説明

過電流防止回路

【課題】 電流の流れる経路に対して影響を与えずに、電流を検出することのできる過電流防止回路を提供する。
【解決手段】 オペアンプ2とバイポーラトランジスタ3または電界効果トランジスタで構成される電圧供給回路1と、電圧供給回路からの電圧を供給する際に生じる出力電流が作る磁界を検出し、電圧を生じさせるホール素子を有し、ホール素子からの出力電圧を増幅するホール電圧増幅回路を有する電流検出回路(4、5、6)と、電流検出回路が出力する出力電圧と基準電圧を比較する比較回路7と、電圧供給回路を制御する制御電圧から比較回路からの出力電圧を減算し、減算した電圧を電圧供給回路へ入力する減算回路8とを備え、電圧供給回路は、減算回路からの電圧に応じた電圧を出力し、ホール電圧増幅回路からの電圧が、基準電圧を越えたときに、減算回路が制御電圧から、比較回路からの出力電圧を減算し、電圧供給回路からの電圧および電流を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流防止回路に関し、特に過電流時における電流から発生する磁界を検出して、過電流を防止する機能を備える過電流防止回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の過電流防止回路は、例えば図7に示すようなものがある。
【0003】
図7の過電流防止回路は、電源ライン36と、電源ライン36の入出力間に接続された低抵抗値の過電流検出抵抗34及び半導体スイッチ33と、電源入力によりリセット信号を出力するリセット発生部31とを有している。さらに、過電流検出抵抗34の両端電圧を検出し、検出された過電流検出抵抗34の両端電圧と設定された電圧とを比較する電圧比較部35と、過電流発生時に電圧比較部35が検出した検出信号を保持すると共に、リセット信号または検出信号により半導体スイッチ33を制御する記憶回路32とを有している。この構成により、過電流検出抵抗34において過電流を検出することができる。
【特許文献1】特開平6−311001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の過電流防止回路は、過電流を検出するために、電流が流れる経路に抵抗を挿入した構成となっている。そのため、たとえ低抵抗であっても、その抵抗により電圧の低下が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、電流の流れる経路に対して影響を与えず、過電流を検出することのできる過電流防止回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の過電流防止回路は、オペアンプとバイポーラトランジスタまたは電界効果トランジスタで構成される電圧供給回路と、前記電圧供給回路からの電圧を供給する際に生じる出力電流が作る磁界を検出し、電圧を生じさせるホール素子を有し、前記ホール素子からの出力電圧を増幅するホール電圧増幅回路を有する電流検出回路と、前記電流検出回路が出力する出力電圧と基準電圧を比較する比較回路と、前記電圧供給回路を制御する制御電圧から前記比較回路からの出力電圧を減算し、減算した電圧を前記電圧供給回路へ入力する減算回路とを備え、前記電圧供給回路は、前記減算回路からの電圧に応じた電圧を出力し、前記ホール電圧増幅回路からの電圧が、前記基準電圧を越えたときに、前記減算回路が制御電圧から、前記比較回路からの出力電圧を減算し、前記電圧供給回路からの電圧および電流を減少させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の過電流防止回路は、導線の外部に磁気検出装置を配置し、導線に流れる電流に応じた磁界を検出することにより、検出する電流に影響を与えることなく過電流の有無を判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の過電流防止回路において、前記電圧供給回路の複数個ある前記バイポーラトランジスタまたは前記電界効果トランジスタを複数の組に分け、出力電流を前記組ごとに加算した電流に対して、1つの前記ホール素子を有し、それぞれの前記ホール素子の出力電圧を加算する構成にすることもできる。この構成により、電流検出回路をバイポーラトランジスタまたは電界効果トランジスタの数より少なくすることができる。
【0009】
また、シリコン基板上に形成された構成にすることもできる。この構成により、過電流防止回路を構成するすべての回路をシリコン基板上に構成することができ、これにより過電流防止回路の各素子を同一の工程で製造することが容易にできる。
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における過電流防止回路について、図1〜図3を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態1における過電流防止回路のブロック図であり、図2は、図1のブロック図を、ブロックを構成する素子で示した図である。図3(a)は、本発明の実施の形態1におけるバイポーラトランジスタ9と磁気検出装置4の位置関係を示した平面図である。図3(b)は、図3(a)のホール素子5における磁界、制御電流およびホール電圧のそれぞれの方向を示した図である。
【0013】
図1に示すように、過電流防止回路は、オペアンプ2とバイポーラトランジスタ3を含む電圧供給回路1と、電圧供給回路1の電圧を供給する際の電流による磁界を検出するホール素子5を含む磁気検出装置4と、磁気検出装置4から出力されるホール電圧を増幅するホール電圧増幅回路6とを有している。ホール電圧増幅回路6の出力電圧は、比較回路7に入力され、比較回路7は、入力された電圧を過電流か否かを決める基準電圧と比較し、比較に応じた電圧を出力する。比較回路7の出力電圧は、減算回路8に入力され、減算回路8は、電圧供給回路1を制御する制御電圧から比較回路7の出力電圧を減算し、減算した電圧を電圧供給回路1へ出力する。
【0014】
図2に示すように、電圧供給回路1は、電源と、オペアンプ2と、バイポーラトランジスタ3とで構成され、減算回路8を介して供給される外部からの制御電圧に比例して出力電圧を変化させる。磁気検出装置4は、4つの端子を有しており外部よりホール素子5の電源電圧Vhを与えることにより、VhとGND端子間にホール素子5の制御電流が流れる。また、磁気検出装置4は、電圧供給回路1の出力電流から発生する磁界を検出して、磁界に応じたホール電圧をV+及びV−端子よりホール電圧増幅回路6へ出力する。
【0015】
磁気検出装置4は備えている端子の位置により、制御電流とホール電圧の方向が決まっているため、検出できる磁界は、ホール素子5に加えられる制御電流と発生するホール電圧によりできる面を磁気検出面とすると、磁気検出面と垂直な成分のみである。
【0016】
次に、上記の構成における動作について説明する。ホール素子5は、図3(b)に示すように、電圧供給回路1のバイポーラトランジスタ9のコレクタに接続された配線10を流れる電流に発生する磁界を、磁気検出面に対して垂直に受けるように配置され、磁界を検出する。なお、ホール素子5は、バイポーラトランジスタ9のベース配線、またはエミッタ配線を流れる電流が発生する磁界を、磁気検出面に対して垂直に受けるように配置してもよい。
【0017】
ホール素子5は、検出した磁界に応じてホール電圧を出力する。この関係は、以下に示す式(1)、(2)で表すことができる。
【0018】
B=μ0×I/(2×π×a) (1)
B:磁束密度、μ0:真空の透磁率、I:出力電流、
a:出力電流Iが流れる導体から磁界検出点までの距離
Hall=(Rh/d)×Ih×B (2)
Hall:ホール電圧、Rh:ホール係数、
Ih:ホール素子を制御する制御電流、d:ホール素子の厚さ
式(1)、(2)に示されるとおり、出力電流Iが発生する磁束密度Bは、出力電流Iに比例し、ホール電圧VHallは、磁束密度Bに比例する。従って、ホール素子5は、出力電流Iに比例してホール電圧VHallを出力する。
【0019】
図3(a)に示す例では、磁気検出装置4は、バイポーラトランジスタ9を1個につき1つ配置される。図3(a)中のバイポーラトランジスタ9のC、B、Eは、それぞれコレクタ、ベース、エミッタを表している。各磁気検出装置4から検出されたホール電圧は、加算器(図示せず)で加算され、ホール電圧増幅回路6に出力される。
【0020】
図4は、本実施の形態のバイポーラトランジスタ9と磁気検出装置4との配置における他の例を示した図である。図4は、列状に配置されたバイポーラトランジスタ9のn個のコレクタ配線10が統合され、統合された配線10に対して、1つの磁気検出装置4が配置された構成を示している。
【0021】
第1の組の列状に配列されたn個のバイポーラトランジスタ9a、9b、9cは、それぞれのコレクタ配線10が1つに統合されている。統合された配線10に流れる電流により生じる磁界を検出するために、磁気検出部4aが配置されている。同様に、バイポーラトランジスタ9d、9e、9fそれぞれのコレクタ配線10が1つに統合され、配線10に流れる電流による磁界を検出するために、磁気検出部4bが配置されている。各組のホール素子5から出力されるホール電圧は、加算器で加算されてホール電圧増幅回路6に入力される。
【0022】
図5は、本実施の形態のバイポーラトランジスタ9と磁気検出装置4との配置における更に他の例を示した図である。図5は、全てのバイポーラトランジスタ9におけるコレクタ配線10と、配線10に流れる電流を検出する磁気検出装置4とを示している。全てのバイポーラトランジスタ9に対して、1つの磁気検出装置4が配置された構成を示している。全てのバイポーラトランジスタ9g、9h、9i、9j、9k、9lそれぞれのコレクタ配線10は、1つに統合されている。統合された配線10を流れる電流により生じる磁界を検出するために、磁気検出部4が1つ配置されている。
【0023】
磁気検出装置4から出力されるホール電圧は、ホール電圧増幅回路6に入力され増幅される。図2に示すように、ホール電圧増幅回路6は、オペアンプ等によって形成されている。なお、ホール電圧増幅回路6は、対数増幅回路で実現されてもよい。この場合は、磁気検出装置4での磁界が小さく、ホール電圧が小さい場合でも、ホール電圧増幅回路4から出力電圧が急峻な電圧を出力できるので、ホール電圧の変化が微小な場合に有効である。
【0024】
ホール電圧増幅回路6からの出力電圧は、比較回路7に入力され、外部からの基準電圧と比較される。比較回路7は、基準電圧よりもホール電圧増幅回路6の出力電圧が大きい場合には、Hレベルの電圧を出力し、ホール電圧増幅回路6の出力電圧が小さい場合には、Lレベルの電圧を出力する。比較回路7は、図2に示すように、オペアンプ等により実現される。
【0025】
Hレベル、Lレベルは、オペアンプにかける正電圧及び負電圧で任意にレベルを可変とすることができる。外部から加える基準電圧は、電圧供給回路1の出力電流をいくつで過電流と検出するかに応じて決めることができる。例えば、電圧供給回路1の出力電流を1A以上流さないように設定する場合、出力の負荷として抵抗等で1Aの電流が流がれるようにして、ホール電圧増幅回路6の電圧をモニター端子等により読み、その電圧を基準電圧として設定することにより、1A以上の電流は流れないようにすることができる。
【0026】
過電流が検出されない状態では、比較回路7において、基準電圧よりもホール電圧増幅回路6の出力電圧が小さいので、比較回路7よりLレベルの電圧が出力される。比較回路7を構成するオペアンプの負電圧はグランド電位である0Vとした場合、過電流が検出されない状態では、比較回路7からLレベルである0Vが出力され減算回路8に入力される。減算回路8は、比較回路から0Vが入力されるため、外部からの制御電圧と同じ電圧を電圧供給回路1に出力する。
【0027】
過電流が検出される状態では、比較回路7において、基準電圧よりもホール電圧増幅回路6の出力電圧が大きいので、比較回路7よりHレベルの電圧が出力され、減算回路8に入力される。減算回路8は、外部からの制御電圧から比較回路7の出力電圧を減算し、減算した電圧を電圧供給回路1に出力する。従って、電圧供給回路1に入力される電圧が減少するので、電圧供給回路1からの出力電圧が下がり、出力電流が減少することにより過電流を防止することができる。
【0028】
(実施の形態2)
図6(a)、(b)は、本発明の実施の形態2における過電流防止回路のバイポーラトランジスタ11と磁気検出装置12の各素子を構成する半導体の平面図である。図6(c)は、本発明の実施の形態2における過電流防止回路のバイポーラトランジスタ11と磁気検出装置12の断面図である。本実施の形態における過電流防止回路は、実施の形態1における過電流防止回路を半導体基板に形成したところが異なっているが、動作に関しては、同様である。
【0029】
バイポーラトランジスタ11と磁気検出装置12とは、同一のシリコン基板上の同一平面上に配置されている。図6(c)を参照しながらその構造を説明する。バイポーラトランジスタ11は、P形基板13上に形成されている。P形基板13上には、埋め込み層14が形成され、埋め込み層14の上には、P型分離層15で分離されたN型領域16が形成されている。さらに、N型領域16の中にコレクタとなるコレクタ領域17とベースとなるベース領域18が形成されている。ベース領域18の中にはエミッタとなるエミッタ領域19が形成され、ベース領域18、コレクタ領域17、エミッタ領域19の上には絶縁膜20と配線21が形成されている。
【0030】
ホール素子24は、P形基板13上にP型分離層15で分離されたN型領域16が形成されている。さらにN型領域16の上にP型領域22が形成され、その上にホール素子24の2つの電極となるホール電圧出力端子23が形成されている。また電極となる2つのホール電圧出力端子23の間にはホール素子24が形成され、2つの電極の上には、絶縁膜20と配線21が形成されている。
【0031】
さらに、同一シリコンのP型基板13上にオペアンプ等を形成することにより、過電流防止回路を構成するすべての回路をシリコン基板上に構成することができ、これにより過電流防止回路を同一工程で製造することが容易にできる。
【0032】
また、配線21と磁気検出装置12との位置関係は、実施の形態1と同様に、コレクタ電流、ベース電流またはエミッタ電流のいずれかが発生させる磁界を磁気検出面に対して、垂直に受けるようにホール素子24が配置される。
【0033】
なお、図1〜図6では、バイポーラトランジスタの場合について説明したが、電界効果型トランジスタを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、電流が流れる経路に影響を与えずに、過電流を検出する過電流防止回路として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1における過電流防止回路のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における過電流防止回路の回路図
【図3】(a)本発明の実施の形態1におけるバイポーラトランジスタと磁気検出装置の配置を示した平面図、(b)ホール素子に係る制御電流、ホール電圧、磁界のそれそれの方向を示す図
【図4】本発明の実施の形態1に係るバイポーラトランジスタn個につき磁気検出装置1つを配置した場合を示した平面図
【図5】本発明の実施の形態1に係る全てのバイポーラトランジスタにつき磁気検出装置1つを配置した場合を示した平面図
【図6】(a)本発明の実施の形態2における過電流防止回路をシリコン基板上に構成したバイポーラトランジスタの平面図、(b)本発明の実施の形態2における過電流防止回路をシリコン基板上に構成した磁気検出装置の平面図、(c)本発明の実施の形態2に係る過電流防止回路をシリコン基板上に構成した半導体の断面図
【図7】従来の過電流防止回路のブロック図
【符号の説明】
【0036】
1 電圧供給回路
2 オペアンプ
3、9、9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h、9i、9j、9k、9l、11 バイポーラトランジスタ
4、4a、4b、12 磁気検出装置
5、5a、5b、24 ホール素子
6 ホール電圧増幅回路
7 比較回路
8 減算回路
10、21 配線
13 P型基板
14 埋め込み層
15 P型分離層
16 N型領域
17 コレクタ領域
18 ベース領域
19 エミッタ領域
20 絶縁膜
22 P型領域
23 ホール電圧出力端子
31 リセット発生部
32 記憶回路
33 半導体スイッチ
34 過電流検出抵抗
35 電圧比較部
36 電源ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペアンプとバイポーラトランジスタまたは電界効果トランジスタで構成される電圧供給回路と、
前記電圧供給回路からの電圧を供給する際に生じる出力電流が作る磁界を検出し、電圧を生じさせるホール素子を有し、前記ホール素子からの出力電圧を増幅するホール電圧増幅回路を有する電流検出回路と、
前記電流検出回路が出力する出力電圧と基準電圧を比較する比較回路と、
前記電圧供給回路を制御する制御電圧から前記比較回路からの出力電圧を減算し、減算した電圧を前記電圧供給回路へ入力する減算回路とを備え、
前記電圧供給回路は、前記減算回路からの電圧に応じた電圧を出力し、前記ホール電圧増幅回路からの電圧が、前記基準電圧を越えたときに、前記電圧供給回路から供給される電流が所定の値以下に制御される過電流防止回路。
【請求項2】
前記電圧供給回路の複数個ある前記バイポーラトランジスタまたは前記電界効果トランジスタを複数の組に分け、出力電流を前記組ごとに加算した電流に対して、1つの前記ホール素子を有し、それぞれの前記ホール素子の出力電圧を加算する請求項1記載の過電流防止回路。
【請求項3】
シリコン基板上に形成された請求項1または2記載の過電流防止回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−42051(P2006−42051A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220596(P2004−220596)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】