説明

金属蒸着装置および同装置における粉体状担体の撹拌方法

【課題】 粉末状担体の全体に金属ナノ粒子を均等に担持させることができる金属蒸着装置および粉末状担体の撹拌方法を提供すること。
【解決手段】 真空チャンバ11内で容器41を水平な状態とし内部の粉体状アルミナAへ施す例えば100回の真空アーク放電による白金の蒸着と間欠的な次の同様な蒸着との間において、容器41を揺動軸45の回りに第1の方向(例えば右方向)へ揺動させ、傾斜する容器41の底面42上で粉体状アルミナAを容器41の端部の方へ滑落させて撹拌し、容器41の右側の端部が下方の衝突部材を兼ねる衝突検知センサ47によって所定の傾斜角度に達したことが検知されると、直ちに揺動の方向を逆にして容器41を水平にすると同時に、端部の方へ滑落している粉体状アルミナAを容器41の中央側へ跳ね戻し粉体状アルミナAを裏返しにするように撹拌する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉体状担体に金属ナノ粒子を担持させるための金属蒸着装置、および同装置における粉体状担体の撹拌方法に関するものであり、更に詳しくは、粉体状担体の全体に金属ナノ粒子を均等に担持させることができ、かつ形成される金属ナノ粒子を坦持した粉体状担体が灰色を呈し凝集した状態を示すことのない金属蒸着装置および同装置において粉体状担体を収容した容器を揺動させる撹拌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車排ガス浄化用の触媒には、例えば粉末状アルミナを担体とし触媒作用を示すパラジウムを担持させたものが使用されているが、粉末状アルミナにパラジウムを担持させる方法として、粉末状アルミナを水中で撹拌して懸濁させ、そこへ硝酸パラジウムの水溶液を添加した後、蒸発乾固させ、更に焼成する方法が開示されている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、燃料電池には、例えば粉末状のカーボンブラックを担体とし触媒作用を示す白金を担持させたものが使用されているが、カーボンブラックに白金を担持させる方法として、塩化白金酸イオンを含有する水溶液にジチオン酸ナトリウムを添加して、好ましくは過酸化水素を共存させて、白金コロイドを作製し、これにカーボンブラックを加えて、カーボンブラックに白金の超微粒子を担持させた後、白金触媒を担持させたカーボンブラックを濾過、乾燥する方法が開示されている(特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−120265号公報
【特許文献2】特開昭54−92588号公報
【0005】
しかし上記のように、粉末状アルミナを懸濁させた水中に硝酸パラジウムの水溶液を添加して粉末状アルミナにパラジウムを坦持させる方法や、水中に白金の超微粒子が分散された状態の白金コロイドにカーボンブラックの粉末を投入して白金をカーボンブラックに担持させる方法は、パラジウムや白金の中で担体に担持されないものが多くなり易く、使用する貴金属の量が過大になるという問題がある。また、水中で坦持させたものは、触媒活性を有する貴金属ナノ粒子が長期間の使用によって凝集し性能が劣化し易く、その劣化分を考慮して当初に多めに坦持させねばならないという問題もある。その上、現在のところ貴金属は価格が高騰しており、 かつ資源としての量も限られているので、貴金属が有効に利用されない従来の担持方法とは異なる坦持方法が望まれている。
【0006】
これに対し、本発明者等は従来のようなウエット系で貴金属を担体に担持させるのではなく、ドライ系である真空アーク蒸着法によって貴金属を担持させる方法を開発している。すなわち、以下に示すような同軸型真空アーク蒸発源を備えた金属蒸着装置によって貴金属を担体に担持させる方法である。この方法は真空下で担体に貴金属を蒸着させるので担体に対する貴金属ナノ粒子の密着性が優れており経年的な劣化を生じ難い。
【0007】
図7は上記の同軸型真空アーク蒸着源21を備えた金属蒸着装置10を示す断面図である。すなわち、真空チャンバ11の上部に白金を蒸発させる同軸型真空アーク蒸着源21が取り付けられており、真空チャンバ11内の底部には被蒸着材であり担体である粉体状アルミナAを収容し撹拌する容器31が配置されている。また真空チャンバ11の側壁にはバルブを介して真空チャンバ11内を排気するための真空排気系であるロータリポンプ12とターボ分子ポンプ13が取り付けられているほか、図示せずとも、バルブを介して不活性ガス(例えばアルゴンガス)のボンベが取り付けられており、真空チャンバ11内へ所定量の不活性ガスを供給し得るようになっている。
【0008】
同軸型真空アーク蒸着源21は蒸発材料である白金(Pt)からなる円柱状のカソード電極22と、カソード電極22の外周面に接して同軸に設けられたハット形状の絶縁碍子23と、絶縁碍子23のハットの筒状部の外周面に接し、ハットの鍔部に上端を接して同軸に設けられた円筒状のトリガ電極24と、トリガ電極24の外周面から所定の間隔をあけて同軸に設けられた円筒状であり、下端側が真空チャンバ11内へ開口され、上端側がカソード電極22の上端から離隔した位置で閉じられているアノード電極25とからなっている。
【0009】
更にトリガ電極24とカソード電極22との間にはトリガ電源26が設けられており、カソード電極22とアノード電極25との間にはアーク発生用の直流電源27が設けられている。そして、トリガ電源26のプラス端子はトリガ電極24に接続され、マイナス端子は上記直流電源27のマイナス端子と同電位とされてカソード電極22に接続されている。トリガ電源26はパルストランスからなり、入力電圧200V、パルス幅μsec単位のパルス電圧を17倍の3.4kV(数μA)に昇圧して出力する。
【0010】
上述したように、アノード電極25とカソード電極22との間には電圧100V、電流が数Aであるアーク発生用の直流電源27が設けられており、同直流電源27のプラス端子は接地されてグランド電位にあり、アノード電極25に接続されている。そして、アーク発生用の直流電源27と並列に容量8800μFのアーク発生用のコンデンサユニット28が設けられており、コンデンサユニット28の一方の端子は上記直流電源27のプラス端子側に接続され、他方の端子は直流電源27のマイナス端子側に接続されている。なお、コンデンサユニット28は容量2200μF、耐圧100Vのコンデンサが4個並列に接続されているものである。コンデンサユニット28は直流電源27によって随時蓄電されるが、その蓄電に約1秒かかるので、コンデンサユニット28からの放電を繰り返す場合の放電の周期は約1Hzとなる。
【0011】
容器31内の粉体状アルミナAは以下に示すような撹拌手段によって撹拌される。すなわち、真空チャンバ11の下方の外部に設けられた回転駆動源32の回転軸33が真空チャンバ11内へ図示を省略した真空シール機構を介して挿通されており、更に真空チャンバ11内に設けられた固定台34を回転可能に挿通されている。そして、容器31は回転軸33の上端に取り付けられており、回転駆動源32によって回転される。また、固定台34に固定した支柱35に支持されている固定羽根36が容器31の底面に近い深さに位置されており、容器31を回転速度30〜100rpmで回転させることにより、容器31の内部に収容されている粉体状アルミナAが撹拌される。なお、容器31および固定羽根36は共にステンレス製である。
【0012】
続いて、図7に示した金属蒸着装置10を使用して、容器31内の担体である粉体状アルミナAの表面に同軸型真空アーク蒸発源21のカソード電極22の構成材料であり蒸発材料である白金のナノ粒子を担持させる方法について説明する。なお、容器31内に所定量の粉体状アルミナAが収容され、容器31は回転駆動源32によって回転されて撹拌が開始されており、かつロータリポンプ12、続いてターボ分子ポンプ13を起動して真空チャンバ11内が所定の真空度まで真空排気される。その後、所定量のアルゴンガスがボンベから導入されて真空チャンバ11内は真空度10-5Paに維持されており、コンデンサユニット28はアーク発生用の直流電源27によって蓄電されているものとする。その状態で、先ずトリガ電源26からトリガ電極24へ電圧3.4kVのパルス電圧を出力してカソード電極22の下端とトリガ電極24の下端との間の絶縁碍子23の下端面に沿面放電、すなわちトリガ放電を発生させる。
【0013】
そのトリガ放電に誘起されてカソード電極22とアノード電極25との間にアーク放電が発生する。すなわち、コンデンサユニット28に蓄電されている電荷が真空アーク放電し、カソード電極22へ多量のアーク電流(2000A〜5000A)が200μsec〜550μsecの間に流入する。このアーク電流によって、カソード電極22の下端の近傍にはプラズマが形成され、かつカソード電極22を構成している白金は下端面が部分的に融解されて蒸発するが、蒸発した白金は上記プラズマ内を通過することにより電子と白金イオンとに解離される。そしてアーク電流が図7においてカソード電極22を上方へ流れることにより、カソード電極22を中心にして同心円筒状に磁場が形成される。従って、カソード電極22から放出された電子と白金イオンは磁場のローレンツ力を受けるが、電子はローレンツ力によって粉体状アルミナAの方へ飛翔する。また(電荷量/質量)比か小さい原子状の白金イオンは飛翔する電子との間のクーロン力によって、粉体状アルミナAの方へ飛翔し、容器31内で撹拌されている粉体状アルミナAに衝突し付着する。
【0014】
このようにして、粉体状アルミナAの表面に白金ナノ粒子(粒子径1nm〜10nm)を担持させることはできるが、容器31を単に連続回転させるだけでは、粉体状アルミナAの表面に白金ナノ粒子が必ずしも均等に担持されないほか、白色である粉体状アルミナAが白金ナノ粒子の担持の進行につれて灰色を呈し凝集したような状態になるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、金属蒸着装置によって真空チャンバ内の容器に収容した粉末状担体に金属を蒸着させて金属ナノ粒子を担持させるに際し、粉末状担体の全体に金属ナノ粒子を均等に担持させることができ、かつ金属ナノ粒子を担持させた粉末状担体が灰色を呈して凝集したような状態になることのない金属蒸着装置および同装置における粉末状担体の撹拌方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題は請求項1または請求項5の構成によって解決されるが、その解決手段を説明すれば次に示す如くである。
【0017】
請求項1の金属蒸着装置は、真空チャンバと、蒸着材料であり触媒活性を有する金属を成分とするカソード電極、トリガ電極、アノード電極、トリガ電源、およびアーク発生用電源を備えた同軸型真空アーク蒸発源と、その同軸型真空アーク蒸発源と対向して真空チャンバ内に配置され被蒸着体である粉体状担体を収容する皿状の容器と、粉体状担体を撹拌する撹拌手段とを備えた金属蒸着装置であって、上記撹拌手段は容器に設けられた揺動軸の回りに容器を水平な状態から第1の方向および第1の方向とは逆の第2の方向へ揺動させる揺動機構と、容器が水平な状態から第1の方向へ所定角度の傾斜をしたことを検知する第1のセンサと、容器が水平な状態から第2の方向へ所定角度の傾斜をしたことを検知する第2のセンサとを有しており、揺動機構は第1のセンサまたは第2のセンサからの検知信号に基づいて直ちに揺動の方向を逆にして容器を水平な状態にすると共に、第1の方向または第2の方向への揺動によって傾斜された容器の底面上で一方の端部の方へ滑落している粉体状担体を容器の中央側へ跳ね戻して撹拌する金属蒸着装置である。
【0018】
このような金属蒸着装置は、容器を揺動させて傾斜する容器の底面上で粉末状担体を一方の端部の方へ滑落させて粉末状担体を撹拌し、かつ容器が所定の傾斜角度に達したことが第1センサまたは第2センサによって検知されると、直ちに揺動の方向を逆にして容器を水平な状態とし、粉末状担体を容器の一方の端部から容器の中央側へ跳ね戻して撹拌することが可能であるほか、従来の装置における撹拌、すなわち固定羽根によって粉体状担体を連続的に回転する容器の底面へ押圧するような撹拌でないことから、粉末状担体の硬度が高い場合にも、粉体状担体による容器の磨損を大幅に抑制する。
【0019】
請求項2の金属蒸着装置は、第1のセンサまたは第2のセンサが容器の両端部の何れかの衝突を検知する衝突検知センサであり、容器の衝突部材であることを兼ねている金属蒸着装置である。
このような金属蒸着装置は、衝突検知センサによって容器が所定角度に傾斜したことを検知すると共に、容器が衝突部材に衝突することにより受ける衝撃によって、傾斜した容器の底面上での粉体状担体の滑落を助長する。
【0020】
請求項3の金属蒸着装置は、容器が水平状態から第1の方向または第2の方向へ揺動される揺動速度に比して、容器が所定角度に傾斜したことを第1のセンサまたは第2のセンサによって検知されて水平状態とされる速度が高速とされている金属蒸着装置である。
このような金属蒸着装置は、容器が所定角度の傾斜位置から水平な状態とされて、容器の傾斜により一方の端部の方へ滑落している粉体状担体を容器の中央側へ跳ね戻させる撹拌を強化する。
【0021】
請求項4の金属蒸着装置は、容器の底面上に揺動軸と平行に、長さ方向と直角な方向の断面が山型とされた複数本の桟が設けられている金属蒸着装置である。
このような金属蒸着装置は、容器が傾斜されて底面上を滑落する粉体状担体が桟を乗り越えることによって、粉体状担体の撹拌を助長し、かつ桟が障害となって粉体状担体の一部の滑落が阻止されることを回避し得る。
【0022】
請求項5の粉末状担体の撹拌方法は、真空チャンバと、蒸着材料であり触媒活性を有する金属を成分とするカソード電極、トリガ電極、アノード電極、トリガ電源、およびアーク発生用電源を備えた同軸型真空アーク蒸発源と、当該同軸型真空アーク蒸発源と対向して真空チャンバ内に配置され被蒸着体である粉体状担体を収容する皿状の容器と、粉体状担体を撹拌する撹拌手段とを備えた金属蒸着装置における容器内の粉体状担体の撹拌方法であって、容器を水平な状態としての所定回数の真空アーク放電による粉体状担体への金属の蒸着と間欠的な次の同様な蒸着との間において、容器に設けた揺動軸によって容器を水平な状態から揺動軸の回りに第1の方向または第1の方向と逆の第2の方向へ揺動させることにより傾斜する容器の底面上で粉体状担体を容器の一方の端部の方へ滑落させ、かつ容器が所定角度に傾斜されたことをセンサが検知すると、直ちに揺動の方向を逆にして容器を水平な状態にすると共に、一方の端部の方へ滑落している粉体状担体を容器の中央側へ跳ね戻す撹拌方法である。
【0023】
このような粉末状担体の撹拌方法は、容器を揺動させ傾斜する容器の底面上で粉末状担体を容器の一方の端部の方へ滑落させて撹拌し得るほか、容器がの所定の傾斜角度に達したことが検知されると直ちに揺動の方向を逆にして容器を水平な状態とすることにより、容器の一方の端部の方へ滑落している粉末状担体を容器の中央側へ跳ね戻して粉末状担体を裏返しにするように撹拌することができるほか、撹拌が間欠的に行なわれ長時間を要さないこと、粉末状担体を固定羽根で容器の底面へ押し付けて容器を連続的に回転させるような撹拌でないことから、粉末状担体の硬度が高い場合であっても、粉末状担体の撹拌による容器の摩損を大幅に低減させる。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の金属蒸着装置によれば、容器内の粉体状担体を撹拌する手段として、容器に設けられた揺動軸によって容器を水平とした状態から揺動軸の回りに第1の方向または第1の方向とは逆の第2の方向へ揺動させる揺動機構と、容器が水平な状態から第1の方向へ所定の角度に傾斜したことを検知する第1のセンサおよび第2の方向へ所定の角度に傾斜したことを検知する第2のセンサとを有しており、揺動機構は第1のセンサまたは第2のセンサによって容器が所定の角度に達したことが検知されると、直ちに揺動の方向を逆にし、容器を水平な状態にすると共に、第1の方向または第2の方向への揺動によって傾斜された容器の底面上で一方の端部の方へ滑落している粉体状担体を容器の中央側へ跳ね戻して撹拌するので、粉体状担体の全体に金属ナノ粒子を均等に担持させる。また撹拌を間欠的に行い撹拌時間が短いので、粉末状担体の硬度が高い場合にも、金属ナノ粒子を担持させた粉体状担体に対する容器の摩損粉による汚染を大幅に低減させる。
【0025】
請求項2の金属蒸着装置によれば、容器が衝突部材に衝突した時点で衝撃を受けて傾斜した底面上での粉体状担体の滑落が助長され、かつ容器が所定角度に傾斜したことを衝突検知センサによって検知されて直ちに揺動の方向が逆にされ、容器は水平な状態に戻され容器の端部に滑落している粉体状担体は容器の中央側へ跳ね戻されるので、粉体状担体を十分に効率的に撹拌することを可能ならしめる。
【0026】
請求項3の金属蒸着装置によれば、容器が水平な状態から第1の方向または第2の方向へ揺動される揺動速度に比して、容器が所定角度に傾斜したことを第1のセンサまたは第2のセンサによって検知されて水平な状態とされる速度が高速とされているので、容器が所定角度の傾斜位置から水平な状態位置とされて、容器の傾斜により一方の端部の方へ滑落している粉体状担体を容器の中央側へ跳ね戻させることによる撹拌の度を高め、粉体状担体による金属ナノ粒子の担持の均等性を向上させる。
【0027】
請求項4の金属蒸着装置によれば、容器の底面上に長さ方向と直角な方向の断面を山型とした複数本の桟が揺動軸と平行に設けられているので、滑落する粉末状担体が桟を乗り越える時に粉末状担体の撹拌の度合を高めると共に、桟が障害となって粉末状担体の一部が滑落を阻止されるような問題を発生させない。
【0028】
請求項5の粉末状担体の撹拌方法によれば、金属蒸着装置における真空チャンバ内の容器を水平な状態とし所定回数の真空アーク放電による容器内の粉体状担体への金属の蒸着と間欠的な次の同様な蒸着との間において、容器に設けた揺動軸によって容器を水平な状態から揺動軸の回りに第1の方向または第1の方向と逆の第2の方向へ揺動させることにより傾斜する容器の底面上で粉体状担体を容器の一方の端部の方へ滑落させ、かつ容器が所定角度に傾斜されたことをセンサが検知すると、直ちに揺動の方向を逆にして容器を水平な状態にすると同時に、容器の一方の端部の方へ滑落している粉体状担体を容器の中央側へ跳ね戻すので、粉体状担体は十分に撹拌され、粉体状担体の全体に金属ナノ粒子を均等に担持させることができる。また上記のような撹拌を間欠的に行なうので、撹拌に要する時間が短く、粉末状担体の硬度が高い場合にも、金属ナノ粒子を坦持させた粉体状担体に対する容器の摩損粉による汚染を大幅に低減させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
上述したように本発明の金属蒸着装置は、粉体状担体へ金属を蒸着させる金属蒸着装置および同装置の真空チャンバ内の容器内に収容された粉体状担体の撹拌方法であって、容器を揺動軸によって揺動軸の回りに第1の方向と、第1の方向とは逆の第2の方向へ揺動させる装置であり、容器を揺動させて内部の粉体状担体を撹拌する方法に関するものである。
【0030】
上記の金属蒸着装置は粉体状担体の全体に金属ナノ粒子を均等に担持させるために、粉体状担体を十分に撹拌することが望まれる。粉体状担体の撹拌手段として、従来の金属蒸着装置のように、皿状の容器に粉体状担体を収容し、上方から固定羽根を粉体状担体内へ挿入して容器の底面に近接する深さに位置させて容器を回転させる手段は、固定羽根の下端と容器の底面との間で粉体状担体が押圧されるので、粉体状担体の硬度が高い場合には、通常はステンレス製の容器の底面や固定羽根の下端が摩損され、摩損した微粉末が金属ナノ粒子を担持させた粉体状担体を汚染するので好適な手段とは言い難い。従って、粉体状担体が容器の底面に押圧されない撹拌手段が望まれるが、そのような手段の一つとして、粉体状担体を収容した皿状の容器を揺動軸の回りに揺動させ、傾斜する容器の底面上で粉体状担体を下側となる容器の端部の方へ滑落させて粉体状担体を撹拌する手段を採用し得る。
【0031】
更には、容器を揺動させ、その傾斜する底面上で粉体状担体を滑落させるだけでは、短い時間内で粉体状担体の表層と内層とを十分に反転させるような撹拌を期待することは困難であるから、それに対処するために揺動によって容器が所定の傾斜角度に達すると、直ちに揺動の方向を逆にし、上記の揺動によって容器の端部の方へ滑落している粉体状担体を容器の中央側へ跳ね戻して粉体状担体を裏返すような撹拌をすることが望ましい。
【0032】
また、揺動によって容器の底面上で粉体状担体を滑落させるには、滑落が容易に起こる傾斜角度まで容器の底面を傾斜させることを要するが、その角度は容器底面の摩擦係数と粉体状担体が有する粉体の流動性(例えば粉体の安息角によって定義されるような流動性)によって支配される。容器底面の材質を一定とすると、滑落させるに要する容器の傾斜角度は粉体状担体の種類によって決定される。そして、容器を揺動軸の回りに左右へ揺動させる場合には、容器の底面が所定の傾斜角度に達したことをセンサによって検知して揺動の方向を逆にする。容器底面の傾斜角度を検知するセンサには機械的、電気的、および光学的な各種のセンサを使用し得るが、簡易には例えば容器の端部の接触を検知する接触センサを使用してもよい。そして接触センサが容器の衝突を検知する衝突センサであり、容器の端部が衝突した時に容器へ衝撃を与える衝突部材を兼ねるものであれば、その衝撃によって容器底面上での粉体状担体の滑落を助長することができるので好適である。
【0033】
また、容器の底面上には揺動軸と平行に高さの低い複数本の桟を設けると、傾斜された容器底面上を滑落する粒子状担体は桟を乗り越える時に撹拌が助長されるので、そのような桟の設置は好ましいが、桟の長さ方向と直角な方向の断面形状によっては粒子状担体の一部分の滑落が阻止される場合もあるので、断面を山型の桟とすることが望まれる。
【0034】
また、本発明の粉体状担体の撹拌方法は、金属蒸着装置が有する粉体状担体の撹拌手段を使用する方法であるが、粉体状担体の容器が水平な状態で所定回数の真空アーク放電によって容器内の粉体状担体へ施す金属の蒸着と間欠的な次の同様な蒸着との間において、容器に設けた揺動軸によって揺動軸の回りに第1の方向と第1の方向とは逆の第2の方向とへ揺動させ、傾斜する容器の底面上で粉体状担体を容器の一方の端部の方へ滑落させて撹拌するだけでなく、揺動によって容器が所定の傾斜角度に達したことをセンサが検知すると、直ちに揺動の方向を逆にして容器を水平な状態とすると共に、上記端部の方へ滑落している粉体状担体を容器の中央側へ跳ね戻して粉体状担体を裏返すように撹拌することが望ましい。
【0035】
上記における金属の蒸着時間と粉体状担体の撹拌時間とは、粉体状担体に坦持される金属ナノ粒子の均等度に基づいて適宜設定される。例えば一つの方法は、容器の底面を水平な状態として所定回数の真空アーク放電によって粉体状担体へ金属を蒸着した後に、容器を左右の何れか一方、例えば右方へ揺動させ、傾斜する容器の底面上で粉体状担体を容器の右方の端部の方へ滑落させて、容器が所定の傾斜角度に達したことをセンサが検知すると、直ちに揺動の方向を逆にして容器を水平な状態にすると共に、容器の右方へ滑落している粉体状担体を容器の中央部に跳ね戻させた後、容器内の粉体状担体へ所定回数の真空アーク放電によって金属を蒸着するような金属の蒸着と粉体状担体の撹拌とを繰り返してもよい。
【0036】
また、容器の底面を水平な状態として所定回数の真空アーク放電によって粉体状担体へ金属を蒸着した後に、上記のような容器の揺動を左右の方向へ連続して複数回繰り返した
後に、水平な状態とした容器内の粉体状担体へ所定回数の真空アーク放電によって金属を蒸着するような金属の蒸着と粉体状担体の撹拌とを繰り返してもよい。何れにしても、粉体状担体へ金属ナノ粒子を均等に担持させるという立場からは、粉体状担体を十分に均等に撹拌し得るように、揺動は左右の方向へ交互に行なうことが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、図面を参照し、本発明を実施例によって具体的に説明する。図1は本発明の金属蒸着装置1を示す概略的な断面図である。図7に示した従来の金属蒸着装置10と比較して、容器41とその撹拌手段は異なるが、それら以外の部分は同様であるので、共通する部分には同一の符号を付して、その部分の説明は省略する。
【0038】
図1において、真空チャンバ11の上部に設けられた触媒活性を有する白金を蒸発させる同軸型真空アーク蒸着源21の下端の開口側に対向して、真空チャンバ11内の底部には被蒸着材であり担体である粉体状アルミナAを収容し撹拌するためのステンレス製の容器41が配置されている。すなわち、真空チャンバ11の外壁に固定された揺動源44の揺動軸45が図示を省略した真空シール機構を介して真空チャンバ11内へ挿通されており、容器41は揺動軸45の先端部に設けた台座46に取り付けられている。そして揺動源44が起動されると、容器41は揺動軸45の回りに左右の方向へ揺動されて底面42が傾斜され、粉体状担体Aは傾斜した底面42上を滑落する。そして揺動される容器41の左右の端部の下方には、該端部の下端を衝突させて容器41が所定の傾斜角度に達したことを検知するための衝突検知センサを兼ねる衝突部材47が、図示せずとも、真空チャンバ11の底面に支持されて配置されている。
【0039】
そして、図2は容器41の平面図であり、図3は図2における[3]−[3]線方向の断面図である。すなわち、容器41の底面42上には揺動軸45と平行に4本の桟43が形成されており、それらの桟43は長さ方向と直角な方向の断面が山型とされている。そして、図4は容器41の斜視図であり、台座46および揺動軸45と共に示されている。
【0040】
容器41を水平な状態として、所定回数の真空放電によって容器41内の粉体状アルミナAへ白金が蒸着されると、容器41は揺動軸45の回りに左右何れかの方へ揺動され、傾斜される容器41の底面42上で粉体状アルミナAは容器41の何れか一方の端部の方へ滑落して撹拌される。また、容器41の左右何れかの端部が衝突検知センサを兼ねる衝突部材47に衝突して容器41が所定の傾斜角度に達したことが検知されると、直ちに揺動の方向を逆にして容器41は水平な状態にされると共に、容器41の端部の方へ滑落している粉体状アルミナAは容器41の中央側へ跳ね戻され、粉体状アルミナAは裏返すように撹拌される。その様子を図5によって説明する。
【0041】
図5は容器41内の粉体状アルミナAへの白金の蒸着と粉体状アルミナAの撹拌をステップ毎に示す図である。なお、図5は視覚的な理解が容易であるように、粉体径1μm程度である粉体状アルミナAの径を拡大して示すと共に、粉体状アルミナAの量も少なく図示している。図5の(S−1)は、容器41を水平な状態とし、図1に示す同軸型真空アーク蒸発源21が起動され、所定回数の真空アーク放電による粉体状アルミナAへ白金が蒸着されている様子を示す。白金の蒸着は容器41を水平な状態として開始されるが、所定回数、例えば100回の真空アーク放電(放電の周期が1Hzとして100秒間の放電)による白金の蒸着が終わると、揺動軸45を時計方向に揺動させる。
【0042】
そして(S−2)に示すように、容器41は右方の端部が下になるように揺動される。すなわち、(S−2)では右下がりとなった底面42上で被蒸着材であり担体である粉体状アルミナAは左方から右方の方へ山型の桟43を乗り越えて滑落し撹拌されるが、容器41の右方の端部が衝突検知センサを兼ねる衝突部材47に衝突し所定の傾斜角度に達したことが検知されると、直ちに揺動軸45は揺動の方向を逆の反時計方向とされて容器41は水平な状態に戻される。この間、容器41が衝突部材47に衝突して受ける衝撃により粉体状アルミナAの滑落が促進され、同時に揺動の方向が逆にされることから、容器41の右端部の方へ滑落している粉体状アルミナAは容器41の中央側へ裏返すように跳ね戻される。その様子は中華鍋を片手で持ち、調理材料を奥の方へ寄せてから素早く鍋返しをして調理材料を手前側へ跳ね戻し表裏を反転させる様子と酷似している。
【0043】
(S−3)は容器41が水平な状態とされて跳ね戻された粉体状アルミナAへ白金が蒸着されている様子を示す。すなわち、容器41が水平な状態になると、裏返しするように撹拌された粉体状アルミナAに対して間欠的な次の真空アーク放電による白金の蒸着が行なわれる。そして、所定回数のアーク放電による白金の蒸着が終わると、容器41は揺動軸45によって先の揺動とは逆の反時計方向の左方へ揺動される。(S−4)はその揺動を示す図であるが、(S−2)と同等な図であるので、その説明は省略する。このようにして、容器41は当初の(S−1)から、(S−2)、(S−3)、(S−4)の如く、容器41を水平な状態としての粉体状アルミナAへの白金の蒸着と、容器41の左右の方向への揺動による粉体状アルミナAの撹拌とが繰り返されて、所定量の白金の蒸着が完了する。
【0044】
図6に示す写真A〜Eは、本発明の金属蒸着装置における撹拌手段、および従来の金属蒸着装置における撹拌手段を用いて、粉体状アルミナAに対し真空アーク放電によって白金を蒸着して、白金ナノ粒子を粉体状アルミナAに坦持させた担持品をガラス瓶に保存した状態で比較して示す写真である。
A:比較のために示す蒸着前の粉体状アルミナAであり、純白な粉体である。
B:本発明の金属蒸着装置を使用した実施例によって得られた担持品である。アーク放電のトータル回数は20000回である。担持品はややクリーム色であり、さらさらしている。
C:図7に示す従来の金属蒸着装置による担持品である。容器31を10rpmで連続的に回転させたものであり、アーク放電のトータル回数は20000回である。坦持品は灰色を呈しており、凝集した状態となっている。なお、白金の蒸着を行なわず、粉状アルミナAを存在させた状態で容器31を回転させるだけでも、粉体状アルミナA は灰色を呈し凝集した状態となった。
D:従来の金属蒸着装置による担持品であり、容器31を100rpmで連続的に回転させて7300回のアーク放電を行なったものである。灰色で凝集した状態となった。
E:従来の金属蒸着装置による担持品であり、容器31を100rpmで連続的に回転させて3000回の真空アーク放電を行なったものである。灰色で凝集した状態となった。
【0045】
上記の結果から、従来の金属蒸着装置を使用した場合には、白金を担持させた粉体状アルミナA が灰色を呈し凝集した状態を示す原因として次のようなことが考えられる。 図7の装置において連続的に回転される容器31の底面と固定羽根36との間で粉体状アルミナAはすり潰されるように押圧されるが、アルミナは硬度が高いので、ステンレス製の容器31や固定羽根36が研磨されてステンレスの粉末を生じ、そのステンレスの粉末が担持品に混入するということである。図6のCにおいて説明したように、白金の蒸着を行なわず、容器31内の粉体状アルミナAを撹拌するだけでも、粉体状アルミナA が灰色となり凝集したことは上記の推測の確かさを裏付ける。
【0046】
以上、本発明の粉体状担体の撹拌装置および撹拌方法を実施例によって説明したが、勿論、本発明はこれらに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0047】
例えば実施例においては、蒸着開始時の容器41の底面42が水平な状態での100回の真空アーク放電(放電の周期を1Hzとして100秒間の放電)による白金の蒸着に続いて、容器41を右方へ揺動させる粉体状アルミナAの撹拌、容器41の底面42を水平な状態に戻しての100回の真空アーク放電による白金の蒸着、容器41を左方へ揺動させる粉体状アルミナAの撹拌を繰り返す場合を説明したが、当初の蒸着の後、容器41の右方への揺動と左方への揺動とを交互に例えば100秒間繰り返してから、容器41の底面42を水平な状態に戻して次の100回の真空アーク放電による白金の蒸着を施して、粉体状アルミナAを十分に撹拌するようにしてもよい。勿論、容器41の左右への揺動の時間が100秒間に限定されないことは言うまでもない。
【0048】
また実施例においては、所定回数の真空アーク放電による白金の蒸着の後に、容器41を右方へ揺動させ、次の同様な白金の蒸着の後には容器41を左方へ揺動させて、容器41の揺動の方向を左右交互に変える場合を説明したが、容器41を例えば右方のみへ揺動させるようにしてもよい。
【0049】
また実施例においては、粉体状担体の撹拌手段が設けられている金属蒸着装置として、粉体状担体Aへ所定回数の真空アーク放電によって白金を蒸着する金属蒸着装置1を示したが、本発明の粒子状担体の撹拌手段および撹拌方法は、真空アーク放電による金属蒸着装置以外の金属蒸着装置、例えばCVD方式またはスパッタ方式による金属蒸着装置にも適用することができる。
【0050】
また実施例においては、ステンレス製の容器41内に硬度が高い粉体状アルミナAを収容して撹拌したが、ステンレスが摩損されることを抑制するために、容器41をアルミナ製としてもよく、また鋼製の容器41の内面にアルミナの溶射コーティングを施したものとしてもよい。更には、容器41の底面42上における粉体状アルミナAの滑落を容易化させるように、容器41を4フッ化エチレン系合成樹脂の成形品としてもよく、また鋼製の容器41の内面に4フッ化エチレン系合成樹脂をコーティングしたものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例で使用した金属蒸着装置を示す断面図である。
【図2】図1の金属蒸着装置に使用されている粉体状アルミナAの容器の平面図である。
【図3】図2における[3]−[3]線方向の断面図である。
【図4】図2、図3に示す粉体状アルミナAの容器の斜視図である。
【図5】同粉体状アルミナAの容器の作用を示す図である。
【図6】粉体状アルミナAに対し、本発明の金属蒸着装置、および従来の金属蒸着装置を使用して白金を蒸着して担持させた場合における担持品を比較して示す写真である。
【図7】従来の金属蒸着装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・本発明の金属蒸着装置、 10・・・従来の金属蒸着装置、
11・・・真空チャンバ、 21・・・同軸型真空アーク蒸発源、
31・・・容器、 32・・・回転駆動源、
33・・・回転軸、 36・・・固定羽根、
41・・・容器、 42・・・容器の底面、
43・・・断面が山型の桟、 45・・・揺動軸、
47・・・衝突部材を兼ねる衝突検知センサ、
A・・・・粉体状アルミナ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、蒸着材料であり触媒活性を有する金属を成分とするカソード電極、トリガ電極、アノード電極、トリガ電源、およびアーク発生用電源を備えた同軸型真空アーク蒸発源と、前記同軸型真空アーク蒸発源と対向して前記真空チャンバ内に配置され被蒸着体である粉体状担体を収容する皿状の容器と、前記粉体状担体を撹拌する撹拌手段とを備えた金属蒸着装置であって、前記撹拌手段は前記容器に設けられた揺動軸の回りに前記容器を水平な状態から第1の方向および前記第1の方向とは逆の第2の方向へ揺動させる揺動機構と、前記容器が水平な状態から前記第1の方向へ所定角度の傾斜をしたことを検知する第1のセンサと、前記容器が水平な状態から前記第2の方向へ所定角度の傾斜をしたことを検知する第2のセンサとを有しており、前記揺動機構は前記第1のセンサまたは前記第2のセンサからの検知信号に基づいて直ちに揺動の方向を逆にして前記容器を水平な状態にすると共に、前記第1の方向または前記第2の方向への揺動によって傾斜された前記容器の底面上で一方の端部の方へ滑落している前記粉体状担体を前記容器の中央側へ跳ね戻して撹拌することを特徴とする金属蒸着装置。
【請求項2】
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサが前記容器の両端部の何れかの衝突を検知する衝突検知センサであり、前記容器の衝突部材であることを兼ねている請求項1に記載の金属蒸着装置。
【請求項3】
前記容器が水平な状態から前記第1の方向または前記第2の方向へ揺動される揺動速度に比して、前記容器が前記所定角度に傾斜したことを前記第1のセンサまたは前記第2のセンサによって検知されて水平な状態とされる速度が高速とされている請求項1または請求項2に記載の金属蒸着装置。
【請求項4】
前記容器の底面上に前記揺動軸と平行に、長さ方向と直角な方向の断面が山型とされた複数本の桟が設けられている請求項1から請求項3までの何れかの1項に記載の金属蒸着装置。
【請求項5】
真空チャンバと、蒸着材料であり触媒活性を有する金属を成分とするカソード電極、トリガ電極、アノード電極、トリガ電源、およびアーク発生用電源を備えた同軸型真空アーク蒸発源と、前記同軸型真空アーク蒸発源と対向して前記真空チャンバ内の底部に配置され被蒸着体である粉体状担体を収容する皿状の容器と、前記粉体状担体を撹拌する撹拌手段とを備えた金属蒸着装置における前記容器内の粉体状担体の撹拌方法であって、
前記容器を水平な状態としての所定回数の真空アーク放電による前記粉体状担体への前記金属の蒸着と間欠的な次の同様な蒸着との間において、前記容器に設けた揺動軸によって前記容器を水平な状態から前記揺動軸の回りに第1の方向または前記第1の方向と逆の第2の方向へ揺動させることにより傾斜する前記容器の底面上で前記粉体状担体を一方の端部の方へ滑落させ、かつ前記容器が所定角度に傾斜されたことをセンサが検知すると直ちに揺動の方向を逆にして前記容器を水平な状態にすると共に、前記一方の端部の方へ滑落している前記粉体状担体を前記容器の中央側へ跳ね戻すことを特徴とする粉体状担体の撹拌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−79251(P2009−79251A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248873(P2007−248873)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】