説明

配線構造体及びそれを備えたジョイントボックス

【課題】ピン端子が金属箔配線に導通する配線基板以外のその他の配線基板において、金属箔配線がピン端子に接触するのを回避する。
【解決手段】配線構造体10は、各々、絶縁基板上に金属箔配線が設けられた複数の配線基板13が積層されて構成されると共にピン端子挿通孔18が形成された基板積層体11と、基板積層体11のピン端子挿通孔18に挿通されたピン端子12とを備える。ピン端子挿通孔18には、複数の配線基板13のうちいずれかのピン端子挿通孔18を構成する貫通孔17aに、配線基板13の金属箔配線と導通すると共にピン端子12を外嵌保持する端子接続部15cが設けられている一方、その他の配線基板13のピン端子挿通孔18を構成する貫通孔17bに、ピン端子12のその他の配線基板13への接触を規制する絶縁スリーブ19が内嵌めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線構造体及びそれを備えたジョイントボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気製品、自動車(車両)には複数の電装品が使用され、また、それらの電装品には多数の配線が接続されていることから、それらの配線の接続関係及び電力供給を一元化するジョイントボックスが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、三次元的に成型した合成樹脂材から成る樹脂プレート上に金属箔配線が設けられた複数枚の配線基板を積層し、これらの積層した配線基板にピン端子挿通孔を形成し、特定の層の配線基板のピン端子挿通孔を構成する貫通孔に金属製の受端子を取り付けると共に、その受端子に付設したタブを当該配線基板の金属箔配線に接続し、そして、ピン端子挿通孔にピン端子を挿通し、受端子を介して当該配線基板の金属箔配線と電気的に導通し、突出したピン端子により内在又は隣接する電子回路ユニットと接続するように構成された、配線基板を用いたジョイントボックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−164632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたような基板積層体のピン端子挿通孔にピン端子を挿通した構成では、ピン端子が金属箔配線に導通する配線基板以外のその他の配線基板において、金属箔配線が設けられた部分に貫通孔が含まれる場合、金属箔配線がピン端子に接触するのを回避する必要があるため、例えば、金属箔配線の孔を貫通孔よりも大きく形成し、金属箔配線の縁を貫通孔の縁から離間させる措置が採られる。しかしながら、金属箔配線の孔を貫通孔よりも大きくすると、金属箔配線の面積が小さくなるために、その導体抵抗が高くなると共に放熱性が低下することとなる。
【0006】
本発明の課題は、ピン端子が金属箔配線に導通する配線基板以外のその他の配線基板において、金属箔配線がピン端子に接触するのを回避することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配線構造体は、
各々、絶縁基板上に金属箔配線が設けられた複数の配線基板が積層されて構成されると共に、該複数の配線基板のそれぞれに形成された貫通孔が基板厚さ方向に連なって構成されたピン端子挿通孔が形成された基板積層体と、
上記基板積層体の上記ピン端子挿通孔に挿通されたピン端子と、
を備え、
上記ピン端子挿通孔には、上記複数の配線基板のうちいずれかの該ピン端子挿通孔を構成する貫通孔に、該配線基板の金属箔配線と導通すると共に該ピン端子挿通孔に挿通された上記ピン端子を外嵌保持する端子接続部が設けられている一方、その他の配線基板の該ピン端子挿通孔を構成する貫通孔に、該ピン端子挿通孔に挿通された該ピン端子の該その他の配線基板への接触を規制する絶縁スリーブが内嵌めされている。
【0008】
本発明のジョイントボックスは、
本発明の配線構造体が、上記ピン端子が突出するように筐体に収容され、該筐体の外側に、該筐体から突出した該ピン端子を含むコネクタ取付部が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ピン端子挿通孔には、複数の配線基板のうちいずれかのピン端子挿通孔を構成する貫通孔に、配線基板の金属箔配線と導通すると共にピン端子挿通孔に挿通されたピン端子を外嵌保持する端子接続部が設けられている一方、その他の配線基板のピン端子挿通孔を構成する貫通孔に、ピン端子挿通孔に挿通されたピン端子のその他の配線基板への接触を規制する絶縁スリーブが内嵌めされているので、ピン端子が金属箔配線に導通する配線基板以外のその他の配線基板において、金属箔配線がピン端子に接触するのを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係るジョイントボックスの模式的な断面図である。
【図2】(a)及び(b)は配線基板の一例及び別の配線基板の一例の模式的な平面図である。
【図3】(a)及び(b)は絶縁基板の端子挿通貫通孔を含む部分断面図である。
【図4】配線基板における絶縁基板への金属箔配線の取付構造を示す部分断面図である。
【図5】配線基板における金属箔配線への受端子の取付構造を示す部分断面図である。
【図6】(a)及び(b)は配線構造体の部分断面図である。
【図7】ピン端子の斜視図である。
【図8】(a)〜(e)はピン端子のピン部分の断面図である。
【図9】(a)及び(b)は端子保持貫通孔へのピン端子の挿通状態を示す説明図である。
【図10】(a)及び(b)は配線構造体の変形例の部分断面図である。
【図11】上側及び下側保護部材への基板積層体の取付構造を示す説明図である。
【図12】上側筐体部材への配線構造体の取付構造を示す説明図である。
【図13】基板係止突起の正面図である。
【図14】基板カバー部材への回路基板の取付構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は本実施形態に係るジョイントボックスAを示す。
【0013】
本実施形態に係るジョイントボックスAは、電気製品や自動車(車両)に搭載されると共に、電装品、電源等から延びる多数の配線のそれぞれに設けられたコネクタが接続され、それらの配線の接続関係及び電力供給を一元化するものである。
【0014】
本実施形態に係るジョイントボックスAは、厚肉プレート状の配線構造体10が筐体20に収容された構成を有する。
【0015】
配線構造体10は、基板積層体11に複数のピン端子12が設けられた構成を有する。また、基板積層体11は、複数の配線基板13が積層された構成を有する。
【0016】
図2(a)及び(b)は配線基板13の一例及び別の配線基板13の一例をそれぞれ示す。
【0017】
複数の配線基板13のそれぞれは、絶縁基板14上に、両端のそれぞれに受端子15が取り付けられた金属箔配線16が設けられている。なお、配線基板13は、絶縁基板14の一方面のみに金属箔配線16が設けられていてもよく、また、絶縁基板14の両面のそれぞれに金属箔配線16が設けられていてもよい。なお、受端子15は、金属箔配線に接続されていれば、特に図2に示すような両端に限定されるものではない。また、接続される受端子15の数も特定されない。
【0018】
絶縁基板14は、例えば、樹脂材料で形成されている。絶縁基板14を形成する樹脂材料は、熱可塑性樹脂であってもよく、また、熱硬化性樹脂であってもよいが、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の場合、基板上に凹凸を形成させる際に切削加工等が必要であって、基板作製工程における煩雑さや材料の無駄が発生することから、金型を工夫すれば射出成型により基板上への凹凸を容易に形成することができ、材料の無駄も発生しない熱可塑性樹脂が好ましい。かかる熱可塑性樹脂としては、耐熱性の観点からポリプロピレン樹脂が好ましく、形状維持性の観点からタルクが20質量%配合されたポリプロピレン樹脂がより好ましい。絶縁基板14の厚さは例えば1〜5mmである。いずれの配線基板13の絶縁基板14にもピン端子挿通用の端子挿通貫通孔17a,17bが同じ位置に形成されている。端子挿通貫通孔17a,17bには、受端子15を介して金属箔配線16で繋がれる端子挿通貫通孔17aとそれ以外の端子挿通貫通孔17bとが含まれる。端子挿通貫通孔17a,17bの孔径は例えば1〜10mmである。端子挿通貫通孔17a,17bの形状としては、ピン端子12の形状に対応して、例えば、円形状、矩形状、スリット形状等が挙げられる。絶縁基板14には、基板上に配線位置合わせ用の位置合わせ突起14aが複数突設されており、また、受端子15を介して金属箔配線16で繋がれる各端子挿通貫通孔17aに対応して、その近傍に端子溶接孔14bが形成されている。絶縁基板14には、隣接する配線基板13の金属箔配線16との間の絶縁性を確保するスペーサとして、例えば、図3(a)及び(b)に示すように、金属箔配線16で繋がれない端子挿通貫通孔17bの外周等に基板間隔保持凸部14cが設けられていてもよい。
【0019】
金属箔配線16は、例えば、打ち抜き加工された銅箔等で構成されている。金属箔配線16の厚さは例えば0.01〜2.0mmである。金属箔配線16には、絶縁基板14の位置合わせ突起14aに対応するように、ドリルやパンチにより位置合わせ孔16aが形成されている。金属箔配線16には、図2(a)に示す基板下辺の端子挿通貫通孔17bの部分のように、金属箔配線16で繋がれない端子挿通貫通孔17bに対応して略同形の孔が形成されている。
【0020】
配線基板13は、位置合わせ突起14aが位置合わせ孔16aに挿通されて、図4に示すように、位置合わせ突起14aの頭部が潰されて抜け留めされることにより、絶縁基板14上に金属箔配線16が一体に設けられている。加えて、絶縁基板14に金属箔配線16が接着剤で接着されていてもよい。金属箔配線16の両端のそれぞれには、図5に示すように、端子溶接孔14bの位置の溶接部Cにおいて、受端子15が溶接されている。
【0021】
受端子15は、例えば、打ち抜きプレス加工された銅板等で構成されている。受端子15の厚さは例えば0.1〜3.0mmである。受端子15には、絶縁基板14の端子挿通貫通孔17aに対応するように端子保持貫通孔15aが形成されている。受端子15は、基板表面に設けられた基板表面側部分15bを有し、また、その基板表面側部分15bに連続すると共に端子挿通貫通孔17aに内嵌めされて端子保持貫通孔15aを構成する環状の端子保持部分15cを有する。
【0022】
基板積層体11は複数の配線基板13が積層された構成を有する。基板積層体11は、例えば、配線基板13の枚数が2〜10枚、好ましくは3〜7枚であり、厚さが2〜50mm、好ましくは5〜20mmである。基板積層体11は、複数の配線基板13が、相互に隣接する配線基板13の金属箔配線16同士の短絡を防止するために、金属箔配線16が設けられた側と設けられていない側とが対向するように積層されていることが好ましいが、相互に隣接する配線基板13の金属箔配線16同士を導通させる場合或いは絶縁材を介設させることにより絶縁性を確保できる場合には、金属箔配線16が設けられた側同士が対向するように積層されていてもよい。
【0023】
基板積層体11には、複数の配線基板13のそれぞれに形成された端子挿通貫通孔17b或いは端子保持貫通孔15aが基板厚さ方向に連なって構成されたピン端子挿通孔18が複数設けられている。複数のピン端子挿通孔18のそれぞれには、複数の配線基板13のうちいずれかのピン端子挿通孔18を構成する端子保持貫通孔15aに受端子15の端子保持部分15cが設けられている一方、その他の配線基板13のピン端子挿通孔18を構成する端子挿通貫通孔17bに絶縁スリーブ19が内嵌めされている。例えば、図6(a)に示すように、上層から順に第1〜第6の配線基板13が積層された基板積層体11におけるいずれかのピン端子挿通孔18において、第3の配線基板13に受端子15が設けられた端子保持貫通孔15aが構成され且つ第1、第2、及び第4〜第6の配線基板13に端子挿通貫通孔17bが構成された態様では、第1及び第2の配線基板13の端子挿通貫通孔17bに上側の絶縁スリーブ19が共通して内嵌めされ、また、第4〜第6の配線基板13の端子挿通貫通孔17bに下側の絶縁スリーブ19が共通して内嵌めされる。図6(b)に示すように、第6の配線基板13に受端子15が設けられた端子保持貫通孔15aが構成され且つ第2〜第6の配線基板13に端子挿通貫通孔17bが構成された構成では、第2〜第6の配線基板13の端子挿通貫通孔17bに絶縁スリーブ19が共通して内嵌めされる。
【0024】
複数のピン端子12には、その用途に応じて種々の形状のものが含まれるが、いずれのピン端子12も、特許文献1や特許第3974924号公報に開示され、また、図7に示すように、基板積層体11のピン端子挿通孔18に挿通されるピン部分12aと基板積層体11の外部に突出する端子部分12bとを有する。なお、複数のピン端子12には、ピン部分12aが基板積層体11を貫通して外部に突出するように構成されたものが含まれていてもよい。また、複数のピン端子12には、長さ方向に一様に形成され、その両端が基板積層体11の両側に突出する端子部分12bに構成されたもの(例えばアースバス端子)が含まれていてもよい。
【0025】
複数のピン端子12のそれぞれは、基板積層体11におけるピン端子挿通孔18に挿通されている。複数のピン端子12には、端子部分12bが基板積層体11の一方側から突出したピン端子12と他方側から突出したピン端子12とが含まれる。なお、複数のピン端子12のいずれの端子部分12bもが基板積層体11のいずれか一方側のみから突出するように設けられた構成であってもよい。また、ピン端子12は全てのピン端子挿通孔18に挿通されているのではなく、ピン端子12が挿通されていないピン端子挿通孔18も存在する。
【0026】
ここで、上記構成の通り、ピン端子12が挿通されたピン端子挿通孔18には、複数の配線基板13のうちいずれかのピン端子挿通孔18を構成する端子保持貫通孔15aに、配線基板13の金属箔配線16と導通すると共にピン端子挿通孔18に挿通されたピン端子12を外嵌保持する端子接続部が設けられている一方、その他の配線基板13のピン端子挿通孔18を構成する端子挿通貫通孔17bに、ピン端子挿通孔18に挿通されたピン端子12のその他の配線基板13への接触を規制する絶縁スリーブ19が内嵌めされているので、ピン端子12が金属箔配線16に導通する配線基板13以外のその他の配線基板13において、金属箔配線16がピン端子12に接触するのを確実に回避することができる。そして、それにより、その他の配線基板13では、図2(a)に示す基板下辺の端子挿通貫通孔17bのように、端子挿通貫通孔17bの際まで金属箔配線16を設けることができるので、金属箔配線16の導体抵抗を低くすることができると共に放熱性を高めることができる。
【0027】
ピン端子12は、例えば、金属板加工品で構成されている。ピン端子12としては、例えば、ピン部分12aが、図8(a)に示すように、帯状金属板の両側部のそれぞれが内向きに2回折り返されて断面矩形状に形成された構成、図8(b)に示すように、帯状金属板の両側部のそれぞれが内向きに折り返されて突き合わされた構成、図8(c)に示すように、帯状金属板が厚さ方向に段差を有するように屈曲されて断面略台形状に形成された構成、図8(d)に示すように、帯状金属板そのままの構成、図8(e)に示すように、帯状金属板の両側部のそれぞれが、それらの間に間隔を有するように内向きに折り返された構成等が挙げられる。ここで、金属板の材質としては、例えば、銅、銅合金、銅が被覆された金属材等が適用される。また、必要に応じて、表面にSn(錫)メッキが施されたものが適用される。帯状金属板は、作製される端子に流れる電流容量に応じて適宜、厚さ及び幅が設定される。
【0028】
ピン端子12は、複数の配線基板13のうちいずれかの金属箔配線16とのみ導通していることが好ましい。ピン端子挿通孔18に挿通されたピン端子12が複数の配線基板13の金属箔配線16と導通することは構造上は可能であるが、その場合、ピン端子挿通孔18に挿通されたピン端子12が複数の受端子15の端子保持部分15cに外嵌保持されることとなり、ピン端子12は、最初の受端子15の端子保持部分15cを挿通した部分が、それによって塑性変形する可能性があり、そのためにそれ以後に挿通する受端子15の端子保持部分15cとの電気的接触の信頼性が低くなる虞がある。例えば、円形のピン端子挿通孔18にピン端子12を挿通する場合、図9(a)に示すように、ピン端子12は、最初の受端子15の端子保持部分15cでは四つの角部がピン端子挿通孔18の内側に接触して保持されるが、それ以後に挿通する受端子15の端子保持部分15cでは、最初の受端子15によって角部が塑性変形すると、図9(b)に示すように、四つの角部がピン端子挿通孔18の内側に接触しない虞がある。しかしながら、各ピン端子12が複数の配線基板13のうちいずれかの金属箔配線16とのみ導通していれば、ピン端子12の金属箔配線16への電気的接触の高い信頼性を得ることができる。
【0029】
配線構造体10は、図10(a)及び(b)に示すように、基板積層体11を挟持するように設けられたプレート状の上側及び下側保護部材31,32を備えていることが好ましい。上側及び下側保護部材31,32のそれぞれは、ピン端子挿通孔18に対応して端子挿通部が形成され、ピン端子挿通孔18にピン端子12が挿通された部分では、それを介してピン端子12を突出させる。
【0030】
上側及び下側保護部材31,32のそれぞれは、例えば、樹脂材料で形成されている。この樹脂材料は、ポリプロピレン樹脂やABS樹脂等の熱可塑性樹脂であってもよく、また、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよいが、熱硬化性樹脂の場合、凹凸を形成させる際に切削加工等が必要であって、基板作製工程における煩雑さや材料の無駄が発生することから、金型を工夫すれば射出成型により基板上への容易に形成することができ、材料の無駄も発生しない熱可塑性樹脂が好ましい。上側及び下側保護部材31,32のそれぞれの厚さは例えば1〜5mmである。
【0031】
上側及び下側保護部材31,32には、図11に示すように、前者に位置決め突起31a及び後者にそれに対応した位置決め孔32aがそれぞれ形成され、そして、それに対応するように基板積層体11を構成する複数の配線基板13のそれぞれにも突起挿通孔11aが形成され、位置決め突起31aが基板積層体11の複数の配線基板13の突起挿通孔11a及び位置決め孔32aを貫通して頭部が潰され、或いは、溶着され、上側及び下側保護部材31,32により基板積層体11がパッキングされて上側及び下側保護部材31,32と共に一体化した構成であってもよい。かかる構成によれば、各配線基板13の金属箔配線16及び受端子15が露出することなく保護することができる。なお、下側保護部材32に位置決め突起及び上側保護部材31にそれに対応した位置決め孔がそれぞれ形成された構成であってもよい。
【0032】
上側及び下側保護部材31,32のそれぞれには、外側面に例えば格子状にリブが設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、リブの補強効果により基板積層体11の撓みを規制することができる。なお、基板積層体11に撓みがあると、筐体20に収容する際の位置合わせの作業性に支障が生じる場合がある。
【0033】
上側及び/又は下側保護部材31,32には、絶縁スリーブ19が一体に設けられていることが好ましい。例えば、図10(a)に示すように、上層から順に第1〜第6の配線基板13が積層された基板積層体11におけるいずれかのピン端子挿通孔18において、第3の配線基板13に受端子15が設けられた端子保持貫通孔15aが構成され且つ第1、第2、及び第4〜第6の配線基板13に端子挿通貫通孔17bが構成された態様では、第1及び第2の配線基板13の端子挿通貫通孔17bに上側保護部材31に一体に設けられた絶縁スリーブ19が共通して内嵌めされ、また、第4〜第6の配線基板13の端子挿通貫通孔17bに下側保護部材32に一体に設けられた絶縁スリーブ19が共通して内嵌めされる。図10(b)に示すように、第6の配線基板13に受端子15が設けられた端子保持貫通孔15aが構成され且つ第2〜第6の配線基板13に端子挿通貫通孔17bが構成された構成では、第2〜第6の配線基板13の端子挿通貫通孔17bに上側保護部材31に一体に設けられた絶縁スリーブ19が共通して内嵌めされる。
【0034】
筐体20は、配線構造体10の上側に設けられる上側筐体部材21及び下側に設けられる下側筐体部材22で構成されている。上側及び下側筐体部材21,22のそれぞれは、例えば、樹脂材料で形成されている。この樹脂材料は、ポリプロピレン樹脂やABS樹脂等の熱可塑性樹脂であってもよく、また、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよいが、熱硬化性樹脂の場合、凹凸を形成させる際に切削加工等が必要であって、基板作製工程における煩雑さや材料の無駄が発生することから、金型を工夫すれば射出成型により基板上への容易に形成することができ、材料の無駄も発生しない熱可塑性樹脂が好ましい。上側及び下側筐体部材21,22のそれぞれの厚さは例えば1〜5mmである。
【0035】
上側筐体部材21には、図12に示すように、取付突起21aが形成され、そして、それに対応するように配線構造体10にも取付孔10aが形成され、取付突起21aが配線構造体10の取付孔10aを貫通して頭部が潰され、或いは、溶着されて配線構造体10が一体に取り付けられている。なお、下側筐体部材22に配線構造体10が一体に取り付けられた構成であってもよい。
【0036】
上側及び下側筐体部材21,22のそれぞれには、配線構造体10のピン端子挿通孔18に対応して端子挿通部が形成され、ピン端子挿通孔18にピン端子12が挿通された部分では、それを介して配線構造体10のピン端子12の端子部分12bが突出している。そして、上側及び下側筐体部材21,22のそれぞれには、その外側に、各々、端子挿通部から突出した単一或いは複数のピン端子12及び/又はピン端子12が突出していない単一或いは複数の端子挿通部を含んで壁で囲うように構成された複数のコネクタ取付部23が設けられている。各コネクタ取付部23には、電装品等から延びる多数の配線のそれぞれに設けられたコネクタが接続される。
【0037】
上側筐体部材21には、その外側に、端子挿通部から突出した単一或いは複数のピン端子12及び/又はピン端子12が突出していない単一或いは複数の端子挿通部を含んで壁で囲うように構成された基板取付部24が設けられており、基板取付部24には電子部品25aが実装された回路基板25が設けられている。回路基板25には、基板取付部24のピン端子12に対応するように端子受部が設けられていると共に、ピン端子12が突出していない端子挿通部に対応してピン端子12が設けられている。回路基板25は、端子受部が端子挿通部から突出したピン端子12を保持し、また、ピン端子12が端子挿通部を介してピン端子挿通孔18に挿入保持されることにより直接的に電気的に接続され、それによって上側筐体部材21を介して配線構造体10に取り付けられている。ピン端子12と端子受部とはハンダ接続で固定されていてもよい。なお、かかる回路基板25としては、例えば、電圧制御回路基板、漏電検知回路基板等が挙げられる。また、下側筐体部材22に回路基板25が設けられた構成であってもよい。
【0038】
上側筐体部材21には基板取付部24を覆うように基板カバー部材26が設けられている。基板カバー部材26は、例えば、上側筐体部材21と同様の樹脂材料で形成されていることが好ましい。基板カバー部材26には、上側筐体部材21側に、複数の基板係止突起27が設けられている。基板係止突起27は、図13に示すように、突起本体27aの先端に円錐台状の頭部27bが一体に設けられ、その頭部27bの頂面側に縦割り状に切れ込みが形成されていることにより、頭部27bの外径が弾性的に縮小可能に構成されている。回路基板25は、図14に示すように、基板係止突起27に対応して突起挿通孔25bが形成されており、その突起挿通孔25bに、基板係止突起27が、頭部27bの外径が縮小された状態で挿通され、そして、その後に頭部27bが弾性復帰するスナップフィットにより、基板カバー部材26に係止固定されている。従って、回路基板25は、基板カバー部材26に係止固定されたユニット状態で上側筐体部材21の基板取付部24に取り付けられている。かかる構成によれば、基板カバー部材26に回路基板25を係止固定する構成であるので、基板カバー部材26に回路基板25を容易に取り付けることができ、また、回路基板25を交換する場合でも基板カバー部材26を再利用することができる。
【0039】
基板カバー部材26には案内突条28が設けられていると共に、上側筐体部材21にはその案内突条28に噛み合う案内溝(図示せず)が設けられている。かかる構成によれば、上側筐体部材21に基板カバー部材26が斜めに取り付けられる等の不具合が解消され、取付作業の容易化が図られ、案内突条28により基板カバー部材26の形状保持効果を得ることができる。また、基板カバー部材26には、放熱性を高めるための通気口、内側面に形状保持のための補強リブ(図示せず)、及び上側筐体部材21への係止固定部(図示せず)がそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0040】
上側筐体部材21には、端子挿通部から突出した単一或いは複数のピン端子12及び/又はピン端子12が突出していない単一或いは複数の端子挿通部を含むようにスイッチ取付部29が設けられている。このスイッチ取付部29には、直接又は中継コネクタを介して、電圧切り替え用のスイッチ部品が取り付けられ、回路基板25と電気的に接続するように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は配線構造体及びそれを備えたジョイントボックスについて有用である。
【符号の説明】
【0042】
A ジョイントボックス
10 配線構造体
11 基板積層体
12 ピン端子
13 配線基板
14 絶縁基板
15c 端子保持部分
16 金属箔配線
17a,17b 端子挿通貫通孔
18 ピン端子挿通孔
19 絶縁スリーブ
20 筐体
23 コネクタ取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々、絶縁基板上に金属箔配線が設けられた複数の配線基板が積層されて構成されると共に、該複数の配線基板のそれぞれに形成された貫通孔が基板厚さ方向に連なって構成されたピン端子挿通孔が形成された基板積層体と、
上記基板積層体の上記ピン端子挿通孔に挿通されたピン端子と、
を備え、
上記ピン端子挿通孔には、上記複数の配線基板のうちいずれかの該ピン端子挿通孔を構成する貫通孔に、該配線基板の金属箔配線と導通すると共に該ピン端子挿通孔に挿通された上記ピン端子を外嵌保持する端子接続部が設けられている一方、その他の配線基板の該ピン端子挿通孔を構成する貫通孔に、該ピン端子挿通孔に挿通された該ピン端子の該その他の配線基板への接触を規制する絶縁スリーブが内嵌めされている配線構造体。
【請求項2】
請求項1に記載された配線構造体において、
上記ピン端子を突出させて上記基板積層体を挟持するように設けられた上側及び下側保護部材をさらに備え、
上記絶縁スリーブは、上記上側及び/又は下側保護部材に一体に設けられている配線構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された配線構造体において、
上記ピン端子は、上記複数の配線基板のうちいずれかの金属箔配線とのみ導通している配線構造体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの配線構造体が、上記ピン端子が突出するように筐体に収容され、該筐体の外側に、該筐体から突出した該ピン端子を含むコネクタ取付部が設けられたジョイントボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−74563(P2012−74563A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218632(P2010−218632)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】