説明

運転支援装置

【課題】この発明は、車両の接触や位置ずれを回避し易くする車両状態を設定でき、車両が容易に動き出すことがないように保持でき、不注意や誤操作による車両の接触を回避できる運転支援装置を実現することを目的とする。
【解決手段】この発明は、運転支援装置において、物体検知手段からの出力により車両の接触有無を判断する機能と、通信手段からの車両位置情報により目標位置ずれ有無を判断する機能とを有し、これらの機能から車両の接触有判断と目標位置ずれ有判断とのうち1つ以上の判断が成立した場合に、シフト制御装置にニュートラルレンジ要求するよう制御する一方、シフト制御装置はこの要求により変速機がニュートラルレンジを実現するよう切換制御することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は運転支援装置に係り、特に、パーキングアシスト機能及びシフトバイワイヤ機能を有した車両における、パーキングアシスト機能作動時のレンジ切換を自動で行うことができる運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の運転操作をアシストして車両を規定の位置に誘導する運転支援装置としては、図13・図14に示すものがある。図13において、101は運転支援装置である。運転支援装置101は、パーキングアシスト機能を備え、例えば図2・図3に示すように、車両Vの並列駐車や縦列駐車をアシストする。運転支援装置101は、車両Vの後進走行時に後方状況を撮影するバックカメラ102と、バックカメラ102が撮影した映像及び運転操作の指示を画面に表示するモニタ103と、運転者に音声でガイドや注意を喚起する発音器104と、車両Vの周囲に存在する物体を検知する物体検知手段である空間センサ105と、パーキングアシストモードを選択可能とする選択入力手段である選択スイッチ106とを備え、運転支援制御手段107に接続している。
運転支援制御手段107は、通信手段である車両LAN108によって、車両Vに搭載された別な制御装置のブレーキ制御装置109、パワーステアリング制御装置110や、車両に搭載された別な検出手段の舵角センサ111に接続されている。運転支援制御手段107は、ブレーキ制御装置109、パワーステアリング制御装置110、舵角センサ111との間で、車両位置情報および制動状態情報を含む車両情報を通信し、車両Vの駐車をアシストするパーキングアシスト機能を備えている。
運転支援装置101は、図14に示すように、例えば変速機をドライブレンジ(Dレンジ)として制御がスタートすると(F01)、選択スイッチ106のパーキングアシストモード選択操作を検知し(F02)、モニタ103の表示及び発音器104の音声ガイドによるアシストを開始し、バックカメラ102の映像、空間センサ105の検知情報及び通信により得た車両情報を基に、変速機のレンジを切り換える切換ポイントC及び車両Vを駐車させる目標停車位置T(図2・図3参照)を設定し(F03)、切換ポイントCに向けての車両Vの移動をアシストし(F04)、車両Vが切換ポイントCに到達したかを判断する(F05)。
車両Vが切換ポイントCに到達していず、判断(F05)がNOの場合は、アシスト(F04)を継続する。車両Vが切換ポイントCに到達して、判断(F05)がYESの場合は、モニタ103の表示及び発音器104の音声ガイドで運転者にブレーキ操作を指示し(F06)、ブレーキ操作の検知及び車速が所定車速以下の検知を行い(F07)、発音器104による音声ガイドでDレンジからリバースレンジ(Rレンジ)への切り換え操作の指示及びブレーキ操作の継続の指示を行い(F08)、目標停車位置Tへ向けての車両Vの移動をアシストし(F09)、車両Vが目標停車位置Tに到達したかを判断する(F10)。
車両Vが目標停車位置Tに到達していず、判断(F10)がNOの場合は、アシスト(F09)を継続する。車両Vが目標停車位置Tに到達して、判断(F10)がYESの場合は、モニタ103の表示及び発音器104の音声ガイドで運転者にブレーキ操作を指示し(F11)、ブレーキ操作及び車速が所定車速以下を検知したかを判断する(F12)。
ブレーキ操作及び車速が所定車速以下を検知していず、判断(F12)がNOの場合は、この判断(F12)を継続する。ブレーキ操作及び車速が所定車速以下を検知して、判断(F12)がYESの場合は、モニタ103の表示及び発音器104の音声ガイドによりアシストの終了を告知し(F13)、制御をエンドにする(F14)。運転者は、アシスト終了の告知により、変速機をRレンジからパーキングレンジ(Pレンジ)に切り換え操作する。
このように、従来の運転支援装置101は、車両Vの駐車をアシストするパーキングアシスト機能を備え、規定の位置に車両Vを停車して決められた手順の操作を行うことで、車両Vを目標停車位置Tに移動させることができ、容易に駐車を可能とする。この運転支援装置101は、バックカメラ102による後方状況をモニタ102の画面に映し、ステアリングホイールを自動/半自動で回転させることで車両Vを目標停車位置に移動させる。この運転支援装置101によるパーキングアシスト機能において、運転者が操作するのは、主に、ブレーキペダル、ステアリングホイール(一部操作)、シフトレバーである。
【0003】
従来の運転支援装置には、変速機をパーキングレンジに切り換えて自動駐車機能により車両を所定の駐車区画に誘導している際に、変速機がパーキングレンジ以外のレンジに切り換えられても、ブレーキ操作されていない場合は自動駐車の制御を続行し、車両の動きが不意に変化することを防止するものがある。
【特許文献1】特許第2720700号公報
【0004】
従来の運転支援装置には、自動駐車制御中に車両の実際の移動方向がセレクトレバーで選択した車両の移動方向と異なる場合に、車両が元の移動経路を逆行するように目標停車位置までの移動軌跡を出力することで、車両の移動軌跡が本来の移動軌跡から逸脱するのを防止するものがある。
【特許文献2】特許第3104171号公報
【0005】
従来の運転支援装置には、目標停車位置までの移動軌跡の記憶内容に基づくステアリングアクチュエータの制御中に、移動軌跡内に存在する障害物や移動軌跡内に侵入してくる障害物の有無を判定することで、障害物があると判定された場合に回避手段を講じることを可能とするものがある。
【特許文献3】特許第3138803号公報
【0006】
従来の運転支援装置には、シフトレバーが前進位置にある場合は障害物との距離を測定するセンサの検知範囲を大きくし、シフトレバーが後退位置にある場合は障害物との距離を測定するセンサの検知範囲を小さくすることで、車両を後退で駐車させる際にセンサが離れた位置の障害物を検知して、警報が頻繁に発せられることを防止するものがある。
【特許文献4】特開2007−15661号公報
【0007】
従来の運転支援装置には、移動経路に沿って車両を停車位置へ移動中に、車両の現在位置の移動経路からの外れ量に応じて修正操舵を行うことで、移動経路からの逸脱を速やかに修正するものがある。
【特許文献5】特開平10−264839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の運転支援装置においては、運転者が運転操作に慣れていない場合に、一回で上手く目標停車位置まで移動させて駐車できない場合が多い。上手くできなかった場合には、車両周辺に存在する物体(他の車両等)に接触しそうになると、慌ててブレーキペダルを踏んで停車し、変速機のレンジ切り換え、ステアリングホイールの方向修正などの操作を行うことになる。このとき、運転支援装置は、運転者のレンジ切り換え操作や、ステアリングホイールの方向修正操作により、パーキングアシスト機能を中断、あるいは停止する。また、運転者は、運転操作に慣れた場合でも、大丈夫と思って注意不足で周囲の物体に接触する場合もある。
つまり、運転支援装置のアシスト機能がうまくいかなかった場合は、運転者が注意していないと、車両周辺の車両等に接触する可能性がある。また、運転者が運転操作に慣れていない場合は、モニタの画面(あるいは、発音器の音声ガイド)に注意しながら、ブレーキペダル、ステアリングハンドル及びシフトレバーを操作しなくてはいけないので、運転者の操作負担が大きくなる問題がある。
【0009】
このように、従来の運転支援装置は、一通りの案内がきちんとしていても、やり直しの最中にパーキングアシスト機能が空白(中断/停止)となってしまうと、運転者の負担が急に大きくなる。そして、利便性を高めるために車両に搭載した変速機のクリープ制御が働いていることによって、漫然としていても車両を移動することが容易なので、ただブレーキ踏力を緩めるだけのことでも車両が動いてしまい、周囲の物体に接触してしまったり、目標停車位置から行き過ぎたりすることがある。
例えば、駐車操作が不得手な運転者は、操舵輪の角度が分からなくなり易く、シフトレバーの操作のためにステアリングホイールから手を離したり、持ち替えたりすると、操舵輪の角度の不明状態を助長してしまい、負担が増えるだけでなく、不安や焦りを招いてしまうことになる。そして、車両は、そのような状態であっても、利便性を高める車両のクリープ制御が働いていることによって、混乱で判断をあいまいとしたまま、移動が容易な状況に陥ることがある。このため、運転者は、ただブレーキ踏力を緩めるだけのことでも、車両が周囲の物体に接触してしまい、結果的に不注意や誤操作となってしまうことがある。
【0010】
この発明は、やり直しに際してのアシストに十分配慮すること、特に、適時に車両を待ちの状態、すなわち、停車状態に導いて停車を維持することが可能とすること、クリープ制御によって車両を安易に動ける状態から脱却可能とすること、そして、ステアリング操作を中断する機会を減らして、ステアリング操作に集中できる環境を整えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、車両の周囲に存在する物体を検知する物体検知手段と、車両に搭載された別な制御装置との間で車両位置情報および制動状態情報を含む車両情報を通信する通信手段と、変速機の変速状態を制御するシフト制御装置と、を併設する運転支援装置において、前記運転支援装置は、前記物体検知手段からの出力により車両の接触有無を判断する機能と、前記通信手段からの車両位置情報により目標位置ずれ有無を判断する機能とを有し、これらの機能から車両の接触有判断と目標位置ずれ有判断とのうち1つ以上の判断が成立した場合に、前記シフト制御装置にニュートラルレンジ要求するよう制御する一方、シフト制御装置はこの要求により変速機がニュートラルレンジを実現するよう切換制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明の運転支援装置は、車両の接触や位置ずれといった不都合を回避し易くする車両状態を設定することができる。
また、この発明の運転支援装置は、車両が容易に動き出すことがないように保持できるので、不注意や誤操作による車両の接触を回避でき、うっかり防止を果たせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明は、適時に車両を待ちの状態、すなわち、停車状態に導くことで、車両の接触や位置ずれといった不都合を回避するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0014】
図1〜図12は、この発明の実施例を示すものである。図1は実施例を示す運転支援装置のシステム構成図、図2は並列駐車における車両移動軌跡を示す図、図3は縦列駐車における車両移動軌跡を示す図、図4は並列駐車における隣接車両との接触を示す図、図5は並列駐車における後方への位置ずれを示す図、図6は並列駐車におけるパーキングアシスト機能によるDレンジからRレンジへの切り換えを示す図、図7は並列駐車におけるパーキングアシスト機能によるRレンジからPレンジへの切り換えを示す図、図8は運転支援装置のパーキングアシスト機能によるメインフローチャート、図9は切換ポイントへ向けての移動アシストのフローチャート、図10は目標停車位置へ向けての移動アシストのフローチャート、図11は車両の接触可能性判断のフローチャート、図12はパーキングアシスト機能のニュートラルレンジ要求によるレンジ切り換えのフローチャートである。
図1において、1は運転支援装置である。運転支援装置1は、パーキングアシスト機能を備え、例えば図2・図3に示すように、車両Vの並列駐車や縦列駐車をアシストする。運転支援装置1は、バックカメラ2と、モニタ3と、発音器4と、空間センサ5と、選択スイッチ6とを備え、運転支援制御手段7に接続している。バックカメラ2は、後述する変速機17のリバースレンジ(Rレンジ)時に車両Vの側方や後方状況を撮影する。モニタ3は、バックカメラ2が撮影した映像及び運転操作の指示を表示する。発音器4は、運転者に音声でガイドや注意を喚起する。
空間センサ5は、車両Vの周囲に存在する物体を検知する物体検知手段である。空間センサ5は、超音波センサ、電波レーダ、レーザーレーダ等やそれらの組み合わせからなり、車両Vの周囲に存在する物体(他車両や歩行者等を含む第三者交通や固定物など)を検知し、車両Vと物体との間の距離を測定する。選択スイッチ6は、パーキングアシストモードを選択可能とする選択入力手段である。選択スイッチ6は、運転支援装置1によるパーキングアシスト機能の開始/停止、駐車方法(並列駐車・縦列駐車)などを選択することができる。
前記運転支援制御手段7は、通信手段である車両LAN8によって、車両Vに搭載された別な制御装置であるシフト制御装置9、変速制御装置10、メータ制御装置11、ブレーキ制御装置12、パワーステアリング制御装置13や、車両Vに搭載された別な検出手段である舵角センサ14に接続されている。前記車両LAN8は、車両Vの通信システム(CAN:CAR AREA NETWORK)であって、車両情報(車速、エンジン回転速度、ブレーキ動作、シフト要求、シフトレンジ等)を送受信する。
【0015】
前記シフト制御装置9、シフトセレクトスイッチ15の出力するシフト要求信号によりアクチュエータ16を制御し、変速機17の変速状態を切り換える。前記変速機17は、有段自動変速機、無段自動変速機等であり、変速レンジとして、例えば、パーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)を有している。変速機17は、Dレンジ等の前進走行レンジ、Rレンジ等の後退走行レンジのいずれにおいても、極低速での移動、すなわちクリープ走行を行うように構成されている。
前記シフトセレクトスイッチ15は、運転者が選択操作可能なシフトレバー18を備え、シフトレバー18による運転者の選択操作により、変速機17の変速レンジを運転者が要求する変速レンジに切り換えるためのシフト要求信号を出力する。シフトセレクトスイッチ15は、変速機17の変速レンジに対応した、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジ等の選択可能なレンジスイッチを備え、運転者がシフトレバー18によりレンジスイッチの1つを選択してある変速レンジを選択した状態に操作すると、変速機17をこの選択状態の変速レンジに切り換えることを要求するシフト要求信号を出力する。
前記アクチュエータ16は、モータ19とギヤ機構20と角度センサ21とから構成され、変速機17の取り得る変速レンジを切換可能である。アクチュエータ16は、モータ19によりギヤ機構20を介して変速機16に設けたマニュアルシフトシャフト22を回転させ、回転角に応じて変速機16の変速レンジを切り換える。角度センサ21は、マニュアルシフトシャフト22の回転角を検出し、回転角度信号を出力する。マニュアルシフトシャフト22は、変速機16内部のデテント機構に連結され、切り換えた変速レンジに応じて回転してレンジを切り換える。
【0016】
前記シフト制御装置9は、シフトセレクトスイッチ15から入力するシフト要求信号により目標シフトポジションを設定し、角度センサ21から入力する回転角度信号によりアクチュエータ16のモータ19を駆動してマニュアルシフトシャフト22を回転させ、マニュアルバルブを切換制御する。シフト制御装置9は、マニュアルバルブの切換制御により予め設定された複数のポジションについてシフトポジションを切り換え、変速機17のシフト状態を変更ないし保持するように制御する。マニュアルバルブにおけるシフトポジションの並び順序は、例えば、P−R一N−Dとなっている。
前記変速制御装置10は、シフト制御装置9から入力するレンジ要求信号によりシフトソレノイド23を制御して変速機17内部の油圧回路を切り換え、変速機17の変速状態を変速レンジに対応した状態に切り換えるとともにスロットル開度・車速・エンジン負荷等に応じた状態に切り換え、変速レンジ情報を送信する。
また、前記メータ制御装置11は、コンビネーションメータによるシフトインジケータ、シフト警告灯、警報ブザー等の表示・動作を制御をする。前記ブレーキ制御装置12、ブレーキペダルの踏み込み及び車両状況によりブレーキ動作(油圧等)の制御を行う。前記パワーステアリング制御装置13は、ステアリングコラム内のトルクセンサ等によりステアリングホイール回転力のアシストを行う。このパワーステアリング制御装置13は、運転支援装置1のパーキングアシスト機能作動時に、運転支援制御手段7からの指示によりステアリングホイールを自動で回転させる。前記舵角センサ14は、ステアリングホイールの回転角を検出する。
【0017】
前記運転支援装置1の運転支援制御手段7は、車両LAN8によって、前記シフト制御装置9、変速制御装置10、表示制御装置11、ブレーキ制御装置12、パワーステアリング制御装置13、舵角センサ14との間で通信し、車両位置情報および制動状態情報を含む車両情報を得る。運転支援制御手段7は、車両Vの駐車時に、バックカメラ2の映像、空間センサ3の検知情報、通信により得た車両情報を基に、容易に駐車できるように車両Vの目標停車位置への移動をアシストする機能(パーキングアシスト機能)を備えている。駐車のための目標停車位置への移動においては、例えば、並列駐車と縦列駐車とにおいて移動軌跡が相違する。並列駐車においては、図2に示すような移動軌跡となる。縦列駐車においては、図3に示すような移動軌跡となる。
運転支援装置1は、物体検知手段である空間センサ5からの出力により車両Vの接触(可能性高、蓋然性高の未然の状態)の有・無を判断する機能と、通信手段である車両LAN8からの車両位置情報により目標位置ずれの有・無を判断する機能とを有している。車両位置情報は、衛星からの電波、予め位置の確認されているインフラストラクチャーとの通信によって更新され、車両Vの姿勢変化を含む走行状態に基づくマッチング処理などによって把握する。微小な距離の移動は、マッチングに用いられる車輪の回転に基づく。前後左右の4輪のうち、任意の組み合わせの平均値をとって、移動距離とする。
運転支援装置1は、これらの機能から、車両Vの接触が有との判断と、目標位置ずれ、特に位置超過(オーバー)が有との判断とのうち、1つ以上の判断が成立した場合に、シフト制御装置9にNレンジ要求するよう制御する。シフト制御装置9は、このNレンジ要求により変速機17がNレンジを実現するよう切換制御する。例えば、図4に示すように、並列駐車における隣接車両Vaとの接触が有との判断が成立した場合は、DレンジからNレンジへ切り換える。また、図5に示すように、並列駐車における後方への位置超過による目標位置ずれが有との判断が成立した場合は、DレンジからNレンジへ切り換える。これにより、運転支援装置1は、シフト制御装置9と協働して、車両Vのクリープ走行を中断し、車両Vを停車状態に保持する役割を果たす。
シフト制御装置9は、人為的に操作するシフトレバー18の実際のレンジ選択位置に関わらず、運転支援装置1からのNレンジ要求により変速機17がNレンジを実現するようマニュアルバルブを切換制御し、同じくRレンジ要求により変速機17がRレンジを実現するよう切換制御し、同じくDレンジ要求により変速機17がDレンジを実現するよう切換制御し、さらにPレンジ要求により変速機17がPレンジを実現するよう切換制御することが可能である。また、シフト制御装置9は、シフトレバー18のレンジ選択位置とは異なるシフトポジションに実際のマニュアルバルブ位置が選択された状態で、後からシフトレバー18が同じポジションを選択することに不都合はない。
【0018】
前記運転支援装置1は、パーキングアシストモードを選択可能とする選択入力手段として選択スイッチ6を備える。選択スイッチ6は、運転者が、任意にパーキングアシストモードを選択でき、パーキングアシストモードとしての動作を使用したり、不使用としたりすることができる。また、パーキングパターンとしては、並列駐車パターン(図2参照)、縦列駐車パターン(図3参照)、車庫入れパターン、後退パターンなど幾つかの中から選択できるようにすると、制御を簡略化でき、利便性も高い。
運転支援装置1は、パーキングアシストモードの第一の動作として、所望の際に、Nレンジ要求を実施する。これにより、シフト制御装置9は、変速機17をDレンジあるいはRレンジ等の走行レンジからNレンジに切り換える。また、車両LAN8を介して得られた車両情報に基づいて、図2・図3に示すように、スイッチバックの切換基準地点となる切換ポイントCと、最終的に車両Vを停車させたい位置となる目標停車位置Tとをそれぞれ設定する。車両周辺の状況は、空間センサ5からの出力から周辺エリアのマップとして認識される。そして、そのエリアマップと予め決められたパーキングパターンとから、切換ポイントC及び目標停車位置Tのそれぞれの推奨位置を設定する。分解能の関係から、推奨位置はピンポイントではなく、許容範囲を持った微小エリアとなり、また、車両Vの軸線に対しても許容範囲を持つ。
また、運転支援装置1は、パーキングアシストモードの第二の動作として、車両LAN8を介して得られた車両位置情報が予め設定した切換ポイントCと一致し、かつ車両LAN8を介して得られた車両情報から車両Vが停車状態とみなせる所定速度以下であるとともに、制動状態である場合に、シフト制御装置9にRレンジ要求するよう制御する。これにより、シフト制御装置9は、図6に示すように、切換ポイントCにおいて変速機17をDレンジからRレンジに切り換える。
さらに、運転支援装置1は、パーキングアシストモードの第三の動作として、車両LAN8を介して得られた車両位置情報が予め設定した目標停車位置Tと一致し、かつ車両LAN8を介して得られた車両情報から車両Vが停車状態とみなせる所定速度以下であるとともに、制動状態である場合に、シフト制御装置9にPレンジ要求するよう制御する。これにより、シフト制御装置9は、図7に示すように、目標停車位置Tにおいて変速機17をRレンジからPレンジに切り換える。
さらにまた、運転支援装置1は、パーキングアシストモードの第四の動作として、まず、車両LAN8を介して得られた車両情報に基づいて、接触有判断(図4参照)と目標位置ずれ有判断(図5参照)とのうち、1以上を予測判断した際に、シフト制御装置9にNレンジ要求するよう制御する。これにより、シフト制御装置9は、変速機17をDレンジあるいはRレンジ等の走行レンジからNレンジに切り換える。この予測判断は、実際に車両Vが接触する前の時点、目標位置ずれとなる前の時点で、車両Vの伏態からのそれぞれの状態となる見込みの場合(蓋然性が高い場合)に、起動する。その後、運転支援装置1は、所定時間の間に、接触有予測判断が、接触無予測判断に変更される第一の許可条件と、目標位置ずれ有予測判断が、目標位置ずれ無予測判断に変更される第二の許可条件とのうち、1以上の許可条件が成立した際には、もとの走行レンジ(例えば、Rレンジ)に戻すよう制御する。これによって、相手が移動することが予測できる場合に、運転者は煩雑な操作をせずに待てばすむので、利便性が高くなる。
【0019】
次に、運転支援装置1の作用を、図8〜図12に従って説明する。なお、この作用においては、図6・図7に示すように、並列駐車をアシストするものとして説明する。
運転支援装置1は、図8に示すように、例えば変速機をドライブレンジ(Dレンジ)として運転支援の制御がスタートすると(A01)、選択スイッチ6のON操作を検知し(A02)、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドによるアシストを開始し、バックカメラ2の映像、空間センサ5の検知情報及び通信により得た車両情報を基に、変速機17のレンジを切り換える切換ポイントC及び車両Vを駐車させる目標停止位置Tを設定し(A03)、切換ポイントCに向けての車両Vの移動をアシストし(A04)、車両Vが切換ポイントCに到達したかを判断する(A05)。
【0020】
前記切換ポイントCに向けての車両Vの移動のアシスト(A04)は、図9に示すように行われる。車両Vの移動のアシスト(A04)は、アシストがスタートすると(B01)、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドでステアリングホイールの操作、ブレーキペダル・アクセルペダルの解放を運転者に指示し(B02)、ステアリングホイールの自動回転(または、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドで運転者操作によるステアリングホイール回転支援)を行い(B03)、エンドにし(B04)、判断(A05)に移行する。ステアリングホイールの自動回転(または、運転者操作によるステアリングホイール回転支援)(B03)においては、運転支援制御手段7とパワーステアリング制御装置13とが協調制御し、切換ポイントCに車両Vが移動するように、ステアリングホイールを回転させる(または、モニタ3の表示及び発音器4で音声ガイドし、ステアリングホイールの回転トルクを制御(重く/軽く)して、運転者操作によるステアリングホイール回転を支援する)。
前記車両Vが切換ポイントCに位置に到達したかの判断(A05)において、車両Vが切換ポイントCに到達していず、判断(A05)がNOの場合は、アシスト(A04)を継続する。車両Vが切換ポイントCに到達して(図6参照)、判断(A05)がYESの場合は、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドでブレーキ操作を運転者に指示し(A06)、ブレーキ操作の検知及び車速が所定車速以下の検知を行い(A07)、発音器4による音声ガイドで変速機17の自動切り換えの通知及びブレーキ操作の継続を指示し、DレンジからRレンジへ自動切り換えし(A08)、目標停車位置Tへ向けての車両Vの移動をアシストし(A09)、車両Vの接触可能性の判断を行い(A10)、車両Vが目標停車位置Tに到達したかを判断する(A11)。
前記DレンジからRレンジへの自動切り換え(A08)は、運転支援制御手段7がシフト制御装置9にRレンジ要求信号を送信し、シフト制御装置9がアクチュエータ16のモータ19を作動させてマニュアルシフトシャフト22を回転させることで、マニュアルバルブを切換制御して変速機17をDレンジからRレンジに切り換える(図12参照。なお、図12は、Nレンジへの切り換えであるので、NレンジをRレンジに読みかえるものとする。)。
【0021】
前記目標停車位置Tへ向けての車両Vの移動のアシスト(A09)は、図10に示すように行われる。車両Vの移動のアシスト(A09)は、アシストがスタートすると(C01)、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドでステアリングホイールの操作、ブレーキペダル・アクセルペダルの解放を運転者に指示し(C02)、ステアリングホイールの自動回転(または、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドで運転者操作によるステアリングホイール回転支援)を行い(C03)、エンドにし(C04)、判断(A10)に移行する。ステアリングホイールの自動回転(または、運転者操作によるステアリングホイール回転支援)(C03)においては、運転支援制御手段7とパワーステアリング制御装置13とが協調制御し、目標停車位置Tに車両Vが移動するように、ステアリングホイールを回転させる(または、モニタ3の表示及び発音器4で音声ガイドし、ステアリングホイールの回転トルクを制御(重く/軽く)して、運転者操作によるステアリングホイール回転を支援する)。
前記車両Vの接触可能性の判断(A10)は、図11に示すように行われる。車両Vの接触可能性の判断(A10)は、判断がスタートすると(D01)、後方/側方の物体と接触可能性が無いかを判断する(D02)。この接触可能性無しの判断(D02)は、運転支援制御手段7が、バックカメラ2、空間センサ5からの情報及び車両LAN8により得た車両情報(車速、舵角等)等により、現在の状態で後進すると、周辺の物体に接触するかどうかを検知/判断する。
この判断(D02)がYESの場合は、目標停車位置Tよりも側方に位置超過(オーバー)の可能性が無いかを判断する(D03)。この側方の位置超過の判断(D03)は、運転支援制御手段7が、バックカメラ2からの情報及び車両LAN8により得た車両情報(車速、舵角等)等により、車両Vの側方(左右方向)に接触する物体は無いが、現在の状態で後進すると、目標停車位置Tを左右に超過する可能性があるかを検知/判断する。この判断(D03)がYESの場合は、エンドにし(D04)、判断(A11)に移行する。
一方、前記判断(D02)において、後方/側方の物体と接触可能性が有り、NOの場合(図4参照)は、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドでブレーキ操作の指示及び変速機17の自動切り換えを通知し、RレンジからNレンジへ自動切り換えする(D05)。RレンジからNレンジへの自動切り換え(D05)は、運転支援制御手段7がシフト制御装置9にNレンジ要求を送信し、シフト制御装置9がアクチュエータ16のモータ19を作動させてマニュアルシフトシャフト22を回転させることで、変速機17をRレンジからNレンジに切り換える。
【0022】
前記RレンジからNレンジへの自動切り換え(D05)は、図12に示すように行われる。RレンジからNレンジへの自動切り換え(D05)は、制御がスタートすると(E01)、運転支援制御手段7がシフト制御装置9に変速機17をNレンジに切り換えることを要求するNレンジ要求信号を送信し(E02)、シフト制御装置9はNレンジ要求信号の受信後、目標シフトポジションであるNレンジの有効/無効の判定を実施し(E03)、シフト制御装置9は目標シフトポジションのNレンジが有効の時、アクチュエータ16のモータ19を作動させてマニュアルシフトシャフト22を回転させ、角度センサ21の検出する回転角度信号により目標シフトポジションのNレンジに切り換え(E04)、目標シフトポジションのNレンジに到達したかを判断する(E05)。
この判断(E05)がNOの場合は、切り換えの処理(E04)を継続する。目標シフトポジションのNレンジに到達して、判断(E05)がYESの場合は、シフト制御装置9はアクチュエータ16のモータ19を停止(制御OFF)し(E06)、変速機17がNレンジに切り換えられたことを示すシフトレンジ信号Nを変速制御装置10に送信し(E07)、変速制御装置10はシフトレンジ信号Nを受信後、変速機17のシフトソレノイド23を制御して油圧回路を切り換え、Nレンジへの切り換えを完了させ、現在のシフトポジション情報としてNレンジ情報を送信する(E08)。現在のシフトポジション情報であるNレンジ情報は、メータ制御装置11が受信してコンビネーションメータのシフトインジケータにNレンジであることを表示し(E09)、判断(D06)に移行する。
【0023】
前記RレンジからNレンジへの自動切り換え(D05)の後に、後方/側方の物体が移動したか(接触無し)を判断する(D06)。後方/側方の物体が移動したかの判断(D06)は、車両Vの物体との接触の可能性が有ると判断し(D02:NO)、変速機17をRレンジからNレンジに切り換えた時点から、所定時間内に接触の可能性が無くなった(対象の物体が移動)かどうかを検知/判断する。
この判断(D06)がYESの場合は、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドで運転者に操作によるRレンジへの切り換えを指示し(D07)、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドで運転者にブレーキ操作の解除を指示し(D08)、前記側方の位置超過の判断(D03)に移行する。この判断(D06)がNOの場合は、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドで運転者にNレンジへの自動切り換え及びブレーキ操作の指示を継続し(D09)、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドで目標停車位置Tへの移動案内及びアシストの終了を告知する(D10)。移動案内及びアシストの終了の告知(D10)によって、運転者は、車両Vを前進させて物体を移動させた後、運転支援装置1によるアシスト無しで駐車を行うか、又は運転支援装置1のパーキングアシストで駐車を再度行う。運転支援装置1により駐車を再度行う場合には、図8の処理を最初からに行う。
また、前記目標停車位置Tよりも側方に位置超過(オーバー)の可能性が無いかの判断(D03)がNOの場合は、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドでブレーキ操作の指示及び変速機17の自動切り換えを通知し、RレンジからNレンジへ自動切り換えし(D11)、ブレーキ操作及び車速が所定車速以下を検知したかを判断する(D12)。
ブレーキ操作及び車速が所定車速以下を検知していず、判断(D12)がNOの場合は、処理(D11)を継続する。ブレーキ操作及び車速が所定車速以下を検知して、判断(D12)がYESの場合は、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドで変速機17の自動切り換えの通知及びブレーキ操作の継続を指示し、NレンジからDレンジへ自動切り換えし(D13)、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドで目標停車位置Tへの移動案内及びアシストの終了を告知する(D14)。移動案内及びアシストの終了の告知(D14)によって、運転者は、車両Vを前進させて車両Vの向き修正させた後、運転支援装置1によるアシスト無しで駐車を行うか、又は運転支援装置1のパーキングアシストで駐車を再度行う。運転支援装置1により駐車を再度行う場合には、図8の処理を最初からに行う。
【0024】
前記後方/側方の物体と接触可能性が無いかの判断(D02)がYES、目標停車位置Tよりも側方に位置超過(オーバー)の可能性が無いかの判断(D03)がYESの場合は、エンドにし(D04)、車両Vが目標停車位置Tに到達したかの判断(A11)に移行する。
車両Vが目標停車位置Tに到達していず、判断(A11)がNOの場合は、目標停車位置Tへ向けての車両Vの移動のアシスト(A09)に戻る。車両Vが目標停車位置Tに到達して、判断(A11)がYESの場合は、モニタ103の表示及び発音器104の音声ガイドで運転者にブレーキ操作を指示し(A12)、ブレーキ操作及び車速が所定車速以下を検知したかを判断する(A13)。
ブレーキ操作及び車速が所定車速以下を検知していず、判断(A13)がNOの場合は、目標停車位置Tよりも後方に位置超過(オーバー)の可能性が無いかを判断する(A14)。目標停車位置Tよりも後方に位置超過の可能性が無いかの判断(A14)は、運転支援制御手段7が、バックカメラ2からの情報及び車両LAN8により得た車両情報(車速、舵角等)等により、後方の物体有無に関係無く、現在の状態で後進すると、目標停車位置Tを後方に超過する可能性があるかを検知/判断する(図5参照)。
この判断(A14)がNOの場合は、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドでブレーキ操作の指示及び変速機17の自動切り換えを通知し、RレンジからNレンジへ自動切り換えし(A15)、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドで目標停車位置Tへの移動案内及びアシストの終了を告知する(A16)。この判断(A14)がYESの場合は、判断(A13)に戻る。
判断(A13)において、ブレーキ操作及び車速が所定車速以下を検知してYESの場合は、モニタ3の表示及び発音器4による音声ガイドで変速機17の自動切り換えの通知及びブレーキ操作の継続を指示し、RレンジからPレンジへ自動切り換え(図7参照)し(A17)、モニタ3の表示及び発音器4の音声ガイドでアシストの終了を告知し(A18)、運転支援の制御をエンドにする(A19)。
前記RレンジからPレンジへ自動切り換え(A17)は、運転支援制御手段7がシフト制御装置9にPレンジ要求信号を送信し、シフト制御装置9がアクチュエータ16のモータ19を作動させてマニュアルシフトシャフト22を回転させることで、マニュアルバルブを切換制御して変速機17をRレンジからPレンジに切り換える(図11参照。なお、図11は、Nレンジへの切り換えであるので、NレンジをPレンジに読みかえるものとする。)。
【0025】
これにより、この運転支援装置1は、パーキングアシスト機能に、電気的にレンジ切り換えを行うシフトバイワイヤ式の変速機17を組み合わせて、以下の機能が可能となる。
この運転支援装置1は、車両Vが周辺の車両等の物体に接触する、又は目標停車位置Tから後方に位置超過(オーバー)する、と判断した場合に、音声メッセージと共に変速機17を自動的にRレンジからNレンジに切り換えるので、接触を防止/可能性を低減することができる。
また、この運転支援装置1は、従来、運転者が操作していたDレンジからRレンジへの切り換えを、パーキングアシスト機能で音声メッセージと共に自動的に行うことによって、運転者の操作を軽減することができる。
さらに、この運転支援装置1は、目標停車位置Tに停車し、アシスト機能が終了する段階で、変速機17を自動的にPレンジに切り換えることによって、運転者のシフト操作を軽減することができる。
【0026】
このように、運転支援装置1は、車両Vの駐車をアシストするパーキングアシスト機能を備え、バックカメラ2、空間センサ5からの情報及び車両LAN8により得た車両情報(車速、舵角等)等により、操舵輪、ブレーキ、変速機17を制御して車両Vを目標停車位置Tまで自動で移動させることができ、接触有判断や目標位置ずれ有判断が成立した場合にNレンジに切り換えるので、車両Vの接触や位置ずれといった不都合を回避し易くする車両状態を設定することができ、また、車両Vが容易に動き出すことがないように保持できるので、不注意や誤操作による車両Vの接触を回避でき、うっかり防止を果たすことができる。
この運転支援装置1は、パーキングアシストモードを選択可能とする選択スイッチ6を備え、パーキングアシストモードでは、Nレンジ要求を実施するとともに、車両LAN8を介して得られた車両情報に基づいて切換ポイントC、目標停車位置Tを設定することにより、運転者が任意に選択できる特定の条件化、すなわち、パーキングアシストモードとしてのみ、車両Vの接触や位置ずれといった不都合を回避し易くする車両状態を設定することができる。また、この運転支援装置1は、車両Vが容易に動き出すことがないように保持できるので、うっかり防止を果たすことができる。
前記パーキングアシストモードでは、車両LAN8を介して得られた車両位置情報が設定した切換ポイントCと一致し、かつ車両LAN8を介して得られた車両情報から車両Vが停車状態とみなせる所定速度以下であるとともに、車両Vが制動状態である場合に、シフト制御装置9にRレンジ要求するよう制御する一方、シフト制御装置9はこの要求により変速機17がRレンジを実現するよう切換制御する。これにより、運転支援装置1は、パーキングアシストモードでは運転者の操作がなくても動作する、あるいは、操作を持たずに動作するようになるので、運転者は煩雑な操作をしなくて済ませたり、気を張らずに済ませたりすることができ、肉体疲労の負担、心労の負担を減らすことができる。
また、前記パーキングアシストモードでは、車両LAN8を介して得られた車両位置情報が設定した目標停車位置Tと一致し、かつ車両LAN8を介して得られた車両情報から車両Vが停車状態とみなせる所定速度以下であるとともに、車両Vが制動状態である場合には、シフト制御装置9にPレンジ要求するよう制御する一方、シフト制御装置9はこの要求により変速機17がPレンジを実現するよう切換制御する。これにより、運転支援装置1は、運転者の操作を待たずに動作するようになるので、運転者は長く気を張らずに済み、心労の負担を減らせる。
さらに、前記パーキングアシストモードでは、車両LAN8を介して得られた車両情報に基づいて接触有判断と目標位置ずれ有判断とのうち1以上を予測判断した場合には、シフト制御装置9にNレンジ要求するよう制御する一方、シフト制御装置9はこの要求により変速機17がNレンジを実現するよう切換制御するとともに、その後、接触有予測判断が接触無予測判断に変更される第一の許可条件と、目標位置ずれ有予測判断が目標位置ずれ無予測判断に変更される第二の許可条件とのうち、1以上の許可条件が成立した場合には、シフト制御装置9にもとの走行レンジ(Rレンジ)に戻す要求をするよう制御する一方、シフト制御装置9はこの要求により変速機17がもとの走行レンジを実現するよう切換制御する。これにより、運転支援装置1は、未然に、接触、位置ずれといった失敗操作を防ぐことができる。特に、この運転支援装置1は、相手が移動することが予測できる場合に、運転者は煩雑な操作をせずに待てば済むので、利便性が高くなる。
【0027】
なお、上述実施例においては、車両Vの周囲に存在する物体を検知する空間センサ5が距離情報を出力し、この出力を受けた運転支援装置1が接触有無判断を行うものとして説明したが、空間センサ5が距離情報を出すだけでなく、接触判断を行うようにして、運転支援装置1はその出力を受けて動作するようにしても良い。また、接触有無判断は、光学的視認装置などを用いて構成しても良い。また、予め傾斜地では、運転支援装置1のアシスト制御の使用を禁止させても良い。これにより、不測の事態になりにくくなる。
また、上述実施例においては、パーキングアシスト機能時について説明したが、通常の後進走行(Rレンジ)時に、周辺の物体と接触しそうになった場合に、同様にRレンジからNレンジヘ自動的に切り換えることが可能である。特に、この場合は、ブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違えによる、車両Vの後方への飛び出しに効果がある。また、上述実施例においては、周辺の物体と接触しそうになった場合や位置超過しそうな場合にNレンジヘ切り換えたが、接触/後方への位置超過を検出/判断した場合、Nレンジに切り換えるだけでなく、エンジン制御装置を協調制御することでエンジントルクを制限し、接触/位置超過をさらに低減することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明の運転支援装置は、パーキングアシスト機能に、電気的にレンジ切り換えを行う変速機を組み合わせることで、自動的にレンジを切り換えて車両の位置ずれを防止することが可能となるものであり、シフトバイワイヤ式の変速機を備えた車両全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例を示す運転支援装置のシステム構成図である。
【図2】並列駐車における車両移動軌跡を示す図である。
【図3】縦列駐車における車両移動軌跡を示す図である。
【図4】並列駐車における隣接車両との接触を示す図である。
【図5】並列駐車における後方への位置ずれを示す図である。
【図6】並列駐車におけるパーキングアシスト機能によるDレンジからRレンジへの切り換えを示す図である。
【図7】並列駐車におけるパーキングアシスト機能によるRレンジからPレンジへの切り換えを示す図である。
【図8】運転支援装置のパーキングアシスト機能によるメインフローチャートである。
【図9】切換ポイントへ向けての移動アシストのフローチャートである。
【図10】目標停車位置へ向けての移動アシストのフローチャートである。
【図11】車両の接触可能性判断のフローチャートである。
【図12】パーキングアシスト機能のニュートラルレンジ要求によるレンジ切り換えのフローチャートである。
【図13】従来例を示す運転支援装置のシステム構成図である。
【図14】従来例を示す運転支援装置のパーキングアシスト機能によるメインフローチャートである。
【符号の説明】
【0030】
1 運転支援装置
2 バックカメラ
3 モニタ
4 発音器
5 空間センサ
6 選択スイッチ
7 運転支援制御手段
8 車両LAN
9 シフト制御装置
10 変速制御装置
11 メータ制御装置
12 ブレーキ制御装置
13 パワーステアリング制御装置
14 舵角センサ
15 シフトセレクトスイッチ
16 アクチュエータ
17 変速機
18 シフトレバー
19 モータ
20 ギヤ機構
21 角度センサ
22 マニュアルシフトシャフト
23 シフトソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲に存在する物体を検知する物体検知手段と、車両に搭載された別な制御装置との間で車両位置情報および制動状態情報を含む車両情報を通信する通信手段と、変速機の変速状態を制御するシフト制御装置と、を併設する運転支援装置において、前記運転支援装置は、前記物体検知手段からの出力により車両の接触有無を判断する機能と、前記通信手段からの車両位置情報により目標位置ずれ有無を判断する機能とを有し、これらの機能から車両の接触有判断と目標位置ずれ有判断とのうち1つ以上の判断が成立した場合に、前記シフト制御装置にニュートラルレンジ要求するよう制御する一方、シフト制御装置はこの要求により変速機がニュートラルレンジを実現するよう切換制御することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記運転支援装置は、パーキングアシストモードを選択可能とする選択入力手段を備え、前記パーキングアシストモードでは、ニュートラルレンジ要求を実施するとともに、前記通信手段を介して得られた車両情報に基づいて切換ポイント、目標停車位置を設定することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記パーキングアシストモードでは、前記通信手段を介して得られた車両位置情報が設定した切換ポイントと一致し、かつ前記通信手段を介して得られた車両情報から車両が停車状態とみなせる所定速度以下であるとともに、車両が制動状態である場合に、前記シフト制御装置にリバースレンジ要求するよう制御する一方、前記シフト制御装置はこの要求により変速機がリバースレンジを実現するよう切換制御することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記パーキングアシストモードでは、前記通信手段を介して得られた車両位置情報が設定した目標停車位置と一致し、かつ前記通信手段を介して得られた車両情報から車両が停車状態とみなせる所定速度以下であるとともに、車両が制動状態である場合には、前記シフト制御装置にパーキングレンジ要求するよう制御する一方、前記シフト制御装置はこの要求により変速機がパーキングレンジを実現するよう切換制御することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記パーキングアシストモードでは、前記通信手段を介して得られた車両情報に基づいて接触有判断と目標位置ずれ有判断とのうち1以上を予測判断した場合には、前記シフト制御装置にニュートラルレンジ要求するよう制御する一方、前記シフト制御装置はこの要求により変速機がニュートラルレンジを実現するよう切換制御するとともに、その後、接触有予測判断が接触無予測判断に変更される第一の許可条件と、目標位置ずれ有予測判断が目標位置ずれ無予測判断に変更される第二の許可条件とのうち、1以上の許可条件が成立した場合には、前記シフト制御装置にもとの走行レンジに戻す要求をするよう制御する一方、前記シフト制御装置はこの要求により変速機がもとの走行レンジを実現するよう切換制御することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−14218(P2010−14218A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175679(P2008−175679)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】