説明

部材処理装置

【課題】対象加熱機構を大径化せずとも大型の加熱対象部材を均等に加熱できる構造の部材処理装置を提供する。
【解決手段】駆動モータにより回転駆動される円盤状の固定サセプタ110により回路基板が支持され、この回路基板が固定サセプタ110に対向されているコイル部材130で加熱される。このコイル部材130は固定サセプタ110より小径であるが、加熱配置機構140により固定サセプタ110の半径方向に変位自在に支持されている。このため、小径のコイル部材130による加熱を大径の固定サセプタ110や回路基板に均一に作用させることができるので、小径のコイル部材130で大径の回路基板を均一に加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱対象部材を加熱する部材処理装置に関し、特に、気相成長法により加熱対象部材の表面に層膜を形成する部材処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、加熱対象部材であるシリコンウェハなどの回路基板の表面に層膜を気相成長法により形成することがあり、これに部材処理装置として気相成長装置が利用されている。
【0003】
この気相成長装置は、例えば、導電材で形成されていて回路基板を支持する円盤状の対象支持部材と、対象支持部材を軸支している回転軸と、回転軸とともに対象支持部材を回転駆動する回転駆動機構と、対象支持部材で支持された回路基板の表面に原料ガスを供給するガス供給機構と、所定の高周波磁束を発生して対象支持部材を渦電流の誘導で発熱させる対象加熱機構と、を有する。
【0004】
その対象加熱機構は、金属管を対象支持部材の盤面と対向する円盤状の螺旋形に巻回した形状のコイル部材を有する。
【0005】
このような気相成長装置では、層膜を形成する回路基板が対象支持部材で支持され、この対象支持部材とともに回路基板が回転駆動され、この回転駆動される回路基板の表面にガス供給機構により原料ガスが供給される。
【0006】
このとき、コイル部材に所定の周波数で交流の電力が印加されることにより、このコイル部材が所定の高周波磁束を発生する。すると、導電材からなる対象支持部材が渦電流の誘導により発熱するので、これで加熱される回路基板の表面に原料ガスにより層膜が形成される。
【0007】
なお、コイル部材は、上述のように高周波磁束の発生を目的としているが、このために高電圧の電力が印加されるので発熱する。そこで、この発熱を抑制するため、コイル部材を形成している金属管の内部に冷媒が流動されている。
【0008】
従来の気相成長装置は、例えば、数百rpmの速度で対象支持部材を回転させ、1200℃程度の温度まで対象支持部材の表面を発熱させている。現在、上述のような構造の気相成長装置として、各種の提案がある(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開平11−092280号公報
【特許文献2】特開平07−045530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のような気相成長装置では、コイル部材からなる対象加熱機構により導電材からなる対象支持部材を発熱させることで加熱対象部材である回路基板を加熱し、その表面に層膜を気相成長法により形成する。
【0010】
現在では気相成長法により層膜を形成する回路基板が大型化する傾向にある。その場合、当然ながら対象支持部材と対象加熱機構も大径化する必要がある。しかし、前述のように対象加熱機構のコイル部材も高電圧の印加により発熱するため、コイル部材の大径化には限界がある。
【0011】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、対象加熱機構を大径化せずとも大型の加熱対象部材を均等に加熱することができる構造の部材処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の部材処理装置は、加熱対象部材を加熱する部材処理装置であって、加熱対象部材を支持する円盤状の対象支持部材と、対象支持部材を回転駆動する回転駆動機構と、対象支持部材より小径で加熱対象部材を加熱する対象加熱機構と、対象加熱機構を対象支持部材に対向する位置で半径方向に変位自在に支持している加熱配置機構と、を有する。
【0013】
従って、本発明の部材処理装置では、回転駆動機構により回転駆動される円盤状の対象支持部材により加熱対象部材が支持され、この加熱対象部材が加熱配置機構により対象支持部材に対向されている対象加熱機構で加熱される。この対象加熱機構は対象支持部材より小径であるが、加熱配置機構により対象支持部材に対向する位置で半径方向に変位自在に支持されている。このため、対象支持部材に対して対象加熱機構の位置を変位させることができるので、小径の対象加熱機構による加熱を大径の対象支持部材や加熱対象部材に均一に作用させることができる。
【0014】
また、本発明の部材処理装置において、加熱配置機構は、対象加熱機構を対象支持部材の半径方向に往復移動させてもよい。
【0015】
また、本発明の部材処理装置において、対象支持部材より小径で複数の対象加熱機構を有してもよい。
【0016】
また、本発明の部材処理装置において、対象支持部材の半径の略N分の一(Nは二以上の整数)の外形のN個の対象加熱機構を有してもよい。
【0017】
また、本発明の部材処理装置において、加熱配置機構は、複数の対象加熱機構を対象支持部材の円周方向に分散された位置に配置してもよい。
【0018】
また、本発明の部材処理装置において、対象加熱機構は、対象支持部材を発熱させることで加熱対象部材を加熱してもよい。
【0019】
また、本発明の部材処理装置において、対象支持部材は、導電材で形成されており、対象加熱機構は、所定の高周波磁束を発生して対象支持部材を渦電流の誘導で発熱させてもよい。
【0020】
また、本発明の部材処理装置において、加熱対象部材は、気相成長法により表面に層膜が形成される回路基板からなり、対象支持部材で支持された加熱対象部材の表面に原料ガスを供給するガス供給機構を、さらに有してもよい。
【0021】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の部材処理装置では、回転駆動機構により回転駆動される円盤状の対象支持部材により加熱対象部材が支持され、この加熱対象部材が加熱配置機構により対象支持部材に対向されている対象加熱機構で加熱される。この対象加熱機構は対象支持部材より小径であるが、加熱配置機構により対象支持部材に対向する位置で半径方向に変位自在に支持されている。このため、対象支持部材に対して対象加熱機構の位置を変位させることができるので、小径の対象加熱機構による加熱を大径の対象支持部材や加熱対象部材に均一に作用させることができる。従って、小径の対象加熱機構で大径の加熱対象部材を均一に加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の一形態を図1ないし図3を参照して以下に説明する。本実施の形態の部材処理装置100は、加熱対象部材である回路基板CBを加熱する。
【0024】
このため、本実施の形態の部材処理装置100は、図2に示すように、回路基板CBを支持する円盤状の対象支持部材である固定サセプタ110と、固定サセプタ110を回転駆動する回転駆動機構である駆動モータ120と、固定サセプタ110より小径で回路基板CBを加熱する対象加熱機構であるコイル部材130と、図1に示すように、コイル部材130を固定サセプタ110に対向する位置で半径方向に変位自在に支持している加熱配置機構140と、を有する。
【0025】
より詳細には、本実施の形態の部材処理装置100では、コイル部材130は、例えば、螺旋状に曲折された断面円形の金属管からなる。このコイル部材130には外部から所定の周波数で交流の電力が印加され、その金属管の内部には冷媒が流動される。
【0026】
ただし、本実施の形態の部材処理装置100では、固定サセプタ110の半径の略三分の一の外形の三個のコイル部材130を有する。そこで、加熱配置機構140は、三個のコイル部材130を固定サセプタ110の半径方向と円周方向とに略三等分の位置に配置している。
【0027】
なお、加熱配置機構140は、円筒状のコイル支持ベース141を有し、このコイル支持ベース141でコイル部材130が支持されている。コイル支持ベース141は、図2に示すように、円環状のベース支持部材142と固定ボルト143とで部材処理装置100の処理装置本体101の底面に回動自在に装着されている。
【0028】
ただし、コイル部材130はコイル支持ベース141の軸心から偏心した形状に形成されている。このため、図1に示すように、コイル支持ベース141が回動されるとコイル部材130は固定サセプタ110の半径方向に変位する。
【0029】
固定サセプタ110は、導電材で形成されており、コイル部材130は、所定の高周波磁束を発生して固定サセプタ110を渦電流の誘導で発熱させることで回路基板CBを加熱する。
【0030】
本実施の形態の部材処理装置100は、回路基板CBを直接に保持する円盤状の基板保持部材である移動サセプタ111も有し、この移動サセプタ111が固定サセプタ110に着脱自在に装着される。
【0031】
固定サセプタ110は、上面の所定位置に凹穴が形成されており、移動サセプタ111は、固定サセプタ110の凹穴に係合する係合ピン112が下面に装着されている。このため、固定サセプタ110は、回路基板CBを間接的に保持する。
【0032】
なお、固定サセプタ110と駆動モータ120とを連結している回転軸113,121は、駆動モータ120の回転軸121と、固定サセプタ110に一体の回転軸113からなる。この固定サセプタ110および回転軸113は、例えば、導電材である黒鉛で形成されており、その表面は熱分解性窒化硼素でコーティングされている。
【0033】
なお、コイル部材130と固定サセプタ110とは隔壁102を介して対向しているが、この隔壁102は高周波磁束を最小限の減衰で透過する絶縁材からなる。さらに、固定サセプタ110と対向する隔壁102の上面には、やはり絶縁材からなる遮熱板103が設置されている。
【0034】
なお、本実施の形態の部材処理装置100は、例えば、気相成長装置であるCVD(Chemical Vapor Deposition)装置であり、気相成長法により回路基板CBの表面に層膜(図示せず)を形成する。
【0035】
このため、部材処理装置100は、固定サセプタ110で支持された回路基板CBの表面に原料ガスを供給するガス供給機構150も有する。このため、ガス供給機構150は、処理装置本体101の上部に配置されている。
【0036】
この処理装置本体101の下部には、排気口(図示せず)が形成されている。ガス供給機構150は、内部が複数に区分されており、例えば、III族やV族の原料ガスを押圧ガスとともに下方に噴射する。
【0037】
上述のような構成において、本実施の形態の部材処理装置100では、層膜を形成する回路基板CBが移動サセプタ111を介して固定サセプタ110で支持される。この固定サセプタ110とともに回路基板CBが駆動モータ120により回転駆動され、この回転駆動される回路基板CBの表面にガス供給機構150により原料ガスが供給される。
【0038】
このとき、三個のコイル部材130に所定の周波数で交流の電力が印加されることにより、これら三個のコイル部材130が所定の高周波磁束を発生する。すると、導電材からなる固定サセプタ110が渦電流の誘導により発熱するので、これで加熱される回路基板CBの表面に原料ガスにより層膜が形成される。
【0039】
ただし、図1および図3(a)に示すように、コイル部材130は外形が固定サセプタ110の半径の略三分の一しかない。このため、図3(b)に示すように、コイル部材130は、個々には固定サセプタ110を半径方向で三分の一ほどしか発熱させることができない。
【0040】
しかし、本実施の形態の部材処理装置100では、図1に示すように、固定サセプタ110の半径の略三分の一の外形の三個のコイル部材130が、固定サセプタ110の半径方向に略三等分の位置に配置されている。
【0041】
このため、図3(c)に示すように、三個の小径のコイル部材130による加熱が大径の固定サセプタ110に均一に作用する。従って、回路基板CBが大径でも均一に加熱することができ、大径の回路基板CBの表面に均質に層膜を形成することができる。
【0042】
しかも、三個のコイル部材130は固定サセプタ110の円周方向にも略三等分の位置に配置されている。このため、固定サセプタ110は全面が時分割にも均等に発熱することになる。従って、回路基板CBが大径でも均一に加熱して層膜を均質に形成することができる。
【0043】
特に、本実施の形態の部材処理装置100は、固定サセプタ110の半径の略N分の一の外形のN個のコイル部材130を有し、N個のコイル部材130が固定サセプタ110の半径方向に略N等分の位置に配置されている。このため、必要最小限の個数およびサイズのコイル部材130で、大径の固定サセプタ110を均等に発熱させることができる。
【0044】
しかも、固定サセプタ110の上面には回路基板CBが移動サセプタ111を介して支持される。このため、固定サセプタ110の発熱は移動サセプタ111を介して回路基板CBまで伝導する。
【0045】
この伝導によっても発熱の不均一性が改善されるので、回路基板CBを良好に均一に加熱することができる。また、上述のように固定サセプタ110に回路基板CBが移動サセプタ111を介して着脱自在に装着されるので、回路基板CBの交換も容易である。
【0046】
なお、本実施の形態の部材処理装置100では、上述のようにコイル部材130が発生する高周波磁束により渦電流が誘導されることで固定サセプタ110が発熱する。しかし、回転軸113が位置するために固定サセプタ110の中央にコイル部材130を対向させることはできない。
【0047】
このため、固定サセプタ110の中央は良好に発熱しない懸念がある。しかし、本実施の形態の部材処理装置100では、固定サセプタ110に連結されていてコイル部材130に対向している回転軸113も導電材で形成されている。
【0048】
このため、この回転軸113もコイル部材130が発生する高周波磁束で発熱することになり、図4に示すように、その熱伝導により固定サセプタ110の中央も良好に発熱する。
【0049】
特に、回転軸113と固定サセプタ110とが一体に形成されている。このため、回転軸113の発熱が固定サセプタ110の中央に良好な効率で伝導する。従って、固定サセプタ110は、上面の略全域が均等に発熱することになる。
【0050】
従って、回路基板CBを均一に加熱することができ、層膜を良好な品質で形成することができる。このため、移動サセプタ111の盤面に大径の一枚の回路基板CBを設置した場合でも、その回路基板CBを均一に加熱して盤面の全域に層膜を均質に形成することができる。
【0051】
なお、高周波磁束の発生を目的としたコイル部材130は発熱する必要がないが、電力印加により自己発熱するので、内部に冷却水が流動されることで水冷されている。そして、上述のようにコイル部材130は固定サセプタ110に比較して大幅に小径なので、その流量長が大幅に削減されており、水冷の効果が極めて良好である。
【0052】
また、本実施の形態の部材処理装置100では、加熱配置機構140がコイル部材130を固定サセプタ110の半径方向に変位自在に支持している。このため、例えば、移動サセプタ111の交換により小径の回路基板CBを固定サセプタ110の半径方向の特定位置に配置した場合でも、これに対応してコイル部材130の位置を調整するようなことができる。
【0053】
このため、固定サセプタ110の必要な位置のみ均一に発熱させ、無用な位置を発熱させないことにより、小径の回路基板CBに均質な層膜を省電力に形成するようなことができる。
【0054】
なお、加熱配置機構140は、図2に示すように、コイル部材130を支持している円筒状のコイル支持ベース141を有し、このコイル支持ベース141が円環状のベース支持部材142と固定ボルト143とで部材処理装置100の処理装置本体101の底面に回動自在に装着されている。
【0055】
このため、固定ボルト143による締結を緩めてコイル支持ベース141を回動させることで、簡単にコイル部材130を固定サセプタ110の半径方向に変位させることができる。
【0056】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では、加熱配置機構140が手動操作によりコイル部材130を固定サセプタ110の半径方向に変位させる構造に形成されていることを例示した。
【0057】
しかし、図5に示すように、加熱配置機構160が、駆動源であるサーボモータ161の動力によりコイル部材130を固定サセプタ110の半径方向に変位させてもよい。より詳細には、この加熱配置機構160では、コイル部材130を支持している円筒状のコイル支持ベース162が、軸受163により処理装置本体101の底面に回動自在に装着されている。
【0058】
コイル支持ベース162の下部外周にはスパーギヤ164が一体に形成されており、このスパーギヤ164と歯合しているスパーギヤ165がサーボモータ161に装着されている。この部材処理装置(図示せず)では、サーボモータ161の動力によりコイル部材130を固定サセプタ110の半径方向に変位させることができる。
【0059】
なお、このような部材処理装置では、例えば、固定サセプタ110を回転駆動して回路基板CBの表面に層膜を形成しているときに、コイル部材130を固定サセプタ110の半径方向に往復移動させることもできる。この場合、固定サセプタ110の発熱温度を動的に均等化させることができるので、より均質に回路基板CBに層膜を形成するようなことができる。
【0060】
また、上記形態では固定サセプタ110は、盤面からなる上面で回路基板CBを支持し、ガス供給機構150は、固定サセプタ110で支持された回路基板CBの表面に上方から原料ガスを供給し、コイル部材130は、固定サセプタ110に下方から対向しており、回転軸113は、コイル部材130の中心空間を経由して固定サセプタ110を下方から軸支していることを例示した。
【0061】
しかし、図6に例示する部材処理装置200のように、固定サセプタ110は、盤面からなる下面で回路基板CBを支持し、ガス供給機構150は、固定サセプタ110で支持された回路基板CBの表面に下方から原料ガスを供給し、コイル部材130は、固定サセプタ110に上方から対向しており、回転軸113は、固定サセプタ110を上方から軸支してもよい。
【0062】
なお、この部材処理装置200では、前述のように係合ピン112による係合では移動サセプタ111が固定サセプタ110から落下するので、ボルト212で移動サセプタ111を固定サセプタ110に保持させることがよい。
【0063】
このような部材処理装置200では、移動サセプタ111の交換の容易性は阻害される。しかし、回路基板CBの表面が下方に位置するので、異物の付着を有効に防止することができる。
【0064】
また、上記形態では複数のコイル部材130が配置されている中心に回転軸113が挿通されていることを例示した。しかし、図7に例示する部材処理装置300のように、複数のコイル部材130が配置されている中心にガス供給機構150のガス誘導管310が挿通されていてもよい。
【0065】
より詳細には、この部材処理装置300では、固定サセプタ110は、盤面からなる下面で回路基板CBを支持し、回転軸113は、固定サセプタ110を上方から軸支している。
【0066】
コイル部材130は、固定サセプタ110に下方から対向しており、ガス供給機構150は、コイル部材130の中心空間に挿通されているガス誘導管310で回路基板CBの表面に下方から原料ガスを供給する。
【0067】
この部材処理装置300も、回路基板CBの表面が下方に位置するので、異物の付着を有効に防止することができる。さらに、加熱されている回路基板CBの表面に原料ガスが下方から供給されるので、回路基板CBの表面に到達する以前に原料ガスが反応することを有効に防止することができる。
【0068】
なお、上述の部材処理装置300を上下逆様とすることにより、固定サセプタ110は、盤面からなる上面で回路基板CBを支持し、回転軸113は、固定サセプタ110を下方から軸支しており、コイル部材130は、固定サセプタ110に上方から対向しており、ガス供給機構150は、コイル部材130の中心空間に挿通されているガス誘導管310で回路基板CBの表面に上方から原料ガスを供給する、部材処理装置(図示せず)も実現することができる。
【0069】
また、上記形態では円盤状の固定サセプタ110の表面に円盤状の移動サセプタ111を着脱自在に装着することで、回路基板CBの加熱の不均一性を改善することを例示した。
【0070】
しかし、移動サセプタ111と固定サセプタ110との相互に当接する盤面の少なくとも一方に所定形状の凹部を形成することにより(図示せず)、この凹部で熱伝導を制御し、より良好に回路基板CBの加熱の不均一性を改善してもよい。
【0071】
さらに、上記形態ではコイル部材130が一般的な断面円形の金属管からなることを想定した。しかし、図8に示すように、水平な円盤状のコイル部材170が、横幅より縦幅が長大な矩形の断面形状の金属管171で形成されていてもよい。
【0072】
この場合、コイル部材170を形成している金属管171の断面形状が矩形であるため、断面形状が円形の一般的な金属管からなる従来のコイル部材に比較して、その表面積が大幅に増加する。
【0073】
従って、コイル部材170の表面電位を上昇させることなく通電する電流量を増加させることができるので、コイル部材170から発生する高周波磁束の密度を増加させることができる。このため、この高周波磁束により固定サセプタ110を従来より安全に、高温かつ高速に発熱させることができ、より良質な層膜を高速に回路基板CBに形成することができる。
【0074】
特に、コイル部材170の金属管171は、横幅より縦幅が長大な矩形の断面形状に形成されている。このため、固定サセプタ110と対向するコイル部材170の上面の面積に比較して、金属管171の表面積が増大している。従って、さらに良好に固定サセプタ110を高温に高速に発熱させることができ、さらに良質な層膜を高速に回路基板CBに形成することができる。
【0075】
また、上記形態では対象加熱機構がコイル部材130からなり、導電材からなる固定サセプタ110を渦電流の誘導で発熱させることで、加熱対象部材である回路基板CBを加熱することを例示した。しかし、対象加熱機構が一般的なヒータデバイスからなってもよい(図示せず)。
【0076】
さらに、上記形態では固定サセプタ110に連結されていてコイル部材130に対向している回転軸113も導電材で形成されていることにより、コイル部材130が対向しない固定サセプタ110の中央も良好に発熱することを例示した。しかし、回転軸113が導電性で発熱することは必須ではない。
【0077】
また、上記形態では三個のコイル部材130が固定サセプタ110の半径方向と円周方向とで略三等分の位置に配置されていることを例示した。しかし、このような個数や配置は各種に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態の部材処理装置の要部を示す模式的な平面図である。
【図2】部材処理装置の内部構造を示す縦断正面図である。
【図3】複数の対象加熱機構であるコイル部材と温度との関係を示す模式図である。
【図4】複数のコイル部材と温度との関係を示す模式図である。
【図5】一変形例の加熱配置機構の内部構造を示す縦断正面図である。
【図6】他の変形例の部材処理装置の内部構造を示す縦断正面図である。
【図7】さらに他の変形例の部材処理装置の内部構造を示す縦断正面図である。
【図8】さらに他の変形例のコイル部材を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0079】
100 部材処理装置
101 処理装置本体
102 隔壁
103 遮熱板
110 固定サセプタ
111 移動サセプタ
112 係合ピン
113 回転軸
120 駆動モータ
121 回転軸
130 コイル部材
140 加熱配置機構
141 コイル支持ベース
142 ベース支持部材
143 固定ボルト
150 ガス供給機構
160 加熱配置機構
161 サーボモータ
162 コイル支持ベース
163 軸受
164 スパーギヤ
165 スパーギヤ
170 コイル部材
171 金属管
200 部材処理装置
212 ボルト
300 部材処理装置
310 ガス誘導管
CB 回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象部材を加熱する部材処理装置であって、
前記加熱対象部材を支持する円盤状の対象支持部材と、
前記対象支持部材を回転駆動する回転駆動機構と、
前記対象支持部材より小径で前記加熱対象部材を加熱する対象加熱機構と、
前記対象加熱機構を前記対象支持部材に対向する位置で半径方向に変位自在に支持している加熱配置機構と、
を有する部材処理装置。
【請求項2】
前記加熱配置機構は、前記対象加熱機構を前記対象支持部材の半径方向に往復移動させる請求項1に記載の部材処理装置。
【請求項3】
前記対象支持部材より小径で複数の前記対象加熱機構を有する請求項1または2に記載の部材処理装置。
【請求項4】
前記対象支持部材の半径の略N分の一(Nは二以上の整数)の外形のN個の前記対象加熱機構を有する請求項3に記載の部材処理装置。
【請求項5】
前記加熱配置機構は、複数の前記対象加熱機構を前記対象支持部材の円周方向に分散された位置に配置している請求項3または4に記載の部材処理装置。
【請求項6】
前記対象加熱機構は、前記対象支持部材を発熱させることで前記加熱対象部材を加熱する請求項1ないし5の何れか一項に記載の部材処理装置。
【請求項7】
前記対象支持部材は、導電材で形成されており、
前記対象加熱機構は、所定の高周波磁束を発生して前記対象支持部材を渦電流の誘導で発熱させる請求項6に記載の部材処理装置。
【請求項8】
前記加熱対象部材は、気相成長法により表面に層膜が形成される回路基板からなり、
前記対象支持部材で支持された前記加熱対象部材の表面に原料ガスを供給するガス供給機構を、さらに有する請求項1ないし7の何れか一項に記載の部材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−107856(P2009−107856A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278960(P2007−278960)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000165974)古河機械金属株式会社 (211)
【Fターム(参考)】