説明

運転診断方法およびその装置

【課題】 走行場所や条件に影響されることなく公平な安全運転診断、省燃費診断を行う。
【解決手段】 カーナビゲーション装置4から取得される車両の挙動データを受信し、当該挙動データから車両の走行属性を判断し、挙動データに基づく時系列情報から加速度分布を求め、当該加速度分布を統計処理して走行属性毎に安全診断コンテンツを生成する。また、車両に搭載されたセンサ31を介して取得される車両の挙動データを受信し、当該挙動データから車両の走行属性を判断し、挙動データに基づき時系列情報を生成して燃費消費マップに照らし合わせて燃料消費量を求め、走行属性毎に省燃費運転診断コンテンツを生成する。更に診断項目毎閾値と比較して警報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバの車両運転状況に対し、安全運転、省燃費運転に関する診断を行う用途に用いて好適な、運転診断方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
安全運転の診断に関し、加速度情報に基づき危険を判定して警告を発する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、省燃費運転の診断に関し、急加速行為、減速行為といった燃料を通常以上に消費する行為を検出して警告を行う技術(例えば、特許文献2参照)、エンジン回転速度と負荷と燃費率の関係が規定された燃費マップを元に走行状態を判定し、ドライバの操作行為を推定してその情報を元に警告を行う技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−26098号公報(段落0008〜0009、図1)
【特許文献2】特開2003−331380号公報(段落0006〜0011、図1)
【特許文献3】特開2004−60548号公報(段落0005、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した特許文献1に開示された技術によれば、交通渋滞の有無、市街地や郊外走行、追従走行や自由走行、それぞれの区別無く、安全運転診断を行っている。このため、上り坂、渋滞、追従走行等においてドライバは速度を出しにくく、安全サイドに判定される。従って、走行場所、走行条件等により公平な評価を行うことが困難であった。
また、前記した特許文献2、3に開示された技術によれば、上り坂や重い荷物を積載して走行した場合には、例え、省燃費運転を心がけたとしても燃費が悪化して評価が悪くなる傾向にあり、従って、走行場所や条件によって公平な評価を行うことが困難であった。
【0004】
本発明は前記した事情に基づきなされたものであり、例えば、自由走行や追従走行等の走行属性毎に安全運転診断コンテンンツ、もしくは省燃費診断コンテンツを生成することにより、前記した走行場所や条件に影響されることなく、公平な安全運転診断、あるいは省燃費診断を行うことのできる、運転診断方法およびその装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した課題を解決するために本発明は、車載端末もしくはカーナビゲーション装置から通信網を介して取得される車両の挙動データを受信し、当該挙動データから車両の走行属性を判断し、挙動データに基づく時系列情報から加速度分布を求め、当該加速度分布を統計処理して走行属性毎に安全診断コンテンツを生成することとした。また、車両に搭載されたセンサを介して取得される車両の挙動データを受信し、当該挙動データから車両の走行属性を判断し、挙動データに基づき時系列情報を生成して燃費消費マップに照らし合わせて燃料消費量を求め、走行属性毎に省燃費運転診断コンテンツを生成することとした。
【0006】
このことにより、例えば、追従走行や自由走行等、走行属性に応じた安全運転診断、あるいは省燃費診断コンテンツが得られるため公平な評価が得られる。
なお、走行属性毎、診断項目のそれぞれに用意される閾値と比較し、その結果によってはドライバに注意を喚起する警報を出力することとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、走行属性毎に安全運転診断コンテンンツ、もしくは省燃費診断コンテンツを生成することにより、前記した走行場所や条件に影響されることなく公平な安全運転診断、省燃費診断を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明実施形態に係る運転診断方法を用いた運転診断システムのシステム構成図である。本システムでは、車両3に設置された各種センサ類からカーナビゲーション装置4を介して収集された車両の挙動データ、例えば、加速度に関する時系列情報を元に、加速度の歪度と標準偏差と尖度等の統計情報を生成し、交通安全サービスセンタ1にある運転診断サーバ10(運転診断装置)へ送信する。なお、前記した統計情報は運転診断サーバ10が生成しても良い。
【0009】
交通安全サービスセンタ1では、その加速度の歪度と標準偏差と尖度等の統計情報を元に安全運転診断を行い、生成される安全運転コンテンツを図示せぬ無線通信網経由でカーナビゲーション装置4に伝送する。そしてカーナビゲーション装置4の表示モニタを通じて、ドライバドライバに安全運転診断コンテンツの表示を行う。ここで、歪度と標準偏差は、交通安全サービスセンタ1の運転診断サーバ10が持つデータベースに記憶され、診断の精度向上をはかるために使用され、尖度は、走行属性の一つを判断(追従走行と自由走行の時間割を特定)するために使用される。
また、カーナビゲーション装置4は、センサ類を介して収集された挙動データ、例えば、エンジン回転速度、アイドリング開始/終了時間等に基づき、燃料消費マップを参照して省燃費運転診断を行う。省燃費診断は交通安全サービスセンタ1の運転診断サーバ10が行っても良い。前者によればリアルタイムに省燃費診断を行うことができ、後者によれば他のドライバとの比較等、詳細な省燃費診断を行うことができる。
【0010】
ここでは、前記した安全運転診断や省燃費運転診断を行う際、最初に、追従走行と自由走行の別、渋滞の有無、右左折の別、市街地と郊外走行の別等の走行属性を判断し、これら走行属性毎に安全運転診断コンテンツや省燃費運転診断コンテンツを生成することを特徴とする。詳細は後記する。
なお、ドライバは、カーナビゲーション装置4のみならず、インターネット等の通信網6を利用してドライバの自宅PC(パーソナルコンピュータ)7からも交通安全サービスセンタ1の運転診断サーバ10にアクセスすることにより、安全運転診断コンテンツ、もしくは省燃費運転診断コンテンツを閲覧することも可能である。また、インターネット等により、自宅PC7のみならず、会社のPCや携帯電話による閲覧も可能である。更に、ここでは車両3にカーナビゲーション装置4が搭載される例を示したが、専用の車載端末でも代替が可能である。
【0011】
次に、安全運転診断方法の運用形態について図2に示すシーケンス図を用いて説明する。まず、予めドライバと交通安全サービスセンタ1との間で、交通安全診断の契約を結ぶ。そして交通安全サービスセンタ1で、ドライバの情報を登録し、安全運転診断サービスの開始を行う(S21)。カーナビゲーション装置4は、日または契約した単位時間毎に、車両3の随所に設置されたセンサ類を介して得られる加速度時系列情報により、加速度の標準偏差、歪度、尖度に関して計算(統計処理)を行う(S22)。そして、通信事業者を介し、走行属性および歪度、尖度、標準偏差に関するデータ送信を行い、交通安全サービスセンタ1へ送る。
交通安全サービスセンタ1内では、交通安全の度合いの計算と、ドライバへ通知するメッセージから成る安全運転診断コンテンツの作成を行う(S23)。また同時に、その情報をデータベースに蓄積する。そして、その安全運転診断コンテンツ(安全運転の度合いを含む)の内容は、通信事業者を介してドライバのカーナビゲーション装置4へ伝送される。そして、カーナビゲーション装置4では、安全運転診断により得られる診断項目毎のコンテンツを予め用意された閾値と比較し、その結果によっては画面に安全運転警告の表示を行う(S24)。
【0012】
ここでの加速度歪度、標準偏差、尖度の計算方法、交通安全の度合いの計算方法、交通安全の度合いに関する精度向上のための方法については、後記する。また、カーナビゲーション装置4に表示される安全運転診断コンテンツについても後記する。なお、ここでは、加速度歪度と尖度、そして標準偏差はカーナビゲーション装置4が計算を行うものとしたが、カーナビゲーション装置4から交通安全サービスセンタ1の運転診断サーバ10に送る内容を加速度時系列情報のみとし、交通安全サービスセンタ1の運転診断サーバ10が加速度歪度と標準偏差と尖度の計算を行っても良い。
【0013】
また、安全運転診断は交通安全サービスセンタ1で行うだけでなく、カーナビゲーション装置4内で行ってもよい。この場合、カーナビゲーション装置4のプログラム実行処理について、図3に示すPAD(Problem Analysis Diagram)表現を用いて説明する。
まず、ドライバが車両の電源ON操作を行う(S31)。続いて車両エンジンをON操作し(S32)、このことにより、カーナビゲーション装置4は、車両のエンジンがONの間、加速度の時系列情報の記録を行う(S33)。加速度の時系列情報を記録する記憶テーブルは、例えば、延べ走行時間と、加速度を計測した計測時刻とこれに対する加速度の値とから成るものとする。また、加速度を計測した時刻と加速度の値とは記録時間分用意されているものとする。この時系列の加速度の記録は、車両エンジンがONの間は繰り返し行われる。
【0014】
そして、カーナビゲーション装置4は、サイドブレーキを引く等により車両の停止が確認される場合や、あらかじめ設定した時間や1時間等の時間間隔毎、センサ類を介して取り込まれた信号に基づき走行属性を判断する(S34)。更に、カーナビゲーション装置4は、前記記録した時間内での加速度標準偏差の計算(S35)、加速度歪度・尖度の計算を行い(S36)、これら計算値を元にして安全度合いの計算を行う(S37)。そしてその度合いを元に数値とメッセージとから成る安全運転診断コンテンツを前記した走行属性毎に生成し、その内容を画面に表示する(S38)。
【0015】
なお、走行属性としては、前記した「追従走行と自由走行の別」の他に、「市街地走行と郊外走行の別」、「右左折の別」、「渋滞の有無」等がある。
「追従走行と自由走行の別」については、自車両と前方走行車両との間の車間距離を計測するセンサから信号を取得するか、または、加速度分布から加速度の鋭角度または平坦度を示す統計量として尖度を監視することで判断が可能である。また、「市街地走行と郊外走行の別」は、現在位置を計測するセンサ、例えば、GPS(Global Positioning System)から信号を取得して走行区域を抽出し、当該抽出された走行区域を地図情報と照らし合わせることで判断が可能である。また、「右左折の別」は、GPSにより走行区域を抽出し、当該抽出された走行区域を地図情報と照らし合わせるか、もしくはGPSから方位角を判断することにより判断が可能である。更には、多くの車両に標準的に搭載されている車輪速センサから得られる左右輪の速度差を照合することで「右左折の別」を判断可能である。また、「渋滞の有無」は、GPSにより走行区域を抽出し、当該抽出された走行区域を渋滞地図情報と照らし合わせることにより、もしくは、自車両の速度分布を求め、当該速度分布を閾値と比較することにより判断することができる。
【0016】
次に、省燃費運転診断方法の運用形態について図4に示すシーケンス図を用いて説明する。まず予め、ドライバと交通安全サービスセンタ1間で、省燃費運転診断の契約を結ぶ。そして交通安全サービスセンタ1で、ドライバの情報を登録し、省燃費運転診断サービスの開始を行う(S41)。カーナビゲーション装置4は、日または契約した単位時間毎、センサ類を介して取り込まれるアクセル開度、エンジン回転速度等、ドライバの行動軌跡情報を採取する(S42)。このとき、後記する距離センサ等により前方車両との距離を計測し、あるいは安全運転診断の際に計算した加速度尖度に基づき追従走行/自由走行の別(走行属性の一つ)を判断している。そして、通信事業者を介し、前記した走行属性および行動軌跡データに関する送信を行い、交通安全サービスセンタ1へ送る。
【0017】
交通安全サービスセンタ1内では、前記した行動軌跡データを受信し、後記する燃料消費マップと照らし合わせて省燃費運転の度合いの計算(S43)と、ドライバへ通知するメッセージとから成る省燃費運転診断コンテンツの作成を行う。また同時に、その情報(コンテンツ)をデータベースに蓄積する。そして、その省燃費運転診断コンテンツの内容は、通信事業者を介してドライバのカーナビゲーション装置4へ伝送される。そして、カーナビゲーション装置4では、省燃費運転診断により得られる診断項目毎のコンテンツを予め用意された閾値と比較し、その結果によっては画面に省燃費警告の表示を行う(S44)。
【0018】
また、前記した省燃費運転診断は、交通安全サービスセンタ1で行うことなく、カーナビゲーション装置4内で行えば、ドライバはリアルタイムにその結果を取得できる。この場合のカーナビゲーション装置4のプログラム構造について、図5に示すPAD表現を用いて説明する。
まず、ドライバが車両の電源ON操作を行う(S51)。続いて車両エンジンをON操作し(S52)、このことにより、カーナビゲーション装置4は、車両のエンジンがONの間、後記するエンジンコントロールユニットや車両に搭載された各種センサから、少なくともエンジン回転速度とアクセル開度とに関する情報を取得してドライバの行動軌跡の記録を時系列に行う(S53)。この行動軌跡に関する時系列情報は車両エンジンがONの間は繰り返し記録される。
そして、前記した安全運転診断の場合と同様に、サイドブレーキを引く等により車両の停止が確認されたときや、あらかじめ設定した時間や1時間等の時間間隔毎に、走行属性を判断する(S54)。更に、カーナビゲーション装置4は、その行動軌跡から燃料消費率マップに照らし合わせて燃料効率の評価を行い(S55)、そして、その評価を元に数値とメッセージとから成る省燃費運転診断コンテンツを前記した走行属性毎に生成し、その内容を画面に表示する(S56)。
【0019】
図6は本発明実施形態に係わるカーナビーション装置の構成を示す図である。カーナビゲーション装置4は、ディスプレイ47、ボタン等の操作スイッチからなる入力部44、カーナビゲーション装置4のプログラム、地図、加速度の時系列情報を一時的に記憶するメモリ42、制御中枢となるCPU41、通信網6とのデータ送受信を行うモデム45、CPU41によって生成される情報を映像信号に変換し、あるいは外部接続される距離センサ、加速度センサ、荷重センサ等を含む各種センサ31、エンジンコントロールユニット30から入力される情報を取り込む入出力制御装置(以下、I/O46)、GPS受信機49から成る。なお、符号40は、GPSアンテナである。
また、メモリ42が揮発性メモリである場合には、この他に、過去の安全運転診断コンテンツ、省燃費運転診断コンテンツを保持しておくための不揮発性メモリを備えていても良い。但し、前記したコンテンツ作成、警告生成をカーナビゲーション装置4で行う場合は、モデム45は必ずしも必要では無い。
【0020】
ここで、加速度の計測は各種センサ31が行う。ここでは、車速センサ、加速度センサのいずれかが用意されているとする。ここで、車速センサのみが用意されていた場合は、車速センサの出力である車速パルスを1秒間隔(または0.5秒などの値でも良い)で取得した時系列データを微分することにより、加速度が得られる。また、加速度センサのみの場合には、加速度センサの出力を1秒間隔(または0.5秒などの値でもよい)で取得すればよい。また各種センサ31に、速度または加速度が取得可能なセンサが含まれていない場合には、GPS受信機49から得られる速度を1秒間隔で取得し、その値を微分することにより加速度が得られる。これらの演算処理はCPU41が行う。
【0021】
図7は、本発明実施形態に係わる運転診断装置の内部構成を機能展開して示したブロック図である。具体的には、図1に示す運転診断サーバ10の構成を示す。
運転診断サーバ10は、通信制御部11と、安全運転診断コンテンツ生成部12と、省燃費運転診断コンテンツ生成部13と、帳票出力部14と、車両DB(Data Base)15とで構成される。
通信制御部11は、図示せぬ有線、無線通信網との接続インターフェースを司り、仮に、これらがインターネットを用いて接続されていた場合、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)が実装され、同プロトコルに従い通信を行うことになる。通信制御部11はまた、カーナビゲーション装置4から取得される運転挙動データを受信する手段として機能する。
【0022】
安全運転診断コンテンツ生成部12は、カーナビゲーション装置4から取得される運転挙動データに基づく時系列情報から加速度分布を求め、当該加速度分布を統計処理して走行属性毎に安全診断コンテンツを生成する手段として機能し、ここでは、走行属性判断部121と、速度情報TBL(Table)作成部122と、加速度統計情報TBL作成部123と、急ハンドル回数・最大ハンドル加速度算出部124と、加速度標準偏差・歪度・尖度算出部125を含む。なお、加速度は、車両速度情報の初速度(前回値、m−1番目のデータ)と終速度(今回値、m番目のデータ)との差(△V)と、計測時間差(△t)とにより計算される。
【0023】
走行属性判断部121は、前記したようにカーナビゲーション装置4から送信される運転挙動データから、「追従走行と自由走行の別」の他に、「市街地と郊外走行の別」、「右左折の別」、「渋滞の有無」等、車両の走行属性を判断する手段として機能する。また、速度情報TBL作成部122は、カーナビゲーション装置4から定時間間隔で取得される車両位置情報と車両速度情報とを用い、位置情報を地図上にマッピングし、現在位置における速度規制情報を取り込み、当該速度規制情報と車両速度情報との比較により、走行時間内における速度規制を超過して走行した時間の割合を算出した値を、通信制御部11を介して車両DB15における物理データTBL154に書き込む機能を持つ。
また、加速度統計情報TBL作成部123は、カーナビゲーション装置4から定時間間隔で取得される車両速度情報の初速度と終速度との差分に応じて決定される急加減速(加速度と同じ計算方法により計算される)が発生する回数をカウントし、走行単位時間当たりに発生した急加減速の回数の平均値、およびその最大加速度を算出して物理データTBL154内に書き込む機能を持つ。
【0024】
なお、加速度が所定値以上(例えば、30km/h/sec、40km/h/sec)である前記減速回数をヒヤリハット回数として定義し、そのときの最大ヒヤリハット加速度も診断項目の一つとして使用する。
急ハンドル回数・最大ハンドル加速度算出部124は、カーナビゲーション装置4から取得される急ハンドル状態により車両の遠心力の分布を求め、当該遠心力分布による遠心力の標準偏差を算出する機能を持つ。
また、加速度標準偏差・歪度・尖度算出部125は、カーナビゲーション装置4から定時間間隔で取得される加速度情報により車両3の加速度の分布を求め、加速度分布による標準偏差と、加減速分布との偏りを算出する機能を持つ。詳細は後記する。
【0025】
前記した、走行属性判断部121、速度情報TBL作成部122、加速度統計情報TBL作成部123、急ハンドル回数・最大ハンドル加速度算出部124、加速度標準偏差・歪度・尖度算出部125のそれぞれで算出された値は、それぞれの診断項目として安全運転診断コンテンツ生成部12へ供給され、当該安全運転診断コンテンツ生成部12で統計処理され、帳票出力部14により安全運転診断コンテンツとして帳票出力される。
安全運転診断コンテンツ生成部12は、また、安全運転指導員のアクセスに基づき、生成された診断項目毎のコンテンツに対して、あるドライバの運転傾向に関する評価データを付加し、そのドライバに対して安全運転指導を行うために必要な安全診断コンテンツを、帳票出力部14を介して帳票出力する機能を持つ。このとき、安全運転診断コンテンツ生成部12は、各診断項目を総合的に判断して安全運転の度合いを点数化し、帳票に反映させる。また、診断項目毎に、複数ドライバの運転傾向を示す相対比較のための評価データを帳票出力する機能も併せ持つ。ここで生成される帳票の一例は図11〜図14に示されている。詳細は後記する。
【0026】
一方、省燃費運転診断コンテンツ生成部13は、カーナビゲーション装置4を介して取得される運転挙動データに基づき時系列情報を生成し、後記する燃費マップに照らし合わせて燃料消費量を推定し、走行属性毎に省燃費運転診断コンテンツを生成する手段として機能し、走行属性判断部131と、アイドリング集計処理部132と、燃料効率評価部133と、燃費マップ134とで構成される。
走行属性判断部131は、前記したようにカーナビゲーション装置4から送信される運転挙動データから、「追従走行と自由走行の別」の他に、「市街地と郊外走行の別」、「右左折の別」、「渋滞の有無」等、車両の走行属性を判断する手段として機能する。また、アイドリング集計処理部132は、カーナビゲーション装置4から取得される、エンジンONで位置情報に変化のないアイドリング状態が所定時間経過したときに、その回数と時間をアイドリングヒストグラムとして通信制御部11を介して車両DB15の加速度ヒストグラムTBL153に書き込む機能を持ち、省燃費運転診断コンテンツ生成のための診断項目として使用される。
【0027】
なお、アイドリングと空ふかしは、実際の燃料消費と速度の時系列情報、アクセル開度、エンジンのON/OFF信号により判定するものとし、速度0でエンジンがON時の時間帯をアイドリング、アイドリングの中でアクセル開度が正になる時間帯を空ふかしと判定する。
また、燃料効率評価部133は、カーナビゲーション装置4を介して取得される運転挙動データのうち、加速度、燃料消費量、アクセル開度、ブレーキ踏力、質量、勾配から成る時系列情報を元に省燃費運転診断を行う。省燃費運転診断において、燃料効率評価部133は、ドライバの行動軌跡を示す前記した時系列情報を、あらかじめ用意された燃料マップ134に照らし合わせて燃料消費量を推定する。ここで得られる燃料消費量より実際の消費燃料が多かった場合に燃費マップ134の過剰排気運転を判定して燃料効率の評価を行う。
【0028】
なお、本実施形態において使用される燃費マップ134は、図8に示されるように、アクセル開度とエンジン回転速度と、燃費との関係が3次元で定義されたマップ構造を持つ。トルクは、アクセル開度とエンジン回転速度とをパラメータとした関数(f(アクセル開度,エンジン回転速度))により求められ、それに従い最も効率の良い行動パターンが太線で示されている。
この太線の曲線は、トルクTnを固定にして曲線を描き、この曲線上で燃費が最大になる点を求めることにより求められる。すなわち、この燃費が最大になる点座標を(アクセル開度n,エンジン回転速度n)とし、トルクをTn+1、Tn+2、・・・と少しずつ変化させてこの燃費が最大になる点座標(アクセル開度n+1,エンジン回転速度n+1)、(アクセル開度n+2,エンジン回転速度n+2)、・・・を作る。そして、これらの点座標を繋げた曲線を最も効率のよい行動パターン曲線(図8の太線)とする。
ここでは、あらかじめその行動パターンとして許容範囲が閾値TBL157にあらかじめ閾値として定義されており、ドライバの行動曲線が許容範囲を超えたアクセル開度のときに省燃費警告を発することとする。
【0029】
なお、燃料効率評価部133は、走行属性判定部131から通知される走行属性毎にドライバの行動軌跡に従う燃費を集計し、前記したように当該燃費が予め定義された閾値より大きな走行状態において注意を喚起する。ここで、消費燃料の閾値として、燃費マップ134に示された燃料より多い量の燃料が噴射された状態(排気ガスが通常時に比べて悪い状態)、または、同じ車種の複数ドライバが使用した燃料の平均値よりも多い走行状態、もしくは一人のドライバの平均消費燃料値とする。また、燃料効率評価部133は、ドライバの行動軌跡のうち、質量、勾配により消費したエネルギーを燃料消費量から差し引き、残りの行動軌跡を用いて燃費診断を行うことで公平な省燃費診断を行う。また、質量の判定方法としては、車両に搭載された荷重センサまたは振動センサによる固有振動値を計測することで間接的に判定することとする。
【0030】
省燃費運転診断コンテンツ生成部13は、他に、加速度平均値、平均速度、走行距離、そして、ドライバの労務管理者によって入力される実熱料消費率を取り込み、アイドリング集計処理部132によって算出される回数と時間データと共に統計処理して省燃費運転診断コンテンツを生成する。
なお、車両DB15は、ドライバデータTBL151と、走行軌跡時系列TBL152と、加速度ヒストグラムTBL153と、物理データTBL154と、労務データTBL155と、燃費データTBL156と、閾値TBL157とで構成される。
【0031】
ここで、各TBL(Table)のデータ構造について簡単に説明する。ドライバデータTBL151は、ドライバ、車種、車重、車両番号、運転出発日、運転出発時刻等の書誌事項の他、走行軌跡時系列TBL152、加速ヒストグラムTBL153、物理データTBL154、労務データTBL155、燃費データTBL155の各データフィールドを持つ。
走行軌跡時系列TBL152は、番号、日付、時刻、緯度、経度、種別、最高速度、積算距離、初速度、終速度、平均速度、加速度分散、横Gのデータフィールドから構成される。ここで、種別データフィールドにある定周期走行とは、n分間隔のデータ(n=1、2、15)、最高速度とは、過去n分間内での最高速度(単位はkm/h)、平均速度とは、過去n分間内での平均速度(単位はkm/h)、加速度標準分散とは、過去n分間内で加速度の分散(km/h/sec)2、横Gとは、急横Gがあったときの横方向の加速度(右方向が+、単位はkm/h)、加速度、終速度とは、それぞれ急加減速時に記録される。急加減速の初速度と終速度(単位はkm/h)をいう。ちなみに横Gは、車両の基本諸元データと、走行軌跡および車両速度情報から計算により求めることができる(例えば車両進行方向に直角な方向に作用する横力としても計算可能)。
【0032】
なお、図9に、走行軌跡時系列TBL152の種別のコード(始業、終業、休憩、高速、高速解除、走行、荷積み、荷卸し/運転自動検出、電源OFF、アイドリング開始、アイドリング終了、定周期走行、急加速、急減速、急ハンドル)と、そのときの記録情報(最高速度、積算距離、加速度、遅速度、平均速度、加速度標準偏差、横Gがマトリックス表現されている。
ここで、〇が付された項目がドライバのボタン(カーナビゲーション装置4)操作により、あるいは各種センサ31を介して自動収集されるデータ項目である。図8は、例えば、定周期走行時(安定して走行しているとき)は、最高速度、平均速度、加速度標準偏差が走行軌跡時系列TBL152に記録され、急加速時や急減速時は、積算距離、初速度、終速度が走行軌跡時系列TBL152に記録されることを示している。なお、アイドリング開始時には積算走行距離が記録されるが、このアイドリング開始時は、アイドリング判定によりアイドリングが行われていると判定された後に決定される。また、図8において、横Gの記録は、横Gセンサを備える車両を用いた実施形態や横Gを計算により求める実施形態において行われるものである。
【0033】
一方、加速度ヒストグラムTBL153は、加速度、縦加速回数(前後方向の加速回数)、横加速回数の各データフィールドを持ち、ここでは、加速度の分布を20分割(−10〜+10)したときのそれぞれの、縦加速回数と横加速回数とが示される。ここでは、急加減速の閾値を11km/h/sec(0.3G)とし、閾値以上のものが記憶される。ここでの回数は、1秒を計測時間(△t=1sec)としたときの回数である。
物理データTBL154は、走行時間、運行時間、走行距離、平均速度、高速道走行時間、一般道走行時間、高速道走行距離、一般道走行距離、高速道平均速度、一般道平均速度の各データフィールドから成り、それぞれに書き込まれる一次データから、図示せぬ速度違反情報TBL、加速度統計情報TBLの二次データが作成され、割り付けられる。
【0034】
労務データTBL155は、運行時間と、連続運転時間最大と、休憩法令違反情報をデータ項目として持つ。
また、熱費データTBL156は、アイドリング時間合計、アイドリング回数、縦加速度平均、平均速度、走行距離、実熱料消費率の一次データおよび、これら一次データから作成される二次データのアイドリングヒストグラムTBL(図示せず)から成る。なお、閾値TBL157には、診断項目毎の閾値が記録されているものとする。
【0035】
ここで、加速度標準偏差・歪度・尖度算出部125による加速度の標準偏差の計算方法について述べる。加速度標準偏差は、具体的に以下の演算式(1)を実行することにより求められる。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、車両DB15に、加速度の時系列でなく、予め加速減速についてそれぞれ定めた閾値以上の加速減速の加速度(以下急加速、急減速と呼ぶ)を記憶している場合の、加速度の標準偏差の求め方について述べる。具体的に、以下の演算式(2)を実行することにより求められる。
【0038】
【数2】

【0039】
前記した演算式(2)は、最小二乗法により経験的に求めた近似式とする。演算式(2)中にある重み係数A(1),A(2),A(3),A(4)は、予め採取した1秒毎の加速度から求めておく。
具体的には、予め1秒毎の加速度を採取しておき、その値により前記した演算式(1)で求めた加速度分散の真値、加速度系列データから加速減速ついてそれぞれ定めた閾値以上の値を取り出し、それぞれ急加速データ、急減速データとして、このデータから急加減速頻度、急加速平均、急加速二乗平均、急減速二乗平均の値を計算し、最小二乗法によりこれら重み係数A(0),A(1),A(2),A(3),A(4)を予め求めておく。また重み係数A(0),A(1),A(2),A(3),A(4)は、ニューラルネットワークを用いて関数近似を行って求めても良い。
【0040】
次に、加速度歪度の計算方法について述べる。具体的には以下の演算式(3)を実行することにより求められる。
【0041】
【数3】

【0042】
ここで、加速度標準偏差とは演算式(1)を実行することにより計算した値である。ここで、加速度の時系列でなく、予め定めた加速原則の閾値以上の加速度を記憶している場合の、加速度の歪度の求め方について述べる。
以下の演算式(4)は、最小二乗法により経験的に求めた近似式とする。
【0043】
【数4】

【0044】
ここでの式中にある重み係数B(0),B(1),B(2),B(3),B(4),B(5)は、予め採取した1秒毎の加速度から求めておく。具体的には、予め1秒毎の加速度を採取し、その値により演算式(3)で求めた加速度分散の真値、加速度時系列から閾値以上の値を取りだし、急加減速頻度、急加速平均、急減速平均、急加速二乗平均、急減速二乗平均、急加速三乗平均、急減速三乗平均の値を計算し、最小二乗法により重み係数B(0),B(1),B(2),B(3),B(4),B(5)を予め求めておく。また重み係数B(0),B(1),B(2),B(3),B(4),B(5)は、ニューラルネットを用いて関数近似を行って求めても良い。
【0045】
次に、加速度尖度の計算方法について述べる。具体的には以下の演算式(5)を実行することにより求められる。
【数5】

次に、安全運転診断コンテンツの作成方法について述べる。ここで、安全運転の度合いとは、交通事故を起こす確率に反比例するように設定される。これは、予めドライバの事故歴(一年あたり何回事故を起こしたかの回数、以下、事故頻度と呼ぶ)が得られる場合はその情報と、加速度標準偏差、加速度歪度のペアの情報を集めておき、事故頻度を加速度標準偏差と、加速度歪度の値とで説明するための関係式を求める。これにより、加速度標準偏差と加速度歪度とを計測すれば、事故の頻度を推定することが可能になる。ここで加速度標準偏差は、走行地域の影響を受けやすい物理量であるが、ドライバの性格もある程度反映した量であるため、この物理量も含める。この関係の一例として以下の演算式(6)を求める方法がある。
【0046】
【数6】

【0047】
ここで、ここでの式中にある重み係数C(0),C(1),C(2)は、予め集めておいたドライバの事故歴、加速度標準偏差、加速度歪度のペアの情報から、事故歴データを事故頻度と見なして、最小二乗法で求めておく。また演算式(6)の事故頻度の逆数を安全運転の度合いとする。またここで、最小二乗法でなくとも、ニューラルネットを使用して、事故頻度を出力、加速度標準偏差、加速度歪度を入力とした関数近似を行って求めても良い。
また、事故歴が得られ難い場合には、事故に至る可能性が高いと考えられる急減速を事故頻度の代わりのデータとして用いて加速度標準偏差、加速度歪度をもとに前記した演算式(6)により同様に事故頻度を推定する。
【0048】
次に、安全運転の度合いの精度を向上させる方法について述べる。この精度は、前記した演算式(6)の最小二乗法またはニューラルネットによる学習により決定される。このため、ドライバ(被験者)のデータ数が多くなるにつれ、精度が向上することになる。このため、図1に示す交通安全サービスセンタ1の運転診断サーバ10に蓄えられた加速度の歪度と標準偏差の値の群を用いて再学習を行えば良い。
また、これらの学習データが全くない場合には簡便な方法として、事前に複数のドライバ(被験者)における運転挙動データのうち、加速度時系列データを分析して得られた閾値を用い、一例として以下のように設定する。すなわち、加速度標準偏差が1.5km/h/sec以上で、かつ、加速度歪度の絶対値が0.3以上のときは、安全運転の度合いを0とする。また、それ以外のときには、安全運転の度合いを1とする。
【0049】
次に、警告画面とそのメッセージ内容について述べる。運転の加速度の分布を元に、ドライバの性格を診断して評価を行った安全運転の度合いが、予め設定された閾値以下の場に警告を与えることにする。ここで、閾値は1つ以上でも良い。本実施形態では図9に示されるように5段階のレベルを用意し、各レベルの境界となる4つの閾値を用意する。そして安全なレベルから順に、A,B,C,D,Eと名前を付けることにする。また、加速度の加速側、減速側の分布の偏りを求めるため、加速度の歪度を求めておき、この加速度の歪度の値が減速側に大きな値を持つ場合には、そのドライバを、加速がゆったりで、減速が急で危ないと判定し、加速側に大きな値を持つ場合には、加速が急で減速がゆったりしていると判定する。
【0050】
例えば、加速度歪度が−0.3以下の場合、0.3以上の場合、それ以外の場合の3通りに分ける。この3通りに分けた組み合せと、5段階に定義した安全レベルとの組み合わせにより、診断メッセージを用意する(図10)。ここで、加速度歪度が−0.3の場合には、加速度分布の減速の裾野が加速よりも広いことを意味するため、「ブレーキがきつめです」のメッセージを入れる。また、加速度歪度が0.3以上の場合には、加速度分布の加速の裾野が減速より広いことを意味するため、「アクセルがきつめです」のメッセージを入れる。さらに、加速度歪度が−0.3を超え、0.3未満の場合には、加速度の分布が左右対称に近いことを意味するため、アクセルがきつい、ブレーキがきついのメッセージは入れない。
【0051】
また、図10に示すように、安全レベルがAの場合には「安全な運転をしています」、Bの場合には「安全運転に気をつけています」、Cの場合には「普通の運転をしています」、Dの場合には「やや荒っぽい運転をしています」、Eの場合には「荒っぽい運転をしています」のメッセージを入れる。
また、安全レベルが2つしか設定しない場合のメッセージは、安全レベルAと安全レベルEのみの表示とする。すなわち安全運転の度合いが閾値より安全サイド(値が大きい場合)にある場合はレベルAのメッセージ群の中から加速度歪度の値に応じてメッセージを出す。一方、閾値より危険サイド(値が小さい場合)にある場合は安全レベルEのメッセージ群の中から歪度の値に応じてメッセージを出す。
この診断メッセージは、交通安全サービスセンタ1の管理者が変更できるようにする。
【0052】
次に、安全レベルをA〜Eの5段階に分けた場合における閾値の決め方について説明する。この閾値は予めドライバの被験者を集めておき、主観的な安全のレベル分けをしておく。そして各々の安全レベルにおける、安全運転の度合いの平均値を求める。この安全レベル毎の平均値の中間値を、各安全レベルの閾値とする。例えば、安全レベルAの安全運転の度合いが100、安全レベルBの安全運転の度合いが80とする。この場合、安全レベルAと安全レベルBの閾値は90となる。
【0053】
また、安全のレベルが2つである場合の閾値の決め方について説明する。ここで、安全の度合いが交通事故頻度に基づいて計算されている場合には、平均的なドライバの交通事故における頻度の逆数とする。また、安全の度合いを急減速の回数に基づいて計算している場合には、平均的なドライバにおける急減速の頻度の逆数とする。ここで、平均的なドライバは、日本全国のドライバの平均を使用するか、交通安全サービスセンタ1に蓄えられているドライバの平均値とする。
【0054】
ここで、本発明実施形態により作成される帳票について、図11〜図14を参照しながら説明する。
図11に示す帳票は月次帳票であり(ドライバの1ヶ月の平均的評価と1週間の走行情報の履歴)、各診断項目のうち、特に重要な項目について帳票を作成し、ドライバの月平均での安全運転、省燃費の傾向を報告するために用いられる。
ここでは、1ヶ月間における各診断項目の値の変化がグラフ表示されている。
ここで、通常でない運転と思われる場合、日々帳票により詳細を確認することができる。また、1ヶ月間の各診断項目値の平均値が記録される。また、前月の値を表示することにより、その傾向を明示することができる。
【0055】
なお、診断項目とは、図11に示す、ドライバ、走行期間、走行評価、運転傾向、安全運転点数、省燃費運転点数、走行情報の履歴(燃費[km/l]、平均速度[km/h]、総速度超過時間割合[%]、0.3G以上加速度割合[回/h]、0.3G以上減速度割合[回/h]、0.3G以上ヒヤリハット割合[回/h])、月平均評価等をいう。
【0056】
図12はドライバの運転操作分析帳票を示す図であり、自由走行における速度分析と、ブレーキ操作時におけるブレーキ使用率と、アクセルワークおよびギアチェンジ(マニュアル車)時の速度分布とが示されている。
また、図13は、燃料要因分析帳票を示す図であり、燃費内訳および燃料削減目標毎のアドバイスが表形式で示されている。
【0057】
図14は4名のドライバ比較データを示す図であり、安全指導前後における運転傾向に関する評価が示されている。
ここでは、原点に近いほど安定した速度(定速度)で無駄な加速がない(アクセルワークが安定した)ドライバであることを示している。D氏は、安全指導により、加速、アクセルワーク共に改善が認められる。補足すると、図において、データが上方にあるほどドライバは急加速しやすい傾向にあり、データが下方にあるほどドライバは急減速しやすい傾向にある。
【0058】
以上説明のように本発明は、運転診断サーバ10が、カーナビゲーション装置4もしくは車載端末装置から通信網6を介して取得される車両の挙動データを受信し、当該挙動データから車両の走行属性を判断し、挙動データに基づく時系列情報から加速度分布を求め、加速度分布を統計処理して走行属性毎に安全診断コンテンツを生成するものである。また、車両に搭載されたセンサ類31を介して取得される車両の挙動データを受信し、当該挙動データから車両の走行属性を判断し、挙動データに基づき時系列情報を生成して燃費消費マップに照らし合わせて燃料消費量を求め、走行属性毎に省燃費運転診断コンテンツを生成するものである。
【0059】
このことにより、例えば、追従走行や自由走行等、走行属性に応じた安全運転診断あるいは省燃費診断コンテンツが得られるため公平な評価を得ることができる。なお、走行属性毎、診断項目のそれぞれに用意される閾値と比較し、その結果によってはドライバに注意を喚起する警報を出力することで、ドライバは、安全運転、省燃費運転を心がけることができる。
なお、安全運転診断、省燃費運転診断は、車両に搭載されるカーナビゲーション装置あるいは車両端末が、交通安全サービスセンタ1にある運転診断サーバ10に代わって単独で行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明実施形態に係わる運転診断方法を用いた運転診断システムのシステム構成図である。
【図2】本発明実施形態に係わる安全運転診断の運用形態についてシーケンス図で示した図である。
【図3】本発明実施形態に係わる安全運転診断をカーナビゲーション装置が行う場合のプログラムの構造を説明するために引用したPAD図である。
【図4】本発明実施形態に係わる省燃費運転診断の運用形態についてシーケンス図で示した図である。
【図5】本発明実施形態に係わる省燃費運転診断をカーナビゲーション装置が行う場合のプログラムの構造を説明するために引用したPAD図である。
【図6】本発明実施形態におけるカーナビゲーション装置の内部構成ブロック図である。
【図7】本発明実施形態における運転診断装置(運転診断サーバ)の内部構成を機能展開して示したブロック図である。
【図8】本発明実施形態において使用される燃費マップの一例を示す図である。
【図9】本発明実施形態において使用される車両DB(走行時系列TBL)のデータ構造の一例を示す図である。
【図10】本発明実施形態において使用される警告画面とそのメッセージの一例を示す図である。
【図11】本発明実施形態において作成される帳票(安全・省燃費運転診断コンテンツ)の一例を示す図である。
【図12】本発明実施形態において作成される帳票(安全・省燃費運転診断コンテンツ)の一例を示す図である。
【図13】本発明実施形態において作成される帳票(安全・省燃費運転診断コンテンツ)の一例を示す図である。
【図14】本発明実施形態において作成される帳票(安全・省燃費運転診断コンテンツ)の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 交通安全サービスセンタ
3 車両
4 カーナビゲーション装置
6 通信網
10 運転診断装置(運転診断サーバ)
11 通信制御部
12 安全運転診断コンテンツ生成部
13 省燃費運転診断コンテンツ生成部
14 帳票出力部
15 車両DB
121,131 走行属性判断部
125 加速度標準偏差・歪度・尖度算出部
133 燃料効率評価部
134 燃費マップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの車両運転状況に対し、センタのコンピュータによって安全運転に関する診断を行う運転診断方法であって、
車載端末もしくはカーナビゲーション装置から通信網を介して取得される車両の運転挙動データを受信する第1のステップと、
前記運転挙動データから前記車両の走行属性を判断する第2のステップと、
前記運転挙動データに基づく時系列情報から加速度分布を求め、前記加速度分布を統計処理して前記走行属性毎に安全診断コンテンツを生成する第3のステップと、
を有することを特徴とする運転診断方法。
【請求項2】
ドライバの車両運転状況に対し、センタのコンピュータ、もしくは車載端末あるいはカーナビゲーション装置によって省燃費運転に関する診断を行う運転診断方法であって、
車両に搭載されたセンサを介して取得される運転挙動データを受信する第1のステップと、
前記運転挙動データから前記車両の走行属性を判断する第2のステップと、
前記運転挙動データに基づき時系列情報を生成し、燃費消費マップに照らし合わせて燃料消費量を求め、前記走行属性毎に省燃費運転診断コンテンツを生成する第3のステップと、
を有することを特徴とする運転診断方法。
【請求項3】
前記走行属性毎、診断項目のそれぞれに用意される閾値と比較し、その結果によってドライバに注意を喚起する警報を出力する第4のステップを有することを特徴とする請求項1または2に記載の運転診断方法。
【請求項4】
前記第2のステップは、
前記車両に搭載され、自車両と前方走行車両との間の車間距離を計測するセンサから信号を取得し、追従走行、自由走行の別を示す前記走行属性を判断するサブステップを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の運転診断方法。
【請求項5】
前記第2のステップは、
前記車両に搭載された現在位置を計測するセンサから信号を取得して走行区域を抽出するサブステップと、
当該抽出された走行区域を地図情報と照らし合わせ、市街地走行、郊外走行の別を示す前記走行属性を判断するサブステップと、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の運転診断方法。
【請求項6】
前記第2のステップは、
前記車両に搭載された現在位置を計測するセンサから信号を取得して走行区域を抽出するサブステップと、
前記抽出された走行区域を地図情報と照らし合わせ、右左折の別を示す前記走行属性を判断するサブステップと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の運転診断方法。
【請求項7】
前記第2のステップは、
前記車両に搭載された現在位置を計測するセンサから信号を取得して方位角を判断して右左折を示す前記走行属性を判断するサブステップを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の運転診断方法。
【請求項8】
前記第2のステップは、
前記車両に搭載された現在位置を計測するセンサから信号を取得して走行区域を抽出するサブステップと、
前記抽出された走行区域を渋滞地図情報と照らし合わせ、渋滞の有無を示す前記走行属性を判断するサブステップと、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の運転診断方法。
【請求項9】
前記第2のステップは、
前記挙動データから自車両の速度分布を求めるサブステップと、
前記速度分布を閾値と比較して渋滞の有無を示す前記走行属性を判断するサブステップとを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の運転診断方法。
【請求項10】
前記第3のステップは、
前記加速度分布の加減速の対象度を示す統計量として歪度を用い、加速度の広がり具合を示す統計量として標準偏差を用いるサブステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の運転診断方法。
【請求項11】
前記第3のステップは、
前記加速度分布から加速度の鋭角度または平坦度を示す統計量として尖度を用い、前記追従走行と自由走行の時間割りを特定するサブステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の運転診断方法。
【請求項12】
前記第3のステップは、
前記時系列情報のうち、所定の質量、勾配を持つ走行状態において消費した燃料消費量を前記燃料消費量から減算し、残りの時系列情報においてドライバの燃費診断を行うサブステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の運転診断方法。
【請求項13】
前記第3のステップは、
前記車両に搭載された荷重センサにより、もしくは振動センサによる固有振動を計測して間接的に質量の判定を行うサブステップを含むことを特徴とする請求項12に記載の運転診断方法。
【請求項14】
前記第4のステップは、
前記挙動データのうちエンジン回転速度とアクセル開度で規定されるドライバの行動軌跡と燃料消費効率の関係を規定した前記燃費マップを参照して燃料消費量を推定するサブステップと、
前記推定された燃料消費量が、あらかじめ定義され設定された閾値より大きな走行状態において注意喚起のための警報を出力するサブステップと、を含むことを特徴とする請求項2に記載の運転診断方法。
【請求項15】
前記閾値として、前記燃費マップにより推定される燃料消費量より多い燃料を使用する走行状態における燃料消費量、同じ車種を運転する複数ドライバの燃料消費量の平均値、もしくは一人のドライバの平均燃料消費量が設定されることを特徴とする請求項14に記載の運転診断方法。
【請求項16】
ドライバの車両運転状況に対し、センタのコンピュータによって安全運転に関する診断を行う運転診断装置であって、
車載端末もしくはカーナビゲーション装置から通信網を介して取得される運転挙動データを受信する手段と、
前記運転挙動データから前記車両の走行属性を判断する手段と、
前記運転挙動データに基づく時系列情報から加速度分布を求め、前記加速度分布を統計処理して前記走行属性毎に安全診断コンテンツを生成する手段と、
を備えたことを特徴とする運転診断装置。
【請求項17】
ドライバの車両運転状況に対し、センタのコンピュータ、もしくは車載端末、あるいはカーナビゲーション装置によって省燃費運転に関する診断を行う運転診断装置であって、
車両に搭載されたセンサを介して取得される運転挙動データを受信する手段と、
前記運転挙動データから前記車両の走行属性を判断する手段と、
前記挙動データに基づき時系列情報を生成し、燃費消費マップに照らし合わせて燃料消費量を推定し、前記走行属性毎に省燃費運転診断コンテンツを生成する手段と、
を備えたことを特徴とする運転診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−243856(P2006−243856A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55280(P2005−55280)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】