説明

配線板用接着剤組成物及びそれを用いた配線板用接着フィルム、カバーレイフィルム

【課題】 粉落ちせず接着性に優れた剛性の高い配線板用接着剤組成物を提供し、その配線板用接着剤組成物を用いた配線板用接着フィルム、カバーレイフィルムを提供する。
【解決手段】 1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ポリビニルブチラール樹脂(C)、充填剤(D)を必須成分とし、その硬化物の25℃での曲げ弾性率が10〜35GPaである配線板用接着剤組成物。接着剤組成物の固形分を100質量部とした場合、(A)を2〜50質量部、(B)を2〜50質量部、(C)を30〜90質量部、(D)を10〜80質量部含むと好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板用接着剤組成物と、それを用いた配線板用接着フィルム、カバーレイフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板(以下FPCと称す)は、高密度化、高機能化の目的で、接着フィルムもしくは、プリプレグを用いて多層化をすることがある。
特にプリプレグを用いて部分的に多層化されると、プリプレグで多層化されていない部分はフレキシビリティとなり、プリプレグで多層化された部分はリジッドとなり、フレキシビリティ部とリジット部の複合型のプリント配線板となる。このリジット部とフレキシビリティ部を有するプリント配線板をリジットフレックスプリント配線板と称する。
リジットフレックスプリント配線板は、携帯電話やデジタルカメラなどの小型機器に使用されることが多く、リジット部の薄型化が望まれている。そして、高機能化により実装部品は増大しており、高信頼性も同時に要求されている。
【0003】
リジット部は表面に半導体部品を実装することがあることから、剛性が必要である。このため、曲げ弾性の高いプリプレグを用いて多層化される。
しかし、プリプレグはガラスクロスを基材としてエポキシ樹脂、イミド樹脂などを含浸して作られていることから、Bステージにおいてもろく貼りあわせ作業時に粉落ちするという問題点を有している。また、プリプレグを薄くするには、ガラスクロスの薄膜を使用せねばならず、薄いクロスは歩留まりが悪いことから、価格が高いという問題点を有している。
粉落ち防止として、ガラスクロスに含浸させる樹脂に高分子量成分を用いることなどが試みられているが、ガラスクロスからの粉落ちは完全に抑えることは出来ない。また、接着フィルムを用いて多層化することもあるが、接着フィルムは、アクリルゴムやNBRなどの低Tgのエラストマーをベースとしていることから、6層以上の高多層にしないと十分な剛性が得られないという問題点を有している。分子量の低いエポキシ樹脂をベースとする接着フィルムは、プリプレグ同様に加工時にフィルム端面から粉が脱落したり、はく離接着強さが低いという問題点を有している。
【0004】
また、プリプレグの場合、レーザでの孔あけ加工をした際に、孔の内壁に多数の凹欠部分(樹脂退け部分)が形成されて孔の内壁が粗くなりやすいという問題があった。
このために、ビアホールやスルーホールの高密度化にあたり隣接する孔の距離が近接した場合に、ビアホール−ビアホール間あるいはビアホール−スルーホール間あるいはスルーホール−スルーホール間の絶縁信頼性が損なわれるなどの問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平10−292089号公報
【特許文献2】特開2001−288437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みて、粉落ちせず、接着性に優れた剛性の高い配線板用接着剤組成物を提供すると共にそれを用いて配線板用接着フィルム、カバーレイフィルムを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはプリプレグに代わる弾性率の高い接着フィルムを作るために、数々の材料を検討した結果、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ポリビニルブチラール樹脂(C)を含み、その硬化物の25℃での曲げ弾性率が10〜35GPaの接着剤組成物を見出した。
本発明は、[1] 1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ポリビニルブチラール樹脂(C)、充填剤(D)を含み、その硬化物の25℃での曲げ弾性率が10〜35GPaである配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[2] 接着剤組成物の固形分全体を100質量部とした場合、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)を2〜50質量部、フェノール樹脂(B)を2〜50質量部、ポリビニルブチラール樹脂(C)を30〜90質量部、充填剤(D)を10〜80質量部含む上記[1]に記載の配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[3] 1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂から選ばれるエポキシ樹脂である上記[1]又は上記[2]に記載の配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[4] 充填剤(D)が水酸化アルミである上記[1]ないし上記[3]のいずれかに記載の配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[5]充填剤(D)がシリカである上記[1]ないし上記[3]のいずれかに記載の配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[6]ポリビニルブチラール樹脂(C)が、アセタール化度70〜85質量%、酢酸ビニル含有量1〜15質量%である上記[1]ないし上記[5]のいずれかに記載の配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[7]上記[1]ないし上記[6]のいずれかに記載の配線板用接着剤組成物を含む配線板用接着フィルムに関する。
また、本発明は、[8] 上記[1]ないし上記[6]のいずれかに記載の配線板用剤組成物を含む配線板用カバーレイフィルムに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の配線板用接着剤組成物は、その硬化物は、硬く、接着性に優れ、しかも高弾性率を示すので従来のガラスクロス等の樹脂を含浸したプリプレグと代替ができ、製品不良の要因となっていた粉落ちもなく製造コスト等に有利で経済的である。また、本発明の配線板用接着フィルムやカバーレイフィルムは、組成物の特徴を有し、常温でべたつきがなく、取り扱い性、加工性に優れる。また、プリプレグのようにガラスクロスを含んでいないため、レーザ加工時にガラスクロスによるバリなどが発生せず、レーザ加工性に優れる。これを用いたプリント配線板は、剛性に優れ、リジット部は表面に半導体部品を実装しやすく、フレックス部は剛性があっても柔軟で屈曲性に富み、繰り返しの曲げに対して充分な性能を有し、しかも、薄くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ポリビニルブチラール樹脂(C)、充填剤(D)を必須成分として含み、その硬化物の25℃での曲げ弾性率が10〜35GPaであるプリント配線板用接着剤組成物である。
本発明で用いる1分子中に2個以上エポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)は、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などが挙げられる。この中で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂のノボラック型エポキシ樹脂が望ましい。
【0010】
本発明で用いるフェノール樹脂(B)は、たとえば、フェノールノボラック樹脂、レゾール樹脂などが挙げられるが、反応性の観点からレゾール樹脂が好ましい。
【0011】
本発明で用いるポリビニルブチラール樹脂(C)は、特に制限されないが、アセタール化度70〜85質量%、酢酸ビニル含有量1〜15質量%であるものが好ましい。アセタール化度、酢酸ビニル含有量は、上記の範囲であれば特に制限はないが、この範囲外では樹脂の柔軟性が十分ではなく、接着強度に劣る傾向がある。
また、数平均重合度(例えば原料のポリ酢酸ビニルの数平均分子量をGPC(標準ポリスチレンの検量線を利用)で測定し、これから決定される)が500〜3000であるものが好ましい。数平均重合度が500未満では、接着剤の耐熱性が十分ではなく、また3000を超えると接着剤の粘度が高くなり過ぎ、フィルム化することが困難になる傾向がある。
【0012】
本発明の配線板用接着剤組成物において、接着剤組成物の固形分全体を100質量部とした場合、1分子中に2個以上のエポキシ樹脂を有するエポキシ樹脂(A)の含有割合は2〜50質量部が好ましい。(A)の含有量が2質量部未満の場合は接着力が低下し、50質量部を超えて大きい場合は、保存安定性が低下する。
【0013】
本発明の配線板用接着剤組成物において、接着剤組成物の固形分全体を100質量部とした場合、フェノール樹脂(B)の含有割合は2〜50質量部が好ましい。(B)の含有量が2質量部未満の場合は接着力が低下し、50質量部を超えて大きい場合は、保存安定性が低下する。
【0014】
本発明の配線板用接着剤組成物において、接着剤組成物の固形分全体を100質量部とした場合、ポリビニルブチラール樹脂(C)の含有割合は30〜90質量部が好ましい。(C)の含有量が30質量部未満の場合は、フィルム化が困難となり、90質量部を超えて大きい場合は、耐熱性が低下する。
【0015】
本発明で用いる充填剤(D)としては、公知のものが使用できるが、たとえば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中で、水酸化アルミ、シリカが特に好ましい。
【0016】
充填材(D)の含有割合は、本発明の樹脂組成物の固形分100質量部に対して、10〜80質量部であり、より好ましくは、10〜60質量部である。10質量部未満の場合は、その含有効果が得られず、所望の曲げ弾性率が得られず、80質量部を超えて大きいと接着力が低下し、硬化物がもろくなる傾向がある。
【0017】
本発明の配線板用接着剤組成物において、硬化後の25℃での曲げ弾性率は10〜35GPaの範囲にある必要がある。10GPa未満であると、プリプレグの代わりに用いたときにリジッド基板としての剛性が低下し、35GPaを超えて大きい場合は、スルーホール穴あけ時のドリル加工性が低下したり、屈曲性に劣るようになる。
硬化後の25℃での曲げ弾性率を10〜35GPaの範囲とするには、本発明で用いる1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ポリビニルブチラール樹脂(C)、フェノール樹脂(B)、充填剤(D)の配合を上記の範囲内とし、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)をより多官能化するか、配合量を多くすると弾性率を高める傾向があり、ポリビニルブチラール樹脂(C)の配合量を多くするにつれ接着力が高まり、弾性率が低下する傾向にあるので、配合量を調整し、曲げ弾性率を10〜35GPaの範囲とする。
【0018】
本発明の配線板用接着剤組成物には、硬化時間を短縮するために、硬化剤を使用してもよい。硬化促進剤としては、イミダゾール類、有機リン系化合物、3級アミン化合物、ジシアンジアミドなどが挙げられる。硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂に対して、0.05から10質量部の範囲が好ましい。
【0019】
本発明の配線板用接着剤組成物には、必要に応じて、難燃剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、高分子成分、顔料などを使用してもよい。
【0020】
本発明の配線板用接着剤組成物は、公知の方法、たとえば、有機溶剤に接着剤組成物を溶解し、支持体フィルム上に塗布、加熱などにより乾燥させて、配線板用接着フィルムやカバーレイフィルムにすることができる。
【0021】
本発明の配線板用接着剤組成物、または、その接着剤組成物からの接着フィルム、カバーレイフィルムを用いて、公知の方法でリジッドフレキシブル配線板を製造することができる。具体的には、カバーレイフィルム、層間絶縁層として用いることでリジッドフレキシブル配線板、フレキシブル配線板やリジッド配線板を製造できる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明はこれら実施例で制限されるものではない。
(実施例1)
(1)プリント配線板用接着フィルムの作製
メタノールとメチルエチルケトンの50/50質量比の混合溶剤中に充填剤(D)成分として水酸化アルミ(H42M;昭和高分子株式会社製)50質量部、(C)成分としてポリビニルブチラール樹脂(5000A;電気化学工業株式会社製)35質量部と、(A)成分としてEP1001(ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン株式会社製)7質量部、(B)成分としてヒタノール2181(レゾール型フェノール樹脂;日立化成工業株式会社製)8質量部を固形分が15質量%の溶液になるように加え溶解した。さらに上記混合液に2E4MZ(イミダゾール化合物;四国化成工業株式会社製)を固形分1質量部添加して、配線板用接着剤組成物溶液を作製した。
コンマコーターを用いて、PETフィルムにシリコン系離型剤を処方したセパレーターに乾燥後の接着剤層の厚みが60μmになるように接着剤組成物溶液を塗工、乾燥し接着フィルム作製した。
【0023】
(2)リジットフレックスプリント配線板の作製
(1)で作製した接着フィルムを用いて、図1の構成のリジットフレックスプリント配線板を作製した。図1のリジットフレックスプリント配線板は、フレキシブル配線板の一部分の両面に(1)で作製した接着フィルムを介して、ポリイミドと銅箔を積層したフレキシブル銅張り板の銅箔面に回路を形成したポリイミドフレキシブル配線板を積層し、さらに、その外側に(1)で作製したカバーレイフィルム(接着フィルム)で保護したものである。積層圧着は、真空プレスを用いて、170℃、2MPa、70分間の条件で行った。
必要に応じて、スルーホール、インナビア等でリジット部とフレキシブルプリント配線板との導通を行う。
【0024】
(実施例2)
実施例1の配線板用接着剤組成物溶液のポリビニルブチラール樹脂(5000A;電気化学工業株式会社製)を27質量部、YDCN703(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;東都化成株式会社製)を3質量部、ヒタノール2181(レゾール型フェノール樹脂;日立化成工業株式会社製)を3質量部、充填剤(D)としてシリカ(OX200;日本エアロジル社製)を67質量とした他は、実施例1と同じようにして配線板用接着剤組成物溶液を作製し、リジットフレックスプリント配線板を作製した。
【0025】
(実施例3)
実施例1の配線板用接着剤組成物溶液のポリビニルブチラール樹脂(5000A;電気化学工業株式会社製)を27質量部、EP1001(ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン株式会社製)を20質量部、ヒタノール2181(レゾール型フェノール樹脂;日立化成工業株式会社製)を20質量部、H42M(水酸化アルミ;昭和電工株式会社製)を33質量部とした他は、実施例1と同じようにして配線板用接着剤組成物溶液を作製し、リジットフレックスプリント配線板を作製した。
【0026】
(実施例4)
実施例1のプリント配線板用接着剤組成物溶液のポリビニルブチラール樹脂(5000A;電気化学工業株式会社製)を25質量部、EP1001(ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン株式会社製)を25質量部、ヒタノール2181(レゾール型フェノール樹脂;日立化成工業株式会社製)を33質量部、H42M(水酸化アルミ;昭和電工株式会社製)を17質量部とした他は、実施例1と同じようにして配線板用接着剤組成物溶液を作製し、リジットフレックスプリント配線板を作製した。
【0027】
(比較例1)
実施例1の配線板用接着剤組成物溶液のポリビニルブチラール樹脂をPNR−1H(NBR;日本合成ゴム株式会社製)35質量部に置き代えた他は、実施例1と同様に行いプリント配線板用接着剤組成物溶液を作製し、リジットフレックスプリント配線板を作製した。
【0028】
(比較例2)
実施例1において、配線板用接着剤組成物溶液のポリビニルブチラール樹脂(5000A;電気化学工業株式会社製)を7質量部、EP1001(ビスフェノールF型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン株式会社製)を47質量部、ヒタノール2181(レゾール型フェノール樹脂;日立化成工業株式会社製)を13質量部、H42M(水酸化アルミ;昭和電工株式会社製)を33質量部とした他は、実施例1と同じようにして配線板用接着剤組成物溶液を作製し、リジットフレックスプリント配線板を作製した。
【0029】
(比較例3)
実施例1のリジットフレックスプリント配線板の構成で、接着フィルムの部分を、ガラスクロスにポリイミド樹脂を含浸させたローフロープリプレグ(GIA67N(N);日立化成工業株式会社製)厚み60μmとした他は、実施例1と同様に行った。
【0030】
(1)はく離強さの測定
リジット部において、10mm幅に切り出したフレキシブルプリント配線板を90度のはく離角度で、50mm/分の速度で引き剥がした際の強度を測定した。
(2)260℃はんだ耐熱
リジットフレックスプリント配線板を23℃、60%RH中に24時間放置したものを表面温度が260℃となるよう調整したはんだ槽に10秒間浮かべ、膨れの有無を確認した。
(3)加工時の粉落ち
接着フィルムもしくは、プリプレグのGIA67N(N)を、トムソン刃を用いて、打ち抜き加工を実施した際の粉落ちの有無を確認した。
粉落ちの評価は、作業の際に落下した粒子状物質の有無を観察し、作業台の下に敷いた黒色の紙の上に基板からの粒子状物質の落下があるものを「有り」と、粒子状物質の落下が見られなかったものを「無し」として評価した。
(4)曲げ弾性率の測定
接着フィルムまたは、プリプレグを170℃、120分間加熱し、フィルム厚み125μmの硬化フィルムを作製した。23℃、50%RHの条件下で支点間距離を20〜40mmに設定し、図2のように硬化した接着フィルムを設置し、その中央に力を加えた。中心部が3mm低下した際の力Fを次式(1)に入れて、曲げ弾性率Eを算出した。
E=(FL3)/(4ab3d)・・・(1)
F : 力
E : 曲げ弾性率 [Pa]
L : 支点間距離 [mm]
a : サンプル幅 [mm]
b : サンプル厚み [mm]
d : サンプルのたわみ量 [mm]
【0031】
上記の実施例1〜4、比較例1〜3で得られたリジットフレックスプリント配線板のはく離強さ、はんだ耐熱、加工時の粉落ち、曲げ弾性率の評価結果と配合をまとめて表1に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1からエポキシ樹脂にゴム成分(NBR)を配合した比較例1は、25℃での曲げ弾性率が1GPaと低すぎ、剛性に優れたリジットフレックスプリント配線板とすることはできなかった。
また、ポリビニルブチラール樹脂の配合量が少ない比較例2では、フィルム化できなかった。従来のプリプレグを用いた比較例3では、はんだ耐熱性は良好であるが、加工時の粉落ちが見られる。これらに対して、本発明の1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ポリビニルブチラール樹脂(C)を含み、その硬化物の25℃での曲げ弾性率が10〜35GPaであるプリント配線板用接着剤組成物では、実施例1〜4に示したように、プリプレグと同等のはく離強さ、はんだ耐熱が得られ、また、加工時の粉落ちがなく配線板用に好適な接着フィルム、カバーレイフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のプリント配線板の一例を説明する断面模式図。
【図2】本発明の曲げ弾性率の測定方法を説明する模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ポリビニルブチラール樹脂(C)、充填剤(D)を必須成分とし、その硬化物の25℃での曲げ弾性率が10〜35GPaである配線板用接着剤組成物。
【請求項2】
接着剤組成物の固形分全体を100質量部とした場合、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)を2〜50質量部、フェノール樹脂(B)を2〜50質量部、ポリビニルブチラール樹脂(C)を30〜90質量部、充填剤(D)を10〜80質量部含む請求項1に記載の配線板用接着剤組成物。
【請求項3】
1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂から選ばれるエポキシ樹脂である請求項1又は請求項2に記載の配線板用接着剤組成物。
【請求項4】
充填剤(D)が水酸化アルミである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の配線板用接着剤組成物。
【請求項5】
充填剤(D)がシリカである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の配線板用接着剤組成物。
【請求項6】
ポリビニルブチラール樹脂(C)が、アセタール化度70〜85質量%、酢酸ビニル含有量1〜15質量%である請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の配線板用接着剤組成物。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の配線板用接着剤組成物を含む配線板用接着フィルム。
【請求項8】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の配線板用接着剤組成物を含む配線板用カバーレイフィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−129751(P2010−129751A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302458(P2008−302458)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000233170)日立化成ポリマー株式会社 (75)
【Fターム(参考)】