酸化物超電導導体用基材及び酸化物超電導導体とNiO中間層の成膜方法
【課題】本発明は、優れた超電導特性を発揮する酸化物超電導導体用基材並びにその基材を用いた酸化物超電導導体として有用な技術の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、基材と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、4回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする。
【解決手段】本発明は、基材と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、4回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物超電導層の下地用の中間層として好適であって結晶配向性に優れたNiO中間層を備えた酸化物超電導導体用基材、及び酸化物超電導導体とNiO中間層の成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RE−123系の酸化物超電導体(REBa2Cu3O7−X:REは希土類元素)は、液体窒素温度で超電導性を示すことから実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体として用いることが要望されている。中でも、Y系酸化物超電導体(YBa2Cu3O7−X)を用いた超電導線材は、外部磁界に対して強く、強磁界内でも高い電流密度を維持することができるため、超電導コイル用導体としての利用、あるいは電力供給用ケーブルとしての利用の他、超電導限流器用の導体などとしての研究開発が進められている。
これら研究開発用途のいずれにおいても、希土類系酸化物超電導導体の作製には、配向基材を使用する必要があり、配向基材を作製できる方法の一例として、イオンビームアシスト成膜法(IBAD法:Ion-Beam-Assisted Deposition)が知られている。
【0003】
RE−123系酸化物超電導導体の一構造例として、テープ状の金属基材と、その上にベッド層や拡散防止層を介しIBAD法によって成膜された中間層と、その上に成膜されたキャップ層と酸化物超電導層とを具備した酸化物超電導線材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の希土類系酸化物超電導体は、配向基材上に2軸配向させることで高い超電導特性を示すことが知られており、希土類系酸化物超電導体の結晶配向度が高い程、臨界電流、臨界磁場、臨界温度等の超電導特性においてより優れたものが得られる。
このことから、高配向度の基材を得ることは、優れた希土類系酸化物超電導体を得る上で重要な役割を果たす。前記構造において、中間層の結晶面内配向性が高い方が、更にその上に成膜されるキャップ層と酸化物超電導層も高い結晶配向性となり、酸化物超電導層の結晶面内配向性が高くなる程、臨界電流値等の超電導特性が優れた酸化物超電導導体を得ることができる。例えば、図6に示す如く金属基材100の結晶方位が揃っていない構造であっても、その上に形成された中間層110の結晶粒120において各結晶粒120の結晶方位のa軸どうし、あるいはb軸どうしが互いに同一方向に小さな粒界傾角K(図7参照)の範囲内で揃っていると、中間層110の上に形成される酸化物超電導層の各結晶粒の結晶方位も揃うことになり、優れた酸化物超電導層を得ることができる。
【0004】
前記IBAD法に従い、テープ状の金属基材上に高い結晶配向性で成膜可能な材料として、従来、YSZ(イットリア安定化ジルコニウム)、GZO(Gd2Zr2O7)、MgOなどの中間層が開発され、現状の技術においては膜厚が極めて薄い範囲で結晶配向性に優れるMgOが有望とされている。
【0005】
ところで、長尺の基材上に成膜法により薄膜を積層して酸化物超電導導体を製造しようとする試みとは異なり、薄膜形成プロセスを用いることなく、別の方法で長尺の超電導線材を得ようとする試みの一環として、圧延とアニール処理により{100}<001>方位に配向した集合組織を有する多結晶金属基材を用いる方法が知られている。
前記{100}<001>方位に配向した集合組織とは、金属テープを構成する結晶において{100}面をテープ表面に対して平行に配置し、結晶の<001>方向をテープ長手方向に平行に配向させた組織を示している。
そして、この集合組織を備えた基材を得るために、Ni基合金を用い、圧延加工を行ってテープ状に加工するとともに、このテープを真空中、800℃程度の高温で数時間アニールすることにより、基材表面に酸化物層を生成することで集合組織を得る技術が知られている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−71359号公報
【特許文献2】特開2002−150855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、酸化物超電導導体用の中間層として有望なIBAD法によるMgO(以下、IBAD−MgOと略記する)は、数nm〜数10nmの膜厚で優れた結晶配向性を得ることができ、膜自体が極めて薄いので成膜時間を短縮することができ、高速成膜が可能であるなどの利点を有するものの、最近の研究ではIBAD−MgOは水分との反応性があり、水分存在雰囲気中において長時間放置すると、MgOが水酸化物となって剥離し易いなどの知見がなされており、IBAD−MgO層は湿分雰囲気中での取り扱いに注意が必要であることが判明している。
【0008】
また、前記圧延方法とアニール処理により{100}<001>方位に配向した集合組織を有する多結晶金属基体を超電導導体の基体として利用する技術では、圧延加工とアニール処理により生成した酸化物を主体とする集合組織を利用するが、長尺の基材を製造する場合に製造速度を高くすることが難しく、圧延加工の状態とアニールの状態によって、長尺のテープ状の基材全面に均一に集合組織を生成するための工程が複雑となる課題がある。
【0009】
このような背景から、本発明者は、IBAD法によるMgO層以外の薄膜において、数nm〜数10nmなどの極めて薄い膜厚でもって良好な結晶配向性を示し、かつ、湿気によって影響を受け難い材料の研究開発を行い、種々研究を重ねた結果、本願発明に到達した。
本願発明は、IBAD法による中間層の形成技術において、極めて薄い膜厚で良好な結晶配向性を示すとともに、水分の影響を受け難く安定しており、IBAD法による新規なNiO中間層を備えた超電導導体用基材の提供を目的とする。
また、本願発明はその超電導導体用基材の製造方法の提供と超電導導体用基材を備えた良好な超電導特性を発揮し得る酸化物超電導導体の提供、及び、IBAD法によるNiO中間層の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の酸化物超電導導体用基材は、基材本体と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、4回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用基材は、前記NiOからなる中間層の結晶軸分散の半値幅ΔΦが16゜以下であることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用基材は、基材本体と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、3回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成され、底部側が3回対称性を有し上部側が4回対称性を有する2層構造とされた中間補償層と、該中間補償層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする。
【0011】
本発明の酸化物超電導導体用基材は、前記中間補償層がGd2Zr2O7からなることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用基材は、基材本体上に、拡散防止層とベッド層の少なくとも1層を介し中間層が形成されたことを特徴とする先のいずれかに記載の基材である。
本発明の酸化物超電導導体用基材は、先のいずれかに記載の酸化物超電導導体用基材のキャップ層上に酸化物超電導層が成膜されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の4回対称NiO中間層の成膜方法は、イオンビームアシスト法により基材上に4回対称のNiO中間層を成膜する方法であって、成膜する雰囲気の背圧を0.001Pa以下として成膜することを特徴とする。
本発明の4回対称NiO中間層の成膜方法は、前記背圧を0.0002Pa以下とすることを特徴とする。
本発明の4回対称NiO中間層の成膜方法は、イオンビームアシスト法によりNiO中間層を成膜する際のアシストイオンビームの電流密度を75μA/cm2以上、120μA/cm2以下の範囲とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のIBAD法による4回対称性を有するNiOからなる中間層は、高い結晶配向性を有し、その上に積層される薄膜の結晶配向性を整える作用を奏すると共に、水分存在雰囲気中に長時間曝露しても反応性が低く、剥離や劣化し難い特徴を有する。よって、基材本体上にIBAD法によるNiOからなる中間層を備えた構造は、酸化物超電導導体用基材として好適であり、中間層の上に成膜されるキャップ層と酸化物超電導層の結晶配向性をいずれも高いレベルで揃えることができ、特性の優れた超電導導体の提供に寄与する。
【0014】
また、IBAD法による3回対称性を有するNiOからなる中間層は、その上に3回対称性から4回対称性に配向性を変換する中間補償層を備えた構造とすることにより、高い結晶配向性を有し、4回対称性を示すので、その上に積層される薄膜の結晶配向性を整える作用を奏すると共に、NiOからなる中間層は水分存在雰囲気中に長時間曝露しても反応性が低く、剥離や劣化し難い特徴を有する。よって、基材本体上にIBAD法による3回対称性のNiOからなる中間層と、4回対称性への変換ができる中間補償層を備えた構造は、酸化物超電導導体用基材として好適であり、中間補償層の上に成膜されるキャップ層と酸化物超電導層の結晶配向性をいずれも高いレベルで揃えることができ、特性の優れた超電導導体の提供に寄与する。
中間補償層の構成材料として、Gd2Zr2O7を適用することができ、Gd2Zr2O7によって下地の3回対称性のNiOからなる中間層の配向性を4回対称性に確実に変更することができる。
【0015】
イオンビームアシスト法によりNiO中間層を金属基材上に成膜する際、成膜雰囲気の背圧を0.001Pa以下として成膜することで、4回対称性のNiO中間層を確実に成膜することができる。この際の成膜雰囲気の背圧を0.0002Pa以下とすることでより配向性に優れた4回対称性のNiO中間層を得ることができる。また、イオンビームアシスト法に用いるアシストイオンビームの電流密度として、75〜120μA/cm2の範囲を選択することで、配向度の高い4回対称性のNiO中間層を金属基材上に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る酸化物超電導導体用基材の第1実施形態を示す構成図。
【図2】本発明に係る酸化物超電導導体用基材の第2実施形態を示す構成図。
【図3】本発明に係る酸化物超電導導体の第1実施形態を示す構成図。
【図4】IBAD法を実施するための成膜装置の一例を示す構成図。
【図5】同成膜装置に適用されるイオンガンの一例を示す構成図。
【図6】金属基材本体上に形成されたIBAD法による多結晶薄膜の模式図。
【図7】図6に示す多結晶薄膜の結晶粒どうしが構成する結晶軸の分散性を示す模式図。
【図8】実施例においてIBAD法によりNiO中間層を成膜する場合に用いたアシストイオンビームの電流密度と、得られたNiO中間層のΔφの相関関係を示す図。
【図9】実施例において得られた3回対称性のNiOの中間層の正極点図である。
【図10】実施例において得られた4回対称性に変換後のGZOの正極点図である。
【図11】実施例において得られた4回対称性のNiOの中間層の正極点図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る酸化物超電導導体用基材の第1実施形態の構造を模式的に示す図である。
本実施形態の酸化物超電導導体用基材Aは、金属基材本体11上に順に、Al2O3などからなる拡散防止層9とY2O3などからなるベッド層12を介して、4回対称性を示すNiOからなる中間層13と、CeO2などからなるキャップ層14とを積層し構成されている。
図2は本発明に係る酸化物超電導導体用基材の第2実施形態の構造を模式的に示す図である。
本第2実施形態の酸化物超電導導体用基材Bは、金属基材本体21上に順に、Al2O3などからなる拡散防止層19とY2O3などからなるベッド層22を介して、3回対称性を示すNiOからなる中間層23と、3回対称性を4回対称性に補償するGZO(Gd2Zr2O7)などからなる中間補償層24と、CeO2などからなるキャップ層25とを積層し構成されている。
図3は本発明に係る酸化物超電導導体の第1実施形態の構造を模式的に示す図である。
本実施形態の酸化物超電導導体Cは、金属基材本体31上に順に、Al2O3などからなる拡散防止層29とY2O3などからなるベッド層32を介して、4回対称性を示すNiOからなる中間層33と、CeO2などからなるキャップ層34と、希土類系などの酸化物超電導層37と、AgやCuなどの良導電性金属材料からなる安定化層38を積層し構成されている。
【0018】
酸化物超電導導体用基材A、B及び酸化物超電導導体Cに適用できる基材本体11、21、31は、通常の超電導線材の基材本体として使用することができ、高強度であれば良く、長尺のケーブルとするためにテープ状であることが好ましく、耐熱性の面から見て金属からなるものが好ましい。例えば、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ等のニッケル合金等の各種金属材料、もしくはこれら各種金属材料上にセラミックスを配したもの、等が挙げられる。各種耐熱性の金属の中でも、ニッケル合金が好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適であり、ハステロイとして、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。基材本体11の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmの範囲、より好ましくは20〜200μmの範囲とすることができる。超電導導体用として見た場合、下限値以上とすることで強度を確保でき、上限値以下とすることで高い臨界電流密度を得やすくする。
【0019】
拡散防止層9、19、29は、基材本体11、21、31の構成元素拡散を防止する目的で形成されたもので、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(Gd2Zr2O7)等から構成され、その厚さは例えば10〜400nmである。
拡散防止層9、19、29の厚さが10nm未満となると、基材本体11、21、31の構成元素の拡散を十分に防止できなくなる虞がある。一方、拡散防止層9、19、29の厚さが400nmを超えると、拡散防止層9、19、29の内部応力が増大し、これにより、他の層を含めて全体が基材本体11、21、31から剥離しやすくなる傾向がある。また、拡散防止層9、19、29の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すればよい。
【0020】
ベッド層12、22、32は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層12、22、32は、例えば、イットリア(Y2O3)などの希土類酸化物であり、組成式(α1O2)2x(β2O3)(1−x)で示されるものが例示できる。より具体的には、Er2O3、CeO2、Dy2O3、Er2O3、Eu2O3、Ho2O3、La2O3等を例示することができる。このベッド層12、22、32は、例えばスパッタリング法等の成膜法により形成され、その厚さは例えば10〜200nmである。
【0021】
中間層13、23、33は、単層構造あるいは複層構造のいずれでも良く、その上に積層されるキャップ層14、25、34などの結晶配向性を制御するために2軸配向する物質から選択される。中間層13、23、33として具体的には、NiOを選択することができる。
この中間層13、23、33をIBAD法により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度16゜以下)で成膜するならば、その上に形成するキャップ層14、34あるいは中間補償層24とキャップ層25の結晶配向性を良好な値(例えばキャップ層において結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層14、25、34の上に成膜する酸化物超電導層の結晶配向性を良好なものとして優れた超電導特性を発揮できる酸化物超電導層を備えた酸化物超電導導体を得るようにすることができる。
【0022】
NiOからなる中間層13、23、33の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、5〜300nmの範囲とすることができる。
中間層13、23、33は、イオンビームアシスト法(IBAD法)で積層する。このIBAD法で形成されたNiOの中間層13、23、33は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層37やキャップ層14、34の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、先にも説明した如く成膜時に、下地の成膜面に対して所定の角度でイオンビームをアシスト照射することにより、目的の薄膜の結晶軸を配向させる方法である。通常は、アシストイオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、NiOからなる中間層13、23、33は、IBAD法における結晶配向度を表す指標である結晶軸分散の半値幅ΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
また、IBAD法により形成する図1、図3のNiOの中間層13、33については4回対称性を示し、図2に示す中間層23については3回対称性を示すが、これらについては後に詳述する。
【0023】
キャップ層14、25、34は、前記中間層13、23、33の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層は、前記金属酸化物層からなる中間層13、23、33よりも高い面内配向度が得られる。
キャップ層14、25、34の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Zr2O3、Ho2O3、Nd2O3等が例示できる。キャップ層の材質がCeO2である場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
【0024】
このCeO2のキャップ層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが望ましい。PLD法によるCeO2のキャップ層の成膜条件としては、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で行うことができる。
CeO2のキャップ層の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲、より好ましくは100〜5000nmの範囲とすることができる。
【0025】
酸化物超電導層37は公知のもので良く、具体的には、REBa2Cu3Oy(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のものを例示できる。この酸化物超電導層37として、Y123系(YBa2Cu3O7−X)又はGd123系(GdBa2Cu3O7−X)などを例示することができる。
酸化物超電導層37は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相成長法(CVD法)等の物理的蒸着法;熱塗布分解法(MOD法)等で積層することができ、なかでも生産性の観点から、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)、PLD法又はCVD法を用いることが好ましい。
このMOD法は、金属有機酸塩を塗布後熱分解させるもので、金属成分の有機化合物を均一に溶解した溶液を基材上に塗布した後、これを加熱して熱分解させることにより基材上に薄膜を形成する方法であり、真空プロセスを必要とせず、低コストで高速成膜が可能であるため長尺のテープ状酸化物超電導導体の製造に適している。
【0026】
図4にIBAD法を実施するための成膜装置の一構造例を示す。
図4に示す如く中間層13を製造する場合のイオンビームアシストスパッタ装置50は、テープ状の基材などが配置される成膜領域に面するようにターゲット52がターゲットホルダ55に支持された状態で成膜室に配置され、このターゲット52に対して斜め方向に対向するようにスパッタイオンソース源54が配置されるとともに、成膜領域に設置されている基材本体11の上面に対し所定の角度で(例えばθ=45゜など)斜め方向から対向するようにアシストイオンソース源53を配置し構成される。
この例のイオンビームアシストスパッタ装置50は、真空チャンバに収容される形態で設けられる成膜装置であり、基材本体11、21、31がテープ状の基材本体である場合は、図示略の対向配置された第1のロールと第2のロールに複数回往復巻回されて成膜領域を走行できる構造などを例示することができるが、図4では簡略化して基材ホルダ51の上面に基材本体11が設置されている構造として示した。
この実施形態において適用されるイオンソース源53、54は、図5に示す容器49の内部に、引出電極57とフィラメント58とArガス等の導入管59とを備えて構成され、容器49の先端からイオンをビーム状に平行に照射できるものである。
【0027】
本実施形態で用いるイオンビームアシストスパッタ装置50を収容する真空チャンバは、外部と成膜空間とを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有するものとされる。この真空チャンバには、真空チャンバ内にキャリアガス及び反応ガスを導入するガス供給手段と、真空チャンバ内のガスを排気する排気手段が接続されているが、図4ではこれら供給手段と排気手段を略し、各装置の配置関係のみを示している。
ここで用いるターゲット52とは、前述したNiOの中間層13を形成する場合に見合った組成のNiOのターゲットとすることができる。
図4に示す構造のイオンビームアシストスパッタ装置50を用いることでIBAD法を実施し、目的の中間層13、23、33を成膜することができる。
【0028】
IBAD法により中間層を成膜する場合、図4に示すターゲット52、イオンソース源53、54及び基材本体11を収容している真空チャンバには、Arガスや酸素ガスなどのソースガスを導入できるように構成されており、内部を例えば目的の真空度に調整した上でAr:O2=9:1などの混合ガス雰囲気(ソースガス雰囲気)に調整できるように構成されている。
本実施形態で用いる真空チャンバでは、真空ポンプを用いた減圧雰囲気に、例えば背圧でもって、0.008Pa〜0.00008Paの範囲の所望の真空度に調節できるようになっている。この範囲の真空度には、真空ポンプによる減圧に要する時間を適宜調整することで容易に到達することができる。
【0029】
そして、基材本体11、31のベッド層12、32上に4回対称性のNiOの中間層13、33を成膜するには、真空ポンプにより減圧する際の成膜雰囲気の背圧を0.001〜0.00008Paの範囲に設定した後、スパッタイオン源54からターゲット52にイオンビームを照射してターゲット粒子の叩き出しや放出を行い、ベッド層12、32上にNiOの粒子堆積を行うと同時に、ベッド層12、13の成膜面に対し斜め45゜方向からアシストイオン源53からのイオンビーム照射を行いつつ成膜するイオンビームアシストスパッタ法を実施する。イオンビームアシストスパッタ法を実施する際の成膜温度は常温で差し支えない。また、背圧については前述の範囲より更に低圧としても良いが、真空引きのために時間がかかりすぎるので、通常は上述の範囲から選択することが好ましい。
上述の範囲の真空度によりイオンビームアシストスパッタ法を実施することで、ベッド層12、32上に4回対称性のNiOの中間層13、33を成膜することができる。
【0030】
一方、基材本体21のベッド層22上に3回対称性のNiOの中間層23を成膜するには、真空ポンプにより減圧する際の成膜雰囲気の背圧を0.008〜0.0015Paの範囲に設定した後、スパッタイオン源54からターゲット52にイオンビームを照射してターゲット粒子の叩き出しや放出を行い、ベッド層12、32上にNiOの粒子堆積を行うと同時に、ベッド層12、13の成膜面に対し斜め45゜方向からアシストイオン源53からのイオンビーム照射を行いつつ成膜するイオンビームアシストスパッタ法を実施する。イオンビームアシストスパッタ法を実施する際の成膜温度は常温で差し支えない。
【0031】
上述の範囲の真空度によりイオンビームアシストスパッタ法を実施することで、ベッド層23上に3回対称性のNiOの中間層23を成膜することができる。
ここで、4回対称性のNiOの中間層13、33とは、得られた中間層をX線測定して回折試験像であるNiO(220)正極点測定を行い、正極点図を描いた場合、略楕円形領域で表示される対称性の範囲が360゜範囲で4箇所表示されることを意味し、3回対称性のNiOの中間層23とは得られた中間層をX線測定して回折試験像であるNiO(220)正極点測定を行い、正極点図を描いた場合、略同様図形で表示される対称性の範囲が360゜範囲で3箇所表示されることを意味する。4回対称性のNiOとは基板の垂直方向に(100)配向していることを意味し、3回対称性のNiOとは基板の垂直方向に(111)配向していることを意味する。なお、3回対称性の正極点図の例を図9に示し、4回対称性の正極点図の例を図11に示す。
【0032】
4回対称性のNiOの中間層13、33であるならば、それらの上に形成するキャップ層14、34、酸化物超電導層37も良好な配向性でもってエピタキシャル成膜できる結果、優れた配向性の超電導導体の製造に寄与する。また、IBAD法によるNiOの中間層13、33は水分との反応性が低いので、IBAD法によるMgOとは異なり、湿度の高い雰囲気に長期間曝露しても剥離や性能の劣化は生じ難い。
また、3回対称性のNiOの中間層23であるならば、3回対称性を4回対称性に変換する必要があるので、中間補償層24を設け、その上にキャップ層25を設けて酸化物超電導導体用基材Bとする。
この中間補償層24については、本出願人が先に特願2008−254812号に記載の如く3回対称性のIBAD−MgO層の上に形成することで下地のIBAD−MgO層の3回対称性を4回対称性に変換できる層として示しており、IBAD法により形成する膜厚50〜300nm程度のGZO(Gd2Zr2O7)からなる層である。このGd2Zr2O7の中間補償層24を介することで、3回対称性のNiOの中間層23の配向度を示す指標であるΔφの値が20〜23゜程度であっても、中間補償層24のΔφを15゜程度することが可能であり、更にその上にキャップ層25を積層することでキャップ層25のΔφを5゜程度以下とすることが可能となる。
また、3回対称性のNiOの中間層25であるならば、その上にGZO(Gd2Zr2O7)の中間補償層24を形成して中間補償層24の底部側を3回対称性として中間補償層24の上部側を4回対称性に変換することができるので、このGZOの中間補償層24上に、キャップ層25と希土類系酸化物超電導層を順次成膜して結晶配向性に優れ、超電導特性に優れた酸化物超電導層を得ることができる。
なお、GZO(Gd2Zr2O7)の中間補償層24を形成して中間補償層24の底部側を3回対称性として中間補償層24の上部側を4回対称性に変換することができる技術については、本願出願人が先に特願2008−254812号において提供した技術に相当する。
一例として、200nmの膜厚のGZO(Gd2Zr2O7)の中間補償層24をArの希ガスイオンビームによるイオンビームアシストを行いながらスパッタすることで、<111>配向している底部側の初期部と上部側の成長部とからなる2層構造の中間補償層24を形成することができ、これにより、NiO層の3回対称性をGZOの中間補償層24で4回対称性に変換することができる。
【0033】
ここで図3に示す構造のように、良好な配向性を有するキャップ層34上に酸化物超電導層37を形成すると、このキャップ層34上に積層される酸化物超電導層37もキャップ層34の配向性に整合するように結晶化する。よって前記キャップ層34上に形成された酸化物超電導層37は、結晶配向性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層37を構成する結晶粒の1つ1つにおいては、基材本体31の厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向し、基材31の長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。従って得られた酸化物超電導層37は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、基材31の長さ方向に電気を流し易くなり、十分に高い臨界電流密度が得られる。
酸化物超電導層37の上に積層されている安定化層38はAgなどの良電導性かつ酸化物超電導層37と接触抵抗が低くなじみの良い金属材料からなる層として形成され、必要に応じて更にCuなどの良電導性金属材料の安定化層を更に複合した積層構造としても良い。
【0034】
なお、図1、図2に示す酸化物超電導導体用基材A、Bにおいてもそれらのキャップ層14、25の上に酸化物超電導層を積層するならば、図3に示す構造と同様、優れた超電導特性の超電導導体を得ることができる。従って、図1、図2に示す酸化物超電導導体用基材A、Bにおいても優れた酸化物超電導導体用基材として有用である。
【0035】
以上、本発明に係る酸化物超電導導体用基材A、B及び酸化物超電導導体Cの各実施形態について説明したが、これらの実施形態において、超電導導体を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の具体的実施例について説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
幅10mmのテープ状のハステロイC276(米国ヘインズ社商品名)からなる基材本体上に、スパッタ法によりAl2O3の拡散防止層(厚さ150nm)とY2O3のベッド層(厚さ20nm)とを積層し、この積層体に対してイオンビームアシストスパッタ法により種々の背圧のもとでNiOの中間層を成膜した。イオンビームアシストスパッタ法の実施に当たり、図4に示す構成の成膜装置を用い、アシストイオンビームの入射方向を積層体上面の成膜面の法線に対し45゜傾斜した方向にセットし、成膜温度を30℃(室温)、成膜雰囲気のソースガスはArガス:O2ガス=9:1の混合ガスを使用し、NiOのターゲットを用いてイオンビームアシストスパッタ法を実施した。アシストイオンビームの加速電圧は1400V、電流密度は91.5μA/cm2に設定し、成膜雰囲気の背圧を0.008Pa、0.004Pa、0.0015Pa、0.001Pa、0.0008Pa、0.0002Pa、0.00008Paの7通りに設定した場合のそれぞれについて試料を作成した。また、これらの条件においてNiO中間層の堆積率(deposition rate)は3.1Å/sである。
【0037】
イオンビームアシストスパッタ法を実施し、NiO中間層を厚さ約20nm成膜後、更に、アシストイオンビームの照射を停止してイオンビームスパッタ法に切り替え、成膜温度300℃で膜厚約400nmのエピタキシャルNiO層(Epi-NiO)を積層した。この膜厚約400nmのエピタキシャルNiO層はX線測定を行ってIBAD−NiO中間層の結晶配向度を調べるために成膜するものであり、厚さ20nmのNiO中間層では膜自体が薄すぎてX線測定が困難か、あるいは不可能なために、エピタキシャルNiO層を成膜後にX線測定によりNiO(220)正極点測定を行い、結晶配向性の指標である結晶軸分散の半値幅Δφを求めた。なお、IBAD法により形成した厚さ20nmのNiO中間層の配向性に倣うようにエピタキシャルNiO層が配向するので、エピタキシャルNiO層のΔφが優れることはその下地のIBAD法によるNiO層も同等に優れた配向性であることを意味する。各試料の試験結果を以下の表1に示す
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示す試験結果から、IBAD法によるNiO層は成膜雰囲気中の背圧が0.008〜0.0015Paの範囲では3回対称性を持った結晶配向となり、背圧が0.001〜0.00008Paの範囲では4回対称性を持った結晶配向となることが判明した。また、IBAD法によるNiO層のΔφの値については、エピタキシャルNiO層の正極点測定結果から、背圧が0.008〜0.0015Paの範囲では25.6゜〜36.2゜の範囲となり、背圧が0.001〜0.00008Paの範囲では10.9゜〜15.9゜の範囲となることが判明した。
【0040】
ここで4回対称性のIBAD−NiO層であるならば、その上にCeO2のキャップ層と希土類系酸化物超電導層を順次成膜することにより、結晶配向性に優れ、超電導特性に優れた酸化物超電導層を得ることができる。
前記背圧0.0008Paで成膜したΔφ=10.9゜のIBAD−NiO層の上に、パルスレーザー成膜法(PLD法)により800℃で膜厚500nmのCeO2のキャップ層を成膜したところ、このキャップ層のΔφは5゜となり、良好な配向性を示した。
従って、4回対称性のNiO層を得るためには、成膜雰囲気の背圧を0.001Pa以下、例えば、0.001〜0.00008Paの範囲とすることが好ましいと思われる。
【0041】
次に、IBAD法によりNiO層を成膜する場合の条件として、背圧を0.00008Paに規定し、成膜温度を室温(30℃)に規定し、NiOの堆積率を3.1Å/sに規定して、アシストイオンビームの電流密度のみを異なる値として成膜試験を行った。その他の条件は先の実施例と同等である。その結果を以下の表2に示すとともに、図8に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2と図8に示す試験結果から、IBAD法によりNiO層を成膜する場合、前記の成膜条件におけるアシストイオンビームの電流密度は、配向度を示す指標であるΔφの値として、10.9゜〜12.4゜が得られる範囲、70μA/cm2〜110μA/cm2の範囲が好ましいと思われる。
【0044】
次に、IBAD法により得られるNiO層の耐湿性について調査するために、以下の試験を行った。
IBAD法により得られるNiO層として、上記試験例において、Δφが10.9゜の試料を用い、更に、IBAD法により得られるMgOの中間層試料(背圧0.00008Pa、Δφ=6.8゜)を比較として用い、両者の耐湿性試験を行った。試験は、湿度80%の雰囲気に1〜4週間放置し、その後、IBAD法により得られるNiO層上にはエピタキシャルNiO層を400nm積層し、IBAD法により得られるMgO層上にはエピタキシャルMgO層を400nm積層し、所定期間放置後の結晶軸分散の半値幅Δφを測定した。
その結果を以下の表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示す結果から、IBAD法により製造されるMgOの中間層は、放置時間が1週間になるとΔφの値が劣化し、放置時間2週間以上では剥離のためにΔφの値を測定することができなかった。これに対しIBAD法により製造されるNiOの中間層は、1週間程度の耐湿試験では全く影響が無く、2〜4週間後であってもΔφの値が殆ど劣化していないことが判明した。即ち、IBAD法により製造されるNiOの中間層は、湿気に強く、具体的には湿度80%に3週間程度放置してもΔφの値が殆ど劣化しないことが判明した。
【0047】
次に、図9に上述の背圧(0.008Pa)にて形成した3回対称性を示すNiO中間層(Δφ=25.6゜)の(220)正極点図を示し、図10に同NiOの中間層上にIBAD法により形成した膜厚200nmのGZO層の(222)正極点図を示す。図10に示す如く下地の3回対称性のNiO中間層の配向性をGZO層により4回対称に変更できることが明らかとなった。
また、図11に上述の背圧(0.00008Pa)にて形成した4回対称性を示すNiO中間層(Δφ=10.9゜)の(220)正極点図を示す。この4回対称性のNiO中間層は優れた配向度を示した。
【符号の説明】
【0048】
A、B…酸化物超電導導体用基材、C…酸化物超電導導体、11、21、31…基材本体、9、19、29…拡散防止層、12、22、32…ベッド層、13、23、33…中間層、14、25、34…キャップ層、24…中間補償層、37…酸化物超電導層、38…安定化層、50…イオンビームアシストスパッタ装置、52…ターゲット、53、54…イオン源、
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物超電導層の下地用の中間層として好適であって結晶配向性に優れたNiO中間層を備えた酸化物超電導導体用基材、及び酸化物超電導導体とNiO中間層の成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RE−123系の酸化物超電導体(REBa2Cu3O7−X:REは希土類元素)は、液体窒素温度で超電導性を示すことから実用上極めて有望な素材とされており、これを線材に加工して電力供給用の導体として用いることが要望されている。中でも、Y系酸化物超電導体(YBa2Cu3O7−X)を用いた超電導線材は、外部磁界に対して強く、強磁界内でも高い電流密度を維持することができるため、超電導コイル用導体としての利用、あるいは電力供給用ケーブルとしての利用の他、超電導限流器用の導体などとしての研究開発が進められている。
これら研究開発用途のいずれにおいても、希土類系酸化物超電導導体の作製には、配向基材を使用する必要があり、配向基材を作製できる方法の一例として、イオンビームアシスト成膜法(IBAD法:Ion-Beam-Assisted Deposition)が知られている。
【0003】
RE−123系酸化物超電導導体の一構造例として、テープ状の金属基材と、その上にベッド層や拡散防止層を介しIBAD法によって成膜された中間層と、その上に成膜されたキャップ層と酸化物超電導層とを具備した酸化物超電導線材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この種の希土類系酸化物超電導体は、配向基材上に2軸配向させることで高い超電導特性を示すことが知られており、希土類系酸化物超電導体の結晶配向度が高い程、臨界電流、臨界磁場、臨界温度等の超電導特性においてより優れたものが得られる。
このことから、高配向度の基材を得ることは、優れた希土類系酸化物超電導体を得る上で重要な役割を果たす。前記構造において、中間層の結晶面内配向性が高い方が、更にその上に成膜されるキャップ層と酸化物超電導層も高い結晶配向性となり、酸化物超電導層の結晶面内配向性が高くなる程、臨界電流値等の超電導特性が優れた酸化物超電導導体を得ることができる。例えば、図6に示す如く金属基材100の結晶方位が揃っていない構造であっても、その上に形成された中間層110の結晶粒120において各結晶粒120の結晶方位のa軸どうし、あるいはb軸どうしが互いに同一方向に小さな粒界傾角K(図7参照)の範囲内で揃っていると、中間層110の上に形成される酸化物超電導層の各結晶粒の結晶方位も揃うことになり、優れた酸化物超電導層を得ることができる。
【0004】
前記IBAD法に従い、テープ状の金属基材上に高い結晶配向性で成膜可能な材料として、従来、YSZ(イットリア安定化ジルコニウム)、GZO(Gd2Zr2O7)、MgOなどの中間層が開発され、現状の技術においては膜厚が極めて薄い範囲で結晶配向性に優れるMgOが有望とされている。
【0005】
ところで、長尺の基材上に成膜法により薄膜を積層して酸化物超電導導体を製造しようとする試みとは異なり、薄膜形成プロセスを用いることなく、別の方法で長尺の超電導線材を得ようとする試みの一環として、圧延とアニール処理により{100}<001>方位に配向した集合組織を有する多結晶金属基材を用いる方法が知られている。
前記{100}<001>方位に配向した集合組織とは、金属テープを構成する結晶において{100}面をテープ表面に対して平行に配置し、結晶の<001>方向をテープ長手方向に平行に配向させた組織を示している。
そして、この集合組織を備えた基材を得るために、Ni基合金を用い、圧延加工を行ってテープ状に加工するとともに、このテープを真空中、800℃程度の高温で数時間アニールすることにより、基材表面に酸化物層を生成することで集合組織を得る技術が知られている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−71359号公報
【特許文献2】特開2002−150855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、酸化物超電導導体用の中間層として有望なIBAD法によるMgO(以下、IBAD−MgOと略記する)は、数nm〜数10nmの膜厚で優れた結晶配向性を得ることができ、膜自体が極めて薄いので成膜時間を短縮することができ、高速成膜が可能であるなどの利点を有するものの、最近の研究ではIBAD−MgOは水分との反応性があり、水分存在雰囲気中において長時間放置すると、MgOが水酸化物となって剥離し易いなどの知見がなされており、IBAD−MgO層は湿分雰囲気中での取り扱いに注意が必要であることが判明している。
【0008】
また、前記圧延方法とアニール処理により{100}<001>方位に配向した集合組織を有する多結晶金属基体を超電導導体の基体として利用する技術では、圧延加工とアニール処理により生成した酸化物を主体とする集合組織を利用するが、長尺の基材を製造する場合に製造速度を高くすることが難しく、圧延加工の状態とアニールの状態によって、長尺のテープ状の基材全面に均一に集合組織を生成するための工程が複雑となる課題がある。
【0009】
このような背景から、本発明者は、IBAD法によるMgO層以外の薄膜において、数nm〜数10nmなどの極めて薄い膜厚でもって良好な結晶配向性を示し、かつ、湿気によって影響を受け難い材料の研究開発を行い、種々研究を重ねた結果、本願発明に到達した。
本願発明は、IBAD法による中間層の形成技術において、極めて薄い膜厚で良好な結晶配向性を示すとともに、水分の影響を受け難く安定しており、IBAD法による新規なNiO中間層を備えた超電導導体用基材の提供を目的とする。
また、本願発明はその超電導導体用基材の製造方法の提供と超電導導体用基材を備えた良好な超電導特性を発揮し得る酸化物超電導導体の提供、及び、IBAD法によるNiO中間層の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の酸化物超電導導体用基材は、基材本体と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、4回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用基材は、前記NiOからなる中間層の結晶軸分散の半値幅ΔΦが16゜以下であることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用基材は、基材本体と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、3回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成され、底部側が3回対称性を有し上部側が4回対称性を有する2層構造とされた中間補償層と、該中間補償層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする。
【0011】
本発明の酸化物超電導導体用基材は、前記中間補償層がGd2Zr2O7からなることを特徴とする。
本発明の酸化物超電導導体用基材は、基材本体上に、拡散防止層とベッド層の少なくとも1層を介し中間層が形成されたことを特徴とする先のいずれかに記載の基材である。
本発明の酸化物超電導導体用基材は、先のいずれかに記載の酸化物超電導導体用基材のキャップ層上に酸化物超電導層が成膜されてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の4回対称NiO中間層の成膜方法は、イオンビームアシスト法により基材上に4回対称のNiO中間層を成膜する方法であって、成膜する雰囲気の背圧を0.001Pa以下として成膜することを特徴とする。
本発明の4回対称NiO中間層の成膜方法は、前記背圧を0.0002Pa以下とすることを特徴とする。
本発明の4回対称NiO中間層の成膜方法は、イオンビームアシスト法によりNiO中間層を成膜する際のアシストイオンビームの電流密度を75μA/cm2以上、120μA/cm2以下の範囲とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のIBAD法による4回対称性を有するNiOからなる中間層は、高い結晶配向性を有し、その上に積層される薄膜の結晶配向性を整える作用を奏すると共に、水分存在雰囲気中に長時間曝露しても反応性が低く、剥離や劣化し難い特徴を有する。よって、基材本体上にIBAD法によるNiOからなる中間層を備えた構造は、酸化物超電導導体用基材として好適であり、中間層の上に成膜されるキャップ層と酸化物超電導層の結晶配向性をいずれも高いレベルで揃えることができ、特性の優れた超電導導体の提供に寄与する。
【0014】
また、IBAD法による3回対称性を有するNiOからなる中間層は、その上に3回対称性から4回対称性に配向性を変換する中間補償層を備えた構造とすることにより、高い結晶配向性を有し、4回対称性を示すので、その上に積層される薄膜の結晶配向性を整える作用を奏すると共に、NiOからなる中間層は水分存在雰囲気中に長時間曝露しても反応性が低く、剥離や劣化し難い特徴を有する。よって、基材本体上にIBAD法による3回対称性のNiOからなる中間層と、4回対称性への変換ができる中間補償層を備えた構造は、酸化物超電導導体用基材として好適であり、中間補償層の上に成膜されるキャップ層と酸化物超電導層の結晶配向性をいずれも高いレベルで揃えることができ、特性の優れた超電導導体の提供に寄与する。
中間補償層の構成材料として、Gd2Zr2O7を適用することができ、Gd2Zr2O7によって下地の3回対称性のNiOからなる中間層の配向性を4回対称性に確実に変更することができる。
【0015】
イオンビームアシスト法によりNiO中間層を金属基材上に成膜する際、成膜雰囲気の背圧を0.001Pa以下として成膜することで、4回対称性のNiO中間層を確実に成膜することができる。この際の成膜雰囲気の背圧を0.0002Pa以下とすることでより配向性に優れた4回対称性のNiO中間層を得ることができる。また、イオンビームアシスト法に用いるアシストイオンビームの電流密度として、75〜120μA/cm2の範囲を選択することで、配向度の高い4回対称性のNiO中間層を金属基材上に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る酸化物超電導導体用基材の第1実施形態を示す構成図。
【図2】本発明に係る酸化物超電導導体用基材の第2実施形態を示す構成図。
【図3】本発明に係る酸化物超電導導体の第1実施形態を示す構成図。
【図4】IBAD法を実施するための成膜装置の一例を示す構成図。
【図5】同成膜装置に適用されるイオンガンの一例を示す構成図。
【図6】金属基材本体上に形成されたIBAD法による多結晶薄膜の模式図。
【図7】図6に示す多結晶薄膜の結晶粒どうしが構成する結晶軸の分散性を示す模式図。
【図8】実施例においてIBAD法によりNiO中間層を成膜する場合に用いたアシストイオンビームの電流密度と、得られたNiO中間層のΔφの相関関係を示す図。
【図9】実施例において得られた3回対称性のNiOの中間層の正極点図である。
【図10】実施例において得られた4回対称性に変換後のGZOの正極点図である。
【図11】実施例において得られた4回対称性のNiOの中間層の正極点図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る酸化物超電導導体用基材の第1実施形態の構造を模式的に示す図である。
本実施形態の酸化物超電導導体用基材Aは、金属基材本体11上に順に、Al2O3などからなる拡散防止層9とY2O3などからなるベッド層12を介して、4回対称性を示すNiOからなる中間層13と、CeO2などからなるキャップ層14とを積層し構成されている。
図2は本発明に係る酸化物超電導導体用基材の第2実施形態の構造を模式的に示す図である。
本第2実施形態の酸化物超電導導体用基材Bは、金属基材本体21上に順に、Al2O3などからなる拡散防止層19とY2O3などからなるベッド層22を介して、3回対称性を示すNiOからなる中間層23と、3回対称性を4回対称性に補償するGZO(Gd2Zr2O7)などからなる中間補償層24と、CeO2などからなるキャップ層25とを積層し構成されている。
図3は本発明に係る酸化物超電導導体の第1実施形態の構造を模式的に示す図である。
本実施形態の酸化物超電導導体Cは、金属基材本体31上に順に、Al2O3などからなる拡散防止層29とY2O3などからなるベッド層32を介して、4回対称性を示すNiOからなる中間層33と、CeO2などからなるキャップ層34と、希土類系などの酸化物超電導層37と、AgやCuなどの良導電性金属材料からなる安定化層38を積層し構成されている。
【0018】
酸化物超電導導体用基材A、B及び酸化物超電導導体Cに適用できる基材本体11、21、31は、通常の超電導線材の基材本体として使用することができ、高強度であれば良く、長尺のケーブルとするためにテープ状であることが好ましく、耐熱性の面から見て金属からなるものが好ましい。例えば、銀、白金、ステンレス鋼、銅、ハステロイ等のニッケル合金等の各種金属材料、もしくはこれら各種金属材料上にセラミックスを配したもの、等が挙げられる。各種耐熱性の金属の中でも、ニッケル合金が好ましい。なかでも、市販品であれば、ハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)が好適であり、ハステロイとして、モリブデン、クロム、鉄、コバルト等の成分量が異なる、ハステロイB、C、G、N、W等のいずれの種類も使用できる。基材本体11の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は、10〜500μmの範囲、より好ましくは20〜200μmの範囲とすることができる。超電導導体用として見た場合、下限値以上とすることで強度を確保でき、上限値以下とすることで高い臨界電流密度を得やすくする。
【0019】
拡散防止層9、19、29は、基材本体11、21、31の構成元素拡散を防止する目的で形成されたもので、窒化ケイ素(Si3N4)、酸化アルミニウム(Al2O3、「アルミナ」とも呼ぶ)、あるいは、GZO(Gd2Zr2O7)等から構成され、その厚さは例えば10〜400nmである。
拡散防止層9、19、29の厚さが10nm未満となると、基材本体11、21、31の構成元素の拡散を十分に防止できなくなる虞がある。一方、拡散防止層9、19、29の厚さが400nmを超えると、拡散防止層9、19、29の内部応力が増大し、これにより、他の層を含めて全体が基材本体11、21、31から剥離しやすくなる傾向がある。また、拡散防止層9、19、29の結晶性は特に問われないので、通常のスパッタ法等の成膜法により形成すればよい。
【0020】
ベッド層12、22、32は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、その上に配される膜の配向性を得るために用いる。このようなベッド層12、22、32は、例えば、イットリア(Y2O3)などの希土類酸化物であり、組成式(α1O2)2x(β2O3)(1−x)で示されるものが例示できる。より具体的には、Er2O3、CeO2、Dy2O3、Er2O3、Eu2O3、Ho2O3、La2O3等を例示することができる。このベッド層12、22、32は、例えばスパッタリング法等の成膜法により形成され、その厚さは例えば10〜200nmである。
【0021】
中間層13、23、33は、単層構造あるいは複層構造のいずれでも良く、その上に積層されるキャップ層14、25、34などの結晶配向性を制御するために2軸配向する物質から選択される。中間層13、23、33として具体的には、NiOを選択することができる。
この中間層13、23、33をIBAD法により良好な結晶配向性(例えば結晶配向度16゜以下)で成膜するならば、その上に形成するキャップ層14、34あるいは中間補償層24とキャップ層25の結晶配向性を良好な値(例えばキャップ層において結晶配向度5゜前後)とすることができ、これによりキャップ層14、25、34の上に成膜する酸化物超電導層の結晶配向性を良好なものとして優れた超電導特性を発揮できる酸化物超電導層を備えた酸化物超電導導体を得るようにすることができる。
【0022】
NiOからなる中間層13、23、33の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、5〜300nmの範囲とすることができる。
中間層13、23、33は、イオンビームアシスト法(IBAD法)で積層する。このIBAD法で形成されたNiOの中間層13、23、33は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層37やキャップ層14、34の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。IBAD法とは、先にも説明した如く成膜時に、下地の成膜面に対して所定の角度でイオンビームをアシスト照射することにより、目的の薄膜の結晶軸を配向させる方法である。通常は、アシストイオンビームとして、アルゴン(Ar)イオンビームを使用する。例えば、NiOからなる中間層13、23、33は、IBAD法における結晶配向度を表す指標である結晶軸分散の半値幅ΔΦ(FWHM:半値全幅)の値を小さくできるため、特に好適である。
また、IBAD法により形成する図1、図3のNiOの中間層13、33については4回対称性を示し、図2に示す中間層23については3回対称性を示すが、これらについては後に詳述する。
【0023】
キャップ層14、25、34は、前記中間層13、23、33の表面に対してエピタキシャル成長し、その後、横方向(面方向)に粒成長(オーバーグロース)して、結晶粒が面内方向に選択成長するという過程を経て形成されたものが好ましい。このようなキャップ層は、前記金属酸化物層からなる中間層13、23、33よりも高い面内配向度が得られる。
キャップ層14、25、34の材質は、上記機能を発現し得るものであれば特に限定されないが、好ましいものとして具体的には、CeO2、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Zr2O3、Ho2O3、Nd2O3等が例示できる。キャップ層の材質がCeO2である場合、キャップ層は、Ceの一部が他の金属原子又は金属イオンで置換されたCe−M−O系酸化物を含んでいても良い。
【0024】
このCeO2のキャップ層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが望ましい。PLD法によるCeO2のキャップ層の成膜条件としては、基材温度約500〜1000℃、約0.6〜100Paの酸素ガス雰囲気中で行うことができる。
CeO2のキャップ層の膜厚は、50nm以上であればよいが、十分な配向性を得るには100nm以上が好ましい。但し、厚すぎると結晶配向性が悪くなるので、50〜5000nmの範囲、より好ましくは100〜5000nmの範囲とすることができる。
【0025】
酸化物超電導層37は公知のもので良く、具体的には、REBa2Cu3Oy(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のものを例示できる。この酸化物超電導層37として、Y123系(YBa2Cu3O7−X)又はGd123系(GdBa2Cu3O7−X)などを例示することができる。
酸化物超電導層37は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、化学気相成長法(CVD法)等の物理的蒸着法;熱塗布分解法(MOD法)等で積層することができ、なかでも生産性の観点から、TFA−MOD法(トリフルオロ酢酸塩を用いた有機金属堆積法、塗布熱分解法)、PLD法又はCVD法を用いることが好ましい。
このMOD法は、金属有機酸塩を塗布後熱分解させるもので、金属成分の有機化合物を均一に溶解した溶液を基材上に塗布した後、これを加熱して熱分解させることにより基材上に薄膜を形成する方法であり、真空プロセスを必要とせず、低コストで高速成膜が可能であるため長尺のテープ状酸化物超電導導体の製造に適している。
【0026】
図4にIBAD法を実施するための成膜装置の一構造例を示す。
図4に示す如く中間層13を製造する場合のイオンビームアシストスパッタ装置50は、テープ状の基材などが配置される成膜領域に面するようにターゲット52がターゲットホルダ55に支持された状態で成膜室に配置され、このターゲット52に対して斜め方向に対向するようにスパッタイオンソース源54が配置されるとともに、成膜領域に設置されている基材本体11の上面に対し所定の角度で(例えばθ=45゜など)斜め方向から対向するようにアシストイオンソース源53を配置し構成される。
この例のイオンビームアシストスパッタ装置50は、真空チャンバに収容される形態で設けられる成膜装置であり、基材本体11、21、31がテープ状の基材本体である場合は、図示略の対向配置された第1のロールと第2のロールに複数回往復巻回されて成膜領域を走行できる構造などを例示することができるが、図4では簡略化して基材ホルダ51の上面に基材本体11が設置されている構造として示した。
この実施形態において適用されるイオンソース源53、54は、図5に示す容器49の内部に、引出電極57とフィラメント58とArガス等の導入管59とを備えて構成され、容器49の先端からイオンをビーム状に平行に照射できるものである。
【0027】
本実施形態で用いるイオンビームアシストスパッタ装置50を収容する真空チャンバは、外部と成膜空間とを仕切る容器であり、気密性を有するとともに、内部が高真空状態とされるため耐圧性を有するものとされる。この真空チャンバには、真空チャンバ内にキャリアガス及び反応ガスを導入するガス供給手段と、真空チャンバ内のガスを排気する排気手段が接続されているが、図4ではこれら供給手段と排気手段を略し、各装置の配置関係のみを示している。
ここで用いるターゲット52とは、前述したNiOの中間層13を形成する場合に見合った組成のNiOのターゲットとすることができる。
図4に示す構造のイオンビームアシストスパッタ装置50を用いることでIBAD法を実施し、目的の中間層13、23、33を成膜することができる。
【0028】
IBAD法により中間層を成膜する場合、図4に示すターゲット52、イオンソース源53、54及び基材本体11を収容している真空チャンバには、Arガスや酸素ガスなどのソースガスを導入できるように構成されており、内部を例えば目的の真空度に調整した上でAr:O2=9:1などの混合ガス雰囲気(ソースガス雰囲気)に調整できるように構成されている。
本実施形態で用いる真空チャンバでは、真空ポンプを用いた減圧雰囲気に、例えば背圧でもって、0.008Pa〜0.00008Paの範囲の所望の真空度に調節できるようになっている。この範囲の真空度には、真空ポンプによる減圧に要する時間を適宜調整することで容易に到達することができる。
【0029】
そして、基材本体11、31のベッド層12、32上に4回対称性のNiOの中間層13、33を成膜するには、真空ポンプにより減圧する際の成膜雰囲気の背圧を0.001〜0.00008Paの範囲に設定した後、スパッタイオン源54からターゲット52にイオンビームを照射してターゲット粒子の叩き出しや放出を行い、ベッド層12、32上にNiOの粒子堆積を行うと同時に、ベッド層12、13の成膜面に対し斜め45゜方向からアシストイオン源53からのイオンビーム照射を行いつつ成膜するイオンビームアシストスパッタ法を実施する。イオンビームアシストスパッタ法を実施する際の成膜温度は常温で差し支えない。また、背圧については前述の範囲より更に低圧としても良いが、真空引きのために時間がかかりすぎるので、通常は上述の範囲から選択することが好ましい。
上述の範囲の真空度によりイオンビームアシストスパッタ法を実施することで、ベッド層12、32上に4回対称性のNiOの中間層13、33を成膜することができる。
【0030】
一方、基材本体21のベッド層22上に3回対称性のNiOの中間層23を成膜するには、真空ポンプにより減圧する際の成膜雰囲気の背圧を0.008〜0.0015Paの範囲に設定した後、スパッタイオン源54からターゲット52にイオンビームを照射してターゲット粒子の叩き出しや放出を行い、ベッド層12、32上にNiOの粒子堆積を行うと同時に、ベッド層12、13の成膜面に対し斜め45゜方向からアシストイオン源53からのイオンビーム照射を行いつつ成膜するイオンビームアシストスパッタ法を実施する。イオンビームアシストスパッタ法を実施する際の成膜温度は常温で差し支えない。
【0031】
上述の範囲の真空度によりイオンビームアシストスパッタ法を実施することで、ベッド層23上に3回対称性のNiOの中間層23を成膜することができる。
ここで、4回対称性のNiOの中間層13、33とは、得られた中間層をX線測定して回折試験像であるNiO(220)正極点測定を行い、正極点図を描いた場合、略楕円形領域で表示される対称性の範囲が360゜範囲で4箇所表示されることを意味し、3回対称性のNiOの中間層23とは得られた中間層をX線測定して回折試験像であるNiO(220)正極点測定を行い、正極点図を描いた場合、略同様図形で表示される対称性の範囲が360゜範囲で3箇所表示されることを意味する。4回対称性のNiOとは基板の垂直方向に(100)配向していることを意味し、3回対称性のNiOとは基板の垂直方向に(111)配向していることを意味する。なお、3回対称性の正極点図の例を図9に示し、4回対称性の正極点図の例を図11に示す。
【0032】
4回対称性のNiOの中間層13、33であるならば、それらの上に形成するキャップ層14、34、酸化物超電導層37も良好な配向性でもってエピタキシャル成膜できる結果、優れた配向性の超電導導体の製造に寄与する。また、IBAD法によるNiOの中間層13、33は水分との反応性が低いので、IBAD法によるMgOとは異なり、湿度の高い雰囲気に長期間曝露しても剥離や性能の劣化は生じ難い。
また、3回対称性のNiOの中間層23であるならば、3回対称性を4回対称性に変換する必要があるので、中間補償層24を設け、その上にキャップ層25を設けて酸化物超電導導体用基材Bとする。
この中間補償層24については、本出願人が先に特願2008−254812号に記載の如く3回対称性のIBAD−MgO層の上に形成することで下地のIBAD−MgO層の3回対称性を4回対称性に変換できる層として示しており、IBAD法により形成する膜厚50〜300nm程度のGZO(Gd2Zr2O7)からなる層である。このGd2Zr2O7の中間補償層24を介することで、3回対称性のNiOの中間層23の配向度を示す指標であるΔφの値が20〜23゜程度であっても、中間補償層24のΔφを15゜程度することが可能であり、更にその上にキャップ層25を積層することでキャップ層25のΔφを5゜程度以下とすることが可能となる。
また、3回対称性のNiOの中間層25であるならば、その上にGZO(Gd2Zr2O7)の中間補償層24を形成して中間補償層24の底部側を3回対称性として中間補償層24の上部側を4回対称性に変換することができるので、このGZOの中間補償層24上に、キャップ層25と希土類系酸化物超電導層を順次成膜して結晶配向性に優れ、超電導特性に優れた酸化物超電導層を得ることができる。
なお、GZO(Gd2Zr2O7)の中間補償層24を形成して中間補償層24の底部側を3回対称性として中間補償層24の上部側を4回対称性に変換することができる技術については、本願出願人が先に特願2008−254812号において提供した技術に相当する。
一例として、200nmの膜厚のGZO(Gd2Zr2O7)の中間補償層24をArの希ガスイオンビームによるイオンビームアシストを行いながらスパッタすることで、<111>配向している底部側の初期部と上部側の成長部とからなる2層構造の中間補償層24を形成することができ、これにより、NiO層の3回対称性をGZOの中間補償層24で4回対称性に変換することができる。
【0033】
ここで図3に示す構造のように、良好な配向性を有するキャップ層34上に酸化物超電導層37を形成すると、このキャップ層34上に積層される酸化物超電導層37もキャップ層34の配向性に整合するように結晶化する。よって前記キャップ層34上に形成された酸化物超電導層37は、結晶配向性に乱れが殆どなく、この酸化物超電導層37を構成する結晶粒の1つ1つにおいては、基材本体31の厚さ方向に電気を流しにくいc軸が配向し、基材31の長さ方向にa軸どうしあるいはb軸どうしが配向している。従って得られた酸化物超電導層37は、結晶粒界における量子的結合性に優れ、結晶粒界における超電導特性の劣化が殆どないので、基材31の長さ方向に電気を流し易くなり、十分に高い臨界電流密度が得られる。
酸化物超電導層37の上に積層されている安定化層38はAgなどの良電導性かつ酸化物超電導層37と接触抵抗が低くなじみの良い金属材料からなる層として形成され、必要に応じて更にCuなどの良電導性金属材料の安定化層を更に複合した積層構造としても良い。
【0034】
なお、図1、図2に示す酸化物超電導導体用基材A、Bにおいてもそれらのキャップ層14、25の上に酸化物超電導層を積層するならば、図3に示す構造と同様、優れた超電導特性の超電導導体を得ることができる。従って、図1、図2に示す酸化物超電導導体用基材A、Bにおいても優れた酸化物超電導導体用基材として有用である。
【0035】
以上、本発明に係る酸化物超電導導体用基材A、B及び酸化物超電導導体Cの各実施形態について説明したが、これらの実施形態において、超電導導体を構成する各部は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の具体的実施例について説明するが、本願発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
幅10mmのテープ状のハステロイC276(米国ヘインズ社商品名)からなる基材本体上に、スパッタ法によりAl2O3の拡散防止層(厚さ150nm)とY2O3のベッド層(厚さ20nm)とを積層し、この積層体に対してイオンビームアシストスパッタ法により種々の背圧のもとでNiOの中間層を成膜した。イオンビームアシストスパッタ法の実施に当たり、図4に示す構成の成膜装置を用い、アシストイオンビームの入射方向を積層体上面の成膜面の法線に対し45゜傾斜した方向にセットし、成膜温度を30℃(室温)、成膜雰囲気のソースガスはArガス:O2ガス=9:1の混合ガスを使用し、NiOのターゲットを用いてイオンビームアシストスパッタ法を実施した。アシストイオンビームの加速電圧は1400V、電流密度は91.5μA/cm2に設定し、成膜雰囲気の背圧を0.008Pa、0.004Pa、0.0015Pa、0.001Pa、0.0008Pa、0.0002Pa、0.00008Paの7通りに設定した場合のそれぞれについて試料を作成した。また、これらの条件においてNiO中間層の堆積率(deposition rate)は3.1Å/sである。
【0037】
イオンビームアシストスパッタ法を実施し、NiO中間層を厚さ約20nm成膜後、更に、アシストイオンビームの照射を停止してイオンビームスパッタ法に切り替え、成膜温度300℃で膜厚約400nmのエピタキシャルNiO層(Epi-NiO)を積層した。この膜厚約400nmのエピタキシャルNiO層はX線測定を行ってIBAD−NiO中間層の結晶配向度を調べるために成膜するものであり、厚さ20nmのNiO中間層では膜自体が薄すぎてX線測定が困難か、あるいは不可能なために、エピタキシャルNiO層を成膜後にX線測定によりNiO(220)正極点測定を行い、結晶配向性の指標である結晶軸分散の半値幅Δφを求めた。なお、IBAD法により形成した厚さ20nmのNiO中間層の配向性に倣うようにエピタキシャルNiO層が配向するので、エピタキシャルNiO層のΔφが優れることはその下地のIBAD法によるNiO層も同等に優れた配向性であることを意味する。各試料の試験結果を以下の表1に示す
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示す試験結果から、IBAD法によるNiO層は成膜雰囲気中の背圧が0.008〜0.0015Paの範囲では3回対称性を持った結晶配向となり、背圧が0.001〜0.00008Paの範囲では4回対称性を持った結晶配向となることが判明した。また、IBAD法によるNiO層のΔφの値については、エピタキシャルNiO層の正極点測定結果から、背圧が0.008〜0.0015Paの範囲では25.6゜〜36.2゜の範囲となり、背圧が0.001〜0.00008Paの範囲では10.9゜〜15.9゜の範囲となることが判明した。
【0040】
ここで4回対称性のIBAD−NiO層であるならば、その上にCeO2のキャップ層と希土類系酸化物超電導層を順次成膜することにより、結晶配向性に優れ、超電導特性に優れた酸化物超電導層を得ることができる。
前記背圧0.0008Paで成膜したΔφ=10.9゜のIBAD−NiO層の上に、パルスレーザー成膜法(PLD法)により800℃で膜厚500nmのCeO2のキャップ層を成膜したところ、このキャップ層のΔφは5゜となり、良好な配向性を示した。
従って、4回対称性のNiO層を得るためには、成膜雰囲気の背圧を0.001Pa以下、例えば、0.001〜0.00008Paの範囲とすることが好ましいと思われる。
【0041】
次に、IBAD法によりNiO層を成膜する場合の条件として、背圧を0.00008Paに規定し、成膜温度を室温(30℃)に規定し、NiOの堆積率を3.1Å/sに規定して、アシストイオンビームの電流密度のみを異なる値として成膜試験を行った。その他の条件は先の実施例と同等である。その結果を以下の表2に示すとともに、図8に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2と図8に示す試験結果から、IBAD法によりNiO層を成膜する場合、前記の成膜条件におけるアシストイオンビームの電流密度は、配向度を示す指標であるΔφの値として、10.9゜〜12.4゜が得られる範囲、70μA/cm2〜110μA/cm2の範囲が好ましいと思われる。
【0044】
次に、IBAD法により得られるNiO層の耐湿性について調査するために、以下の試験を行った。
IBAD法により得られるNiO層として、上記試験例において、Δφが10.9゜の試料を用い、更に、IBAD法により得られるMgOの中間層試料(背圧0.00008Pa、Δφ=6.8゜)を比較として用い、両者の耐湿性試験を行った。試験は、湿度80%の雰囲気に1〜4週間放置し、その後、IBAD法により得られるNiO層上にはエピタキシャルNiO層を400nm積層し、IBAD法により得られるMgO層上にはエピタキシャルMgO層を400nm積層し、所定期間放置後の結晶軸分散の半値幅Δφを測定した。
その結果を以下の表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3に示す結果から、IBAD法により製造されるMgOの中間層は、放置時間が1週間になるとΔφの値が劣化し、放置時間2週間以上では剥離のためにΔφの値を測定することができなかった。これに対しIBAD法により製造されるNiOの中間層は、1週間程度の耐湿試験では全く影響が無く、2〜4週間後であってもΔφの値が殆ど劣化していないことが判明した。即ち、IBAD法により製造されるNiOの中間層は、湿気に強く、具体的には湿度80%に3週間程度放置してもΔφの値が殆ど劣化しないことが判明した。
【0047】
次に、図9に上述の背圧(0.008Pa)にて形成した3回対称性を示すNiO中間層(Δφ=25.6゜)の(220)正極点図を示し、図10に同NiOの中間層上にIBAD法により形成した膜厚200nmのGZO層の(222)正極点図を示す。図10に示す如く下地の3回対称性のNiO中間層の配向性をGZO層により4回対称に変更できることが明らかとなった。
また、図11に上述の背圧(0.00008Pa)にて形成した4回対称性を示すNiO中間層(Δφ=10.9゜)の(220)正極点図を示す。この4回対称性のNiO中間層は優れた配向度を示した。
【符号の説明】
【0048】
A、B…酸化物超電導導体用基材、C…酸化物超電導導体、11、21、31…基材本体、9、19、29…拡散防止層、12、22、32…ベッド層、13、23、33…中間層、14、25、34…キャップ層、24…中間補償層、37…酸化物超電導層、38…安定化層、50…イオンビームアシストスパッタ装置、52…ターゲット、53、54…イオン源、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、4回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする酸化物超電導導体用基材。
【請求項2】
前記NiOからなる中間層の結晶軸分散の半値幅Δφが16゜以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体用基材。
【請求項3】
基材と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、3回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成され、底部側が3回対称性を有し上部側が4回対称性を有する2層構造とされた中間補償層と、該中間補償層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする酸化物超電導導体用基材。
【請求項4】
前記中間補償層がGd2Zr2O7からなることを特徴とする請求項3に記載の酸化物超電導導体用基材。
【請求項5】
基材上に、拡散防止層とベッド層の少なくとも1層を介し中間層が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物超電導導体用基材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の酸化物超電導導体用基材のキャップ層上に酸化物超電導層が成膜されてなることを特徴とする酸化物超電導導体。
【請求項7】
イオンビームアシスト法により基材上に4回対称のNiO中間層を成膜する方法であって、成膜する雰囲気の背圧を0.001Pa以下として成膜することを特徴とする4回対称NiO中間層の成膜方法。
【請求項8】
前記背圧を0.0002Pa以下とすることを特徴とする請求項7に記載の4回対称NiO中間層の成膜方法。
【請求項9】
イオンビームアシスト法によりNiO中間層を成膜する際のアシストイオンビームの電流密度を75μA/cm2以上、120μA/cm2以下の範囲とすることを特徴とする請求項7または8に記載の4回対称NiO中間層の成膜方法。
【請求項1】
基材と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、4回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする酸化物超電導導体用基材。
【請求項2】
前記NiOからなる中間層の結晶軸分散の半値幅Δφが16゜以下であることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導導体用基材。
【請求項3】
基材と、その上に、イオンビームアシスト法により成膜されて結晶配向性が整えられ、3回対称性が付与されたNiOからなる中間層と、該中間層上に形成され、底部側が3回対称性を有し上部側が4回対称性を有する2層構造とされた中間補償層と、該中間補償層上に形成されたキャップ層とを具備してなり、該キャップ層はその上に酸化物超電導層が設けられるものであることを特徴とする酸化物超電導導体用基材。
【請求項4】
前記中間補償層がGd2Zr2O7からなることを特徴とする請求項3に記載の酸化物超電導導体用基材。
【請求項5】
基材上に、拡散防止層とベッド層の少なくとも1層を介し中間層が形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酸化物超電導導体用基材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の酸化物超電導導体用基材のキャップ層上に酸化物超電導層が成膜されてなることを特徴とする酸化物超電導導体。
【請求項7】
イオンビームアシスト法により基材上に4回対称のNiO中間層を成膜する方法であって、成膜する雰囲気の背圧を0.001Pa以下として成膜することを特徴とする4回対称NiO中間層の成膜方法。
【請求項8】
前記背圧を0.0002Pa以下とすることを特徴とする請求項7に記載の4回対称NiO中間層の成膜方法。
【請求項9】
イオンビームアシスト法によりNiO中間層を成膜する際のアシストイオンビームの電流密度を75μA/cm2以上、120μA/cm2以下の範囲とすることを特徴とする請求項7または8に記載の4回対称NiO中間層の成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−238519(P2011−238519A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110165(P2010−110165)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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