説明

金属リチウム薄膜を有する多層フィルム

【課題】厚さ30μm以下の金属リチウム薄膜が安定して製造され、且つ金属リチウム薄膜の転写が容易な多層フィルムを提供することにある。
【解決手段】金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を有し、更にプラスチック膜の少なくとも片面の表面に金属リチウム薄膜を有し、該金属泊がBe、C、Mg、Al、Si、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Ta、W、Pt及びAuからなる群から選択される金属元素の少なくとも1種を含む多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属リチウム薄膜を有する多層フィルム、該多層フィルムを使用する蓄電デバイス用電極の製造方法、及び該方法により得られる蓄電デバイス用電極に関する。また、本発明は、金属リチウム薄膜の製造方法、該方法により得られる金属リチウム薄膜、及び該金属リチウム薄膜を有する蓄電デバイス用電極に関する。更には、本発明は、上記電極を備えた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に代表される小型携帯機器用の電源、深夜電力貯蔵システム、太陽光発電に基づく家庭用分散型蓄電システム、電気自動車のための蓄電システム等のために、各種の高エネルギー密度電池が精力的に開発されている。特に、リチウムイオン電池は、350 Wh/Lを超える体積エネルギー密度を有していること、金属リチウムを負極として用いるリチウム二次電池と比較して、安全性、サイクル特性等の信頼性が優れていること等の理由から、小型携帯機器用の電源として、その市場が急速に拡大している。リチウムイオン電池は、正極としてLiCoO、LiMn等に代表されるリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極として黒鉛に代表される炭素系材料を使用する。現在、リチウムイオン電池のより一層の高容量化が進められているが、正極酸化物と負極炭素系材料の改良による高容量化はほぼ限界に達し、機器側からの高エネルギー密度に対する要求を満たすことは難しい。また、電動車両の動力源となる蓄電デバイスは、一度に大電流を流すことが必要で、高出力化が要求される。この要求に応えるため、蓄電システムにおいて、高エネルギー密度を特徴とするリチウムイオン電池の高出力化、又は高出力を特徴とする電気二重層キャパシタの高エネルギー密度化の研究が行われている。
【0003】
一方、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスにおいて、活物質に予めリチウムイオンを担持させること(以下、プリドープと呼ぶこともある)により、蓄電デバイスを高容量化及び高電圧化する技術が注目されている。例えば、特許文献1に記載されているポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基体等の高容量材料に対し、このプリドープを適用することによって、その特徴である高容量性を充分に活かした蓄電デバイスの設計が可能となり、上記蓄電デバイスの高エネルギー密度化又は高出力化の要求に対応することができる。このようにプリドープは古くから実用化されている技術であり、例えば、特許文献2には、負極活物質であるポリアセン系骨格構造を含有する不溶不融性基体と熱硬化性樹脂とを含有する成形体又は該成形体の熱処理物にリチウムをプリドープさせた、高電圧且つ高容量な蓄電デバイスが開示されている。
【0004】
プリドープに関しては、予め金属リチウムを担持させた電極を使用して蓄電デバイスに組み込む方法、金属リチウム等を電極成形時に混合する方法等が知られているが、簡便且つ実用的なプリドープ法は、活物質を含有する電極に金属リチウム箔を接触させる方法である。この技術は簡便且つ実用的方法である反面、金属リチウム薄膜の取り扱い等に課題があり、特許文献3には、金属リチウム薄膜を取り扱わなくてもプリドープが可能な方法が提案されているが、表裏面を貫通する非常に微細な貫通孔を備えた正極あるいは負極を必要とするため、その製造は必ずしも容易ではなかった。そのため、金属リチウム薄膜を安定的に製造するとともに、金属リチウム薄膜の取り扱いを容易にすることによりプリドープ法を簡便且つ実用な方法にする必要が強く求められていた。
【0005】
従来の金属リチウム薄膜の製造方法としては、押出、圧延等による方法がある。押出加工による方法では、厚さ100μm以下の均一な厚みの膜を作ることは難しく、しかも、押出加工の金型出口の開口部が薄くなるにつれて、原料リチウムやインゴット中に存在する異物が開口部に詰まるなどの問題が発生するため、安定して厚さ100μm以下の金属リチウム薄膜を作ることはできなかった。圧延法に関しては、例えば特許文献4には、固体重合体組成物の実質的に平滑な表面間でリチウム金属を圧縮的に冷間圧延することにより、その厚みを減じて40μm程度の比較的薄い金属リチウムストリップを製造する方法が開示されている。また、特許文献5には、一対のローラー間隙中にリチウム等の高可鍛性の金属箔をプラスチックベルトとともに通過させて当該金属泊を圧延する方法が開示されている。しかし、圧延法では厚さ30μm以下の金属リチウム薄膜を作ること、及び金属リチウム薄膜の取り扱いが非常に困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59-3806号公報
【特許文献2】特開平3-233860号公報
【特許文献3】特開2008-60028号公報
【特許文献4】特公昭55-122号公報
【特許文献5】特公昭55-41841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように従来の金属リチウム薄膜の製造法である押出法及び圧延法では厚さ30μm以下の金属リチウム薄膜を安定して製造できず、また金属リチウム薄膜の取り扱いが困難であった。
【0008】
厚さ30μm以下の金属リチウム薄膜を安定して製造する方法として、真空中でフィルム基材に気相成長法で金属リチウム薄膜を形成させる方法は知られており、その場合の基材としては、金属箔やプラスチックス・フィルムが用いられることは知られている。
【0009】
一般に、金属や金属酸化物の薄膜を気相成長法により形成する過程で、基材には気化した金属や金属酸化物が凝縮することによって熱が伝達されるため基材の温度が上昇する。金属リチウム薄膜を気相成長法で形成する過程でも、基材には気化したリチウムが凝縮することに伴い、熱が伝達されるため基材の温度が上昇する。金属リチウムを形成させる厚さを数μmないし数十μmとする場合、温度の上昇は相当大きくなる。
【0010】
金属箔を基材として使用する場合には、使用する金属にもよるが一般的に金属箔は十分な耐熱変形性を有しているため、気化したリチウムが凝縮することに伴う熱での変形は起こり難い。しかしながら、金属リチウムの薄膜を気相成長法により金属箔上に形成させると、基材の金属とリチウムとが反応を起こすためリチウムが変質したり、金属箔と金属リチウムとの親和力が強すぎ、転写するときの剥離性が十分でなかったりしたため、プリドープ用の金属リチウム薄膜を形成させることができなかった。
【0011】
他方、ポリプロピレン等のプラスチックス・フィルムを基材として使用する場合には、気化したリチウムが凝縮することに伴う熱による基材の変形・破損が起こり易い。このような変形・破損を起こさないためには、膜形成の速度を抑える必要があり、生産性を大きく阻害していた。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、厚さ30μm以下の金属リチウム薄膜が破れなどの破損がなく安定して製造され、且つ金属リチウム薄膜の転写が容易な多層フィルム、該多層フィルムを使用する蓄電デバイス用電極の製造方法、及び該方法により得られる蓄電デバイス用電極を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、厚さ30μm以下の金属リチウム薄膜を安定して製造でき、且つ金属リチウム薄膜の転写が容易な金属リチウム薄膜の製造方法、該方法により得られる金属リチウム薄膜、及び該金属リチウム薄膜を有する蓄電デバイス用電極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、気相成長法で基材に金属リチウム薄膜を形成させる方法において、金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を積層し、当該面に金属リチウムを形成させることにより、上記目的を達成することができるという知見を得た。発明者らは、さらに検討を加えることにより本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は以下の多層フィルム、蓄電デバイス用電極の製造方法、金属リチウム薄膜の製造方法、金属リチウム薄膜等を提供する。
【0016】
項1.金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を有し、更にプラスチック膜の少なくとも片面の表面に金属リチウム薄膜を有し、該金属泊がBe、C、Mg、Al、Si、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Ta、W、Pt及びAuからなる群から選択される金属元素の少なくとも1種を含む多層フィルム。
【0017】
項2.前記金属泊がAlを含むことを特徴とする、項1に記載の多層フィルム。
【0018】
項3.前記プラスチックス膜がポリオレフィン膜であることを特徴とする、項1又は2に記載の多層フィルム。
【0019】
項4.前記ポリオレフィン膜がポリプロピレン膜であることを特徴とする、項3に記載の多層フィルム。
【0020】
項5.前記ポリオレフィン膜がポリエチレン膜であることを特徴とする、項3に記載の多層フィルム。
【0021】
項6.前記プラスチックス膜が架橋性ポリマー膜であることを特徴とする、項1又は2に記載の多層フィルム。
【0022】
項7.金属リチウム薄膜が担持された蓄電デバイス用電極の製造方法であって、
(A)項1〜6のいずれか一項に記載の多層フィルムの金属リチウム薄膜側の面を蓄電デバイスの電極活物質表面に圧着する工程、及び
(B)多層フィルムから基材を剥離する工程
を有することを特徴とする製造方法。
【0023】
項8.項7に記載の方法により得られる蓄電デバイス用電極。
【0024】
項9.金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を有する多層フィルムのプラスチック膜の少なくとも片面の表面に、気相成長法で金属リチウム薄膜を形成させることを特徴とする金属リチウム薄膜の製造方法であって、該金属泊がBe、C、Mg、Al、Si、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Ta、W、Pt及びAuからなる群から選択される金属元素の少なくとも1種を含む、製造方法。
【0025】
項10.前記金属泊がAlを含むことを特徴とする、項9に記載の方法。
【0026】
項11.前記プラスチックス膜がポリオレフィン膜であることを特徴とする、項9又は10に記載の方法。
【0027】
項12.前記ポリオレフィン膜がポリプロピレン膜であることを特徴とする、項11に記載の方法。
【0028】
項13.前記ポリオレフィン膜がポリエチレン膜であることを特徴とする、項11に記載の方法。
【0029】
項14.前記プラスチックス膜が架橋性ポリマー膜であることを特徴とする、項9又は10に記載の方法。
【0030】
項15.項9〜14にいずれか一項に記載の方法により得られる金属リチウム薄膜。
【0031】
項16.項15に記載の金属リチウム薄膜を有する蓄電デバイス用電極。
【0032】
項17.項8又は16に記載の電極を備えた蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0033】
本発明の金属リチウム薄膜の製造方法によれば、気化した金属や金属酸化物が凝縮することにより伝達される熱による基材の変形及び破損が起こり難く、厚さ30μm以下の金属リチウム薄膜を安定して製造することが可能となる。
【0034】
更に、当該製造方法により得られる本発明の多層フィルムは、基材に坦持された金属リチウム薄膜をリチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタの電極活物質表面に容易に転写することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の多層フィルムの断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る真空蒸着装置の要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0037】
多層フィルム
本発明の多層フィルムは、金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を有し、更にプラスチック膜の少なくとも片面の表面に金属リチウム薄膜を有し、該金属泊がBe、C、Mg、Al、Si、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Ta、W、Pt及びAuからなる群から選択される金属元素の少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0038】
金属箔上にプラスチック膜を形成することにより、基材の変形及び破損、並びに金属リチウムの変質を防ぐのみならず、プリドープ工程での金属リチウム薄膜の活物質への転写性を高めることができる。ここで、本発明における基材とは、上記多層フィルムの金属リチウム薄膜以外の部分である、金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を有するフィルムを示す。
【0039】
本発明の多層フィルムの一例を図1に示す。
【0040】
<金属箔>
本発明における金属箔は、Be、C、Mg、Al、Si、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Ta、W、Pt及びAuからなる群から選択される金属元素の少なくとも1種を含むものである。上記金属元素は、ステンレス鋼などの鋼、青銅、錫鉛などの合金、金属酸化物などの状態で金属箔中に含まれていても良い。箔への加工における圧延加工特性、単位当たりの重量、機械的強度、耐腐食性などを総合した取り扱いの容易さ、原料価格を含めたコストなどを考慮すると、金属箔の材料としてはアルミニウムが最も好適に使用できる。
【0041】
<プラスチック膜>
本発明におけるプラスチック膜の材料は、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されず、各種のプラスチックスが使用可能であるが、気相成長法により金属リチウム薄膜を形成したときにプラスチック膜との何らかの反応に起因して起こる金属リチウムの変質を避けることができる能力に優れていることから、ポリオレフィン系の材料が好ましく、ポリプロピレン及びポリエチレンがより好ましく、二軸延伸ポリプロピレンが特に好ましい。
【0042】
ポリオレフィン系の材料としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン、αオレフィンとエチレンとを共重合させてできたαオレフィン、ホモポリプロピレン、ランダム・ブロック等のエチレンとのコポリマー、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマーなどが挙げられる。
【0043】
ポリプロピレンとしては、二軸延伸されたポリプロピレン(いわゆるOPP)、二軸延伸でないポリプロピレン(いわゆるCPP)などが挙げられ、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムが特に好適である。
【0044】
ポリエチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどが挙げられる。
【0045】
金属箔にポリオレフィン膜を積層するには、押出ラミネート法、ドライラミネート法及びその他ウエットラミネート法、ホットメルトラミネート法などの方法を用いることができる。
【0046】
ドライラミネート法により金属箔とプラスチック膜とを積層するには、アルミニウムなどの金属箔又はプラスチック膜にウレタン樹脂系やエポキシ樹脂系の反応性接着剤溶液を塗布し、溶剤を乾燥させたのち、プラスチック膜又はアルミニウム箔と貼合し、ラミネートした後、一定温度下でエイジングさせる方法が一般的に行われる。
【0047】
押出ラミネート法によりポリエチレン膜を積層するには、金属箔の片面又は両面にポリエチレンを直接ラミネートする、いわゆるポリラミといわれる方法により金属箔の表面に積層することができる。二軸延伸ポリプロピレン膜を金属箔に積層するような場合、ポリプロピレン膜と金属箔との間に溶融したポリエチレンを流し込んで積層する、いわゆるサンドラミ法を用いることができる。
【0048】
本発明におけるプラスチック膜の材料としては、気相成長法により金属リチウム薄膜を形成したときにプラスチック膜との何らかの反応に起因して起こる金属リチウムの変質を避けることができる能力に優れていることから、架橋性ポリマーも好ましい。
【0049】
本発明における架橋性ポリマーとしては、熱により架橋構造を形成するいわゆる熱硬化性樹脂、紫外線等の活性エネルギー線により架橋構造を形成する活性エネルギー線硬化樹脂などを挙げることができ、そのような樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、これらの樹脂の2種以上を組み合わせた樹脂などを挙げることができる。
【0050】
本発明におけるアクリル樹脂としては、熱硬化型と活性エネルギー線硬化型のいずれも使用可能である。熱硬化型アクリル樹脂の例としては、アミノ樹脂とアクリル樹脂が焼付エネルギーにより縮重合反応によって硬化する樹脂などを挙げることができる。活性エネルギー線硬化型アクリル樹脂は、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤、光増感剤、その他成分からなるが、本発明におけるアクリル樹脂に使用されるモノマーの例としては、1,4-ブタンジオールジア(メタ)クリレート、1,4-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート類、及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能以上の(メタ)アクリレート類を挙げることができる。
【0051】
本発明におけるアクリル樹脂に使用されるオリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート類、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類などを挙げることができる。
【0052】
また、ポリエステルアクリレート類のポリエステル部分の例としては、フタル酸やアジピン酸等の二塩基酸とグリコールの縮合物、カプロラクトンの開環重合によって得られたポリオールにアクリル酸を反応させたものなどを挙げることができる。エポキシアクリレート類の例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック型のものなどさまざまな分子量のものを挙げることができる。ウレタンアクリレート類に使用されるヒドロキシアクリレートとしては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどを挙げることができる。また、ウレタンアクリレート類に使用されるイソシアネートとしては、脂肪族や脂環族ジイソシアネート、それらの3量体であるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0053】
アクリル系活性エネルギー線硬化樹脂の例としては、アクリレート系の官能基を有するものが適当であり、塗膜の硬度、耐熱性、耐溶剤性、耐擦傷性などを考慮すると、高い架橋密度の構造とすることが好ましく、限定されないが、たとえば2官能以上のアクリレートモノマー、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどを含有するものを例示することができる。
【0054】
なお、上記において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタアクリレートの両者を意味する。
【0055】
上記の活性エネルギー線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエートなどや、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチリルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィンなどを単独又は混合物として用いることが好ましい。光重合開始剤や光増感剤の添加量は、一般に、活性エネルギー線硬硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。架橋性ポリマー膜を形成させるための塗料組成物には、上記以外のシラン化合物、溶媒、硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤等の無機、有機系の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0056】
本発明におけるエポキシ樹脂としては、エポキシ基を2個以上もつポリマーで、ビスフェノール類やノボラックなどと、エピクロロヒドリンとの縮合反応により得られるものをその代表として挙げることができる。このほかに、エポキシノボラック樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂なども挙げることができる。
【0057】
また、これらのエポキシ樹脂と反応する硬化剤としては脂肪族ジアミン、ジエチレン・トリアミン、トリエチレン・テトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレン・ジアミン、ジアミノ・ジフェニレン・メタン、ジアミノ・ジフェニル・スルフォンなどの芳香族ジアミンなどのアミン化合物を使用することができる。また、硬化剤として、メチル・ナジック酸無水物、ヘキサヒドロ酸無水物、ピロメリット酸無水物などの酸無水物も使用することができる。これらのエポキシ樹脂と硬化剤としてのアミンや酸無水物とが反応してできた架橋性ポリマーが有効に使用することができる。
【0058】
本発明におけるアミノ樹脂としては、尿素樹脂やメラミン樹脂のようなアミノ基を有する化合物とホルマリンを縮合重合して作られる架橋性ポリマーのことを指す。本発明におけるメラミン樹脂の代表としては、メラミンとホルムアルデヒドとの反応により得られるメチロールメラミンを挙げることができる。メチロールメラミンを加熱し脱水架橋させることによりメラミン樹脂の架橋性ポリマーとすることができる。
【0059】
本発明におけるシリコーン樹脂としては、2官能性のジオルガノシロキサン、3官能性のオルガノシルセスキオキサン及び4官能性のシリケートを必要に応じた比率に混合し、脱水反応、脱アルコール反応、脱オキシム反応などの縮合反応や脱水素反応、UVやEBなどによる架橋反応、エポキシ、アミンなどの各種官能基による架橋反応などにより架橋させ、硬化させることにより架橋性ポリマーとすることができる。金属箔上にコーティングし、架橋反応をさせることによりシリコーン樹脂の架橋性ポリマーを積層することができる。
【0060】
このような架橋性ポリマーを金属箔上に形成する方法としては、予め形成した架橋薄膜を金属箔の上に張り付ける方法もあるが、架橋性ポリマーは一般に硬く、脆い。そのため、架橋反応をさせる前に、架橋性ポリマーを形成する組成に調合された架橋性モノマーを含むコーティング液を準備し、これをすでに知られている塗装装置、例えば、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、その他のコーターにより金属箔上にコーティングし、溶剤等を含む場合には溶剤等を乾燥した後、熱又は活性エネルギー線により反応硬化させ、架橋性ポリマー膜を積層する方法が好都合である。
【0061】
本発明においては、基材へのプラスチック膜の積層数は何層であっても良い。金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を有するフィルムの構成の具体例としては、金属箔の片面又は両面にポリオレフィンを積層したもの、金属箔の片面又は両面にポリエチレンなどの接着のための層を介してポリオレフィンフィルムを積層したもの、金属箔の片面又は両面に架橋重合性のポリマーをコートし、重合硬化させて積層したものなどを挙げることができる。
【0062】
本発明における基材の好適な厚さは1〜250μm、好ましくは5〜200μmであり、金属箔の好適な厚さは1〜50μm、好ましくは5〜25μmであり、プラスチック膜の好適な厚さは0.05〜200μm、より好ましくは1〜100μmであるが、基材、金属泊及びプラスチック膜の厚さは当該範囲に限定されない。ここでのプラスチック膜の厚さは、プラスチック膜が金属箔の両面にある場合は一方のプラスチック膜の厚さを示し、プラスチック膜を2層以上積層する場合はすべての層の合計の厚さを示す。
【0063】
基材の厚さが、上記範囲であると、蒸着時や後工程での取り扱いの作業がし難くなることや、強度が弱くなり、蒸着工程での安定性に欠けるということが無い。また、基材の厚さが上記範囲であると、プラスチック膜を積層する工程における制約も受けない。
【0064】
<金属リチウム薄膜>
本発明の金属リチウム薄膜は、リチウム又はリチウム合金のいずれにより形成されていても良く、プリドープした場合の効果を阻害しない範囲で、リチウム及びリチウム合金以外の成分を含んでいても良い。リチウム合金としては、例えばLi-Al、Li-Mg、Li-In、Li-Cu、Li-Sn、Li-Si、Li-Pb、Li-Zn、Li-Auを挙げることができる。
【0065】
本発明の金属リチウム薄膜を基材に形成する方法は、金属リチウム薄膜を形成できる方法であればいずれの方法も用いることができるが、好ましくは後述する気相成長法である。
【0066】
本発明における金属リチウム薄膜の厚さは、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されないが、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、最も好ましくは1〜10μmである。ここでの金属リチウム薄膜の厚さは、金属リチウム薄膜がプラスチック膜の両面にある場合は一方の金属リチウム薄膜の厚さを示す。
【0067】
本発明の多層フィルムの層構成の具体例としては、金属箔をM、プラスチック層をP、金属リチウム薄膜をLと表記し、M/P/L、P/M/P/L、及びL/P/M/P/Lが挙げられる。また、本発明の効果を奏する範囲で、これらの層構成に他の層を追加することもできる。
【0068】
金属リチウム薄膜の製造方法
本発明の金属リチウム薄膜の製造方法は、金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を有する基材のプラスチック膜の少なくとも片面の表面に、気相成長法で金属リチウム薄膜を形成させること、及び該金属泊がBe、C、Mg、Al、Si、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Ta、W、Pt及びAuからなる群から選択される金属元素の少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0069】
上記金属箔、プラスチック膜、及び金属リチウム薄膜は、前述のものと同様である。
【0070】
本発明において、気相成長法としては、PVD(Physical Vapor Deposition 物理気相成長法)とCVD(Chemical Vapor Deposition 化学気相成長法)とがある。物理気相成長法には、例えば、真空蒸着(抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、レーザブレーション等)、スパッタリング(2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、ECRスパッタリング、イオンビームスパッタリング、反応性スパッタリング等)、イオンプレーティング(直流又は高周波励起イオンプレーティング、電子ビーム励起イオンプレーティング、クラスターイオンプレーティング、反応性イオンプレーティング等)などがあり、いずれを用いてもよい。化学気相成長法には、たとえば熱CVD、光CVD、プラズマCVD、有機金属CVD(MOCVD)などがあり、いずれを用いてもよい。
【0071】
気相成長法で薄膜を形成させるための真空度は、それぞれの方法において、公知の好適な条件から適宜選択すればよい。
【0072】
真空蒸着で薄膜を形成させるためのリチウム金属の加熱方法については公知の方法、すなわち抵抗加熱法、電子ビーム加熱法、誘導加熱法などの方法から適宜選択すればよい。真空蒸着で薄膜を形成させる場合の条件、例えば、蒸発源の加熱温度、蒸発源と基材との距離、基材を保持するためホルダー及びメインロールの温度、蒸着時間、基材の送り速度などについては、所望の膜厚や希望の生産スピードに応じて、適切に設定することができる。
【0073】
基材への金属リチウム薄膜の形成は、バッチ式でも連続式でも構わないが、生産性を考慮すると連続式が好適である。
【0074】
以下、本発明で使用する真空蒸着装置の実施態様について図面を参照して説明する。図2に示すように、実施の形態に係る真空蒸着装置は、真空チャンバー11と、真空チャンバー11との間で基材16を回収・導入するロードロック室12を備えており、真空チャンバー11およびロードロック室12は真空ポンプにより排気することが出来る。トランスファーロッド13により、基材16が真空チャンバー11とロードロック室12の間を移動出来るように構成されており、真空チャンバー11とロードロック室12はゲートバルブ14により遮断することが出来る。
【0075】
真空チャンバー11内上部には、ロードロック室12からトランスファ−ロッド13により導入された基材16を支持、固定出来る基材設置ホルダー17が備えられている。基材設置ホルダー17は上下、左右への駆動が可能な回転式冶具を備えたステージ上に配置されており、真空チャンバー11内の所定の場所への基材16の移動が行える。
【0076】
真空チャンバー11内には、リチウム又はリチウム合金の原料が入れられた、るつぼ(またはボート)15が配置されており、るつぼ15内の原料を加熱、蒸発させて、基材設置ホルダー17に設置した基材16に、蒸発したリチウム等の粒子を堆積させる構成となっている。
【0077】
次に、図2に基づいて、本発明の実施の形態に係る金属リチウム薄膜の製造方法を説明する。まず、真空チャンバー11及びロードロック室12の排気を行う。真空チャンバー11及びロードロック室12を所定の真空度に排気した後、るつぼ15を加熱する。基材16はあらかじめロードロック室12内のトランスファーロッド13上に用意しておくが、加熱により蒸発したリチウム等の粒子が、るつぼ15の開口部から飛散して、基材16へ蒸着するのを禁止するため、ゲートバルブ14は遮断しておく。
【0078】
るつぼ15の温度を所定の温度に維持した後、ゲートバルブ14を開口し、トランスファーロッド13上の基材16を、ロードロック室12から真空チャンバー11内へ移動させる。基材設置ホルダー17でトランスファーロッド13上の基材16の支持、固定を行った後、トランスファーロッド13を真空チャンバー11からロードロック室12へ移動し、ゲートバルブ14を遮断する。
【0079】
基材設置ホルダー17に設置した基材16を、るつぼ15と対向する位置へ移動させ、所定の時間、その状態を保持することで、リチウム又はリチウム合金の蒸気が基材16上に付着し、固化・堆積して金属リチウム薄膜が形成される。成膜終了後は、ゲートバルブ14を開口し、トランスファーロッド13を介してロードロック室12に基材16を回収した後、ゲートバルブ14を遮断する。
【0080】
蓄電デバイス用電極の製造方法
本発明の金属リチウム薄膜が担持された蓄電デバイス用電極の製造方法は、(A)上記の多層フィルムの金属リチウム薄膜側の面を蓄電デバイスの電極活物質表面に圧着する工程、及び(B)多層フィルムから基材を剥離する工程、を有することを特徴とする。
【0081】
本発明の多層フィルムを使用することで、基材に坦持された金属リチウム薄膜を蓄電デバイスの電極活物質に容易に転写することが可能となる。
【0082】
本発明の多層フィルムの金属リチウム薄膜側の面を蓄電デバイスの電極活物質表面に圧着する方法としては、電極活物質表面に金属リチウム薄膜を接着できる方法であれば特に限定されないが、例えばロール加圧法が挙げられる。
【0083】
蓄電デバイスとしては、例えばリチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタが挙げられ、製造される電極は正極又は負極のいずれに使用されるものであっても良い。電極活物質は、蓄電デバイスの種類や電極が正極又は負極のいずれとして使用されるか等に基づいて、公知のものから適宜選択される。
【0084】
本発明の蓄電デバイス用電極を用いて、公知の方法により蓄電デバイスを構築することができる。例えば、本発明の電極をセパレータを介して対極と積層し、得られたものを外装体で包み、電解液を注入して封止することによりリチウムイオン電池を形成することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
【0086】
実施例1
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示す二軸延伸ポリプロピレン/アルミ箔の構成のアルミ積層-1を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離30mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度450℃、製膜時間180secの条件で、二軸延伸ポリプロピレン表面に金属リチウムを堆積させた。
【0087】
実施例2
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示す二軸延伸ポリプロピレン/アルミ箔の構成のアルミ積層-1を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度450℃、製膜時間30secの条件で、二軸延伸ポリプロピレン表面に金属リチウムを堆積させた。
【0088】
実施例3
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すOPPフィルム/アルミ箔/OPPフィルムの構成のアルミ積層-2を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度478℃、製膜時間10secの条件で、OPPフィルム表面に金属リチウムを堆積させた。
【0089】
実施例4
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すOPPフィルム/アルミ箔/OPPフィルムの構成のアルミ積層-2を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度485℃、製膜時間240secの条件で、OPPフィルム表面に金属リチウムを堆積させた。
【0090】
実施例5
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すLLDPEフィルム/LDPE/アルミ箔/LDPE/ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの構成のアルミ積層-3を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離30mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度443℃、製膜時間30secの条件で、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)表面に金属リチウムを堆積させた。
【0091】
実施例6
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すLLDPEフィルム/LDPE/アルミ箔/LDPE/PETフィルムの構成のアルミ積層-3を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離30mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度470℃、製膜時間10secの条件で、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)表面に金属リチウムを堆積させた。
【0092】
実施例7
厚み12μmのアルミ箔の片面に、荒川化学工業(株)製紫外線硬化型塗料ビームセット577を硬化後の塗膜厚が2〜3μmになるように塗布し60℃で2分乾燥した。次いで高圧水銀ランプを用いて積算光量が500 mJ/cm2となるように紫外線照射を塗布面に行なった。これにより表1に示す架橋アクリルポリマー/アルミ箔が得られた。
【0093】
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、上記で得られた架橋アクリルポリマー/アルミ箔の構成のアルミ積層-4を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度484℃、製膜時間180secの条件で、ハードコート表面に金属リチウムを堆積させた。
【0094】
実施例8
厚み12μmのアルミ箔の片面に、荒川化学工業(株)製紫外線硬化型塗料ビームセット577を硬化後の塗膜厚が2〜3μmになるように塗布し60℃で2分乾燥した。次いで高圧水銀ランプを用いて積算光量が500 mJ/cm2となるように紫外線照射を塗布面に行なった。これにより表1に示す架橋アクリルポリマー/アルミ箔が得られた。
【0095】
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、上記で得られた架橋アクリルポリマー/アルミ箔の構成のアルミ積層-4を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離を40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度483℃、製膜時間10secの条件で、架橋アクリルポリマー表面に金属リチウムを堆積させた。
【0096】
実施例9
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すOPPフィルム/銅箔/OPPフィルムの構成の銅積層-1を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度466℃、製膜時間60secの条件で、OPPフィルム表面に金属リチウムを堆積させた。
【0097】
比較例1
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示す二軸延伸ポリプロピレンフィルムよりなるOPP-1を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度444℃、製膜時間180secの条件で、二軸延伸ポリプロピレンフィルム表面に金属リチウムを堆積させた。
【0098】
比較例2
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すLLDPEフィルムよりなるLLDPE-1を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度443℃、製膜時間30secの条件で、LLDPEフィルム表面に金属リチウムを堆積させた。
【0099】
比較例3
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すLLDPEフィルムよりなるLLDPE-2を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度443℃、製膜時間30secの条件で、LLDPEフィルム表面に金属リチウムを堆積させた。
【0100】
比較例4
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すポリエチレンフィルムよりなるPE-1を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度443℃、製膜時間30secの条件で、ポリエチレンフィルム表面に金属リチウムを堆積させた。
【0101】
比較例5
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すポリイミドフィルムよりなるPI-1を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離100mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度480℃、製膜時間3000secの条件で、ポリイミドフィルム表面に金属リチウムを堆積させた。
【0102】
比較例6
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示す銅箔よりなる銅-1を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離40mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度480℃、製膜時間60secの条件で、銅箔表面に金属リチウムを堆積させた。
【0103】
比較例7
図2の真空蒸着装置(アルバック製)を使用し、真空チャンバー1内の基材設置ホルダー7に、表1に示すアルミ箔よりなるアルミ-1を基材6の位置に設置し、蒸着源と基材6間の距離100mm、真空度1.7×10−3Pa、るつぼ5温度480℃、製膜時間3000secの条件で、アルミ箔表面に金属リチウムを堆積させた。
【0104】
実施例及び比較例に供したフィルムを表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
実施例及び比較例で得られた多層フィルムについて以下の試験を行い、結果を表2に示した。
【0107】
・リチウムと基材との反応
基材にリチウムを蒸着後、リチウム薄膜を目視で確認し、リチウムが黒く変色している場合を×とし、それ以外を○とした。
【0108】
・蒸着後の基材の状況
基材を目視で確認し、基材がリチウム蒸着前の面積と比べて収縮したり、基材に波打ちが発生したり、基材に破れがあった場合を×とし、それ以外を○とした。
【0109】
・転写性(剥離性)
基材へのリチウム蒸着後、蒸着したリチウム表面部分と別に用意した銅箔基材(福田金属箔分工業製)を重ね合わせて、基材のリチウムを堆積させた面の反対面から圧力をかけ、銅箔基材側にリチウムが移動した場合を○とし、移動しなかった場合を×とした。
【0110】
・リチウムの膜厚(μm)
基材へリチウムを蒸着した後、マイクロメーター(ミツトヨ製)で基材とリチウムの総厚みを計測し、予め計測しておいた基材の厚みを引いたものをリチウム薄膜の膜厚とした。
【0111】
【表2】

【0112】
実施例1〜4と比較例1を比較すると、二軸延伸ポリプロピレン層の厚みは実施例1〜4の30μmに対して比較例1が50μmと比較例1の方が厚いにも関わらず、比較例1は基材が変形した。
【0113】
実施例5、6と比較例2を比較すると、LLDPE層の厚みが同じ50μm厚であり、その他の作製条件もほとんど同じであるにも関わらず、比較例2は基材が変形した。比較例3のようにLLDPE層の厚みを100μmに厚くしても基材の変形を防止することはできなかった。
【0114】
実施例7及び8は、プラスチックス層の厚みが比較例1〜4よりも著しく薄い3μmであるにも関わらず、基材が変形しなかった。
【0115】
比較例4は、リチウム層とポリエチレン基材の密着力が高く、転写ができなかった。
【0116】
比較例5及び7は、堆積させたリチウムがポリイミドフィルム又はアルミ箔の基材と反応した。
【0117】
比較例6は、リチウム層とCu基材の密着力が高く、転写ができなかった。
【0118】
上記の結果から、実施例1〜9は「リチウムと基材との反応」、「蒸着後の基材の状況」、「転写性(剥離性)」のすべての試験項目において優れており、金属箔にプラスチック膜を積層して、その上にリチウム金属を堆積させた部材は、プリドープ用の部材として適していることは明確である。
【符号の説明】
【0119】
1 金属箔
2 プラスチック膜
3 金属リチウム薄膜
11 真空チャンバー
12 ロードロック室
13 トランスファーロッド
14 ゲートバルブ
15 るつぼ
16 基材
17 基材設置ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を有し、更にプラスチック膜の少なくとも片面の表面に金属リチウム薄膜を有し、該金属泊がBe、C、Mg、Al、Si、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Ta、W、Pt及びAuからなる群から選択される金属元素の少なくとも1種を含む多層フィルム。
【請求項2】
前記金属泊がAlを含むことを特徴とする、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記プラスチックス膜がポリオレフィン膜であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記ポリオレフィン膜がポリプロピレン膜であることを特徴とする、請求項3に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記ポリオレフィン膜がポリエチレン膜であることを特徴とする、請求項3に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記プラスチックス膜が架橋性ポリマー膜であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多層フィルム。
【請求項7】
金属リチウム薄膜が担持された蓄電デバイス用電極の製造方法であって、
(A)請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層フィルムの金属リチウム薄膜側の面を蓄電デバイスの電極活物質表面に圧着する工程、及び
(B)多層フィルムから基材を剥離する工程
を有することを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法により得られる蓄電デバイス用電極。
【請求項9】
金属箔の少なくとも片面にプラスチック膜を有する基材のプラスチック膜の少なくとも片面の表面に、気相成長法で金属リチウム薄膜を形成させることを特徴とする金属リチウム薄膜の製造方法であって、該金属泊がBe、C、Mg、Al、Si、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ag、In、Sn、Sb、Ta、W、Pt及びAuからなる群から選択される金属元素の少なくとも1種を含む、製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法により得られる金属リチウム薄膜。
【請求項11】
請求項10に記載の金属リチウム薄膜を有する蓄電デバイス用電極。
【請求項12】
請求項8又は11に記載の電極を備えた蓄電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−64336(P2012−64336A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205491(P2010−205491)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(597051757)名阪真空工業株式会社 (15)
【出願人】(390000435)本城金属株式会社 (10)
【Fターム(参考)】