説明

遠隔監視システム

【課題】 監視員が把握していない異常記録を容易に確認できる遠隔監視システムの提供。
【解決手段】監視センタは、移動ロボットに自動的に復旧処理を実行させる自動復旧モードを含む複数の動作モードを管理するモード設定手段と、動作モードが自動復旧モードであるときに受信した異常信号の情報と、その他の動作モードであるときに受信した異常信号の情報とを区別可能にセンタ記憶部に記憶する記憶制御手段と、モード設定手段にて動作モードが自動復旧モードからその他のモードへ設定されると、自動復旧モードであるときに記憶された異常信号の情報からなる異常履歴又は該異常履歴を表示するためのダイアログを表示部に表示する履歴表示手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動ロボットを用いた遠隔監視システムに関し、特に、監視区域を走行する移動ロボットが検知した異常を遠隔から監視する遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、路面上を自律的に移動する移動ロボットが種々実用化されている。このような移動ロボットとしては、障害物の存在や火災などの異常を検知すると遠隔の監視装置に異常信号を送信するものが知られるところである。そして、監視装置を監視する監視員により異常が確認され、監視員の判断により適切に異常の復旧がなされる。
【0003】
このような移動ロボットを用いた遠隔監視システムとして、特許文献1には、自動搬送車(移動ロボット)からトラブル情報が取り込まれると、ブザーを鳴らす等してモニター室の監視員に注意を喚起する自動搬送車の遠隔監視システムが開示されている。この特許文献1の自動搬送車の遠隔監視システムは、ブザー鳴動により注意喚起を受けた監視員がモニターを見てトラブルの原因特定を行い、キーボードを操作して自動搬送車にトラブル解除信号と再起動信号を送信することで、ブザー鳴動を停止させるとともに自動搬送車の運行を再開させる。(0009段落〜0011段落)
【特許文献1】特開2002−41145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の遠隔監視システムは、移動ロボットが検出した異常の情報を監視員が毎回確認することにより、監視員が監視区域となる現場の状況を適切に把握することができ、監視区域に生じた問題の解決や監視区域の環境改善などを行うことができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の遠隔監視システムは、移動ロボットから異常の情報を受信する都度ブザーが鳴動して注意喚起がなされ、監視員が毎回異常の原因特定を行った上で移動ロボットの運行を再開させる作業を行うために、監視員は席を離れて満足に休憩を取ることもできず、異常確認の負担がかかっていた。
【0006】
特に、監視区域の警備を目的として昼夜問わず移動を行う警備用途の移動ロボットについて従来のような遠隔監視システムを用いようとすると、かかる遠隔監視システムの監視員の負担が著しく増大する可能性がある。
【0007】
そこで、かかる負担への対策として、移動ロボットが異常を検知しても、監視員に確認を促すことなく自律的に移動ロボットの運行を再開するよう設計することが考えられる。
しかしながら、この場合、監視区域で検出された異常を監視員が確認するためには、監視員が移動ロボットの状態を把握していない時間帯を覚えておいて後から異常記録を検索するといった処理が必要となり、監視員が把握していない異常の参照に手間がかかるという問題がある。この結果、監視区域に生じた問題などを監視員が適切に把握しておくことができず、セキュリティ性の低下を招くおそれが生じてしまう。
【0008】
このような課題を解決すべく、本発明は、監視員の負担軽減を実現するとともに、監視員が把握していない異常の記録を容易に確認できる移動ロボットの遠隔監視システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明による移動ロボットの遠隔監視システムは、監視区域の異常を検知する検知部を備えた移動ロボットと、前記移動ロボットが検知した異常情報を表示する表示部を備えた監視センタとを有する遠隔監視システムであって、前記移動ロボットは、前記監視センタと通信する通信部と、前記監視区域の状態を記憶する記憶部と、前記検知部が異常を検知すると前記記憶部に異常状態を保持させる異常判定手段と、前記検知部が異常を検知すると前記監視センタに異常情報を送信する通信制御手段と、前記記憶部の前記異常状態の保持を解除する復旧処理を実行する復旧処理手段とを備え、前記監視センタは、前記移動ロボットと通信するセンタ通信部と、前記移動ロボットから受信した前記異常情報を記憶するセンタ記憶部と、自動復旧モードを含む複数の動作モードを管理するモード設定手段と、前記自動復旧モード時において前記移動ロボットに前記復旧処理を自動的に実行させる自動復旧制御手段と、前記自動復旧モード時に受信した異常情報と、その他の動作モード時に受信した異常情報とを区別可能に前記センタ記憶部に記憶する記憶制御手段と、前記動作モードが前記自動復旧モードからその他の動作モードへと設定されると、前記自動復旧モード時に記憶された異常情報からなる異常履歴又は該異常履歴を表示するためのダイアログを前記表示部に表示する履歴表示手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
監視センタは、自動復旧モードに設定されていると、移動ロボットが検知して記憶部に保持される異常について、移動ロボットに当該異常の保持を解除する復旧処理を実行させる。そして、監視センタは、自動復旧モードであるときに受信した異常信号を、その他の動作モードのときに受信した異常信号と区別可能に記憶するとともに、動作モードが自動復旧モードからその他のモードへ設定されると、自動復旧モード中に検出された異常の履歴又は該異常履歴を表示するためのダイアログを表示部に表示するよう作用する。
【0011】
これにより、監視センタを自動復旧モードに設定することで、監視員の手を煩わせることなく復旧処理を実行し監視員の負担を低減することが可能となる。また、自動復旧モードが終了したときに、かかる自動復旧モード中の異常の履歴を表示可能とすることで、監視員が確認することなく復旧処理が実行された異常の履歴を後から容易に確認できる。更に、自動復旧モード中の異常とその他の動作モード中の異常とを区別して記憶することにより、自動復旧モード中の異常だけを後から容易に検索することが可能となるのである。
【0012】
また、本発明による移動ロボットの遠隔監視システムにおいて好ましくは、更に、前記移動ロボットは、周囲を撮像する撮像ユニットを備え、該撮像した画像を前記監視センタに送信し、前記監視センタの前記記憶制御手段は、前記動作モードが前記自動復旧モードであるときに受信した前記画像と、その他の動作モードであるときに受信した前記画像とを区別可能に前記センタ記憶部に記憶する。
監視区域を撮像した画像は、例え監視員の確認を要することなく異常を復旧する自動復旧モード時のものであっても、監視員が後から確認して監視区域の状況を把握しておくことが好ましい。
そこで、本発明において、監視センタは、自動復旧モードであるときに受信した画像を、その他の動作モードであるときに記憶する画像と区別可能に記憶するように作用する。
これにより、監視員が確認することなく復旧処理が実行される自動復旧モード中の画像だけを後から容易に検索したり確認することが可能となり、利便性を向上させることができる。
【0013】
さらに、本発明による移動ロボットの遠隔監視システムにおいて好ましくは、更に、前記移動ロボットは、前記記憶部に異常状態が保持されると移動を停止させ、該異常状態の保持が解除されると移動を再開させる移動制御手段を備える。
移動ロボットは異常を検知すると、この異常を保持している間移動停止するよう作用する。これにより、不用意に異常を拡大することを防止して、外部から異常を観察する。
【0014】
さらに、本発明による移動ロボットの遠隔監視システムにおいて好ましくは、更に、前記監視センタの前記自動復旧制御手段は、前記異常信号を受信したときの動作モードが前記自動復旧モードであれば前記移動ロボットに自動復旧信号を送信し、前記移動ロボットの前記復旧処理手段は、前記監視センタから自動復旧信号を受信したとき前記復旧処理を実行し、前記記憶部に保持された前記異常状態に対応する異常を前記検知部が検知していなければ前記記憶部による該異常状態の保持を解除する。
監視センタは、自動復旧モードが設定されていると、異常信号の受信に応答して自動復旧信号を送信する。そして、移動ロボットは、自動復旧信号の受信により復旧処理を実行するよう作用する。
これにより、監視員に対して異常の確認を要求することなく、復旧処理を実行して監視員の負担が軽減されるのである。また、移動ロボットは、監視センタの動作モードが自動復旧モードなのかその他のモードなのかを記憶管理する必要がなく、移動ロボットの負荷を増大させることがない。
【0015】
また、本発明による移動ロボットの遠隔監視システムにおいて好ましくは、更に、前記監視センタの前記自動復旧制御手段は、前記モード設定手段にて前記動作モードが前記自動復旧モードに設定されると前記移動ロボットに自動復旧モード信号を送信し、前記自動復旧モードからその他のモードへ設定されると前記移動ロボットに自動復旧モード終了信号を送信し、前記移動ロボットの前記復旧処理手段は、前記自動復旧モード信号を受信してから前記自動復旧モード終了信号を受信するまでの間、前記記憶部に前記異常状態が保持されると前記復旧処理を実行し、該記憶部に保持された異常状態に対応する異常を前記検知部が検知していなければ前記記憶部による該異常状態の保持を解除する。
監視センタは、自動復旧モードに設定されると、移動ロボットに自動復旧モード信号を送信する。移動ロボットは、自動復旧モード信号を受信してから自動復旧モード終了信号を受信するまでの間、異常を検知すると異常信号を送信するとともに自律的に復旧処理を実行するように作用する。
これにより、監視員に対して異常の確認を要求することなく、復旧処理を実行して監視員の負担が軽減されるのである。また、監視センタでは、異常信号を受信する都度に自動復旧信号を送信する必要がなく、監視センタの負荷を増大させることがない。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る遠隔監視システムによれば、異常信号を受信する都度に監視員に確認を要することがなく、監視員の手を煩わせることなく復旧処理を実行し監視員の負担を低減することが可能となる。また、監視員が確認することなく復旧処理が実行された異常の履歴を後から容易に確認でき、監視員による監視区域の状況把握を容易としセキュリティ性の低下を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図1は本発明に係る遠隔監視システムを示す概略図である。遠隔監視システムは、監視区域3を移動する移動ロボット1と、監視センタ2とを無線接続して構成される。
移動ロボット1は、建物4の外周となる監視区域3を警備するために使用され、監視区域3の路面上を移動しながら監視区域3内の異常の検出を行うものである。
【0018】
移動ロボット1は、監視センタ2と無線接続されて監視区域3内の基準位置に停止しており、自己の記憶したスケジュールにより、又は監視センタ2から受信する制御信号により、監視区域3内の巡回を開始する。そして、移動ロボット1は、周囲の画像や、検知した異常の所在などを監視センタ2に送信する。
【0019】
図1において、建物4の周囲が、移動ロボット1が巡回する移動経路とされており、この移動経路には全長に渡りガイド5が固定的に設けられている。ガイド5は磁気材料より形成され、移動ロボット1は後述するガイド検知部にてガイド5を検出しながら当該ガイド5に沿って移動経路を移動するのである。
【0020】
また、ガイド5の中途には移動ロボット1のバッテリを充電する充電設備を備えた基準位置6が配置されている。移動ロボット1は、基準位置6からガイド5に沿って移動を開始して、ガイド5上の所定位置で一時的に停止して周囲を監視するなどの処理を実行しガイド5上の巡回を行い、基準位置6に到達すると移動停止して巡回を終了する。
【0021】
監視センタ2は、監視区域3の建物4内で監視員が駐在する遠隔監視装置20を備えた施設であり、遠隔監視装置20のオペレータとなる監視員が移動ロボット1から伝送される情報により監視区域3を監視している。なお、これに限らず、監視センタは、警備会社などが運営する遠隔の施設に設けられて、監視員が、通信網及び無線基地局を介して移動ロボットから遠隔監視装置に伝送される情報により監視区域を監視する構成としてもよい。
【0022】
遠隔監視装置20は、移動ロボット1から異常信号を受信するとブザーを鳴動させて監視員に注意喚起し、異常の確認を要求する。監視員は、移動ロボット1から受信する情報を確認して、監視区域3に非常事態が発生したことが認められると移動ロボット1を遠隔操作してかかる非常事態に対処させる。また、監視員は、移動ロボット1が検出した異常が障害物などの軽微なものであったり、瞬時的なノイズなどによる誤報であれば移動ロボット1を復旧させる信号を送信して、移動ロボット1を異常の検知状態(異常を保持した状態)から復旧させる。
【0023】
また、遠隔監視装置20は、自動復旧モードに設定されると、移動ロボット1からの異常信号に応答して移動ロボット1に自動復旧信号を送信する。移動ロボット1は自動復旧信号を受信すると軽微な異常を復旧処理して(異常の保持状態を解除して)巡回を継続する。これにより、監視センタ2が無人となる場合であっても移動ロボット1を用いて監視区域を警備できる。
【0024】
<移動ロボット>
次に、図2に基づき移動ロボット1の構成について説明する。図2は、移動ロボット1の構成を示すブロック図を示している。
移動ロボット1は、制御部11、検知部12、通信部13、移動手段14、自己位置検出部15、記憶部16を備えて構成される。検知部12は、監視区域3内の異常の所在を検出する手段で、撮像ユニット121、障害物検知部122、近傍物体検知部123、火災検知部124、ガイド検知部125を含んで構成される。
【0025】
制御部11は、CPU、メモリ等により実現され、メモリに記憶されている各種プログラムにしたがって移動ロボット1の各部を制御する。各種プログラムは、必要に応じ並行して実行される。また、制御部11は、通信制御手段111と異常判定手段112と復旧処理手段113と移動制御手段114とを含んで構成される。
【0026】
撮像ユニット121は、移動ロボット1の車体上部に設置されて移動ロボット1周囲を撮像し、制御部11に画像を出力する。また、撮像ユニット121は、撮像した画像を画像処理して所定以上の大きさの移動物体を検出する。画像処理手法については種々の方法が提案されており、ここでは詳述しない。また、撮像ユニット121は、撮像部が遮蔽されたり画像が撮像できなくなるなど撮像機器の異常を検出する。撮像ユニット121は、移動物体や撮像機器の異常が検出されると制御部11に異常検知信号を出力する。
【0027】
障害物検知部122は、移動ロボット1の進行方向前方の空間を走査するレーザセンサにて構成され、移動ロボット1の移動経路上に存在する障害物の相対位置を検出する。障害物検知部122は、監視区域に予め設置された既設物の位置情報を記憶しており、移動ロボット1の現在位置に応じて検出情報と既設物位置とを比較して既設物以外に検出された物体を障害物として判定する。障害物が検出されると制御部11に異常検知信号を出力する。
【0028】
近傍物体検知部123は、移動ロボット1の周囲に設けられた測距センサにて構成され、移動ロボット1の近傍(例えば40cm以内)に存在する物体を検知する。近傍の物体を検出すると制御部11に異常検知信号を出力する。
火災検知部124は、火災が発生した時に生じる紫外線を検出する紫外線センサにて構成され、センサの出力に基づき火災の発生を判定する。火災の発生を検出すると制御部11に異常検知信号を出力する。
【0029】
ガイド検知部125は、移動ロボット1の底部に設けられた磁気センサにて構成され、上述したガイド5を検出して制御部11にガイド検出信号を出力している。また、ガイド検知部125は、ガイド5を検出できない場合に制御部11に異常検知信号を出力する。
【0030】
制御部11において、異常判定手段112は、検知部12各部から異常検知信号が入力されると、監視区域3又は自己に異常が発生したと判定する。そして、異常判定手段112は、判定された異常を監視区域3又は自己の異常状態として記憶部16の現状態163に記憶し、記憶部16に異常状態であることを保持させて、かかる異常を示す異常信号を通信制御手段111に出力する。現状態163については後述する。
【0031】
また、制御部11において、移動制御手段114は、ガイド検出信号に基づいて移動手段14を駆動させる。移動手段14は、車体左右の各前後に設けられる車輪と車輪を駆動するモータとからなる。移動ロボット1は、モータにより前後何れかの左右輪を各独立に駆動して、ガイド5に追従するよう走行するのである。また、移動制御手段114は、異常判定手段112にて異常発生と判定され、記憶部16に異常状態が保持されると、移動手段14の駆動を停止して移動ロボット1を停止させる。移動制御手段114は、移動ロボット1が異常状態を保持した状態から復旧するまで(異常状態の保持が解除されるまで)移動ロボット1を停止させる。そして、移動制御手段114は、復旧処理手段113により異常状態を保持した状態から復旧すると、即ち現状態163が異常状態を保持した状態でなくなると再び移動手段14の駆動を開始してガイド5に沿って移動ロボット1を移動させる。
【0032】
自己位置検出部15は、左右両輪のモータ回転軸の回転量を検出し、この左右輪の回転量から移動ロボット1の走行距離や旋回角を算出して現在位置を演算する。算出された現在位置は記憶部16に記憶される。
【0033】
通信部13は、通信制御手段111に制御されて監視センタ2と信号を送受信する無線通信手段である。通信制御手段111は、移動ロボット1が監視区域3を巡回している間、自己位置検出部15が検出する現在位置や撮像ユニット121が撮像する画像情報を符号化して通信部13より監視センタ2に送信し、また監視センタ2から受信した信号を復号して各部に出力する。また通信制御手段111は、異常判定手段112にて異常の存在が判定されるとかかる異常の情報を符号化して通信部13より監視センタ2に異常信号を送信する。
【0034】
記憶部16は、メモリ等により実現され、移動ロボット1の各種処理に使用される情報を記憶している。記憶部16が記憶する情報には、自動復旧禁止異常161と、巡回のスケジュールや巡回コースなどが記憶された巡回情報162と、検知した異常を保持する現状態163の情報とを記憶している。なお、記憶部16は、本実施形態では説明のため制御部11と独立に記載しているが、これに限定されるものでなく、制御部11が備えるメモリにて実現されてもよい。
【0035】
記憶部16に記憶される自動復旧禁止異常161は、監視センタ2から受信する自動復旧信号による復旧処理の実行が禁止された異常種別を記憶したテーブルである。自動復旧信号による復旧処理が禁止される異常種別としては、火災検知部124による火災検知や近傍物体検知部123による近傍物体の検知、ガイド検知部125によるガイド線の異常検知など確実に監視員による確認を要する異常種別が記憶される。
【0036】
記憶部16に記憶される現状態163の情報は、監視区域3と自己の現在の状態を示す情報で、検知部12各部が異常を検出すると該当する異常状態を保持するテーブルである。図4(a)に現状態163の一例を示す。図4(a)に示すように、現状態163には、検知部12の各部が検知する異常種別毎に異常を検知すると異常状態であることが記憶保持される。異常判定手段112は、異常と判定すると、該当する異常種別に「異常」を記録することにより、現状態163に異常状態を保持させる。例えば、図4(a)では、No.03欄において障害物検知部122が異常を検知して、現状態163にこの異常状態を保持していることが記録されている。そして、後述する復旧処理により、現状態として保持された「異常」が消去され、「正常」となり異常状態の保持から解除される(正常状態になる)。
なお、本実施の形態では異常種別毎に異常状態を保持することとしたが、移動ロボット全体として一つの異常でも生じていれば現状態を異常状態としてもよいし、検知部の各部毎に異常状態を保持するようにしてもよい。
【0037】
制御部11において、復旧処理手段114は、異常判定手段112にて異常と判定されると、監視センタ2から受信する手動復旧信号または自動復旧信号に基づいて、復旧処理を実行し移動ロボット1を異常の保持状態から復旧させる。
【0038】
<遠隔監視装置>
次に、図3を参照して遠隔監視装置20の構成を説明する。図3は、遠隔監視装置20の構成を示すブロック図を示している。
遠隔監視装置20は、監視センタ2に設けられて移動ロボット1と無線接続される。監視センタ2では、監視員が移動ロボット1から伝送される情報により監視区域3を監視する。
遠隔監視装置20は、制御部21、表示部22、報知部23、操作部24、記憶部25、通信部26を備えて構成される。
【0039】
制御部21は、CPU、メモリ等により実現され、メモリに記憶されている各種プログラムにしたがって遠隔監視装置20の各部を制御する。各種プログラムは、必要に応じ並行して実行される。また、制御部21は、通信制御手段211とモード設定手段212と計時手段213と自動復旧制御手段214と履歴表示手段215と記憶制御手段216を含んで構成される。
【0040】
表示部22は、液晶モニタやCRTなどで構成される。表示部22には、操作部24によるコマンド入力のためのメニュー画面と、監視区域3の地図情報と移動ロボット1の位置表示、移動ロボット1の撮像した画像、移動ロボット1が検出した異常の情報などが表示される。
報知部23は、ブザーなどで構成され、遠隔監視装置20が移動ロボット1から異常信号を受信したときなどに監視員に注意喚起し、表示部22に表示される異常の確認を要求する。
【0041】
操作部24は、キーボードやポインティングデバイス、ジョイスティックなどで構成され、監視員によって操作されて、異常を確認するコマンド入力や移動ロボット1を遠隔制御するための所定のコマンド入力が行われる。操作部24から入力されるコマンドとしては、遠隔監視装置20の動作モードを設定するコマンド、移動ロボット1から受信した異常の情報を確認するコマンド、過去の異常履歴や画像を確認するコマンド、移動ロボット1を異常の保持状態から復旧させるコマンドなどのほか、移動ロボット1の移動を開始/停止させるコマンド、移動ロボット1を手動操縦するコマンド、巡回のスケジュールを設定するコマンドなどがある。
【0042】
通信部26は、通信制御手段211に制御されて移動ロボット1と信号を送受信する無線通信手段である。通信制御手段211は、移動ロボット1から受信する現在位置や画像情報、異常信号などを復号して制御部21に出力する。また、通信制御手段211は、操作部24から入力された移動ロボット1を遠隔制御するコマンドを符号化して通信部26より移動ロボット1に送信する。また特に、本実施形態では、通信制御手段211は、操作部24から移動ロボット1に異常状態の保持を解除させるコマンドが入力された場合に手動復旧信号を移動ロボット1に送信し、自動復旧制御手段214からの送信指示を受けた場合に自動復旧信号を移動ロボット1に送信する。
【0043】
記憶部25は、メモリ等により実現され、遠隔監視装置20の各種処理に使用される情報を記憶している。記憶部25が記憶する情報には、監視画像251、異常履歴252、動作モード253がある。なお、記憶部25は、本実施形態では説明のため制御部21と独立に記載しているが、これに限定されるものでなく、制御部11が備えるメモリにて実現されてもよい。
【0044】
監視画像251は、移動ロボット1から受信する撮像ユニット121で撮像した画像を蓄積したものである。制御部21において記憶制御手段216は、移動ロボット1から画像を受信すると、この画像を、撮像時刻、および画像番号と対応付けして監視画像251に順次蓄積記憶する。また、記憶制御手段216は、監視画像251に画像を記憶するときに、自動復旧モード中の画像か否かを示す自動復旧モードフラグが付して記録する。自動復旧モードフラグは、自動復旧モードであるときに受信した画像についてONされ自動復旧モード以外のときに受信した画像についてOFFするフラグ情報である。
このように、自動復旧モード中の撮像画像にフラグを設定することで、監視員が後から自動復旧モード中の画像だけを容易に検索することができ、監視員が確認していなかった自動復旧モードの画像だけを順次参照したり再生することが容易となる。また画像を参照しているときに、かかる画像が通常モード中のもので監視員の確認済みなのか、自動復旧モード中のもので監視員が未確認のものなのかを判別できる。
【0045】
異常履歴252は、移動ロボット1から受信する異常信号の情報を蓄積したものである。制御部21の記憶制御手段216は、移動ロボット1から異常信号を受信すると、この異常信号に含まれる異常の情報と、時刻情報、位置情報、対応する画像情報、および自動復旧モード中の異常か否かを示す自動復旧モードフラグと対応付けして異常履歴252に記憶する。
図4(b)に異常履歴252の一例を示す。図4(b)に示すように、異常履歴252には、異常の内容となる異常種別と、その検知時刻、及び移動ロボット1が当該異常状態の保持から復旧した時刻、異常を検知したときの位置、異常を検知したときに撮像した画像の画像番号、そして自動復旧モード中の異常か否かを示す自動復旧モードフラグとが記録される。上述の撮像画像251同様に、自動復旧モード中の異常にフラグを設定することで、監視員が後から自動復旧モード中の異常だけを検索し参照することが容易となり、また異常履歴を参照しているときに、かかる異常が通常モード中のもので監視員の確認済みなのか、自動復旧モード中のもので監視員が未確認のものなのかを判別できる。
【0046】
例えば、図4(b)においてNo.01欄には、異常内容として障害物検知部122による障害物検知が記録され、かかる異常を検知した時刻が0時35分10秒であること、移動ロボット1がかかる異常状態の保持を解除して復旧した時刻が0時35分15秒であること、監視区域3において異常を検知した位置の座標がX1,Y1であること、異常を検知したときの画像がVaであること、および異常を検知したときは自動復旧モードでなかった(通常モード)ことが記録されている。
また、図4(b)においてNo.03欄には、異常内容として撮像ユニット121の撮像部が遮蔽されたり画像が撮像できなくなるなどした撮像機器の異常であることが記録され、No.05欄には、異常内容として撮像ユニット121の画像処理により移動物体が検出された異常であることが記録されている。
また更に、図4(b)においてNo.02〜06欄には、異常を検知したときは自動復旧モードであったことが記録されている。
なお、図4(b)に示す例では、発生日毎に履歴のテーブルが別れているが、一つのテーブルに複数日の異常履歴を記録する構成としてもよい。
【0047】
記憶部25の動作モード253は、遠隔監視装置20の現在の動作モードを記憶する。本実施形態では、動作モードとして、監視員に異常の確認を要求する通常モードおよび監視員に異常の確認を要求しない自動復旧モードが用意されている。
制御部21において、モード設定手段212は、遠隔監視装置20の動作モードを切り替える手段である。モード設定手段212は、監視員による操作部24の操作により動作モードを切り換えて現在の動作モードを記憶部25に記憶する。なお、モード設定手段212は、監視員により設定される所定のスケジュールに応じて動作モードを切換えてもよい。
【0048】
また、制御部21において、自動復旧制御手段214は、動作モードとして自動復旧モードが設定されているときに作用する手段である。自動復旧制御手段214は、移動ロボット1から異常信号を受信したときの報知部23の動作を禁止するとともに、異常信号に応答して自動復旧信号を移動ロボット1に送信する。また、自動復旧制御手段214は、自動復旧信号を所定回数送信しても、又は自動復旧信号の送信から所定時間が経過しても、移動ロボット1が異常状態の保持を解除しない場合に、異常の存在を確定して報知部23を動作させ監視員に注意喚起し、表示部22に表示される異常の確認を要求する
【0049】
制御部21において、履歴表示手段215は、動作モードが自動復旧モードから通常モードに切り替えられるとき、すなわち、自動復旧モードが終了すると、当該自動復旧モードの間に受信した異常の履歴を監視員に提示する。履歴表示手段215は、自動復旧モードが終了すると記憶部25に記憶された異常履歴252を参照し、現時点から遡って自動復旧フラグがONで時系列上連続する異常の情報を収集してリスト化して表示部22に表示する。
なお、異常履歴のリストを表示する例に限定されず、かかるリストを表示するか否か監視員に問合せるダイアログ表示を行うよう構成されてよく、表示する旨が選択された場合にリスト表示するようにしてもよい。
また、異常履歴のリスト中に、異常履歴252にて当該異常と対応付けられている異常検知時の画像を縮小表示してもよい。
【0050】
<動作の説明>
次に、本実施形態の遠隔監視システムの動作について順に説明する。
まず、動作の概要を説明する。
移動ロボット1は、巡回情報162に記憶した巡回開始の時刻になると、又は、監視センタ2から移動開始を示す制御信号を受信すると、移動制御手段114が移動手段14の駆動を開始してガイド5に沿って移動を開始する。そして、通信制御手段111により、撮像ユニット121が撮像する画像及び自己位置検出部15にて検出される現在位置の情報が逐次監視センタ2に送信される。移動の途中において、検知部12からの入力により異常判定手段112が異常と判定すると、対応する異常状態であることが現状態163に保持される。このとき、移動制御手段114は移動手段14の駆動を停止して移動を停止させ、通信制御手段111は監視センタ2に異常信号を送信する。
【0051】
次に、移動ロボット1が異常状態の保持を解除する復旧処理について説明する。
図5は異常の検知後に実行される移動ロボット1の復旧処理に関する制御を示したフローチャートである。まず、図5(a)について説明する。 図5(a)は、復旧処理の実行可否判定処理を示すフローチャートである。
復旧処理手段113は、異常判定手段112にて異常と判定されると、監視センタ2からの手動復旧信号または自動復旧信号を待ち受ける(ステップST21、ST22)。このとき、並行して実行される移動制御手段114の移動制御処理により、移動ロボット1は停止している。
【0052】
手動復旧信号を受信すると(ステップST21−Yes)、復旧処理を実行する(ステップST23)。復旧処理については後述する。そして、復旧処理が終了するとステップST24に進み、異常状態の保持を解除して異常状態から復旧したか否かが判定される。復旧完了していれば(ステップST24−Yes)処理を終了する。また、復旧が完了していなければ、即ち異常状態の保持が継続していれば(ステップST24−No)、ステップST21へと処理を戻して再度手動復旧信号または自動復旧信号を待ち受ける。
【0053】
他方、自動復旧信号を受信すると(ステップST21−No、ST22―Yes)、記憶部16に現状態163として記憶保持された異常状態が、自動復旧禁止異常161であるか否かが判定される(ステップST25)。上述したように自動復旧禁止異常161には、確実に監視員による確認を要する異常種別が記憶されている。現状態163の異常が自動復旧禁止異常161に分類されている異常であれば(ステップST25−Yes)、復旧処理を行わずステップST21へと処理を戻す。他方、現状態163の異常が自動復旧禁止異常161に分類されていなければ(ステップST25−No)、ステップST23へと処理を進めて復旧処理を実行する。
【0054】
このように、本実施形態において、復旧処理手段113は、監視センタ2から手動復旧信号を受信すると復旧処理を実行し、自動復旧信号を受信したときには、自動復旧禁止異常161に該当する異常以外について復旧処理を実行する一方で、自動復旧禁止異常161に該当する異常は復旧処理を禁止する。
これにより、監視員の確認を経ずに送信される自動復旧信号により復旧処理を実行して、監視員の負担を軽減して利便性を向上させることが可能となる。また、監視員の確認を経ずに送信される自動復旧信号により、重要性の高い異常状態の保持を解除してしまうことを防止して、重要性の高い異常種別については確実に監視員の確認を要することでセキュリティ性の低下を防止することが可能となる。
【0055】
次に、図5(b)について説明する。図5(b)は、図5(a)のステップST23にて実行される復旧処理を示すフローチャートである。
復旧処理手段113は、検知部12各部の検知状態を確認して(ステップST30)、現状態163に異常状態として記憶保持されている異常が検知されるか否かを判別する(ステップST31)。
ここで、検知部12の検知状態の確認処理は、検知部のタイプによって処理が異なる。例えば、異常を検知している間継続して異常検知信号を出力するタイプの検知部であれば、信号を出力していないことを確認すると、異常を検知していないことが確認でき、異常を検知したときにワンショットで異常検知信号を出力するタイプの検知部であれば、検知部に問い合わせ信号を出力することで現在の検知状態を応答させて、異常を検知しているか否かを確認する。
【0056】
現状態163に異常状態として記憶保持された異常が既に検知されない場合には(ステップST31−No)、現状態163に記憶保持された異常を消去して移動ロボット1を異常状態の保持を解除し、復旧の完了を判定する(ステップST32)。そして、監視センタ2に復旧OK信号を送信する(ステップST33)。
このように、復旧処理手段113は、現状態163に記憶された異常が継続して検知されない場合には、異常状態の保持から復旧させる。この結果、移動制御手段114は、並行して実行される移動制御処理により移動ロボット1の移動を再開させる。
【0057】
他方、ステップST31において、現状態163に異常状態として記憶保持されている異常が再度検知された場合には(ステップST31−Yes)、異常状態の保持を復旧(解除)できないと判断して監視センタ2に復旧NG信号を送信する(ステップST34)。
【0058】
次に、遠隔監視装置20の異常信号受信時の処理について説明する。図6は遠隔監視装置20の制御部21にて実行される異常信号受信時の処理を示すフローチャートである。
遠隔監視装置20が監視センタ2に設置され電源ONされると、制御部21は、図6に示す異常信号受信処理を実行する。まず制御部21は、移動ロボット1からの異常信号受信を監視する(ステップST51)。異常信号を受信すると(ステップST51−Yes)、記憶部25に記憶された動作モード253を確認して現在設定されている動作モードが自動復旧モードか否かを判別する(ステップST52)。
【0059】
自動復旧モードでなければ(ステップST52−No)、受信した異常信号による異常の情報を自動復旧フラグOFFで異常履歴252に記憶し(ステップST53)、報知部23を動作させてブザー出力する(ステップST54)。そして、監視員は表示部22を参照して異常の内容を確認し、操作部24を操作し必要に応じて移動ロボット1に手動復旧信号を送信する。
このように、遠隔監視装置20は、自動復旧モードでないときに異常信号を受信すると、報知部23を動作させて監視員に注意を喚起して異常の確認を要求する。
他方、現在設定されている動作モードが自動復旧モードであれば(ステップST52―Yes)、自動復旧制御手段214が自動復旧制御処理を実行する(ステップST55)。
【0060】
次に、遠隔監視装置20の自動復旧制御処理について説明する。図7は図6のステップST55にて実行される遠隔監視装置20の自動復旧制御処理を示すフローチャートである。
自動復旧制御手段20は、自動復旧制御処理を実行すると、まず、受信した異常信号による異常の情報を自動復旧フラグONに設定して異常履歴252に記憶する(ステップST61)。
このように、遠隔監視装置20は、自動復旧モードであるときに移動ロボット1が検出した異常について、他の動作モードでの場合と区別するフラグを付して記憶するので、監視員が異常の内容を確認していない場合であっても後から容易に検索して確認することが可能となる。
【0061】
そして、自動復旧制御手段214は、異常信号を送信した移動ロボット1に自動復旧信号を送信し(ステップST62)、送信回数Nとして1を記憶する(ステップST63)。
このように、遠隔監視装置20は、自動復旧モードであるときには、異常信号を受信しても報知部を動作させず、監視員の確認を要することなく移動ロボット1に自動復旧信号を送信する。
【0062】
そして、計時手段213を動作させて所定の送信間隔時間(例えば5秒)を計時する(ステップST64)。図5を用いて説明したように、移動ロボット1は自動復旧信号を受信すると異常種別に応じて復旧処理を実行する。上述した送信間隔時間は、自動復旧信号を再送するまでの間隔であり、移動ロボット1が復旧処理を実行して復旧OK/NGを判定するに十分な時間として設定される。
【0063】
ここで、移動ロボット1から復旧OK信号を受信すると(ステップST65−Yes)、自動復旧制御手段214は処理を終了して、制御部21は図6のステップST51に処理を戻し、再度異常信号の受信を監視する。
他方、復旧OK信号を受信することなく(ステップST65−No)、計時が送信時間間隔(5秒)に達すると(ステップST66−Yes)、再度移動ロボット1に自動復旧信号を送信し(ステップST67)、送信回数Nに1を加算する(ステップST68)。
【0064】
そして、ステップST69において、送信回数Nが所定の送信終了回数(例えば7回)に達したか否かを判定する(ステップST69)。送信回数Nが送信終了回数(7回)に達していなければ(ステップST69−No)、ステップST64に処理を戻して、再度送信間隔時間(5秒)を計時し復旧OK信号を待ち受ける。
【0065】
復旧OK信号を受信することなくステップST64からST69の処理を繰り返した場合において、ステップST69で送信回数Nが送信終了回数(7回)に達すると判定されると(ステップST69−Yes)、ステップST70へと処理を進める。
ここで、送信終了回数は、自動復旧信号の送信限度となる回数であり、自動復旧信号を送信しても異常が復旧できなかったことを判定する(異常を確定する)基準となる値である。送信終了回数は上述の送信間隔時間を鑑み設定されるのが好ましい。例えば、本実施形態では、送信間隔が5秒、送信終了回数が7回であるので最後の自動復旧信号を送信するまでの時間は異常信号を受信してから約30秒となる。
【0066】
ステップST70では、計時手段213を動作させて所定の応答異常時間(例えば10秒)を計時する(ステップST64)。応答異常時間は、最後(7回目)の自動復旧信号を送信した後移動ロボット1から応答が無い場合に異常を確定させる判定時間であり上述した送信間隔時間以上の値に設定されることが好ましい。
【0067】
移動ロボット1から復旧OK信号又は復旧NG信号を受信することなく(ステップST71−No)、応答異常時間(10秒)が経過すると(ステップST72―Yes)、自動復旧制御手段214は移動ロボット1の異常確定と判定して報知部23を動作させてブザー出力する(ステップST73)。
また、ステップST71において復旧NG信号を受信した場合も(ステップST71−Yes、ST74−No)、自動復旧制御手段214は移動ロボット1の異常確定と判定して報知部23を動作させてブザー出力する(ステップST73)。
【0068】
そして、監視員は表示部22を参照して異常の内容を確認し、操作部23を操作し必要に応じて移動ロボット1に手動復旧信号を送信する。
このように、遠隔監視装置20は、自動復旧モードであるときには、自動復旧信号を送信しても移動ロボットが異常状態を保持した状態から復旧できない場合に、報知部23を動作させて監視員に注意を喚起して異常の確認を要求する。
【0069】
他方、ステップST71において復旧OK信号を受信した場合には(ステップST71−Yes、ST74−Yes)、自動復旧制御手段214は処理を終了して、制御部21は図6のステップST51に処理を戻し、再度異常信号の受信を監視する。
【0070】
なお、本実施形態では、自動復旧信号を所定の送信終了回数(7回)送信しても移動ロボットが異常状態を保持した状態から復旧できないときに、報知部23を動作させる例について説明したが、送信回数に限度を設けることなく、異常信号の受信から所定の異常確定時間(例えば40秒)までの間に復旧OK信号を受信しない場合に異常確定させて報知部23を動作させる構成としてもよい。
【0071】
次に、遠隔監視装置20の動作モード設定処理について説明する。図8は遠隔監視装置20の動作モード設定処理を示すフローチャートである。
遠隔監視装置20が監視センタ2に設置され電源ONされると、まずモード設定手段212は、記憶部25の動作モード252を参照して現在の動作モードを確認する(ステップST91)。通常モードであれば、操作部24による自動復旧モードの設定入力を待ち受ける(ステップST92)。自動復旧モードの設定入力があると(ステップST92−Yes)、動作モードを自動復旧モードに設定して、記憶部25に動作モード253として自動復旧モードを記憶し、更に該自動復旧モードが設定された時刻として現在時刻を記憶して処理をリターンする(ステップST93)。
【0072】
また、現在の動作モードが自動復旧モードであれば、操作部24からの通常モードの設定入力、即ち自動復旧モードの終了入力を待ち受ける(ステップST94)。自動復旧モードの終了入力があると(ステップST94−Yes)、モード設定手段212は動作モードを通常モードに設定して、記憶部25に動作モード253として通常モードを記憶し、更に該通常モードが設定された時刻として現在時刻を記憶する(ステップST95)。
そして、履歴表示手段215は記憶部25に記憶された異常履歴252を参照し、現時点から遡って自動復旧フラグがONで時系列上連続する異常の情報(直前の自動復旧モードで記憶された異常の情報)を収集してリスト化し、自動復旧モード中の異常履歴を生成して表示部22に表示し(ステップST96)、処理をリターンする。なお、ステップST95とステップST96の処理順序は、これに限定されず、ステップST96の後にステップST95の処理を行うようにしてもよい。
【0073】
このように、履歴表示手段215は、自動復旧モードが終了したときに、かかる自動復旧モード中に移動ロボット1が検出した異常の情報を監視員に提示する。監視員は、表示部22を参照して自動復旧モード中に発生した異常内容を確認して、必要応じて異常と対応付けられている異常検知時の画像を参照して異常を確認する。これにより、監視員が確認することなく復旧処理が実行された、監視員が把握していない異常を後から容易に確認することができ、セキュリティ性の低下を防止することが可能となる。
【0074】
なお、本実施形態では、自動復旧モードが終了したときに、自動復旧フラグがONの異常の情報を収集して表示する例について説明したが、これに限定されず、直前の自動復旧モードが設定された時刻以降に検出された異常の情報を収集してリスト化し、表示部に表示するようにしてもよい。
【0075】
<変形例>
以上に本発明の好適な実施形態を説明した。しかし、本発明は上述の実施形態に限定されず、次に示すような変形例を適宜に組み合わせて上述の実施形態を変形することが可能である。以下に実施形態の変形例を説明する。
【0076】
以上説明した実施形態では、自動復旧モード中の各種制御処理について、遠隔制御装置20から自動復旧信号を送信し、移動ロボット1でかかる自動復旧信号を受信する毎に復旧処理を実行する例について説明したが、これに限定されず、遠隔制御装置20が自動復旧モードに設定されている間は、移動ロボット1が自律的に復旧処理を実行するよう構成してもよい。
【0077】
この場合、遠隔制御装置20の自動復旧制御手段214は、異常信号の受信時に自動復旧信号を送信する構成に替えて、遠隔制御装置20が自動復旧モードに設定され記憶部25の動作モード253に自動復旧モードが記憶されると、移動ロボット1に自動復旧モード信号を送信する。また、自動復旧制御手段214は、遠隔制御装置20が自動復旧モードから通常モードに設定されると、移動ロボット1に自動復旧モード終了信号を送信する。
【0078】
そして、移動ロボット1は、自動復旧モード信号を受信すると、かかる信号を記憶部16に記憶し、この自動復旧モード信号を記憶している間、自律的に復旧処理を実行する。即ち、移動ロボット1の復旧処理手段113は、自動復旧モード信号を記憶していれば、異常を検知し異常信号を送信してから所定の異常確定時間(例えば40秒)の間は、復旧完了するまで図5(b)に示した復旧処理を繰り返し実行する。このとき、異常状態として保持された異常が自動復旧禁止異常161であれば復旧処理を実行しないことが好ましい。遠隔制御装置20では、異常信号の受信から異常確定時間(40秒)までの間に復旧OK信号を受信しない場合に異常確定させて報知部23を動作させる。
【0079】
このように、自動復旧モード中の制御処理は、上述の実施形態にて説明した遠隔制御装置20側から自動復旧処理の実行をその都度指示する構成に変えて、移動ロボット1側で自律的に判断する構成としてもよい。その他の構成については、上述の実施形態と同様であり、遠隔制御装置20は、自動復旧モード中に受信した異常信号による異常の情報をその他の動作モードのときに受信する異常信号と区別可能に記憶して、図8に示すように、自動復旧モード自動復旧モードが終了すると、自動復旧モード中の異常履歴を生成して表示部22に表示するのである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る遠隔監視システムを示す概略図
【図2】移動ロボットの構成を示すブロック図
【図3】遠隔監視装置の構成を示すブロック図
【図4】移動ロボットの現状態及び遠隔制御装置の異常履歴を示す図
【図5】移動ロボットの復旧処理に関する制御を示したフローチャート
【図6】遠隔監視装置の異常信号受信時の処理を示すフローチャート
【図7】遠隔監視装置の自動復旧制御処理を示すフローチャート
【図8】遠隔監視装置の動作モード設定処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0081】
1 移動ロボット
2 監視センタ
3 監視区域
4 建物
5 ガイド
6 基準位置
11 制御部
111 通信制御手段
112 異常判定手段
113 復旧処理手段
114 移動制御手段
12 検知部
13 通信部
14 移動手段
15 自己位置検出部
16 記憶部
161 自動復旧禁止異常
20 遠隔監視装置
21 制御部
211 通信制御手段
212 モード設定手段
213 計時手段
214 自動復旧制御手段
215 履歴表示手段
216 記憶制御手段
22 表示部
23 報知部
24 操作部
25 記憶部
252 異常履歴
26 通信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視区域の異常を検知する検知部を備えた移動ロボットと、前記移動ロボットが検知した異常情報を表示する表示部を備えた監視センタとを有する遠隔監視システムであって、
前記移動ロボットは、
前記監視センタと通信する通信部と、
前記監視区域の状態を記憶する記憶部と、
前記検知部が異常を検知すると前記記憶部に異常状態を保持させる異常判定手段と、
前記検知部が異常を検知すると前記監視センタに異常情報を送信する通信制御手段と、
前記記憶部の前記異常状態の保持を解除する復旧処理を実行する復旧処理手段とを備え、
前記監視センタは、
前記移動ロボットと通信するセンタ通信部と、
前記移動ロボットから受信した前記異常情報を記憶するセンタ記憶部と、
自動復旧モードを含む複数の動作モードを管理するモード設定手段と、
前記自動復旧モード時において前記移動ロボットに前記復旧処理を自動的に実行させる自動復旧制御手段と、
前記自動復旧モード時に受信した異常情報と、その他の動作モード時に受信した異常情報とを区別可能に前記センタ記憶部に記憶する記憶制御手段と、
前記動作モードが前記自動復旧モードからその他の動作モードへと設定されると、前記自動復旧モード時に記憶された異常情報からなる異常履歴又は該異常履歴を表示するためのダイアログを前記表示部に表示する履歴表示手段とを備えることを特徴とした遠隔監視システム。

【請求項2】
更に、前記移動ロボットは、周囲を撮像する撮像ユニットを備え、該撮像した画像を前記監視センタに送信し、
前記監視センタの前記記憶制御手段は、前記動作モードが前記自動復旧モードであるときに受信した前記画像と、その他の動作モードであるときに受信した前記画像とを区別可能に前記センタ記憶部に記憶する請求項1に記載の遠隔監視システム。

【請求項3】
更に、前記移動ロボットは、前記記憶部に異常状態が保持されると移動を停止させ、該異常状態の保持が解除されると移動を再開させる移動制御手段を備えた請求項1又は2に記載の遠隔監視システム。

【請求項4】
更に、前記監視センタの前記自動復旧制御手段は、
前記異常信号を受信したときの動作モードが前記自動復旧モードであれば前記移動ロボットに自動復旧信号を送信し、
前記移動ロボットの前記復旧処理手段は、
前記監視センタから自動復旧信号を受信したとき前記復旧処理を実行し、前記記憶部に保持された前記異常状態に対応する異常を前記検知部が検知していなければ前記記憶部による該異常状態の保持を解除する請求項1から3の何れかに記載の遠隔監視システム。

【請求項5】
更に、前記監視センタの前記自動復旧制御手段は、
前記モード設定手段にて前記動作モードが前記自動復旧モードに設定されると前記移動ロボットに自動復旧モード信号を送信し、前記自動復旧モードからその他のモードへ設定されると前記移動ロボットに自動復旧モード終了信号を送信し、
前記移動ロボットの前記復旧処理手段は、
前記自動復旧モード信号を受信してから前記自動復旧モード終了信号を受信するまでの間、前記記憶部に前記異常状態が保持されると前記復旧処理を実行し、該記憶部に保持された異常状態に対応する異常を前記検知部が検知していなければ前記記憶部による該異常状態の保持を解除する請求項1から3の何れかに記載の遠隔監視システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−165309(P2008−165309A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351312(P2006−351312)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】