリメーター装置1と第2コリメーター装置との間のビーム路内に存在する。3つの光ビーム7,8,9の代表的なビーム路が、第1光ファイバー群2から出発して第1コリメーター装置1を通じて、ドーブプリズム3を透過して、第2コリメーター装置4を通じて、第2光ファイバー5まで示されている。
【0037】
図3は、本発明の装置の別のバリエーションを示す。ここでは、非回転光学素子は不要になる。当該非回転は、コリメーター自体の運動によって実現される。第1コリメーター装置10を制御するため、第1制御ユニット11が設けられている。第2コリメーター装置14は、第2制御ユニット13によって制御される。
【0038】
図4は、本発明の回転継手の別の例を示す。この場合、第1制御ユニット11と第2制御ユニット13との間の交信のため、電気式回転継手12、例えば容量性カプラが設けられている。
【0039】
図5中には、非回転光学素子を有する別の装置が示されている。すなわち、第1制御ユニット11によって制御される調整可能なコリメーターを有する第1コリメーター装置10が、非回転光学素子3の一方の横に設けられている。回転継手の全体の公差が、このコリメーター装置によって補正され得る。第2光ファイバー群5に接続する固定したコリメーターを有する第2コリメーター装置4が、非回転光学素子3の他方の横に設けられている。図6は、図5に対応する装置を示す。図5と違って、偏向ユニットが、第2コリメーター装置4に装着されている。この偏向ユニットは、光を90°だけ偏向させる。明らかに、その他の偏向角度も実現可能である。ここで示された装置は、第2光ファイバー群5が軸線6に対して垂直に配置され得る利点を有する。当該配置は、この装置の構造長さを低減する。
【0040】
図7は、第1制御ユニット11によって制御される調整可能なコリメーター10を有する第1コリメーター装置と従来の技術に相当する第2コリメーター装置4とを有する装置を示す。非回転は、第1コリメーター装置内で調整可能なコリメーター10によって実施される。これらのコリメーターは、ここでは回転運動に応じて調整される。調整可能なコリメーター10を有する第1コリメーター装置の方向からの光だけが、回転運動を補正するために適切に偏向され得るので、この装置は、当該方向からの光を伝達するためだけに適している。第2コリメーター装置4のコリメーターは運動しない。したがって、このコリメーター装置の方向からの光は非回転にされ得ない。1つの光学チャネルが、回転軸線6上に設けられている場合に対しては、この光学チャネルは、非回転なしに、したがって両伝達方向で使用され得る。
【0041】
図8は、上述した装置と類似の装置を示す。しかしここでは、第2コリメーター装置4が、90°偏向しているコリメーターとして構成されている。その結果、第2光ファイバー群5が、回転軸線6に対して垂直に配置され得る。
【0042】
図9は、第1制御ユニット11によって制御される第1MEMSミラーアレイ15と第2制御ユニット13によって制御される第2MEMSミラーアレイ16とを有する本発明の装置を示す。これらの両MEMSミラーアレイ15,16は、対応するチャネルを割り当て又はチャネルを非回転にする。特に短い光路の長さが、この装置によって実現可能である。その結果、コリメーターレンズも、簡単に構成され得るか又は完全に省略され得る。場合によっては、コリメーターレンズが、第1光ファイバー群2及び/又は第2光ファイバー群5に対してさらに設けられ得る。
【0043】
図10は、第1制御ユニット11によって制御される調整可能なコリメーター10を有する第1コリメーター装置と第2制御ユニット13によって制御される第2MEMSミラーアレイ16とを備えた本発明の装置を示す。
【0044】
図11は、固定したコリメーターと第2制御ユニット13によって制御される第2MEMSミラーアレイ16とを有する第1コリメーター装置1を示す。このミラーを適切に方向制御することによって、第1コリメーター装置1から来る光が、第2光ファイバー群5から成る対応する光ファイバーの方向に偏向され得る。同様に、第2光ファイバー群5からの光も、第1コリメーター装置1の第1光ファイバー群2の任意の光ファイバーの方向に偏向され得る。
【0045】
図12は、第1コリメーター装置1、非回転光学素子3及び第2制御ユニット13によって制御される第2MEMSミラーアレイ16を有する別の装置を示す。この実施の形態は、唯一の好適な実施の形態を示す。明らかに、可能なあらゆる組み合わせが、ここで示された要素から実現可能である。すなわち、例えば、MEMSミラーアレイも、制御可能なコリメーターと組み合わせでき、選択的にさらに非回転光学素子と組み合わせできる。
【0046】
図13は、本発明のマトリックス式のコリメーター装置のレンズの正面を示す。より良好に説明するため、当該マトリックスは、縦列30〜34及び横列35〜39に区分されている。これらのコリメーターは、ここではより良好に認識できるように四角として示されている。装置の全体が、その中心点(水平に延在する軸線と水平に延在する軸線とから成る交点)の周りで回転されるので、個々のコリメーターは、円形のトラック40〜43上を運動する。これらのトラック40〜43は、その半径に応じて内側から外側に向かって番号付けされている。回転運動中の個々のコリメーターの斜視角度を最小にすることが特に好ましい。これによって、光路の長さの変化も僅かなままである。したがって、回転時の伝達損失の変化がより僅かである。当該僅かな伝達損失の変化を達成するためには、第1コリメーター装置10のコリメーター及び第2コリメーター装置14のコリメーターの横方向の距離が最小に保持されなければならない。大きい半径を有する第1コリメーター装置のコリメーターが、小さい半径を有する第2コリメーター装置のコリメーターに結合されることによって、当該最小の距離の保持が実現される。好ましくは、中心点にあるコリメーターは、このことから除外される。すなわち、例えば、半径43上の第1コリメーター装置10のコリメーターが、半径40上の第2コリメーター装置14のコリメーターに結合され得る。半径42上の第1コリメーター装置10のコリメーターが、半径42上の第2コリメーター装置14のコリメーターに結合される。
【0047】
図14は、代表的なコリメーター装置4の詳細を示す。ここで示されたこの詳細が、別のコリメーター装置に関連する場合でも、当該詳細は、その別の図面に対しても意味どおりに成立する。光ファイバー群5は、フェルール20内に収容されている個々の光ファイバーから成る。フェルールの代わりに、ガラス板又はプリズムのような支持体上への例えば接着、接合のようなその他の固定方式も使用され得る。フェルールの代わりに、又は、フェルールの内部にも、例えば屈折率分布レンズ又は球レンズのようなレンズも存在し得る。したがって、ビームガイド又はビーム生成が可能である。特に、光ファイバー群の個々の光ファイバーから出射する光が、当該レンズによって平行な光束に変換され、外部から来る平行な光束が、光ファイバー内に焦点合わせされる。さらに、オプションでビームをガイドし又はビームを生成し又は焦点合わせするため、少なくとも1つのレンズ17が設けられている。典型的なビーム路18が、光ファイバー5とレンズとの間に示されている。当該光ビーム18は、光ファイバーから出射し、プリズム19の背面で反射し、レンズ17を透過してこのプリズム19を離れる。
【符号の説明】
【0048】
1 第1コリメーター装置
2 第1光ファイバー群
3 非回転式光学素子
4 第2コリメーター装置
5 第2光ファイバー群
6 回転軸線
7 第1光ビーム
8 第2光ビーム
9 第3光ビーム
10 調整可能なコリメーターを有する第1コリメーター装置
11 第1制御ユニット
12 電気式回転継手、カプラ
13 第2制御ユニット
14 調整可能なコリメーターを有する第1コリメーター装置
15 第1MEMSミラーアレイ
16 第2MEMSミラーアレイ
17 レンズ
18 ビーム路、光ビーム
19 プリズム
20 フェルール
30 コリメーターマトリックス縦列0
31 コリメーターマトリックス縦列1
32 コリメーターマトリックス縦列2
33 コリメーターマトリックス縦列3
34 コリメーターマトリックス縦列4
35 コリメーターマトリックス横列0
36 コリメーターマトリックス横列1
37 コリメーターマトリックス横列2
38 コリメーターマトリックス横列3
39 コリメーターマトリックス横列4
40 コリメーターマトリックス半径0
41 コリメーターマトリックス半径1
42 コリメーターマトリックス半径2
43 コリメーターマトリックス半径3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光ファイバーを有する第1光ファイバー群(2)を接続する少なくとも1つの第1コリメーター装置(10)を備え、及び少なくとも1つの光ファイバーを有する第2光ファイバー群(5)を接続する1つの第2コリメーター装置(14)を備え、及び前記第1コリメーター装置(10)と前記第2コリメーター装置(14)との間の光路内に存在する1つの非回転光学素子(3)を備え、前記第2コリメーター装置(14)は、前記第1コリメーター装置(10)に対して回転軸線(6)の周りに回転可能に軸支されている光学回転継手において、
少なくとも1つのコリメーター装置(10,14)が、2つの軸線に沿って調整可能な1つのアクチュエーターを有する少なくとも1つのコリメーターを備え、さらに少なくとも1つの制御ユニット(11,13)が設けられていて、この制御ユニット(11,13)は、前記少なくとも1つのコリメーターがプリセットされている位置を占めるようにこのコリメーターを制御することを特徴とする光学回転継手。
【請求項2】
少なくとも1つの光ファイバーを有する第1光ファイバー群(2)を接続する少なくとも1つの第1コリメーター装置(10)を備え、及び少なくとも1つの光ファイバーを有する第2光ファイバー群(5)を接続する1つの第2コリメーター装置(14)を備え、前記第2コリメーター装置(14)は、前記第1コリメーター装置(10)に対して回転軸線(6)の周りに回転可能に軸支されている光学回転継手において、
少なくとも1つのコリメーター装置(10,14)が、2つの軸線に沿って調整可能な1つのアクチュエーターを有する少なくとも1つのコリメーターを備え、さらに少なくとも1つの制御ユニット(11,13)が設けられていて、この制御ユニット(11,13)は、前記少なくとも1つのコリメーターが回転に関係なくそれぞれの別のコリメーター装置の対応するコリメーターに向かって常に整向されているようにこのコリメーターを制御することを特徴とする光学回転継手。
【請求項3】
少なくとも1つの光ファイバーを有する第1光ファイバー群(2)を接続する少なくとも1つの第1コリメーター装置(10)を備え、及び少なくとも1つの光ファイバーを有する第2光ファイバー群(5)を接続する1つの第2コリメーター装置(14)を備え、前記第2コリメーター装置(14)は、前記第1コリメーター装置(10)に対して回転軸線(6)の周りに回転可能に軸支されている光学回転継手において、
少なくとも1つのMEMSミラーアレイ(15,16)が、第1光ファイバー群(2)と第2光ファイバー群(5)との間に設けられていて、さらに少なくとも1つの制御ユニット(11,13)が設けられていて、前記少なくとも1つのMEMSミラーアレイは、一方の光ファイバー群(2,5)のうちの少なくとも1つの光ファイバーからの光を他方の光ファイバー群(5,2)のうちの1つの所定の光ファイバー内に回転に関係なく偏向させることを特徴とする光学回転継手。
【請求項4】
前記第1コリメーター装置(10)と前記第2コリメーター装置(14)との間の光学伝達減衰量が最少であるように、前記少なくとも1つの制御ユニット(11,13)は、前記少なくとも1つのアクチュエーターを制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの制御ユニット(11,13)は、補正中に測定された補正データを記憶する手段を有し、さらに動作中に当該測定値を前記少なくとも1つのアクチュエーターに供給することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの制御ユニット(11,13)は、前記伝達減衰量を算出する手段を有し、前記第1コリメーター装置(10)と前記第2コリメーター装置(14)との間の前記伝達減衰量が最少であるように、さらに動作中に前記少なくとも1つのアクチュエーターを制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの制御ユニット(11,13)は、角度位置を算出する手段を有し、動作中にこの角度位置に応じて前記少なくとも1つのアクチュエーターを制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記アクチュエーターのうちの少なくとも1つのアクチュエーターが、静電アクチュエーター、電磁アクチュエーター、圧電アクチュエーター又は熱アクチュエーターとして構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つのビームガイド素子及び/又はビーム生成素子を有する光学回転継手用のコリメーター装置において、
少なくとも1つのコリメーター装置(10,14)が、2つの軸線に沿って調整可能な1つのアクチュエーターを有する少なくとも1つのコリメーターを備え、さらに少なくとも1つの制御ユニット(11,13)が設けられていて、この制御ユニット(11,13)は、前記少なくとも1つのコリメーターがプリセットされている位置を占めるようにこのコリメーターを制御することを特徴とするコリメーター装置。
【請求項10】
少なくとも1つのビームガイド素子及び/又はビーム生成素子を有する光学回転継手用のコリメーター装置において、
少なくとも1つのコリメーター装置(10,14)が、2つの軸線に沿って調整可能な1つのアクチュエーターを有する少なくとも1つのコリメーターを備え、さらに少なくとも1つの制御ユニット(11,13)が設けられていて、この制御ユニット(11,13)は、前記少なくとも1つのコリメーターが回転に関係なくそれぞれの別のコリメーター装置の対応するコリメーターに向かって常に整向されているようにこのコリメーターを制御することを特徴とするコリメーター装置。
【請求項11】
光学回転継手用のコリメーター装置において、
少なくとも1つのMEMSミラーアレイ(15,16)が、第1光ファイバー群(2)と第2光ファイバー群(5)との間に設けられていて、さらに少なくとも1つの制御ユニット(11,13)が設けられていて、前記少なくとも1つのMEMSミラーアレイは、一方の光ファイバー群(2,5)のうちの少なくとも1つの光ファイバーからの光を他方の光ファイバー群(5,2)のうちの1つの所定の光ファイバー内に回転に関係なく偏向させることを特徴とする光学回転継手用のコリメーター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−531469(P2010−531469A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513805(P2010−513805)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055616
【国際公開番号】WO2009/000590
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(502379309)シュライフリング ウント アパラーテバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【Fターム(参考)】