説明

運転者状態判定装置

【課題】本発明は、ステアリングや運転者の手などの障害物が存在し、運転者の画像が正確に撮像できないような状況下においては、障害物があることを簡素な構成で容易に検出して判定を行わないようにし、少ない演算処理量で障害物判定を正確に行うことができ、誤判定を抑制できる運転者状態判定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】運転者の画像を撮影する撮像手段10と、該撮像手段により撮影された前記画像を画像処理することにより前記運転者の顔画像を認識処理する顔画像認識手段60と、該顔画像認識手段による前記顔画像の認識処理結果に基づいて運転者状態の判定を行う運転者状態判定手段70とを備えた運転者状態判定装置100であって、
ステアリングホイール20上部中央にタッチセンサ30を備え、
該タッチセンサがオンのときには、前記運転者状態判定手段は、前記運転者状態の判定を行わないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者状態判定装置に関し、特に、運転者の画像を撮影する撮像手段を有する運転者状態判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、運転者に赤外光を照射する照射手段と、照射された運転者の赤外画像をステアリング越しに撮像する撮像手段とを車室内の運転者に略正対する位置に配置し、取得した赤外画像から画像処理により運転者の顔画像を認識処理する運転者認識装置において、取得した赤外画像が所定以上に明るい場合に、障害物映り込み状態と判定し、取得画像にステアリングや運転者の手などの障害物が映り込んで、運転者の顔画像を取得することができず、運転状態を誤判定することを抑制するようにした運転者認識装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−157648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、画像処理によって障害物判定を行うため、処理が複雑となり、演算処理量が大きくなってしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は、ステアリングや運転者の手などの障害物が存在し、運転者の画像が正確に撮像できないような状況下においては、障害物があることを簡素な構成で容易に検出して判定を行わないようにし、少ない演算処理量で障害物判定を正確に行うことができ、誤判定を抑制できる運転者状態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る運転者状態判定装置は、運転者の画像を撮影する撮像手段と、該撮像手段により撮影された前記画像を画像処理することにより前記運転者の顔画像を認識処理する顔画像認識手段と、該顔画像認識手段による前記顔画像の認識処理結果に基づいて運転者状態の判定を行う運転者状態判定手段とを備えた運転者状態判定装置であって、
ステアリングホイール上部中央にタッチセンサを備え、
該タッチセンサがオンのときには、前記運転者状態判定手段は、前記顔画像の前記認識処理結果に基づく前記運転者状態の判定を行わないことを特徴とする。
【0006】
これにより、ステアリングホイールの上に運転者の手等が覆い被さり、撮像手段の撮像の障害となるときには、運転者の状態判定を行わず、誤判定を低減させることができる。
【0007】
第2の発明は、第1の発明に係る運転者状態判定装置において、
前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段を更に備え、
該操舵角検出手段により検出された前記操舵角が所定角度範囲内にあり、かつ前記タッチセンサがオンのときに、前記運転者状態判定手段は、前記顔画像の前記認識処理結果に基づく前記運転者状態の判定を行わないことを特徴とする。
【0008】
これにより、操舵角が大きいときには、タッチセンサがオフであっても、運転者状態の判定を行わないようにすることができ、運転者状態の誤判定を防止することができる。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る運転者状態判定装置において、
前記運転者状態の判定は、前記運転者がわき見をしているか否かの判定であって、
前記運転者状態判定手段は、前記タッチセンサがオンのときには、前記運転者はわき見をしていないと判定し、前記タッチセンサがオフのときには、前記画像認識手段による前記顔画像の認識処理結果に基づいて、前記運転者がわき見をしているか否かを判定することを特徴とする。
【0010】
これにより、わき見判定を行うことが可能なときにのみわき見判定を行うことができ、わき見判定の信頼性を向上させることができる。
【0011】
第4の発明に係る運転者状態判定装置は、運転者の画像を撮影する撮像手段と、該撮像手段により撮影された前記画像を取得して画像処理することにより前記運転者の顔画像を認識処理する顔画像認識手段と、該顔画像認識手段による前記顔画像の認識処理結果に基づいて運転者状態を判定する運転者状態判定手段とを備えた運転者状態判定装置であって、
前記運転者の画像の撮影を妨げる障害物の有無を推定する障害物判定手段を備え、
該障害物判定手段により前記障害物があると推定されたときには、前記顔画像認識手段は、前記画像を取得せず、
前記障害物判定手段により前記障害物がないと推定されたときには、前記顔画像認識手段は、前記画像を取得することを特徴とする。
【0012】
これにより、障害物の存在により顔画像の撮像が適切に行うことができないときには、画像認識手段は画像取得を行わず、運転状態判定の信頼性を向上させるとともに、演算処理負担を軽減することができる。
【0013】
第5の発明は、第4の発明に係る運転者状態判定装置において、
前記障害物判定手段は、ステアリングホイール上部中央に設けられたタッチセンサであって、該タッチセンサがオン状態のときに、前記障害物があると推定することを特徴とする。
【0014】
これにより、取り付け容易なタッチセンサを設けることにより障害物の有無を推定することができ、簡素な構成で容易に障害物の有無の推定を行うことができる。
【0015】
第6の発明は、第5の発明に係る運転者状態判定装置において、
前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段を更に備え、
該操舵角検出手段により検出された前記操舵角が所定角度範囲内にあり、かつ前記タッチセンサがオン状態のときに、前記障害物判定手段は、前記障害物があると推定することを特徴とする。
【0016】
これにより、障害物の存在の推定に、操舵角が直進に近い状態であることを条件として加えることができ、より正確な障害物の有無の推定を行うことができる。
【0017】
第7の発明は、第4〜6のいずれかの発明に係る運転者状態判定装置において、
前記障害物判定手段により、前記障害物があると推定されたときには、前記運転者状態判定手段は、運転者がわき見をしていると判定し、前記障害物がないと推定されたときには、前記顔画像認識手段による前記顔画像の認識処理結果に基づいて、運転者がわき見をしているか否かを判定することを特徴とする。
【0018】
これにより、障害物がないときにわき見判定を行うことができ、わき見判定の誤判定を低減し、わき見判定の信頼性を向上させることができる。
【0019】
第8の発明は、第1〜7のいずれかの発明に係る運転者状態判定装置において、
前記撮像手段は、ステアリングコラムの上側面又は下側面に備えられていることを特徴とする。
【0020】
これにより、運転者の顔画像を、正面下方から撮像することができ、顔画像の撮影を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、障害物の有無を簡素な構成で容易に検出し、少ない演算処理量で障害物判定を行うことができ、運転者状態判定の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明を適用した実施例1に係る運転者状態判定装置100の検出部を示した外形図である。図1(a)は、実施例1に係る運転者状態判定装置100の検出部の側面図であり、図1(b)は、実施例1に係る運転者状態判定装置100の検出部の正面図である。
【0024】
図1(a)において、実施例1に係る運転者状態判定装置100は、撮像手段10と、図示しないタッチセンサ30とを備える。また、本実施例に係る運転者状態判定装置100は、必要に応じて、操舵角検出手段50を備えてよい。更に、本実施例に係る運転者状態判定装置100は、関連構成要素として、ステアリングホイール20と、ステアリングコラム40とを有する。
【0025】
撮像手段10は、運転者を正面下方から撮影し、運転者の画像を撮像するための手段である。これにより、運転者の顔向き、視線、身体の向き等の運転者状態を撮影し、画像取得することができる。
【0026】
撮像手段10は、ドライバーモニタカメラとして種々のカメラが適用されてよい。撮像手段10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラが適用されてもよいし、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラが適用されてもよい。
【0027】
撮像手段10は、運転者を正面方向から撮像するため、ステアリングコラム40の上側面に設けられている。これにより、運転者を常に正面から撮影することができるので、顔の向きが正面を向いているか否かについて、画像取得を行うことができる。
【0028】
ステアリングコラム40は、ステアリングホイール20を支持するとともに、ステアリングホイール20の回転による操舵力を、図示しないステアリングシャフトを介して車輪に伝達する役割を果たす。ステアリングコラム40内のステアリングシャフトは、操舵に応じて回転するが、外側のステアリングコラム40は回転せず、運転者の方向に延在する形状をしているので、本実施例に係る運転者状態判定装置100においては、撮像手段10の設置固定手段として用いられている。
【0029】
ステアリングホイール20は、運転者が操舵を行うための手段である。本実施例に係る運転者状態判定装置100においては、ステアリングホイール20の上部に、タッチセンサ30が設けられ、運転者が、ステアリングホイール20に手を掛けて、撮像手段10による運転者の撮影が妨げられる状態になっていないか否かを検出する。
【0030】
操舵角検出手段50は、ステアリングホイール20の操舵角を検出する手段である。操舵角検出手段50は、操舵角を検出できれば、種々の態様の操舵角センサ等が適用されてよい。例えば、一例として、操舵角検出手段50は、ステアリングシャフトの周囲に円盤状に設けられ、磁気を利用して操舵角を検出する態様のセンサが適用されてもよい。
【0031】
本実施例に係る運転者状態判定装置100においては、タッチセンサ30による条件の他、操舵角が所定範囲内にあるとき、つまり操舵角が小さく、直進状態に近いときに、運転者状態の判定を行うという前提条件を付加する場合もある。かかる前提条件を付加して判定処理を行うときには、本実施例に係る運転者状態判定装置100は、操舵角検出手段50を備えてよい。
【0032】
図1(b)は、本実施例に係る運転者状態判定装置100の検出部の正面外形図である。図1(b)において、ステアリングホイール20の中央上部にタッチセンサ30が設けられ、隠れているステアリングコラム40の上側面に撮像手段10が設けられている。このような配置であれば、例えば、操舵角が直進状態に近く、ステアリングホイール20の中央上部に設けられたタッチセンサ30が略中央上部に位置しているときに、運転者がステアリングホイール20に掛けた手によって、撮像手段10による運転者の撮影が妨げられる場合には、タッチセンサ30で運転者の手がステアリングホイール20の略中央上部に接触していることを検出することができる。
【0033】
なお、タッチセンサ30は、運転者の接触を検出できれば、種々の態様が適用されてよく、例えば、通電式のタッチセンサ30が適用されてもよいし、静電容量式のタッチセンサ30が適用されてもよい。
【0034】
次に、図2を用いて、本実施例に係る運転者状態判定装置100の検出部と演算処理部を含めた全体構成について説明する。図2は、実施例1に係る運転者状態判定装置100の全体構成を示した機能ブロック図である。
【0035】
図2において、本実施例に係る運転者状態判定装置100は、撮像手段10と、タッチセンサ30と、顔画像認識手段60と、運転者状態判定手段70とを備える。また、本実施例に係る運転者状態判定装置100は、必要に応じて、操舵角検出手段50を備えてよい。なお、撮像手段10、タッチセンサ30及び操舵角検出手段50は、図1においてその機能及び内容を説明したので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0036】
顔画像認識手段60は、撮像手段10で撮影した運転者の画像を画像処理し、運転者の顔画像を認識処理する手段である。顔画像認識手段60は、例えば、撮像手段10から画像を取得し、コンピュータで画像処理が可能なようにデジタル化し、次に歪みやノイズを除去し、拡大、縮小、回転などの必要な補正処理を施した後、特徴抽出を行って特徴パラメータ又は特徴ベクトルを求め、得られた特徴量の中から標準パターンに合致又は近似した特徴量を識別により決定する、という一連の画像認識処理を行う。ここで、例えば、顔向きが正面向きであるか、又はわき見状態の横向きであるかを認識する場合には、特徴量の抽出は、運転者の顔の左右のエッジ等の顔の輪郭、鼻尖(鼻の尖端部)、眼、口等の顔部品の位置から顔の中心線を抽出し、顔の正面向き画像及び横向き画像との照合を行い、識別による認識処理を行うようにしてよい。
【0037】
運転者状態判定手段70は、顔画像認識手段60により認識処理された顔画像の認識処理結果に基づいて、運転者状態を判定する手段である。運転者状態判定手段70は、例えば、上述の顔向きの検知の例を挙げると、運転者の顔向きが正面向きであるか、横向きであるか否かの最終判定を行い、必要に応じてこの判定結果を出力する。つまり、顔画像認識手段60による認識処理結果から、運転者の顔向きの識別がなされるが、その識別された顔向きが、横向きに分類されるか、正面向きに分類されるかの最終判定を行う。
【0038】
また、運転者状態判定手段70は、顔画像認識手段60の認識処理結果に基づいて運転者状態を判定するのに加えて、この判定を補正する処理も行う。本実施例に係る運転者状態判定装置100においては、運転者の手が撮像手段10を覆い、正しい運転者状態の判定が行えないときには、顔画像認識手段60の認識処理結果に基づく運転者状態の判定を行わず、この判定を補正する処理を行う。従って、運転者状態判定手段70には、タッチセンサ30及び操舵角検出手段50からの検出結果が入力されるように構成されている。
【0039】
つまり、タッチセンサ30がオンであるときには、運転者の手がステアリングホイール20の略中央上部に接触しており、撮像手段10が撮影した画像は、運転者の手の画像であるので、これに基づいて顔画像認識手段60が認識処理を行うと、運転者の顔が正面を向いているにも関わらず、横向きであると運転者状態判定手段70が誤判定する場合が増加する。従って、このような場合には、運転者状態判定手段70にタッチセンサ30からオン信号が入力されたら、運転者状態判定手段70は、画像処理に基づく運転状態判定を行わないようにする。このとき、運転状態判定手段70は、運転状態判定を行わずに、処理を終了するようにしてもよい。運転者状態判定装置100の判定結果は、通常は、警報手段等に出力され、顔向きが横向きの場合には、警報を発するような構成となっている場合が多い。従って、運転者状態判定手段70が運転者状態の判定を行わなければ、警報を発する指令となる顔横向きの信号は出力されないので、警報は発しないことになる。
【0040】
また、運転者状態判定手段70が、顔向きが正面向きのときには、正面向きの信号を出力し、顔向きが横向きのときには、横向きの信号を出力するように構成されている場合には、運転者状態判定手段70は、タッチセンサ30がオンであったときには、正面向きの信号を出力することになる。
【0041】
なお、運転者状態判定手段70には、操舵角検出手段50により検出された操舵角の検出結果も入力されてよい。これは、操舵角が大きい場合には、運転者は顔を横に向けている場合が多く、またスポークにより撮像手段10が覆われてしまう場合も多いことから、操舵角が直進に近い状態にのみ、本実施例に係る運転者状態判定装置100による運転者状態判定を適用する場合がある。このような場合には、タッチセンサ30がオンで、かつ操舵角検出手段50により検出された操舵角が所定角度範囲内のときに、本実施例に係る運転者状態判定装置100による運転者状態判定を適用するため、操舵角検出手段50による操舵角検出結果も、運転者状態判定手段70に入力される。
【0042】
なお、所定角度範囲は、例えば、±10度の範囲に設定してもよい。所定角度範囲は、用途に応じて、適切な範囲に定めることができる。
【0043】
顔画像認識手段60及び運転者状態判定手段70は、上述の様な画像認識処理及び運転者状態判定の演算処理を行うため、演算処理手段により構成されてよく、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access memory)を有し、プログラムにより動作するコンピュータとして構成されてもよいし、所定の電子回路により演算処理を行うASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成されてもよい。顔画像認識手段60及び運転者状態判定手段70は、別個に構成されてもよいが、演算処理部80内に一体的に構成されてもよく、例えば、運転者状態判定ECU(Electronic Control Unit、電子制御ユニット)として構成されてもよい。
【0044】
次に、図3を用いて、実施例1に係る運転者状態判定装置100の処理フローについて説明する。図3は、実施例1に係る運転者状態判定装置100の処理フロー図である。
【0045】
ステップ100では、撮像手段10により、運転者の画像が撮影される。撮影された運転者画像は、顔画像認識手段60に送られる。
【0046】
ステップ110では、顔画像認識手段60により、画像処理が実行され、運転者の顔画像が認識処理される。運転者の顔画像の認識処理は、補正処理、顔のエッジ等の特徴点の抽出等の画像処理により行われてよい。そして、認識処理結果として、運転者状態、例えば運転者の顔向きが検出される。顔画像認識手段60の認識処理結果は、運転者状態判定手段70に送られる。
【0047】
ステップ120では、運転者状態判定手段70により、顔画像認識手段60の認識処理結果に基づいて、運転者状態が判定される。図3の処理フローにおいては、運転者の顔向きが正面向きか否かが判定される。運転者の顔向きが正面向きであると判定されたときには、ステップ140に進み、運転者の顔向きが正面向きでないと判定されたときには、ステップ130に進む。
【0048】
ステップ140では、運転者状態判定手段70において、認識処理結果に基づき、そのまま顔向きが正面であるとの判定がなされ、処理フローを終了する。つまり、認識処理結果が、顔向きは正面向きであるとの認識であった場合には、そのまま顔向きが正面向きであるとの判定がなされることになる。処理フロー終了後は、図3の処理フローを最初から繰り返す。
【0049】
一方、ステップ130では、運転者状態判定手段70により、タッチセンサ30がオンか否かの判定がなされる。ステップ120において、運転者の顔向きが正面向きでなく、横向きでありわき見をしていると判定された場合であっても、実際には、運転者が撮像手段10を手で覆っており、正しい判定がなされていないおそれがあるので、誤判定を防止すべく、タッチセンサ30のオン状態を判定する。
【0050】
ステップ130において、タッチセンサ30がオンであると判定されたときには、ステップ140に進む。一方、ステップ130において、タッチセンサ30がオンでないと判定されたときには、ステップ150に進む。
【0051】
ステップ140では、運転者状態判定手段70により、運転者の顔向きは正面であるとの判定がなされ、処理フローを終了する。これは、顔画像認識手段60の認識処理結果に基づく結果ではなく、タッチセンサ30がオンであることを検出したことにより、運転者状態判定手段70で判定に補正をかけ、顔向きが正面であるとの判定を最終的に行ったものである。タッチセンサ30がオン状態であるため、撮像手段10は運転者の手により覆われ、認識処理結果の信頼性が薄いため、顔向きは正面であるとの判定を行うことにより、誤判定を回避できる。なお、ステップ140終了後は、図3の処理フローを最初から繰り返す。
【0052】
ステップ150では、運転者状態判定手段70により、運転者の顔向きは横向きであり、わき見をしている状態であるとの判定がなされ、処理フローを終了する。ステップ130において、タッチセンサ30はオフ状態であったので、運転者の手が撮像手段10の障害となっている状態ではなく、顔画像認識手段60の認識処理結果が信頼に足るものと判断し、顔画像認識手段60の認識処理結果に基づいて、顔向きは横向きであるとの判定を行う。なお、処理フロー終了後は、図3の処理フローを最初から繰り返す。
【0053】
このように、実施例1に係る運転者状態判定装置100によれば、タッチセンサ30をステアリングホイール20の略中央上部に設けることにより、ステアリングコラム40の上側面に設けられた撮像手段10が手に覆われている状態を検出し、このような場合には運転者が横向きとの判定がなされても、これをそのまま判定結果とはしないので、誤判定を低減させ、信頼性の高い運転者状態判定装置100とすることができる。
【実施例2】
【0054】
図4は、本発明を適用した実施例2に係る運転者状態判定装置100aの全体構成を示す機能ブロック図である。図4において、実施例2に係る運転者状態判定装置100aは、検出部については、撮像手段10と、操舵角検出手段50とを有する点で、実施例1に係る運転者状態判定装置100と同様であるが、タッチセンサ30が障害物推定手段30aに置き換わっている点で異なっている。また、障害物推定手段30a及び操舵角検出手段50の出力が、運転者状態判定手段70ではなく、顔画像認識手段60aに出力される構成となっている点で異なっている。
【0055】
更に、実施例2に係る運転者状態判定装置100aは、演算処理部80aについては、顔画像認識手段60aと、運転者状態判定手段70を備える点では、実施例1に係る運転者状態判定装置100と同様であるが、顔画像認識手段60aの内部に、入力部61と画像処理部62が示されている点で、実施例1に係る運転者状態判定装置100と異なっている。
【0056】
実施例2に係る運転者状態判定装置100aは、障害物推定手段30aにおいて、障害物の存在が推定されたときには、これを顔画像認識手段60aに送り、顔画像認識手段60aにおいて、最初から画像処理を行わない制御を行う。これにより、画像処理に要する演算処理を軽減することができ、演算処理負担を低減させることができる。
【0057】
障害物推定手段30aは、撮像手段10の撮影を妨げる障害の有無を推定する手段である。障害物推定手段30aは、実施例1において説明したタッチセンサ30が適用され、ステアリングホイール20の略中央上部に設けられてもよいし、他の手段が設けられてもよい。例えば、撮像手段10と同じ角度で、撮像手段10付近に、光や超音波により障害物を検出する手段が設けられていてもよい。
【0058】
障害物推定手段30aにより、撮像手段10の撮影を妨げる障害物の存在が推定されたときには、撮像手段10により撮像された画像は、障害物により運転者が適切に撮影された画像ではないので、これを画像処理して顔画像の認識を行っても、運転者状態を正しく認識することはできず、画像処理に費やした演算処理が無駄となってしまう。よって、このような場合には、最初から顔画像認識手段60aによる画像処理を行わないようにする。よって、障害物推定手段30aの検出結果は、顔画像認識手段60aに送られる。
【0059】
同様に、操舵角が直進に近い所定範囲内のときに、本制御を適用する場合には、操舵角の検出結果が必要となるため、操舵角検出手段50の検出結果も、顔画像認識手段60aに出力される。なお、所定角度範囲は、例えば、実施例1と同様に、±10度に設定されてもよい。操舵角も考慮して判定処理を行う場合には、障害物推定手段30aにより障害物の存在が推定され、かつ操舵角検出手段50に検出された操舵角が所定角度範囲内のときに、本実施例に係る運転者状態判定装置100aによる画像処理を行わない処理を適用するようにすればよい。
【0060】
顔画像認識手段60aは、入力部61と、画像処理部62とを備える。入力部61は、撮像手段10から画像を取得するための手段であり、画像信号を取得する手段である。また、画像処理部62は、入力部61から入力された画像について、補正、特徴点抽出、識別等の画像処理を行い、画像認識を行う手段である。
【0061】
顔画像認識手段60aが、障害物推定手段30aにより障害物の存在が推定されることを検出したときには、顔画像認識手段60aは、画像処理部62で画像処理を行わない処理を行っても良いし、入力部61で、撮像手段10からの画像の取得自体を行わない処理を行ってもよい。入力部61で、撮像手段10から運転者の画像を取得しない場合には、画像処理部62には画像信号が入力されないので、やはり画像処理は行われない。
【0062】
このように、顔画像認識手段60aは、撮像手段10からの画像自体を入力部61が取得しないことにより画像処理を行わないような処理を行ってもよいし、画像処理部62が画像処理を行わない処理を実行してもよい。演算処理自体は、入力部61が画像を取得しない方が少なくなるので、こちらの方が好ましいが、用途等に応じて、適切な態様を選択してよい。
【0063】
なお、運転者状態判定手段70は、実施例1に係る運転者状態判定装置100と同じ構成及び機能を有するので、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0064】
また、撮像手段10及び操舵角検出手段50の取り付け位置については、実施例1の図1と同様であってよく、タッチセンサ30を障害物推定手段30aに適用する場合には、やはり同様の取り付け位置となるので、その説明を省略する。障害物推定手段30aに、他の光や超音波等を用いた検出手段を用いる場合には、適宜障害物の検出に適切な位置に設けるようにしてよい。
【0065】
次に、図5を用いて、実施例2に係る運転者状態判定装置100aの処理フローについて説明する。図5は、実施例2に係る運転者状態判定装置100aの処理フロー図である。
【0066】
ステップ200では、撮像手段10により、運転者の画像の撮影が行われる。
【0067】
ステップ210では、障害物推定手段30aにより、撮像手段10の撮影を妨げる障害物の有無が推定される。障害物推定手段30aは、ステアリングホイール20の略中央上部に設けられたタッチセンサ30であってもよいし、他の光等を利用したセンサであってもよい。
【0068】
ステップ210において、障害物推定手段30aにより障害物があると推定されたときには、ステップ240に進み、障害物がないと推定されたときには、ステップ220に進む。
【0069】
ステップ240では、ステップ210で障害物があると判定されたので、顔画像認識手段60aにおける画像処理は行われず、運転者状態判定手段70により、顔向きが正面であるとの判定がなされ、処理フローを終了する。この場合、顔画像認識手段60aで画像処理を行っても、正しい運転者状態を判定することはできないので、運転者は正面を向いているとの判定を擬制する。なお、顔画像認識手段60aは、自分では画像処理は行わないが、運転者状態判定手段70には、顔向きが正面であるとの判定を行わせる必要があるので、その指令信号を運転者状態判定手段70に出力する。
【0070】
ステップ220では、ステップ210で障害物はないと判定されたので、撮像手段10により撮影された運転者の画像を、顔画像認識手段60aが取得して画像処理を行い、顔向き検出の認識処理を行う。
【0071】
ステップ230では、運転者状態判定手段70により、顔画像認識手段60aの認識処理結果に基づいて、運転者の顔が正面向きか否かの判定がなされる。
【0072】
ステップ230において、運転者の顔向きが正面向きと判定されたときには、ステップ240に進み、正面向きでなく、横向き、つまりわき見をしていると判定された場合には、ステップ250に進む。
【0073】
ステップ240では、運転者状態判定手段70により、運転者の顔向きは正面向きであるとの判定がなされ、処理フローを終了する。このときの判定は、顔画像認識手段60aの認識処理結果に基づく判定結果であり、実際の運転者状態を示す信頼性のある判定結果である。なお、処理フロー終了後は、図5の処理フローを最初から繰り返す。
【0074】
ステップ250では、運転者状態判定手段70により、運転者の顔向きが横向きであるとの判定がなされ、処理フローを終了する。この場合の判定結果も、顔画像認識手段60aの認識処理結果に基づく判定結果であり、運転者状態を正しく反映しているので、この判定結果に基づいて、例えばわき見を注意する警報を発する等の処理を、図5に係る処理フローの後に実行するようにしてもよい。処理フロー終了後は、図5の処理フローを最初から繰り返す点は、今までと同様である。
【0075】
実施例2に係る運転者状態判定装置100aによれば、障害物推定手段30aにより撮像手段10の撮影を妨げる障害物があることが推定されたときには、画像処理自体を行わないので、演算処理負担を大幅に軽減させることができるとともに、信頼性の高い運転者状態の判定を行うことができる。
【実施例3】
【0076】
図6は、本発明を適用した実施例3に係る運転者状態判定装置100bの検出部を示した外形図である。図6(a)は、実施例3に係る運転者状態判定装置100bの検出部の側面図であり、図6(b)は、実施例3に係る運転者状態判定装置100bの検出部の正面図である。
【0077】
図6(a)において、実施例3に係る運転者状態判定装置100bの検出部は、撮像手段10aが、ステアリングコラム40の下側面に設けられている点で、実施例1の図1に係る運転者状態判定装置100と異なっている。このように、撮像手段10aを、ステアリングコラム40の下側面に設けるようにしてもよい。これによっても、運転者を正面下方から撮影することができるので、実施例1とほぼ同様の状態で運転者の撮像を行うことができる。なお、他の構成要素である、ステアリング20、ステアリングコラム40、操舵角検出手段50及び図示しないタッチセンサ30については、実施例1に係る運転者状態判定装置100の検出部の図1(a)と同様であるので、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0078】
図6(b)は、実施例3に係る運転者状態判定装置100bの検出部の正面図である。図6(b)において、タッチセンサ30は、実施例1と同様に、ステアリングホイール20の中央上部に設けられているが、撮像手段10aは、ステアリングコラム40の下側面に設けられていることが分かる。図6(b)においても、撮像手段10bの位置は、運転者に対しては正面となるので、運転者の顔向きを適切に撮像することができる。
【0079】
また、実施例3に係る運転者状態判定装置100bによれば、運転者がステアリングホイール20の略中央上部に手を掛け、手を掛けた側の腕によって撮像手段10による運転者の撮影が妨げられるような場合に、画像処理に基づく運転者状態の誤判定を防ぐことができる。
【0080】
実施例1及び実施例3で示したように、撮像手段10aの位置は、用途に応じて、ステアリングコラム40の上側面に設けてもよいし、下側面に設けてもよい。いずれにおいても、適切に運転者の画像を撮影できる。
【0081】
なお、実施例3は、そのまま実施例2にも適用してよい。実施例2は、演算処理部80aに関する機能及び処理が実施例1と異なるだけであり、検出部の外形は実施例1と同様であるので、実施例3の外形も同様に適用することができる。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施例1に係る運転者状態判定装置100の検出部を示した外形図である。図1(a)は、実施例1に係る運転者状態判定装置100の検出部の側面図である。図1(b)は、実施例1に係る運転者状態判定装置100の検出部の正面図である。
【図2】実施例1に係る運転者状態判定装置100の全体構成機能ブロック図である。
【図3】実施例1に係る運転者状態判定装置100の処理フロー図である。
【図4】実施例2に係る運転者状態判定装置100aの全体構成機能ブロック図である。
【図5】実施例2に係る運転者状態判定装置100aの処理フロー図である。
【図6】実施例3に係る運転者状態判定装置100bの検出部を示した外形図である。図6(a)は、実施例3に係る運転者状態判定装置100bの検出部の側面図である。図6(b)は、実施例3に係る運転者状態判定装置100bの検出部の正面図である。
【符号の説明】
【0084】
10、10a 撮像手段
20 ステアリングホイール
30 タッチセンサ
30a 障害物推定手段
40 ステアリングコラム
50 操舵角検出手段
60、60a 顔画像認識手段
70 運転者状態判定手段
80 演算処理部
100、100a、100b 運転者状態判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の画像を撮影する撮像手段と、該撮像手段により撮影された前記画像を画像処理することにより前記運転者の顔画像を認識処理する顔画像認識手段と、該顔画像認識手段による前記顔画像の認識処理結果に基づいて運転者状態の判定を行う運転者状態判定手段とを備えた運転者状態判定装置であって、
ステアリングホイール上部中央にタッチセンサを備え、
該タッチセンサがオンのときには、前記運転者状態判定手段は、前記顔画像の前記認識処理結果に基づく前記運転者状態の判定を行わないことを特徴とする運転者状態判定装置。
【請求項2】
前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段を更に備え、
該操舵角検出手段により検出された前記操舵角が所定角度範囲内にあり、かつ前記タッチセンサがオンのときに、前記運転者状態判定手段は、前記顔画像の前記認識処理結果に基づく前記運転者状態の判定を行わないことを特徴とする運転者状態判定装置。
【請求項3】
前記運転者状態の判定は、前記運転者がわき見をしているか否かの判定であって、
前記運転者状態判定手段は、前記タッチセンサがオンのときには、前記運転者はわき見をしていないと判定し、前記タッチセンサがオフのときには、前記画像認識手段による前記顔画像の認識処理結果に基づいて、前記運転者がわき見をしているか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の運転者状態判定装置。
【請求項4】
運転者の画像を撮影する撮像手段と、該撮像手段により撮影された前記画像を取得して画像処理することにより前記運転者の顔画像を認識処理する顔画像認識手段と、該顔画像認識手段による前記顔画像の認識処理結果に基づいて運転者状態を判定する運転者状態判定手段とを備えた運転者状態判定装置であって、
前記運転者の画像の撮影を妨げる障害物の有無を推定する障害物判定手段を備え、
該障害物判定手段により前記障害物があると推定されたときには、前記顔画像認識手段は、前記画像を取得せず、
前記障害物判定手段により前記障害物がないと推定されたときには、前記顔画像認識手段は、前記画像を取得することを特徴とする運転者状態判定装置。
【請求項5】
前記障害物判定手段は、ステアリングホイール上部中央に設けられたタッチセンサであって、該タッチセンサがオン状態のときに、前記障害物があると推定することを特徴とする請求項4に記載の運転者状態判定装置。
【請求項6】
前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出手段を更に備え、
該操舵角検出手段により検出された前記操舵角が所定角度範囲内にあり、かつ前記タッチセンサがオン状態のときに、前記障害物判定手段は、前記障害物があると推定することを特徴とする請求項5に記載の運転者状態判定装置。
【請求項7】
前記障害物判定手段により、前記障害物があると推定されたときには、前記運転者状態判定手段は、運転者がわき見をしていると判定し、前記障害物がないと推定されたときには、前記顔画像認識手段による前記顔画像の認識処理結果に基づいて、運転者がわき見をしているか否かを判定することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載の運転者状態判定装置。
【請求項8】
前記撮像手段は、ステアリングコラムの上側面又は下側面に備えられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の運転者状態判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−248777(P2009−248777A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−99791(P2008−99791)
【出願日】平成20年4月7日(2008.4.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】