説明

配線材の接続構造

【課題】高い信頼性を確保しつつ円滑に接続することが可能なバスバーへの配線材の接続構造を提供すること。
【解決手段】バスバー14の端部に、このバスバー14より断面積の小さい半田付け部41が形成され、この半田付け部41にピン状に起立された接続突片42が形成され、この接続突片42が、フレキシブルプリント配線基板からなる配線材の分岐線部22の接続端22aに形成され接続孔22bに貫通され、接続突片42と回路パターン22cとが半田付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車やハイブリッドカー等の車両に搭載されるバッテリに接続されるバスバーへの配線材の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
環境にやさしい自動車として、電気自動車やハイブリッドカーが増加している。このような車両には、複数のバッテリを重ね合わせたバッテリ集合体からなる電源装置が搭載されている。
【0003】
この電源装置のバッテリは、交互に逆向きに重ね合わせてなるバッテリ集合体を直列に接続するために、隣接するバッテリの電極を挿通する二つの孔を有するバスバーによって接続しており、このバスバーには、各バッテリの電圧を検出するために、バスバーに接続されてバッテリの電圧を外部に出力する信号線が配線される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−149909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電源装置の軽量化を考慮して、バッテリの電圧検出用の配線に、フレキシブルプリント配線基板(FPC)を配線材として用い、このフレキシブルプリント配線基板からなる配線板をバスバーに半田付けすることが考えられている。
【0006】
しかし、バスバーは熱伝導性の良い銅あるいは銅合金等から形成されているので、半田付け時にバスバーへ熱が放散してしまい、半田付けによる接合作業時間が長くなってしまう。また、熱の放散によって半田による接合が不安定となり、接続箇所の信頼性の確保が困難となるおそれがある。
【0007】
また、バスバーにフレキシブルプリント配線基板を重ね、回路パターンとバスバーとを半田付けすると、その接合箇所が隠れてしまい、接続箇所の管理が困難となってしまう。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い信頼性を確保しつつ円滑に接続することが可能なバスバーへの配線材の接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) バスバーの端部に、このバスバーより断面積の小さい半田付け部が形成され、前記半田付け部にピン状に起立された突片が形成され、前記突片が、フレキシブルプリント配線基板からなる配線材の孔部に貫通され、前記突片と前記配線材の回路パターンとが半田付けされることを特徴とする配線材の接続構造。
【0010】
この配線材の接続構造によれば、半田付け部が、バスバーよりも小さい断面積とされているので、突片と配線材の回路パターンとを半田付けする際に、その熱のバスバーへの放散を極力抑えることができる。これにより、突片と回路パターンとの半田付け作業を、極めて良好かつ短時間に行うことができ、半田による接合の安定化を図り、接続箇所の高い信頼性を得ることができる。
しかも、突片と回路パターンとの半田付け箇所における半田の盛り具合などの接合状態を視認することができ、接続箇所の品質管理を容易に行うことができる。
【0011】
(2) 上記(1)の配線材の接続構造において、前記半田付け部には、開口部が形成されていることを特徴とする配線材の接続構造。
【0012】
この配線材の接続構造によれば、半田付け部に開口部が形成されているので、半田付け時におけるバスバーへの熱の放散をさらに抑えることができる。
【0013】
(3) 上記(1)または(2)の配線材の接続構造において、前記バスバーは、2枚の板部を積層して構成され、前記板部の一方に前記半田付け部が形成されていることを特徴とする配線材の接続構造。
【0014】
この配線材の接続構造によれば、2枚の板部を重ねてバスバーを構成するので、電流を流すバスバーとして十分な断面積を確保することができる。また、一方の板部に半田付け部を形成するので、バスバーに対して半田付け部の厚さを半分として断面積を小さくし、半田付け時におけるバスバーへの熱の放散を抑えることができる。しかも、半田付け部がバスバーの半分の厚さとされているので、突片の加工の容易化を図ることができる。
【0015】
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの一つの配線材の接続構造において、前記バスバーは、金属板を打ち抜き加工して連鎖状に形成され、前記半田付け部は、連鎖状とされた前記バスバー連結材の空き空間に形成されることを特徴とする配線材の接続構造。
【0016】
この配線材の接続構造によれば、半田付け部が、金属板の打ち抜き加工により形成されたバスバー連結材の空き空間に形成されるので、材料の歩留まりを向上させてコストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高い接続信頼性を確保しつつ配線材を円滑に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】配線材が接続されたバスバーを備えるバッテリ接続プレートの平面図である。
【図2】配線材が接続されたバスバーの斜視図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】バスバーに形成された半田付け部の斜視図である。
【図5】バスバーとなるバスバー連結材の平面図である。
【図6】参考例に係る配線材の接続構造を示す斜視図である。
【図7】図6におけるB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る好適な実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は配線材が接続されたバスバーを備えるバッテリ接続プレートの平面図、図2は配線材が接続されたバスバーの斜視図、図3は図2におけるA−A断面図、図4はバスバーに形成された半田付け部の斜視図、図5はバスバーとなるバスバー連結材の平面図である。
【0020】
図1に示すように、配線材11は、バッテリ接続プレート12に装着される。このバッテリ接続プレート12は、合成樹脂から成形されたもので、左右両側に、複数のバスバー装着部13が形成されている。これらのバスバー装着部13には、金属板からなるバスバー14が嵌め込まれている。これらのバスバー14には、一対の接続孔14aが形成されており、これらの接続孔14aには、重ね合わされて配置される不図示の複数のバッテリの端子が挿し込まれる。そして、このバッテリの端子にナットを締結することにより、端子がバスバー14と導通した状態に接続される。
【0021】
このバッテリ接続プレート12には、バスバー装着部13に沿って、配線材装着部15が設けられ、この配線材装着部15に、配線材11が装着されている。
【0022】
配線材11は、フレキシブルプリント配線基板(FPC)からなるもので、バッテリの電圧検出用の配線としてバッテリ接続プレート12に組み込まれている。
【0023】
配線材11は、バッテリの端子配列に沿って配設される直線部21と、この直線部21から、側方へ延在する分岐線部22とを有している。そして、この配線材11の分岐線部22は、その先端からなる接続端22aが、各バスバー14に接続され、これにより、バスバー14を介してバッテリの端子に電気的に接続される。
【0024】
図2に示すように、バスバー14は、例えば、銅あるいは銅合金等の金属板から形成されたもので、下板部31と、この下板部31に積層させた上板部32とを有している。下板部31と上板部32とは、一側部のヒンジ部33にて連結されている。
【0025】
この下板部31と上板部32とからなるバスバー14は、その一端部における角部に、半田付け部41を形成している。
半田付け部41は、下板部31の端部に形成されたもので、図3及び図4に示すように、ピン状の接続突片(突片)42を有している。
【0026】
接続突片42は、配線材11の分岐線部22の接続端22aに形成された接続孔(孔部)22bに対し下面側から挿し込まれる。
【0027】
半田付け部41では、接続孔22bに挿しこまれた接続突片42と配線材11の分岐線部22の回路パターン22cとが、配線材11の上面側にて半田43によって接合されている。
【0028】
図4に示すように、この接続突片42は、下板部31に形成された矩形状の枠部44の一部から延設されて上方へ起立させたものである。枠部44は、一端が下板部31に連結された二つの縦枠片44aと、これらの縦枠片44aの他端側に連結された一つの横枠片44bとを有しており、接続突片42は、横枠片44bの中央部分の側部に連結されている。これにより、半田付け部41には、縦枠片44a、横枠片44b及び下板部31によって囲われた開口部45が形成されている。
【0029】
上記構造のバスバー14は、図5に示すように、連鎖状のバスバー連結材(連結材)51から形成される。この連鎖状のバスバー連結材51は、金属板を打ち抜き加工することにより形成される。このバスバー連結材51は、複数の下板部31の端部同士が連結部52によって互いに連結され、さらに、それぞれの下板部31に対して上板部32がヒンジ部33で連結された形状である。
【0030】
また、この連鎖状のバスバー連結材51において、下板部31に形成された半田付け部41は、隣接する下板部31同士の間における下板部31と上板部32との間の空き空間53に形成されている。
【0031】
上記のようなバスバー連結材51からバスバー14を製造するには、まず、ヒンジ部33において折り曲げることにより、下板部31に対して上板部32を重ね合わせる。次いで、半田付け部41の接続突片42を、横枠片44bとの連結箇所近傍にて屈曲させることにより起立させる。そして、互いに連結されて隣接する下板部31同士を、連結部52にて切断することにより分離する。
【0032】
上記のようにして形成されたバスバー14に対して、その半田付け部41に配線材11の分岐線部22の接続端22aを接続するには、接続端22aに形成された接続孔22bに半田付け部41の接続突片42を挿し込む。接続突片42を接続端22aの接続孔22bへ挿し込むことにより、半田付け部41に対して分岐線部22の接続端22aが位置決めされた状態に保持される。
この状態において、接続突片42の基部と分岐線部22の回路パターン22c(図2参照)とを、分岐線部22の上方側から半田付けする。
【0033】
ここで、バスバー14は、下板部31と上板部32とを重ね合わせた厚さを有しているが、半田付け部41は、下板部31から延在した部分であるので、下板部31と同一厚さであり、バスバー14の半分の厚さである。つまり、この半田付け部41は、バスバー14よりも極めて小さい断面積とされている。また、半田付け部41には、縦枠片44a、横枠片44b及び下板部31によって囲われた開口部45が形成されている。
したがって、接続突片42と回路パターン22cとを半田付けする際に、その熱のバスバー14への放散が極力抑えられる。
【0034】
また、接続突片42と回路パターン22cとの半田付けを、分岐線部22の上方側から行うので、半田付け箇所における半田43の盛り具合などの接合状態を視認することができる。
【0035】
以上、説明したように、上記の実施の形態に係る配線材の接続構造によれば、半田付け部41が、バスバー14よりも小さい断面積とされているので、接続突片42と配線材11の回路パターン22cとを半田付けする際に、その熱のバスバー14への放散を極力抑えることができる。これにより、接続突片42と回路パターン22cとの半田付け作業を、極めて良好かつ短時間に行うことができ、半田43による接合の安定化を図り、接続箇所の高い信頼性を得ることができる。
【0036】
しかも、接続突片42と回路パターン22cとの半田付け箇所における半田43の盛り具合などの接合状態を視認することができ、接続箇所の品質管理を容易に行うことができる。
【0037】
また、半田付け部41に開口部45が形成されているので、半田付け時におけるバスバー14への熱の放散をさらに抑えることができる。
さらに、下板部31と上板部32の2枚の板部を重ねてバスバー14を構成するので、電流を流すバスバー14として十分な断面積を確保することができる。また、下板部31に半田付け部41を形成するので、バスバー14に対して半田付け部41の厚さを半分として断面積を小さくし、半田付け時におけるバスバー14への熱の放散を抑えることができる。しかも、半田付け部41がバスバー14の半分の厚さとされているので、接続突片42の加工の容易化を図ることができる。
【0038】
また、半田付け部41が、金属板の打ち抜き加工により形成されたバスバー連結材51の空き空間53に形成されるので、材料の歩留まりを向上させてコストダウンを図ることができる。
なお、接続突片42と回路パターン22cとの接合は、例えば、超音波接合も可能である。
【0039】
ここで、本発明の更なる優位性を説明するため、図6及び図7に参考例を示す。
図6は参考例に係る配線材の平面図、図7は図6におけるB−B断面図である。
図6及び図7に示すように、バスバー61には、その端部に、バスバー61の一部を伸ばした半田付け部62が形成されている。そして、この半田付け部62には、フレキシブルプリント配線基板からなる配線材の分岐線部63の接続端63aが重ね合わされ、この接続端63aの下面側に露出された回路パターンと半田付け部62との間が半田64によって接合されている。
【0040】
このような接続構造では、半田付け時に熱が、バスバー61と同一厚さの大きな断面積を有する半田付け部62からバスバー61へ放散してしまう。したがって、半田付けによる接合作業時間が長くなり、しかも、半田による接合が不安定となり、接続箇所の信頼性の確保が困難となる。
また、上記の接続構造は、半田付けによる接合箇所が配線材の分岐線部63によって隠れて視認できないので、接続箇所の管理が困難となってしまう。
【0041】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0042】
11 配線材
14 バスバー
22b 接続孔(孔部)
22c 回路パターン
31 下板部(板部)
32 上板部(板部)
41 半田付け部
42 接続突片(突片)
45 開口部
51 バスバー連結材(連結材)
53 空き空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーの端部に、このバスバーより断面積の小さい半田付け部が形成され、
前記半田付け部にピン状に起立された突片が形成され、
前記突片が、フレキシブルプリント配線基板からなる配線材の孔部に貫通され、
前記突片と前記配線材の回路パターンとが半田付けされることを特徴とする配線材の接続構造。
【請求項2】
前記半田付け部には、開口部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線材の接続構造。
【請求項3】
前記バスバーは、2枚の板部を積層して構成され、前記板部の一方に前記半田付け部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の配線材の接続構造。
【請求項4】
前記バスバーは、金属板を打ち抜き加工して連鎖状に形成され、前記半田付け部は、連鎖状とされた前記バスバー連結材の空き空間に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線材の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−228217(P2011−228217A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99196(P2010−99196)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】