説明

酸化物半導体膜の処理方法および半導体装置の作製方法

【課題】トランジスタに用いることが可能な、低抵抗領域を有する酸化物半導体膜を提供する。また、高速動作が可能な、酸化物半導体膜を用いたトランジスタを生産性高く提供する。また、高速動作が可能な、酸化物半導体膜を用いたトランジスタを有する高性能の半導体装置を生産性高く提供する。
【解決手段】酸化物半導体膜上に還元性を有する膜を成膜し、次に酸化物半導体膜から還元性を有する膜へ酸素の一部を移動させ、次に還元性を有する膜を介して酸化物半導体膜に不純物を注入した後、還元性を有する膜を除去することで、酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。従って、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体膜を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体膜としてシリコン系半導体膜が広く知られているが、その他にも酸化物半導体膜が注目されている。
【0004】
酸化物半導体膜を用いたトランジスタとしては、より高機能な半導体装置への応用のために、より高い電気特性が求められている。酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、アルミニウム反応法により自己整合的に低抵抗なソース領域およびドレイン領域を形成し、寄生容量を低減することで高速動作を可能とする技術が報告されている(非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Narihiro Morosawa, Yoshihiro Ohshima, Mitsuo Morooka, Toshiaki Arai, Tatsuya Sasaoka, 「A Novel Self−Aligned Top−Gate Oxide TFT for AM−OLED Displays」、 SID 11 DIGEST pp479−482
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トランジスタに用いることが可能な、低抵抗領域を有する酸化物半導体膜を提供することを課題の一とする。
【0007】
寄生容量を低減することで高速動作が可能な、酸化物半導体膜を用いたトランジスタを生産性高く提供することを課題の一とする。
【0008】
また、寄生容量を低減することで高速動作が可能な、酸化物半導体膜を用いたトランジスタを有する高性能の半導体装置を生産性高く提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
酸化物半導体膜上に還元性を有する膜を成膜し、酸化物半導体膜から還元性を有する膜へ酸素の一部を移動させた後、還元性を有する膜を除去することで、酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する。
【0010】
または、酸化物半導体膜上に還元性を有する膜を成膜し、次に還元性を有する膜を介して酸化物半導体膜に不純物を注入し、次に酸化物半導体膜から還元性を有する膜へ酸素の一部を移動させた後、還元性を有する膜を除去することで、酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する。
【0011】
または、酸化物半導体膜上に還元性を有する膜を成膜し、次に酸化物半導体膜から還元性を有する膜へ酸素の一部を移動させ、次に還元性を有する膜を介して酸化物半導体膜に不純物を注入した後、還元性を有する膜を除去することで、酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成する。
【0012】
なお、酸化物半導体膜から還元性を有する膜へ酸素の一部を移動する、とは、酸化物半導体膜を構成する酸素原子の一部が還元性を有する膜に取り込まれることをいう。
【0013】
なお、酸化物半導体膜から還元性を有する膜へ酸素の一部が移動する際に、還元性を有する膜を構成する材料の一部が酸化物半導体膜へ移動することがある。還元性を有する膜の材料の一部が酸化物半導体膜に移動することで、還元性を有する膜の材料により酸化物半導体膜にキャリアが生成され、酸化物半導体膜をさらに低抵抗化することが可能となる。具体的には、還元性を有する膜の材料は酸化物半導体膜において、ドナーまたはアクセプターとして機能する。
【0014】
還元性を有する膜は、還元性を有する、金属膜または半金属膜を用いればよい。
【0015】
例えば、還元性を有する膜として、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタルまたはタングステンを用いればよい。
【0016】
または、還元性を有する膜として、酸化還元電位がタングステン以下である材料を用いてもよい。なお、酸化還元電位がタングステン以下であると酸化物半導体膜を還元する機能を有するが、酸化還元電位がタングステンより大きいと酸化物半導体膜を還元する機能が低い。
【0017】
または、還元性を有する膜として、イオン化傾向がタングステン以上である材料を用いてもよい。なお、イオン化傾向がタングステン以上であると酸化物半導体膜を還元する機能を有するが、イオン化傾向がタングステン未満であると酸化物半導体膜を還元する機能が低い。
【0018】
または、還元性を有する膜として、酸素と反応して不動態となる材料を用いてもよい。
【0019】
還元性を有する膜として、好ましくは、ニッケル膜、アルミニウム膜またはマグネシウム膜を用いる。
【0020】
例えば、還元性を有する膜の酸化物半導体膜に対する還元性が高いと、室温にて容易に酸化物半導体膜から還元性を有する膜へ酸素の一部を移動させることができる。
【0021】
または、加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜から還元性を有する膜へ酸素の一部を移動させることができる。
【0022】
なお、加熱処理は不活性雰囲気(窒素雰囲気または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなど)雰囲気など)または減圧雰囲気にて行うと好ましい。不活性雰囲気で加熱処理を行うことで、還元性を有する膜が雰囲気の影響で変質してしまうことを抑制できる。還元性を有する膜が変質してしまうことで、後に還元性を有する膜を除去することが困難になることがある。還元性を有する膜が除去されずに残存することで、トランジスタの電気特性が低下してしまうことがある。
【0023】
また、還元性を有する膜を除去せずに絶縁化させる場合、還元性を有する膜を完全に反応させ、絶縁化させることが困難である。このとき、未反応または完全に反応しきっていない還元性を有する膜がトランジスタの電気特性を低下させることがある。従って、還元性を有する膜を完全に絶縁化させるのではなく、あらかじめ除去しておくことが好ましい。
【0024】
このように、酸化物半導体膜から還元性を有する膜に酸素が移動することにより、酸化物半導体膜中または/および酸化物半導体膜における還元性を有する膜との界面近傍に酸素欠損を有する領域を形成することができる。酸素欠損を有する領域は、キャリア密度の高い、低抵抗領域となる。
【0025】
酸化物半導体膜に注入する不純物として、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を用いればよい。具体的には、酸化物半導体膜中でキャリアを生成する材料を不純物に用いることができる。
【0026】
例えば、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物として、水素、ヘリウム、ホウ素、窒素、フッ素、ネオン、アルミニウム、リン、アルゴン、ヒ素、クリプトン、インジウム、スズ、アンチモンおよびキセノンから選ばれた一種以上を注入してもよい。
【0027】
酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物として、好ましくは、ホウ素またはリンを用いる。ホウ素またはリンは、比較的低濃度でも酸化物半導体膜を低抵抗化できる。
【0028】
また、酸化物半導体膜から還元性を有する膜に酸素が移動することに加え、酸化物半導体膜中に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入することにより、不純物を注入しない場合と比べ、より酸化物半導体膜を低抵抗化させた領域を形成できる。
【0029】
なお、酸化物半導体膜中に、還元性を有する膜を介して酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入することにより、還元性を有する膜を構成する材料の一部が酸化物半導体膜中に移動する場合がある。その場合に、さらに酸化物半導体膜を低抵抗化させることができる。
【0030】
以上のようにして形成した低抵抗領域を有する酸化物半導体膜は、例えば、酸化物半導体膜を用いたトランジスタにおいて、低抵抗領域をソース領域およびドレイン領域とし、低抵抗化されていない領域をチャネル領域とすることができる。または、低抵抗領域をLDD(Lightly Doped Drain)領域とすることができる。
【0031】
または、低抵抗領域を透明導電膜とすることができる。低抵抗領域を有する酸化物半導体膜を電極または配線として用いてもよい。
【0032】
以下に、本発明の一態様に係る酸化物半導体膜を用いたトランジスタに、前述の低抵抗領域を有する酸化物半導体膜を用いる場合におけるトランジスタの作製方法について説明する。
【0033】
まず、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、還元性を有する膜を除去することでトランジスタを作製する。
【0034】
または、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、加熱処理を行う。次に、還元性を有する膜を除去することでトランジスタを作製する。
【0035】
または、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、還元性を有する膜を除去する。次に、加熱処理を行うことでトランジスタを作製する。
【0036】
または、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、ゲート電極をマスクとし、還元性を有する膜を介して酸化物半導体膜の一部に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入する。次に、還元性を有する膜を除去することでトランジスタを作製する。
【0037】
または、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、ゲート電極をマスクとし、還元性を有する膜を介して酸化物半導体膜の一部に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入する。次に、加熱処理を行う。次に、還元性を有する膜を除去することでトランジスタを作製する。
【0038】
または、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、ゲート電極をマスクとし、還元性を有する膜を介して酸化物半導体膜の一部に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入する。次に、還元性を有する膜を除去する。次に、加熱処理を行うことでトランジスタを作製する。
【0039】
または、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、加熱処理を行う。次に、ゲート電極をマスクとし、還元性を有する膜を介して酸化物半導体膜の一部に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入する。次に、還元性を有する膜を除去することでトランジスタを作製する。
【0040】
なお、還元性を有する膜を成膜した後で不純物を注入するため、ゲート電極の側壁には還元性を有する膜が堆積しており、その分だけ酸化物半導体膜において不純物の注入されない領域が広がる。該領域はLDD領域となり、シート抵抗値が1kΩ/sq以上100MΩ/sq以下、好ましくは10kΩ/sq以上50MΩ/sq以下、さらに好ましくは100kΩ/sq以上20MΩ/sq以下となる。なお、本明細書では、不純物の注入されない領域であっても、酸素の一部が脱離した領域であればLDD領域と呼ぶ。
【0041】
LDD領域を有することで、ホットキャリア劣化などのトランジスタの劣化を低減し、チャネル長が短くなることによってしきい値電圧がマイナス方向へシフトすることを抑制することができる。
【0042】
または、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、ゲート電極をマスクとし、酸化物半導体膜の一部に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、還元性を有する膜を除去することでトランジスタを作製する。なお、不純物の注入は、絶縁膜を介して行ってもよい。その場合、ゲート絶縁膜の形成を不純物の注入後に行えばよい。
【0043】
または、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、ゲート電極をマスクとし、酸化物半導体膜の一部に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、加熱処理を行う。次に、還元性を有する膜を除去することでトランジスタを作製する。なお、不純物の注入は、絶縁膜を介して行ってもよい。その場合、ゲート絶縁膜の形成を不純物の注入後に行えばよい。
【0044】
または、絶縁表面を有する基板上に酸化物半導体膜を成膜する。次に、酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜する。次に、絶縁膜上に導電膜を成膜する。次に、導電膜および絶縁膜を加工してゲート電極およびゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで酸化物半導体膜の一部を露出する。次に、ゲート電極をマスクとし、酸化物半導体膜の一部に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入する。次に、露出した酸化物半導体膜上およびゲート電極上に還元性を有する膜を成膜する。次に、還元性を有する膜を除去する。次に、加熱処理を行うことでトランジスタを作製する。なお、不純物の注入は、絶縁膜を介して行ってもよい。その場合、ゲート絶縁膜の形成を不純物の注入後に行えばよい。
【0045】
なお、酸化物半導体膜の不純物の注入された領域または/および還元性を有する膜が形成された領域は、低抵抗化され、シート抵抗値が10Ω/sq以上100kΩ/sq以下、好ましくは10Ω/sq以上20kΩ/sq以下、さらに好ましくは10Ω/sq以上3kΩ/sq以下とする。
【0046】
以上のように酸化物半導体膜の低抵抗化された領域は、ゲート電極をマスクとして自己整合的に形成されるため、低抵抗領域とゲート電極との重なりがほとんどなく、寄生容量を低減することができる。そのため、本発明の一態様に係るトランジスタは、微細化しても寄生容量の影響でトランジスタの動作速度が低下することなく、高速動作が可能となる。
【0047】
また、酸化物半導体膜を低抵抗化するために用いた還元性を有する膜を後の工程で除去することで、トランジスタの作製後に、還元性を有する膜が残存することで生じる短絡などの不良を低減することができる。不良が低減されることで、トランジスタの歩留まりが向上し、生産性を高めることができる。
【0048】
なお、ゲート電極の側壁に接して側壁絶縁膜を設けてもよい。
【0049】
側壁絶縁膜は、ゲート電極上に絶縁膜を成膜し、該絶縁膜に対し異方性の高いエッチングを行うことで、自己整合的に形成すればよい。異方性の高いエッチングとしては、例えば、ドライエッチング法を用いればよい。
【0050】
ゲート電極の側壁に接して側壁絶縁膜を設けた場合、ゲート電極と側壁絶縁膜を合わせた領域と同様の上面形状でゲート絶縁膜を形成してもよい。
【0051】
また、不純物の注入時に、ゲート電極および側壁絶縁膜をマスクとして用いても構わない。その場合、側壁絶縁膜と重畳する領域において、酸化物半導体膜の不純物の添加されない領域が設けられる。
【0052】
または、不純物の注入時はゲート電極をマスクとし、その後側壁絶縁膜を形成してもよい。
【0053】
また、還元性を有する膜の成膜時に側壁絶縁膜が設けられていてもよい。
【0054】
還元性を有する膜の成膜時に側壁絶縁膜が設けられていることにより、還元性を有する膜を除去する際に、還元性を有する膜が完全に除去しきれなかった場合でも、ゲート電極とソース領域およびドレイン領域とのショートが起こりにくくなり、トランジスタの電気特性の低下要因を低減できる。
【0055】
側壁絶縁膜およびゲート電極と重畳しない酸化物半導体膜の領域(第1の領域)と比べ、側壁絶縁膜と重畳する酸化物半導体膜の領域(第2の領域)の抵抗値が高いことで、ホットキャリア劣化などのトランジスタの劣化を低減し、チャネル長が短くなることによってしきい値電圧がマイナス方向へシフトすることを抑制することができる。
【0056】
なお、第1の領域は、シート抵抗値が10Ω/sq以上100kΩ/sq以下、好ましくは10Ω/sq以上20kΩ/sq以下、さらに好ましくは10Ω/sq以上3kΩ/sq以下とする。
【0057】
また、第2の領域をLDD領域とする場合、シート抵抗値が1kΩ/sq以上100MΩ/sq以下、好ましくは10kΩ/sq以上50MΩ/sq以下、さらに好ましくは100kΩ/sq以上20MΩ/sq以下とする。
【0058】
なお、第2の領域をオフセット領域(Loff領域ともいう。)にする場合、第2の領域のシート抵抗値はオフ状態のチャネル領域と同程度となる。具体的には、50MΩ/sq以上、好ましくは1GΩ/sq以上となる。
【0059】
または、Loff領域は、極めてキャリア密度が低く、具体的には1×1014個/cm以下、好ましくは1×1012個/cm以下、さらに好ましくは1×1010個/cm以下とする。
【0060】
以上のように酸化物半導体膜の低抵抗化された領域は、ゲート電極および/または側壁絶縁膜をマスクとして自己整合的に形成されるため、低抵抗領域とゲート電極との重なりがほとんどなく、寄生容量を低減することができる。そのため、本発明の一態様に係るトランジスタは、微細化しても寄生容量の影響でトランジスタの動作速度が低下することなく、高速動作が可能となる。
【0061】
なお、本発明の一態様に係るトランジスタは、前述の方法で形成した低抵抗領域をトランジスタのソース領域およびドレイン領域とし、ソース領域およびドレイン領域は、それぞれ配線が接続されていても構わない。
【0062】
また、本発明の一態様に係るトランジスタ上に層間絶縁膜を設けても構わない。また、層間絶縁膜上に前述の配線を設けても構わない。
【0063】
また、本発明の一態様に係るトランジスタは、ソース領域およびドレイン領域にそれぞれ接続するソース電極およびドレイン電極を設けても構わない。
【0064】
以上のように、本発明の一態様により、酸化物半導体膜に低抵抗領域を形成することが可能となる。
【0065】
また、トランジスタに還元性を有する膜が残存しないことで、還元性を有する膜が原因で生じるトランジスタの短絡などの不良が低減され、トランジスタの歩留まりが向上し、生産性を高めることができる。
【0066】
また、LDD領域またはLoff領域を設けることで、トランジスタのチャネル長が短くなることによってしきい値電圧がマイナス方向へシフトすることを抑制することができる。
【0067】
また、該トランジスタを用いた、高性能な半導体装置を生産性高く作製することができる。
【発明の効果】
【0068】
トランジスタに用いることが可能な、低抵抗領域を有する酸化物半導体膜を形成することができる。
【0069】
酸化物半導体膜を用いた高速動作が可能なトランジスタを生産性高く作製することができる。
【0070】
また、酸化物半導体膜を用いた高速動作が可能なトランジスタを有する高性能の半導体装置を生産性高く作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】酸化物半導体膜の作製方法の一例を示す断面図。
【図2】酸化物半導体膜の作製方法の一例を示す断面図。
【図3】酸化物半導体膜の作製方法の一例を示す断面図。
【図4】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図5】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図6】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図7】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図8】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図9】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図10】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図11】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図12】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図13】半導体装置の作製方法の一例を示す断面図。
【図14】本発明の一態様であるトランジスタを用いた液晶表示装置の一例を示す回路図。
【図15】本発明の一態様であるトランジスタを用いた半導体記憶装置の一例を示す回路図および電気特性を示す図。
【図16】本発明の一態様であるトランジスタを用いた半導体記憶装置の一例を示す回路図および電気特性を示す図。
【図17】本発明の一態様であるトランジスタを用いたCPUの具体例を示すブロック図およびその一部の回路図。
【図18】本発明の一態様であるトランジスタを用いたイメージセンサの一例を示す回路図および断面図。
【図19】本発明の一態様である電子機器の一例を示す斜視図。
【図20】低抵抗化された酸化物半導体膜のシート抵抗値を示す図。
【図21】低抵抗化された酸化物半導体膜のシート抵抗値を示す図。
【図22】本発明の一態様に係る酸化物半導体の結晶構造を説明する図。
【図23】本発明の一態様に係る酸化物半導体の結晶構造を説明する図。
【図24】本発明の一態様に係る酸化物半導体の結晶構造を説明する図。
【図25】本発明の一態様に係る酸化物半導体の結晶構造を説明する図。
【図26】計算によって得られた電界効果移動度のV依存性を説明する図。
【図27】計算によって得られたIおよび電界効果移動度のV依存性を説明する図。
【図28】計算によって得られたIおよび電界効果移動度のV依存性を説明する図。
【図29】計算によって得られたIおよび電界効果移動度のV依存性を説明する図。
【図30】計算に用いたトランジスタの上面図および断面図。
【発明を実施するための形態】
【0072】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更しうることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態および実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0073】
以下、本発明の説明を行うが、本明細書で用いる用語について簡単に説明する。まず、トランジスタのソースおよびドレインについては、本明細書においては、一方をドレインと呼ぶとき他方をソースと呼び、電位の高低によって、それらを区別しない。従って、本明細書において、ソースとされている部分をドレインと読み替えることもできる。また、単にソースと記載する場合、ソース電極およびソース領域のいずれかを示す。また、単にドレインと記載する場合、ドレイン電極およびドレイン領域のいずれかを示す。
【0074】
電圧は、ある電位と、基準の電位(例えばソース電位、接地電位)との電位差のことを示す場合が多い。よって、電圧と電位とを言い換えることが可能である。
【0075】
本明細書においては、「接続する」と表現される場合であっても、現実の回路においては、物理的な接続部分がなく、配線が延在しているだけの場合もある。また、抵抗素子などの、回路の動作に著しい作用を与えない素子が間に含まれていても構わない。
【0076】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順または積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0077】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る酸化物半導体膜の形成方法について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0078】
なお、図1乃至図3は、酸化物半導体膜と還元性を有する膜との界面近傍を拡大した断面模式図である。
【0079】
まず、酸化物半導体膜100を成膜する(図1(A)参照。)。
【0080】
次に、酸化物半導体膜100上に還元性を有する膜110を接して設ける(図1(B)参照。)。
【0081】
次に、酸化物半導体膜100から還元性を有する膜110へ酸素の一部を移動させ、酸化物半導体膜100と還元性を有する膜110との界面近傍に酸素の一部が脱離した領域101および酸素を含む領域111を形成する(図1(C)参照。)。
【0082】
なお、酸素の一部が脱離した領域101は、酸化物半導体膜100の一部から酸素が脱離することで形成される。
【0083】
また、酸素を含む領域111は、還元性を有する膜110に酸素が付加されることで形成される。
【0084】
次に、還元性を有する膜110および酸素を含む領域111を除去することで、酸素の一部が脱離した領域101を有する酸化物半導体膜106aを形成することができる(図1(D)参照。)。
【0085】
酸化物半導体膜100から酸素の一部が脱離した領域101は、酸化物半導体膜100よりも低抵抗な領域である。これは、酸化物半導体膜中の酸素欠損の一部がドナーとなり、電子を生成することで、キャリア密度が高まるためである。
【0086】
そのため、酸化物半導体膜106aは低抵抗となる。
【0087】
なお、酸化物半導体膜100から還元性を有する膜110へ酸素の一部を移動させるために、加熱処理を行うと好ましい。
【0088】
ただし、還元性を有する膜110が、室温でも十分な還元性を有する場合、前述の加熱処理は不要となる。
【0089】
なお、酸化物半導体膜100から還元性を有する膜110へ酸素の一部が移動する際に、還元性を有する膜110を構成する材料の一部が酸化物半導体膜100へ移動することがある。還元性を有する膜110の材料の一部が酸化物半導体膜100に移動することで、還元性を有する膜110の材料により酸化物半導体膜100にキャリアが生成され、酸化物半導体膜100をさらに低抵抗化することが可能となる。具体的には、還元性を有する膜110の材料は酸化物半導体膜100において、ドナーまたはアクセプターとしての機能する。
【0090】
ここで、酸化物半導体膜100として、例えば、In−O系材料、Ga−O系材料、Zn−O系材料、Sn−O系材料、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系材料、Sn−Zn−O系材料、Al−Zn−O系材料、Zn−Mg−O系材料、Sn−Mg−O系材料、In−Mg−O系材料、In−Ga−O系材料、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系材料、In−Al−Zn−O系材料、In−Sn−Zn−O系材料、Sn−Ga−Zn−O系材料、Al−Ga−Zn−O系材料、Sn−Al−Zn−O系材料、In−Hf−Zn−O系材料、In−La−Zn−O系材料、In−Ce−Zn−O系材料、In−Pr−Zn−O系材料、In−Nd−Zn−O系材料、In−Sm−Zn−O系材料、In−Eu−Zn−O系材料、In−Gd−Zn−O系材料、In−Tb−Zn−O系材料、In−Dy−Zn−O系材料、In−Ho−Zn−O系材料、In−Er−Zn−O系材料、In−Tm−Zn−O系材料、In−Yb−Zn−O系材料、In−Lu−Zn−O系材料、In−Ni−Zn−O系材料、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系材料、In−Hf−Ga−Zn−O系材料、In−Al−Ga−Zn−O系材料、In−Sn−Al−Zn−O系材料、In−Sn−Hf−Zn−O系材料、In−Hf−Al−Zn−O系材料を用いることができる。
【0091】
例えば、In−Ga−Zn−O系材料とは、In、GaおよびZnを主成分として有する酸化物という意味であり、In、GaおよびZnの原子数比は問わない。
【0092】
酸化物半導体膜100としてIn−Zn−O系材料を用いる場合、原子数比で、In/Zn=0.5以上50以下、好ましくはIn/Zn=1以上20以下、さらに好ましくはIn/Zn=1.5以上15以下とする。Znの原子数比を前述の範囲とすることで、トランジスタの電界効果移動度を向上させることができる。ここで、化合物の原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとすると好ましい。
【0093】
酸化物半導体膜100として、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用いてもよい。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn、Sn、HfおよびCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えば、Mとして、Ga、GaおよびAl、GaおよびMn、またはGaおよびCoなどを用いてもよい。
【0094】
また、還元性を有する膜110として、金属膜または半金属膜を用いればよい。
【0095】
例えば、還元性を有する膜110として、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、チタン、バナジウム、クロム、ニッケル、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタルまたはタングステンを用いればよい。
【0096】
または、還元性を有する膜110として、酸化還元電位がタングステン以下である材料を用いてもよい。
【0097】
または、還元性を有する膜110として、イオン化傾向がタングステン以上である材料を用いてもよい。
【0098】
または、還元性を有する膜110として、酸素と反応して不動態となる材料を用いてもよい。
【0099】
還元性を有する膜110として、好ましくは、ニッケル膜、アルミニウム膜またはマグネシウム膜を用いる。
【0100】
次に、図2を用いて、図1とは異なる方法で酸化物半導体膜を形成する方法を説明する。
【0101】
まず、酸化物半導体膜100を成膜する(図2(A)参照。)。
【0102】
次に、酸化物半導体膜100上に還元性を有する膜110を接して設ける(図2(B)参照。)。
【0103】
次に、還元性を有する膜110を介して酸化物半導体膜100に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、不純物を含む酸化物半導体膜102を形成する(図2(C)参照。)。
【0104】
なお、酸化物半導体膜100中に、還元性を有する膜110を介して酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入することにより、還元性を有する膜110を構成する材料の一部が酸化物半導体膜100中に移動する場合がある。その場合に、さらに酸化物半導体膜100を低抵抗化させることができる。
【0105】
不純物の注入は、例えば、イオン注入法またはイオンドーピング法を用いればよい。
【0106】
不純物の注入量は、1×1013ions/cm以上1×1016ions/cm以下、好ましくは5×1013ions/cm以上5×1015ions/cm以下とする。
【0107】
次に、不純物を含む酸化物半導体膜102から還元性を有する膜110へ酸素の一部を移動させ、不純物を含む酸化物半導体膜102と還元性を有する膜110との界面近傍に酸素の一部が脱離した領域103および酸素を含む領域111を形成する(図2(D)参照。)。
【0108】
次に、還元性を有する膜110および酸素を含む領域111を除去することで、不純物を含む酸化物半導体膜102および酸素の一部が脱離した領域103を有する酸化物半導体膜106bを形成することができる(図2(E)参照。)。
【0109】
不純物を含む酸化物半導体膜102は、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を酸化物半導体膜100に注入することで形成されるため、酸化物半導体膜100よりも低抵抗である。
【0110】
また、不純物を含む酸化物半導体膜102から酸素の一部が脱離した領域103は、不純物を含む酸化物半導体膜102よりも低抵抗な領域である。これは、酸化物半導体膜中の酸素欠損の一部がドナーとなり、電子を生成することで、キャリア密度が高まるためである。
【0111】
そのため、酸化物半導体膜106bは低抵抗となる。
【0112】
なお、図1と同様に、不純物を含む酸化物半導体膜102から還元性を有する膜110へ酸素の一部を移動させるために、加熱処理を行うと好ましい。
【0113】
次に、図3を用いて、図1および図2とは異なる方法で酸化物半導体膜を形成する方法を説明する。
【0114】
まず、酸化物半導体膜100を成膜する(図3(A)参照。)。
【0115】
次に、酸化物半導体膜100上に還元性を有する膜110を接して設ける(図3(B)参照。)。
【0116】
次に、酸化物半導体膜100から還元性を有する膜110へ酸素の一部を移動させ、酸化物半導体膜100と還元性を有する膜110との界面近傍に酸素の一部が脱離した領域101および酸素を含む領域111を形成する(図3(C)参照。)。
【0117】
次に、還元性を有する膜110および酸素を含む領域111を介して酸化物半導体膜100および酸素の一部が脱離した領域101に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、不純物を含む酸化物半導体膜104および不純物を含む酸素の一部が脱離した領域105を形成する(図3(D)参照。)。
【0118】
次に、還元性を有する膜110および酸素を含む領域111を除去することで、不純物を含む酸化物半導体膜104および不純物を含む酸素の一部が脱離した領域105を有する酸化物半導体膜106cを形成することができる(図3(E)参照。)。
【0119】
不純物を含む酸化物半導体膜104は、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を酸化物半導体膜100に注入することで形成されるため、酸化物半導体膜100よりも低抵抗である。
【0120】
また、不純物を含む酸化物半導体膜から酸素の一部が脱離した不純物を含む酸素の一部が脱離した領域105は、不純物を含む酸化物半導体膜104よりも低抵抗な領域である。これは、酸化物半導体膜中の酸素欠損の一部がドナーとなり、電子を生成することで、キャリア密度が高まるためである。
【0121】
そのため、酸化物半導体膜106cは低抵抗となる。
【0122】
なお、図1と同様に、酸化物半導体膜100から還元性を有する膜110へ酸素の一部を移動させるために、加熱処理を行うと好ましい。
【0123】
以上のようにして、低抵抗領域を有する酸化物半導体膜を形成することができる。
【0124】
低抵抗領域を有する酸化物半導体膜は、トランジスタのソース領域およびドレイン領域、または半導体装置の透明導電膜などに用いることができる。
【0125】
低抵抗領域を有する酸化物半導体膜は、シート抵抗値が10Ω/sq以上100kΩ/sq以下、好ましくは10Ω/sq以上20kΩ/sq以下、さらに好ましくは10Ω/sq以上3kΩ/sq以下となる。
【0126】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0127】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る半導体装置であるトランジスタの作製方法の一例について図4乃至図13を用いて説明する。
【0128】
まず、基板200を準備する(図4(A)参照。)。
【0129】
基板200は絶縁表面を有する。また、基板上に下地絶縁膜が設けられているものを基板200としても構わない。
【0130】
基板200は、加熱処理により酸素を放出する基板を用いてもよい。
【0131】
「加熱処理により酸素を放出する」とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy:昇温脱離ガス分光法)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の放出量が3.0×1014atoms/cm以上、1.0×1015atoms/cm以上、3.0×1015atoms/cm以上、5.0×1015atoms/cm以上、または1.0×1016atoms/cm以上であることをいう。
【0132】
なお、酸素の放出量は、TDS分析において、基板温度が150℃以上700℃以下、200℃以上650℃以下、または250℃以上470℃以下の範囲で測定する。例えば、基板温度が150℃未満で起こる酸素の放出は、主として基板表面に吸着した、比較的安定性の低い酸素起因と推定されるため、測定範囲に含めないことが好ましい。また、基板温度を700℃以下の範囲とすることで、トランジスタの作製工程に即した酸素の放出量を評価していることになる。
【0133】
ここで、TDS分析を用いた酸素の放出量の測定方法について、以下に説明する。
【0134】
TDS分析したときの気体の全放出量は、放出ガスのイオン強度の積分値に比例する。そしてこの積分値と標準試料との比較により、気体の全放出量を計算することができる。標準試料の基準値は、所定の原子を含む試料の、スペクトルの積分値に対する原子の密度の割合である。
【0135】
例えば、標準試料である所定の密度の水素を含むシリコンウェハのTDS分析結果、および絶縁膜のTDS分析結果から、絶縁膜の酸素分子の放出量(NO2)は、数式1で求めることができる。ここで、TDS分析で得られる質量電荷比(m/z)32で検出されるガスの全てが酸素分子由来と仮定する。m/z=32のものとしてほかにCHOHがあるが、存在する可能性が低いものとしてここでは考慮しない。また、酸素原子の同位体であるm/z=17の酸素原子およびm/z=18の酸素原子を含む酸素分子についても、自然界における存在比率が極微量であるため考慮しない。
【0136】
【数1】

【0137】
H2は、標準試料から脱離した水素分子を密度で換算した値である。SH2は、標準試料をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。ここで、標準試料の基準値を、NH2/SH2とする。SO2は、絶縁膜をTDS分析したときのイオン強度の積分値である。αは、TDS分析におけるイオン強度に影響する係数である。数式1の詳細に関しては、特開平6−275697公報を参照する。なお、上記絶縁膜の酸素の放出量を測定するTDS装置としては、電子科学株式会社製の昇温脱離分析装置EMD−WA1000S/Wを用い、標準試料として1×1016atoms/cmの水素原子を含むシリコンウェハを用いて測定した。
【0138】
また、TDS分析において、酸素の一部は酸素原子として検出される。酸素分子と酸素原子の比率は、酸素分子のイオン化率から算出することができる。なお、上述のαは酸素分子のイオン化率を含むため、酸素分子の放出量を評価することで、酸素原子の放出量についても見積もることができる。
【0139】
なお、NO2は酸素分子の放出量である。酸素原子に換算したときの放出量は、酸素分子の放出量の2倍となる。
【0140】
なお、基板200から酸素が供給されることで、酸化物半導体膜のチャネル領域と基板200との界面準位密度を低減することができる。この結果、トランジスタの動作などに起因して、酸化物半導体膜のチャネル領域と基板200との界面にキャリアが捕獲されることを抑制することができ、電気特性の劣化の少ないトランジスタを得ることができる。
【0141】
基板200は、材料に大きな制限はないが、少なくとも後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体基板、シリコンウェハなどの半導体基板、ステンレス鋼などの導体基板を、基板200として用いてもよい。なお、半導体基板または導体基板を用いる場合、基板200の表面には絶縁体材料が設けられる。なお、後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有すればプラスチック基板を用いてもよい。
【0142】
基板200は、トランジスタの作製面の平坦性が高いと、後に形成する酸化物半導体膜が結晶性を有しやすくなるため好ましい。
【0143】
具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下である基板200を用いる。なお、Raは、JIS B 0601:2001(ISO4287:1997)で定義されている算術平均粗さを曲面に対して適用できるよう三次元に拡張したものであり、「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」で表現でき、数式2にて定義される。
【0144】
【数2】

【0145】
ここで、指定面とは、粗さ計測の対象となる面であり、座標(x,y,f(x,y)),(x,y,f(x,y)),(x,y,f(x,y)),(x,y,f(x,y))の4点で表される四角形の領域とし、指定面をxy平面に投影した長方形の面積をS、基準面の高さ(指定面の平均の高さ)をZとする。Raは原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)にて測定可能である。
【0146】
次に、基板200上に酸化物半導体膜256を成膜する(図4(B)参照。)。酸化物半導体膜256は、例えば、実施の形態1に示した酸化物半導体膜100で示した材料を用いればよい。
【0147】
なお、酸化物半導体膜256は、成膜電力を高くすること、成膜圧力を低くすること、ターゲット−基板間距離(T−S間距離)を短くすることおよび基板加熱温度(Tsub)を高くすることが重要である。
【0148】
具体的には、単位面積あたりの成膜電力を5W/cm以上50W/cm以下、成膜圧力を0.01Pa以上0.4Pa以下、好ましくは0.05Pa以上0.3Pa以下、T−S間距離を10mm以上200mm以下、好ましくは20mm以上80mm以下、Tsubを100℃以上500℃以下、好ましくは150℃以上450℃以下とする。
【0149】
また、酸化物半導体膜256中の不純物濃度を極力低減すると好ましい。酸化物半導体膜256中の不純物濃度を低減するためには、材料の純度を高めること、成膜室の内部リークおよび外部リークを低減することなどが効果的である。
【0150】
以上のような方法で酸化物半導体膜256を成膜することにより、多結晶膜またはCAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜である酸化物半導体膜が得られる。
【0151】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部および非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう。)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0152】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0153】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0154】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0155】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0156】
CAAC−OS膜に含まれる結晶構造の一例について図22乃至図25を用いて詳細に説明する。なお、特に断りがない限り、図22乃至図25は上方向をc軸方向とし、c軸方向と直交する面をab面とする。なお、単に上半分、下半分という場合、ab面を境にした場合の上半分、下半分をいう。また、図22において丸で囲まれたOは4配位のOを示し、二重丸で囲まれたOは3配位のOを示す。
【0157】
図22(A)に、1個の6配位のInと、Inに近接の6個の4配位の酸素原子(以下4配位のO)と、を有する構造を示す。ここでは、金属原子が1個に対して、近接の酸素原子のみ示した構造を小グループと呼ぶ。図22(A)の構造は、八面体構造をとるが、簡単のため平面構造で示している。なお、図22(A)の上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがある。図22(A)に示す小グループは電荷が0である。
【0158】
図22(B)に、1個の5配位のGaと、Gaに近接の3個の3配位の酸素原子(以下3配位のO)と、Gaに近接の2個の4配位のOと、を有する構造を示す。3配位のOは、いずれもab面に存在する。図22(B)の上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがある。また、Inも5配位をとるため、図22(B)に示す構造をとりうる。図22(B)に示す小グループは電荷が0である。
【0159】
図22(C)に、1個の4配位のZnと、Znに近接の4個の4配位のOと、を有する構造を示す。図22(C)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。または、図22(C)の上半分に3個の4配位のOがあり、下半分に1個の4配位のOがあってもよい。図22(C)に示す小グループは電荷が0である。
【0160】
図22(D)に、1個の6配位のSnと、Snに近接の6個の4配位のOと、を有する構造を示す。図22(D)の上半分には3個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがある。図22(D)に示す小グループは電荷が+1となる。
【0161】
図22(E)に、2個のZnを含む小グループを示す。図22(E)の上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には1個の4配位のOがある。図22(E)に示す小グループは電荷が−1となる。
【0162】
ここでは、複数の小グループの集合体を中グループと呼び、複数の中グループの集合体を大グループ(ユニットセルともいう。)と呼ぶ。
【0163】
ここで、これらの小グループ同士が結合する規則について説明する。図22(A)に示す6配位のInの上半分の3個のOは、下方向にそれぞれ3個の近接Inを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Inを有する。図22(B)に示す5配位のGaの上半分の1個のOは下方向に1個の近接Gaを有し、下半分の1個のOは上方向に1個の近接Gaを有する。図22(C)に示す4配位のZnの上半分の1個のOは、下方向に1個の近接Znを有し、下半分の3個のOは、上方向にそれぞれ3個の近接Znを有する。この様に、金属原子の上方向の4配位のOの数と、そのOの下方向にある近接金属原子の数は等しく、同様に金属原子の下方向の4配位のOの数と、そのOの上方向にある近接金属原子の数は等しい。Oは4配位なので、下方向にある近接金属原子の数と、上方向にある近接金属原子の数の和は4になる。従って、金属原子の上方向にある4配位のOの数と、別の金属原子の下方向にある4配位のOの数との和が4個のとき、金属原子を有する二種の小グループ同士は結合することができる。例えば、6配位の金属原子(InまたはSn)が下半分の4配位のOを介して結合する場合、4配位のOが3個であるため、5配位の金属原子(GaまたはIn)、4配位の金属原子(Zn)のいずれかと結合することになる。
【0164】
これらの配位数を有する金属原子は、c軸方向において、4配位のOを介して結合する。また、このほかにも、層構造の合計の電荷が0となるように複数の小グループが結合して中グループを構成する。
【0165】
図23(A)に、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。図23(B)に、3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図23(C)は、図23(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示す。
【0166】
図23(A)においては、簡単のため、3配位のOは省略し、4配位のOは個数のみ示し、例えば、Snの上半分および下半分にはそれぞれ3個ずつ4配位のOがあることを丸枠の3として示している。同様に、図23(A)において、Inの上半分および下半分にはそれぞれ1個ずつ4配位のOがあり、丸枠の1として示している。また、同様に、図23(A)において、下半分には1個の4配位のOがあり、上半分には3個の4配位のOがあるZnと、上半分には1個の4配位のOがあり、下半分には3個の4配位のOがあるZnとを示している。
【0167】
図23(A)において、In−Sn−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnが、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に3個の4配位のOがあるZnと結合し、そのZnの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合し、そのInが、上半分に1個の4配位のOがあるZn2個からなる小グループと結合し、この小グループの下半分の1個の4配位のOを介して4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるSnと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0168】
ここで、3配位のOおよび4配位のOの場合、結合1本当たりの電荷はそれぞれ−0.667、−0.5と考えることができる。例えば、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Sn(5配位または6配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+4である。従って、Snを含む小グループは電荷が+1となる。そのため、Snを含む層構造を形成するためには、電荷+1を打ち消す電荷−1が必要となる。電荷−1をとる構造として、図22(E)に示すように、2個のZnを含む小グループが挙げられる。例えば、Snを含む小グループが1個に対し、2個のZnを含む小グループが1個あれば、電荷が打ち消されるため、層構造の合計の電荷を0とすることができる。
【0169】
具体的には、図23(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Sn−Zn−O系の結晶(InSnZn)を得ることができる。なお、得られるIn−Sn−Zn−O系の層構造は、InSnZn(ZnO)(mは0または自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0170】
また、このほかにも、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系酸化物や、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn−O系酸化物(IGZOとも表記する。)、In−Al−Zn−O系酸化物、Sn−Ga−Zn−O系酸化物、Al−Ga−Zn−O系酸化物、Sn−Al−Zn−O系酸化物や、In−Hf−Zn−O系酸化物、In−La−Zn−O系酸化物、In−Ce−Zn−O系酸化物、In−Pr−Zn−O系酸化物、In−Nd−Zn−O系酸化物、In−Sm−Zn−O系酸化物、In−Eu−Zn−O系酸化物、In−Gd−Zn−O系酸化物、In−Tb−Zn−O系酸化物、In−Dy−Zn−O系酸化物、In−Ho−Zn−O系酸化物、In−Er−Zn−O系酸化物、In−Tm−Zn−O系酸化物、In−Yb−Zn−O系酸化物、In−Lu−Zn−O系酸化物や、二元系金属の酸化物であるIn−Zn−O系酸化物、Sn−Zn−O系酸化物、Al−Zn−O系酸化物、Zn−Mg−O系酸化物、Sn−Mg−O系酸化物、In−Mg−O系酸化物や、In−Ga−O系酸化物などを用いた場合も同様である。
【0171】
例えば、図24(A)に、In−Ga−Zn−O系酸化物の層構造を構成する中グループのモデル図を示す。
【0172】
図24(A)において、In−Ga−Zn−O系酸化物の層構造を構成する中グループは、上から順に4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInが、4配位のOが1個上半分にあるZnと結合し、そのZnの下半分の3個の4配位のOを介して、4配位のOが1個ずつ上半分および下半分にあるGaと結合し、そのGaの下半分の1個の4配位のOを介して、4配位のOが3個ずつ上半分および下半分にあるInと結合している構成である。この中グループが複数結合して大グループを構成する。
【0173】
図24(B)に3つの中グループで構成される大グループを示す。なお、図24(C)は、図24(B)の層構造をc軸方向から観察した場合の原子配列を示している。
【0174】
ここで、In(6配位または5配位)、Zn(4配位)、Ga(5配位)の電荷は、それぞれ+3、+2、+3であるため、In、ZnおよびGaのいずれかを含む小グループは、電荷が0となる。そのため、これらの小グループの組み合わせであれば中グループの合計の電荷は常に0となる。
【0175】
また、In−Ga−Zn−O系の層構造を構成する中グループは、図24(A)に示した中グループに限定されず、In、Ga、Znの配列が異なる中グループを組み合わせた大グループも取りうる。
【0176】
具体的には、図24(B)に示した大グループが繰り返されることで、In−Ga−Zn−O系酸化物の結晶を得ることができる。なお、得られるIn−Ga−Zn−O系酸化物の層構造は、InGaO(ZnO)(nは自然数。)とする組成式で表すことができる。
【0177】
n=1(InGaZnO)の場合は、例えば、図25(A)に示す結晶構造を取りうる。なお、図25(A)に示す結晶構造において、図22(B)で説明したように、GaおよびInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0178】
また、n=2(InGaZn)の場合は、例えば、図25(B)に示す結晶構造を取りうる。なお、図25(B)に示す結晶構造において、図22(B)で説明したように、GaおよびInは5配位をとるため、GaがInに置き換わった構造も取りうる。
【0179】
以上がCAAC−OS膜に含まれる結晶部分に関する説明である。
【0180】
酸化物半導体膜256は、トランジスタのオフ電流を低減するため、バンドギャップが2.5eV以上、好ましくは2.8eV以上、さらに好ましくは3.0eV以上の材料を選択する。
【0181】
酸化物半導体にとって不純物である水素は、一部がドナーとなりキャリアを生成する。そのため、酸化物半導体膜256中の水素濃度は、5×1018atoms/cm未満、好ましくは1×1018atoms/cm以下、より好ましくは5×1017atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm以下とする。
【0182】
アルカリ金属は酸化物半導体を構成する元素ではないため、不純物である。アルカリ土類金属も、酸化物半導体を構成する元素ではない場合において、不純物となる。特に、アルカリ金属のうちナトリウム(Na)は、酸化物半導体膜に接する絶縁膜中に拡散してNaとなる。また、Naは、酸化物半導体膜内において、酸化物半導体を構成する金属と酸素の結合を分断する、または、その結合中に割り込む。その結果、例えば、しきい値電圧がマイナス方向にシフトすることによるノーマリオン化、電界効果移動度の低下などの、トランジスタ特性の劣化が起こり、加えて、特性のばらつきも生じる。従って、酸化物半導体膜中の上記不純物の濃度を低減することが望ましい。具体的に、Na濃度は、二次イオン質量分析(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において、5×1016atoms/cm以下、好ましくは1×1016atoms/cm以下、さらに好ましくは1×1015atoms/cm以下とする。同様に、リチウム(Li)濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とする。同様に、カリウム(K)濃度の測定値は、5×1015atoms/cm以下、好ましくは1×1015atoms/cm以下とする。
【0183】
酸化物半導体膜256は、水素、アルカリ金属およびアルカリ土類金属などが低減され、極めて不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。そのため、酸化物半導体膜256をチャネル領域に用いたトランジスタはオフ電流を小さくできる。
【0184】
以上に示した酸化物半導体膜256を用いることでトランジスタのオフ電流を小さくできる。例えば、チャネル長が3μm、チャネル幅が1μmのときのトランジスタのオフ電流を1×10−18A以下、または1×10−21A以下、または1×10−24A以下とすることができる。
【0185】
なお、In−Sn−Zn−O系酸化物を用いたトランジスタでは比較的容易に高い電界効果移動度が得られる。具体的には、トランジスタの電界効果移動度を31cm/Vs以上、40cm/Vs以上、60cm/Vs以上、80cm/Vs以上または100cm/Vs以上とすることができる。なお、In−Sn−Zn−O系酸化物以外(例えばIn−Ga−Zn−O系酸化物)でも、欠陥密度を低減することにより電界効果移動度を高めることができる。
【0186】
以下にトランジスタの電界効果移動度について図26乃至図29を用いて説明する。
【0187】
酸化物半導体に限らず、トランジスタの電界効果移動度は、様々な理由によって本来の得られるはずの電界効果移動度よりも低く測定される。電界効果移動度を低下させる要因としては半導体内部の欠陥や半導体と絶縁膜との界面における欠陥がある。ここでは、Levinsonモデルを用い、半導体内部に欠陥がないと仮定した場合の電界効果移動度を理論的に導き出す。
【0188】
本来のトランジスタの電界効果移動度をμとし、半導体中に何らかのポテンシャル障壁(粒界など)が存在すると仮定したときに測定される電界効果移動度μは数式3で表される。
【0189】
【数3】

【0190】
ここで、Eはポテンシャル障壁の高さであり、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。なお、Levinsonモデルでは、ポテンシャル障壁の高さEが欠陥に由来すると仮定し、数式4で表される。
【0191】
【数4】

【0192】
ここで、eは電気素量、Nはチャネル内の単位面積あたりの平均欠陥密度、εは半導体の誘電率、nはチャネルの単位面積あたりのキャリア密度、Coxは単位面積当たりのゲート絶縁膜容量、Vはゲート電圧、tはチャネルの厚さである。なお、厚さが30nm以下の半導体層であれば、チャネルの厚さは半導体層の厚さと同一として差し支えない。
【0193】
線形領域におけるドレイン電流Iは、数式5で表される。
【0194】
【数5】

【0195】
ここで、Lはチャネル長、Wはチャネル幅であり、ここでは、LおよびWは10μmとする。また、Vはドレイン電圧である。
【0196】
数式5の両辺の対数を取ると、数式6で表される。
【0197】
【数6】

【0198】
数式6の右辺はVの関数であるため、縦軸をln(I/V)、横軸を1/Vとして実測値をプロットして得られるグラフの近似直線の傾きから欠陥密度Nが求められる。即ち、トランジスタのV−I特性から半導体中の欠陥密度Nが得られる。
【0199】
半導体中の欠陥密度Nは半導体の成膜時の基板加熱温度に依存する。半導体として、In、SnおよびZnの比率が、In:Sn:Zn=1:1:1[原子数比]のIn−Sn−Zn−Oターゲットを用いて成膜した酸化物半導体を用いた場合、酸化物半導体中の欠陥密度Nは1×1012/cm程度となる。
【0200】
上述した酸化物半導体中の欠陥密度Nをもとに、数式3および数式4を用いて計算すると、本来のトランジスタの電界効果移動度μは120cm/Vsとなる。従って、酸化物半導体中および酸化物半導体と接するゲート絶縁膜との界面に欠陥がない、理想的なトランジスタの電界効果移動度μは120cm/Vsとわかる。ところが、欠陥の多い酸化物半導体では、トランジスタの電界効果移動度μは30cm/Vs程度である。
【0201】
また、半導体内部に欠陥がなくても、チャネルとゲート絶縁膜との界面散乱によってトランジスタの輸送特性は影響を受ける。ゲート絶縁膜界面からxだけ離れた場所における電界効果移動度μは、数式7で表される。
【0202】
【数7】

【0203】
ここで、Dはゲート電極による電界強度、Bは定数、lは界面散乱の影響が生じる深さである。Bおよびlは、トランジスタの電気特性の実測より求めることができ、上記酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性の実測からは、B=4.75×10cm/s、l=10nmが得られる。Dが増加すると、即ちVが高くなると、数式7の第2項が増加するため、電界効果移動度μは低下することがわかる。
【0204】
酸化物半導体中および酸化物半導体と接するゲート絶縁膜との界面に欠陥のない、理想的なトランジスタの電界効果移動度μを計算した結果を図26に示す。なお、計算にはシノプシス社製Sentaurus Deviceを使用し、酸化物半導体のバンドギャップを2.8eV、電子親和力を4.7eV、比誘電率を15、厚さを15nmとした。さらに、ゲートの仕事関数を5.5eV、ソースおよびドレインの仕事関数を4.6eVとした。また、ゲート絶縁膜の厚さは100nm、比誘電率を4.1とした。また、チャネル長およびチャネル幅はともに10μm、Vは0.1Vとした。
【0205】
図26で示されるように、Vが1V近傍で電界効果移動度μは100cm/Vs以上のピークを有するが、Vがさらに高くなると、界面散乱の影響が大きくなり、電界効果移動度μが低下することがわかる。
【0206】
このような理想的なトランジスタを微細化した場合について、計算した結果を図27乃至図29に示す。なお、計算には図30に示した構造のトランジスタを仮定している。
【0207】
次に、図30に示すトランジスタの構造について説明する。図30(A)はトランジスタの上面図である。図30(A)に示す一点鎖線A−Bに対応する断面図が図30(B)である。
【0208】
図30(B)に示すトランジスタは、基板200上に設けられた下地絶縁膜3002と、下地絶縁膜3002の周辺に設けられた保護膜3020と、下地絶縁膜3002および保護膜3020上に設けられた、高抵抗領域3006aおよび低抵抗領域3006bを含む酸化物半導体膜3006と、酸化物半導体膜3006上に設けられたゲート絶縁膜3012と、ゲート絶縁膜3012を介して酸化物半導体膜3006に重畳して設けられたゲート電極3004と、ゲート電極3004の側面に接して設けられた側壁絶縁膜3024と、酸化物半導体膜3006上にあり、少なくとも酸化物半導体膜3006と一部を接して設けられた一対の電極3016と、ゲート電極3004、側壁絶縁膜3024および一対の電極3016を覆って設けられた保護絶縁膜3018と、保護絶縁膜3018に設けられた開口部を介して一対の電極3016と接して設けられた配線3022と、を有する。
【0209】
ここで、低抵抗領域3006bの抵抗率を2×10−3Ωcm、ゲート電極3004の幅を33nm、側壁絶縁膜3024の幅を5nm、チャネル幅を40nmとする。なお、チャネル領域を便宜上高抵抗領域3006aという名称で記載しているが、ここではチャネル領域を真性半導体と仮定している。
【0210】
計算にはシノプシス社製Sentaurus Deviceを使用した。図27は、図30(B)に示される構造のトランジスタのI(実線)および電界効果移動度μ(点線)のV依存性である。なお、IはVを1Vとし、電界効果移動度μはVを0.1Vとして計算している。ここで、ゲート絶縁膜の厚さが15nmとした場合を図27(A)に、10nmとした場合を図27(B)に、5nmとした場合を図27(C)にそれぞれ示す。
【0211】
図27より、ゲート絶縁膜が薄くなるほど、オフ状態(ここではVが−3Vから0Vの範囲を指す。)でのドレイン電流Iが低下する。一方、電界効果移動度μのピーク値やオン状態(ここではVが0Vから3Vの範囲を指す。)でのドレイン電流Iには目立った変化がない。図27より、Vが1V近傍でIは半導体装置であるメモリなどに必要とされる10μAを超えることがわかる。
【0212】
同様に、図30(C)で示されるトランジスタについて計算を行っている。図30(C)で示されるトランジスタは、高抵抗領域3007aおよび低抵抗領域3007bを有する酸化物半導体膜3007を有する点で、図30(B)で示されるトランジスタとは異なる。具体的には、図30(C)で示されるトランジスタは、側壁絶縁膜3024と重畳する酸化物半導体膜3007の領域が高抵抗領域3007aに含まれる。即ち、該トランジスタは側壁絶縁膜3024の幅だけオフセット領域を有するトランジスタである。なお、オフセット領域の幅をオフセット長(Loff)ともいう(図30(A)参照。)。なお、Loffは便宜上左右で同じ幅としている。
【0213】
図30(C)で示されるトランジスタにおいて、Loffを5nmとし、ドレイン電流I(実線)および電界効果移動度μ(点線)のV依存性を図28に示す。なお、Iは、Vを1Vとし、電界効果移動度μはVを0.1Vとして計算している。ここで、ゲート絶縁膜の厚さが15nmとした場合を図28(A)に、10nmとした場合を図28(B)に、5nmとした場合を図28(C)にそれぞれ示す。
【0214】
また、図29は、図30(C)に示されるトランジスタの構造から、Loffを15nmとしたもののドレイン電流I(実線)および電界効果移動度μ(点線)のV依存性である。なお、Iは、Vを1Vとし、電界効果移動度μはVを0.1Vとして計算している。ここで、ゲート絶縁膜の厚さが15nmとした場合を図29(A)に、10nmとした場合を図29(B)に、5nmとした場合を図29(C)にそれぞれ示す。
【0215】
図28および図29に示した計算結果より、図27と同様に、いずれもゲート絶縁膜が薄くなるほどオフ状態(ここではVが−3Vから0Vの範囲を指す。)でのドレイン電流Iが低下する。一方、電界効果移動度μのピーク値やオン状態(ここではVが0Vから3Vの範囲を指す。)でのドレイン電流Iには目立った変化がないとわかる。
【0216】
なお、電界効果移動度μのピークは、図27では80cm/Vs程度であるが、図28では60cm/Vs程度、図29では40cm/Vs程度と、Loffが増加するほど低下することがわかる。また、オフ状態でのIも同様の傾向となることがわかる。一方、オン状態のIはオフセット長Loffの増加に伴って減少するが、オフ状態のIの低下に比べるとはるかに緩やかである。また、いずれの計算結果からもVが1V近傍で、Iはメモリなどに必要とされる10μAを超えることがわかる。
【0217】
以上でトランジスタの電界効果移動度についての説明を終了する。
【0218】
なお、酸化物半導体膜256は、島状に加工されていてもよいが、本実施の形態では島状に加工されていないものとして説明する。
【0219】
次に、第1の加熱処理を行う。第1の加熱処理を行うと、酸化物半導体膜256の結晶化度が高まる、または/および酸化物半導体膜256中の不純物濃度を低減することができる。
【0220】
第1の加熱処理は、酸化性雰囲気、不活性雰囲気、減圧雰囲気または乾燥空気雰囲気において、150℃以上650℃以下、好ましくは250℃以上500℃以下、さらに好ましくは300℃以上450℃以下の温度で行えばよい。第1の加熱処理は、抵抗加熱方式、ランプヒータ方式、加熱ガス方式などを適用すればよい。
【0221】
酸化性雰囲気とは、酸化性ガスを含む雰囲気をいう。酸化性ガスとは、酸素、オゾンまたは亜酸化窒素などであって、水、水素などが含まれないことが好ましい。例えば、熱処理装置に導入する酸素、オゾン、亜酸化窒素の純度を、8N(99.999999%)以上、好ましくは9N(99.9999999%)以上とする。酸化性雰囲気には、酸化性ガスと不活性ガスが混合されていてもよい。その場合、酸化性ガスが少なくとも10ppm以上含まれる雰囲気とする。
【0222】
不活性雰囲気とは、窒素、希ガスなどの不活性ガスを主成分とする雰囲気をいう。具体的には、酸化性ガスなどの反応性ガスが10ppm未満である雰囲気とする。
【0223】
減圧雰囲気とは、処理室の圧力が10Pa以下の雰囲気をいう。
【0224】
乾燥空気雰囲気とは、露点−40℃以下、好ましくは露点−50℃以下の雰囲気をいう。
【0225】
次に、酸化物半導体膜256上に絶縁膜262を成膜する。
【0226】
絶縁膜262は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムまたはYSZ(酸化イットリウムで安定化した酸化ジルコニウム)などを、単層で、または積層して用いればよい。
【0227】
酸化窒化シリコンとは、その組成において、窒素よりも酸素の含有量が多いものを示し、例えば、酸素が50原子%以上70原子%以下、窒素が0.5原子%以上15原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が0原子%以上10原子%以下の範囲で含まれるものをいう。また、窒化酸化シリコンとは、その組成において、酸素よりも窒素の含有量が多いものを示し、例えば、酸素が5原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上55原子%以下、シリコンが25原子%以上35原子%以下、水素が10原子%以上25原子%以下の範囲で含まれるものをいう。但し、上記範囲は、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward scattering Spectrometry)を用いて測定した場合のものである。また、構成元素の組成は、その合計が100原子%を超えない値をとる。
【0228】
次に、絶縁膜262上に導電膜254を成膜する(図4(C)参照。)。
【0229】
導電膜254は、単層または積層構造とすればよく、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタルおよびタングステン、それらの窒化物、酸化物ならびに合金から一種以上選択し、単層でまたは積層で用いればよい。
【0230】
次に、導電膜254を加工し、ゲート電極204を形成する。
【0231】
なお、本明細書において、例えば、「加工する」とは、フォトリソグラフィ法などを用いて所望の形状を得ることをいう。
【0232】
次に、ゲート電極204と同様の上面形状に絶縁膜262を加工し、ゲート絶縁膜212を形成する(図4(D)参照。)。
【0233】
また、ゲート絶縁膜212は、加熱処理により酸素を放出する膜を用いると好ましい。加熱処理により酸素を放出する膜を用いることで、酸化物半導体膜のチャネル領域に生じる欠陥を修復することができ、トランジスタの電気特性の劣化を抑制できる。
【0234】
次に、酸化物半導体膜256およびゲート電極204上に還元性を有する膜210を成膜する(図5(A)参照。)。還元性を有する膜210は、例えば、実施の形態1に示した還元性を有する膜110で示した材料を用いればよい。
【0235】
次に、還元性を有する膜210と接する領域において、酸化物半導体膜256の酸素を還元性を有する膜210に移動させ、第1の領域206a、第2の領域206bおよび第3の領域206cを含む酸化物半導体膜206を形成する(図5(B)参照。)。
【0236】
なお、第1の領域206aは、酸化物半導体膜256から酸素の脱離していない領域であり、第2の領域206bおよび第3の領域206cは、酸素の一部が脱離した領域である。
【0237】
実施の形態1でも示したように、ここで第2の領域206bおよび第3の領域206cは、第1の領域206aよりも低抵抗化された領域である。
【0238】
第1の領域206aはトランジスタのチャネル領域として機能し、第2の領域206bおよび第3の領域206cはトランジスタのソース領域およびドレイン領域として機能する。
【0239】
酸化物半導体膜256の酸素を還元性を有する膜210に移動させるために、第2の加熱処理を行うと好ましい。第2の加熱処理は、不活性雰囲気または減圧雰囲気において、150℃以上650℃以下、好ましくは200℃以上450℃以下で行う。
【0240】
なお、第2の加熱処理を不活性雰囲気または減圧雰囲気にて行うことで、還元性を有する膜210が雰囲気の影響で変質してしまうことを抑制できる。還元性を有する膜210が変質してしまうことで、後に還元性を有する膜210を除去することが困難になることがある。また、還元性を有する膜210が除去されずに残存することで、トランジスタの電気特性が低下してしまうことがある。
【0241】
なお、還元性を有する膜210が、室温でも作用する十分な還元性を有する場合、第2の加熱処理は不要となる。
【0242】
また、第2の加熱処理によって第1の加熱処理を兼ねてもよい。その場合、第1の加熱処理を行わなくて構わない。
【0243】
次に、還元性を有する膜210を除去する(図5(C)参照。)。
【0244】
還元性を有する膜210の除去は、ゲート電極204、ゲート絶縁膜212および酸化物半導体膜206と十分に選択比のとれる条件で行う。
【0245】
十分に選択比のとれる条件とは、還元性を有する膜210のエッチングレートに対し、他の膜のエッチングレートが1/2以下、好ましくは1/10以下、さらに好ましくは1/20以下であることをいう。
【0246】
なお、還元性を有する膜210の除去に伴い、ゲート電極204、ゲート絶縁膜212および酸化物半導体膜206の露出面に反応生成物が生じてしまう場合、該反応生成物を除去する処理を行うと好ましい。
【0247】
還元性を有する膜210の除去は、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、またはドライエッチング法およびウェットエッチング法の組み合わせにより行えばよい。
【0248】
また、還元性を有する膜210を除去せずに絶縁化させる場合、還元性を有する膜210を完全に反応させることが困難である。そのため、未反応または完全に反応しきっていない還元性を有する膜210がトランジスタの電気特性を低下させることがある。
【0249】
以上のように、基板200上の第1の領域206a、第2の領域206bおよび第3の領域206cを含む酸化物半導体膜206と、酸化物半導体膜206上のゲート絶縁膜212と、ゲート絶縁膜212を介して酸化物半導体膜206上に設けられたゲート電極204と、を有するトランジスタ271を作製することができる(図5(C)参照。)。
【0250】
なお、トランジスタ271を作製後、第3の加熱処理を行うと好ましい。第3の加熱処理は、第2の加熱処理と同様の方法で行えばよい。
【0251】
なお、トランジスタ271に側壁絶縁膜を設けて、当該側壁絶縁膜と重畳する酸化物半導体膜206の領域をLDD領域とした、LDD構造としても構わない。以下に、LDD構造であるトランジスタの作製方法について説明する。
【0252】
図5(C)まではトランジスタ271の作製方法を参酌する。
【0253】
まず、酸化物半導体膜206およびゲート電極204上に絶縁膜258を成膜する(図6(A)参照。)。
【0254】
絶縁膜258は、絶縁膜262と同様の方法および同様の材料を用いて成膜すればよい。
【0255】
次に、絶縁膜258を加工して、側壁絶縁膜208を形成する。側壁絶縁膜208は、ゲート電極204の側壁に接して設けられる。
【0256】
側壁絶縁膜208は、絶縁膜258を成膜した後、絶縁膜258に対し異方性の高いエッチングを行うことで、自己整合的に形成すればよい。異方性の高いエッチングとしては、例えば、ドライエッチング法を用いると好ましい。ドライエッチング法に用いるエッチングガスとしては、例えば、トリフルオロメタン、オクタフルオロシクロブタン、テトラフルオロメタンなどのフッ素を含むガスが挙げられる。エッチングガスには、希ガスまたは水素を添加してもよい。ドライエッチング法は、基板に高周波電圧を印加する、反応性イオンエッチング法(RIE法)を用いると好ましい。
【0257】
次に、ゲート電極204および側壁絶縁膜208をマスクとし、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を、酸化物半導体膜206に注入し、第1の領域206a、第4の領域206d、第5の領域206e、第6の領域206fおよび第7の領域206gを含む酸化物半導体膜206を形成する(図6(B)参照。)。
【0258】
酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物として、具体的には、酸化物半導体膜中でキャリアを生成する材料を用いることができる。
【0259】
例えば、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物として、水素、ヘリウム、ホウ素、窒素、フッ素、ネオン、アルミニウム、リン、アルゴン、ヒ素、クリプトン、インジウム、スズ、アンチモンおよびキセノンから選ばれた一種以上を注入してもよい。
【0260】
酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物として、好ましくは、ホウ素またはリンを用いる。ホウ素またはリンは、比較的低濃度でも酸化物半導体膜を低抵抗化できる。
【0261】
なお、側壁絶縁膜208を有することで、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物が、酸化物半導体膜206のチャネル領域(ここでは第1の領域206a)まで拡散することを抑制できる。そのため、微細化したトランジスタにおける電気特性の低下を抑制できる。
【0262】
なお、第1の領域206a、第4の領域206d、第5の領域206e、第6の領域206fおよび第7の領域206gを含む酸化物半導体膜206は、絶縁膜258の加工前に絶縁膜258を介して酸化物半導体膜206に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入することで形成してもよい。その場合、第1の領域206a、第4の領域206d、第5の領域206e、第6の領域206fおよび第7の領域206gを含む酸化物半導体膜206を形成した後で、絶縁膜258を加工して、側壁絶縁膜208を形成すればよい。または、側壁絶縁膜208を形成せず絶縁膜258を除去しても構わないし、絶縁膜258を残存させたままトランジスタを作製しても構わない。
【0263】
酸化物半導体膜206へ酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入した後、第4の加熱処理を行っても構わない。第4の加熱処理は、第1の加熱処理または第2の加熱処理と同様の方法で行えばよい。なお、第4の加熱処理を行う場合、第1の加熱処理を兼ねても構わない。
【0264】
第4の領域206dおよび第5の領域206eは、第2の領域206bおよび第3の領域206cに、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入することで、さらに低抵抗化させた領域である。
【0265】
また、第6の領域206fおよび第7の領域206gは、第2の領域206bおよび第3の領域206cと同様の抵抗を有する領域である。
【0266】
ここで、第4の領域206dおよび第5の領域206eは、トランジスタのソース領域およびドレイン領域として機能する。また、第6の領域206fおよび第7の領域206gは、トランジスタのLDD領域として機能する。
【0267】
LDD領域は、シート抵抗値が1kΩ/sq以上100MΩ/sq以下、好ましくは10kΩ/sq以上50MΩ/sq以下、さらに好ましくは100kΩ/sq以上20MΩ/sq以下とする。
【0268】
以上のようにして、LDD領域を有するトランジスタ272を作製することができる(図6(B)参照。)。
【0269】
なお、トランジスタ272を作製後、第3の加熱処理を行うと好ましい。
【0270】
LDD領域を有することで、ホットキャリア劣化などのトランジスタの劣化を低減し、チャネル長が短くなることによってしきい値電圧がマイナス方向へシフトすることを抑制することができる。
【0271】
次に、側壁絶縁膜を設けずに、LDD領域を有するトランジスタを作製する方法について説明する。
【0272】
なお、図4(D)までは、トランジスタ271と同様の作製方法を採る。
【0273】
まず、酸化物半導体膜256およびゲート電極204上に還元性を有する膜210を成膜する(図7(A)参照。)。
【0274】
次に、還元性を有する膜210を介して酸化物半導体膜256に、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、その後、還元性を有する膜210と接する酸化物半導体膜256の領域から酸素の一部を脱離させ、第1の領域206a、第4の領域206d、第5の領域206e、第6の領域206fおよび第7の領域206gを含む酸化物半導体膜206を形成する(図7(B)参照。)。
【0275】
または、還元性を有する膜210と接する酸化物半導体膜256の領域から酸素の一部を脱離させ、その後、還元性を有する膜210を介して酸化物半導体膜256に、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、第1の領域206a、第4の領域206d、第5の領域206e、第6の領域206fおよび第7の領域206gを含む酸化物半導体膜206を形成する(図7(B)参照。)。
【0276】
なお、酸化物半導体膜256中に、還元性を有する膜210を介して酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入することにより、還元性を有する膜210を構成する材料の一部が酸化物半導体膜256中に移動する場合がある。その場合に、さらに酸化物半導体膜256を低抵抗化させることができる。
【0277】
なお、ゲート電極204の側壁に堆積した還元性を有する膜210の厚さの分、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物の注入されない領域が広がり、該領域(ここでは、第6の領域206fおよび第7の領域206gに相当。)をLDD領域とすることができる。
【0278】
ここで、第1の領域206aはトランジスタのチャネル領域として機能し、第4の領域206dおよび第5の領域206eはトランジスタのソース領域およびドレイン領域として機能する。
【0279】
なお、還元性を有する膜210と接する酸化物半導体膜256の領域から酸素の一部を脱離させるために、第2の加熱処理を行うと好ましい。
【0280】
次に、還元性を有する膜210を除去する(図7(C)参照。)。
【0281】
以上のようにして、LDD領域を有するトランジスタ273を作製することができる(図7(C)参照。)。
【0282】
なお、トランジスタ273を作製後、第3の加熱処理を行うと好ましい。
【0283】
次に、トランジスタ271、トランジスタ272およびトランジスタ273とは異なるトランジスタの作製方法を説明する。
【0284】
なお、図4(D)までは、トランジスタ271と同様の作製方法を採る。
【0285】
まず、ゲート電極204をマスクとし、酸化物半導体膜256に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、第1の領域206a、第8の領域206hおよび第9の領域206iを含む酸化物半導体膜206を形成する(図8(A)参照。)。
【0286】
酸化物半導体膜256へ酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入した後、第4の加熱処理を行っても構わない。
【0287】
なお、第8の領域206hおよび第9の領域206iは、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を含む領域である。そのため、第8の領域206hおよび第9の領域206iは、第1の領域206aよりも低抵抗化された領域である。
【0288】
次に、酸化物半導体膜206およびゲート電極204上に還元性を有する膜210を成膜する(図8(B)参照。)。
【0289】
次に、酸化物半導体膜206から還元性を有する膜210へ酸素の一部を移動させ、第10の領域206jおよび第11の領域206kを含む酸化物半導体膜206を形成する(図8(C)参照。)。
【0290】
なお、還元性を有する膜210と接する酸化物半導体膜206の領域から酸素の一部を脱離させるために、第2の加熱処理を行うと好ましい。
【0291】
なお、第10の領域206jおよび第11の領域206kは、第8の領域206hおよび第9の領域206iから酸素の一部が脱離した領域である。そのため、第10の領域206jおよび第11の領域206kは、第8の領域206hおよび第9の領域206iよりも低抵抗化された領域である。
【0292】
ここで、第1の領域206aはトランジスタのチャネル領域として機能し、第10の領域206jおよび第11の領域206kはトランジスタのソース領域およびドレイン領域として機能する。
【0293】
次に、還元性を有する膜210を除去する(図8(D)参照。)。
【0294】
以上のようにして、トランジスタ274を作製することができる(図8(D)参照。)。
【0295】
なお、トランジスタ274を作製後、第3の加熱処理を行うと好ましい。
【0296】
なお、図8では、ゲート電極204と同様の上面形状にゲート絶縁膜212を加工してから酸化物半導体膜256を低抵抗化させる処理を行っているが、これに限定されない。例えば、絶縁膜262を介して、酸化物半導体膜256に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入しても構わない。その場合、還元性を有する膜210の成膜前に、絶縁膜262を加工してゲート絶縁膜212を形成すればよい。
【0297】
次に、Loff領域を有するトランジスタの作製方法について説明する。
【0298】
なお、図4(D)までは、トランジスタ271と同様の作製方法を採る。
【0299】
まず、ゲート電極204に側壁に接して側壁絶縁膜208を形成する(図9(A)参照。)。側壁絶縁膜208の形成方法は、図6を参酌する。
【0300】
次に、酸化物半導体膜256、ゲート電極204および側壁絶縁膜208上に還元性を有する膜211を成膜する(図9(B)参照。)。
【0301】
なお、還元性を有する膜211は、還元性を有する膜210と同様の材料を用いて成膜すればよい。
【0302】
次に、酸化物半導体膜256から還元性を有する膜211へ酸素の一部を移動させ、第12の領域206l、第13の領域206mおよび第14の領域206nを含む酸化物半導体膜206を形成する(図9(C)参照。)。
【0303】
なお、側壁絶縁膜208を有することで、還元性を有する膜211の影響が、酸化物半導体膜206のチャネル領域(ここでは第12の領域206l)まで広がることを抑制できる。そのため、微細化したトランジスタにおける電気特性の低下を抑制できる。
【0304】
なお、還元性を有する膜211と接する酸化物半導体膜256の領域から酸素の一部を脱離させるために、第2の加熱処理を行うと好ましい。
【0305】
なお、第12の領域206lは、酸化物半導体膜256から酸素の脱離していない領域であり、第13の領域206mおよび第14の領域206nは、酸素の一部が脱離した領域である。
【0306】
実施の形態1でも示したように、ここで第13の領域206mおよび第14の領域206nは、第12の領域206lよりも低抵抗化された領域である。
【0307】
ここで、第12の領域206lはトランジスタのチャネル領域として機能し、第13の領域206mおよび第14の領域206nはトランジスタのソース領域およびドレイン領域として機能する。
【0308】
ここで、第12の領域206lは、側壁絶縁膜208と重畳する領域の分、第1の領域206aよりも広くなる。側壁絶縁膜208と重畳する酸化物半導体膜206の領域は、Loff領域となる。
【0309】
Loff領域を有することにより、ホットキャリア劣化などのトランジスタの劣化を低減し、チャネル長が短くなることによってしきい値電圧がマイナス方向へシフトすることを抑制することができる。
【0310】
次に、還元性を有する膜211を除去する(図9(D)参照。)。
【0311】
側壁絶縁膜208が設けられていることにより、還元性を有する膜211を除去する際に、還元性を有する膜211が完全に除去しきれなかった場合でも、ゲート電極204とソース領域およびドレイン領域とのショートが起こりにくくなり、トランジスタの電気特性の低下要因を低減できる。
【0312】
以上のようにして、トランジスタ275を作製することができる(図9(D)参照。)。
【0313】
なお、トランジスタ275を作製後、第3の加熱処理を行うと好ましい。
【0314】
次に、Loff領域を有し、トランジスタ275とは異なるトランジスタの作製方法について説明する。
【0315】
なお、図9(A)までは、トランジスタ275と同様の作製方法を採る。
【0316】
まず、ゲート電極204および側壁絶縁膜208をマスクとし、酸化物半導体膜256に酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、第12の領域206l、第15の領域206oおよび第16の領域206pを含む酸化物半導体膜206を形成する(図10(A)参照。)。
【0317】
酸化物半導体膜256へ酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入した後、第4の加熱処理を行っても構わない。
【0318】
次に、酸化物半導体膜206、ゲート電極204および側壁絶縁膜208上に還元性を有する膜211を成膜する(図10(B)参照。)。
【0319】
次に、酸化物半導体膜206から還元性を有する膜211へ酸素の一部を移動させ、第12の領域206l、第17の領域206qおよび第18の領域206rを含む酸化物半導体膜206を形成する(図10(C)参照。)。
【0320】
なお、第17の領域206qおよび第18の領域206rは、第15の領域206oおよび第16の領域206pから酸素の一部が脱離した領域である。そのため、第17の領域206qおよび第18の領域206rは、第15の領域206oおよび第16の領域206pよりも低抵抗化された領域である。
【0321】
ここで、第12の領域206lはトランジスタのチャネル領域として機能し、第17の領域206qおよび第18の領域206rはトランジスタのソース領域およびドレイン領域として機能する。
【0322】
ここで、第12の領域206lは、側壁絶縁膜208と重畳する領域の分、第1の領域206aよりも広くなる。側壁絶縁膜208と重畳する酸化物半導体膜206の領域は、Loff領域となる。
【0323】
なお、側壁絶縁膜208を有することで、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物が、酸化物半導体膜206のチャネル領域(ここでは第12の領域206l)まで拡散することを抑制できる。また、還元性を有する膜211の影響が、酸化物半導体膜206のチャネル領域まで拡散することを抑制できる。そのため、微細化したトランジスタにおける電気特性の低下を抑制できる。
【0324】
次に、還元性を有する膜211を除去する(図10(D)参照。)。
【0325】
側壁絶縁膜208が設けられていることにより、還元性を有する膜211を除去する際に、還元性を有する膜211が完全に除去しきれなかった場合でも、ゲート電極204とソース領域およびドレイン領域とのショートが起こりにくくなり、トランジスタの電気特性の低下要因を低減できる。
【0326】
以上のようにして、トランジスタ276を作製することができる(図10(D)参照。)。
【0327】
なお、トランジスタ276を作製後、第3の加熱処理を行うと好ましい。
【0328】
次に、Loff領域およびLDD領域を有するトランジスタの作製方法について説明する。
【0329】
なお、図9(B)までは、トランジスタ275と同様の作製方法を採る。
【0330】
まず、還元性を有する膜211を介して酸化物半導体膜256に、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、その後、還元性を有する膜211と接する酸化物半導体膜256の領域から酸素の一部を脱離させ、第12の領域206l、第19の領域206s、第20の領域206t、第21の領域206uおよび第22の領域206vを含む酸化物半導体膜206を形成する(図11(A)参照。)。
【0331】
または、還元性を有する膜211と接する酸化物半導体膜256の領域から酸素の一部を脱離させ、その後、還元性を有する膜211を介して酸化物半導体膜256に、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、第12の領域206l、第19の領域206s、第20の領域206t、第21の領域206uおよび第22の領域206vを含む酸化物半導体膜206を形成する(図11(A)参照。)。
【0332】
なお、酸化物半導体膜256中に、還元性を有する膜211を介して酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入することにより、還元性を有する膜211を構成する材料の一部が酸化物半導体膜256中に移動する場合がある。その場合に、さらに酸化物半導体膜256を低抵抗化させることができる。
【0333】
ここで、第12の領域206lはトランジスタのチャネル領域として機能し、第19の領域206sおよび第20の領域206tはトランジスタのソース領域およびドレイン領域として機能する。
【0334】
なお、側壁絶縁膜208の側壁に堆積した還元性を有する膜211の厚さの分、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物の注入されない領域が広がり、該領域(ここでは、第21の領域206uおよび第22の領域206vに相当。)をLDD領域とすることができる。
【0335】
また、第12の領域206lは、側壁絶縁膜208と重畳する領域の分、第1の領域206aよりも広くなる。側壁絶縁膜208と重畳する酸化物半導体膜206の領域は、Loff領域となる。
【0336】
なお、側壁絶縁膜208を有することで、酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物が、酸化物半導体膜206のチャネル領域(ここでは第12の領域206l)まで拡散することを抑制できる。また、還元性を有する膜211の影響が、酸化物半導体膜206のチャネル領域まで拡散することを抑制できる。そのため、微細化したトランジスタにおける電気特性の低下を抑制できる。
【0337】
次に、還元性を有する膜211を除去する(図11(B)参照。)。
【0338】
側壁絶縁膜208が設けられていることにより、還元性を有する膜211を除去する際に、還元性を有する膜211が完全に除去しきれなかった場合でも、ゲート電極204とソース領域およびドレイン領域とのショートが起こりにくくなり、トランジスタの電気特性の低下要因を低減できる。
【0339】
以上のようにして、Loff領域およびLDD領域を有するトランジスタ277を作製することができる(図11(B)参照。)。
【0340】
なお、トランジスタ277を作製後、第3の加熱処理を行うと好ましい。
【0341】
トランジスタ277は、Loff領域およびLDD領域を有するため、LDD領域のみを有するトランジスタおよびLoff領域のみを有するトランジスタと比べ、さらにホットキャリア劣化などのトランジスタの劣化を低減し、チャネル長が短くなることによってしきい値電圧がマイナス方向へシフトすることを抑制することができる。
【0342】
次に、トランジスタを作製した後、配線を形成するまでの作製方法の一例を示す。
【0343】
図12(A)に示すトランジスタは、基板200上に設けられた酸化物半導体膜206と、酸化物半導体膜206上に設けられたゲート絶縁膜212と、ゲート絶縁膜212を介して酸化物半導体膜206と重畳して設けられたゲート電極204と、を有する。
【0344】
なお、図示しないが、酸化物半導体膜206は、チャネル領域、ソース領域およびドレイン領域を含む。また、LDD領域または/およびLoff領域を含んでも構わない。
【0345】
なお、図12(A)に示すトランジスタは、側壁絶縁膜208を設けない構造であるが、以下の説明はこの構造に限定されるものではなく、側壁絶縁膜208を設けた構造に適用可能である。
【0346】
まず、酸化物半導体膜206を加工し、島状の酸化物半導体膜207を形成する(図12(B)参照。)。
【0347】
次に、基板200、島状の酸化物半導体膜207、ゲート電極204およびゲート絶縁膜212を覆って第3の絶縁膜218を成膜する(図12(C)参照。)。
【0348】
次に、第3の絶縁膜218に酸化物半導体膜207を露出する一対の開口部を形成し、該開口部を介して酸化物半導体膜207と接する一対の配線220を形成する(図12(D)参照。)。
【0349】
以上のように、トランジスタと接続する配線を形成すればよい。
【0350】
同様に、トランジスタを作製した後、配線を形成するまでの作成方法の一例を示す。
【0351】
なお、図12(B)までは、同様の作製方法を採る。
【0352】
まず、酸化物半導体膜207と接して一対の電極216を形成する(図13(A)参照。)。なお、図示しないが一対の電極216は、酸化物半導体膜207下に接して設けられていても構わない。
【0353】
次に、基板200、一対の電極216、酸化物半導体膜207、ゲート電極204およびゲート絶縁膜212を覆って第3の絶縁膜219を成膜する(図13(B)参照。)。
【0354】
次に、第3の絶縁膜219に一対の電極216を露出する一対の開口部を形成し、該開口部を介して一対の電極216と接する一対の配線221を形成する(図13(C)参照。)。
【0355】
以上のように、トランジスタと接続する配線を形成すればよい。
【0356】
このようにして、実施の形態1で示した低抵抗領域を有する酸化物半導体膜を用いたトランジスタを作製することができる。
【0357】
本実施の形態に示したトランジスタは、自己整合的に低抵抗領域を設けることができるため、ゲート電極とソース領域およびドレイン領域との間に寄生容量を生じさせることがなく、高速動作が可能となる。
【0358】
また、Loff領域または/およびLDD領域を有することで、ホットキャリア劣化などのトランジスタの劣化を低減し、チャネル長が短くなることによってしきい値電圧がマイナス方向へシフトすることを抑制することができる。そのため、微細化したトランジスタにおいても、電気特性を良好とすることができる。
【0359】
また、本実施の形態で示したトランジスタを適用することで、高性能な半導体装置を歩留まり高く作製することができる。
【0360】
(実施の形態3)
本実施の形態では実施の形態2に示すトランジスタを用いて作製した液晶表示装置について説明する。なお、本実施の形態では液晶表示装置に本発明の一形態を適用した例について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、発光装置の一つであるEL(Electro Luminescence)表示装置に本発明の一形態を適用することも、当業者であれば容易に想到しうるものである。
【0361】
図14にアクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置の回路図を示す。液晶表示装置は、ソース線SL_1乃至SL_a(aは自然数)、ゲート線GL_1乃至GL_b(bは自然数)および複数(a×b個)の画素2200を有する。画素2200は、トランジスタ2230と、キャパシタ2220と、液晶素子2210と、を含む。こうした画素2200が複数集まって液晶表示装置の画素部を構成する。なお、単にソース線またはゲート線を指す場合には、ソース線SLまたはゲート線GLと記載することもある。
【0362】
トランジスタ2230は、本発明の一態様である実施の形態2で示すトランジスタを用いる。実施の形態2で示すトランジスタは電気特性が良好な酸化物半導体を用いたトランジスタであるため、表示品位の高い表示装置を得ることができる。
【0363】
ゲート線GLはトランジスタ2230のゲートと接続し、ソース線SLはトランジスタ2230のソースと接続し、トランジスタ2230のドレインは、キャパシタ2220の一方の容量電極および液晶素子2210の一方の画素電極と接続する。キャパシタ2220の他方の容量電極および液晶素子2210の他方の画素電極は、共通電極と接続する。なお、共通電極はゲート線GLと同一層かつ同一材料で設けてもよい。
【0364】
また、ゲート線GLは、ゲート駆動回路と接続される。ゲート駆動回路は、実施の形態2で示すトランジスタを含んでもよい。
【0365】
また、ソース線SLは、ソース駆動回路と接続される。ソース駆動回路は、実施の形態2で示すトランジスタを含んでもよい。
【0366】
なお、ゲート駆動回路およびソース駆動回路のいずれかまたは両方を、別途用意された基板上に形成し、COG(Chip On Glass)、ワイヤボンディング、またはTAB(Tape Automated Bonding)などの方法を用いて接続してもよい。
【0367】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0368】
ゲート線GLにトランジスタ2230のしきい値電圧以上になるように電圧を印加すると、ソース線SLから供給された電荷がトランジスタ2230のドレイン電流となってキャパシタ2220に蓄積される。1行分の充電後、該行にあるトランジスタ2230はオフ状態となり、ソース線SLから電圧が掛からなくなるが、キャパシタ2220に蓄積された電荷によって必要な電圧を維持することができる。その後、次の行のキャパシタ2220の充電に移る。このようにして、1行からb行の充電を行う。ドレイン電流は、トランジスタにおいてドレインからチャネルを介してソースに流れる電流のことである。ドレイン電流はゲート電圧がしきい値電圧よりも大きいときに流れる。
【0369】
なお、トランジスタ2230にオフ電流の小さなトランジスタを用いる場合、電圧を維持する期間を長くすることができる。この効果によって、動きの少ない画像(静止画を含む。)では、表示の書き換え周波数を低減でき、さらなる消費電力の低減が可能となる。また、キャパシタ2220の容量をさらに小さくすることが可能となるため、充電に必要な消費電力を低減することができる。
【0370】
以上のように、本発明の一態様によって、表示品位が高く、消費電力の小さい液晶表示装置を提供することができる。
【0371】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0372】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2で示すトランジスタを用いて、半導体記憶装置を作製する例について説明する。
【0373】
揮発性半導体記憶装置の代表的な例としては、記憶素子を構成するトランジスタを選択してキャパシタに電荷を蓄積することで、情報を記憶するDRAM(Dynamic Random Access Memory)、フリップフロップなどの回路を用いて記憶内容を保持するSRAM(Static Random Access Memory)がある。
【0374】
不揮発性半導体記憶装置の代表例としては、トランジスタのゲートとチャネル領域との間にノードを有し、当該ノードに電荷を保持することで記憶を行うフラッシュメモリがある。
【0375】
上述した半導体記憶装置に含まれるトランジスタの一部に実施の形態2で示すトランジスタを適用することができる。
【0376】
まずは、実施の形態2で示すトランジスタを適用した半導体記憶装置を構成するメモリセルについて図15を用いて説明する。
【0377】
メモリセルは、ビット線BLと、ワード線WLと、センスアンプSAmpと、トランジスタTrと、キャパシタCと、を有する(図15(A)参照。)。
【0378】
キャパシタCに保持された電圧の時間変化は、トランジスタTrのオフ電流によって図15(B)に示すように徐々に低減していくことが知られている。当初V0からV1まで充電された電圧は、時間が経過するとdata1を読み出す限界点であるVAまで低減する。この期間を保持期間T_1とする。即ち、2値メモリセルの場合、保持期間T_1の間にリフレッシュをする必要がある。
【0379】
ここで、トランジスタTrに実施の形態2で示すトランジスタを適用すると、オフ電流が小さいため、保持期間T_1を長くすることができる。即ち、リフレッシュの頻度を少なくすることが可能となるため、消費電力を低減することができる。例えば、オフ電流が1×10−21A以下、好ましくは1×10−24A以下となった酸化物半導体膜を用いたトランジスタでメモリセルを構成すると、電力を供給せずに数日間から数十年間に渡ってデータを保持することが可能となる。
【0380】
以上のように、本発明の一態様によって、信頼性が高く、消費電力の小さい半導体記憶装置を構成するメモリセルを得ることができる。
【0381】
次に、実施の形態2で示すトランジスタを適用した半導体記憶装置を構成するメモリセルについて図15とは異なる例について図16を用いて説明する。
【0382】
図16(A)は、半導体記憶装置を構成するメモリセルの回路図である。メモリセルは、トランジスタTr_1と、トランジスタTr_1のゲートと接続するワード線WL_1と、トランジスタTr_1のソースと接続するソース線SL_1と、トランジスタTr_2と、トランジスタTr_2のソースと接続するソース線SL_2と、トランジスタTr_2のドレインと接続するドレイン線DL_2と、キャパシタCと、キャパシタCの一端と接続する容量線CLと、キャパシタCの他端、トランジスタTr_1のドレインおよびトランジスタTr_2のゲートと接続するノードNと、を有する。
【0383】
なお、本実施の形態に示すメモリセルは、ノードNの電位に応じて、トランジスタTr_2の見かけ上のしきい値電圧が変動することを利用したものである。例えば、図16(B)は容量線CLの電圧VCLと、トランジスタTr_2を流れるドレイン電流I_2との関係を説明する図である。
【0384】
ここで、ノードNは、トランジスタTr_1を介して電圧を調整することができる。例えば、ソース線SL_1の電位をVDDとする。このとき、ワード線WL_1の電位をトランジスタTr_1のしきい値電圧VthにVDDを加えた電位以上とすることで、ノードNの電圧をHIGHにすることができる。また、ワード線WL_1の電位をトランジスタTr_1のしきい値電圧Vth以下とすることで、ノードNの電位をLOWにすることができる。
【0385】
そのため、N=LOWで示したVCL−I_2カーブと、N=HIGHで示したVCL−I_2カーブのいずれかを得ることができる。即ち、N=LOWでは、VCL=0VにてI_2が小さいため、データ0となる。また、N=HIGHでは、VCL=0VにてI_2が大きいため、データ1となる。このようにして、データを記憶することができる。
【0386】
ここで、トランジスタTr_1に実施の形態2で示すトランジスタを適用すると、該トランジスタはオフ電流を極めて小さくすることができるため、ノードNに蓄積された電荷がトランジスタTr_1のソースおよびドレイン間を意図せずにリークすることを抑制できる。そのため、長期間に渡ってデータを保持することができる。また、本発明の一態様を用いることでトランジスタTr_1のしきい値電圧が調整されるため、書き込みに必要な電圧を低減することが可能となり、フラッシュメモリなどと比較して消費電力を低減することができる。
【0387】
なお、トランジスタTr_2に、実施の形態2で示すトランジスタを適用しても構わない。
【0388】
以上のように、本発明の一態様によって、長期間の信頼性が高く、消費電力の小さく、集積度の高い半導体記憶装置を得ることができる。
【0389】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【0390】
(実施の形態5)
実施の形態2で示すトランジスタまたは実施の形態4に示した半導体記憶装置を少なくとも一部に用いてCPU(Central Processing Unit)を構成することができる。
【0391】
図17(A)は、CPUの具体的な構成を示すブロック図である。図17(A)に示すCPUは、基板1190上に、演算論理装置(ALU:Arithmetic logic unit)1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントローラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース(Bus I/F)1198、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフェース(ROM I/F)1189を有している。基板1190は、半導体基板、SOI基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189は、別チップに設けてもよい。もちろん、図17(A)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0392】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクションデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195に入力される。
【0393】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種制御を行う。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御するための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行う。
【0394】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ1192、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およびレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0395】
図17(A)に示すCPUでは、レジスタ1196に、記憶素子が設けられている。レジスタ1196の記憶素子には、実施の形態4に示す半導体記憶装置を用いることができる。
【0396】
図17(A)に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191からの指示に従い、レジスタ1196における保持動作を行う。即ち、レジスタ1196が有する記憶素子において、フリップフロップによるデータの保持を行うか、キャパシタによるデータの保持を行う。フリップフロップによってデータが保持されている場合、レジスタ1196内の記憶素子への、電源電圧の供給が行われる。キャパシタによってデータが保持されている場合、キャパシタへのデータの書き換えが行われ、レジスタ1196内の記憶素子への電源電圧の供給を停止することができる。
【0397】
電源停止に関しては、図17(B)または図17(C)に示すように、記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設けることにより行うことができる。以下に図17(B)および図17(C)の回路の説明を行う。
【0398】
図17(B)および図17(C)では、記憶素子への電源電位の供給を制御するスイッチング素子に実施の形態2に示すトランジスタ用いた構成の一例を示す。
【0399】
図17(B)に示す記憶装置は、スイッチング素子1141と、記憶素子1142を複数有する記憶素子群1143とを有している。具体的に、それぞれの記憶素子1142には、実施の形態4に示す記憶素子を用いることができる。記憶素子群1143が有するそれぞれの記憶素子1142には、スイッチング素子1141を介して、ハイレベルの電源電位VDDが供給されている。さらに、記憶素子群1143が有するそれぞれの記憶素子1142には、信号INの電位と、ローレベルの電源電位VSSの電位が与えられている。
【0400】
図17(B)では、スイッチング素子1141として、実施の形態2で示したオフ電流の極めて小さいトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲートに与えられる信号SigAによりスイッチングが制御される。
【0401】
なお、図17(B)では、スイッチング素子1141がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、これに限定されず、トランジスタを複数有していてもよい。スイッチング素子1141が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0402】
また、図17(C)には、記憶素子群1143が有するそれぞれの記憶素子1142に、スイッチング素子1141を介して、ローレベルの電源電位VSSが供給されている、記憶装置の一例を示す。スイッチング素子1141により、記憶素子群1143が有するそれぞれの記憶素子1142への、ローレベルの電源電位VSSの供給を制御することができる。
【0403】
記憶素子群と、電源電位VDDまたは電源電位VSSの与えられているノード間に、スイッチング素子を設け、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減を行うことができる。例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUの動作を停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0404】
ここでは、CPUを例に挙げて説明したが、DSP(Digital Signal Processor)、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのLSIにも応用可能である。
【0405】
本実施の形態は、上記実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0406】
(実施の形態6)
実施の形態2で示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0407】
図18(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。図18(A)はフォトセンサの等価回路であり、図18(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0408】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソースまたはドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソースまたはドレインの他方がトランジスタ656のソースまたはドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソースまたはドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0409】
なお、図18(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態2で示したトランジスタが適用できる。
【0410】
図18(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602およびトランジスタ640に示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601上に、センサとして機能するフォトダイオード602およびトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0411】
トランジスタ640上には層間絶縁膜633および層間絶縁膜634が設けられている。フォトダイオード602は、層間絶縁膜633上に設けられ、層間絶縁膜633上に形成した電極641と、層間絶縁膜634上に設けられた電極642との間に、層間絶縁膜633側から順に第1半導体膜606a、第2半導体膜606bおよび第3半導体膜606cを積層した構造を有している。
【0412】
電極641は、層間絶縁膜634に形成された導電膜643と電気的に接続し、電極642は電極641を介して導電膜645と電気的に接続している。導電膜645は、トランジスタ640のゲート電極と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0413】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜606bとして高抵抗な半導体膜(i型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0414】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含む非晶質シリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の不純物元素(例えばホウ素)を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはモノシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどを用いてもよい。また、不純物元素を含まない非晶質シリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該非晶質シリコン膜に不純物元素を導入してもよい。また、イオン注入法などにより不純物元素を導入した後に加熱などを行うことで、不純物元素を拡散させると好ましい。この場合に非晶質シリコン膜を形成する方法としては、熱CVD法、プラズマCVD法またはスパッタリング法などを用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0415】
第2半導体膜606bは、i型半導体膜であり、非晶質シリコン膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、非晶質シリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、モノシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどを用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、熱CVD法、プラズマCVD法またはスパッタリング法などにより行えばよい。第2半導体膜606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0416】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含む非晶質シリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン)を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはモノシラン(SiH)を用いればよい。または、Si、SiHCl、SiHCl、SiCl、SiFなどを用いてもよい。また、不純物元素を含まない非晶質シリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該非晶質シリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合に非晶質シリコン膜を形成する方法としては、熱CVD法、プラズマCVD法またはスパッタリング法などを用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0417】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606bおよび第3半導体膜606cは、非晶質半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶半導体を用いて形成してもよい。
【0418】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0419】
層間絶縁膜633および層間絶縁膜634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法など)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いて形成することができる。
【0420】
層間絶縁膜633および層間絶縁膜634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜が好ましい。層間絶縁膜633および層間絶縁膜634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、または積層を用いることができる。
【0421】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0422】
以上のように、チャネル長方向にチャネル形成領域を挟んで低抵抗領域を含む酸化物半導体膜を有するトランジスタは、オン特性(例えば、オン電流および電界効果移動度)が高く、高速動作、高速応答が可能である。また、微細化も達成できる。よって、該トランジスタを用いることで高性能および高信頼性の半導体装置を提供することができる。
【0423】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0424】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態2乃至実施の形態5を適用した電子機器の例について説明する。
【0425】
図19(A)は携帯型情報端末である。図19(A)に示す携帯型情報端末は、筐体9300と、ボタン9301と、マイクロフォン9302と、表示部9303と、スピーカ9304と、カメラ9305と、を具備し、携帯型電話機としての機能を有する。本発明の一態様は、表示部9303およびカメラ9305に適用することができる。また、図示しないが、本体内部にある演算装置、無線回路または記憶回路に本発明の一態様を適用することもできる。
【0426】
図19(B)は、ディスプレイである。図19(B)に示すディスプレイは、筐体9310と、表示部9311と、を具備する。本発明の一態様は、表示部9311に適用することができる。本発明の一態様を適用することで、表示部9311のサイズを大きくしたときにも表示品位の高いディスプレイとすることができる。
【0427】
図19(C)は、デジタルスチルカメラである。図19(C)に示すデジタルスチルカメラは、筐体9320と、ボタン9321と、マイクロフォン9322と、表示部9323と、を具備する。本発明の一態様は、表示部9323に適用することができる。また、図示しないが、本発明の一態様に係る記憶素子またはイメージセンサを有してもよい。
【0428】
本発明の一態様を用いることで、電子機器の性能を高め、かつ信頼性を高めることができる。
【0429】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0430】
本実施例では、低抵抗化した酸化物半導体膜について説明する。
【0431】
以下に試料の作製方法について説明する。
【0432】
まず、ガラス基板を準備した。
【0433】
次に、ガラス基板上に酸化シリコン膜を330nmの厚さで成膜した。
【0434】
酸化シリコン膜は、石英ターゲットを用い、スパッタリング法により成膜した。そのほかの成膜条件は、成膜電力を5kW(RF)、成膜圧力を0.4Pa、成膜ガスとしてアルゴンを25sccmおよび酸素を25sccm、成膜時の基板温度を100℃とした。
【0435】
その後、CMP処理を行い、酸化シリコン膜を300nmの厚さとなるまで平坦化した。
【0436】
次に、酸化物半導体膜として、In−Sn−Zn−O膜を30nmの厚さで成膜した。
【0437】
酸化物半導体膜は、In−Sn−Zn−Oターゲット(In:Sn:Zn=2:1:3[原子数比])を用い、スパッタリング法により成膜した。そのほかの成膜条件は、成膜電力を0.5kW(DC)、成膜圧力を0.4Pa、成膜ガスとして酸素を50sccm、成膜時の基板温度を300℃とした。
【0438】
ここまでの工程で作製した試料を試料1とする。
【0439】
さらに、試料1において、酸化物半導体膜上に還元性を有する膜としてアルミニウム膜を20nmの厚さで成膜した。
【0440】
アルミニウム膜は、アルミニウムターゲットを用い、スパッタリング法により成膜した。そのほかの成膜条件は、成膜電力を1kW(DC)、成膜圧力を0.4Pa、成膜ガスとしてアルゴンを50sccm、成膜時の基板温度を室温とした。
【0441】
次に、加熱処理を行った。加熱処理は、窒素雰囲気にて1時間行った。加熱処理の温度は、200℃、300℃または450℃で行った。
【0442】
次に、アルミニウム膜を除去した。アルミニウム膜の除去は、和光純薬工業株式会社製の混酸アルミ液(2.0重量%の硝酸と、9.8重量%の酢酸と、72.3重量%のリン酸と、を含有する水溶液)を用いて60秒間行い、完全にアルミニウム膜が除去されていることを確認した。
【0443】
ここで、200℃で加熱処理を行った試料を試料2、300℃で加熱処理を行った試料を試料3、450℃で加熱処理を行った試料を試料4とし、加熱処理を行わずにアルミニウム膜を除去した試料を試料5とした。
【0444】
次に、試料1乃至試料5のシート抵抗値を測定した。結果を図20に示す。
【0445】
図20より、試料5は、シート抵抗測定器の測定上限(5MΩ/sq)以上のシート抵抗値を有することがわかった。また、試料5と比較し、試料1乃至試料4のシート抵抗値が低抵抗化されていることがわかる。
【0446】
特に、試料3および試料4が低抵抗であった。これにより、酸化物半導体膜上にアルミニウム膜を成膜した後で300℃以上の加熱処理を行うことで、酸化物半導体膜をより低抵抗化できるとわかる。
【実施例2】
【0447】
本実施例では、実施例1とは異なる方法で酸化物半導体膜を低抵抗化させた例について説明する。
【0448】
以下に試料の作製方法について説明する。
【0449】
まず、ガラス基板を準備した。
【0450】
次に、ガラス基板上に酸化シリコン膜を330nmの厚さで成膜した。
【0451】
酸化シリコン膜は、石英ターゲットを用い、スパッタリング法により成膜した。そのほかの成膜条件は、成膜電力を5kW(RF)、成膜圧力を0.4Pa、成膜ガスとしてアルゴンを25sccmおよび酸素を25sccm、成膜時の基板温度を100℃とした。
【0452】
その後、CMP処理を行い、酸化シリコン膜を300nmの厚さとなるまで平坦化した。
【0453】
次に、酸化物半導体膜として、In−Sn−Zn−O膜を30nmの厚さで成膜した。
【0454】
酸化物半導体膜は、In−Sn−Zn−Oターゲット(In:Sn:Zn=2:1:3[原子数比])を用い、スパッタリング法により成膜した。そのほかの成膜条件は、成膜電力を0.5kW(DC)、成膜圧力を0.4Pa、成膜ガスとして酸素を50sccm、成膜時の基板温度を300℃とした。
【0455】
次に、酸化物半導体膜上に還元性を有する膜としてアルミニウム膜を20nmの厚さで成膜した。
【0456】
アルミニウム膜は、アルミニウムターゲットを用い、スパッタリング法により成膜した。そのほかの成膜条件は、成膜電力を1kW(DC)、成膜圧力を0.4Pa、成膜ガスとしてアルゴンを50sccm、成膜時の基板温度を室温とした。
【0457】
次に、アルミニウム膜を介して酸化物半導体膜に不純物を注入した。
【0458】
不純物の注入は、イオン注入法を用いて行った。
【0459】
不純物としてリンイオンを5×1014ions/cmの濃度で注入した試料を試料6とした。また、不純物としてリンイオンを1×1015ions/cmの濃度で注入した試料を試料7とした。また、不純物としてリンイオンを3×1015ions/cmの濃度で注入した試料を試料8とした。なお、加速電圧を40kVとして行った。
【0460】
同様に、不純物としてホウ素イオンを5×1014ions/cmの濃度で注入した試料を試料9とした。また、不純物としてホウ素イオンを1×1015ions/cmの濃度で注入した試料を試料10とした。また、不純物としてホウ素イオンを3×1015ions/cmの濃度で注入した試料を試料11とした。なお、加速電圧を15kVとして行った。
【0461】
次に、加熱処理を行った。加熱処理は、窒素雰囲気にて1時間行った。加熱処理の温度は、200℃または300℃で行った。
【0462】
次に、アルミニウム膜を除去した。アルミニウム膜の除去は、和光純薬工業株式会社製の混酸アルミ液(2.0重量%の硝酸と、9.8重量%の酢酸と、72.3重量%のリン酸と、を含有する水溶液)を用いて60秒間行い、完全にアルミニウム膜が除去されていることを確認した。
【0463】
次に、試料6乃至試料11のシート抵抗値を測定した。結果を図21に示す。
【0464】
ここで、200℃で加熱処理を行ったシート抵抗値を白抜き、300℃で加熱処理を行ったシート抵抗値を網掛けとして示す。
【0465】
図21より、試料6、試料9および試料10は1kΩ/sq程度まで低抵抗化されることがわかった。
【0466】
また、そのほかの試料も、試料8を除き、おおむね10kΩ/sq程度以下まで低抵抗化されることがわかった。
【0467】
特に、試料9を200℃で加熱処理した酸化物半導体膜が低抵抗であった。これにより、酸化物半導体膜上にアルミニウム膜を成膜した後でホウ素イオンを5×1014ions/cm程度の濃度で注入し、200℃で加熱処理を行うと、酸化物半導体膜をさらに低抵抗化できるとわかる。
【符号の説明】
【0468】
100 酸化物半導体膜
101 酸素の一部が脱離した領域
102 不純物を含む酸化物半導体膜
103 酸素の一部が脱離した領域
104 不純物を含む酸化物半導体膜
105 不純物を含む酸素の一部が脱離した領域
106a 酸化物半導体膜
106b 酸化物半導体膜
106c 酸化物半導体膜
110 還元性を有する膜
111 酸素を含む領域
200 基板
204 ゲート電極
206 酸化物半導体膜
206a 第1の領域
206b 第2の領域
206c 第3の領域
206d 第4の領域
206e 第5の領域
206f 第6の領域
206g 第7の領域
206h 第8の領域
206i 第9の領域
206j 第10の領域
206k 第11の領域
206l 第12の領域
206m 第13の領域
206n 第14の領域
206o 第15の領域
206p 第16の領域
206q 第17の領域
206r 第18の領域
206s 第19の領域
206t 第20の領域
206u 第21の領域
206v 第22の領域
207 酸化物半導体膜
208 側壁絶縁膜
210 還元性を有する膜
211 還元性を有する膜
212 ゲート絶縁膜
216 一対の電極
218 絶縁膜
219 絶縁膜
220 配線
221 配線
254 導電膜
256 酸化物半導体膜
258 絶縁膜
262 絶縁膜
271 トランジスタ
272 トランジスタ
273 トランジスタ
274 トランジスタ
275 トランジスタ
276 トランジスタ
277 トランジスタ
601 基板
602 フォトダイオード
606a 半導体膜
606b 半導体膜
606c 半導体膜
608 接着層
613 基板
633 層間絶縁膜
634 層間絶縁膜
640 トランジスタ
641 電極
642 電極
643 導電膜
645 導電膜
656 トランジスタ
658 フォトダイオードリセット信号線
659 ゲート信号線
671 フォトセンサ出力信号線
672 フォトセンサ基準信号線
1141 スイッチング素子
1142 記憶素子
1143 記憶素子群
1189 ROMインターフェース
1190 基板
1191 ALU
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 バスインターフェース
1199 ROM
2200 画素
2210 液晶素子
2220 キャパシタ
2230 トランジスタ
3002 下地絶縁膜
3004 ゲート電極
3006 酸化物半導体膜
3006a 高抵抗領域
3006b 低抵抗領域
3007 酸化物半導体膜
3007a 高抵抗領域
3007b 低抵抗領域
3012 ゲート絶縁膜
3016 一対の電極
3018 保護絶縁膜
3020 保護膜
3022 配線
3024 側壁絶縁膜
9300 筐体
9301 ボタン
9302 マイクロフォン
9303 表示部
9304 スピーカ
9305 カメラ
9310 筐体
9311 表示部
9320 筐体
9321 ボタン
9322 マイクロフォン
9323 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物半導体膜上に還元性を有する膜が設けられており、
前記酸化物半導体膜の酸素の一部を前記還元性を有する膜へ移動させた後、前記還元性を有する膜を除去することを特徴とする酸化物半導体膜の処理方法。
【請求項2】
酸化物半導体膜上に還元性を有する膜が設けられており、
前記還元性を有する膜を介して前記酸化物半導体膜に不純物を注入し、
前記酸化物半導体膜の酸素の一部を前記還元性を有する膜へ移動させた後、前記還元性を有する膜を除去することを特徴とする酸化物半導体膜の処理方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記還元性を有する膜を介して前記酸化物半導体膜に前記不純物を注入する際、前記還元性を有する膜を構成する材料の一部が前記酸化物半導体膜に移動することを特徴とする酸化物半導体膜の処理方法。
【請求項4】
酸化物半導体膜上に還元性を有する膜が設けられており、
前記酸化物半導体膜の酸素の一部を前記還元性を有する膜へ移動させ、
前記還元性を有する膜を介して前記酸化物半導体膜に不純物を注入した後、前記還元性を有する膜を除去することを特徴とする酸化物半導体膜の処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
加熱処理を行うことで、前記酸化物半導体膜の酸素の一部を前記還元性を有する膜へ移動させることを特徴とする酸化物半導体膜の処理方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記加熱処理は、不活性雰囲気または減圧雰囲気で行うことを特徴とする酸化物半導体膜の処理方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、少なくともインジウムを含むことを特徴とする酸化物半導体膜の処理方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記還元性を有する膜の材料は、ニッケル、アルミニウムまたはマグネシウムを含むことを特徴とする酸化物半導体膜の処理方法。
【請求項9】
酸化物半導体膜上に絶縁膜を成膜し、
前記絶縁膜上に導電膜を成膜し、
前記導電膜および前記絶縁膜を加工してゲート電極および前記ゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで前記酸化物半導体膜の一部を露出し、
前記露出した酸化物半導体膜上および前記ゲート電極上に還元性を有する膜を成膜し、
前記ゲート電極をマスクとし、前記還元性を有する膜を介して前記酸化物半導体膜の一部に前記酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、
前記還元性を有する膜を除去した後、加熱処理を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項10】
酸化物半導体膜上に第1の絶縁膜を成膜し、
前記第1の絶縁膜上に導電膜を成膜し、
前記導電膜および前記第1の絶縁膜を加工してゲート電極および前記ゲート電極と同様の上面形状を有するゲート絶縁膜を形成することで前記酸化物半導体膜の一部を露出し、
前記ゲート電極を覆って第2の絶縁膜を成膜し、
前記第2の絶縁膜を加工して、前記ゲート電極の側壁と接する側壁絶縁膜を形成し、
前記露出した酸化物半導体膜上、前記ゲート電極上および前記側壁絶縁膜上に還元性を有する膜を成膜し、
前記ゲート電極および前記側壁絶縁膜をマスクとし、前記還元性を有する膜を介して前記酸化物半導体膜の一部に前記酸化物半導体膜を低抵抗化させる不純物を注入し、
前記還元性を有する膜を除去した後、加熱処理を行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10において、
前記還元性を有する膜を介して前記酸化物半導体膜に前記不純物を注入する際、前記還元性を有する膜を構成する材料の一部が前記酸化物半導体膜に移動することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、少なくともインジウムを含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項13】
請求項9乃至請求項12のいずれか一において、
前記還元性を有する膜の材料は、ニッケル、アルミニウムまたはマグネシウムを含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−48217(P2013−48217A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159183(P2012−159183)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】