説明

重合性組成物およびその用途

【課題】 本発明は、高周波帯域の磁気性能と成形加工性、形状追従性に優れ、かつ感圧接着性を有する磁性シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明に係る重合性組成物は、
不飽和カルボン酸エステル(1a)を含む単量体成分(A1)、
熱重合開始剤(B)、および
軟磁性体(C)を含み、
該重合性組成物の全体積に対して15〜80体積%の軟磁性体(C)を含むことを特徴とする。かかる重合性組成物を重合することで、高周波帯域の磁気性能と成形加工性、形状追従性に優れ、かつ感圧接着性を有する磁性シートが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟磁性体を含む重合性組成物およびその用途に関し、さらに詳しくは軟磁性体の充填率が高く、透磁率、成形加工性、形状追従性に優れ、しかも感圧接着性を有する磁性シートを提供しうる重合性組成物および該組成物から形成される成形体、シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信や無線LAN、高度道路交通システム等において、高周波帯の電磁波を放出する電子機器が広く普及しつつある。これらの電子機器から放出される電磁波や反射電磁波が他の電子機器に悪影響を及ぼすことから、特に電磁波を効率よく吸収できる電磁波吸収材として、高透磁率の磁性シートが望まれている。磁性シートとしては、軟磁性金属粉末をゴムまたはプラスチック中に分散させ、シート状に成形したものが知られている。
【0003】
特許文献1(特開2001−068889)には、軟磁性金属粉末をゴムまたはプラスチックのマトリックス中に分散したものをカレンダー成形にてシート状に形成してなる電磁波シールド材が開示されている。マトリックス層としては塩素化ポリエチレンなどの高分子量重合体が用いられている。これらの高分子量重合体は、それ自体で粘度が高く、またこれらに軟磁性金属粉末を溶融混練すると組成物の粘度はさらに上昇する。粘度が高すぎると溶融混練が困難ないし不可能になるため、上記のような高分子量重合体と軟磁性金属粉末との組成物においては、軟磁性金属粉末を多量に添加することは容易ではない。このため、特許文献1に記載のような電磁波吸収材では、軟磁性金属粉末を多量に充填できず、透磁率の向上には限界があった。さらに得られたシートは粘着性に乏しいため、貼り合せて使用する場合は、得られた成形品の表面に接着剤を塗布するといった二次加工の必要があった。
【0004】
特許文献2(特開2003−229308)には、軟磁性材料の粉末をゴムまたはプラスチックの溶液中に分散させて懸濁液を用意し、この懸濁液を基材上に塗布し、塗膜を乾燥させて磁性シートを製造する方法が開示されている。しかし、この製法の場合、乾燥工程が必要であり生産性が低く、また回収した溶液の取扱において環境負荷が大きいといった問題があった。
【0005】
特許文献3(特開2001−160699)には、アクリル系光重合性組成物を導電性繊維シートに含浸させ、これに紫外線を照射してシートを形成する方法が開示されている。しかし紫外線照射によって重合性単量体を重合させる場合、フィラーを多量に添加するとフィラーが紫外線の透過を妨げ、重合性単量体の重合が不完全になるという問題があり、フィラーの添加量を多くする事が困難であった。また、シートが厚くなると、上記と同様に紫外線透過が不十分になり、やはり重合不全が起こる。
【0006】
特許文献4(特開2007−31695)ではアクリル系共重合体をマトリックスとし、そこに磁性粉を混合してなる電磁波吸収性組成物が開示されている。マトリックスであるアクリル系共重合体の分子量が高い場合には、上記特許文献1と同様に、磁性粉を多量に配合すると粘度上昇の問題が発生する。したがって、特許文献4では、多量に磁性粉を添加するケースでは粘度調整のため、分子量の低い共重合体を使用する必要があり、得られる成形体が脆く施工が困難であった。
【特許文献1】特開2001−068889号公報
【特許文献2】特開2003−229308号公報
【特許文献3】特開2001−160699号公報
【特許文献4】特開2007−31695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、磁性シートについては、精力的に数多くの研究がなされている。特に、高周波帯での電磁波吸収性能においては高透磁率が求められるが、高透磁率を達成するため、磁性粉の配合量を増加すると、マトリックスとして重合体を使用する場合には粘度上昇の問題が発生し、成形が困難になったり、また他の物品に接着する際には形状追従性が不十分であり、ボイドなどが生成するなどの問題がある。また、紫外線重合性の組成物においては、磁性粉の配合量を増加すると、紫外線透過が不十分になり、重合不全という問題が発生する。
さらにまた、従来の磁性シートでは、他の物品に接着する際には、接着剤層を設けるなどの二次加工の必要もあった。このため、接着剤層を設ける必要のない、自己接着性の磁性シートが提供されればその利用価値は高い。
【0008】
したがって、本発明の目的は、高周波帯域の磁気性能と成形加工性、形状追従性に優れ、かつ感圧接着性を有する磁性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、磁性シートの製造について鋭意研究を続けてきたが、重合性単量体として不飽和カルボン酸エステルを選定し、その重合に際し特定の重合法、つまり熱重合を採用してマトリックスの形成と、賦形を同時に行うことで、成形加工性、形状追従性が向上し、しかも磁性粉の高充填が可能でかつ感圧接着性を有する磁性シートが得られることを見いだし、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、上記課題の解決する本発明は、以下の事項を要旨とする。
(1)不飽和カルボン酸エステル(1a)を含む単量体成分(A1)、
熱重合開始剤(B)、および
軟磁性体(C)を含む重合性組成物であって、
該重合性組成物の全体積に対して15〜80体積%の軟磁性体(C)を含む重合性組成物。
(2)前記単量体成分(A1)に含まれる不飽和カルボン酸エステル(1a)が、それを重合してなる重合体のガラス転移点温度が−20℃以下を示す1種以上の単量体である(1)に記載の重合性組成物。
(3)前記単量体成分(A1)が、酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b)をさらに含む(1)または(2)に記載の重合性組成物。
(4)前記単量体成分(A1)が、
不飽和カルボン酸エステル(1a):40〜99.9重量%、
酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b):0.1〜60重量%、および
該(1a)および(1b)と共重合可能な他の単量体(1c):0〜20重量%からなる(3)に記載の重合性組成物。
(5)不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)を単量体成分(A1)に対し100重量%以下の量で含む(1)〜(4)のいずれかに記載の重合性組成物。
(6)前記不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)の重量平均分子量が1,000〜1,000,000である(5)に記載の重合性組成物。
(7)前記不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)が、
不飽和カルボン酸エステル(2a)を含む単量体成分を重合してなる重合体であって、
該不飽和カルボン酸エステル(2a)が、それを重合してなる重合体のガラス転移点温度が−20℃以下を示す1種以上の単量体であるである(5)または(6)に記載の重合性組成物。
(8)前記不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)が、
前記不飽和カルボン酸エステル(2a):40〜99.9重量%、
酸または酸無水物基を有する単量体(2b):0.1〜60重量%、および
該(2a)および(2b)と共重合可能な他の単量体(2c):0〜20重量%を共重合してなる重合体である(7)に記載の重合性組成物。
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の重合性組成物を塊状重合することにより得られる成形体。
(10)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の重合性組成物を塊状重合し、かつシート状に成形して得られるシート状成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、磁性シートを形成する前駆材料としての重合性組成物を構成する重合性単量体として不飽和カルボン酸エステルを選定し、これを熱重合するため、マトリックスの形成と、賦形とを同時に行い得る。マトリックス形成前の組成物は低粘度であるため、軟磁性体の配合による粘度上昇が少なく、多量の軟磁性体を配合することが可能になる。このため、得られる成形体の磁気特性が向上する。また、マトリックスの形成と、賦形とを同時に行えるため、形状加工性に優れ、種々の形状の電磁波吸収材たとえば電磁波吸収性シートを容易に得ることができる。しかも、得られるマトリックスは、不飽和カルボン酸エステル重合体を主体とするため、柔軟であり形状追従性に優れ、かつ感圧接着性を有する。
【0012】
本発明の重合性組成物からなる磁性シートは成形加工性に優れるため、シート状の電磁波吸収材などを簡便に得ることができ、また得られる電磁波吸収材は、電磁波吸収性、感圧接着性、形状追従性に優れる。得られる磁性シートは感圧接着性を有するため、移動体通信や無線LAN、高度道路交通システム等において、容易に目的とする被着体に貼り付ける事が出来る。また、磁性体の高充填により磁気特性が向上するため、電子機器内のノイズ抑制や電磁波を放出する電子機器の電磁波吸収シートとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の重合性組成物は、
不飽和カルボン酸エステル(1a)を含む重単量体成分(A1)、
熱重合開始剤(B)、
軟磁性体(C)および必要に応じ、不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)を含む。
また、軟磁性体(C)の配合量は、電磁波吸収性組成物の全体積に対して15〜80体積%である。
【0014】
(単量体成分(A1))
単量体成分(A1)は、不飽和カルボン酸エステル(1a)を必須成分として含み、必要に応じ酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b)ならびにこれらと共重合可能な他の単量体(1c)を含む。
【0015】
(不飽和カルボン酸エステル(1a))
本発明において「不飽和カルボン酸エステル」とは、不飽和カルボン酸のエステル単量体の総称である。
【0016】
該不飽和カルボン酸としては、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボン酸;等があげられる。
【0017】
エステルとしては、アルキルエステルが好ましい。アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は好ましくは1〜18、より好ましくは4〜14である。また、該アルキル基の水素原子の一部または全部が、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシル基、エポキシ基、およびアミノ基などで置換されたエステルも用いることができる。
【0018】
このような不飽和カルボン酸エステルとしては、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸アルキルエステル;
アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸3−メトキシプロピル、アクリル酸3−メトキシブチル、アクリル酸2−エトキシメチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステル;
アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;
アクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルなどのアミノ基を有するアクリル酸エステル;
アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基を有するアクリル酸エステル;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸デシルなどのメタクリル酸アルキルエステル;
メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのメタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;
メタクリル酸N,N−ジメチルアミノメチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチルなどのアミノ基を有するメタクリル酸エステル;
メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基を有するメタクリル酸エステル;
フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジメチル等の不飽和多価カルボン酸完全エステル;などをあげることができる。
【0019】
特に本発明においては、不飽和カルボン酸エステル(1a)としては、それを重合してなる重合体のガラス転移点温度が−20℃以下、好ましくは−40℃以下を示す1種以上の単量体が好ましく用いられる。具体的には、不飽和カルボン酸エステル(1a)としては単一の化合物を使用する場合には、その単独重合体のガラス転移点温度が−20℃以下、好ましくは−40℃以下を示す単量体が好ましく用いられる。また、不飽和カルボン酸エステル(1a)は、2種以上の単量体混合物であってもよく、その場合には、その共重合体のガラス転移点温度が−20℃以下、好ましくは−40℃以下を示す単量体混合物が好ましく使用される。例えば、単独重合体のガラス転移点温度が−20℃以下となる不飽和カルボン酸エステルとしてはアクリル酸エチル(単独重合体のガラス転移温度は、−24℃)、アクリル酸プロピル(同−37℃)、アクリル酸ブチル(同−54℃)、アクリル酸sec−ブチル(同−22℃)、アクリル酸ヘプチル(同−60℃)、アクリル酸ヘキシル(同−61℃)、アクリル酸オクチル(同−65℃)、アクリル酸2−エチルヘキシル(同−50℃)、アクリル酸2−メトキシエチル(同−50℃)、アクリル酸3−メトキシプロピル(同−75℃)、アクリル酸3−メトキシブチル(同−56℃)、アクリル酸2−エトキシメチル(同−50℃)、メタクリル酸オクチル(同−25℃)、メタクリル酸デシル(同−49℃)を挙げることができる。また、単独共重合体のガラス転移温度が−20℃を超える不飽和カルボン酸エステルを、単独重合体のガラス転移点温度が−20℃以下となる不飽和カルボン酸エステルと組み合わせて、共重合体のガラス転移温度が−20℃以下となる組成を有する不飽和カルボン酸エステルの混合物を不飽和カルボン酸エステル(1a)として使用することもできる。これらの、単独重合体または共重合体のガラス転移点温度が−20℃以下となる単量体またはその混合物を用いることで、得られる重合体に適度な柔軟性が付与され、形成される磁性シートの被着体に対する形状追従性が向上する。
【0020】
これらの不飽和カルボン酸エステルは、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
(酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b))
【0021】
単量体成分(A1)は、上記不飽和カルボン酸エステル(1a)に加えて、さらに必要に応じ、酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b)を含んでいてもよい。酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b)は、特に限定されず、その代表的なものとして、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基等の基を有する単量体を挙げることができるが、これらのほか、スルフェン酸基、スルフィン酸基、燐酸基等を含有する単量体も使用することができる。カルボキシル基を有する単量体の具体例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボン酸;イタコン酸メチル、マレイン酸ブチル、フマル酸プロピル等の不飽和多価カルボン酸部分エステル;等を挙げることができる。また,無水マレイン酸、無水イタコン酸等の、酸無水物基を有する単量体も挙げることができる。
【0022】
スルホン酸基を有する単量体の具体例としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩を挙げることができる。
【0023】
これらの酸または酸無水物基を有する単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体が好ましく、中でも、アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。これらは、他の単量体成分との共重合性も良く生産性の点でも好ましい。またこれらアクリル酸及びメタクリル酸は、上記不飽和カルボン酸エステル(1a)と共重合することで得られる重合体の粘着性を高めることができる。このため、磁性シートの被着体に対する感圧接着性が向上する。
【0024】
これらの酸または酸無水物基を有する単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
(他の単量体(1c))
単量体成分(A1)は、上記不飽和カルボン酸エステル(1a)および所望により用いられる酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b)に加えて、さらに必要に応じこれらと共重合可能な他の単量体(1c)を含んでいても良い。
【0026】
他の単量体(1c)は、特に限定はされないが、たとえば、上記酸または酸無水物基以外の官能基として、アミド基、エポキシ基、メルカプト基等を有する重合性単量体、およびアルケニル芳香族単量体、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体、シアン化ビニル単量体、カルボン酸不飽和アルコールエステル、オレフィン類等を挙げることができる。
【0027】
アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミドを挙げることができる。
【0028】
エポキシ基を有する単量体としては、アリルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0029】
アルケニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、メチルα−メチルスチレン、ビニルトルエン、アミノスチレンおよびジビニルベンゼン等を挙げることができる。
【0030】
共役ジエン単量体の具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン等を挙げることができる。
【0031】
非共役ジエン単量体の具体例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等を挙げることができる。
【0032】
シアン化ビニル単量体の具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル等を挙げることができる。
【0033】
カルボン酸不飽和アルコールエステルの具体例としては、酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0034】
オレフィン類の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等を挙げることができる。
【0035】
さらに、他の単量体(1c)として、2以上の重合性不飽和結合を有する、多官能性単量体を用いることもできる。多官能性単量体を共重合させることにより、共重合体の分子内及び/又は分子間架橋を導入して、成形体の凝集力を高めることができる。
【0036】
多官能性単量体としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート;2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチレン−5−トリアジン等の置換トリアジン;4−アクリルオキシベンゾフェノンのようなモノエチレン系不飽和芳香族ケトン;等を用いることができる。
これらの単量体(1c)を用いることで 特に高温下での機械強度に優れる成形体を得ることができる。
【0037】
これらの単量体(1c)は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0038】
(組成比)
単量体成分(A1)の組成は、上記成分(1a)を含有する限り特に限定はされないが、単量体成分(A1)の全量100重量%中に、
不飽和カルボン酸エステル(1a)を好ましくは40〜99.9重量%、さらに好ましくは80〜99.9重量%、特に好ましくは85〜99.5重量%含む。
また、酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b)を用いる場合には、不飽和単量体(1b)は、好ましくは0.1〜60重量%、さらに好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは0.5〜15重量%の量で含まれる。
【0039】
また必要に応じ用いられる単量体(1c)は、単量体成分(A1)の全量100重量%中に、20重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で含まれていても良い。
【0040】
単量体成分(A1)の組成が上記範囲にあると、軟磁性体(C)を配合した際の組成物の粘度増加が抑えられ、軟磁性体(C)の充填率を向上する。また、得られる重合体には適度な柔軟性および感圧接着性が付与されるため、磁性シートの形状追従性、感圧接着性が向上する。
【0041】
(熱重合開始剤(B))
熱重合開始剤(B)は、加熱により重合反応を開始できるものであれば特に限定されない。具体的には、過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。
過酸化物重合開始剤としては、t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドのようなペルオキシド;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;等を挙げることができる。
【0042】
これらの過酸化物は、還元剤と適宜組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。
アゾ化合物重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等を挙げることができる。
これら熱重合開始剤の中でも本発明では、過酸化物が好ましく、特に1,6ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネートやパーオキシケタールが好ましい。
【0043】
重合開始剤(B)の使用量は、特に限定されないが、通常、単量体成分(A1)の全量100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲である。
これらの単量体のその他の重合条件(重合温度、開始剤の添加方法、混練条件等々)に、特に制限はない。
【0044】
熱重合開始剤(B)としては1分間半減期温度が110℃以上、200℃以下のものが好ましい
熱重合開始剤(B)を用いた熱重合時における単量体成分(A1)の重合転化率は、95重量%以上であることが好ましい。重合転化率が十分に高いと残留単量体が少なく、得られる磁性シート中の単量体臭が低減ないし消失する。
【0045】
(軟磁性体(C))
本発明で使用される軟磁性体(C)は、軟磁性を持っている粉末を用途において適時使い分ければよく特に限定されない。軟磁性とは、外部から印加された磁場に対して内部の磁化が磁場方向にそろいやすい、すなわち磁化しやすい性質である。これに対し、硬磁性とは外部磁場が加わっても内部の磁化が起こりにくい性質であり、かつ外部に磁場が作れる性質である。
【0046】
このような軟磁性体の典型例としては、Fe、Ni、Coのうち少なくとも一つ含むものであり、具体的には軟磁性フェライト、軟磁性金属などが挙げられる。。
【0047】
軟磁性フェライトは、酸化第2鉄(Fe)と二価の金属酸化物(MO)との化合物(MO・Fe)である。ここで、Mは二価の金属を表す。具体的には、二価の金属酸化物の種類により、Mn−Zn系、Mg−Zn系、Ni−Zn系、Cu系、Cu−Zn系、Cu−Zn−Mg系、Cu−Ni−Zn系、Li−Fe系などのスピネル型フェライト、RFe12(Rが3価のYまたは希土類元素)で示されるYFe系などのガ−ネット型フェライト、MeをFe、Ni、Co、CuとするとMeO、BaO、Feの組成を組み合わせた六方晶構造をもつBaFe系などのフェロクスプレーナ型フェライトに分類される。
【0048】
この中でも、Ni、Mn、Zn、Y、またはBaを含むフェライトが好ましい。中でもMn−Zn系、Ni−Zn系などのスピネル型フェライトやBaFe系などのフェロクスプレーナ型フェライトが特に好ましく、これらを用いることで透磁率を高めることができる。ここで、Mn−Zn系等の表現は、MnおよびZnを上記二価の金属として含有することを意味する。
【0049】
Ni−Zn系フェライトとは、一般式(NiO)x(ZnO)y・Feで表される組成物を持つものをいうが、Niの一部をCu、Mg、Co、Mn等の他の二価金属で置換したものであってもよい。Ni−Zn系フェライトは、本来の特性を損なわない範囲で、その他の元素を含有していてもよい。
【0050】
Mg−Zn系フェライトとは、一般式(MgO)x(ZnO)y・Feで表される組成を持つものをいうが、Mgの一部をNi、Cu、Co、Mn等の他の二価金属で置換したものであってもよい。Mg−Zn系フェライトは、本来の特性を損なわない範囲で、その他の元素を含有していてもよい。
【0051】
Mn−Zn系フェライトとは、一般式(MnO)x(ZnO)y・Feで表される組成を持つものをいうが、Mnの一部をNi、Cu、Co、Mg等の他の二価金属で置換したものであってもよい。Mn−Zn系フェライトは、本来の特性を損なわない範囲で、その他の元素を含有していてもよい。
【0052】
Cu系フェライトとは、一般式(CuO)x・Feで表される組成を持つものをいうが、Cuの一部をNi、Zn、Mg、Co、Mn等の他の二価金属で置換したものであってもよい。Cu系フェライトは、本来の特性を損なわない範囲で、その他の元素を含有していてもよい。
【0053】
軟磁性フェライトは、公知の方法で得ることができる。これら酸化物系の磁性体であるフェライトの原料の代表的なものは、Fe、MnO、MnCO、CuO、NiO、MgO、ZnO、YO、BaOなどの金属酸化物または金属炭酸塩などである。軟磁性フェライトの製造方法としては、乾式法、共沈法、及び噴霧熱分解法が代表的なものである。
【0054】
乾式法では、上記元素の酸化物や炭酸塩などの各原料を所定の配合比となるように計算して機械的に混合し、焼成後、粉砕する。乾式法では、原料混合物を仮焼成し、微粒子に粉砕した後、顆粒状に造粒し、さらに本焼成した後、再度粉砕して軟磁性フェライト粉末を得てもよい。共沈法では、金属塩の水溶液に強アルカリを加えて水酸化物を沈殿させ、これを酸化して微粒子のフェライト粉末を得る。フェライト粉末は、造粒した後、焼成され、次いで粉砕してもよい。噴霧熱分解法では、金属塩の水溶液を熱分解して微粒子状の酸化物を得る。酸化物粉末は、造粒した後、焼成され、次いで粉砕してもよい。焼成されたフェライトは、ハンマーミル、ロッドミル、ボールミル等によって粉砕され、フェライト粉末とされる。
【0055】
軟磁性金属には、単金属磁性体と複合金属磁性体がある。単金属磁性体は、Fe,Ni,Coからなるものであり、具体的には純鉄、ニッケル粉、コバルト粉などがある。
【0056】
複合金属磁性体は、2種以上の金属の複合体であり、Fe、Ni、Coのうち少なくとも一つ含み、またこれらのほかに、Si、Al、Co、Cr、B、Nb、Mo、P、Zr、Ti、Hf、Ti、Cuなどを含んでもよい合金またはアモルファス合金またはナノ結晶質の金属である。
【0057】
具体的にはFeSi材料(ケイ素鋼)、FeNi材料(パーマロイ)、FeNiMo材料(スーパーマロイ)、FeCo材料、FeCr材料、FeAl材料、FeAlSi材料(センダスト)、FeSiNi材料などの金属結晶質材料、Fe、Coなどを少なくとも一つ含む金属非晶質材料、Fe、Coなどを少なくとも一つ含む金属ナノ結晶質材料などが挙げられる。
【0058】
ここでFeを含む非晶質材料としては、Fe−Si−B系、Fe−B系、Fe−P−C系などのFe−半金族系非晶質金属材料やFe−Zr系、Fe−Hf系、Fe−Ti系などのFe−還移金属系非晶質金属材料が例示でき、また、Coを含む非晶質金属材料としてはCo−Si−B系、Co−B系などの非晶質金属材料が例示できる。そして、非晶質金属材料を熱処理によりナノサイズに結晶化させたナノ結晶質材料においては、Fe−Si−B−Cu−Nb系、Fe−B−Cu−Nb系、Fe−Zr−B−(Cu)系、Fe−Zr−Nb−B−(Cu)系、Fe−Zr−P−(Cu)系、Fe−Zr−Nb−P−(Cu)系、Fe−Ta−C系、Fe−Al−Si−Nb−B系、Fe−Al−Si−Ni−Nb−B系、Fe−Al−Nb−B系、Co−Ta−C系などが挙げられる。ここで、Fe−Si−B−Cu−Nb系等の表現は、Fe、Si、B、CuおよびNbを主たる構成元素として含有することを意味する。また、「(Cu)」は、Cuを微量成分として含有することを意味する。これらは一種単独でも用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
これらの中でも好ましくは、少なくともFe原子を含むものであり、具体的にはFeNi材料(パーマロイ)、FeNiMo材料(スーパーマロイ)、FeAl材料、FeAlSi材料(センダスト);Feを含む金属非晶質材料;Feを含む金属ナノ結晶質材料である。これらを用いることで透磁率をより増加させることができる。
【0060】
これらの軟磁性金属の製造方法は、公知の方法が採用でき、特に限定されない、例えばCVD、ゾルゲル、電気還元方法、レーザーアビュレーション方法、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、還元剤を使った化学還元法、メカニカルアロイングによるコンポジット法などが挙げられる。
【0061】
これら軟磁性体は一種単独でも用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これら軟磁性体の数平均粒子径は、好ましくは0.001〜100μm、さらに好ましくは、0.01〜75μm、より好ましくは0.05〜50μm、特に好ましくは0.1〜25μm、最も好ましくは0.1〜10μmである。この範囲より粒径が小さくても、大きくとも、取扱いが難しくなるおそれがある。ここで、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだ軟磁性体100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である
【0062】
またこれら軟磁性体の表面は、シリカ、アルミナなど無機物で被覆されるか、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤、およびアルミネートカップリング剤などのカップリング剤;シラザン;ポリシロキサン;などの公知の表面処理剤で表面処理をされていることが好ましい。
【0063】
またこれら軟磁性体の形状は特に限定はされず、球状、針状、棒状、偏平状、不定形のいずれであってもよいが、入手のしやすさから、球状、偏平状、不定形のものが好ましい。
【0064】
軟磁性体(C)の配合量は重合性組成物の全体積に対して、15〜80体積%、好ましくは20〜75体積%、より好ましくは25〜70体積%、特に好ましくは30〜65体積%である。また、軟磁性体の配合量は重合性組成物の全重量に対して、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは60〜99重量%、特に好ましくは70〜95重量%である。
【0065】
なお、ここで、重合性組成物の全体積および全重量とは、単量体成分(A1)、熱重合開始剤(B)および軟磁性体(C)、ならびに後述するような不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)などの任意的成分を含む場合には、これらの全成分からなる組成物の体積および重量を意味する。軟磁性体の配合量が上記範囲より少ないと、軟磁性体の効果を得られない恐れがあり、この範囲より多い場合は、成形性が悪くなる恐れがある。軟磁性体の磁気特性の指標として、透磁率を挙げられる。本発明においては、最終的に得られる成形体の100MHzでの透磁率が好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。透磁率が低すぎる場合には、充分な磁気特性を得られない恐れがある。なお、本明細書においては、特に断らない限り、透磁率は、複素透磁率の実部をさす。
【0066】
(不飽和カルボン酸エステル重合体(A2))
本発明の重合性組成物には、さらに重合前の粘度調整のために不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)が配合されていてもよい。配合される重合体(A2)は、重合性組成物に含まれる単量体成分(A1)と同一または類似の単量体から形成される重合体が好ましい。たとえば、単量体成分(A1)を構成するモノマーとしてアクリル酸エステルが主として使用される場合には、重合体(A2)としては、アクリル酸エステルの重合体が好ましい。
【0067】
したがって、好ましい不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)は、不飽和カルボン酸エステル(2a)を含む単量体成分を重合してなる重合体であって、該不飽和カルボン酸エステル(2a)が、それを重合してなる重合体のガラス転移点温度が−20℃以下、好ましくは−40℃以下を示す1種以上の単量体であることが好ましい。
また、特に好ましい不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)は、
前記不飽和カルボン酸エステル(2a):40〜99.9重量%、
酸または酸無水物基を有する単量体(2b):0.1〜60重量%、および
該(2a)および(2b)と共重合可能な他の単量体(2c):0〜20重量%を共重合してなる重合体である。
【0068】
前記不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜1,000,000、さらに好ましくは1,000〜300,000の範囲にある。重量平均分子量が上記範囲にある不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)を配合することで、重合性組成物の初期(重合前)の粘度を適度な範囲に設定できるため、組成物の成形加工性および、組成物を重合して得られる成形体の形状追従性の制御が容易になる。
【0069】
上記不飽和カルボン酸エステル単量体(2a)、酸または酸無水物基を有する単量体(2b)および他の単量体(2c)は、それぞれ単量体成分(A1)において説明した単量体(1a)、(1b)および(1c)であることが好ましい。なお、不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)における単量体(2a)、(2b)および(2c)は、前記単量体成分(A1)で選択した単量体(1a)、(1b)および(1c)と完全に同一である必要はない。単量体成分(A1)と不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)との相溶性が良好であり、得られる電磁波吸収材の樹脂層が均一となるため、両者は類似もしくは同一であることが好ましい。
【0070】
また、不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)における単量体(2a)、(2b)および(2c)の組成比も、前記単量体成分(A1)において説明した組成比と同様であるが、単量体単位(2a)の割合が単量体成分(A1)で説明した単量体(1a)の割合よりも若干少なくてもよい。
【0071】
不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)の合成法は特に限定されず、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等のいずれであってもよく、これ以外の方法でもよい。好ましくは、溶液重合であり、中でも重合溶媒として、酢酸エチル、乳酸エチル等のカルボン酸エステルやベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族溶媒を用いた溶液重合が好ましい。重合に際して、単量体は、重合反応容器に分割添加してもよいが、全量を一括添加するのが好ましい。また、重合開始の方法は、特に限定されないが、前記熱重合開始剤(B)を用いるのが好ましい。
【0072】
前記不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)を、重合性組成物に配合する場合には、前記単量体成分(A1)100重量部に対して、0〜100重量部、好ましくは5〜70重量部、さらに好ましくは10〜50重量部の量で配合することが望ましい。
【0073】
不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)の配合量が多すぎる場合には、重合性組成物が増粘し、成形加工性が損なわれ、また組成物を重合して得られる成形体の形状追従性が低下することがある。
【0074】
(その他の添加剤)
本発明の重合性組成物は必要により、難燃剤、顔料、可塑剤、熱伝導性充填剤、その他の充填材、老化防止剤、増粘剤、粘着付与剤等の公知の各種添加剤を含有することができる。
【0075】
難燃剤としては、難燃性の無機水和物、ポリ燐酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫化合物、有機リン系化合物、赤リン系化合物、シリコーン系難燃材を挙げることができる。代表例として例えば水酸化アルミニウムなどが使用される。その平均粒径は通常、0.2〜150μm、好ましくは0.7〜100μmの粒径を有するものを使用する。また、1〜80μmの平均粒径を有するのが好ましい。平均粒径が1μm未満のものは重合性組成物の粘度を増大させ、重合性組成物の混練が困難となるおそれがあり、また、重合性組成物を硬化して得られる成形体の硬度も増大し、形状追従性を低下させるおそれがある。顔料としては、カーボンブラックや二酸化チタン等、有機系、無機系を問わず使用できる。
【0076】
老化防止剤としては、ラジカル重合を阻害する可能性が高いため通常は使用しないが、必要に応じてポリフェノール系、ハイドロキノン系、ヒンダードアミン系等の酸化防止剤を使用することができる。
【0077】
増粘剤としては、微粒シリカ等の無機化合物微粒子、酸化マグネシウム等のような反応性無機化合物を使用することできる。
粘着付与剤としては、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、ロジン系樹脂、石油系樹脂、クマロン-インデン樹脂、フェノール系樹脂、水添ロジンエステル、不均化ロジンエステル、キシレン樹脂等を挙げることができる。
【0078】
(外部架橋剤)
更に、本発明の重合性組成物の重合後には、該組成物を重合して得られる共重合体の凝集力を高め、耐熱性等を向上させるために、外部架橋剤を添加して、共重合体に架橋構造を導入することができる。
【0079】
外部架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等の多官能性イソシアネート系架橋剤;ジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤;メラミン樹脂系架橋剤;アミノ樹脂系架橋剤;金属塩系架橋剤;金属キレート系架橋剤;過酸化物系架橋剤;等が挙げられる。
【0080】
なお、外部架橋剤は、重合性組成物を重合して共重合体を得た後、これに添加して、加熱処理や放射線照射処理を行うことにより、共重合体の分子内及び/又は分子間に架橋を形成させるものである。
【0081】
(重合性組成物)
本発明の重合性組成物は、上記単量体成分(A1)、熱重合開始剤(B)、および軟磁性体(C)、ならびに所望に応じ用いられる不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)、その他の添加剤を混合して得られる。
【0082】
混合方法は、特に限定されないが、均一な混合を確実にするために、強力な混合機を使用することが好ましい。混合は、回分式で行っても連続して行ってもよい。 各成分の混合の順序は、特に限定されない。
【0083】
回分式混合機としては、擂潰機、ニーダー、ホバートミキサー、プラネタリーミキサー等の高粘度原料用混練機や攪拌機が挙げられる。連続式混合機としては、ローターとスクリューを組み合わせたファレル型連続混練機等やスクリュー式の特殊な構造の混練機が挙げられる。また、押出し加工に使用されている単軸押出機や二軸押出機が挙げられる。これらの押出機や混練機は、二種類以上組み合わせてもよいし、同型の機械を複数連結して使用してもよい。なかでも、連続性及び剪断速度の観点から二軸押出機が好ましい。混練は分散が円滑に進行すれば良く、温度や機械の回転数を適宜調整して行う事ができる。
【0084】
重合性組成物は、重合性単量体として不飽和カルボン酸エステルを使用しているため、重合前の組成物は粘度が低く、組成物中に軟磁性体を分散させる際に軟磁性体を大量に配合しても粘度上昇が少なく、多量の軟磁性体を配合することが可能になる。このため、得られる成形体の透磁率が向上する。また、マトリックスの形成と、賦形とを同時に行えるため、形状加工性に優れ、種々の形状の電磁波吸収材たとえば電磁波吸収性シートを容易に得ることができる。
【0085】
(成形体)
本発明の成形体は、上記重合性組成物を加熱して塊状重合することにより得られる。塊状重合の温度条件は、熱重合開始剤(B)が作用する温度以上であればよく、使用する熱重合開始剤および重合性単量体の性質に応じて適宜に選択される。不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)を含む重合性組成物においては、単量体成分(A1)の重合により形成される重合体と、不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)とが一体化し、適度な柔軟性と感圧接着性を有するマトリックス相が形成され、このマトリックス相中に軟磁性体(B)が均一分散されてなる。したがって、得られる成形体は、電磁波吸収性、感圧接着性、形状追従性に優れる。
【0086】
(磁性シート)
本発明の重合性組成物を塊状重合してなる成形体は、種々の形態を採りうるが、優れた感圧接着性、形状追従性を有し、種々の被着体に容易に密着して貼付できるためシート状成形体として使用することが特に好ましい。
【0087】
すなわち、本発明の重合性組成物を塊状重合し、かつシート状に成形して得られるシート状成形体は感圧接着性を有するため、移動体通信や無線LAN、高度道路交通システム等において、容易に目的とする被着体に貼り付ける事が出来る。また、軟磁性体の高充填により電磁波吸収性能が向上するため、電子機器内部のノイズ抑制や電磁波を放出する電子機器間の誤作動防止等に用いられる電磁波吸収性シートとして有用である。さらに、本発明の重合性組成物は、前述したように、重合と、成形とを同時に行えるため、シート状成形体を簡便かつ高い生産性で製造することができる。
【0088】
シート状成形体は、上記重合性組成物を熱重合してなる樹脂組成物のみからなるものであってもよく、その場合、機能に応じて単層であっても積層されたものであっても良い。またシート状成形体は、他の支持体と積層してなる複合シートであってもよい。該複合シートは、複数の支持体を有していても良く、また複数のシート状成形体を有していても良い。さらにシート状成形体は、上記重合性組成物を繊維状強化材に含浸、硬化してなる複合シートであってもよい。
【0089】
本発明のシート状成形体の厚さは特に限定されないが、通常、100mm以下、好ましくは50mm以下、より好ましくは10μm〜10mmである。
本発明の重合性組成物を塊状重合して成形体を得る方法に限定はないが、例えば、(a)重合性組成物を支持体上に塗布し、次いで重合する方法、(b)重合性組成物を繊維状強化材に含浸させ、次いで重合する方法、(c)重合性組成物を金型の空間部に注入し、次いで重合する方法などがあげられる。
【0090】
本発明の重合性組成物は粘度が低いので、(a)の方法における塗布は円滑に実施でき、(b)の方法においては繊維状強化材に対して速やかに満遍なく含浸させることができる。(c)の方法における注入は複雑形状の空間部であっても迅速に泡かみを起こさずに行き渡らせることが可能であり、緻密な成形体が得られる。
【0091】
(a)の方法によれば、フィルム状、シート状の成形体が得られる。該成形体の厚みは、通常15mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下である。
支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロンなどの樹脂からなるフィルムや板;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、銀などの金属材料からなるフィルムや板;などが挙げられる。なかでも、金属箔又は樹脂フィルムの使用が好ましい。これら金属箔又は樹脂フィルムの厚みは、作業性などの観点から、通常1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは3〜75μmである。
【0092】
支持体上に本発明の重合性組成物を塗布する方法としては、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法などの公知の塗布方法が挙げられる。
【0093】
支持体上に塗布された重合組成物を必要に応じて乾燥させ、次いで熱重合する。熱重合の際の加熱方法としては、加熱プレート上に支持体に塗布された重合性組成物を載せて加熱する方法、プレス機を用いて加圧しながら加熱(熱プレス)する方法、熱したローラを押圧する方法、加熱炉を用いる方法などが挙げられる。
【0094】
(b)の方法によって得られる樹脂成形体としては、例えば、重合性組成物が繊維状強化材のすき間に充填されて成るプリプレグなどが挙げられる。繊維状強化材としては、無機系及び/又は有機系の繊維が使用でき、例えば、ガラス繊維、金属繊維、セラミック繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、アミド繊維、ポリアリレートなどの液晶繊維、などの公知のものが挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。繊維状強化材の形状としては、マット、クロス、不織布などが挙げられる。
【0095】
繊維状強化材に本発明の重合性組成物を含浸させるには、例えば、該重合性組成物の所定量を、繊維状強化材製のクロス、マット等の上に注ぎ、必要に応じてその上に保護フィルムを重ね、上方からローラなどで押圧することにより行うことができる。繊維状強化材に該重合性組成物を含浸させた後に、所定温度に加熱して、含浸物を重合させることにより電磁波吸収性樹脂組成物の含浸したプリプレグを得ることができる。加熱方法としては、例えば、含浸物を支持体上に設置して前記(a)の方法のようにして加熱する方法、予め型内に繊維状強化材をセットしておき、重合性組成物を含浸させてから後記(c)の方法のようにして加熱する方法などが用いられる。
【0096】
(c)の方法によって得られる樹脂成形体の形状は、シート状に限らず種々の成形型により任意に設定できる。例えば、フィルム状、柱状、その他の任意の立体形状などが挙げられる。したがって、この方法によれば、各種の構造体を簡便に製造できる。
成形型の形状、材質、大きさなどは特に制限されない。かかる成形型としては、従来公知の成形型、例えば、割型構造、すなわちコア型とキャビティー型を有する成形型;2枚の板の間にスペーサーを設けた成形型;などを用いることができる。
【0097】
金型の空間部(キャビティー)に本発明の重合性組成物を注入する圧力(射出圧)は、通常0.01〜50MPa、好ましくは0.02〜20MPaである。注入圧力が低すぎると、充填が不十分になり、キャビティー内面に形成された転写面の転写が良好に行われないおそれがあり、注入圧力が高すぎると、成形型は剛性が高いものが必要となり経済的ではない。型締圧力は、通常0.01〜50MPaの範囲内である。
【0098】
空間部に充填された重合性組成物を加熱することによって重合させることができる。重合性組成物の加熱方法としては、成形型に配設された電熱器、スチームなどの加熱手段を利用する方法、成形型を電気炉内で加熱する方法などが挙げられる。
【0099】
上記(a)、(b)及び(c)のいずれの方法においても、重合性組成物を熱重合させるための加熱温度((c)の方法においては金型温度)は、単量体成分(A1)、熱重合開始剤(B)の種類に応じて適宜に選択されるが、通常30〜250℃、好ましくは50〜200℃である。重合時間は適宜選択すればよいが、通常1秒〜120分、好ましくは5秒〜60分、より好ましくは10秒〜30分である。
【0100】
重合反応率は、通常80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。なお、重合反応率は、例えば、得られた重合体を溶剤に溶解して得られた溶液をガスクロマトグラフィーにより分析することで求めることができる。重合がほぼ完全に進行している重合体は、残留モノマーが少なく、臭気の発生が少ない。
【0101】
本発明の積層体は、上記成形体からなる構成層を有し、より具体的には、少なくとも二以上の層を有し、その少なくとも一の層が上記の成形体で形成されている。このような積層体のさらに具体的な例としては、銅箔などの基体材料と、本発明の成形体から形成される構成層を含む積層体があげられる。また、本発明の積層体は、多層積層基板のように、銅箔などの基体材料と、磁性体を含有する樹脂層とが交互に積層されてなる複合材料であってもよい。ここで、磁性体を含有する樹脂層が複数含まれている場合には、それぞれの樹脂層の組成は同一であっても異なっていてもよい。
【0102】
上記基体材料としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔などの金属箔;プリント配線板製造用基板;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)性フィルムや導電性ポリマーフィルム等の樹脂フィルム;ノイズ抑制シート、電波吸収体などが挙げられる。また、基体材料の表面はシラン系カップリング剤、チオール系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、各種接着剤などで処理されていてもよい。
【0103】
積層体を得る方法に格別な制限はなく、本発明の成形体を構成層に含む積層体を得る場合には、たとえば本発明の重合性組成物を用いて得られた成形体を適当の基体材料に重ね合わせて積層体を得てもよく、また成形体同士を重ね合わせて積層体を得てもよい。さらに重合性組成物を適当な基体材料あるいは成形体上に塗工し、該重合性組成物を重合して積層体を得ることもできる。
【0104】
(実施例)
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。実施例中における部及び%は、特に言及がない限り、重量基準である。
なお、重合性組成物及びシート状成形体の各特性の評価法および不飽和カルボン酸エステル共重合体(A2)の分子量測定法は、下記のとおりである。
【0105】
(1) 不飽和カルボン酸エステル共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレン換算で求める。
【0106】
(2) シート状成形体の透磁率
透磁率はネットワークアナライザー(アジレント社製)を用いて、1ターンコイル法にて測定を行った。100MHzの値で以下の基準で評価をした。
A:10以上
B:5以上10未満
C:2以上5未満
D:2未満
【0107】
(3) 重合性組成物の成形加工性
実施例および比較例で調製した重合性組成物を、実施例1に記載の方法でシート化した際の成形加工性を以下の基準で評価した。
A:軟磁性体の分散が容易で重合性組成物のシート化が可能
B:軟磁性体の分散が可能で重合性組成物のシート化が可能
C:軟磁性体の分散が困難で重合性組成物のシート化が困難
D:重合性組成物のシート化が不能
【0108】
(4) シート状成形体の室温接着力
実施例および比較例で調製したシート状成形体を切断して得た25mm×125mmの試験片をアルミ板に重ね、質量2kgの圧着ローラを用いて圧着させた後、1時間放置する。このサンプルを室温設定した恒温槽内にセットし、引張速度50mm/分で90度方向の最大接着強度を測定する。
【0109】
(5) シート状成形体の形状追従性
実施例および比較例で調製したシート状成形体を切断して得た50mm×100mmの試験片上にガラス板を載せ、そのガラス板に2kPaの応力を30秒かける。応力を取り除き1日間状態調整した後、ガラス面に密着している面積の割合を測定し、以下の基準で評価した。
A:密着している割合が70%以上
B:密着している割合が50%以上70%未満
C:密着している割合が30%以上50%未満
D:密着している割合が30%未満
【0110】
(実施例1)
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル94%とアクリル酸6%とからなる単量体成分100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のあるアクリル酸エステル重合体(A2)を得た。重合体のMwは200,000、Mw/Mnは3.1であった。
【0111】
密閉式ホバートミキサー容器に、得られたアクリル酸エステル重合体(A2)20部と、メタクリル酸2%、アクリル酸2−エチルヘキシル98%とからなる単量体成分(A1)80部、及びペンタエリスリトールトリアクリレート(以下、「PETA」と略称する。)0.45部、熱重合開始剤(B)として1,6ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン[1分間半減期温度は150℃である。]1.6部、並びに軟磁性体(C)として軟磁性フェライトであるNi−Znフェライト(粒径1.6μm、JFEケミカル製)1000部を一括して投入し、N雰囲気下の条件でホバートミキサー容器内の原料を室温で十分混合した。その後、減圧下において攪拌しながら脱泡し、重合性組成物を得た。縦400mm、横400mm、深さ2mmの金型の底面に離型剤付きポリエステルフィルムを敷いてから、重合性組成物を金型いっぱいに注入し、その上を離型剤付きポリエステルフィルムで覆った。これを金型から取り出し、155℃の熱風炉で30分間、重合を行わせ、両面を離型剤付きポリエステルフィルムで覆われたシート状成形体を得た。
【0112】
シート中の残存単量体量から単量体成分の重合転化率を計算したところ、99.9%であった。
このシート状成形体について各特性を評価した。結果を表1に示す。
【0113】
(実施例2〜4)
軟磁性体(C)(Ni−Znフェライト)の使用量を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にしてシート状成形体を作成した。結果を表1に示す。
【0114】
(実施例5)
軟磁性体(C)として軟磁性フェライトであるMn−Zn系フェライト(商品名:KNS−415、日本フェライト社製)を使用した以外は実施例1と同様にしてシート状成形体を作成した。結果を表1に示す。
【0115】
(実施例6)
メクリル酸エステル重合体(A2)を使用せず、単量体成分(A1)の使用量を100部に、またPETAの使用量を0.56部に変更した以外は実施例1と同様にしてシート状成形体を作成した。結果を表1に示す。
【0116】
(実施例7)
軟磁性体(C)として軟磁性金属であるカルボニル鉄(商品名:SQ、BASF社製)を使用した以外は実施例1と同様にしてシート状成形体を作成した。結果を表1に示す。
【0117】
(比較例1,2)
軟磁性体(C)(Ni−Znフェライト)の使用量を表1に記載のように変更した以外は実施例1と同様にしてシート状成形体を作成した。結果を表1に示す。
【0118】
(比較例3)
熱重合開始剤である1,6ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサンに代えて、光重合開始剤である2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェン[商品名:イルガキュア651チバガイギー社製]1.6部を使用し、硬化条件としてPETフィルム上における紫外線照射強度が10mW/cm2 となるようにケミカルランプのランプ強度を調節し、10分間紫外線を照射し重合を試みた以外は、実施例1と同様の操作を行った。重合性組成物は十分に重合せず、シートを得ることはできなかった。
【0119】
(比較例4)
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のあるアクリル酸エステル重合体を得た。重合体のMwは200,000、Mw/Mnは3.1であった。
【0120】
密閉式ホバートミキサー容器に、得られたアクリル酸エステル重合体20部と、アクリル酸2−エチルヘキシル100部、及びPETA0.45部、1,6ビス(t−ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン1.6部、並びにNi−Znフェライト1000部を一括して投入し、N雰囲気下の条件でホバートミキサー容器内の原料を室温で十分混合した。その後、減圧下において攪拌しながら脱泡し、重合性組成物を得た。
【0121】
上記で得られた重合性組成物を使用した以外は実施例1と同様にしてシート状成形体を作成した。結果を表1に示す。
【0122】
(比較例5)
反応器に、アクリル酸2−エチルヘキシル100部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.03部及び酢酸エチル700部を入れて均一に溶解し、窒素置換後、80℃で6時間重合反応を行った。重合転化率は97%であった。得られた重合体を減圧乾燥して酢酸エチルを蒸発させ、粘性のあるアクリル酸エステル重合体を得た。重合体のMwは600,000、Mw/Mnは3.1であった。
【0123】
比較例4において使用したアクリル酸エステル重合体(Mw:200,000)に代えて、上記で得られたアクリル酸エステル重合体(Mw:600,000)を使用した以外は、比較例4と同様にしてシート状成形体を作成した。結果を表1に示す。
【0124】
(参考例1)
アクリル酸エステル重合体(A2)の配合量を60部と、単量体成分(A1)の配合量を40部に変更した以外は実施例1と同様にしてシート状成形体を作成した。結果を表1に示す。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和カルボン酸エステル(1a)を含む単量体成分(A1)、
熱重合開始剤(B)、および
軟磁性体(C)を含む重合性組成物であって、
該重合性組成物の全体積に対して15〜80体積%の軟磁性体(C)を含む重合性組成物。
【請求項2】
前記単量体成分(A1)に含まれる不飽和カルボン酸エステル(1a)が、それを重合してなる重合体のガラス転移点温度が−20℃以下を示す1種以上の単量体である請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記単量体成分(A1)が、酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b)をさらに含む請求項1または2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記単量体成分(A1)が、
不飽和カルボン酸エステル(1a):40〜99.9重量%、
酸または酸無水物基を有する不飽和単量体(1b):0.1〜60重量%、および
該(1a)および(1b)と共重合可能な他の単量体(1c):0〜20重量%からなる請求項3に記載の重合性組成物。
【請求項5】
不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)を単量体成分(A1)に対し100重量%以下の量で含む請求項1〜4のいずれかに記載の重合性組成物。
【請求項6】
前記不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)の重量平均分子量が1,000〜1,000,000である請求項5に記載の重合性組成物。
【請求項7】
前記不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)が、
不飽和カルボン酸エステル(2a)を含む単量体成分を重合してなる重合体であって、
該不飽和カルボン酸エステル(2a)が、それを重合してなる重合体のガラス転移点温度が−20℃以下を示す1種以上の単量体であるである請求項5または6に記載の重合性組成物。
【請求項8】
前記不飽和カルボン酸エステル重合体(A2)が、
前記不飽和カルボン酸エステル(2a):40〜99.9重量%、
酸または酸無水物基を有する単量体(2b):0.1〜60重量%、および
該(2a)および(2b)と共重合可能な他の単量体(2c):0〜20重量%を共重合してなる重合体である請求項7に記載の重合性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の重合性組成物を塊状重合することにより得られる成形体。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の重合性組成物を塊状重合し、かつシート状に成形して得られるシート状成形体。
【請求項11】
請求項9または10に記載の成形体を含む積層体。

【公開番号】特開2009−7534(P2009−7534A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172638(P2007−172638)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】