説明

銅メタライズド樹脂及びその製造方法

【課題】150℃程度の高温下に長期間放置しても、絶縁フィルムと銅箔表面との密着強度(ピール強度)が大幅に低下することのない銅メタライズド樹脂を提供する。
【解決手段】絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅または/および銅合金からなる銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂であって、前記銅薄膜層と絶縁樹脂との接合部近傍の銅薄膜層組成が、銅に対し銅以外の少なくとも1種類の金属が1%以上70%以下の比率であることを特徴とする銅メタライズド樹脂、およびその製造方法である。 本発明は、150℃程度の高温下に長期間放置しても、絶縁フィルムと銅含有層との密着強度(ピール強度)が大幅に低下することのない銅メタライズド樹脂、特に微細回路形成および/またはCOF実装に適した銅メタライズド樹脂とその製造方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リジットプリント配線板・フレキシブルプリント配線板(FPC)に使用される銅メタライズド樹脂及びその製造方法に関するもので、特に微細加工および/またはCOF実装に適した銅メタライズド樹脂及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯電話、デジタルカメラ及びさまざまな電気機器は、小型、軽量、薄型化が求められてため、その搭載される電子部品を小型化する動きがあるとともに、電子回路を形成するプリント基板にも工夫が凝らされてきている。
電子回路を形成するための基板には、硬い板状の「リジットプリント基板」と、フィルム状で柔軟、自由に曲げることができる「フレキシブルプリント配線板用基板」がある。
特に、FPC基板は、その柔軟性を生かし、電子部品の隙間や曲面、さらに最近主流の折畳型携帯電話のひんじ部のように屈曲性の要求される箇所で使用することができるため、FPC基板の需要はますます増加してきている。
このFPC基板の材料として使われるのが、ガラスの布や紙にエポキシ樹脂やポリイミドなどをコーティングした絶縁フィルムであり、該基板(層)の上に、エッチング後に回路となる銅箔(導体層)を貼り付けた銅張積層板(CCL=Copper Clad Laminate)がフレキシブル配線板として使用される。
【0003】
このFPCの材料であるCCLを大別すると2タイプある。一つのタイプがあり、絶縁フィルムと銅箔(導体層)を接着剤で貼付けたCCL(通常「3層CCL」といわれている)と、もう一つのタイプが、絶縁フィルムと銅箔(導体層)を直接、接着剤を使わず、加熱加圧すること等により貼り合わせたCCL(通常「2層CCL」といわれている。)である。
「3層CCL」と「2層CCL」を比較すると、製造コストは、3層CCLの方が絶縁フィルム、接着剤等の材料費・ハンドリング性など製造する上で容易なため価格的に安価である。一方、耐熱性、薄膜化、寸法の安定性等の特性は、2層CCLの方が優れ、回路の微細加工化、高密度実装化を受けて、高額ではあるが、薄型化が可能な2層CCLの需要が拡大してきている。
【0004】
また、FPCには多くの電子部品・回路を形成するため、FPCを使用したCOF(IC実装基板は、ICが直接基板上に載せられるところからチップオンフィルム(COF)と呼ばれている。)実装では、銅箔による配線パターンを形成したフィルムを透過する光によってIC位置を検出するため、素材自体の薄さ及び絶縁材料の透明性が要求され、この点からも2層CCLが有利である。
2層CCLの製造法は、絶縁フィルムに電解銅めっき箔または圧延銅箔をラミネート法もしくはキャスティング法によって貼り付けて製造する方法、または絶縁体フィルム上に真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリングの乾式めっき法または無電解めっきを使用して薄膜の下地金属層を設け、その上に電解銅めっきを行い銅層を形成する方法が一般的である。
【0005】
上記の製造方法で材料費的には、電解銅箔は安価であるが、絶縁フィルムに銅箔を貼り付けた際、銅箔表面を粗化していた凹凸が絶縁フィルム上に食い込み、安定性のあるピール強度を保つことができるものの、絶縁体フィルム上の銅導体層をエッチングにより配線部の形成を行うと、十分な配線部間の電気的絶縁性を確保するまでエッチングを行う必要があるため配線部の側面までがエッチングされ(いわゆるサイドエッチングを生じ)、配線部の断面形状が裾広がりの台形になりやすく、ファインに配線部を切ることが難しく、回路の微細加工化を考慮すると表面の凹凸が激しい電解銅箔の使用はあまり適さないものとなっている。したがって、絶縁基板との密着性に影響する銅箔表面の凹凸は確保した上で、できるだけサイドエッチングを起こさないようにするために、電解銅箔の薄箔化が進んできているが、取り扱いなどを考えるとその厚さは9μmまでが現在のところ限界である。銅箔は薄いほどもちろんサイドエッチングはされずらくなるが、9μmでもエッチング時間はやはり長く、微細加工に対して満足した効果までは得られていない。
また、COF実装においては銅箔の表面粗さが粗いとフィルム表面にその形跡を残すこととなり、フィルムの透過度を悪くすることから、銅箔表面の凹凸の粗さも検討の対象として問題視されている。
【0006】
圧延銅箔に関しては、表面の粗さという意味では電解銅箔より表面の凹凸が粗くないことから電解銅箔と比べるとエッチングの処理時間が短くなり、サイドエッチングは多少少ないものの取り扱いの関係上、9μm厚以下の銅箔を使用することは困難なため9μm以上の銅箔を使用せざるを得なく、厚みにおけるエッチング時間は電解銅箔とほぼ同等になりサイドエッチングに対し顕著な改善効果はえられない。
さらには、圧延銅箔はCOF実装においても電解銅箔より表面粗さが小さいことから、絶縁フィルムの表面を荒らす(粗くする)ことがないので、ある程度透過性が改善されるものの、圧延時に生ずる圧延スジの影響で十分満足するには至っていない。
【0007】
また、銅箔の厚みが厚いと、回路を切るときのエッチング処理時間がかかり生産性が悪くなる。このことより微細加工またはCOF実装を行なう場合の銅張積層板を作成するときには、回路を切るときの生産性をも考え、銅層の厚みをより薄くすることが要求されている。この要求を適えるために、銅箔の厚さを薄くする技術として、絶縁体フィルム上に真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリングなどの乾式めっき法または無電解めっきを使用し、薄膜の銅層を直接形成し、その上に電解銅めっきを行い銅層を形成させる方法が通例になっている。しかし、従来のこの方法では、ピール強度がでないなどの問題点が指摘されていたが、近年絶縁フィルム(樹脂)の表面加工により徐々にこの問題点も改善されてきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、無電解めっき法によって作成した後電気めっきを行なった銅張積層板は、150℃程度の高温下に長期間放置すると、初期ピール強度と比較し、ピール強度が大幅に減少する傾向がみられる。また、回路形成工程における液状レジスト塗布後の乾燥時等には100〜150℃程度の熱が加えられ、かつ、形成されたパターンにIC等を実装する際のボンディングや半田付けにおいても250℃程度の熱が加えられることを考慮すると、無電解めっき法で製造で作成した銅張積層板は微細加工および/またはCOF実装に適さず、銅張積層板の耐熱性向上は必要不可欠な問題となってきている。
【0009】
本発明は、従来の事情に鑑み、150℃程度の高温下に長期間放置しても、絶縁樹脂(フィルム)と銅層との密着強度(ピール強度)が大幅に低下することのない各種配線板、特に微細加工および/またはCOF実装に適したFPC用の銅メタライズド樹脂とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点の銅メタライズド樹脂は、絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅または/および銅合金からなる銅薄膜層とからなり、前記銅薄膜層と絶縁樹脂との接合部近傍の銅薄膜層組成が、銅に対し銅以外の少なくとも1種類の金属が1%以上70%以下の比率であることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の第2の観点の銅メタライズド樹脂は、絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅または/および銅合金からなる銅薄膜層とからなり、前記銅薄膜層は、前記絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた第1の銅層と、該第1銅層上に形成した第2の銅層からなり、前記第1の銅層の組成が、銅に対し銅以外の少なくとも1種類の金属が1%以上70%以下の比率で含有されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第3の観点の銅メタライズド樹脂の製造方法は、絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂の製造方法であって、前記銅薄膜層は、絶縁樹脂の表面に銅または/および銅合金の第1の銅層を設け、該第1の銅層上に銅以外の少なくとも1種類の金属からなる金属層を設け、前記銅層と金属層に熱履歴を与えて銅層に金属層を拡散させた導電層とし、該導電層上に銅からなる第2の銅層を設ける工程で形成されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の第4の観点の銅メタライズド樹脂の製造方法は、絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂の製造方法であって、前記絶縁樹脂の表面に銅または/および銅合金の第1の銅層を形成し、該銅層上に銅以外の少なくとも1種類の金属からなる金属層を設け、該金属層上に第2の銅層を形成して未処理銅メタライズド樹脂とし、該未処理銅メタライズド樹脂に与える熱履歴により、前記銅層と前記金属層を拡散させて導電層とすることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第5の観点の銅メタライズド樹脂の製造方法は、絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂の製造方法であって、前記銅薄膜層は、絶縁樹脂の表面に銅以外の少なくとも1種類の金属からなる金属層を設け、該金属層上に銅または/および銅合金からなる第1の銅層を設けて熱履歴を与え、前記第1の銅層と金属層を拡散させて導電層とし、該導電層上に第2の銅層を設ける工程で形成することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第6の観点の銅メタライズド樹脂の製造方法は、絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂の製造方法であって、前記銅薄膜層は、絶縁樹脂の表面に銅以外の少なくとも1種類の金属からなる金属層を設け、該金属層上に銅または/および銅合金の第1の銅層を形成し、該第1の銅層上に第2の銅層を形成して未処理銅メタライズド樹脂とし、該未処理銅メタライズド樹脂に与える熱履歴により、前記第1の銅層と前記金属層を拡散させて導電層とする工程で形成することを特徴とするものである。
【0016】
前記本発明銅メタライズド樹脂の製造方法において、前記導電層の組成が、銅に対し銅以外の少なくとも1種類の金属が1%以上70%以下の比率で含有されていることが好ましい。
また、本発明の銅メタライズド樹脂は、前記導電層の銅以外の成分が、Zn、Sn、Bi、In、Pb、Ni、Coまたはその合金の少なくとも一種類であることが好ましい。
【0017】
本発明の銅メタライズド樹脂は、前記銅薄膜層の表面に粗化処理を施すことが好ましい。
本発明の銅メタライズド樹脂は、前記銅薄膜層の表面にNi、Co、Cr、Zn、Sn、In、Agまたはその合金のうち、少なくとも1種類の金属層が形成されていることが好ましい。
本発明の銅メタライズド樹脂は、前記銅薄膜層の表面に防錆処理が施されていることが好ましい。
本発明の銅メタライズド樹脂は、前記銅薄膜層の表面にシランカップリング処理が施されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、150℃程度の高温下に長期間放置しても、絶縁樹脂と銅薄膜層との密着強度(ピール強度)が大幅に低下することのない銅メタライズド樹脂、特に微細加工および/またはCOF実装に適した銅メタライズド樹脂並びにその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の銅メタライズド樹脂は、絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅または/および銅合金からなる銅薄膜層とからなり、前記銅薄膜層と絶縁樹脂との接合部近傍の銅薄膜層組成が、銅に対し銅以外の少なくとも1種類の金属が1%以上70%以下の比率であることを特徴とするものである。
本発明において、銅薄膜層と絶縁樹脂との接合部近傍(以下絶縁樹脂表面近傍)とは、絶縁樹脂表面から0.1μmまでの範囲にある銅薄膜層の厚さをいい、絶縁樹脂表面近傍の銅薄膜層中に含有する銅以外の少なくとも1種類の金属が銅に含有される割合が1%以上70%以下で存在する部分である。
【0020】
本発明で使用する絶縁樹脂は、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、変形ポリイミド樹脂等を使用することができる。また、これらの絶縁樹脂にガラス繊維強化材等を補強材として介在させた複合物であってもよい。また、フィルム状の絶縁樹脂を選定することも可能である。
【0021】
以下本発明の第一の実施形態につき説明する。
本発明においては上記絶縁樹脂上に、第1の銅層として、無電解めっきにより銅または銅合金を、もしくは銅以外の少なくとも1種類の金属を付着させる。銅または銅合金を付着させる場合の付着厚としては0.01μm〜1μmが好ましい。
【0022】
第1の銅層の付着厚が0.01μm以下ではピンホールが多く、この上に金属被膜を形成させるための電気めっきが不可能になるか健全な膜に成膜できないため不適でなる。また、1μm以上のめっきをすることは処理時間が非常にかかり現実的ではないためである。
無電解めっきの方法は、特に限定するものではないが、例えば、次のような工程で行われる。
(1) アルカリ性過マンガン酸カリウム溶液により、絶縁樹脂表面のマイクロエッチを行う。
(2) 絶縁樹脂表面にパラジウムを吸着させ、触媒化を行う。
(3) 無電解めっきにより、金属析出膜を得る。
【0023】
上記方法で絶縁樹脂上に第1の銅層を形成した後、銅以外の1種類の金属を無電解めっきまたは電解めっきにて付着させる。付着量としては、上記フィルム上に付着させた銅めっきに対し、2%〜150%の量を付着させることが好ましい。
付着量を2〜150%に規定するのは、第1の銅層の2%以下では、拡散させたとき、絶縁樹脂表面近傍の銅層中に含有する銅以外の少なくとも1種類の金属が1%より少なくなるため銅の酸化を防ぐことができなくなり不適であり、また、150%以上に厚くすると銅と拡散しない金属層が表面に形成され、表面の導電性・耐塩酸性などに悪影響を生じさせることから好ましくないためである。
上記、銅または銅合金層の上に付着させる金属は、450℃以下の低融点の金属が好適である。これは、低融点金属は低温領域で銅と拡散するため、拡散のための熱履歴により絶縁樹脂の形状および特性等を変化させる恐れが少ないためである。
低融点金属としてはZn、Sn、Bi、Pb、Inとこれら金属の合金があげられる。特に、Zn、Snは環境的にも問題なく、安価で手に入ることから最適である。
これら金属を付着させるためには、無電解めっき法でも可能であるが、フィルム上にすでに銅層が形成されており通電が可能であることから処理時間およびコストの面から電気めっきが好適である。電気めっきを行なう際、パルスめっきを行うのも均一に電着させる意味では有効な手段である。硫酸浴、塩化浴、シアン浴、アルカリ性浴、ホウフッ化浴、有機酸浴を使用しZnめっき、Zn合金めっき、Snめっき、Sn合金めっきを行うことができる。
【0024】
下記に代表例としてZnめっきの浴組成、電流密度、液温範囲等を示す。
Znめっき浴種および条件:
硫酸亜鉛浴
ZnSO・7HO 5〜400g/l
(NHSO 5〜 50g/l
pH 2.0〜4.5
電流密度 0.1〜25A/dm
浴温 10〜60℃
【0025】
Znめっき浴種および条件:
塩化亜鉛浴
ZnCl 1〜300g/l
NHCl 15〜350g/l
pH 3.5〜6
電流密度 1〜20A/dm
浴温 10〜60℃

【0026】
Znめっき浴種および条件:
シアン浴
Zn(CN) 1〜300g/l
NaCN 20〜200g/l
NaOH 10〜150g/l
pH 3.5〜6
電流密度 1〜20A/dm
浴温 10〜60℃
【0027】
Znめっき浴種および条件:
ジンケート浴 他
ZnOまたはZnSO 1〜200g/l
NaOH 30〜300g/l
電流密度 1〜20A/dm
浴温 10〜60℃
【0028】
銅−亜鉛めっき浴および条件:
シアン浴
CuCN 3〜100g/l
Zn(CN) 1〜 50g/l
NaCN 15〜100g/l
電流密度 0.1〜10A/dm
浴温 15〜60℃
【0029】
亜鉛―Niめっき浴および条件:
塩化浴
ZnCl 10〜200g/l
NiCl・6 HO 30〜200g/l
NHCl 30〜200g/l
NH(28%) 10〜60ml/l
電流密度 0.5〜15A/dm
浴温 10〜60℃
【0030】
Snめっき浴および条件:
硫酸浴
SnSO 5〜100g/l
SO 30〜200g/l
クレゾールスルホン酸 10〜80g/l
ホルムアルデヒド(37%) 0.5〜10ml
電流密度 0.1〜30A/dm
浴温 10〜60℃
【0031】
Snめっき浴および条件:
ホウフッ化浴
Sn(BF 5〜100g/l
HBF 30〜200g/l
ホルムアルデヒド(37%) 0.5〜10ml
電流密度 0.1〜30A/dm
浴温 10〜60℃
【0032】
Snめっき浴および条件:
アルカリ性浴
SnO・3 HO 20〜200g/l
KOH 3〜 50g/l
少量
電流密度 0.1〜30A/dm
浴温 10〜60℃
【0033】
スズ−鉛:
ホウフッ化浴
Pb(BF 5〜100g/l
Sn(BF 3〜50g/l
HBF 30〜200g/l
電流密度 0.1〜30A/dm
浴温 10〜60℃
【0034】
上記に示すような浴・条件にて銅以外の少なくとも1種類の金属をめっきした絶縁樹脂を熱処理して銅に金属を拡散して導電層とし、該導電層上に電解銅めっきを行って銅薄膜層とし、目的の銅メタライズド樹脂とする。
上記説明では、第1の銅層の上に銅以外の少なくとも1種類の金属が含むめっきを行っい、熱処理して導電層を形成した後に電解銅めっきを行いメタライズド樹脂としたが、前記熱処理は、意図的に行うか、または回路基板作成までの熱履歴を利用して目的の銅メタライズド樹脂にしてもいい。基本的には、熱処理条件としては、金属によってことなるが、意図的に熱処理を行なう場合は、温度50℃以上350℃以下の温度で、5分〜3日で熱処理して拡散させ、樹脂表面近傍の銅層中に含有する銅以外の少なくとも1種類の金属が1%以上70%以下含有するようにする。意図的に熱処理を行なわず回路基板作成までの熱履歴を利用する場合は少なくとも、回路基板作成するまでの熱履歴が、上記条件と同等になる熱履歴を与えることが前提となる。
なお、50℃以下では、拡散は徐々に進行するが、時間がかかり生産性があわず、不適となり、また、350℃以上では、絶縁樹脂の性質にもよるが、樹脂の特性等を変化させる可能性がある高温領域であるため、あまり好ましくない。
【0035】
次に、本発明の第二の実施形態につき説明する。
本実施形態においては、絶縁樹脂上に銅以外の少なくとも一種類の金属を無電解めっき法にて付着させる。
絶縁樹脂表面を導通可能にするために無電解めっきにて銅以外の金属、例えばNiおよびNi合金を付着させ、その後無電解銅めっき及び/または電気銅めっきで銅の薄膜層を形成し、上述した熱処理を行い樹脂表面近傍の銅層中に銅以外の少なくとも1種類の金属を1%以上70%以下含有する導電層を形成させ、その上に、電気銅めっきを行って銅薄膜層とし、目的の銅メタライズド樹脂とする。この時、導電層の厚みは0.2μm以下が好ましい。
上記銅または/および銅合金層の形成は、電解めっきで行った方が好ましく浴種としては、硫酸浴またはスルファミン酸浴、ピロリン酸浴及びシアン浴等が上げられ、表面を平滑化する場合には、これらの浴に添加剤を加えてめっきを行なう。
上記銅薄膜層表面には、Cu、若しくはCuとMoの合金粒子、またはCuとNi、Co、FeおよびCrの群から選ばれる少なくとも1種の元素からなる合金粒子、若しくは該合金粒子とV、Mo、及びWの群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物との混合物である微細粗化粒子を表面に付着させる。
【0036】
これら金属粒子、合金粒子、或いは種々粒子の混合物を微細粗化粒子として付着させることにより、銅薄膜層表面に微細粗化粒子が付着し、樹脂との接着強度が補強される。これらの付着金属は、少なくとも0.01mg/dm以上を付着させることが望ましく、0.01mg/dm以下では接着強度を補強する効果が得られない。
上記構成から銅メタライズド樹脂に防錆処理またはシランカップリング処理または防錆処理+シランカップリングを施すとよい。防錆処理として電解クロメート処理等を行うと、該表面に酸化防止層が形成されるので好ましい。形成されるクロム量としては、0.01〜0.2mg/dm程度のクロム酸化物またはその水和物などを付着させることが望ましく、これにより銅箔に優れた防錆機能を付与することができる。またシランカップリング剤については、ビニル系、エポキシ系等、使用する基板樹脂により合わせ選択し使用することが好ましい。
【0037】
以下、実施例により、さらに本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0038】
実施例1:
絶縁樹脂上に、下記無電解めっき条件にて厚み0.2μmの第1の銅層を形成した。
(無電解めっき条件)
硫酸銅 : 5g/l
水酸化ナトリウム : 5g/l
ロッセル塩 : 25g/l
37mol%ホルマリン : 10ml
安定剤 : 微量
温度 : 20℃
上記無電解めっきにより形成した第1の銅層の上に、Zn層を0.07μmの厚さに下記条件にてめっきし、下記熱処理条件で熱処理を行ないZnを銅層内に拡散させ、樹脂表面近傍の銅層中にZnが28%含有する導電層を形成し、その上に8μmになるように電気銅めっき条件(A)で電気銅めっき行ない、第2の銅層を形成し、銅薄膜層とした。
(亜鉛めっき条件)
ZnO 40g/l
NaOH 100g/l
電流密度 3A/dm
浴温 25℃
(熱処理条件)
温度 180℃
時間 2時間
雰囲気 N
(電気銅めっき条件A)
硫酸銅 50g/l
硫酸 100g/l
添加剤 微量
電流密度 30A/dm
【0039】
実施例2:
上記無電解めっき条件にて絶縁樹脂上に、厚み0.2μmの第1の銅層を形成した後、Znを0.04μm厚さに下記条件にてめっきし、その上に8μmになるように電気銅めっきを電気銅めっき条件Aにて行って未処理銅メタライズド樹脂を作成し、該未処理銅メタライズド樹脂を熱処理条件Bにて熱処理を行なって銅層にZnを拡散させ樹脂表面近傍の銅層中にZnを16%含有させた導電層を有する銅薄膜層とした。
(亜鉛めっき条件)
ZnSO・7 HO 200g/l
(NHSO 20g/l
pH 2.5
電流密度 4A/dm
浴温 20℃
(熱処理条件B)
温度 150℃
時間 10時間
雰囲気 N
なお、電気銅めっき条件は、実施例1と同じとした。
【0040】
実施例3:
上記無電解めっき条件にて絶縁樹脂上に、厚み0.24mの第1の銅層を形成した後、Snを0.15μm厚さに下記条件にてめっきし、その上に8μmになるように電気銅めっきを電気銅めっき条件Aで行ない未処理銅メタライズド樹脂を作成し、該未処理銅メタライズド樹脂を熱処理条件Cにて熱処理を行ない、Snを銅層に拡散させ、樹脂表面近傍の銅層中にSnを20%含有する導電層導電層を有する銅薄膜層とした。
(錫めっき条件)
SnSO 50g/l
SO 100g/l
クレゾールスルホン酸 20g/l
ホルムアルデヒド(37%) 5ml
電流密度 5A/dm
浴温 30℃
(熱処理C)
温度 185℃
時間 3時間
雰囲気 N
なお、電気銅めっき条件は、実施例1と同じとした。
【0041】
実施例4:
上記無電解めっき条件にて絶縁樹脂上に、厚み0.15μmの第1の銅層を形成した後、Ni−Zn合金を0.15μmの厚さに下記条件にてめっきし、その上に第2の銅層が8μmになるように電気銅めっきを電気銅めっき条件Aで行い未処理銅メタライズド樹脂を作成し、該未処理銅メタライズド樹脂を熱処理条件Dにて熱処理を行なってNi−Znを銅層に拡散させ、樹脂表面近傍の銅層中にNi−Znを33%含有する導電層導電層を有する銅薄膜層とした。
(Zn―Niめっき浴およびめっき条件)
ZnCl 200g/l
NiCl・6 HO 30g/l
NHCl 100g/l
NH(28%) 50ml/l
電流密度 3A/dm
浴温 40℃
(熱処理D)
温度 195℃
時間 3時間
雰囲気 N
なお、電気銅めっき条件は、実施例1と同じとした。
【0042】
実施例5:
上記無電解めっき条件にて絶縁樹脂上に、厚み0.26μmの第1の銅層を形成した後、Sn‐Pb合金を0.18μm厚さに下記条件にてめっきし、その上に8μmになるように第2の銅層を電気銅めっき条件Aで行い未処理銅メタライズド樹脂を作成し、該未処理銅メタライズド樹脂を熱処理条件Eにて熱処理を行ない、Sn−Pbを銅層に拡散させ、樹脂表面近傍の銅層中にSn‐Pbを56%含有する導電層導電層を有する銅薄膜層とした。
(Sn‐Pbめっき浴およびめっき条件)
市販のSn‐Pb有機酸浴を使用
電流密度 10A/dm
浴温 30℃
(熱処理条件E)
温度 195℃
時間 3時間
雰囲気 N
なお、電気銅めっき条件は、実施例1と同じとした。
【0043】
実施例6:
上記無電解めっき条件にて絶縁樹脂上に、厚み0.24μmの第1銅層銅層を形成した後、Sn‐Bi合金層を0.11μmの厚さに下記条件にてめっきし、その上に8μmになるように第2の銅層を電気銅めっき条件Aで行い未処理銅メタライズド樹脂を作成し、該未処理銅メタライズド樹脂を熱処理条件Fにて熱処理を行って銅層にSnまたは/及びBiを拡散させ、樹脂表面近傍の銅層中にSnまたは/及びBiを合計で40%含有の導電層導電層を有する銅薄膜層とした。
(Sn‐Biめっき浴およびめっき条件)
市販のSn−Bi有機酸浴を使用
電流密度 5A/dm
浴温 40℃
(熱処理条件F)
温度 150℃
時間 24時間
雰囲気 N
なお、電気銅めっき条件は、実施例1と同じとした。
【0044】
実施例7:
樹脂(フィルム)上に厚さ0.05μmの無電解Niめっき層を下記めっき条件で形成した後、Znめっき層を下記めっき条件で厚さXXμm施した。
(無電解Niめっきの条件)
NiCl・6 HO 25g/l
クエン酸ナトリウム 20g/l
ジメチルアミンボラン 10g/l
pH 5.5
浴温 60℃
(亜鉛めっき条件)
ZnO 40g/l
NaOH 100g/l
電流密度 3A/dm
浴温 25℃
上記Znめっき層上に無電解めっき条件にて第1の銅層を厚み0.2μm形成し、下記熱処理条件Gにて熱処理を行ない、Ni、Znを拡散させ、樹脂表面近傍の銅層中にNi、Znを合計で28%含有した導電層を形成し、該導電層上に厚を8μmの電気銅めっき層を形成し銅薄膜層とした。
(熱処理条件G)
温度 180℃
時間 2時間
雰囲気 N
なお、電気銅めっき条件は、実施例1と同じとした。
【0045】
比較例1:
上記無電解めっき条件にて絶縁樹脂上に、厚み0.2μmの銅層を形成した後、その上に8μmになるように電気銅めっき条件電気Bにより電気銅めっき層を形成した。
(電気銅めっき条件電気B)
硫酸銅 50g/l
硫酸 100g/l
添加剤 微量挿入
電流密度 30A/dm
【0046】
(評価方法)
(評価サンプルの試作)
サンプル1として、実施例1〜7、比較例1で作成した銅メタライズド樹脂をそのままサンプルとした(表1には加熱前と表示)。
サンプル2として、上記実施例1〜7及び比較例1で作成した銅メタライズド樹脂を、サイズ100mm×50mmに切断し、150℃の恒温槽に200時間入れて、加熱後のサンプルとした。
【0047】
(ピール強度の測定)
上記評価サンプル1と2から試料を切りだし、JISC6511に規定する方法に準拠して、測定試料幅10mmで銅薄膜層と樹脂(フィルム)とのピール強度(接着強度)をn数3で測定し、その平均値を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
評価結果と効果は表1の値から明らかなように、低融点金属を付着させ熱拡散させた本発明の銅メタライズド樹脂は、 加熱前と加熱処理後と比較して、加熱後のピール強度は殆ど低下せず、耐熱性に優れている。一方、比較例のものは加熱後のピール強度が極端に低下し、熱劣化が顕著に現れている。
【0050】
また、実施例1〜7で作成した前記評価サンプル1と2につき、配線パターンをエッチングにより形成した結果、微細な回路幅がシャープに切れ、その面はほぼ垂直であった。
【0051】
更に、前記評価サンプル1と2にエッチングにより回路を形成し、該回路にICチップをCOFで実装した。その結果、サンプル1と2共に、視認性がよく、ICを正常に実装することができた。
【0052】
以上詳述したように、本発明の銅メタライズド樹脂は、実施例で9μm以下の膜厚の銅薄膜層が可能となり、表1に示すように150℃程度の高温下に長期間放置しても、絶縁樹脂と銅層との密着強度(ピール強度)が大幅に低下することはなく、また、ファインパターン形成、COF実装にも適しており、優れた工業的効果を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅または/および銅合金からなる銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂であって、前記銅薄膜層と絶縁樹脂との接合部近傍の銅薄膜層組成が、銅に対し銅以外の少なくとも1種類の金属が1%以上70%以下の比率であることを特徴とする銅メタライズド樹脂。
【請求項2】
絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅または/および銅合金からなる銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂であって、前記銅薄膜層は、前記絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた第1の銅層と、該第1銅層上に形成した第2の銅層からなり、前記第1の銅層の組成が、銅に対し銅以外の少なくとも1種類の金属が1%以上70%以下の比率で含有されていることを特徴とする銅メタライズド樹脂。
【請求項3】
絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂の製造方法であって、前記銅薄膜層は、絶縁樹脂の表面に銅または/および銅合金の第1の銅層を設け、該第1の銅層上に銅以外の少なくとも1種類の金属からなる金属層を設け、前記銅層と金属層に熱履歴を与えて銅層に金属層を拡散させた導電層とし、該導電層上に銅からなる第2の銅層を設ける工程で形成されることを特徴とする銅メタライズド樹脂の製造方法。
【請求項4】
絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂の製造方法であって、前記絶縁樹脂の表面に銅または/および銅合金の第1の銅層を形成し、該銅層上に銅以外の少なくとも1種類の金属からなる金属層を設け、該金属層上に第2の銅層を形成して未処理銅メタライズド樹脂とし、該未処理銅メタライズド樹脂に与える熱履歴により、前記銅層と前記金属層を拡散させて導電層とすることを特徴とする銅メタライズド樹脂の製造方法。
【請求項5】
絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂の製造方法であって、前記銅薄膜層は、絶縁樹脂の表面に銅以外の少なくとも1種類の金属からなる金属層を設け、該金属層上に銅または/および銅合金からなる第1の銅層を設けて熱履歴を与え、前記第1の銅層と金属層を拡散させて導電層とし、該導電層上に第2の銅層を設ける工程で形成することを特徴とする銅メタライズド樹脂の製造方法。
【請求項6】
絶縁樹脂と、該絶縁樹脂の少なくとも片面に設けた銅薄膜層とからなる銅メタライズド樹脂の製造方法であって、前記銅薄膜層は、絶縁樹脂の表面に銅以外の少なくとも1種類の金属からなる金属層を設け、該金属層上に銅または/および銅合金の第1の銅層を形成し、該第1の銅層上に必要により第2の銅層を形成して未処理銅メタライズド樹脂とし、該未処理銅メタライズド樹脂に与える熱履歴により、前記第1の銅層と前記金属層を拡散させて導電層とする工程で形成することを特徴とする銅メタライズド樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記導電層の組成が、銅に対し銅以外の少なくとも1種類の金属が1%以上70%以下の比率で含有させることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の銅メタライズド樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記金属層を、電解めっきにて付着形成することを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の銅メタライズド樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記第1の銅層を、無電解めっきまたは電気めっきにて形成することを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の銅メタライズド樹脂の製造方法。
【請求項10】
絶縁樹脂上に形成する前記金属層を無電解めっきにて付着させることを特徴とする請求項5又は6に記載の銅メタライズド樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記金属層を形成する金属の少なくとも1種類は、Zn、Sn、Bi、In、Pbまたはその合金であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の銅メタライズド樹脂の製造方法。
【請求項12】
絶縁樹脂表面に形成の銅薄膜層表面に粗化処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の銅メタライズド樹脂。
【請求項13】
絶縁樹脂表面に形成の銅薄膜層表面にNi、Zn、Ag或いはそれらの合金のうち少なくとも一つの金属がめっきされていることを特徴とする請求項1または2に記載の銅メタライズド樹脂。
【請求項14】
絶縁樹脂表面に形成の銅薄膜層の表面に防錆処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の銅メタライズド樹脂。
【請求項15】
絶縁樹脂表面に形成の銅薄膜層表面にシランカップリング処理が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の銅メタライズド樹脂。

【公開番号】特開2006−159634(P2006−159634A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354305(P2004−354305)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(591056710)古河サーキットフォイル株式会社 (43)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】