説明

重合性ジベンゾフラン誘導体およびそれを含む重合性液晶組成物

【課題】
重合性および液晶性を有する新規な化合物であって、室温での重合性、光重合性、溶解性、無色性、化学的安定性、他の重合性液晶化合物との相溶性および支持基板に対する濡れ性などの特性において、複数の特性に優れた重合性液晶化合物や、複数の特性に関して適切なバランスを有する重合性液晶化合物を提供すること。
【解決手段】
本発明に係る化合物は下記式(1)で表される。
【化1】


[式中、Aは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン等であり;Zは、−COO−、−(CH22COO−、−CH=CH−COO−等であり;Pは、下記式(P1)〜(P8)のいずれかで示される重合性の基であり;Qは、−O−、−O−(CH2r−、−(CH2r−、−O−(CH2r−O−等であり、rは1〜20の整数であり、sは2〜5の整数であり;xは0、1または2である。]
【化2】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジベンゾフラン骨格を有する化合物、該化合物を含有する組成物、該組成物から得られる重合体およびその用途などに関する。
【背景技術】
【0002】
重合性化合物が液晶性を有するとき、この化合物を重合させることによって光学異方性を有する重合体が得られることが知られている(特許文献1参照)。これは、液晶分子の配向(orientation)が重合によって固定されるからである。そのため、近年、偏光板や
位相差板などの光学異方性を有する成形体に、このような重合性の液晶性化合物が利用されている。
【0003】
上記重合性の液晶性化合物としては、重合反応性が高く、得られる重合体が高い透明性を有することなどから、−OCOCH=CH2を有する液晶化合物が一般に用いられてい
る(特許文献2参照)。また、紫外線の照射によって室温で重合する液晶化合物として、骨格構造にフルオレン環を有する液晶性化合物が知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−055573号公報
【特許文献2】特開2001−154019号公報
【特許文献3】特開2005−060373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、重合性および液晶性を有する新規な化合物を提供することにある。この課題の側面は、室温での重合性、光重合性、溶解性、無色性、化学的安定性、他の重合性液晶化合物との相溶性および支持基板に対する濡れ性などの特性において、複数の特性に優れた重合性液晶化合物や、複数の特性に関して適切なバランスを有する重合性液晶化合物を提供することである。
【0005】
また、本発明の課題は、このような重合性液晶化合物と、必要に応じて、その他の重合性液晶化合物とを含有する重合性液晶組成物、該組成物から得られる重合体であって、ホモジニアス、ホメオトロピック、ハイブリットなどの配向を有し、配向欠陥が少ない重合体およびその用途を提供することにもある。この課題の側面は、無色透明性、低光弾性(折り曲げても屈折率の変化が小さいこと)、支持基板に対する密着性、硬度、耐熱性および耐候性などの特性において、複数の特性に優れた光学異方性フィルムおよびその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ジベンゾフラン骨格を含む液晶化合物は、フルオレン骨格の縮合環内に酸素原子を有することから、屈折率異方性および耐熱性などを向上させることが期待される。そこで、本発明者らは、この着想に基づいて研究したところ、予想した以上に良好な実験結果が得られた。これらの結果をもとに検討を重ねて、下記の項を含む本発明を完成させた。
【0007】
[1] 下記式(1)で表される化合物。
【0008】
【化1】

【0009】
式(1)中、Aは、独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビフェニル−4,4’−ジイル、ターフェニル−4,4”−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイルまたはテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、該1,4−フェニレンにおける任意の水素は、塩素またはフッ素で置き換えられてもよく、また、任意の1つまたは2つの水素は、シアノ、メチル、エチル、メトキシ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;Zは、独立して単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−(CH24−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−であり;Pは、独立して下記式(P1)〜(P8)のいずれかで示される重合性の基であり;Qは、独立して−O−、−O−(CH2r−、−(CH2r−O−、−(CH2r−、−O−(CH2r−O−または−O−(CH2CH2O)s−であり、rは1〜20の整数であり、sは2〜5の
整数であり;xは0、1または2である。
【0010】
【化2】

【0011】
[2] 前記式(1)中、Aが、独立して1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、該1,4−フェニレンにおける任意の水素は、塩素またはフッ素で置き換えられてもよく、また、任意の1つまたは2つの水素は、メチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;Zが、独立して−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−であり;Pが、独立して上記式(P1)〜(P8)のいずれかで示される重合性の基であり;Qが、独立して−O−、−O−(CH2r−、−(CH2r−O−、−(CH2r−または−O−(CH2r−O−であり、rが1〜15の整数であり;xが1または2であることを特徴とする前記[1]に記載の化合物。
【0012】
[3] 前記式(1)中、Aが、独立して1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、該1,4−フェニレンにおける任意の1つまたは2つの水素は、塩素またはフッ素で置き換えられてもよく;Zが、独立して−COO−、−OCO−、−(CH
22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−であり;Pが、独立して上記式(P1)、(P5)、(P6)または(P7)で示される重合性の基であり;Qが、独立して−O−、−O−(CH2r−、−(CH2r−O−、−(CH2r−または−O−(CH2r−O−であり、rが1〜15の整数であり;xが1であることを特徴とする前記[1]に記載の化合物。
【0013】
[4] 下記式(1−1)〜(1−9)のいずれかで表される化合物。
【0014】
【化3】

【0015】
上記式(1−1)〜(1−9)中、Zは、独立して−COO−、−OCO−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−であり;rは、独立して1〜10の整数であり;R1、R2、R3およびR4は、それぞれ水素またはフッ素であり;R5は水素またはメチルである。
【0016】
[5] 下記式(1−1−1)、(1−1−2)、(1−1−3)、(1−6−1)、(1−6−2)、(1−6−3)、(1−7−1)、(1−8−1)、(1−8−2)、(1−9−1)または(1−9−2)で表される化合物。
【0017】
【化4】

【0018】
上記式中、rは1〜10の整数であり、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ水素またはフッ素である。
[6] 前記[5]に記載の式(1−1−1)で表され、該式中、R1、R2、R3およ
びR4が水素であり、rが2〜10の整数であることを特徴とする化合物。
【0019】
[7] 前記[5]に記載の式(1−1−1)で表され、該式中、R1およびR4が水素であり、R2およびR3がフッ素であり、rが2〜10の整数であることを特徴とする化合物。
[8] 前記[5]に記載の式(1−6−1)で表され、該式中、R1、R2、R3およ
びR4が水素であり、rが2〜10の整数であることを特徴とする化合物。
[9] 前記[1]〜[8]のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする重合性液晶組成物。
【0020】
[10] 第1成分として、前記[5]に記載の式(1−1−1)、式(1−1−2)および式(1−1−3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、第2成分として、下記式(M1a)および式(M1b)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、第1成分と第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分の含有量が20〜80重量%であることを特徴とする重合性液晶組成物。
【0021】
【化5】

【0022】
式(M1a)および(M1b)中、R6は、独立して水素、フッ素、トリフルオロメチ
ルまたはメチルであり;R7は、シアノ、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜15のアル
キルまたは炭素数1〜15のアルコキシであり;W1およびW2は、独立して水素、塩素またはフッ素であり、W3は水素またはフッ素であり;Z2は、単結合、−COO−、−CH=CH−COO−または−CH2CH2−COO−であり;A2は、下記式(A−1)〜(
A−7)のいずれかで表される基であり;mは2〜8の整数である。
【0023】
【化6】

【0024】
[11] 第1成分として、前記[5]に記載の式(1−1−1)、式(1−1−2)および式(1−1−3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、第2成分として、(i)前記[10]に記載の式(M1a)で表される少なくとも1つの化合物と、(ii)前記[10]に記載の式(M1b)で表される少なくとも1つの化合物とを含み、第1成分および第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分(i)の含有量が10〜40重量%であり、第2成分(ii)の含有量が10〜40重量%であることを特徴とする重合性液晶組成物。
【0025】
[12] 第1成分として、前記[5]に記載の式(1−6−1)、式(1−6−2)、式(1−6−3)および式(1−7−1)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、第2成分として、下記式(M2a)、式(M2b)および式(M2c)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、第1成分と第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分の含有量が20〜80重量%であることを特徴とする重合性液晶組成物。
【0026】
【化7】

【0027】
式(M2a)〜(M2c)中、R8は、シアノ、フッ素、トリフルオロメチルまたはメ
チルであり;W1およびW2は、独立して水素、塩素またはフッ素であり、W3は水素また
はフッ素であり;Z2は、単結合、−COO−、−CH=CH−COO−または−CH2CH2−COO−であり;Z3は、独立して単結合または−O−であり;A2は、前記[10
]に記載の式(A−1)〜(A−7)のいずれかで表される基であり;mは2〜8の整数である。
【0028】
[13] 第1成分として、前記[5]に記載の式(1−6−1)、式(1−6−2)、式(1−6−3)および式(1−7−1)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、第2成分として、(i)前記[12]に記載の式(M2b)で表される少なくとも1つの化合物と、(ii)前記[12]に記載の式(M2c)で表される少なくとも1つの化合物とを含み、第1成分および第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分(i)の含有量が10〜40重量%であり、第2成分(ii)の含有量が10〜40重量%であることを特徴とする重合性液晶組成物。
【0029】
[14] 第1成分として、前記[5]に記載の式(1−8−1)、式(1−8−2)、式(1−9−1)および式(1−9−2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、第2成分として、下記式(M3a)および式(M3b)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、第1成分と第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分の含有量が20〜80重量%であることを特徴とする重合性液晶組成物。
【0030】
【化8】

【0031】
式(M3a)および(M3b)中、R8は、シアノ、フッ素、トリフルオロメチルまた
はメチルであり;R9はメチルまたはエチルであり;W1およびW2は、独立して水素、塩
素またはフッ素であり、W3は水素またはフッ素であり;Z2は、単結合、−COO−、−CH=CH−COO−または−CH2CH2−COO−であり;A2は、前記[10]に記
載の式(A−1)〜(A−7)のいずれかで表される基であり;mは2〜8の整数である。
【0032】
[15] 第1成分として、前記[5]に記載の式(1−8−1)、式(1−8−2)、式(1−9−1)および式(1−9−2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、第2成分として、(i)前記[14]に記載の式(M3a)で表される少なくとも1つの化合物と、(ii)前記[14]に記載の式(M3b)で表される少なくとも1つの化合物とを含み、第1成分および第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分(i)の含有量が10〜40重量%であり、第2成分(ii)の含有量が10〜40重量%であることを特徴とする重合性液晶組成物。
【0033】
[16] さらに重合開始剤を含有することを特徴とする前記[9]〜[15]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[17] さらに溶媒を含有することを特徴とする前記[9]〜[16]のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
[18] 前記[9]〜[17]のいずれかに記載の重合性液晶組成物を重合させることによって得られる重合体。
[19] 前記[9]〜[17]のいずれかに記載の重合性液晶組成物を重合させることによって得られる光学異方性フィルム。
[20] 前記[19]に記載の光学異方性フィルムを含む位相差板。
[21] 前記[19]に記載の光学異方性フィルムを有する液晶表示素子。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、室温での重合性、光重合性、溶解性、無色性、化学的安定性、他の重合性液晶化合物との相溶性および支持基板に対する濡れ性などの特性において、複数の特性をバランスよく充足する新規な重合性液晶化合物が提供される。
【0035】
また、本発明によれば、このような重合性液晶化合物と、必要に応じて、その他の重合性液晶化合物とを含有する重合性液晶組成物、該組成物から得られる重合体であって、ホモジニアス、ホメオトロピック、ハイブリットなどの配向を有し、配向欠陥が少ない重合体およびその用途が提供される。
【0036】
このような重合体からなる光学異方性フィルムは、無色透明性、低光弾性、支持基板に対する密着性、硬度、耐熱性および耐候性などの特性において、複数の特性をバランスよく充足し、各種用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係る化合物(重合性ジベンゾフラン誘導体)、該化合物を含む重合性液晶組成物、該組成物からなる重合体およびその用途について詳細に説明する。
なお、本明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶(性)化合物」は、液晶相を有する化合物、および、液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。「液晶相」はネマチック相、スメクチック相、コレステリック相などであり、多くの場合ネマチック相を意味する。「重合性」は、光、熱、触媒などの手段により単量体が重合し、重合体を与える能力を意味する。式(1)、式(M1a)などで表わされる化合物を、それぞれ「化合物(1)」、「化合物(M1a)」などのように表記することがある。
【0038】
また、上記式(1)において、A、P、Q、Zなどの記号を用いているが、たとえば、式(1)の−(A−Z)x−および−Z−A−において、2つの記号Aの意味は同一であ
ってもよいし、異なってもよい。また、式(1)の−(A−Z)x−は、Xが2のとき、
−A−Z−A−Z−を意味するが、この場合、2つの記号Aの意味は同一であってもよいし、異なってもよい。このようなルールは、記号P、Q、Zなどの他の記号においても適用する。
【0039】
まず、本発明の化合物(1)について説明する。
本発明の化合物(1)は、上記式(1)に示すように、ジベンゾフラン骨格を有する。このようなジベンゾフラン環を有する化合物は、酸素原子が環中にあることから、屈折率異方性が大きくなるとともに、耐熱性が高くなることが期待される。
【0040】
上記式(1)中、Aは、独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビフェニル−4,4’−ジイル、ターフェニル−4,4”−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイルまたはテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、該1,4−フェニレン
における任意の水素は、塩素またはフッ素で置き換えられてもよく、また、任意の1つまたは2つの水素は、シアノ、メチル、エチル、メトキシ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられてもよい。
【0041】
好ましいAは、1,4−シクロへキシレンおよび1,4−フェニレンであり、該1,4−フェニレンにおける任意の水素は、塩素またはフッ素で置き換えられてもよく、また、任意の1つまたは2つの水素は、メチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられてもよい。
【0042】
さらに好ましいAは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2−クロロ−1,4−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンおよび2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。なお、3−フルオロ−1,4−フェニレンなどは、2−フルオロ−1,4−フェニレンなどと同一であるので記載していない。
【0043】
特に好ましいAは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレンおよび2−フルオロ−1,4−フェニレンである。
Zは、独立して単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−
、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−CONH−、
−NHCO−、−(CH24−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−である。
【0044】
好ましいZは、−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−および−OCO−CH=CH−である。さらに好ましいZは、−COO−、−OCO−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−および−OCO−CH=CH−である。特に好ましいZは、−COO−および−OCO−である。
【0045】
Pは、独立して上記式(P1)〜(P8)のいずれかで示される重合性の基である。これらの基の名称は、それぞれアクリロイル、メタクリロイル、α−トリフルオロメタクリロイル、α−フルオロアクリロイル、3−エチル−3−オキセタニルメチル、3−メチル−3−オキセタニルメチル、2−オキシラニルメチル、ビニルである。
【0046】
Pは一価の基であり、Q(ただし、−(CH2r−を除く。)の酸素に結合している。なお、基(P7)だけは、−O−(CH2r−または−(CH2r−O−の炭素に結合してもよい。したがって、基(P1)〜(P4)を有する化合物は、アクリレートまたは置換アクリレートである。
【0047】
好ましいPは、基(P1)〜(P4)の中では基(P1)であり、基(P5)〜(P8)の中では、基(P5)、(P6)および(P7)である。また、化合物(1)は、合成が容易であるという観点から、上記式(1)において左右のPが同一であることが、さらに好ましい。
【0048】
Qは、独立して−O−、−O−(CH2r−、−(CH2r−O−、−(CH2r−、−O−(CH2r−O−または−O−(CH2CH2O)s−であり、rは1〜20の整数
であり、sは2〜5の整数である。
【0049】
Q(ただし、−(CH2r−を除く。)の酸素は、Pの炭素と結合する。ただし、前述
したように、Pが基(P−7)である場合は、−O−(CH2r−または−(CH2r−O−の炭素は、Pの炭素と結合してもよい。なお、Pが基(P−1)〜(P−6)および(P−8)である場合は、Pの炭素は、−O−(CH2r−または−(CH2r−O−の炭素に結合することはない。
【0050】
好ましいQは、−O−、−O−(CH2r−、−(CH2r−O−および−O−(CH2r−O−であり、rが1〜15の整数である。さらに好ましいQは、−O−および−O−(CH2r−O−であり、rが1〜10の整数である。
【0051】
xは0、1または2である。好ましいxは1または2である。さらに好ましいxは1である。
本発明の化合物(1)の好ましい例としては、上記式(1−1)〜(1−9)で表される化合物が挙げられる。
【0052】
本発明の化合物(1)は、上記式(1)において、xが1であって、左右の記号P、Q、AおよびZの意味が同一のとき、左右対称となる。対称である化合物は、非対称である化合物に比べて安価または合成が容易である点で好ましい。一方、非対称である化合物は、対称である化合物に比べて液晶分子の配向を広い範囲で制御しうる点で好ましい。
【0053】
本発明の化合物(1)は、重合性基を2つ有することから、重合によって三次元構造を形成して硬い重合体を与える。そのため、本発明の化合物(1)は、重合体に高い硬度を付与する点で好ましい。
【0054】
上記化合物(1)は、室温で重合する、適当な光重合開始剤の存在下、小さい積算光量の紫外線で容易に光重合する、化学的に安定である、無色である、溶媒に溶けやすい、他の重合性化合物との相溶性がよい、支持基板に対する密着性がよい、などの特性を有する。
【0055】
上記化合物(1)は支持基板に対して濡れやすいので、均一な塗膜(paint film)を得ることができる。また、化合物(1)は化学的に安定なので、冷暗所での保存安定性に優れる。さらに、化合物(1)は、液晶の温度範囲が広く、その他の化合物との相溶性がよいので、重合性液晶組成物を調製しやすい。なお、上記化合物(1)の特性は、該化合物を含有する組成物の特性に反映され、該組成物の特性は、得られる重合体の特性に反映される。
【0056】
上記化合物(1)は、種々の重合性の液晶化合物と混合して均一な組成物を与える。この際に、上記化合物(1)は液晶分子の配向を制御することができる。なお、この配向は重合によっても維持される。したがって、化合物(1)を重合性の液晶化合物と共重合させることによって、液晶分子の配向が制御された重合体を得ることが可能になる。
【0057】
また、上記化合物(1)を含む組成物を薄膜状にして重合させれば、光学異方性を有する重合体のフィルムを得ることができる。上記化合物(1)は、液晶分子の配向を制御するという効果を有する点で特に有用である。ホモジニアス、チルト、ハイブリッド、ホメオトロピックなどの配向を有する重合体フィルムは、光学補償などの作用がある。
【0058】
次に、本発明の重合性液晶組成物について説明する。
本発明の重合性液晶組成物は、上記化合物(1)を少なくとも1種含有する。組成物とは、通常は複数の化合物の混合物を意味するが、1つの重合性化合物からなる場合であっても組成物ということがある。重合させるために重合触媒などを添加したり、薄膜を作成するために溶媒で希釈したりすることがあるからである。本発明の重合性液晶組成物は、
第1成分として複数の化合物(1)を含有するか、あるいは、第2成分として化合物(1)以外の重合性液晶化合物を含有した組成物であり、さらに、その他の重合性化合物や添加剤などを含有してもよい。
【0059】
本発明の組成物は、第1成分として、上記化合物(1)を少なくとも1つ含有する。好ましい第1成分は、上記式(1−1−1)、(1−1−2)および(1−1−3)で表され、−OCOCH=CH2を有する化合物の少なくとも1つ、上記式(1−6−1)、(
1−6−2)、(1−6−3)および(1−7−1)で表され、オキセタン環を有する化合物の少なくとも1つ、または、上記式(1−8−1)、(1−8−2)、(1−9−1)および(1−9−2)で表され、オキシラン環を有する化合物の少なくとも1つである。
【0060】
本発明の組成物は、第2成分として、重合性の液晶化合物を含有してもよい。好ましい第2成分は、上記式(M1a)および(M1b)で表され、−OCOC(R6)=CH2を有する化合物の少なくとも1つ、上記式(M2a)、(M2b)および(M2c)で表され、オキシラン環を有する化合物の少なくとも1つ、または、上記式(M3a)および(M3b)で表され、オキセタン環を有する化合物の少なくとも1つである。
【0061】
第1成分と第2成分の好ましい組み合わせを表1に示す。表1中の組み合わせ1では、第1成分および第2成分がともに−OCOC(R)=CH2を有すること、組み合わせ2
および3では、第1成分と第2成分の一方がオキセタン環を有し、他方がオキシラン環を有することが共通点である。さらに好ましい組み合わせを表2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
上記第1成分は、組成物における液晶相の温度範囲や、重合体における皮膜形成性、機械的強度、支持基板に対する密着性などの特性を調整するの適している。一方、上記第2成分は、組成物の粘度、配向性、塗布性などの特性を制御するのに有用である。
【0065】
上記第1成分と第2成分を含む組成物において、上記第1成分の含有量は、第1成分と第2成分の合計量を100重量%に対して、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%であり、上記第2成分の含有量は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは20〜60重量%である。
【0066】
また、上記表2中の好ましい組み合わせ2、5、8などのように、第2成分として2種類の化合物を用いる場合、たとえば、好ましい組み合わせ2では、化合物(M1a)を10〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、化合物(M1b)を10〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲で含有することが望ましい。
【0067】
上記第1成分および第2成分を上記範囲で含有することにより、組成物の液晶相を示す温度範囲、粘度、配向性、塗布性や、得られる重合体の皮膜形成性、機械的強度、支持基板に対する密着性などのバランスに優れる。
【0068】
上記化合物(M1a)および(M1b)の中では、下記式(M1a−1)、(M1a−2)および(M1b−1)で表される化合物が特に好ましい。なお、下記式中、mは2〜8の整数である。
【0069】
【化9】

【0070】
上記化合物(M2a)、(M2b)および(M2c)の中では、下記式(M2a−1)および(M2b)で表される化合物が特に好ましい。なお、下記式中、mは2〜8の整数である。
【0071】
【化10】

【0072】
上記化合物(M3a)および(M3b)の中では、下記式(M3a−1)および(M3b−1)で表される化合物が特に好ましい。なお、下記式中、W3は水素またはフッ素で
あり、mは2〜8の整数である。
【0073】
【化11】

【0074】
本発明において特に好ましい組成物を表3に示す。表3に示した組成物は、条件によって、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向またはハイブリッド配向をさせることができるという長所を有する。
【0075】
【表3】

【0076】
上記表3中に示した好ましい組成物の性質について説明する。
1)ホモジニアス配向した組成物(A1−1)および(A1−2)
上記組成物(A1−1)または(A1−2)に、第1成分および第2成分の全重量に対して1〜15重量%の光ラジカル重合触媒を添加し、これをラビング処理した透明な支持基板に塗布すると、該組成物における液晶分子はホモジニアス配向を示す。前記支持基板としては、ケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムまたは親水化処理したノルボルネン樹脂フィルムを用いることができる。前記親水化処理は、コロナ処理またはプラズマ処理によって行うことができる。このようにして配向させた組成物に、チッソ雰囲気下で紫外線を照射することによって、該配向が維持された重合体を容易に得ることができる。
【0077】
2)ホメオトロピック配向した組成物(A1−1)および(A1−2)
上記組成物(A1−1)または(A1−2)に、第1成分および第2成分の全重量に対して1〜10重量%のアミノプロピルトリエトキシシランを添加し、これをラビング処理していない上記支持基板に塗布すると、該組成物における液晶分子はホメオトロピック配向を示す。この配向は、上記1)と同様に重合させた後も維持される。
【0078】
3)ホモジニアス配向した組成物(A2−1)
上記組成物(A2−1)に、第1成分および第2成分の全重量に対して1〜15重量%の光カチオン重合触媒を組成物に添加し、これをラビング処理した上記支持基板に塗布すると、該組成物における液晶分子はホモジニアスを示す。このようにして配向させた組成物に紫外線を照射することによって、該配向が維持された重合体を容易に得ることができる。なお、前記重合反応は空気中でも行うことができる。
【0079】
4)ハイブリッド配向した組成物(A3−1)
上記組成物(A3−1)に、第1成分および第2成分の全重量に対して1〜15重量%の光カチオン重合触媒を組成物に添加し、これをラビング処理した上記支持基板に塗布すると、該組成物における液晶分子はハイブリッド配向を示す。このようにして配向させた組成物に紫外線を照射することによって、該配向が維持された重合体を容易に得ることができる。なお、前記重合反応は空気中でも行うことができる。
【0080】
本発明の組成物は、必要に応じて、その他の重合性化合物や添加剤をさらに含有してもよく、また、組成物を希釈するために溶媒を含有してもよい。重合体の物性を調整するための添加剤としては、たとえば、シランカップリング剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外
線吸収剤および微粒子などが挙げられる。単量体を重合させるための添加剤としては、たとえば、重合開始剤(たとえば、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤)および増光剤などが挙げられる。
【0081】
本発明の組成物において、上記その他の重合性化合物(非液晶性の重合性化合物)の含有量は、上記第1成分および第2成分の合計量に対して、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満である。本発明の組成物に用いることができる非液晶性の重合性化合物の例を以下に示す。
【0082】
第一の例はラジカル重合に適した化合物である。このような化合物としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、スチレン、o−、m−もしくはp−クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンなどが挙げられる。これらの化合物は、組成物の粘度を調整するのに適している。また、これらの化合物は、−OCOCH=CH2を有する化合物を主成分とする組成
物に適している。
【0083】
第二の例は、ラジカル重合に適した多官能アクリレートである。好ましい多官能アクリレートとしては、たとえば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールEO付加トリアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、トリスアクリロキシエチルフォスフェート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート(大阪有機化学株式会社製「ビスコート700」)、ポリエチレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。これらの化合物は、重合体の被膜形成能をさらに高めるのに適している。
【0084】
第三の例は、カチオン重合に適した重合性化合物である。このような化合物としては、たとえば、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルモノビニルエーテル、t−アミルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールメチルビニルエーテル、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、ジ(3−エチル−オキセタ−3−イルメチル)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタンなどが挙げられる。これらの化合物は、組成物の粘度を調整するのに適している。また、これらの化合物は、オキセタン環またはオキシラン環を有する化合物を主成分とする組成物に適している。
【0085】
次に、本発明の組成物に添加することができる添加剤の例を以下に示す。
上記シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリアルコキシシシラン、3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N(2−アミノエチル)3アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−クロロトリアルコキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどが挙げられる。また、これらの化合物において、アルコキシ基(3つ)のうちの1つをメチルに置き換えたジアルコキシメチルシランも挙げられる。好ましいシランカップリング剤は、3−アミノ
プロピルトリエトキシシランである。
【0086】
上記界面活性剤としては、たとえば、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸塩、ペルフルオロアルキルカルボン酸塩、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、ペルフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。界面活性剤は、組成物を支持基板などに塗布するのを容易にするなどの効果を有する。界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類、組成物の組成比などにより異なるが、上記第1成分と必要に応じて用いられる第2成分の合計量に対して、100ppm〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%の範囲である。
【0087】
上記酸化防止剤としては、たとえば、ヒドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、トリフェニルフォスファイト、トリアルキルフォスファイトなどが挙げられる。市販品としては、チバ・スペシャリティーズ製「イルガノックス245、イルガノックス1035」などが挙げられる。
【0088】
上記紫外線吸収剤としては、たとえば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製「TINUVIN PS、TINUVIN 292、TINUVIN 109、TINUVIN 328、TINUVIN 384−2、TINUVIN 123、TINUVIN 400、TINUVIN 400L」などが挙げられる。
【0089】
上記微粒子の材質としては、たとえば、無機物、有機物、金属などが挙げられる。微粒子の粒径は、0.001〜0.1μm、より好ましくは0.001〜0.05μmである。微粒子は、材質にもよるが、凝集現象を防止するために小さい粒径が好ましく、また、粒径の分布はシャープな方が好ましい。このような微粒子は、光学異方性を調整したり、重合体の強度を上げたりする際などに有用である。微粒子の添加量は、上記第1成分と必要に応じて用いられる第2成分の合計量に対して、0.1〜30重量%であり、添加の目的を達する限り、少ない割合が好ましい。
【0090】
上記無機物としては、たとえば、セラミックス、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト、フッ素バーミキュライト、フッ素ヘクトライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト、モンモリロナイト、バイデライト、カオリナイト、フライポンタイト、ZnO、TiO2、CeO2、Al23、Fe23、ZrO2、MgF2、SiO2、S
rCO3、Ba(OH)2、Ca(OH)2、Ga(OH)3、Al(OH)3、Mg(OH
2、Zr(OH)4などが挙げられる。また、炭酸カルシウムの針状結晶などの微粒子は光学異方性を有する。このような微粒子によって、重合体の光学異方性を調節できる。有機物としては、たとえば、カーボンナノチューブ、フラーレン、デンドリマー、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレート、ポリイミドなどが挙げられる。
【0091】
上記光ラジカル重合開始剤は汎用品でよい。このような汎用品の開始剤としては、たとえば、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)の製品のうちから、DAROCUR1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン)、IRGACURE184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、IRGACURE651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE500、IRGACURE2959、IRGACURE907、IRGACURE369、IRGACURE1300、IRGACURE819、IRGACURE1700、IRGACURE1800、IRGACURE1850、DAROCUR4265、IRGACURE784などが挙げられる。このような開始剤は、−OCOCH=CH2を有する
化合物を主成分とする組成物に適している。
【0092】
その他の光ラジカル重合開始剤としては、たとえば、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物などが挙げられる。
【0093】
上記光カチオン重合開始剤としては、たとえば、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩などが挙げられる。このような開始剤は、オキセタン環またはオキシラン環を有する化合物を主成分とする組成物に適している。
【0094】
市販の光カチオン重合開始剤としては、たとえば、みどり化学(株)製「DTS−102」、UCC社「サイラキューアーUVI−6990、サイラキュアーUVI−6974、サイラキュアーUVI−6992」、旭電化(株)製「アデカオプトマーSP−150、SP−152、SP−170、SP−172」、ローディア社製「PHOTOINITIATOR2074」、チバスペシャリティー社製「IRGACURE250」、GEシリコンズ社製「UV−9380C」などが挙げられる。
【0095】
次に、本発明の組成物に用いることができる上記溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどが挙げられる。上記溶媒は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0096】
次に、本発明の重合体について説明する。
本発明の重合体は、上記組成物を重合させることによって得られ、無色透明性、光弾性(photoelasticity)、支持基板に対する密着性、硬度、耐熱性、耐候性などの特性にお
いて、複数の特性をバランスよく充足する。本発明の重合体は、耐衝撃性、加工性、電気特性、耐溶剤性などの特性にも優れた点がある。重合体のフィルムにとって重要な特性は、支持基板に対する高い密着性、充分な硬度、高い耐熱性などである。
【0097】
重合反応の種類は、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、リビング重合などであり、組成物を構成する重合性化合物が有する重合性基の種類によって適宜選択することができる。たとえば、化合物(1)の重合性基が、(P1)、(P2)、(P3)または(P4)の場合、好ましい反応はラジカル重合であり、重合性基が(P5)、(P6)、(P7)または(P8)の場合、好ましい反応はカチオン重合である。配向の
優れた重合体を得るときは、熱重合よりも光重合触媒を用いた重合が好ましい。組成物が液晶相を示す条件下で、重合を行なわせることが容易だからである。
【0098】
光重合に用いられる好ましい光の種類は、紫外線、可視光線、赤外線などであり、電子線、X線などの電磁波を用いてもよい。通常は、紫外線または可視光線が用いられる。波長の範囲は150〜500nm、好ましくは250〜450nm、特に好ましくは300〜400nmである。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが挙げられ、超高圧水銀ランプが好ましい。
【0099】
光源からの光はそのまま組成物に照射してもよく、フィルターによって選択した特定の波長(または特定の波長領域)を組成物に照射してもよい。照射エネルギー密度は2〜5000mJ/cm2、好ましくは10〜3000mJ/cm2、特に好ましくは100〜2000mJ/cm2の範囲である。照度は0.1〜5000mW/cm2、好ましくは1〜2000mW/cm2の範囲である。
【0100】
光照射をする際の温度は、組成物が液晶相を有するように設定すればよいが、100℃以下であることが好ましい。100℃を超えると熱による重合が起こる可能性があり、良好な配向が得られないことがある。
【0101】
重合体の形状は、フィルムや板などである。また、重合体は成形されてもよい。フィルム状の重合体を得るには、一般に支持基板が用いられる。支持基板の上に組成物を塗布し、液晶相を有している塗膜(paint film)を重合させることにより、光学異方性を有するフィルムが得られる。好ましい重合体の厚さは、重合体の光学異方性の値および用途によって異なるため、その範囲を厳密に決定することはできないが、たとえば、厚さは0.05〜50μm、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmの範囲である。このようなフィルム状重合体のヘイズ値(haze value;曇り度)は、通常1.5%以下であり、透過率は、可視光領域において通常80%以上である。したがって、上記フィルム状重合体は、液晶表示素子に用いられる光学異方性の薄膜として適している。
【0102】
支持基板としては、一軸延伸フィルムや二軸延伸フィルムなどを用いることができる。このような支持基板の材質としては、たとえば、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。市販品としては、たとえば、JSR(株)製「アートン」、日本ゼオン(株)製「ゼオネックス」、「ゼオノア」、三井化学(株)製「アペル」などが挙げられる。好ましい支持基板はトリアセチルセルロース(TAC)フィルムである。TACフィルムは、前処理することなくそのまま用いてもよく、必要に応じて、ケン化処理、コロナ放電処理、UV−オゾン処理などの表面処理を行ってもよい。上記以外の他の支持基板として、たとえば、アルミニウム、鉄、銅などの金属製の支持基板、アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラスなどのガラス製の支持基板などを用いてもよい。
【0103】
塗膜は、支持基板上に本発明の組成物をそのまま塗布して形成してもよく、該組成物を適切な溶媒に溶かして塗布した後、溶媒を除去することによって形成してもよい。塗布方法としては、たとえば、スピンコート、ロールコート、カテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコート、デップコート、スプレーコート、メニスカスコート、流延成膜法などが挙げられる。
【0104】
液晶組成物の配向を決定する因子としては、(1)組成物を構成する化合物の化学構造
、(2)支持基板の種類、(3)配向処理の方法などが挙げられる。因子(1)に関しては、上記化合物(1)、重合性の液晶化合物、シランカップリング剤などの種類に依存する。因子(2)に関しては、重合体、ガラス、金属などのような支持基板の材質に依存する。因子(3)における配向処理の方法としては、たとえば、レーヨン布などで一方向にこする(ラビング)方法、酸化ケイ素を斜方蒸着させる方法、スリット状にエッチング加工する方法などが挙げられる。ラビング処理としては、支持基板を直接的にラビングしてもよく、支持基板をポリイミド、ポリビニルアルコールなどの薄膜でコーティングし、この薄膜をラビングしてもよい。なお、このようなラビング処理をしなくても、良好な配向を与える特殊な薄膜も知られている。また、側鎖型の液晶ポリマーを支持基板にコーティングしてもよい。
【0105】
液晶分子における配向の分類としては、ホモジニアス(homogenerous;平行)、ホメオトロピック(homeotropic;垂直)、ハイブリッド(hybrid)などが挙げられる。ホモジ
ニアスは、配向ベクトルが基板に平行で、かつ一方向にある状態をいう。ホメオトロピックは、配向ベクトルが基板に垂直である状態をいう。ハイブリッドは、配向ベクトルが基板から離れるにしたがって、平行から垂直に立ちあがっている状態をいう。これらの配向は、ネマチック相などを有する組成物で観察される。
【0106】
次に、本発明の重合体の用途について説明する。
本発明の重合体は、光学異方性を有する成形体として使用できる。このような成形体の用途としては、たとえば、位相差板(1/2波長板、1/4波長板等)、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜などの光学フィルムである。ホモジニアス、ハイブリット、ホメオトロピックなどの配向を有する重合体は、位相差板、偏光素子、液晶配向膜、反射防止膜、選択反射膜、視野角補償膜などに利用できる。このように、本発明の重合体は、光学補償を目的として、液晶表示素子の位相差板や視野角補償膜などに用いることができる。産業上の重要な用途の例は、VAモード、IPSモード、TNモード、MVAモードなどの液晶表示素子における視野角補償である。また、本発明の重合体は、高熱伝導性エポキシ樹脂、接着剤、機械的異方性を有する合成高分子、化粧品、装飾品、非線型光学材料、情報記憶材料などにも利用できる。
【0107】
重合体の用途の一例である位相差板は偏光の状態を変換する機能を有し、たとえば、1/2波長機能板は、直線偏光の振動方向を90度回転させる機能を有する。このような1/2波長機能板を得るためには、まず、d=λ/(2×Δn)の式を満たすように組成物を支持基板上に塗布する。ここで、dは組成物の厚さ、λは波長、Δnは光学異方性である。次いで、このようにして塗布した組成物を配向させた後、光重合させることによって1/2波長機能板が得られる。一方、1/4波長機能板は、直線偏光を円偏光に、または、円偏光を直線偏光に変換する機能を有する。この1/4波長機能板を得るためには、d=λ/(4×Δn)の条件を満たすように組成物の塗膜を調製すればよい。
【0108】
重合体の厚さ(d)は次のようにして調整される。組成物を溶媒で希釈した後、支持基板上に塗布する方法では、組成物の濃度、塗布する方法、塗布する条件などを適切に選択することによって、目的とする厚さの塗膜を得ることができる。液晶セルを利用する方法も好ましい。液晶セルはポリイミドなどの配向膜を有しているので都合がよい。液晶セルに組成物を注入する場合には、液晶セルの間隔によって塗膜の厚さを調整することができる。
【0109】
次に、本発明で用いられる化合物の合成法を説明する。
本発明に用いられる化合物は、フーベン・ヴァイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセセーズ(Organic
Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス
(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)など
に記載された、有機化学における合成方法を適切に組み合わせることにより合成できる。
【0110】
本発明の化合物(1)は次のように合成する。下記式(AC1)〜(AC3)で表される、−OCOC(R5)=CH2を有する安息香酸誘導体は、Polymer Journal, Vol.35, No.2, pp160−166(2003)に記載の方法に従って合成する。下記式(AC4)〜(AC7)
で表される、オキセタン環を有する安息香酸誘導体の合成には、3−アルキル−3−オキセタンメタノールを出発物として利用することができる。なお、3−エチル−3−オキセタンメタノールおよび3−メチル−3−オキセタンメタノールが市販されている。文献(Macromolecules, 24, 4531−4537 (1991)、WO02/28985号)の方法に従って、
これらの化合物と、1,2−ジブロモエタン、1,4−ジブロモブタン、1,6−ジブロモヘキサン、1,8−ジブロモオクタンなどのα,ω−ジブロモメチレンとを反応させることによって、炭素鎖長を延ばすことができる。
【0111】
【化12】

【0112】
化合物(1)の合成スキームを例示して説明する。
2,4−ジメトキシブロモベンゼン[a]、金属マグネシウムから調製したグリニャール試薬およびホウ酸トリメチルを反応させた後、加水分解することで2,4−ジメトキシベンゼンホウ素酸[b]が得られる。化合物[b]と2,4−ジメトキシブロモベンゼン[a]とを、パラジウム触媒の存在下でクロスカップリングすることにより、2,4,2’,4’−テトラメトキシビフェニル[c]を合成できる。化合物[c]に三臭化ホウ素などのルイス酸を反応させことで2,4,2’,4’−ヒドロキシビフェニル[d]が得られる。化合物[d]をゼオライトなどの触媒で脱水することにより3,7−ジヒドロキシベンゾフラン[e]を合成できる。
【0113】
【化13】

【0114】
次いで、得られた3,7−ジヒドロキシベンゾフラン[e]と2当量の上記化合物(AC1)〜(AC7)から選ばれる1つのカルボン酸誘導体とをエステル化することで、R1=R4、R2=R3である化合物(1−1−1)〜(1−1−3)、(1−6−1)〜(1−6−3)、(1−7−1)を合成できる。前記エステル化にはジシクヘキシルカルボジイミド(DCC)などの縮合剤を好適に用いることができる。
【0115】
1=R4、R2=R3である化合物(1−8−1)、(1−8−2)、(1−9−1)、(1−9−2)は、3,7−ジヒドロキシベンゾフラン[e]と2当量の下記式(AC8)〜(AC11)で表される化合物から選ばれる1つの安息香酸誘導体とをエステル化した後、m−クロロ過安息香酸などの過酸化物で酸化することで合成できる。合成スキームを以下に示す。
【0116】
【化14】

【0117】
【化15】

【0118】
次に、上記式(1−2)において、Zが−COO−、−OCO−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−であ
り、末端の重合性基が異なる化合物の合成スキームを以下に示す。合成スキーム中のYは単結合、−(CH22−、−CH=CH−である。
【0119】
【化16】

【0120】
まず、3,7−ジヒドロキシベンゾフラン[e]と1当量の上記化合物(AC1)〜(AC3)から選ばれる1つの安息香酸誘導体とをエステル化することでモノエステル[f]を合成した後に、もう1当量の上記化合物(AC4)〜(AC6)から選ばれる安息香酸誘導体とエステル化することで合成できる。上記化合物(1−3)も同様の方法で合成できる。
【0121】
上記のような方法で合成できる化合物(1)の例として、下記化合物No.1〜No.40が挙げられる。
【0122】
【化17】

【0123】
【化18】

【0124】
【化19】

【0125】
【化20】

【0126】
次に、本発明の組成物における上記第2成分として用いることができる重合性液晶化合物の具体例を以下に示す。
【0127】
【化21】

【0128】
上記化合物(MLC1)および(MLC2)は、特願2005−169337号に記載の方法で合成することができる。上記化合物(MLC3)および(MLC4)は、Macromolecules, 26, 6132-6134 (1993) に記載の方法にしたがって合成することができる。上
記化合物(MLC5)は、特開2005−60373号公報に記載の方法に従って合成することができる。上記化合物(MLC6)は、Macromolecules, 26, 1244-1247 (1993)
に記載の方法に従って合成することができる。上記化合物(MLC7)および(MLC8)は、特開2005−60373号公報に記載の方法に従って合成することができる。上
記化合物(MLC9)および(MLC10)は、特願2004−353822号に記載の方法に従って合成することができる。
【0129】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、物性等の測定法は以下のとおりである。
【0130】
<相転移温度>
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で昇温し、液晶相が別の液晶相に転移する温度を測定した。Cは結晶、Nはネマチック相、SAはスメクチックA相、Iは等方性液体を意味する。NI点は、ネマチック相の上限温度またはネマチック相から等方性液体への転移温度である。たとえば、「C50N63I」は、50℃で結晶からネマチック相に転移し、63℃でネマチック相から等方性液体へ転移したことを示す。
【0131】
<セロテープ(登録商標)剥離試験>
JIS規格「JIS−K−5400、8.5、付着性(8.5.2、碁盤目テープ法)」の試験法に従った。すなわち、100のます目のうち、剥離しなかったます目の数によって、結果を評価した。
【0132】
<鉛筆硬度>
JIS規格「JIS−K−5400、8.4、鉛筆引掻試験」の方法に従った。結果を鉛筆の芯の硬さで表した。
【0133】
<耐熱性試験>
100℃で500時間の条件で耐熱性試験を行い、結果はリタデーション(retardation)の変動によって評価した。具体的には、まず、ガラス基板にポリアミック酸(チッソ(株)製「PIA5310」)を塗布した後、210℃で30分間加熱して支持基板を得た。加熱によって生成したポリイミドの表面はレーヨン布でラビングした。試料の組成物を、トルエンとシクロペンタノンとの混合溶媒(重量比で2:1)で希釈して30重量%の溶液を調製した。この溶液をスピンコータで支持基板に塗布し、70℃で3分間加熱した後、生成した塗膜に超高圧水銀灯(250W/cm)を用いて紫外線を60℃で10秒間照射した。得られた重合体のリタデーションを25℃で測定した。次いで、重合体を100℃で500時間加熱した後、再度リタデーションを25℃で測定した。加熱前後の値を比較して耐熱性を評価した。リタデーションは、文献(粟屋裕著、「高分子素材の偏光顕微鏡入門」、94頁、アグネ技術センター発行、2001年)の方法に従い、セナルモン・コンペンセータ(Senarmont compensator)を用いて、波長550nmで
測定した。
【0134】
<光学異方性(△n)>
上記耐熱性試験の方法にしたがって重合体フィルムのリタデーション(25℃)の値を測定し、さらに重合体フィルムの厚さ(d)も測定した。リタデーションは△n×dであるから、この関係から光学異方性の値を算出した。
【0135】
<液晶分子の配向>
重合体フィルム(液晶配向フィルム)を、ケン化処理したTACフィルム上に形成した。重合体の配向は、透過光強度の角度依存性に基づいて、目視による観察と測定装置による解析の二つの方法で決定した。
【0136】
(1)目視による観察−クロスニコルに配置した2枚の偏光板内の間に重合体フィルム
を狭持して、フィルム面に垂直方向(傾き角は0度)から光を照射した。照射の傾き角を0度から例えば50度に増大させながら透過光の変化を観察した。照射を傾ける方向は、液晶分子の長軸方向に一致させた。垂直方向からの透過光が最大であるとき、配向はホモジニアス配向であると判断した。ホモジニアス配向では、液晶分子の配向ベクトルがTACフィルムと平行であるからである。一方、垂直方向からの透過光が最小であり、傾き角を増大させるにしたがって透過光が増大するとき、配向はホメオトロピック配向であると判断した。ホメオトロピック配向では液晶分子の配向ベクトルがTACフィルムに垂直であるからである。
【0137】
(2)偏光解析装置による測定−シンテック(株)製のOPTIPRO偏光解析装置を用いた。重合体フィルムに波長550nmの光を照射した。この光の入射角度をフィルム面に対して90度から減少させながらレタデーション(Δn×d)を測定した。
【0138】
〔実施例1〕化合物(No.6)の合成
下記式(AK1)で表される4−[6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]安息香酸を、文献(Makromol. Chem., 190, 2255〜2268頁、1989年)に記載された方法で合成した。
【0139】
【化22】

【0140】
(第1段階)
2,4−ジメトキシブロモベンゼン25gをテトラヒドロフラン100mLに溶かした溶液を、2.9gのマグネシウムが浸る程度に500mLの容器に加え加熱した。マグネシウムが溶け出し反応していることを確認した後、残りの溶液を滴下した。滴下終了後、1時間還流してグリニャール試薬を調製した。グリニャール試薬溶液を−30℃まで冷やし、そこへホウ酸トリイソプロピル65gを滴下し、1時間撹拌した。50mLの3%塩酸を滴下して反応を終了した。ジエチルエーテルによる抽出を行い、ジエチルエーテル層を水、飽和炭酸ナトリウム水、水の順番で洗浄した。溶媒を留去して得られた残査をヘプタンで再結晶することで8.3gの2,4−ジメトキシベンゼンホウ素酸を得た。融点は125〜128℃であった。
【0141】
【化23】

【0142】
(第2段階)
得られた2,4−ジメトキシベンゼンホウ素酸17.6g、2,4−ジメトキシブロモベンゼン21g、テトラキスパラジウム1.1g、炭酸ナトリウム20.5gおよび水120mLを、ジエチレングリコールジメチルエーテル500mLに加え6時間還流した。水を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた残査をエタノールで再結晶して14.7gの2,4,2’,4’−テトラメトキシビフェニルを得た。融点は92.3〜93.1℃であった。
【0143】
【化24】

【0144】
(第3段階)
得られた2,4,2’,4’−テトラメトキシビフェニル14gを塩化メチレン300mLに溶解し、ドライアイスアセトンバスを用いて−60℃に冷却した。そこへ三臭化ホウ素60gを滴下した。次いで、ドライアイスアセトンバスをはずして、12時間撹拌した。水を加え、ジエチルエーテルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して9.3gの2,4,2’,4’−テトラヒドロキシビフェニルを得た。融点は223〜226℃であった。
【0145】
【化25】

【0146】
(第4段階)
得られた2,4,2’,4’−テトラヒドロキシビフェニル14gおよびゼオライト触媒(東ソー株式会社製「Zeolite HSZ−360HUA」)15gを、1,2−ジクロロベンゼン100mLに加え4時間還流した。反応溶液をろ過し、減圧して1,2−ジクロロベンゼンを留去した。残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して5.5gの3,7−ジヒドロキシベンゾフランを得た。融点は244℃であった。
【0147】
【化26】

【0148】
(第5段階)
得られた3,7−ジヒドロキシベンゾフラン1.0g、4−[6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]安息香酸(AK1)3.1gおよびジメチルアミノピリジン0.1gを塩化メチレン50mLに加えた溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩2.1gを加え、室温で12時間攪拌した。水50mLを加え、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、0.7gの化合物(No.6)を得た。融点は115℃であり、NI点は加熱により重合するので確認できなかった。
【0149】
構造はプロトンNMRを測定して確認した。1H−NMR(CDCl3):δ1.45〜1.58(8H、m)、1.70〜1.76(4H、m)、1.83〜1.88(4H、m)、4.06(2H、t、J=5Hz)、4.19(2H、t、J=5Hz)、5.83(2H、d、J=10Hz)、6.13(2H、dd)、6.40(2H、d、J=15Hz)、6.99(4H、d、J=8.7Hz)、7.22(2H、dd)、7.47(2H、d、J=1.9Hz)、7.94(2H、d、J=8.3Hz)、8.18(4
H、d、J=8.7Hz)
【0150】
【化27】

【0151】
〔実施例2〕化合物(No.9)の合成
下記式(AK3)で表される2−フルオロ−4−[6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]安息香酸を、2−フルオロ−4−ヒドロキシ安息香酸エチルを原料として、文献(Makromol. Chem., 190, 2255〜2268頁、1989年)に記載された方法を用いて合成した。化合物(AK3)の融点は98〜99℃であった。
【0152】
【化28】

【0153】
次いで、3,7−ジヒドロキシベンゾフラン1.0g、2−フロオロ−4−[6−(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ]安息香酸(AK3)3.2gおよびジメチルアミノピリジン0.1gを塩化メチレン50mLに加えた溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド1gを加え、室温で12時間攪拌した。水50mLを加え、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1.2gの化合物(No.9)を得た。融点は90℃であり、NI点は加熱により重合するので確認できなかった。
【0154】
構造はプロトンNMRを測定して確認した。1H−NMR(CDCl3):δ1.45〜1.58(8H、m)、1.70〜1.76(4H、m)、1.83〜1.88(4H、m)、4.04(2H、t、J=5Hz)、4.19(2H、t、J=5Hz)、5.83(2H、d、J=10Hz)、6.13(2H、dd)、6.41(2H、d、J=15Hz)、6.71(2H、dd、J=12.5 and 2Hz)、6.79(2H、dd、J=8.5 and 2.5Hz)、7.22(2H、dd)、7.47(2H、d、J=1.9Hz)、7.94(2H、d、J=8.3Hz)、8.08(2H、dd、J=8.5 and 8.5Hz)
【0155】
【化29】

【0156】
〔実施例3〕化合物(No.26)の合成
(第1段階)
下記式(OX2)で表される4−[6−(3−エチルオキセタン−3−イルメトキシ)ヘキシルオキシ]安息香酸を、特開2005−60373号公報に記載の方法で合成した
。融点は58.5℃であった。
【0157】
【化30】

【0158】
次いで、3,7−ジヒドロキシベンゾフラン1.1g、4−[6−(3−エチルオキセタン−3−イルメトキシ)ヘキシルオキシ]安息香酸(OX2)3.9gおよびジメチルアミノピリジン0.1gを塩化メチレン50mLに加えた溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩2.3gを加え、室温で12時間攪拌した。水50mLを加え、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、1.8gの化合物(No.26)を得た。相転移温度はC 96 N 138 Iであった。
【0159】
構造はプロトンNMRを測定して確認した。1H−NMR(CDCl3):δ0.89(6H、t、J=7.5Hz、1.45〜1.58(8H、m)、1.70〜1.76(4H、m)、1.75(4H、q、J=7.5Hz)、1.83〜1.88(4H、m)、3.48(4H、t、J=6.4Hz)、3.53(4H、s)、4.06(4H、t、J=6.4Hz)、4.39(4H、d、J=5.7Hz)、4.47(4H、d、J=5.7Hz)、6.99(4H、d、J=8.7Hz)、7.22(2H、dd)、7.47(2H、d、J=1.9Hz)、7.94(2H、d、J=8.3Hz)、8.18(4H、d、J=8.7Hz)
【0160】
【化31】

【0161】
〔実施例4〕組成物(PLC−1)の調製
下記に示す、化合物(No.9)60重量%、化合物(MLC1)20重量%および化合物(MLC4)20重量%からなる組成物(MIX1)を調製した。化合物(No.9)は相分離することなく良好な相溶性を示した。また、組成物(MIX1)は室温においても直ちに結晶化することはなかった。
【0162】
【化32】

【0163】
次に、組成物(MIX1)100重量部に重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製「IRGACURE 907」)を3重量部加えた後、シクロペンタノンを加えて25重量%の溶液を調製し、組成物(PLC−1)を得た。
【0164】
〔実施例5〕組成物(PLC−2)の調製
下記に示す、化合物(No.9)60重量%、化合物(MLC2)20重量%および化合物(MLC4)20重量%からなる組成物(MIX2)を調製した。化合物(No.9)は相分離することなく良好な相溶性を示した。また、組成物(MIX2)は室温においても直ちに結晶化することはなかった。
【0165】
【化33】

【0166】
次に、組成物(MIX2)100重量部に重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製「IRGACURE 907」)を3重量部加えた後、シクロペンタノンを加えて25重量%の溶液を調製し、組成物(PLC−2)を得た。
【0167】
〔実施例6〕組成物(PLC−3)の調製
実施例4に記載の組成物(PLC−1)に、組成物(MIX1)100重量部に対して下記式(5)で表される化合物(チッソ株式会社製「サイラエースS−330」)10重量部を添加し、組成物(PLC−3)を得た。
【0168】
【化34】

【0169】
〔実施例7〕組成物(PLC−4)の調製
下記に示す、化合物(No.26)70重量%および化合物(MLC9)30重量%からなる組成物(MIX3)を調製した。化合物(No.26)は相分離することなく良好な相溶性を示した。また、組成物(MIX3)は室温においても直ちに結晶化することはなかった。
【0170】
【化35】

【0171】
次に、組成物(MIX3)100重量部に重合開始剤(みどり化学(株)製「DTS−102」)を3重量部加えた後、シクロペンタノンを加えて25重量%の溶液を調製し、組成物(PLC−4)を得た。
【0172】
〔実施例8〕重合体フィルム(F1)の評価
ケン化処理したTACフィルムの表面をレーヨン布でラビング処理した支持基板に、実施例4で得られた組成物(PLC−1)を、バーコーターを用いてTACフィルムに塗布した。塗布後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去して液晶層を配向させた。次いで、塗膜に、超高圧水銀灯(250W)を用いて紫外線(30mW/cm2;365nm)を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射することによっ
て重合体フィルム(F1)を得た。
【0173】
得られたフィルム(F1)の配向は、目視による観察ではホモジニアスであり、装置による測定結果によってもホモジニアスであった。フィルム(F1)の表面硬度は鉛筆硬度のHであった。セロテープ(登録商標)剥離試験では全く剥がれがなく、全てのますが残存した。100℃、500時間での耐熱性試験後のリタデーションに変化はなかった。このように光学異方性フィルム(F1)は支持基板から剥離しにくく、充分な硬度を有するものであった。
【0174】
〔実施例9〕重合体フィルム(F2)の評価
実施例5で得られた組成物(PLC−2)を用いたこと以外は実施例8と同様にして、重合体フィルム(F2)を得た。得られたフィルム(F2)の配向は、目視による観察では、ホモジニアスであり、装置による測定結果と一致した。フィルム(F2)の表面硬度は鉛筆硬度のHであった。セロテープ(登録商標)剥離試験では全く剥がれがなく、全てのますが残存した。100℃、500時間での耐熱性試験後のリタデーションに変化はなかった。このように光学異方性フィルム(F2)は支持基板から剥離しにくく、充分な硬度を有するものであった。
【0175】
〔実施例10〕重合体フィルム(F3)の評価
実施例6で得られた組成物(PLC−3)を用いたこと以外は実施例8と同様にして、重合体フィルム(F3)を得た。得られたフィルム(F3)の配向は、目視による観察ではホメオトロピックであり、装置による測定結果と一致した。フィルム(F3)の表面硬度は鉛筆硬度のHであった。セロテープ(登録商標)剥離試験では全く剥がれがなく、全てのますが残存した。100℃、500時間での耐熱性試験後のリタデーションに変化はなかった。このように光学異方性フィルム(F3)は支持基板から剥離しにくく、充分な硬度を有するものであった。
【0176】
〔実施例11〕重合体フィルム(F4)の評価
支持基板としてケン化処理したTACフィルム(ラビング処理なし)に、実施例7で得
られた組成物(PLC−4)を、バーコーターを用いて塗布した。塗布後、70℃に設定したオーブン中で5分間熱処理することにより、溶媒を除去して液晶層を配向させた。次いで、塗膜に、超高圧水銀灯(250W)を用いて紫外線(30mW/cm2;365n
m)を、空気開放下、25℃で30秒間照射することによって重合体フィルム(F4)を得た。
【0177】
得られたフィルム(F4)の配向は、目視による観察ではハイブリッド配向であり、装置による測定結果と一致した。フィルム(F4)の表面硬度は鉛筆硬度のHであった。セロテープ(登録商標)剥離試験では全く剥がれがなく、全てのますが残存した。100℃、500時間での耐熱性試験後のリタデーションに変化はなかった。このように光学異方性フィルム(F4)は支持基板から剥離しにくく、充分な硬度を有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】

[式(1)中、
Aは、独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビフェニル−4,4’−ジイル、ターフェニル−4,4”−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイルまたはテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり、
該1,4−フェニレンにおける任意の水素は、塩素またはフッ素で置き換えられてもよく、また、任意の1つまたは2つの水素は、シアノ、メチル、エチル、メトキシ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;
Zは、独立して単結合、−(CH22−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH2O−、
−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−
NHCO−、−(CH24−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−であり;
Pは、独立して下記式(P1)〜(P8)のいずれかで示される重合性の基であり;
Qは、独立して−O−、−O−(CH2r−、−(CH2r−O−、−(CH2r−、−O−(CH2r−O−または−O−(CH2CH2O)s−であり、rは1〜20の整数で
あり、sは2〜5の整数であり;
xは0、1または2である。]
【化2】

【請求項2】
前記式(1)中、
Aが、独立して1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、
該1,4−フェニレンにおける任意の水素は、塩素またはフッ素で置き換えられてもよく、また、任意の1つまたは2つの水素は、メチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;
Zが、独立して−CH2O−、−OCH2−、−COO−、−OCO−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−であり;
Pが、独立して上記式(P1)〜(P8)のいずれかで示される重合性の基であり;
Qが、独立して−O−、−O−(CH2r−、−(CH2r−O−、−(CH2r−または−O−(CH2r−O−であり、rが1〜15の整数であり;
xが1または2であること
を特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式(1)中、
Aが、独立して1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、
該1,4−フェニレンにおける任意の1つまたは2つの水素は、塩素またはフッ素で置き換えられてもよく;
Zが、独立して−COO−、−OCO−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−であり;
Pが、独立して上記式(P1)、(P5)、(P6)または(P7)で示される重合性の基であり;
Qが、独立して−O−、−O−(CH2r−、−(CH2r−O−、−(CH2r−または−O−(CH2r−O−であり、rが1〜15の整数であり;
xが1であること
を特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
下記式(1−1)〜(1−9)のいずれかで表される化合物。
【化3】

[上記式(1−1)〜(1−9)中、
Zは、独立して−COO−、−OCO−、−(CH22COO−、−OCO(CH22−、−CH=CH−COO−または−OCO−CH=CH−であり;
rは、独立して1〜10の整数であり;
1、R2、R3およびR4は、それぞれ水素またはフッ素であり;
5は水素またはメチルである。]
【請求項5】
下記式(1−1−1)、(1−1−2)、(1−1−3)、(1−6−1)、(1−6
−2)、(1−6−3)、(1−7−1)、(1−8−1)、(1−8−2)、(1−9−1)または(1−9−2)で表される化合物。
【化4】

[上記式中、rは1〜10の整数であり、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ水素また
はフッ素である。]
【請求項6】
請求項5に記載の式(1−1−1)で表され、該式中、R1、R2、R3およびR4が水素であり、rが2〜10の整数であることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項5に記載の式(1−1−1)で表され、該式中、R1およびR4が水素であり、R2およびR3がフッ素であり、rが2〜10の整数であることを特徴とする化合物。
【請求項8】
請求項5に記載の式(1−6−1)で表され、該式中、R1、R2、R3およびR4が水素であり、rが2〜10の整数であることを特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする重合性液晶組成物。
【請求項10】
第1成分として、請求項5に記載の式(1−1−1)、式(1−1−2)および式(1−1−3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
第2成分として、下記式(M1a)および式(M1b)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
第1成分と第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分の含有量が20〜80重量%であること
を特徴とする重合性液晶組成物。
【化5】

[式(M1a)および(M1b)中、
6は、独立して水素、フッ素、トリフルオロメチルまたはメチルであり;
7は、シアノ、トリフルオロメトキシ、炭素数1〜15のアルキルまたは炭素数1〜1
5のアルコキシであり;
1およびW2は、独立して水素、塩素またはフッ素であり、
3は水素またはフッ素であり;
2は、単結合、−COO−、−CH=CH−COO−または−CH2CH2−COO−で
あり;
2は、下記式(A−1)〜(A−7)のいずれかで表される基であり;
mは2〜8の整数である。]
【化6】

【請求項11】
第1成分として、請求項5に記載の式(1−1−1)、式(1−1−2)および式(1−1−3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
第2成分として、(i)請求項10に記載の式(M1a)で表される少なくとも1つの化合物と、(ii)請求項10に記載の式(M1b)で表される少なくとも1つの化合物とを含み、
第1成分および第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分(i)の含有量が10〜40重量%であり、第2成分(ii)の含有量が10〜40重量%であること
を特徴とする重合性液晶組成物。
【請求項12】
第1成分として、請求項5に記載の式(1−6−1)、式(1−6−2)、式(1−6−3)および式(1−7−1)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
第2成分として、下記式(M2a)、式(M2b)および式(M2c)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
第1成分と第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分の含有量が20〜80重量%であること
を特徴とする重合性液晶組成物。
【化7】

[式(M2a)〜(M2c)中、
8は、シアノ、フッ素、トリフルオロメチルまたはメチルであり;
1およびW2は、独立して水素、塩素またはフッ素であり、
3は水素またはフッ素であり;
2は、単結合、−COO−、−CH=CH−COO−または−CH2CH2−COO−で
あり;
3は、独立して単結合または−O−であり;
2は、請求項10に記載の式(A−1)〜(A−7)のいずれかで表される基であり;
mは2〜8の整数である。]
【請求項13】
第1成分として、請求項5に記載の式(1−6−1)、式(1−6−2)、式(1−6−3)および式(1−7−1)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
第2成分として、(i)請求項12に記載の式(M2b)で表される少なくとも1つの化合物と、(ii)請求項12に記載の式(M2c)で表される少なくとも1つの化合物とを含み、
第1成分および第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分(i)の含有量が10〜40重量%であり、第2成分(ii)の含有量が10〜40重量%であること
を特徴とする重合性液晶組成物。
【請求項14】
第1成分として、請求項5に記載の式(1−8−1)、式(1−8−2)、式(1−9−1)および式(1−9−2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
第2成分として、下記式(M3a)および式(M3b)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
第1成分と第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分の含有量が20〜80重量%であること
を特徴とする重合性液晶組成物。
【化8】

[式(M3a)および(M3b)中、
8は、シアノ、フッ素、トリフルオロメチルまたはメチルであり;
9はメチルまたはエチルであり;
1およびW2は、独立して水素、塩素またはフッ素であり、
3は水素またはフッ素であり;
2は、単結合、−COO−、−CH=CH−COO−または−CH2CH2−COO−で
あり;
2は、請求項10に記載の式(A−1)〜(A−7)のいずれかで表される基であり;
mは2〜8の整数である。]
【請求項15】
第1成分として、請求項5に記載の式(1−8−1)、式(1−8−2)、式(1−9−1)および式(1−9−2)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を含み、
第2成分として、(i)請求項14に記載の式(M3a)で表される少なくとも1つの化合物と、(ii)請求項14に記載の式(M3b)で表される少なくとも1つの化合物とを含み、
第1成分および第2成分の合計量100重量%に対して、第1成分の含有量が20〜80重量%であり、第2成分(i)の含有量が10〜40重量%であり、第2成分(ii)の含有量が10〜40重量%であること
を特徴とする重合性液晶組成物。
【請求項16】
さらに重合開始剤を含有することを特徴とする請求項9〜15のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項17】
さらに溶媒を含有することを特徴とする請求項9〜16のいずれかに記載の重合性液晶組成物。
【請求項18】
請求項9〜17のいずれかに記載の重合性液晶組成物を重合させることによって得られる重合体。
【請求項19】
請求項9〜17のいずれかに記載の重合性液晶組成物を重合させることによって得られる光学異方性フィルム。
【請求項20】
請求項19に記載の光学異方性フィルムを含む位相差板。
【請求項21】
請求項19に記載の光学異方性フィルムを有する液晶表示素子。

【公開番号】特開2007−70302(P2007−70302A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260765(P2005−260765)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】