説明

金属膜作製装置及び金属膜作製方法

【課題】成膜される膜厚の均一性が優れた金属膜作製装置及び金属膜作製方法を提供する。
【解決手段】チャンバ1に基板3を設置し、チャンバ1内に配設された金属部材11の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給すると共に、原料ガスのプラズマ15を発生させて、ハロゲンのラジカルを生成し、ハロゲンのラジカルにより、金属部材11をエッチングして、金属部材に含まれる金属成分とハロゲンからなる前駆体16を生成し、金属部材11より低い温度に基板3を制御すると共に、基板3の面内の温度分布を、周縁部で低く、中央部で高くし、基板3に前駆体16を吸着させると共に、吸着された前駆体16をハロゲンのラジカルにより還元して、金属膜を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長法により基板の表面に金属膜を作製する金属膜作製装置及び金属膜作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気相成長法により金属膜、例えば、銅の薄膜を作製する場合、銅・ヘキサフロロアセチルアセトナト・トリメチルビニルシラン等の液体の有機金属錯体を原料として用い、原料を溶媒に溶かし、熱的な反応を利用して気化して基板に成膜を実施している。
【0003】
近年、銅等の金属のターゲット材から塩素ラジカルにより塩化物(前駆体)を生成し、生成された塩化物を還元することで成膜を行う塩素化金属還元法という新しいCVD法が開発されており、金属膜への適用が検討されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−226973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銅膜等の金属膜が適用される電子デバイスの量産化、高密度化に伴い、銅膜等が成膜される基板も大型化されると共に、成膜される銅膜等に要求される条件も厳しいものとなっており、例えば、膜厚の均一性の条件も更に向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、成膜される膜厚の均一性が優れた金属膜作製装置及び金属膜作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る金属膜作製装置は、
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記支持台の流路は、前記支持台の周縁部に設けた複数の第1流路と、前記支持台の中心に設けた1つの第2流路と、前記支持台の上面に平行に放射状に形成され、前記複数の第1流路と前記1つの第2流路とを連通する複数の第3流路とを有し、
前記冷媒供給手段から供給される冷媒が、前記複数の第1流路から前記複数の第3流路を経て、前記1つの第2流路へ流通されることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る金属膜作製装置は、
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記支持台の流路は、前記支持台の周縁部に設けた1つ又は複数の第1流路と、前記支持台の中心に設けた1つの第2流路と、前記支持台の上面に平行に渦巻状に形成され、前記1つ又は複数の第1流路と前記1つの第2流路とを連通する1つ又は複数の第3流路とを有し、
前記冷媒供給手段から供給される冷媒が、前記1つ又は複数の第1流路から前記1つ又は複数の第3流路を経て、前記1つの第2流路へ流通されることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る金属膜作製装置は、
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記吸着台の上面の中央部に凹部を設けたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係る金属膜作製装置は、
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記吸着台の上面の中央部を、周縁部より表面粗さを粗くしたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第5の発明に係る金属膜作製装置は、
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記基板の下方に、前記基板中央部の上方に電磁場を生成する電磁場生成手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決する第6の発明に係る金属膜作製装置は、
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記吸着台の周囲に、前記基板の周囲を囲うリング部材を設け、
前記基板周縁部における前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の滞留時間を長くさせるようにしたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決する第7の発明に係る金属膜作製装置は、
上記第6の発明に係る金属膜作製装置において、
前記リング部材に、内周側から外周側へ貫通する複数の貫通孔を設け、
前前記複数の貫通孔により、前記基板周縁部に滞留する前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体を、前記リング部材の外側へ通過させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決する第8の発明に係る金属膜作製装置は、
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記金属部材と前記基板との間に、中央部の開口面積が大きく、周縁部の開口面積が小さい複数の貫通孔を有し、前記基板に平行な流量分配板を設け、
記基板全面における前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の滞留時間が同等になるように、前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の流れを分配したことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決する第9の発明に係る金属膜作製方法は、
チャンバに基板を設置し、
前記チャンバ内に配設された金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給すると共に、前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成し、
前記ハロゲンのラジカルにより、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成し、
前記金属部材より低い温度に前記基板を制御すると共に、前記基板の面内の温度分布を、周縁部で低く、中央部で高くし、
前記基板に前記前駆体を吸着させると共に、吸着された前記前駆体を前記ハロゲンのラジカルにより還元して、金属膜を作製することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決する第10の発明に係る金属膜作製方法は、
上記第9の発明に係る金属膜作製方法において、
前記基板を吸着する吸着台が固着された支持台の内部を流通する冷媒を、前記支持台の上面近傍で、前記支持台の外周側から前記支持台の中心へ流通させて、前記基板の面内の温度分布を、周縁部で低く、中央部で高くすることを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決する第11の発明に係る金属膜作製方法は、
上記第9の発明に係る金属膜作製方法において、
前記基板を吸着する吸着台の上面の中央部に、前記基板との熱伝導率を低下させる間隙を設けて、前記基板の面内の温度分布を、周縁部で低く、中央部で高くすることを特徴とする。
【0018】
上記課題を解決する第12の発明に係る金属膜作製方法は、
チャンバに基板を設置し、
前記チャンバ内に配設された金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給すると共に、前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成し、
前記ハロゲンのラジカルにより、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成し、
前記基板の中央部の上方に電磁場を生成して、前記基板の周縁部への前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の流れを強くし、
前記金属部材より低い温度に前記基板を制御して、前記基板に前記前駆体を吸着させると共に、吸着された前記前駆体を前記ハロゲンのラジカルにより還元して、金属膜を作製することを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決する第13の発明に係る金属膜作製方法は、
チャンバに基板を設置し、
前記チャンバ内に配設された金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給すると共に、前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成し、
前記ハロゲンのラジカルにより、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成し、
前記基板の周縁部における前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の滞留時間を長くし、
前記金属部材より低い温度に前記基板を制御し、前記基板に前記前駆体を吸着させると共に、吸着された前記前駆体を前記ハロゲンのラジカルにより還元して、金属膜を作製することを特徴とする。
【0020】
上記課題を解決する第14の発明に係る金属膜作製方法は、
上記第13の発明に係る金属膜作製方法において、
リング部材又は複数の貫通孔を有するリング部材を、前記基板を囲うように配置して、前記基板の周縁部における前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の滞留時間を長くすることを特徴とする。
【0021】
上記課題を解決する第15の発明に係る金属膜作製方法は、
チャンバに基板を設置し、
前記チャンバ内に配設された金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給すると共に、前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成し、
前記ハロゲンのラジカルにより、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成し、
中央部の開口面積が大きく、周縁部の開口面積が小さい複数の貫通孔を有し、前記基板に平行な流量分配板を介して、前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体を前記基板側に供給し、
前記金属部材より低い温度に前記基板を制御し、前記基板に前記前駆体を吸着させると共に、吸着された前記前駆体を前記ハロゲンのラジカルにより還元して、金属膜を作製することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1〜第4、第9〜第11の発明によれば、中央部の基板温度を高くし、基板中央部での還元作用を弱くして、成膜の進行を抑制し、逆に、周縁部の基板温度を低くし、周縁部での還元作用を強くして、周縁部での成膜の進行を促進するので、従来膜厚が厚かった基板中央部での膜厚を薄くし、従来膜厚が薄かった基板周縁部での膜厚を厚くして、成膜の均一性を向上させることができる。
【0023】
第5、第12の発明によれば、電磁場により中央部より基板周縁部に流れる反応種の流れを強くするようにしたので、基板周縁部での成膜反応を多くし、従来膜厚が薄かった基板周縁部での膜厚を厚くして、成膜の均一性を向上させることができる。
【0024】
第6、第7、第13、第14の発明によれば、基板周縁部に流れる反応種の滞留時間を長くするようにしたので、基板周縁部での成膜反応を多くし、従来膜厚が薄かった基板周縁部での膜厚を厚くして、成膜の均一性を向上させることができる。
【0025】
第8、第15の発明によれば、基板全面で反応種の滞留時間が同等になるように、反応種を分配したので、基板全面での成膜反応の量を同等にして、成膜の均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る金属膜作成装置の実施形態の一例(実施例1)を示す概略図である。
【図2】図1に示した支持台の構成を示す図である。
【図3】本発明に係る金属膜作成装置の実施形態の他の一例(実施例2)を示す図である。
【図4】本発明に係る金属膜作成装置の実施形態の他の一例(実施例3)を示す図である。
【図5】本発明に係る金属膜作成装置の実施形態の他の一例(実施例4)を示す図である。
【図6】本発明に係る金属膜作成装置の実施形態の他の一例(実施例5)を示す図である。
【図7】本発明に係る金属膜作成装置の実施形態の他の一例(実施例6)を示す図である。
【図8】本発明に係る金属膜作成装置の実施形態の他の一例(実施例7)を示す図である。
【図9】本発明に係る金属膜作成装置の実施形態の他の一例(実施例8)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明では、塩素化金属還元法を用いて、銅等の金属膜を形成する際、成膜される基板の面内の温度分布、成膜反応に用いられる反応種の流れに着目し、これらを適切に制御できるように構成を工夫することで、成膜の均一性をより優れたものにするものである。特に、塩素化金属還元法を用いて成膜される金属膜は、基板中央部の膜厚が厚く、基板周縁部の膜厚が薄くなる傾向がある。これは、塩素化金属還元法を用いて成膜を行う際、基板の中央部ではエッチング作用より還元作用が強く作用して、成膜が促進されるのに対して、基板の周縁部では、還元作用よりエッチング作用が強く作用して、成膜が抑制されるためと考えられる。従って、成膜される基板の面内の温度分布であれば、中央部の基板温度を高くし、基板中央部での還元作用を弱くして、成膜の進行を抑制し、逆に、周縁部の基板温度を低くし、基板周縁部での還元作用を強くして、基板周縁部での成膜の進行を促進することで、成膜の均一性を向上させることができる。又、成膜反応に用いられる反応種の流れであれば、基板中央部より周縁部に流れる反応種の流れを強くするようにしたり、基板周縁部に流れる反応種の滞留時間を長くするようにしたり、基板全面で反応種の滞留時間を同等にするようにすることで、基板周縁部での成膜反応を多くし、基板周縁部での膜厚を厚くしたり、基板全面での成膜反応の量を同等にしたりして、成膜の均一性を向上させることができる。
【0028】
そこで、本発明に係る金属膜作製装置及び金属膜作製方法の実施形態を、以下に示す図面を用いて、詳細に説明を行う。
【実施例1】
【0029】
本実施例の金属膜作製装置は、図1に示すように、円筒状に形成された絶縁材料製(例えば、セラミックス等)のチャンバ1と、チャンバ1の底部に設けられた円柱状の支持台2と、支持台2上に設けられ、基板3の吸着を行う吸着台4とを有する。吸着台4としては、例えば、静電気力を用いた、所謂、静電チャック等が用いられる。支持台2の内部には、冷媒が流通する流路5が設けられており、冷媒が冷媒供給装置6(冷媒供給手段)から供給される。支持台2は、冷媒供給装置6から供給される冷媒により、所定温度(例えば、基板3が100℃乃至200℃に維持される温度)に制御され、更に、冷媒の流路の配置を工夫することで(後述する図2、図3参照)、支持台2の上面の温度分布、そして、基板3の面内の温度分布を所望の状態へ制御している。なお、冷媒供給装置6に用いられる冷媒としては、上記温度範囲の制御が可能なものであれば、どのような冷媒でもよいが、例えば、高温で(上記温度範囲)の蒸気圧が低く、高温での温度制御に使用可能なパーフルオロポリエーテル等が用いられる。
【0030】
チャンバ1の上方においては、チャンバ1の上面が開口部とされており、開口部が絶縁材料製(例えば、セラミックス製)の円盤状の天井板7によって塞がれている。天井板7の上方には、天井板7の上面と平行な渦巻状のコイルからなるプラズマアンテナ8が設けられており、プラズマアンテナ8には整合器9、電源10が接続される。プラズマアンテナ8、整合器9及び電源10によりプラズマ発生手段が構成されており、整合器9、電源10からプラズマアンテナ8へ高周波(RF)を給電することで、チャンバ1内部のガスをプラズマ化する。なお、天井板7によって塞がれたチャンバ1の内部は、図示しない真空装置により所定の圧力に維持される。
【0031】
更に、チャンバ1の上方においては、チャンバ1の内部の金属部材11の近傍に、ハロゲン含有する原料ガス(例えば、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等により濃度が≦50%、好ましくは10%程度に希釈された塩素(Cl2)ガス)を供給するノズル12が、チャンバ1の筒部に複数設けられており、ノズル12の上方であり、天井板7の下方には、チャンバ1の内壁から延設された複数の棒部材11aを有する金属部材11が設けられている。各ノズル12には、各々流量制御器13が接続されて、原料ガス供給手段として構成されており、制御装置14から制御命令により原料ガスの流量が制御される。又、金属部材11は、複数の棒状の金属製(例えば、銅製)の棒部材11aから構成されており、各棒部材11aは、その先端部が隣接する棒部材11aの先端部と接触することなく、チャンバ1の中心に向かって延びるように、その各基端部をチャンバ1の内壁に固定されている。これにより、各棒部材11aは電気的に独立した構造となり、プラズマアンテナ8からチャンバ1内に入射される電磁界を、遮蔽することがないようにしている。
【0032】
上述した金属膜作製装置では、チャンバ1の内部にノズル12から原料ガスを供給し、プラズマアンテナ8から電磁波をチャンバ1の内部に入射することで、Cl2ガスがイオン化されてCl2ガスプラズマ(原料ガスプラズマ)15が発生する。プラズマアンテナ8の下方には導電体である金属部材11が存在しているが、金属部材11はプラズマアンテナ8の電気の流れ方向に対して不連続な状態で配置されているので、金属部材11と基板3との間、即ち、金属部材11の下側にCl2ガスプラズマ15が安定して発生するようになっている。Cl2ガスプラズマ15によるClラジカルにより、金属部材11にエッチング反応が生じ、前駆体(CuxCly)16が生成される。このとき、金属部材11はCl2ガスプラズマ15により、基板3の温度よりも高い所定温度(例えば、200℃乃至400℃)に維持されている。
【0033】
チャンバ1の内部で生成された前駆体16は、金属部材11よりも低い温度に制御された基板3に運ばれる。基板3に運ばれる前駆体16は基板3に吸着され、更に、吸着された前駆体16が、基板3近傍に供給されたClラジカルによる還元反応によりCuのみとされて、基板3の表面にCu薄膜17が生成される。このとき、反応に関与しないガス及びエッチング生成物は、排気口18から排気される。
【0034】
このときの主な反応は、次式で表すことができる。なお、以下の反応式において、Cl*は、塩素ラジカルを表し、(s)は固体状態、(g)はガス状態、(ad)は吸着状態を表す。なお、前駆体16としては、CuClだけでなく、組成比の異なるCuxClyも生成されるが、ここでは代表的な生成種のみを示して、反応式を簡潔にした。
【0035】
(1)プラズマの解離反応
Cl2→2Cl*
(2)エッチング反応
Cu(s)+Cl*→CuCl(g)
(3)基板への吸着反応
CuCl(g)→CuCl(ad)
(4)成膜反応
CuCl(ad)+Cl*→Cu(s)+Cl2
【0036】
上記反応において、成膜速度は、基板表面近傍に存在する反応種(CuCl、Cl*)の流れの強弱や基板温度の高低等の因子に左右され、当然ながら、基板面内の均一性もこのような因子に左右される。逆に、このような因子を制御することが、優れた均一性とするための重要な点であり、本発明では、このような因子を制御するため、後述するような構成を備えている。
【0037】
なお、上述した金属膜作製装置において、原料ガスとしては、He、Ar等で希釈されたCl2ガスを例に挙げて説明したが、Cl2ガスを単独で用いたり、HClガスを適用することも可能である。HClガスを適用した場合、原料ガスプラズマはHClガスプラズマが生成されるが、金属部材11のエッチングにより生成される前駆体はCuxClyである。従って、原料ガスは塩素を含有するガスであればよく、HClガスとCl2ガスとの混合ガスを用いることも可能である。又、原料ガスに含有されるハロゲンとしては、塩素以外に、フッ素(F)、臭素(Br)及びヨウ素(I)等を適用することが可能である。
【0038】
又、金属部材11の材質も、銅(Cu)に限らず、ハロゲン化物形成金属、好ましくは塩化物形成金属であれば、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)等を用いることが可能である。この場合、前駆体はAg、Au、Pt、Ta、Ti、W等のハロゲン化物(塩化物)となり、基板3の表面に生成される薄膜はAg、Au、Pt、Ta、Ti、W等になる。
【0039】
更に、金属部材11とノズル12との位置関係についても、必ずしも、金属部材11がノズル12の上方に位置する(図1参照)必要はなく、例えば、金属部材11をノズル12の下方に配置してもよい。
【0040】
ここで、図2を用いて、支持台2の構成を説明する。
図2(a)は、側面方向の支持台2の構成を示す図であり、図2(b)は、上面方向の支持台2の構成を示す図である。
【0041】
本実施例の金属膜作製装置において、支持台2の内部には、図2(a)、(b)に示すように、支持台2の周縁部近傍に、支持台2の高さ方向に沿って形成された複数の流路5a(第1流路)と、支持台2の中心に、支持台2の高さ方向に沿って形成された1つの流路5b(第2流路)と、支持台2の上面に平行に放射状に形成され、複数の流路5aと1つの流路5bとを連通させる複数の流路5c(第3流路)とが設けられており、冷媒供給装置6から供給される冷媒は、図2(a)の矢印で示す向きに流動される。つまり、支持台2の上面側において、支持台2の周縁部側の複数の流路5aから冷媒が流入され、流入された冷媒が、複数の流路5cを半径方向に中心に向かって流通され、そして、中央の1つの流路5bから流出される構成である。冷媒供給装置6から供給される冷媒は、冷媒供給装置にて、所定の温度に制御されて支持台2へ供給されるが、冷媒の流量、換言すれば、流路5a〜5cを通過する冷媒の単位時間当たりの冷媒量を、所定流量以下に設定しており、そのため、支持台2の上面側において、周縁部側の温度が低く、中央部の温度が高くなるような、半径方向に変化する温度分布を形成することが可能となる。
【0042】
支持台2の内部に設けた流路5を上記構成とすることで、周縁部側の温度が低く、中央部の温度が高くなるような温度分布を支持台2の上面に付与することなり、その結果、吸着台4を介して保持される基板3にも、同様な温度分布を付与することができる。従って、基板3自体が、周縁部の温度が低く、中央部の温度が高くなるような温度分布を有するので、基板中央部での成膜の進行を抑制し、基板周縁部での成膜の進行を促進して、成膜の均一化をより向上させることができる。
【0043】
上記構成の金属膜作製装置では、Cl2ガスを用いているため、反応効率が大幅に向上して成膜速度が速くなると共に、コストを大幅に減少させることができ、又、基板3を金属部材11よりも低い温度に制御しているため、塩素等の不純物の残留を少なくした高品質なCu薄膜17を生成することができる。そして、これらの利点に加えて、更に、図2に示すような構成により、基板面内の温度分布を制御しているため、均一性の優れた膜厚を成膜することができる。
【実施例2】
【0044】
本実施例の金属膜作製装置は、実施例1において説明した図1の金属膜作製装置において、支持台2を図3に示す支持台20としたものである。従って、支持台20以外の構成は、実施例1と同等であるので、ここでは、支持台20の構成を説明する。
なお、図3は、上面方向の支持台2の構成を示す図である。
【0045】
本実施例の金属膜作製装置において、支持台20の内部には、支持台20の周縁部近傍に、支持台20の高さ方向に沿って形成された1つの流路21a(第1流路)と、支持台20の中心に、支持台20の高さ方向に沿って形成された1つの流路21b(第2流路)と、支持台20の上面に平行に渦巻状に形成され、1つの流路21aと1つの流路21bとを連通させる1つの流路21c(第3流路)とが設けられており、冷媒供給装置6から供給される冷媒は、図3の矢印で示す向きに流動される。つまり、支持台20の上面側において、支持台20の周縁部側の流路21aから冷媒が流入され、流入された冷媒が、渦巻状の流路21cを流路に沿って中心に向かって流通され、そして、中央の流路21bから流出される構成である。従って、実施例1の支持台2と同様に、支持台20の上面側において、周縁部側の温度が低く、中央部の温度が高くなるような、半径方向に変化する温度分布を形成することが可能となる。
【0046】
支持台20の内部に設けた流路21を上記構成とすることで、周縁部側の温度が低く、中央部の温度が高くなるような温度分布を支持台20の上面に付与することなり、その結果、吸着台4を介して保持される基板3にも、同様な温度分布を付与することができる。従って、基板3自体が、周縁部の温度が低く、中央部の温度が高くなるような温度分布を有するので、基板中央部での成膜の進行を抑制し、基板周縁部での成膜の進行を促進して、成膜の均一化をより向上させることができる。
【0047】
なお、本実施例では、流入側の流路21aを1つだけ設けているが、実施例1と同様に、流入側の流路を複数設けるようにしてもよい。
【実施例3】
【0048】
本実施例の金属膜作製装置は、図1の金属膜作製装置において、吸着台4を図4に示す構成としたものである。従って、吸着台4以外の構成は、実施例1と同等であるので、ここでは、吸着台4の構成を説明する。
【0049】
本実施例の金属膜作製装置において、吸着台4には、図4に示すように、基板3と接する吸着台4上面の中央部に、深さの浅い凹部4aを設けたものである。上面から見た凹部4aの形状は矩形でもよいが、望ましくは円形がよい。吸着台4上面の中央部に凹部4aを設けることで、中央部において、吸着台4と基板3との間に間隙を設けることになる。
【0050】
基板3は、吸着台4を介して支持台2により冷却されており、通常、吸着台4は、支持台2による基板3の冷却効率を向上させるために、吸着台4へ基板3を密着させて、接触性を向上させることで、基板3との熱伝導性を向上させている。ところが、本実施例においては、吸着台4に凹部4aを設けることにより、基板3と吸着台4との間に間隙が形成され、基板3の中央部における熱伝導性が低下することになる。
【0051】
吸着台4に中央部に凹部4aを設けた構成とすることで、基板3の中央部での冷却効率を抑制して、周縁部側の温度が低く、中央部の温度が高くなるような温度分布を基板3に付与することなり、その結果、基板中央部での成膜の進行を抑制し、基板周縁部での成膜の進行を促進して、成膜の均一化をより向上させることができる。
【実施例4】
【0052】
本実施例の金属膜作製装置も、図1の金属膜作製装置において、吸着台4を図5に示す構成としたものである。従って、吸着台4以外の構成は、実施例1と同等であるので、ここでも、吸着台4の構成を説明する。
【0053】
本実施例の金属膜作製装置において、吸着台4には、図5に示すように、基板3と接する吸着台4上面の中央部に、表面粗さが周縁部より粗い粗面部4bが設けられている。粗面部4bの形状も矩形でもよいが、望ましくは円形がよい。吸着台4上面の中央部に粗面部4bを設けることで、中央部において、吸着台4と基板3との間に間隙を設けることになる。従って、吸着台4に粗面部4bを設けることにより、実施例3と同様に、基板3と吸着台4との密着性が低下し、基板3の中央部における熱伝導性が低下することになる。
【0054】
吸着台4に粗面部4bを設けた構成とすることで、基板3の中央部での冷却効率を抑制して、周縁部側の温度が低く、中央部の温度が高くなるような温度分布を基板3に付与することなり、その結果、基板中央部での成膜の進行を抑制し、基板周縁部での成膜の進行を促進して、成膜の均一化をより向上させることができる。
【0055】
通常、吸着台4の表面の粗さは、Ra=0.2μm程度に加工されるが、本実施例では、発明者等の知見によると、粗面部4bの表面粗さを、Ra=0.6〜1.0μm程度に加工した場合、所望の結果を得ることができた。
【0056】
なお、吸着台4の表面粗さは、中央部から周縁部への半径方向に、段階的に、粗から密へ変化するように形成するようにしてもよい。
【0057】
又、上述した実施例3、4において、吸着台4下部の支持台としては、実施例1の支持台2、実施例2の支持台20のいずれのものを用いてもよいし、又、上面に温度分布を持たない従来の支持台を用いてもよい。
【実施例5】
【0058】
上記実施例1〜4においては、基板の面内の温度分布を適切に設定することで、成膜の均一性を向上させるものであるが、本実施例を含め、下記実施例6〜8では、成膜反応に用いられる反応種の流れを適切に設定できる構成とすることで、成膜の均一性を向上させるものである。
【0059】
そこで、本実施例の金属膜作製装置を図6を用いて説明を行う。
【0060】
なお、本実施例の金属膜作製装置を含め、下記実施例6〜8の金属膜作製装置は、図1の金属膜作製装置と略同等の構成であるので、重複する説明は省略して、相違する構成について説明をおこなう。
【0061】
本実施例の金属膜作製装置は、基板3の下部中央、具体的には、支持台2の内部の中央部分に、LFアンテナ31(電磁場生成手段)を設けた点が、図1に示した金属膜作製装置と異なる構成である。LFアンテナ31には、図示しない整合器及び電源が接続されており、LFアンテナ31に低周波(LF)を給電することで、基板3の中央部の上方の空間に、略円錐状の電界分布となる電磁場32が形成される。通常、プラズマアンテナ8には、GHzレベルの高周波(RF)が給電されるが、これに対して、LFアンテナ31には、より低周波、例えば、MHz〜KHzレベルの周波数が給電される。
【0062】
上記構成を用いて、基板3の中央部の上方の空間に電磁場32を形成すると、成膜反応に用いられる反応種33(例えば、CuCl、Clのイオン等)は、形成された電磁場32の外周に沿って周囲に分散され、基板3の周縁部への流れがより強くなる。この結果、基板周縁部での成膜反応を多くし、基板周縁部での薄膜化を抑制して、成膜の均一性を向上させることができる。
【0063】
なお、LFアンテナ31の形状としては、形成する電磁場32の形状を考慮して、適切なものが設定される。又、成膜に用いられる反応種33によって、LFアンテナ31の形状、給電する周波数、パワー等が最適に設定される。
【実施例6】
【0064】
図7に示す本実施例の金属膜作製装置も、実施例5と同様に、成膜の均一性を向上させるため、成膜反応に用いられる反応種の流れを適切に設定できる構成としたものであるが、その具体的構成が、実施例5とは大きく相違するものである。
【0065】
具体的には、図7に示すように、基板3の周囲、詳細には、吸着台4の周囲に、基板3の周囲を囲う絶縁材料製(例えば、セラミクス等)のリング状のリング部材41を設けたものである。
【0066】
上記構成とすると、リング部材41により基板3の周縁部に、反応種33の流れの淀みが発生し、基板3の周縁部における反応種33の流速を低下させることになる。この結果、基板3の周縁部での反応種33の滞留時間が長くなり、基板周縁部での成膜反応を多くし、基板周縁部での薄膜化を抑制して、成膜の均一性を向上させることができる。
【実施例7】
【0067】
図8に示す本実施例の金属膜作製装置は、実施例6の金属膜作製装置と略同等の構成のものであり、実施例6と同様に、基板3周縁部の反応種33の滞留時間を長くすることにより、基板3周縁部での薄膜化を抑制して、成膜の均一性を向上させるものである。実施例6の場合には、反応種33の滞留時間が長くなり過ぎると、逆に、基板3周縁部での膜厚が厚くなりすぎる可能性があるため、それを適切に制御しようとした構成が本実施例に示したものである。
【0068】
具体的には、図8に示すように、基板3の周囲、詳細には、吸着台4の周囲に、基板3の周囲を囲う絶縁材料製(例えば、セラミクス等)のリング状の多孔リング部材42(を設け、多孔リング部材42を貫通するように形成された複数の貫通孔42aにより、反応種33が滞留しすぎないように、多孔リング部材42の外側に、反応種33の流れを導くようにしたものである。
【0069】
上記構成とすると、多孔リング部材42により基板3の周縁部に、反応種33の流れの淀みが発生するが、貫通孔42aにより反応種の流れに対する流動抵抗が適切に調整されて、過剰な反応種33は貫通孔42aを通過して、多孔リング部材42の外側へ流れ出し、基板3の周縁部における反応種33の流速を適切に低下させることになる。この結果、基板3の周縁部での反応種33の滞留時間が適切な長さとなり、基板周縁部での成膜反応を適切にし、基板周縁部での薄膜化を抑制して、成膜の均一性を向上させることができる。
【実施例8】
【0070】
図9に示す本実施例の金属膜作製装置も、実施例6、7と同様に、成膜の均一性を向上させるため、成膜反応に用いられる反応種の流れを適切に設定できる構成としたものであるが、本実施例では、基板全面における反応種の滞留時間を同等とすることに着目しており、その具体的構成が、実施例実施例6、7とは大きく相違するものである。
【0071】
具体的には、金属部材11の下方側であり、基板3の上方側に、基板3と平行に、複数の貫通孔43aが設けられた絶縁材料製(例えば、セラミクス等)の円盤状の流量分配板43を設けている。又、複数の貫通孔43aは、中央部で、その開口面積が大きく、周縁部で、その開口面積が小さくなるように形成されている。
【0072】
上記構成とすると、基板3上方の中央部においては、反応種33の流れを多く分配して、基板3の表面に沿った反応種33の流速の周方向変化を低減することができる。この結果、基板3の表面上を、その中央部から周縁部に流れる反応種33の滞留時間が、基板3の半径方向で同等となり、基板3の表面全面において、成膜反応の量を同等にして、成膜の均一性を向上させることができる。
【0073】
なお、流量分配板43は、反応種33が付着しないように、金属部材11と同等の温度、若しくは、少なくとも、基板3より高い温度に制御されている。但し、このような条件であっても、反応種33が付着する可能性はあるため、定期的にクリーニングを行うことが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、主に、塩素化金属還元法を用いて、金属膜を形成する際に適用されるものであるが、必ずしも、塩素化金属還元法だけに限定されるものではなく、他の成膜方法、例えば、CVD法、PVD法等にも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0075】
1 チャンバ
2 支持台
3 基板
3a 凹部
3b 粗面部
4 吸着台
5(5a、5b、5c) 流路
6 冷媒供給装置
7 天井板
8 プラズマアンテナ
9 整合器
10 電源
11 金属部材
12 ノズル
13 流量制御器
14 制御装置
15 プラズマガス
16 前駆体
17 金属膜
18 排気口
21(21a、21b、21c) 流路
31 LFアンテナ
32 電磁場
41 リング部材
42 多孔リング部材
43 流量分配板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記吸着台の上面の中央部に凹部を設けたことを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項2】
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記吸着台の上面の中央部を、周縁部より表面粗さを粗くしたことを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項3】
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記基板の下方に、前記基板中央部の上方に電磁場を生成する電磁場生成手段を設けたことを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項4】
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記吸着台の周囲に、前記基板の周囲を囲うリング部材を設け、
前記基板周縁部における前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の滞留時間を長くさせるようにしたことを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項5】
請求項4に記載の金属膜作製装置において、
前記リング部材に、内周側から外周側へ貫通する複数の貫通孔を設け、
前前記複数の貫通孔により、前記基板周縁部に滞留する前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体を、前記リング部材の外側へ通過させるようにしたことを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項6】
チャンバと、
前記チャンバの底部に設けられ、内部に流路が形成された支持台と、
前記支持台上に固着され、基板が吸着される吸着台と、
前記支持台の流路に接続され、前記流路に所定温度に制御された冷媒を供給する冷媒供給手段と、
前記チャンバの上方に設けられ、前記基板に対向して設けられた金属部材と、
前記金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給する原料ガス供給手段と、
前記チャンバ内部に供給された前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成すると共に、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成するプラズマ発生手段とを備え、
前記金属部材と前記基板との間に、中央部の開口面積が大きく、周縁部の開口面積が小さい複数の貫通孔を有し、前記基板に平行な流量配分板を設け、
記基板全面における前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の滞留時間が同等になるように、前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の流れを分配したことを特徴とする金属膜作製装置。
【請求項7】
チャンバに基板を設置し、
前記チャンバ内に配設された金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給すると共に、前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成し、
前記ハロゲンのラジカルにより、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成し、
前記金属部材より低い温度に前記基板を制御すると共に、前記基板を吸着する吸着台の上面の中央部に、前記基板との熱伝導率を低下させる間隙を設けて、前記基板の面内の温度分布を、周縁部で低く、中央部で高くし、
前記基板に前記前駆体を吸着させると共に、吸着された前記前駆体を前記ハロゲンのラジカルにより還元して、金属膜を作製することを特徴とする金属膜作製方法。
【請求項8】
チャンバに基板を設置し、
前記チャンバ内に配設された金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給すると共に、前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成し、
前記ハロゲンのラジカルにより、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成し、
前記基板の中央部の上方に電磁場を生成して、前記基板の周縁部への前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の流れを強くし、
前記金属部材より低い温度に前記基板を制御して、前記基板に前記前駆体を吸着させると共に、吸着された前記前駆体を前記ハロゲンのラジカルにより還元して、金属膜を作製することを特徴とする金属膜作製方法。
【請求項9】
チャンバに基板を設置し、
前記チャンバ内に配設された金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給すると共に、前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成し、
前記ハロゲンのラジカルにより、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成し、
前記基板の周縁部における前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の滞留時間を長くし、
前記金属部材より低い温度に前記基板を制御し、前記基板に前記前駆体を吸着させると共に、吸着された前記前駆体を前記ハロゲンのラジカルにより還元して、金属膜を作製することを特徴とする金属膜作製方法。
【請求項10】
請求項9に記載の金属膜作製方法において、
リング部材又は複数の貫通孔を有するリング部材を、前記基板を囲うように配置して、前記基板の周縁部における前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体の滞留時間を長くすることを特徴とする金属膜作製方法。
【請求項11】
チャンバに基板を設置し、
前記チャンバ内に配設された金属部材の近傍に、ハロゲンを含有する原料ガスを供給すると共に、前記原料ガスのプラズマを発生させて、前記ハロゲンのラジカルを生成し、
前記ハロゲンのラジカルにより、前記金属部材をエッチングして、前記金属部材に含まれる金属成分と前記ハロゲンからなる前駆体を生成し、
中央部の開口面積が大きく、周縁部の開口面積が小さい複数の貫通孔を有し、前記基板に平行な流量配分板を介して、前記ハロゲンのラジカル及び前記前駆体を前記基板側に供給し、
前記金属部材より低い温度に前記基板を制御し、前記基板に前記前駆体を吸着させると共に、吸着された前記前駆体を前記ハロゲンのラジカルにより還元して、金属膜を作製することを特徴とする金属膜作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−191365(P2009−191365A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68220(P2009−68220)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【分割の表示】特願2004−349285(P2004−349285)の分割
【原出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】