配線及びそのパターニング方法並びにディスプレイパネル及びその製造方法
【課題】基板からの剥離を防止するとともに、配置位置の精度の向上を図る。
【解決手段】基板550の上面にレジスト552を塗布し、フォトリソグラフィー法により、レジスト552に基板550の表面が露出するような開口部を形成した後、開口部において露出された基板550の一部に金属からなる薄膜551を形成し、基板550における薄膜551の周辺部に撥液処理を施して、薄膜551の上面に対して導電性微粒子含有液滴を付着させる。
【解決手段】基板550の上面にレジスト552を塗布し、フォトリソグラフィー法により、レジスト552に基板550の表面が露出するような開口部を形成した後、開口部において露出された基板550の一部に金属からなる薄膜551を形成し、基板550における薄膜551の周辺部に撥液処理を施して、薄膜551の上面に対して導電性微粒子含有液滴を付着させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線のパターニング方法及びそのパターニング方法によってパターニングされた配線に関する。また、配線のパターニング方法を用いたディスプレイパネルの製造方法及びその製造方法によって製造されたディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRT(Cathode Ray Tube)に代替する新たな映像表示方式を利用した表示装置として、液晶パネルを利用した液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、エレクトロルミネッセンス(EL:Electro Luminescence)現象を利用したELディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP:Plasma Display Panel)を利用したプラズマディスプレイ等が開発されている。
【0003】
このうち、ELディスプレイには、エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子)に無機化合物を用いた無機ELディスプレイと、有機化合物を用いた有機ELディスプレイとに大別され、フルカラー化が容易であり、無機ELディスプレイと比較して低電圧での動作、高精細化が可能であるとの観点から、有機ELディスプレイの開発が進められている。
【0004】
このような有機ELディスプレイに用いられる有機ELディスプレイパネルの駆動方式は、パッシブマトリクス駆動方式と、アクティブマトリクス駆動方式とが挙げられ、アクティブマトリクス駆動方式を採用した有機ELディスプレイパネルは、高コントラストでまた単位時間の発光輝度を抑えることができる等の利点のため、パッシブマトリクス駆動方式よりも優れている。
【0005】
上述したアクティブマトリクス駆動方式のディスプレイパネル、半導体回路、その他の回路は、基板上に配線をパターニングして製造されており、配線のパターニング方法としては、インクジェット装置によって導電性微粒子を含有する液体をインクとして基板に吐出することで配線を直接パターニングする方法が開発されている。
具体的には、断線及び短絡等の不具合の発生を防止するとともに、電気伝導性等の向上を図ることが可能な配線のパターニング方法として、撥液処理された基板全面に向けてインクを吐出する膜パターンの形成方法が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、高密度配線を有する基板をより確実かつ簡便に製造することが可能な配線のパターニング方法として、金型を基板に押し付けることで基板に微細な溝を形成し、その溝に導電性物質を注入することによって配線を形成する高密度配線基板の製造方法が開発されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−80694号公報
【特許文献2】特開2004−356255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のパターニング方法の場合、基板とインクのなじみが不十分であるため、インク内の導電性微粒子によって形成される配線が基板に対して密着せず、配線が剥離するといった問題が生じている。
【0007】
また、特許文献2に記載のパターニング方法の場合、変形させ易い軟らかい基板であれば、金型を押し付ける方法により、溝を形成することができるが、変形させ難い硬い基板であると、金型を押し付ける方法により、溝を形成することが困難である。
そのため、溝を形成せずにインクを基板に付着することになるが、着弾したインクに拡散又は滲みが発生するため、精度良く配線を形成することが困難であるといった問題も生じている。
【0008】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、基板からの剥離を防止するとともに、配置位置の精度の向上を図ることが可能な配線及びそのパターニング方法並びにディスプレイパネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、
基板の上面に高密度の配線をパターニングする配線のパターニング方法において、
前記基板の上面に設けられた非金属膜上に、周囲で前記非金属膜が露出するように金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の周辺の非金属膜に撥液処理を施す工程と、
前記金属膜上面に対して導電性微粒子含有液滴又は金属微粒子を付着する工程とを具備することを特徴とする。
ここで、非金属膜としては、感光性樹脂硬化物や窒化シリコン、酸化シリコン等のフッ素と結合しやすい材料が好ましい。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、前記撥液処理が、フッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中に前記基板を曝露することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、前記撥液処理が、F2ガス中に前記基板を曝露することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、前記導電性微粒子含有液滴が、液滴吐出法によって前記金属膜上に付着されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、前記金属微粒子が、当該金属微粒子を直接吹き付けることによって付着されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明に係るディスプレイパネルの製造方法は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパターニング方法によってディスプレイパネルにおける表示領域内に配線をパターニングすることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明に係るディスプレイパネルの製造方法は、ピクセルを仕切る隔壁として前記配線を用いることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明に係る配線は、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のパターニング方法によってパターニングされることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明に係るディスプレイパネルは、請求項6又は請求項7に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板の上面には、導電性微粒子含有液滴又は金属微粒子に対して高い密着性を有する金属膜が形成されているので、導電性微粒子含有液滴等が基板に対して密着し難い場合であっても、導電性微粒子含有液滴等からなる配線を容易に形成することが可能となる。そのため、基板に対する配線の密着性が向上されて、配線の剥離が防止されるとともに、基板における所望の位置に対して配線が形成し易くなり、配線のパターニング精度の向上を図ることができる。
また、基板における金属膜の周辺部は、撥液処理が施されているので、金属膜の上面に選択的に導電性微粒子含有液滴等を積層させることが可能となり、より効果的に配線のパターニング精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
以下、図1から図15を参照しながら、本発明に係る配線及びそのパターニング方法並びにディスプレイパネル及びその製造方法について説明する。
【0020】
まず始めに、図1(a)から図1(g)を参照しながら、配線のパターニング方法について説明する。
まず、図1(a)に示すように、基板550を準備する。この基板550には、プラスチック基板、ガラス基板等の絶縁基板を用いることができる。ディスプレイパネルがトップエミッション構造の場合、基板550は透明である必要はないが、ボトムエミッション構造の場合、基板550は、有機ELが発光する光の波長域に対して高い透過性が要求される。また、基板550として、画素ごとに一又は複数の薄膜トランジスタが形成されたトランジスタアレイパネルを用いることができる。そして、薄膜トランジスタを覆うように、窒化シリコン、酸化シリコン等の層間絶縁膜555が基板550全面に被膜される。
【0021】
次に、基板550上の層間絶縁膜555の表面にクロム等の薄膜を気相成長法(例えば、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着等のPVD法)によって成膜させ、その薄膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法によって形状加工することにより、図1(b)に示すように、薄膜パターン551を層間絶縁膜555の表面に形成させ、次いで錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)等の透明導電膜を層間絶縁膜555に被膜してから所定の薄膜パターン551上にのみ残すようにパターニングをして透明電極556を形成する。この透明電極556は、トランジスタに接続された画素電極となる。このとき薄膜パターン551は、パネルがトップエミッション構造の場合、有機ELが発光する光の波長域に対して不透明になる厚さ程度に被膜しても差し支えないが、ボトムエミッション構造の場合、有機ELが発光する光の波長域に対して高い透過性を維持できる程度、例えば1nm〜30nm程度の極薄い膜であることが好ましい。その後、図1(c)に示すように、レジスト552が基板550の表面全体に塗布され、塗布されたレジスト552によって薄膜パターン551及び透明電極556が被覆される。
【0022】
さらに、図1(d)に示すように、レジスト552を露光及び現像することにより、レジスト552の一部を除去し、薄膜パターン551と、薄膜パターン551の周辺部の層間絶縁膜555とを露出させる。レジスト552の高さは1μm〜2μm程度あることが望ましい。
【0023】
なお、上述した薄膜パターン551と、薄膜パターン551の周辺部の層間絶縁膜555とを露出させるため、レジスト552がポジ型の場合には、薄膜パターン551及びその周辺部に光を照射し、レジスト552がネガ型の場合には、薄膜パターン551及びその周辺部以外に光を照射させる。ポジ型レジストとしては、ノボラック系(ナガセ煙ケムテック製:NPR3510PG)等がある。
【0024】
露光及び現像処理後、図1(e)に示すように、フッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中に上述した基板550を曝露させることにより、薄膜パターン551の周辺部の層間絶縁膜555の表面と、レジスト552の表面とに撥液処理が施される。このとき、金属である薄膜パターン551の表面及び透明電極556の表面には顕著な撥液性は発現しない。
【0025】
なお、本実施形態におけるフッ素系ガスとしては、四フッ化炭素(CF4)、六フッ化ブタジエン(C4F6)、八フッ化ブチレン(C4F8)、八フッ化シクロペンテン(C5F8)、八フッ化プロパン(C3F8)又は六フッ化エタン(C2F6)を好適に用いることができる。
【0026】
また、本実施形態における撥液処理方法としては、フッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中に基板550を曝露させる方法が用いられているが、特に限定されるものではなく、フッ素(F2)ガス中に基板550を曝露させることにより、基板550における薄膜パターン551の周辺部に撥液処理が施されてもよい。
【0027】
撥液処理後、図1(f)に示すように、インクジェットヘッド560から薄膜パターン551に向けて平均粒径が1nm〜1μm程度の導電性微粒子が分散された金属ナノインク又は金属ナノペーストからなる導電性微粒子含有液滴553を吐出する。ここで、インクジェットヘッド560及び基板550のうちの少なくとも一方を基板550の表面に沿って移動させるとともに、インクジェットヘッド560から導電性微粒子含有液滴553を吐出することで、薄膜パターン551に重畳するよう配線554をパターニングする。このように、基板550の上面には、導電性微粒子含有液滴に対して高い密着性を有する薄膜パターン551がパターニングされているので、導電性微粒子含有液滴が基板550に対して密着しにくい場合であっても、導電性微粒子含有液滴からなる配線554を容易に形成することが可能となっている。そして、薄膜パターン551の周囲で露出されている層間絶縁膜555はフッ素系ガスを用いたプラズマ処理570により表面571が撥液性になっているので、導電性微粒子含有液滴553を弾きやすくなっている。ここで導電性微粒子含有液滴553が層間絶縁膜555と接触することによって生じる表面エネルギーよりも導電性微粒子含有液滴553が薄膜パターン551と接触することによって生じる表面エネルギーの方が低いために、導電性微粒子含有液滴553は薄膜パターン551の表面のみに位置するようになる。
【0028】
なお、本実施形態における導電性微粒子含有液滴としては、銀、銅、アルミ又はこれらを主成分とした合金等の金属微粒子を硬化性液体樹脂等の分散媒に分散させたものが用いられており、特に、銀ナノインク(アルバックマテリアル社製:Ag1−TeH)が好適に用いられる。
【0029】
また、インクジェットヘッド560を用いて導電性微粒子含有液滴553を液滴として吐出する方法に代替して、キャリアガスによるディスペンサーを用いて導電性微粒子含有液滴553、或いは、直接金属微粒子を吹き付けて付着することにより、配線554をパターニングする方法であってもよい。また導電性微粒子含有液滴553が、バインダ樹脂等によって粘性のあるペーストの場合、スクリーン印刷でパターニングしてもよい。
【0030】
最終的には、図1(g)に示すように、基板550の上面に形成された配線554を固化させることにより、一連の配線のパターニング作業が完了する。
【0031】
なお、導電性微粒子含有液滴の分散媒が光硬化性樹脂の場合には、紫外線を配線554に照射することによって配線554を固化させることができる。一方、導電性微粒子含有液滴の分散媒が熱硬化性樹脂の場合には、配線554を加熱することによって配線554を固化させることができる。この後、透明電極556上に、有機EL層材料を含む溶液または分散液を付着する。このとき、有機EL層材料を含む溶液又は分散液の液面の高さは配線554の高さより低いので、配線554を越えて隣の透明電極551に浸入することはない。
【0032】
また、透明電極556の周囲の表面571及び配線554の周囲の表面571は撥液性になっているので、有機EL層材料を含む溶液又は分散液は、より安定な透明電極556上に集合し易くなる。このとき、有機EL層材料を含む溶液又は分散液が十分な量であれば透明電極556上のみならず透明電極556の周囲にも付着されることになる。したがって、有機EL層材料を含む溶液又は分散液は透明電極556上で乾燥して有機EL層557となる。次いで、複数の有機EL層557に跨るように、対向電極558を設けることによりディスプレイパネルを製造することができる。薄膜パターン551を電極として用いることができる場合、透明電極556は必ずしも必要ない。トップエミッションの場合、透明電極556の下で反射板として機能する薄膜パターン551を、配線554の下地となる薄膜パターン551とともに一括して製造できる。
【0033】
次に、図2を参照しながら、ディスプレイパネルの平面構成について説明する。
本実施形態におけるディスプレイパネル1は、図2に示すように、画素がマトリクス状に配置されている。これらの画素は、略長方形状の1ドットの赤サブピクセルPと、1ドットの緑サブピクセルPと、1ドットの青サブピクセルPとから構成されており、各サブピクセルPは、画素3において、互いの長手方向(以下、垂直方向)が平行となるように、かつ、長手方向と直交する方向(以下、水平方向)に赤サブピクセルP、緑サブピクセルP、青サブピクセルPの順となるように配列されている。
【0034】
このディスプレイパネル1においては、サブピクセルPに各種の信号を出力するために、複数の走査線X、信号線Y及び供給線Zが設けられている。走査線X及び供給線Zは水平方向に延在し、信号線Yは垂直方向に延在している。ここで、mドットのサブピクセルPが水平方向に配列されている場合(但し、mは3の倍数)、m本の信号線Yが互いに平行となるように設けられ、nドットのサブピクセルPが垂直方向に配列されている場合(但し、nは2以上の整数)、n本の走査線X及びn本の供給線Zが互いに平行となるように設けられている。また、走査線Xと、供給線Zとは、水平方向に沿って交互に配列されている。
【0035】
次に、図3を参照しながら、サブピクセルPの回路構成について説明する。
何れのサブピクセルPも同様に構成されており、1ドットのサブピクセルPには、図3に示すように、有機EL素子20と、いずれもNチャネル型アモルファスシリコン薄膜トランジスタであるスイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23と、キャパシタ24とが具備されている。
【0036】
有機EL素子20は、画素電極としてサブピクセル電極20aと、有機EL層20b(図4に図示)と、対向電極20cとを有しており、このうち対向電極20cは、金属隔壁Wに導通されている。
【0037】
スイッチトランジスタ21は、ソース21sと、ドレイン21dと、ゲート21gとを有する。このうち、ソース21sは、信号線Yと導通され、ドレイン21dは、有機EL素子20のサブピクセル電極20aと、駆動トランジスタ23のソース23sと、キャパシタ24の電極24bとに導通され、ゲート21gは、保持トランジスタ22のゲート22gと、走査線Xと導通されている。
【0038】
保持トランジスタ22は、ソース22sと、ドレイン22dと、ゲート22gとを有する。このうち、ソース22sは、駆動トランジスタ23のゲート23gと、キャパシタ24の電極24Aと導通され、ドレイン22dは、駆動トランジスタ23のドレイン23dと、供給線Zと導通され、ゲート22gは、スイッチトランジスタ21のゲート21gと、走査線Xとに導通されている。なお、保持トランジスタ22のドレイン22dは、駆動トランジスタ23のドレイン23dと導通せずに走査線Xに接続されていてもよい。
【0039】
駆動トランジスタ23は、ソース23sと、ドレイン23dと、ゲート23gとを有する。このうち、ソース23sは、有機EL素子20のサブピクセル電極20aと、スイッチトランジスタ21のドレイン21dと、キャパシタ24の電極24bとに導通され、ドレイン23dは、保持トランジスタ22のドレイン22dと、供給線Zとに導通され、ゲート23gは、保持トランジスタ22のソース22sと、キャパシタ24の電極24aとに導通されている。
【0040】
なお、図3におけるスイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23のソースとドレインとの関係は、逆であってもよい。
【0041】
次に、図4を参照しながら、ディスプレイパネル1の層構造について説明する。
本実施形態におけるディスプレイパネル1には、図4に示すように、絶縁基板2が具備されており、この絶縁基板2の上面には、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23が設けられている。
また、これらスイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23は、共通のトランジスタ保護絶縁膜32によって被覆されている。
【0042】
上述したスイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23は、いずれも逆スタガ構造の薄膜トランジスタであり、このうちスイッチトランジスタ21は、絶縁基板2の上面に形成されたゲート21gと、ゲート21gの上部に形成されたゲート絶縁膜31と、ゲート絶縁膜31を挟んでゲート21gに対向した半導体膜21cと、半導体膜21cの中央部上に形成されたチャネル保護膜21pと、半導体膜21cの両端部上において互いに離間するよう形成され、チャネル保護膜21pに一部重なった不純物半導体膜21a,21bと、不純物半導体膜21aの上部に形成されたドレイン21dと、不純物半導体膜21bの上部に形成されたソース21sとを有している。
【0043】
また、駆動トランジスタ23は、絶縁基板2の上面に形成されたゲート23gと、ゲート23gの上部に形成されたゲート絶縁膜31と、ゲート絶縁膜31を挟んでゲート23gに対向した半導体膜23cと、半導体膜23cの中央部上に形成されたチャネル保護膜23pと、半導体膜23cの両端部上において互いに離間するよう形成され、チャネル保護膜23pに一部重なった不純物半導体膜23a,23bと、不純物半導体膜23aの上に形成されたドレイン23dと、不純物半導体膜23bの上に形成されたソース23sとから構成されている。
さらに、図示しない保持トランジスタ22も、上述したスイッチトランジスタ21及び駆動トランジスタ23と同様に構成されている。
【0044】
上述したスイッチトランジスタ21のゲート21g、保持トランジスタ22のゲート22g、駆動トランジスタ23のゲート23g及びキャパシタ24の電極24aは、例えば、スパッタリング法、PVD法及びCVD法等の気相成長法によって絶縁基板2上に成膜された導電性のゲートレイヤー(例えば、AlとTiからなる膜)を、フォトリソグラフィー法と、エッチング法とを用いてパターニングすることによって形成されたものである。また、走査線X及び供給線Zは、ゲートレイヤーのパターニングにより、ゲート21g,22g,23gと同時に形成されたものであって、ゲート21g,22g,23g及び電極24aと共通のゲート絶縁膜31によって被覆されている。
【0045】
一方、上述したスイッチトランジスタ21のドレイン21d及びソース21s、保持トランジスタ22のドレイン22d及びソース22s、駆動トランジスタ23のドレイン23d及びソース23s並びにキャパシタ24の電極24bは、気相成長法によってゲート絶縁膜31の上面に成膜された導電性のドレインレイヤー(例えば、Cr膜にAlとTiからなる膜を積層したもの)を、フォトリソグラフィー法と、エッチング法とを用いてパターニングすることによって形成されたものである。また、信号線Yは、ドレインレイヤーのパターニングによって各ソース21s,22s,23s及びドレイン21d,22d,23dと同時に形成されたものであって、ソース21s,22s,23s、電極24b及びドレイン21d,22d,23dと共通のトランジスタ保護絶縁膜32によって被覆されている。
【0046】
トランジスタ保護絶縁膜32の上面には、ポリイミド等の感光性樹脂を硬化させた平坦化膜33が積層されており、平坦化膜33の表面が平坦となることにより、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22、駆動トランジスタ23、走査線X、信号線Y及び供給線Zによる凹凸が解消されるようになっている。
また、各サブピクセルPにおける平坦化膜33及びトランジスタ保護絶縁膜32には、コンタクトホール91が穿設されている。このコンタクトホール91には、導電性パッド92が埋設されており、導電性パッド92により、サブピクセル電極20aと、駆動トランジスタ23のソース23sとが接続されている。
ここで、本実施形態における絶縁基板2から平坦化膜33までの積層構造を、トランジスタアレイパネル50という。
【0047】
また、上述した平坦化膜33の上面には、有機EL素子20のアノードであるサブピクセル電極20aがマトリクス状に配列されている。図2において、矩形状のサブピクセルPの位置は、サブピクセル電極20a(図4等に図示)の位置を表したものである。すなわち、隣接する信号線Yの間には、サブピクセル電極20aが垂直方向に一列に配列され、走査線Xと、その下隣りの供給線Zとの間には、サブピクセル電極20aが水平方向に一列に配列されるようになっている。これらサブピクセル電極20aは、ディスプレイパネル1がボトムエミッション構造であった場合、気相成長法によって平坦化膜33の上面に成膜された透明導電性膜(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO))をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものであってもよく、トップエミッション構造であった場合、光反射性金属膜上に上述の透明導電性膜を積層した構造であってもよい。光反射性金属膜及び透明導電性膜の積層構造の場合、透明導電性膜をエッチングするエッチャントによって電池反応を引き起こして光反射性金属膜が浸食されてしまう恐れがあるので、図1(b)の透明電極556及び薄膜パターン551のように、光反射性金属膜の側壁まで透明導電性膜で覆われていることが好ましい。
【0048】
さらに、平坦化膜33の上面には、窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる絶縁膜34が形成されている。この絶縁膜34の一部は、サブピクセル電極20aの外縁部の一部と重畳しており、平面視して、サブピクセル電極20aが絶縁膜34によって囲繞されるようになっている。
【0049】
さらに、平坦化膜33の上面には、例えば、クロムからなる薄膜パターン35が形成されている。この薄膜パターン35には、銅、銀、アルミ又はそれらを主成分とした合金からなる金属隔壁Wが積層されている。これら薄膜パターン35及び金属隔壁Wは、図2に示すように、垂直方向のサブピクセル電極20aの列と、隣接するサブピクセル電極20aの列との間において垂直方向に延在しており、平面視して、信号線Yと重畳するようになっている。
上述した金属隔壁Wは、導電性微粒子含有液滴を硬化させたものであり、トランジスタ21,22,23の各電極、走査線X、信号線Y及び供給線Zよりも厚さ寸法が大きく、補助的な配線として機能するようになっている。また、金属隔壁Wは、サブピクセルPが配列されている領域の外側において、互いに接続されている。
【0050】
なお、図4における金属隔壁Wの幅寸法は、信号線Yと金属隔壁Wとを区別し易くするために、信号線Yの幅寸法よりも小さくなっているが、実際には、信号線Yと略同一の幅寸法となっている。
【0051】
金属隔壁Wの表面には、撥液性を有した撥液性導電膜36が成膜されている。撥液性導電膜36は、下記化学式(1)に示すトリアジルトリチオールのメルカプト基(−SH)の水素原子(H)が還元離脱し、硫黄原子(S)が金属隔壁Wの表面に酸化吸着したものである。
【0052】
【化1】
【0053】
なお、本実施形態において、ある液体に対する接触角が50°以上である状態を撥液性とし、ある液体に対する接触角が40°以下である状態を親液性とする。
【0054】
撥液性導電膜36は厚さがトリアジルトリチオールの単分子の厚さに近似している極薄い層である。つまり、撥液性導電膜36は、トリアジルトリチオール分子が金属隔壁Wの表面に規則正しく並んだ分子層からなる極薄い膜であるから、非常に低抵抗であって導電性を有する。なお、撥液性を顕著にするためにトリアジルトリチオールに代えて、下記化学式(2)に示すようにトリアジルトリチオールの1つ乃至2つのメルカプト基がフッ化アルキル基に置換されたトリアジルチオール化合物でもよい。フッ化アルキル基は、下記化学式(2)に示したもの以外でも良い。なお、下記化学式(2)の化合物は分子量423.08のフッ素系トリアジンチオール誘導体であり、メルカプト基(−SH)の水素原子(H)が還元離脱し、硫黄原子(S)が金属隔壁Wの表面に酸化吸着することで、撥液性導電膜36が形成される。
【0055】
【化2】
【0056】
サブピクセル電極20aの上面には、電荷輸送性の層や発光層を含む有機EL層20bが積層されている。この有機EL層20bは、有機化合物含有層を二層以上積層したものである。ここで、有機EL層20bは、サブピクセル電極20aから正孔輸送層20d、発光層20eと順次積層された二層構造を有し、正孔輸送層は、導電性高分子であるPEDOT(Poly(3,4-Ethylene Dioxy Thiophene))及びドーパントであるPSS(Poly Styrene Sulfonate)からなり、発光層は、ポリフルオレン系発光材料からなる。
【0057】
なお、有機EL層20bは、サブピクセル電極20aから順に正孔輸送層、発光層、電子輸送層となる三層構造であってもよいし、サブピクセル電極20aから順に発光層、電子輸送層となる二層構造であってもよいし、発光層からなる単層構造であってもよい。
【0058】
また、これらの層構造において適切な層間に、別途に電子輸送層電子、正孔輸送層又はその他の電荷輸送制御層が介在した多層構造であってもよい。
【0059】
上述した有機EL層20bは、撥液性導電膜36の形成後に、例えば、インクジェット法等の湿式塗布法によって成膜されるようになっている。この場合、PEDOT及びPSSを含有する有機化合物含有液を、サブピクセル電極20aに塗布させることで正孔輸送層20dを成膜させた後、この正孔輸送層20dの上面に、ポリフルオレン系発光材料を含有する有機化合物含有液を塗布することで発光層20eが成膜されるようになっているが、厚膜の金属隔壁Wが設けられているとともに、金属隔壁Wの表面に撥液性導電膜36が形成されているため、隣接するサブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液が金属隔壁Wを越えて混合することを防止することができる。
【0060】
なお、サブピクセルPが赤の場合には、有機EL層20b、特に、発光層20eが赤色に発光し、サブピクセルPが緑の場合には、有機EL層20bが緑色に発光し、サブピクセルPが青の場合には有機EL層20bが青色に発光するようになっている。
【0061】
また、有機EL層20bの上面には、有機EL素子20のカソードである対向電極20cが成膜されている。この対向電極20cは、全てのサブピクセルPに共通して形成された共通電極であって、ベタ一面に成膜されており、撥液性導電膜36を挟んで金属隔壁Wを被覆している。
【0062】
上述した対向電極20cは、サブピクセル電極20aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。
【0063】
なお、対向電極20cは、上記各種材料の層が積層された積層構造となっていてもよいし、以上の各種材料の層に加えて金属層が堆積した積層構造となっていてもよい。具体的には、有機EL層20b側に設けられた低仕事関数の高純度のバリウム層と、バリウム層を被覆するように設けられたアルミニウム層とからなる積層構造や、有機EL層20b側に設けられたリチウム層と、バリウム層を被覆するように設けられたアルミニウム層とからなる積層構造が挙げられる。
ここで、本実施形態においては、サブピクセル電極20a、有機EL層20b、対向電極20cの順に積層されたものを有機EL素子20とする。
【0064】
次に、図5から図9を参照しながら、金属隔壁Wの幅寸法、断面積及び抵抗率について定義する。
以下においては、ディスプレイパネル1の画素数をWXGA(768×1366)としたときの上述した金属隔壁Wの望ましい幅寸法及び断面積を定義する。
【0065】
図5において、縦軸は1つの駆動トランジスタ23のソース23s−ドレイン23d間を流れる書込電流の電流値又は1つの有機EL素子20のアノード−カソード間を流れる駆動電流の電流値であり、横軸は1つの駆動トランジスタ23のソース23s−ドレイン23d間の電圧(同時に1つの駆動トランジスタ23のゲート23g−ドレイン23d間の電圧)である。図中、実線Ids maxは、最高輝度階調(最も明るい表示)のときの書込電流及び駆動電流であり、一点鎖線Ids midは、最高輝度階調と最低輝度階調との間の中間輝度階調のときの書込電流及び駆動電流であり、二点鎖線Vpoは駆動トランジスタ23の不飽和領域(線形領域)と飽和領域との閾値つまりピンチオフ電圧であり、三点鎖線Vdsは駆動トランジスタ23のソース23s−ドレイン23d間を流れる書込電流であり、破線Ielは有機EL素子20のアノード−カソード間を流れる駆動電流である。
【0066】
ここで電圧VP1は、最高輝度階調時の駆動トランジスタ23のピンチオフ電圧であり、電圧VP2は、駆動トランジスタ23が最高輝度階調の書込電流が流れるときのソース−ドレイン間電圧であり、電圧VELmax(電圧VP4−電圧VP3)は有機EL素子20が最高輝度階調の書込電流と電流値が等しい最高輝度階調の駆動電流で発光するときのアノード−カソード間の電圧である。電圧VP2´は、駆動トランジスタ23が中間輝度階調の書込電流が流れるときのソース−ドレイン間電圧であり、電圧(電圧VP4´−電圧VP3´)は有機EL素子20が中間輝度階調の書込電流と電流値が等しい中間輝度階調の駆動電流で発光するときのアノード−カソード間電圧である。
【0067】
駆動トランジスタ23及び有機EL素子20はいずれも飽和領域で駆動させるために、(供給線Zの発光期間時の電圧VH)から(金属隔壁Wの発光期間時の電圧Vcom)を減じた値VXは下記式(1)を満たす。
【0068】
VX=Vpo+Vth+Vm+VEL ……(1)
ここで、Vth(最高輝度時の場合VP2−VP1に等しい)は、駆動トランジスタ23の閾値電圧、VEL(最高輝度時の場合VELmaxに等しい)は、有機EL素子20のアノード−カソード間電圧、Vmは、階調に応じて変位する許容電圧である。
【0069】
図5から明らかなように、電圧VXのうち、輝度階調が高くなる程、トランジスタ23のソース−ドレイン間に要する電圧(Vpo+Vth)が高くなるとともに有機EL素子20のアノード−カソード間に要する電圧VELが高くなる。したがって、輝度階調が高くなる程、許容電圧Vmは低くなり、最小許容電圧VmminはVP3−VP2となる。
【0070】
有機EL素子20は、低分子EL材料及び高分子EL材料にかかわらず一般的に経時劣化し、高抵抗化する。10000時間後のアノード−カソード間電圧は初期時の1.4倍程度になることが確認されている。つまり、電圧VELは、同じ輝度階調時でも時間が経つ程高くなる。このため、駆動初期時の許容電圧Vmが高い程長期間にわたって動作が安定するので、電圧VELが8V以上、より望ましくは13V以上となるように電圧VXを設定している。
【0071】
この許容電圧Vmには、有機EL素子20の高抵抗化ばかりでなく、さらに、供給線Zによる電圧降下の分も含まれる。
【0072】
供給線Zの配線抵抗の影響により、電圧降下が大きいとディスプレイパネル1の消費電力が著しく増大してしまう。このため、供給線Zの電圧降下は、1V以下に設定することが特に好ましい。
【0073】
行方向の一つのサブピクセルPの長さである画素幅Wpと、行方向の画素数(1366)とを考慮した結果、ディスプレイパネル1のパネルサイズが32インチ、40インチの場合、供給線Zの全長はそれぞれ706.7mm、895.2mmとなる。ここで、金属隔壁Wの線幅WLが広くなると、構造上有機EL層20bの面積が小さくなり、さらに他の配線との重なり寄生容量を発生してさらなる電圧降下をもたらすため、金属隔壁Wの線幅WLは画素幅Wpの5分の1以下に抑えることが望ましい。このようなことを考慮すると、ディスプレイパネル1のパネルサイズが32インチ、40インチの場合、線幅WLはそれぞれ34μm以内、44μm以内となる。また、金属隔壁Wの最大膜厚Hmaxはアスペクト比を考慮すると、トランジスタ21〜23の最小加工寸法4μmの1.5倍、つまり6μmとなる。したがって、金属隔壁Wの最大断面積Smaxは32インチ、40インチで、それぞれ204μm2、264μm2となる。
【0074】
このような32インチのディスプレイパネル1について、最大電流が流れるように全点灯したときの金属隔壁W最大電圧降下を1V以下にするためには、図6に示すように、金属隔壁Wの配線抵抗率ρ/断面積Sは4.7Ω/cm以下に設定される必要がある。また、図7には、32インチのディスプレイパネル1の金属隔壁Wの断面積と電流密度の相関関係を示す。なお、上述した金属隔壁Wの最大断面積Smax時に許容される抵抗率は、32インチで9.6μΩcm、40インチで6.4μΩcmとなる。
【0075】
そして、40インチのディスプレイパネル1について、最大電流が流れるように全点灯したときの金属隔壁Wの最大電圧降下を1V以下にするためには、図8に示すように、金属隔壁Wの配線抵抗率ρ/断面積Sは2.4Ω/cm以下に設定される必要がある。図9には、40インチのディスプレイパネル1の金属隔壁Wの断面積と電流密度の相関関係を表す。
【0076】
金属隔壁Wの故障により動作しなくなる故障寿命MTFは、下記式(2)を満たす。
【0077】
MTF=A exp(Ea/KbT)/ρJ2 ……(2)
ここで、Eaは活性化エネルギー、KbT=8.617×10―5eV、ρは金属隔壁Wの抵抗率、Jは電流密度である。
【0078】
金属隔壁Wの故障寿命MTFは、抵抗率の増大やエレクトロマイグレーションに律速する。金属隔壁WをAl系(Al単体或いはAlTiやAlNd等の合金)に設定し、MTFが10000時間、85℃の動作温度で試算すると、電流密度Jは2.1×104A/cm2以下にする必要がある。これと同様に、金属隔壁WをCuに設定すると、2.8×106A/cm2以下にする必要がある。なお、Al合金内のAl以外の材料は、Alよりも低い抵抗率であることを前提としている。
これらのことを考慮して、32インチのディスプレイパネル1では、全点灯状態で10000時間に金属隔壁Wが故障しないようなAl系の金属隔壁Wの断面積Sは、図6に示すように、57μm2以上必要になり、同様にCuの金属隔壁Wの断面積Sは、図7に示すように、0.43μm2以上必要になる。
【0079】
そして、40インチのディスプレイパネル1では、全点灯状態で10000時間に金属隔壁Wが故障しないようなAl系の金属隔壁Wの断面積Sは、図8に示すように、92μm2以上必要となる。同様に、Cuの金属隔壁Wの断面積Sは、図9に示すように、0.69μm2以上必要になる。
【0080】
Al系の金属隔壁Wでは、Al系の抵抗率が4.00μΩcmとすると、32インチのディスプレイパネル1では上述のように配線抵抗率ρ/断面積Sが4.7Ω/cm以下なので、最小断面積Sminは85.1μm2となる。このとき、上述したように、金属隔壁Wの配線幅WLが34μm以内となるため、金属隔壁Wの最小膜厚Hminは2.50μmとなる。
【0081】
また、Al系の金属隔壁Wの40インチのディスプレイパネル1では、上述したように配線抵抗率ρ/断面積Sが2.4Ω/cm以下となるため、最小断面積Sminは167μm2となる。このとき上述のように金属隔壁Wの配線幅WLが44μm以内であるため、金属隔壁Wの最小膜厚Hminは3.80μmとなる。
【0082】
一方、Cuの金属隔壁Wでは、Cuの抵抗率が2.10μΩcmとすると、32インチのディスプレイパネル1では、上述のように配線抵抗率ρ/断面積Sが4.7Ω/cm以下となるため、最小断面積Sminは44.7μm2となる。このとき、上述したように、金属隔壁Wの配線幅WLが34μm以内となるため、金属隔壁Wの最小膜厚Hminは1.31μmとなる。
【0083】
また、Cuの金属隔壁Wの40インチのディスプレイパネル1では、上述したように配線抵抗率ρ/断面積Sが2.4Ω/cm以下となるため、最小断面積Sminは87.5μm2となる。このとき、上述したように、金属隔壁Wの配線幅WLは44μm以内となるため、金属隔壁Wの最小膜厚Hminは1.99μmとなる。
【0084】
以上より、ディスプレイパネル1を正常かつ消費電力を低く動作させるには、金属隔壁Wでの電圧降下を1V以下に設定することが好ましく、このような条件に設定するためには、金属隔壁WがAl系の32インチのパネルでは、厚さ寸法Hが2.50μm〜6μm、幅寸法WLが14.1μm〜34.0μm、抵抗率が4.0μΩcm〜9.6μΩcmとなり、金属隔壁WがAl系の40インチのパネルでは、金属隔壁WがAl系の場合、厚さ寸法Hが3.80μm〜6μm、幅寸法WLが27.8μm〜44.0μm、抵抗率が4.0μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
【0085】
総じてAl系の金属隔壁Wの場合、厚さ寸法Hが2.50μm〜6μm、幅寸法WLが14.1μm〜44μm、抵抗率が4.0μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
同様に、金属隔壁WがCuの32インチのパネルでは、厚さ寸法Hが1.31μm〜6μm、幅寸法WLが7.45μm〜34μm、抵抗率が2.1μΩcm〜9.6μΩcmとなり、金属隔壁WがCuの40インチのパネルでは、金属隔壁WがCu系の場合、厚さ寸法Hが1.99μm〜6μm、幅寸法WLが14.6μm〜44.0μm、抵抗率が2.1μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
【0086】
総じてCuの金属隔壁Wの場合、厚さ寸法Hが1.31μm〜6μm、幅寸法WLが7.45μm〜44μm、抵抗率が2.1μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
したがって、金属隔壁WとしてAl系材料又はCuを適用した場合、ディスプレイパネル1の金属隔壁Wは、厚さ寸法Hが1.31μm〜6μm、幅寸法WLが7.45μm〜44μm、抵抗率が2.1μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
【0087】
次に、図10から図15を参照しながら、ディスプレイパネルの製造方法について説明する。
まず始めに、気相成長法、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を適宜何回か行うことによって、トランジスタアレイパネル50が成形される。このトランジスタアレイパネル50における各サブピクセルPに、コンタクトホール91を形成した後、形成されたコンタクトホール91に電解メッキ等によって導電性パッド92を埋設して、気相成長法、フォトリソグラフィー法、エッチング法を順次行うことにより、図10に示すようなサブピクセル電極20aがパターニングされる。その後、図11に示すように、気相成長法により、サブピクセル電極20aを含むトランジスタアレイパネル50の上面に、ベタ一面の絶縁膜34が成膜される。
【0088】
次に、図12に示すように、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、ベタ一面に成膜された絶縁膜34は、信号線Yの上方の一部を除いて除去され、平坦化膜33の一部と、サブピクセル電極20aの大部分とが露出された後、図13に示すように、平坦化膜33における露出部分の一部に、薄膜パターン35が成膜される。なお、薄膜パターン35は、図10の段階で、サブピクセル電極20aの一部又は全てを構成する導電膜となる材料を一括してパターニングすることによってサブピクセル電極20aの一部又は全てとともに形成されてもよい。この後、四フッ化メチル等のフッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中にトランジスタアレイパネル50を曝露させて、露出した平坦化膜33及び絶縁膜34の表面を撥液性にする。
これに対し、サブピクセル電極20a及び薄膜パターン35は、金属を含有しているためフッ素又はフッ化物との結合性が乏しいため、強い撥液性を示すことはない。
【0089】
さらに、図14に示すように、インクジェットヘッド又はディスペンサーを用いて、金、銀、銅、アルミ、これらを主成分とした合金の少なくともいずれかを含む金属微粒子を硬化性液体樹脂等の分散媒に分散させた導電性微粒子含有液滴を薄膜パターン35の上面をねらって付着する。このとき、薄膜パターン35の周辺の平坦化膜33は撥液性を示しているので導電性微粒子含有液滴を弾きやすくなるため導電性微粒子含有液滴が薄膜パターン35上に選択的に付着することになる。その後、導電性微粒子含有液滴を加熱して分散媒を蒸発後、焼結して微粒子同士を溶融して一塊となった金属隔壁Wが積層される。
なお、導電性微粒子含有液滴を付着する代わりに、少なくとも一部が溶融状態の金属微粒子をキャリアガスによって吹き付けて付着することにより、金属隔壁Wをパターニングしてもよい。
【0090】
金属隔壁Wの積層後、紫外線/オゾン洗浄法により、トランジスタアレイパネル50を洗浄し、トランジスタアレイパネル50の表面全体に、下記化学式(1)又は下記化学式(2)に示すトリアジン誘導体の水溶液を塗布させる、またはトランジスタアレイパネル50をトリアジン誘導体水溶液に浸漬させることで、金属隔壁Wに表面処理が施される。この際、トリアジン誘導体の性質に起因して、金属隔壁Wの表面で選択的に還元脱離反応が引き起こり、図15に示すように、金属隔壁Wの表面に選択的に撥液性導電膜36が形成されるが、サブピクセル電極20aのような表面が導電性酸化物の上や平坦化膜33の表面上には、撥液性導電膜36が撥液性を示す程度に形成されないようになっている。
【0091】
【化3】
【0092】
【化4】
【0093】
ここで、上記化学式(2)に示すフッ素系トリアジンチオール誘導体は、水に不溶であるが、同モル量のNaOH又はKOHと一緒であれば水に溶解し、フッ素系トリアジンチオール誘導体水溶液を調製することができる。この際、水溶液の濃度は、1×10-4〜1×10-2mol/Lの範囲内とする。
なお、フッ素系トリアジンチオール誘導体水溶液を用いる場合には、水溶液の温度を20〜30℃とし、浸漬時間を1〜30分とすることが好ましい。
【0094】
その後、トリアジン誘導体水溶液にトランジスタアレイパネル50を浸漬させた後、そのトランジスタアレイパネル50を取り出し、アルコールによってトランジスタアレイパネル50が洗浄されることにより、余剰のトリアジン誘導体が除去される。
【0095】
さらに、トランジスタアレイパネル50を水によって再び洗浄し、例えば、窒素ガス(N2)等の不活性ガスをトランジスタアレイパネル50に吹き付けることにより、トランジスタアレイパネル50を乾燥させる。
【0096】
次に、絶縁膜34に対してフォトリソグラフィー法、エッチング法を順次行うことによって、絶縁膜34を網目状にパターニングすることにより、サブピクセル電極20aが露出される。
【0097】
次に、正孔注入材料として、例えば、PEDOT及びPSSを水に分散させた有機化合物含有液を、サブピクセル電極20aに塗布させ、正孔輸送層20dを形成させる。この際、塗布方法としては、インクジェット法等の液滴吐出法や、その他の印刷方法を用いてもよいし、ディップコート法や、スピンコート法等のコーティング法を用いてもよいが、サブピクセル電極20aごとに独立して正孔輸送層20dを成膜するために、インクジェット法等の印刷方法が好適に用いられる。
【0098】
正孔輸送層20dが形成された後、ホットプレートを用いてトランジスタアレイパネル50を160〜180℃の温度で熱処理を施す。そして、赤、緑、青の、ポリフェニレン系発光材料やポリフルオレン系発光材料等の発光材料をそれぞれ有機溶剤(例えば、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン)に溶解させ、赤、緑、青それぞれの有機化合物含有液を準備する。そして、赤のサブピクセルPの正孔輸送層20d上には赤の有機化合物含有液を塗布させ、緑のサブピクセルPの正孔輸送層20d上には緑の有機化合物含有液を塗布させ、青のサブピクセルPの正孔輸送層20d上には青の有機化合物含有液を塗布させる。その後、インクジェット法(液滴吐出法)、その他の印刷方法を用いて、各色における正孔輸送層20dの上面に発光層20eを成膜させる。
【0099】
なお、発光層20eを形成する前に、インクジェット法等の湿式塗布法により、インタレイヤ層を正孔輸送層20dの上面に積層させ、さらにインタレイヤ層の上面に発光層20eを積層させてもよい。
【0100】
次に、例えば、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下において、ホットプレートを用いてトランジスタアレイパネル50を乾燥させ、残留溶媒を除去させる。
なお、真空中において、シーズンヒータを用いて乾燥させてもよい。
【0101】
乾燥後、気相成長法により、発光層20eの上面に対向電極20cをベタ一面に成膜させる。具体的には、真空蒸着法により、Ca、Ba、Li、Mg、等の仕事関数が4.0eV以下の導電性薄膜をベタ一面に成膜させ、この薄膜の上に、薄膜よりもシート抵抗の低い厚さに堆積されたAl、ITO等の高仕事関数の導電性膜をベタ一面に成膜させる。
最後に、例えば、メタルキャップや、ガラス基板等の封止基板に紫外線硬化性又は熱硬化性の接着剤を塗布させ、その接着剤によって封止基板と対向電極20cとを接着させることにより、図4に示すように、ディスプレイパネル1が完成する。
【0102】
このとき、平坦化膜33の上面には、金属ナノペースに対して高い密着性を有する薄膜パターン35がパターニングされているので、導電性微粒子含有液滴が平坦化膜33に対して密着し難い場合であっても、導電性微粒子含有液滴による金属隔壁Wを平坦化膜33の上面に容易に形成することができる。
【0103】
また、平坦化膜33の露出部であって、薄膜パターン35の周辺部は、フッ素系ガス雰囲気下で発生させたプラズマ中への曝露による撥液処理が施されているので、インクジェットヘッドから吐出された導電性微粒子含有液滴が薄膜パターン35の上面から外れて着弾した場合であっても、導電性微粒子含有液滴が薄膜パターン35の周辺部から薄膜パターン35の上面に移動するので、薄膜パターン35の上面にのみ導電性微粒子含有液滴を積層させることができる。
【0104】
さらに、上述したような湿式塗布法によって正孔輸送層20dを形成させる場合、厚膜の金属隔壁Wが設けられているとともに、この金属隔壁Wの表面に撥液性を有する撥液性導電膜36が被覆されているので、隣接するサブピクセル電極20aに塗布される有機化合物含有液が金属隔壁Wを越えて混ざり合うことを防止することで、サブピクセル電極20aごとに独立した正孔輸送層20dを形成させることができる。
また、サブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液がサブピクセル電極20aの上面の外縁部において肉厚となることを防止することで、正孔輸送層20dを均一な膜厚で形成させることができる。
【0105】
さらに、上述したような湿式塗布法によって発光層20eを形成させる場合、厚膜の金属隔壁Wが設けられているとともに、この金属隔壁Wの表面に撥液性を有する撥液性導電膜36がコーティングされているので、隣接するサブピクセルPに塗布された有機化合物含有液が金属隔壁Wを越えて混ざり合うことを防止することで、サブピクセルPごとに独立した発光層20eを形成させることができる。
【0106】
以上より、本実施形態における配線及びそのパターニング方法並びにディスプレイパネル及びその製造方法によれば、絶縁基板2の上面には、導電性微粒子含有液滴に対して高い密着性を有する薄膜パターン35が形成されているので、導電性微粒子含有液滴が絶縁基板2に対して密着し難い場合であっても、導電性微粒子含有液滴からなる金属隔壁Wを容易に形成することが可能となる。そのため、絶縁基板2に対する金属隔壁Wの密着性が向上されて、金属隔壁Wの剥離が防止されるとともに、絶縁基板2における所望の位置に対して金属隔壁Wが形成し易くなり、配線である金属隔壁Wのパターニング精度の向上を図ることができる。
【0107】
また、絶縁基板2における薄膜パターン35の周辺部は、撥液処理が施されているので、インクジェットヘッドから吐出された導電性微粒子含有液滴が薄膜パターン35の上面から外れて着弾した場合であっても、撥液処理が施された薄膜パターン35の周辺部に導電性微粒子含有液滴が付着することを防止することで、薄膜パターン35の上面にのみ導電性微粒子含有液滴を積層させることが可能となり、より効果的に金属隔壁Wのパターニング精度の向上を図ることができる。
【0108】
なお、上述した本実施形態においては、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23は、アモルファスシリコンTFTに限らず、ポリシリコンTFTでもよいし、全てNチャネルでなくても一部又は全てPチャネルでもよい。
【0109】
また、本実施形態においては、サブピクセル電極20aをアノードとし、対向電極20cをカソードとしたが、サブピクセル電極20aをカソードとし、対向電極20cをアノードとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】配線のパターニング工程における一連の工程を示す縦断面図である。
【図2】ディスプレイパネルの構造の概略を示す平面図である。
【図3】サブピクセルの等価回路図である。
【図4】図2における面IV−IVを示す縦断面図である。
【図5】サブピクセルにおける駆動トランジスタ及び有機EL素子の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図6】32インチのディスプレイパネルにおける金属隔壁の最大電圧降下と、配線抵抗率ρ/断面積Sとの相関を示すグラフである。
【図7】32インチのディスプレイパネルにおける金属隔壁の断面積と、電流密度との相関を示すグラフである。
【図8】40インチのディスプレイパネルにおける金属隔壁の最大電圧降下と、配線抵抗率ρ/断面積Sとの相関を示すグラフである。
【図9】40インチのディスプレイパネルにおける金属隔壁の断面積と、電流密度との相関を示すグラフである。
【図10】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図11】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図12】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図13】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図14】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図15】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1 ディスプレイパネル
2 絶縁基板
33 平坦化膜
34 絶縁膜
35 薄膜パターン
50 トランジスタアレイパネル
550 トランジスタアレイパネル
551 薄膜
552 レジスト
553 導電性微粒子含有液滴
554 配線
560 インクジェットヘッド
W 金属隔壁
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線のパターニング方法及びそのパターニング方法によってパターニングされた配線に関する。また、配線のパターニング方法を用いたディスプレイパネルの製造方法及びその製造方法によって製造されたディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRT(Cathode Ray Tube)に代替する新たな映像表示方式を利用した表示装置として、液晶パネルを利用した液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、エレクトロルミネッセンス(EL:Electro Luminescence)現象を利用したELディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(以下、PDP:Plasma Display Panel)を利用したプラズマディスプレイ等が開発されている。
【0003】
このうち、ELディスプレイには、エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子)に無機化合物を用いた無機ELディスプレイと、有機化合物を用いた有機ELディスプレイとに大別され、フルカラー化が容易であり、無機ELディスプレイと比較して低電圧での動作、高精細化が可能であるとの観点から、有機ELディスプレイの開発が進められている。
【0004】
このような有機ELディスプレイに用いられる有機ELディスプレイパネルの駆動方式は、パッシブマトリクス駆動方式と、アクティブマトリクス駆動方式とが挙げられ、アクティブマトリクス駆動方式を採用した有機ELディスプレイパネルは、高コントラストでまた単位時間の発光輝度を抑えることができる等の利点のため、パッシブマトリクス駆動方式よりも優れている。
【0005】
上述したアクティブマトリクス駆動方式のディスプレイパネル、半導体回路、その他の回路は、基板上に配線をパターニングして製造されており、配線のパターニング方法としては、インクジェット装置によって導電性微粒子を含有する液体をインクとして基板に吐出することで配線を直接パターニングする方法が開発されている。
具体的には、断線及び短絡等の不具合の発生を防止するとともに、電気伝導性等の向上を図ることが可能な配線のパターニング方法として、撥液処理された基板全面に向けてインクを吐出する膜パターンの形成方法が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、高密度配線を有する基板をより確実かつ簡便に製造することが可能な配線のパターニング方法として、金型を基板に押し付けることで基板に微細な溝を形成し、その溝に導電性物質を注入することによって配線を形成する高密度配線基板の製造方法が開発されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−80694号公報
【特許文献2】特開2004−356255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のパターニング方法の場合、基板とインクのなじみが不十分であるため、インク内の導電性微粒子によって形成される配線が基板に対して密着せず、配線が剥離するといった問題が生じている。
【0007】
また、特許文献2に記載のパターニング方法の場合、変形させ易い軟らかい基板であれば、金型を押し付ける方法により、溝を形成することができるが、変形させ難い硬い基板であると、金型を押し付ける方法により、溝を形成することが困難である。
そのため、溝を形成せずにインクを基板に付着することになるが、着弾したインクに拡散又は滲みが発生するため、精度良く配線を形成することが困難であるといった問題も生じている。
【0008】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、基板からの剥離を防止するとともに、配置位置の精度の向上を図ることが可能な配線及びそのパターニング方法並びにディスプレイパネル及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、
基板の上面に高密度の配線をパターニングする配線のパターニング方法において、
前記基板の上面に設けられた非金属膜上に、周囲で前記非金属膜が露出するように金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の周辺の非金属膜に撥液処理を施す工程と、
前記金属膜上面に対して導電性微粒子含有液滴又は金属微粒子を付着する工程とを具備することを特徴とする。
ここで、非金属膜としては、感光性樹脂硬化物や窒化シリコン、酸化シリコン等のフッ素と結合しやすい材料が好ましい。
【0010】
請求項2に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、前記撥液処理が、フッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中に前記基板を曝露することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、前記撥液処理が、F2ガス中に前記基板を曝露することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、前記導電性微粒子含有液滴が、液滴吐出法によって前記金属膜上に付着されることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明に係る配線のパターニング方法は、前記金属微粒子が、当該金属微粒子を直接吹き付けることによって付着されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明に係るディスプレイパネルの製造方法は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパターニング方法によってディスプレイパネルにおける表示領域内に配線をパターニングすることを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の発明に係るディスプレイパネルの製造方法は、ピクセルを仕切る隔壁として前記配線を用いることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の発明に係る配線は、請求項1から請求項5の何れか一項に記載のパターニング方法によってパターニングされることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の発明に係るディスプレイパネルは、請求項6又は請求項7に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板の上面には、導電性微粒子含有液滴又は金属微粒子に対して高い密着性を有する金属膜が形成されているので、導電性微粒子含有液滴等が基板に対して密着し難い場合であっても、導電性微粒子含有液滴等からなる配線を容易に形成することが可能となる。そのため、基板に対する配線の密着性が向上されて、配線の剥離が防止されるとともに、基板における所望の位置に対して配線が形成し易くなり、配線のパターニング精度の向上を図ることができる。
また、基板における金属膜の周辺部は、撥液処理が施されているので、金属膜の上面に選択的に導電性微粒子含有液滴等を積層させることが可能となり、より効果的に配線のパターニング精度の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
以下、図1から図15を参照しながら、本発明に係る配線及びそのパターニング方法並びにディスプレイパネル及びその製造方法について説明する。
【0020】
まず始めに、図1(a)から図1(g)を参照しながら、配線のパターニング方法について説明する。
まず、図1(a)に示すように、基板550を準備する。この基板550には、プラスチック基板、ガラス基板等の絶縁基板を用いることができる。ディスプレイパネルがトップエミッション構造の場合、基板550は透明である必要はないが、ボトムエミッション構造の場合、基板550は、有機ELが発光する光の波長域に対して高い透過性が要求される。また、基板550として、画素ごとに一又は複数の薄膜トランジスタが形成されたトランジスタアレイパネルを用いることができる。そして、薄膜トランジスタを覆うように、窒化シリコン、酸化シリコン等の層間絶縁膜555が基板550全面に被膜される。
【0021】
次に、基板550上の層間絶縁膜555の表面にクロム等の薄膜を気相成長法(例えば、スパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着等のPVD法)によって成膜させ、その薄膜をフォトリソグラフィー法及びエッチング法によって形状加工することにより、図1(b)に示すように、薄膜パターン551を層間絶縁膜555の表面に形成させ、次いで錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO)等の透明導電膜を層間絶縁膜555に被膜してから所定の薄膜パターン551上にのみ残すようにパターニングをして透明電極556を形成する。この透明電極556は、トランジスタに接続された画素電極となる。このとき薄膜パターン551は、パネルがトップエミッション構造の場合、有機ELが発光する光の波長域に対して不透明になる厚さ程度に被膜しても差し支えないが、ボトムエミッション構造の場合、有機ELが発光する光の波長域に対して高い透過性を維持できる程度、例えば1nm〜30nm程度の極薄い膜であることが好ましい。その後、図1(c)に示すように、レジスト552が基板550の表面全体に塗布され、塗布されたレジスト552によって薄膜パターン551及び透明電極556が被覆される。
【0022】
さらに、図1(d)に示すように、レジスト552を露光及び現像することにより、レジスト552の一部を除去し、薄膜パターン551と、薄膜パターン551の周辺部の層間絶縁膜555とを露出させる。レジスト552の高さは1μm〜2μm程度あることが望ましい。
【0023】
なお、上述した薄膜パターン551と、薄膜パターン551の周辺部の層間絶縁膜555とを露出させるため、レジスト552がポジ型の場合には、薄膜パターン551及びその周辺部に光を照射し、レジスト552がネガ型の場合には、薄膜パターン551及びその周辺部以外に光を照射させる。ポジ型レジストとしては、ノボラック系(ナガセ煙ケムテック製:NPR3510PG)等がある。
【0024】
露光及び現像処理後、図1(e)に示すように、フッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中に上述した基板550を曝露させることにより、薄膜パターン551の周辺部の層間絶縁膜555の表面と、レジスト552の表面とに撥液処理が施される。このとき、金属である薄膜パターン551の表面及び透明電極556の表面には顕著な撥液性は発現しない。
【0025】
なお、本実施形態におけるフッ素系ガスとしては、四フッ化炭素(CF4)、六フッ化ブタジエン(C4F6)、八フッ化ブチレン(C4F8)、八フッ化シクロペンテン(C5F8)、八フッ化プロパン(C3F8)又は六フッ化エタン(C2F6)を好適に用いることができる。
【0026】
また、本実施形態における撥液処理方法としては、フッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中に基板550を曝露させる方法が用いられているが、特に限定されるものではなく、フッ素(F2)ガス中に基板550を曝露させることにより、基板550における薄膜パターン551の周辺部に撥液処理が施されてもよい。
【0027】
撥液処理後、図1(f)に示すように、インクジェットヘッド560から薄膜パターン551に向けて平均粒径が1nm〜1μm程度の導電性微粒子が分散された金属ナノインク又は金属ナノペーストからなる導電性微粒子含有液滴553を吐出する。ここで、インクジェットヘッド560及び基板550のうちの少なくとも一方を基板550の表面に沿って移動させるとともに、インクジェットヘッド560から導電性微粒子含有液滴553を吐出することで、薄膜パターン551に重畳するよう配線554をパターニングする。このように、基板550の上面には、導電性微粒子含有液滴に対して高い密着性を有する薄膜パターン551がパターニングされているので、導電性微粒子含有液滴が基板550に対して密着しにくい場合であっても、導電性微粒子含有液滴からなる配線554を容易に形成することが可能となっている。そして、薄膜パターン551の周囲で露出されている層間絶縁膜555はフッ素系ガスを用いたプラズマ処理570により表面571が撥液性になっているので、導電性微粒子含有液滴553を弾きやすくなっている。ここで導電性微粒子含有液滴553が層間絶縁膜555と接触することによって生じる表面エネルギーよりも導電性微粒子含有液滴553が薄膜パターン551と接触することによって生じる表面エネルギーの方が低いために、導電性微粒子含有液滴553は薄膜パターン551の表面のみに位置するようになる。
【0028】
なお、本実施形態における導電性微粒子含有液滴としては、銀、銅、アルミ又はこれらを主成分とした合金等の金属微粒子を硬化性液体樹脂等の分散媒に分散させたものが用いられており、特に、銀ナノインク(アルバックマテリアル社製:Ag1−TeH)が好適に用いられる。
【0029】
また、インクジェットヘッド560を用いて導電性微粒子含有液滴553を液滴として吐出する方法に代替して、キャリアガスによるディスペンサーを用いて導電性微粒子含有液滴553、或いは、直接金属微粒子を吹き付けて付着することにより、配線554をパターニングする方法であってもよい。また導電性微粒子含有液滴553が、バインダ樹脂等によって粘性のあるペーストの場合、スクリーン印刷でパターニングしてもよい。
【0030】
最終的には、図1(g)に示すように、基板550の上面に形成された配線554を固化させることにより、一連の配線のパターニング作業が完了する。
【0031】
なお、導電性微粒子含有液滴の分散媒が光硬化性樹脂の場合には、紫外線を配線554に照射することによって配線554を固化させることができる。一方、導電性微粒子含有液滴の分散媒が熱硬化性樹脂の場合には、配線554を加熱することによって配線554を固化させることができる。この後、透明電極556上に、有機EL層材料を含む溶液または分散液を付着する。このとき、有機EL層材料を含む溶液又は分散液の液面の高さは配線554の高さより低いので、配線554を越えて隣の透明電極551に浸入することはない。
【0032】
また、透明電極556の周囲の表面571及び配線554の周囲の表面571は撥液性になっているので、有機EL層材料を含む溶液又は分散液は、より安定な透明電極556上に集合し易くなる。このとき、有機EL層材料を含む溶液又は分散液が十分な量であれば透明電極556上のみならず透明電極556の周囲にも付着されることになる。したがって、有機EL層材料を含む溶液又は分散液は透明電極556上で乾燥して有機EL層557となる。次いで、複数の有機EL層557に跨るように、対向電極558を設けることによりディスプレイパネルを製造することができる。薄膜パターン551を電極として用いることができる場合、透明電極556は必ずしも必要ない。トップエミッションの場合、透明電極556の下で反射板として機能する薄膜パターン551を、配線554の下地となる薄膜パターン551とともに一括して製造できる。
【0033】
次に、図2を参照しながら、ディスプレイパネルの平面構成について説明する。
本実施形態におけるディスプレイパネル1は、図2に示すように、画素がマトリクス状に配置されている。これらの画素は、略長方形状の1ドットの赤サブピクセルPと、1ドットの緑サブピクセルPと、1ドットの青サブピクセルPとから構成されており、各サブピクセルPは、画素3において、互いの長手方向(以下、垂直方向)が平行となるように、かつ、長手方向と直交する方向(以下、水平方向)に赤サブピクセルP、緑サブピクセルP、青サブピクセルPの順となるように配列されている。
【0034】
このディスプレイパネル1においては、サブピクセルPに各種の信号を出力するために、複数の走査線X、信号線Y及び供給線Zが設けられている。走査線X及び供給線Zは水平方向に延在し、信号線Yは垂直方向に延在している。ここで、mドットのサブピクセルPが水平方向に配列されている場合(但し、mは3の倍数)、m本の信号線Yが互いに平行となるように設けられ、nドットのサブピクセルPが垂直方向に配列されている場合(但し、nは2以上の整数)、n本の走査線X及びn本の供給線Zが互いに平行となるように設けられている。また、走査線Xと、供給線Zとは、水平方向に沿って交互に配列されている。
【0035】
次に、図3を参照しながら、サブピクセルPの回路構成について説明する。
何れのサブピクセルPも同様に構成されており、1ドットのサブピクセルPには、図3に示すように、有機EL素子20と、いずれもNチャネル型アモルファスシリコン薄膜トランジスタであるスイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23と、キャパシタ24とが具備されている。
【0036】
有機EL素子20は、画素電極としてサブピクセル電極20aと、有機EL層20b(図4に図示)と、対向電極20cとを有しており、このうち対向電極20cは、金属隔壁Wに導通されている。
【0037】
スイッチトランジスタ21は、ソース21sと、ドレイン21dと、ゲート21gとを有する。このうち、ソース21sは、信号線Yと導通され、ドレイン21dは、有機EL素子20のサブピクセル電極20aと、駆動トランジスタ23のソース23sと、キャパシタ24の電極24bとに導通され、ゲート21gは、保持トランジスタ22のゲート22gと、走査線Xと導通されている。
【0038】
保持トランジスタ22は、ソース22sと、ドレイン22dと、ゲート22gとを有する。このうち、ソース22sは、駆動トランジスタ23のゲート23gと、キャパシタ24の電極24Aと導通され、ドレイン22dは、駆動トランジスタ23のドレイン23dと、供給線Zと導通され、ゲート22gは、スイッチトランジスタ21のゲート21gと、走査線Xとに導通されている。なお、保持トランジスタ22のドレイン22dは、駆動トランジスタ23のドレイン23dと導通せずに走査線Xに接続されていてもよい。
【0039】
駆動トランジスタ23は、ソース23sと、ドレイン23dと、ゲート23gとを有する。このうち、ソース23sは、有機EL素子20のサブピクセル電極20aと、スイッチトランジスタ21のドレイン21dと、キャパシタ24の電極24bとに導通され、ドレイン23dは、保持トランジスタ22のドレイン22dと、供給線Zとに導通され、ゲート23gは、保持トランジスタ22のソース22sと、キャパシタ24の電極24aとに導通されている。
【0040】
なお、図3におけるスイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23のソースとドレインとの関係は、逆であってもよい。
【0041】
次に、図4を参照しながら、ディスプレイパネル1の層構造について説明する。
本実施形態におけるディスプレイパネル1には、図4に示すように、絶縁基板2が具備されており、この絶縁基板2の上面には、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23が設けられている。
また、これらスイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23は、共通のトランジスタ保護絶縁膜32によって被覆されている。
【0042】
上述したスイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23は、いずれも逆スタガ構造の薄膜トランジスタであり、このうちスイッチトランジスタ21は、絶縁基板2の上面に形成されたゲート21gと、ゲート21gの上部に形成されたゲート絶縁膜31と、ゲート絶縁膜31を挟んでゲート21gに対向した半導体膜21cと、半導体膜21cの中央部上に形成されたチャネル保護膜21pと、半導体膜21cの両端部上において互いに離間するよう形成され、チャネル保護膜21pに一部重なった不純物半導体膜21a,21bと、不純物半導体膜21aの上部に形成されたドレイン21dと、不純物半導体膜21bの上部に形成されたソース21sとを有している。
【0043】
また、駆動トランジスタ23は、絶縁基板2の上面に形成されたゲート23gと、ゲート23gの上部に形成されたゲート絶縁膜31と、ゲート絶縁膜31を挟んでゲート23gに対向した半導体膜23cと、半導体膜23cの中央部上に形成されたチャネル保護膜23pと、半導体膜23cの両端部上において互いに離間するよう形成され、チャネル保護膜23pに一部重なった不純物半導体膜23a,23bと、不純物半導体膜23aの上に形成されたドレイン23dと、不純物半導体膜23bの上に形成されたソース23sとから構成されている。
さらに、図示しない保持トランジスタ22も、上述したスイッチトランジスタ21及び駆動トランジスタ23と同様に構成されている。
【0044】
上述したスイッチトランジスタ21のゲート21g、保持トランジスタ22のゲート22g、駆動トランジスタ23のゲート23g及びキャパシタ24の電極24aは、例えば、スパッタリング法、PVD法及びCVD法等の気相成長法によって絶縁基板2上に成膜された導電性のゲートレイヤー(例えば、AlとTiからなる膜)を、フォトリソグラフィー法と、エッチング法とを用いてパターニングすることによって形成されたものである。また、走査線X及び供給線Zは、ゲートレイヤーのパターニングにより、ゲート21g,22g,23gと同時に形成されたものであって、ゲート21g,22g,23g及び電極24aと共通のゲート絶縁膜31によって被覆されている。
【0045】
一方、上述したスイッチトランジスタ21のドレイン21d及びソース21s、保持トランジスタ22のドレイン22d及びソース22s、駆動トランジスタ23のドレイン23d及びソース23s並びにキャパシタ24の電極24bは、気相成長法によってゲート絶縁膜31の上面に成膜された導電性のドレインレイヤー(例えば、Cr膜にAlとTiからなる膜を積層したもの)を、フォトリソグラフィー法と、エッチング法とを用いてパターニングすることによって形成されたものである。また、信号線Yは、ドレインレイヤーのパターニングによって各ソース21s,22s,23s及びドレイン21d,22d,23dと同時に形成されたものであって、ソース21s,22s,23s、電極24b及びドレイン21d,22d,23dと共通のトランジスタ保護絶縁膜32によって被覆されている。
【0046】
トランジスタ保護絶縁膜32の上面には、ポリイミド等の感光性樹脂を硬化させた平坦化膜33が積層されており、平坦化膜33の表面が平坦となることにより、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22、駆動トランジスタ23、走査線X、信号線Y及び供給線Zによる凹凸が解消されるようになっている。
また、各サブピクセルPにおける平坦化膜33及びトランジスタ保護絶縁膜32には、コンタクトホール91が穿設されている。このコンタクトホール91には、導電性パッド92が埋設されており、導電性パッド92により、サブピクセル電極20aと、駆動トランジスタ23のソース23sとが接続されている。
ここで、本実施形態における絶縁基板2から平坦化膜33までの積層構造を、トランジスタアレイパネル50という。
【0047】
また、上述した平坦化膜33の上面には、有機EL素子20のアノードであるサブピクセル電極20aがマトリクス状に配列されている。図2において、矩形状のサブピクセルPの位置は、サブピクセル電極20a(図4等に図示)の位置を表したものである。すなわち、隣接する信号線Yの間には、サブピクセル電極20aが垂直方向に一列に配列され、走査線Xと、その下隣りの供給線Zとの間には、サブピクセル電極20aが水平方向に一列に配列されるようになっている。これらサブピクセル電極20aは、ディスプレイパネル1がボトムエミッション構造であった場合、気相成長法によって平坦化膜33の上面に成膜された透明導電性膜(例えば、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム、酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)又はカドミウム−錫酸化物(CTO))をフォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いてパターニングすることによって形成されたものであってもよく、トップエミッション構造であった場合、光反射性金属膜上に上述の透明導電性膜を積層した構造であってもよい。光反射性金属膜及び透明導電性膜の積層構造の場合、透明導電性膜をエッチングするエッチャントによって電池反応を引き起こして光反射性金属膜が浸食されてしまう恐れがあるので、図1(b)の透明電極556及び薄膜パターン551のように、光反射性金属膜の側壁まで透明導電性膜で覆われていることが好ましい。
【0048】
さらに、平坦化膜33の上面には、窒化シリコン(SiN)又は酸化シリコン(SiO2)からなる絶縁膜34が形成されている。この絶縁膜34の一部は、サブピクセル電極20aの外縁部の一部と重畳しており、平面視して、サブピクセル電極20aが絶縁膜34によって囲繞されるようになっている。
【0049】
さらに、平坦化膜33の上面には、例えば、クロムからなる薄膜パターン35が形成されている。この薄膜パターン35には、銅、銀、アルミ又はそれらを主成分とした合金からなる金属隔壁Wが積層されている。これら薄膜パターン35及び金属隔壁Wは、図2に示すように、垂直方向のサブピクセル電極20aの列と、隣接するサブピクセル電極20aの列との間において垂直方向に延在しており、平面視して、信号線Yと重畳するようになっている。
上述した金属隔壁Wは、導電性微粒子含有液滴を硬化させたものであり、トランジスタ21,22,23の各電極、走査線X、信号線Y及び供給線Zよりも厚さ寸法が大きく、補助的な配線として機能するようになっている。また、金属隔壁Wは、サブピクセルPが配列されている領域の外側において、互いに接続されている。
【0050】
なお、図4における金属隔壁Wの幅寸法は、信号線Yと金属隔壁Wとを区別し易くするために、信号線Yの幅寸法よりも小さくなっているが、実際には、信号線Yと略同一の幅寸法となっている。
【0051】
金属隔壁Wの表面には、撥液性を有した撥液性導電膜36が成膜されている。撥液性導電膜36は、下記化学式(1)に示すトリアジルトリチオールのメルカプト基(−SH)の水素原子(H)が還元離脱し、硫黄原子(S)が金属隔壁Wの表面に酸化吸着したものである。
【0052】
【化1】
【0053】
なお、本実施形態において、ある液体に対する接触角が50°以上である状態を撥液性とし、ある液体に対する接触角が40°以下である状態を親液性とする。
【0054】
撥液性導電膜36は厚さがトリアジルトリチオールの単分子の厚さに近似している極薄い層である。つまり、撥液性導電膜36は、トリアジルトリチオール分子が金属隔壁Wの表面に規則正しく並んだ分子層からなる極薄い膜であるから、非常に低抵抗であって導電性を有する。なお、撥液性を顕著にするためにトリアジルトリチオールに代えて、下記化学式(2)に示すようにトリアジルトリチオールの1つ乃至2つのメルカプト基がフッ化アルキル基に置換されたトリアジルチオール化合物でもよい。フッ化アルキル基は、下記化学式(2)に示したもの以外でも良い。なお、下記化学式(2)の化合物は分子量423.08のフッ素系トリアジンチオール誘導体であり、メルカプト基(−SH)の水素原子(H)が還元離脱し、硫黄原子(S)が金属隔壁Wの表面に酸化吸着することで、撥液性導電膜36が形成される。
【0055】
【化2】
【0056】
サブピクセル電極20aの上面には、電荷輸送性の層や発光層を含む有機EL層20bが積層されている。この有機EL層20bは、有機化合物含有層を二層以上積層したものである。ここで、有機EL層20bは、サブピクセル電極20aから正孔輸送層20d、発光層20eと順次積層された二層構造を有し、正孔輸送層は、導電性高分子であるPEDOT(Poly(3,4-Ethylene Dioxy Thiophene))及びドーパントであるPSS(Poly Styrene Sulfonate)からなり、発光層は、ポリフルオレン系発光材料からなる。
【0057】
なお、有機EL層20bは、サブピクセル電極20aから順に正孔輸送層、発光層、電子輸送層となる三層構造であってもよいし、サブピクセル電極20aから順に発光層、電子輸送層となる二層構造であってもよいし、発光層からなる単層構造であってもよい。
【0058】
また、これらの層構造において適切な層間に、別途に電子輸送層電子、正孔輸送層又はその他の電荷輸送制御層が介在した多層構造であってもよい。
【0059】
上述した有機EL層20bは、撥液性導電膜36の形成後に、例えば、インクジェット法等の湿式塗布法によって成膜されるようになっている。この場合、PEDOT及びPSSを含有する有機化合物含有液を、サブピクセル電極20aに塗布させることで正孔輸送層20dを成膜させた後、この正孔輸送層20dの上面に、ポリフルオレン系発光材料を含有する有機化合物含有液を塗布することで発光層20eが成膜されるようになっているが、厚膜の金属隔壁Wが設けられているとともに、金属隔壁Wの表面に撥液性導電膜36が形成されているため、隣接するサブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液が金属隔壁Wを越えて混合することを防止することができる。
【0060】
なお、サブピクセルPが赤の場合には、有機EL層20b、特に、発光層20eが赤色に発光し、サブピクセルPが緑の場合には、有機EL層20bが緑色に発光し、サブピクセルPが青の場合には有機EL層20bが青色に発光するようになっている。
【0061】
また、有機EL層20bの上面には、有機EL素子20のカソードである対向電極20cが成膜されている。この対向電極20cは、全てのサブピクセルPに共通して形成された共通電極であって、ベタ一面に成膜されており、撥液性導電膜36を挟んで金属隔壁Wを被覆している。
【0062】
上述した対向電極20cは、サブピクセル電極20aよりも仕事関数の低い材料で形成されており、例えば、インジウム、マグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、希土類金属の少なくとも一種を含む単体又は合金で形成されている。
【0063】
なお、対向電極20cは、上記各種材料の層が積層された積層構造となっていてもよいし、以上の各種材料の層に加えて金属層が堆積した積層構造となっていてもよい。具体的には、有機EL層20b側に設けられた低仕事関数の高純度のバリウム層と、バリウム層を被覆するように設けられたアルミニウム層とからなる積層構造や、有機EL層20b側に設けられたリチウム層と、バリウム層を被覆するように設けられたアルミニウム層とからなる積層構造が挙げられる。
ここで、本実施形態においては、サブピクセル電極20a、有機EL層20b、対向電極20cの順に積層されたものを有機EL素子20とする。
【0064】
次に、図5から図9を参照しながら、金属隔壁Wの幅寸法、断面積及び抵抗率について定義する。
以下においては、ディスプレイパネル1の画素数をWXGA(768×1366)としたときの上述した金属隔壁Wの望ましい幅寸法及び断面積を定義する。
【0065】
図5において、縦軸は1つの駆動トランジスタ23のソース23s−ドレイン23d間を流れる書込電流の電流値又は1つの有機EL素子20のアノード−カソード間を流れる駆動電流の電流値であり、横軸は1つの駆動トランジスタ23のソース23s−ドレイン23d間の電圧(同時に1つの駆動トランジスタ23のゲート23g−ドレイン23d間の電圧)である。図中、実線Ids maxは、最高輝度階調(最も明るい表示)のときの書込電流及び駆動電流であり、一点鎖線Ids midは、最高輝度階調と最低輝度階調との間の中間輝度階調のときの書込電流及び駆動電流であり、二点鎖線Vpoは駆動トランジスタ23の不飽和領域(線形領域)と飽和領域との閾値つまりピンチオフ電圧であり、三点鎖線Vdsは駆動トランジスタ23のソース23s−ドレイン23d間を流れる書込電流であり、破線Ielは有機EL素子20のアノード−カソード間を流れる駆動電流である。
【0066】
ここで電圧VP1は、最高輝度階調時の駆動トランジスタ23のピンチオフ電圧であり、電圧VP2は、駆動トランジスタ23が最高輝度階調の書込電流が流れるときのソース−ドレイン間電圧であり、電圧VELmax(電圧VP4−電圧VP3)は有機EL素子20が最高輝度階調の書込電流と電流値が等しい最高輝度階調の駆動電流で発光するときのアノード−カソード間の電圧である。電圧VP2´は、駆動トランジスタ23が中間輝度階調の書込電流が流れるときのソース−ドレイン間電圧であり、電圧(電圧VP4´−電圧VP3´)は有機EL素子20が中間輝度階調の書込電流と電流値が等しい中間輝度階調の駆動電流で発光するときのアノード−カソード間電圧である。
【0067】
駆動トランジスタ23及び有機EL素子20はいずれも飽和領域で駆動させるために、(供給線Zの発光期間時の電圧VH)から(金属隔壁Wの発光期間時の電圧Vcom)を減じた値VXは下記式(1)を満たす。
【0068】
VX=Vpo+Vth+Vm+VEL ……(1)
ここで、Vth(最高輝度時の場合VP2−VP1に等しい)は、駆動トランジスタ23の閾値電圧、VEL(最高輝度時の場合VELmaxに等しい)は、有機EL素子20のアノード−カソード間電圧、Vmは、階調に応じて変位する許容電圧である。
【0069】
図5から明らかなように、電圧VXのうち、輝度階調が高くなる程、トランジスタ23のソース−ドレイン間に要する電圧(Vpo+Vth)が高くなるとともに有機EL素子20のアノード−カソード間に要する電圧VELが高くなる。したがって、輝度階調が高くなる程、許容電圧Vmは低くなり、最小許容電圧VmminはVP3−VP2となる。
【0070】
有機EL素子20は、低分子EL材料及び高分子EL材料にかかわらず一般的に経時劣化し、高抵抗化する。10000時間後のアノード−カソード間電圧は初期時の1.4倍程度になることが確認されている。つまり、電圧VELは、同じ輝度階調時でも時間が経つ程高くなる。このため、駆動初期時の許容電圧Vmが高い程長期間にわたって動作が安定するので、電圧VELが8V以上、より望ましくは13V以上となるように電圧VXを設定している。
【0071】
この許容電圧Vmには、有機EL素子20の高抵抗化ばかりでなく、さらに、供給線Zによる電圧降下の分も含まれる。
【0072】
供給線Zの配線抵抗の影響により、電圧降下が大きいとディスプレイパネル1の消費電力が著しく増大してしまう。このため、供給線Zの電圧降下は、1V以下に設定することが特に好ましい。
【0073】
行方向の一つのサブピクセルPの長さである画素幅Wpと、行方向の画素数(1366)とを考慮した結果、ディスプレイパネル1のパネルサイズが32インチ、40インチの場合、供給線Zの全長はそれぞれ706.7mm、895.2mmとなる。ここで、金属隔壁Wの線幅WLが広くなると、構造上有機EL層20bの面積が小さくなり、さらに他の配線との重なり寄生容量を発生してさらなる電圧降下をもたらすため、金属隔壁Wの線幅WLは画素幅Wpの5分の1以下に抑えることが望ましい。このようなことを考慮すると、ディスプレイパネル1のパネルサイズが32インチ、40インチの場合、線幅WLはそれぞれ34μm以内、44μm以内となる。また、金属隔壁Wの最大膜厚Hmaxはアスペクト比を考慮すると、トランジスタ21〜23の最小加工寸法4μmの1.5倍、つまり6μmとなる。したがって、金属隔壁Wの最大断面積Smaxは32インチ、40インチで、それぞれ204μm2、264μm2となる。
【0074】
このような32インチのディスプレイパネル1について、最大電流が流れるように全点灯したときの金属隔壁W最大電圧降下を1V以下にするためには、図6に示すように、金属隔壁Wの配線抵抗率ρ/断面積Sは4.7Ω/cm以下に設定される必要がある。また、図7には、32インチのディスプレイパネル1の金属隔壁Wの断面積と電流密度の相関関係を示す。なお、上述した金属隔壁Wの最大断面積Smax時に許容される抵抗率は、32インチで9.6μΩcm、40インチで6.4μΩcmとなる。
【0075】
そして、40インチのディスプレイパネル1について、最大電流が流れるように全点灯したときの金属隔壁Wの最大電圧降下を1V以下にするためには、図8に示すように、金属隔壁Wの配線抵抗率ρ/断面積Sは2.4Ω/cm以下に設定される必要がある。図9には、40インチのディスプレイパネル1の金属隔壁Wの断面積と電流密度の相関関係を表す。
【0076】
金属隔壁Wの故障により動作しなくなる故障寿命MTFは、下記式(2)を満たす。
【0077】
MTF=A exp(Ea/KbT)/ρJ2 ……(2)
ここで、Eaは活性化エネルギー、KbT=8.617×10―5eV、ρは金属隔壁Wの抵抗率、Jは電流密度である。
【0078】
金属隔壁Wの故障寿命MTFは、抵抗率の増大やエレクトロマイグレーションに律速する。金属隔壁WをAl系(Al単体或いはAlTiやAlNd等の合金)に設定し、MTFが10000時間、85℃の動作温度で試算すると、電流密度Jは2.1×104A/cm2以下にする必要がある。これと同様に、金属隔壁WをCuに設定すると、2.8×106A/cm2以下にする必要がある。なお、Al合金内のAl以外の材料は、Alよりも低い抵抗率であることを前提としている。
これらのことを考慮して、32インチのディスプレイパネル1では、全点灯状態で10000時間に金属隔壁Wが故障しないようなAl系の金属隔壁Wの断面積Sは、図6に示すように、57μm2以上必要になり、同様にCuの金属隔壁Wの断面積Sは、図7に示すように、0.43μm2以上必要になる。
【0079】
そして、40インチのディスプレイパネル1では、全点灯状態で10000時間に金属隔壁Wが故障しないようなAl系の金属隔壁Wの断面積Sは、図8に示すように、92μm2以上必要となる。同様に、Cuの金属隔壁Wの断面積Sは、図9に示すように、0.69μm2以上必要になる。
【0080】
Al系の金属隔壁Wでは、Al系の抵抗率が4.00μΩcmとすると、32インチのディスプレイパネル1では上述のように配線抵抗率ρ/断面積Sが4.7Ω/cm以下なので、最小断面積Sminは85.1μm2となる。このとき、上述したように、金属隔壁Wの配線幅WLが34μm以内となるため、金属隔壁Wの最小膜厚Hminは2.50μmとなる。
【0081】
また、Al系の金属隔壁Wの40インチのディスプレイパネル1では、上述したように配線抵抗率ρ/断面積Sが2.4Ω/cm以下となるため、最小断面積Sminは167μm2となる。このとき上述のように金属隔壁Wの配線幅WLが44μm以内であるため、金属隔壁Wの最小膜厚Hminは3.80μmとなる。
【0082】
一方、Cuの金属隔壁Wでは、Cuの抵抗率が2.10μΩcmとすると、32インチのディスプレイパネル1では、上述のように配線抵抗率ρ/断面積Sが4.7Ω/cm以下となるため、最小断面積Sminは44.7μm2となる。このとき、上述したように、金属隔壁Wの配線幅WLが34μm以内となるため、金属隔壁Wの最小膜厚Hminは1.31μmとなる。
【0083】
また、Cuの金属隔壁Wの40インチのディスプレイパネル1では、上述したように配線抵抗率ρ/断面積Sが2.4Ω/cm以下となるため、最小断面積Sminは87.5μm2となる。このとき、上述したように、金属隔壁Wの配線幅WLは44μm以内となるため、金属隔壁Wの最小膜厚Hminは1.99μmとなる。
【0084】
以上より、ディスプレイパネル1を正常かつ消費電力を低く動作させるには、金属隔壁Wでの電圧降下を1V以下に設定することが好ましく、このような条件に設定するためには、金属隔壁WがAl系の32インチのパネルでは、厚さ寸法Hが2.50μm〜6μm、幅寸法WLが14.1μm〜34.0μm、抵抗率が4.0μΩcm〜9.6μΩcmとなり、金属隔壁WがAl系の40インチのパネルでは、金属隔壁WがAl系の場合、厚さ寸法Hが3.80μm〜6μm、幅寸法WLが27.8μm〜44.0μm、抵抗率が4.0μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
【0085】
総じてAl系の金属隔壁Wの場合、厚さ寸法Hが2.50μm〜6μm、幅寸法WLが14.1μm〜44μm、抵抗率が4.0μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
同様に、金属隔壁WがCuの32インチのパネルでは、厚さ寸法Hが1.31μm〜6μm、幅寸法WLが7.45μm〜34μm、抵抗率が2.1μΩcm〜9.6μΩcmとなり、金属隔壁WがCuの40インチのパネルでは、金属隔壁WがCu系の場合、厚さ寸法Hが1.99μm〜6μm、幅寸法WLが14.6μm〜44.0μm、抵抗率が2.1μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
【0086】
総じてCuの金属隔壁Wの場合、厚さ寸法Hが1.31μm〜6μm、幅寸法WLが7.45μm〜44μm、抵抗率が2.1μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
したがって、金属隔壁WとしてAl系材料又はCuを適用した場合、ディスプレイパネル1の金属隔壁Wは、厚さ寸法Hが1.31μm〜6μm、幅寸法WLが7.45μm〜44μm、抵抗率が2.1μΩcm〜9.6μΩcmとなる。
【0087】
次に、図10から図15を参照しながら、ディスプレイパネルの製造方法について説明する。
まず始めに、気相成長法、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を適宜何回か行うことによって、トランジスタアレイパネル50が成形される。このトランジスタアレイパネル50における各サブピクセルPに、コンタクトホール91を形成した後、形成されたコンタクトホール91に電解メッキ等によって導電性パッド92を埋設して、気相成長法、フォトリソグラフィー法、エッチング法を順次行うことにより、図10に示すようなサブピクセル電極20aがパターニングされる。その後、図11に示すように、気相成長法により、サブピクセル電極20aを含むトランジスタアレイパネル50の上面に、ベタ一面の絶縁膜34が成膜される。
【0088】
次に、図12に示すように、フォトリソグラフィー法及びエッチング法により、ベタ一面に成膜された絶縁膜34は、信号線Yの上方の一部を除いて除去され、平坦化膜33の一部と、サブピクセル電極20aの大部分とが露出された後、図13に示すように、平坦化膜33における露出部分の一部に、薄膜パターン35が成膜される。なお、薄膜パターン35は、図10の段階で、サブピクセル電極20aの一部又は全てを構成する導電膜となる材料を一括してパターニングすることによってサブピクセル電極20aの一部又は全てとともに形成されてもよい。この後、四フッ化メチル等のフッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中にトランジスタアレイパネル50を曝露させて、露出した平坦化膜33及び絶縁膜34の表面を撥液性にする。
これに対し、サブピクセル電極20a及び薄膜パターン35は、金属を含有しているためフッ素又はフッ化物との結合性が乏しいため、強い撥液性を示すことはない。
【0089】
さらに、図14に示すように、インクジェットヘッド又はディスペンサーを用いて、金、銀、銅、アルミ、これらを主成分とした合金の少なくともいずれかを含む金属微粒子を硬化性液体樹脂等の分散媒に分散させた導電性微粒子含有液滴を薄膜パターン35の上面をねらって付着する。このとき、薄膜パターン35の周辺の平坦化膜33は撥液性を示しているので導電性微粒子含有液滴を弾きやすくなるため導電性微粒子含有液滴が薄膜パターン35上に選択的に付着することになる。その後、導電性微粒子含有液滴を加熱して分散媒を蒸発後、焼結して微粒子同士を溶融して一塊となった金属隔壁Wが積層される。
なお、導電性微粒子含有液滴を付着する代わりに、少なくとも一部が溶融状態の金属微粒子をキャリアガスによって吹き付けて付着することにより、金属隔壁Wをパターニングしてもよい。
【0090】
金属隔壁Wの積層後、紫外線/オゾン洗浄法により、トランジスタアレイパネル50を洗浄し、トランジスタアレイパネル50の表面全体に、下記化学式(1)又は下記化学式(2)に示すトリアジン誘導体の水溶液を塗布させる、またはトランジスタアレイパネル50をトリアジン誘導体水溶液に浸漬させることで、金属隔壁Wに表面処理が施される。この際、トリアジン誘導体の性質に起因して、金属隔壁Wの表面で選択的に還元脱離反応が引き起こり、図15に示すように、金属隔壁Wの表面に選択的に撥液性導電膜36が形成されるが、サブピクセル電極20aのような表面が導電性酸化物の上や平坦化膜33の表面上には、撥液性導電膜36が撥液性を示す程度に形成されないようになっている。
【0091】
【化3】
【0092】
【化4】
【0093】
ここで、上記化学式(2)に示すフッ素系トリアジンチオール誘導体は、水に不溶であるが、同モル量のNaOH又はKOHと一緒であれば水に溶解し、フッ素系トリアジンチオール誘導体水溶液を調製することができる。この際、水溶液の濃度は、1×10-4〜1×10-2mol/Lの範囲内とする。
なお、フッ素系トリアジンチオール誘導体水溶液を用いる場合には、水溶液の温度を20〜30℃とし、浸漬時間を1〜30分とすることが好ましい。
【0094】
その後、トリアジン誘導体水溶液にトランジスタアレイパネル50を浸漬させた後、そのトランジスタアレイパネル50を取り出し、アルコールによってトランジスタアレイパネル50が洗浄されることにより、余剰のトリアジン誘導体が除去される。
【0095】
さらに、トランジスタアレイパネル50を水によって再び洗浄し、例えば、窒素ガス(N2)等の不活性ガスをトランジスタアレイパネル50に吹き付けることにより、トランジスタアレイパネル50を乾燥させる。
【0096】
次に、絶縁膜34に対してフォトリソグラフィー法、エッチング法を順次行うことによって、絶縁膜34を網目状にパターニングすることにより、サブピクセル電極20aが露出される。
【0097】
次に、正孔注入材料として、例えば、PEDOT及びPSSを水に分散させた有機化合物含有液を、サブピクセル電極20aに塗布させ、正孔輸送層20dを形成させる。この際、塗布方法としては、インクジェット法等の液滴吐出法や、その他の印刷方法を用いてもよいし、ディップコート法や、スピンコート法等のコーティング法を用いてもよいが、サブピクセル電極20aごとに独立して正孔輸送層20dを成膜するために、インクジェット法等の印刷方法が好適に用いられる。
【0098】
正孔輸送層20dが形成された後、ホットプレートを用いてトランジスタアレイパネル50を160〜180℃の温度で熱処理を施す。そして、赤、緑、青の、ポリフェニレン系発光材料やポリフルオレン系発光材料等の発光材料をそれぞれ有機溶剤(例えば、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン)に溶解させ、赤、緑、青それぞれの有機化合物含有液を準備する。そして、赤のサブピクセルPの正孔輸送層20d上には赤の有機化合物含有液を塗布させ、緑のサブピクセルPの正孔輸送層20d上には緑の有機化合物含有液を塗布させ、青のサブピクセルPの正孔輸送層20d上には青の有機化合物含有液を塗布させる。その後、インクジェット法(液滴吐出法)、その他の印刷方法を用いて、各色における正孔輸送層20dの上面に発光層20eを成膜させる。
【0099】
なお、発光層20eを形成する前に、インクジェット法等の湿式塗布法により、インタレイヤ層を正孔輸送層20dの上面に積層させ、さらにインタレイヤ層の上面に発光層20eを積層させてもよい。
【0100】
次に、例えば、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下において、ホットプレートを用いてトランジスタアレイパネル50を乾燥させ、残留溶媒を除去させる。
なお、真空中において、シーズンヒータを用いて乾燥させてもよい。
【0101】
乾燥後、気相成長法により、発光層20eの上面に対向電極20cをベタ一面に成膜させる。具体的には、真空蒸着法により、Ca、Ba、Li、Mg、等の仕事関数が4.0eV以下の導電性薄膜をベタ一面に成膜させ、この薄膜の上に、薄膜よりもシート抵抗の低い厚さに堆積されたAl、ITO等の高仕事関数の導電性膜をベタ一面に成膜させる。
最後に、例えば、メタルキャップや、ガラス基板等の封止基板に紫外線硬化性又は熱硬化性の接着剤を塗布させ、その接着剤によって封止基板と対向電極20cとを接着させることにより、図4に示すように、ディスプレイパネル1が完成する。
【0102】
このとき、平坦化膜33の上面には、金属ナノペースに対して高い密着性を有する薄膜パターン35がパターニングされているので、導電性微粒子含有液滴が平坦化膜33に対して密着し難い場合であっても、導電性微粒子含有液滴による金属隔壁Wを平坦化膜33の上面に容易に形成することができる。
【0103】
また、平坦化膜33の露出部であって、薄膜パターン35の周辺部は、フッ素系ガス雰囲気下で発生させたプラズマ中への曝露による撥液処理が施されているので、インクジェットヘッドから吐出された導電性微粒子含有液滴が薄膜パターン35の上面から外れて着弾した場合であっても、導電性微粒子含有液滴が薄膜パターン35の周辺部から薄膜パターン35の上面に移動するので、薄膜パターン35の上面にのみ導電性微粒子含有液滴を積層させることができる。
【0104】
さらに、上述したような湿式塗布法によって正孔輸送層20dを形成させる場合、厚膜の金属隔壁Wが設けられているとともに、この金属隔壁Wの表面に撥液性を有する撥液性導電膜36が被覆されているので、隣接するサブピクセル電極20aに塗布される有機化合物含有液が金属隔壁Wを越えて混ざり合うことを防止することで、サブピクセル電極20aごとに独立した正孔輸送層20dを形成させることができる。
また、サブピクセル電極20aに塗布された有機化合物含有液がサブピクセル電極20aの上面の外縁部において肉厚となることを防止することで、正孔輸送層20dを均一な膜厚で形成させることができる。
【0105】
さらに、上述したような湿式塗布法によって発光層20eを形成させる場合、厚膜の金属隔壁Wが設けられているとともに、この金属隔壁Wの表面に撥液性を有する撥液性導電膜36がコーティングされているので、隣接するサブピクセルPに塗布された有機化合物含有液が金属隔壁Wを越えて混ざり合うことを防止することで、サブピクセルPごとに独立した発光層20eを形成させることができる。
【0106】
以上より、本実施形態における配線及びそのパターニング方法並びにディスプレイパネル及びその製造方法によれば、絶縁基板2の上面には、導電性微粒子含有液滴に対して高い密着性を有する薄膜パターン35が形成されているので、導電性微粒子含有液滴が絶縁基板2に対して密着し難い場合であっても、導電性微粒子含有液滴からなる金属隔壁Wを容易に形成することが可能となる。そのため、絶縁基板2に対する金属隔壁Wの密着性が向上されて、金属隔壁Wの剥離が防止されるとともに、絶縁基板2における所望の位置に対して金属隔壁Wが形成し易くなり、配線である金属隔壁Wのパターニング精度の向上を図ることができる。
【0107】
また、絶縁基板2における薄膜パターン35の周辺部は、撥液処理が施されているので、インクジェットヘッドから吐出された導電性微粒子含有液滴が薄膜パターン35の上面から外れて着弾した場合であっても、撥液処理が施された薄膜パターン35の周辺部に導電性微粒子含有液滴が付着することを防止することで、薄膜パターン35の上面にのみ導電性微粒子含有液滴を積層させることが可能となり、より効果的に金属隔壁Wのパターニング精度の向上を図ることができる。
【0108】
なお、上述した本実施形態においては、スイッチトランジスタ21、保持トランジスタ22及び駆動トランジスタ23は、アモルファスシリコンTFTに限らず、ポリシリコンTFTでもよいし、全てNチャネルでなくても一部又は全てPチャネルでもよい。
【0109】
また、本実施形態においては、サブピクセル電極20aをアノードとし、対向電極20cをカソードとしたが、サブピクセル電極20aをカソードとし、対向電極20cをアノードとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】配線のパターニング工程における一連の工程を示す縦断面図である。
【図2】ディスプレイパネルの構造の概略を示す平面図である。
【図3】サブピクセルの等価回路図である。
【図4】図2における面IV−IVを示す縦断面図である。
【図5】サブピクセルにおける駆動トランジスタ及び有機EL素子の電流−電圧特性を示すグラフである。
【図6】32インチのディスプレイパネルにおける金属隔壁の最大電圧降下と、配線抵抗率ρ/断面積Sとの相関を示すグラフである。
【図7】32インチのディスプレイパネルにおける金属隔壁の断面積と、電流密度との相関を示すグラフである。
【図8】40インチのディスプレイパネルにおける金属隔壁の最大電圧降下と、配線抵抗率ρ/断面積Sとの相関を示すグラフである。
【図9】40インチのディスプレイパネルにおける金属隔壁の断面積と、電流密度との相関を示すグラフである。
【図10】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図11】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図12】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図13】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図14】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【図15】ディスプレイパネルの製造工程における絶縁基板の態様を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1 ディスプレイパネル
2 絶縁基板
33 平坦化膜
34 絶縁膜
35 薄膜パターン
50 トランジスタアレイパネル
550 トランジスタアレイパネル
551 薄膜
552 レジスト
553 導電性微粒子含有液滴
554 配線
560 インクジェットヘッド
W 金属隔壁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上面に高密度の配線をパターニングする配線のパターニング方法において、
前記基板の上面に設けられた非金属膜上に、周囲で前記非金属膜が露出するように金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の周辺の非金属膜に撥液処理を施す工程と、
前記金属膜上面に対して導電性微粒子含有液滴又は金属微粒子を付着する工程とを具備することを特徴とする配線のパターニング方法。
【請求項2】
前記撥液処理は、フッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中に前記基板を曝露することを特徴とする請求項1に記載の配線のパターニング方法。
【請求項3】
前記撥液処理は、F2ガス中に前記基板を曝露することを特徴とする請求項1に記載の配線のパターニング方法。
【請求項4】
前記導電性微粒子含有液滴は、液滴吐出法によって前記金属膜上に付着されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配線のパターニング方法。
【請求項5】
前記金属微粒子は、当該金属微粒子を直接吹き付けることによって付着されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配線のパターニング方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパターニング方法によってディスプレイパネルにおける表示領域内に配線をパターニングすることを特徴とするディスプレイパネルの製造方法。
【請求項7】
ピクセルを仕切る隔壁として前記配線を用いることを特徴とする請求項6に記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパターニング方法によってパターニングされることを特徴とする配線。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の製造方法によって製造されることを特徴とするディスプレイパネル。
【請求項1】
基板の上面に高密度の配線をパターニングする配線のパターニング方法において、
前記基板の上面に設けられた非金属膜上に、周囲で前記非金属膜が露出するように金属膜を形成する工程と、
前記金属膜の周辺の非金属膜に撥液処理を施す工程と、
前記金属膜上面に対して導電性微粒子含有液滴又は金属微粒子を付着する工程とを具備することを特徴とする配線のパターニング方法。
【請求項2】
前記撥液処理は、フッ素系ガスを用いて発生させたプラズマ中に前記基板を曝露することを特徴とする請求項1に記載の配線のパターニング方法。
【請求項3】
前記撥液処理は、F2ガス中に前記基板を曝露することを特徴とする請求項1に記載の配線のパターニング方法。
【請求項4】
前記導電性微粒子含有液滴は、液滴吐出法によって前記金属膜上に付着されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配線のパターニング方法。
【請求項5】
前記金属微粒子は、当該金属微粒子を直接吹き付けることによって付着されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配線のパターニング方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパターニング方法によってディスプレイパネルにおける表示領域内に配線をパターニングすることを特徴とするディスプレイパネルの製造方法。
【請求項7】
ピクセルを仕切る隔壁として前記配線を用いることを特徴とする請求項6に記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のパターニング方法によってパターニングされることを特徴とする配線。
【請求項9】
請求項6又は請求項7に記載の製造方法によって製造されることを特徴とするディスプレイパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図4】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−19072(P2007−19072A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196134(P2005−196134)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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