説明

銅積層プラスチックフィルム

【課題】耐屈曲性を著しく向上させることができる銅積層プラスチックフィルムを提供する。
【解決手段】プラスチックフィルムW1上に、少なくとも3層以上の銅メッキ層3a〜3gからなる銅メッキ積層体3が形成された銅積層プラスチックフィルムであって、この銅メッキ積層体は、銅メッキ層間に境界面31が形成されるとともに、これらの境界面の上下に位置する各銅メッキ層が互いに一体化されて構成されている。前記プラスチイクフィルムはポリイミドフィルムであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のプラスチックフィルムに銅メッキ層が形成された銅積層プラスチックフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この銅積層プラスチックフィルムは、携帯電話やディスプレイ等のフレキシブルプリント配線板として利用されており、例えば、特許文献1に示すように厚さ数十μmのポリイミドフィルムの片面又は両面に、金属蒸着層と銅メッキ層とが形成されることにより構成されている。
【0003】
そして、この銅積層プラスチックフィルムは、上記ポリイミドフィルムの片面又は両面に金属蒸着層が形成された帯状の被銅メッキ処理材を、金属蒸着層が通電されている状態で銅メッキ液が収容されたメッキ槽に供給することにより、この金属蒸着層上に銅メッキ層が形成されて得られるものである。
【0004】
ところで、この銅積層プラスチックフィルムは、上述のようにフレキシブルプリント配線板として、例えば、折り畳み式携帯電話のヒンジ部等に内蔵されて、利用されるものであるため、使用態様の変化等に応じて耐屈曲性のさらなる向上が常に要求されている。
【0005】
【特許文献1】特開平1−321687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、耐屈曲性を著しく向上させることができる銅積層プラスチックフィルムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、プラスチックフィルム上に、少なくとも3層以上の銅メッキ層からなる銅メッキ積層体が形成された銅積層プラスチックフィルムであって、
上記銅メッキ積層体は、上記銅メッキ層間に上記プラスチックフィルムの表面と略平行に連続する境界面が形成されるとともに、これらの境界面の上下に位置する各上記銅メッキ層が互いに一体化されて、構成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の銅積層プラスチックフィルムにおいて、上記プラスチックフィルムは、ポリイミドフィルムであり、このポリイミドフィルム上に銅スパッタ粒子を含有するスパッタ膜が形成されるとともに、このスパッタ膜上に上記銅メッキ積層体が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1又は2に記載の発明によれば、3層以上の銅メッキ層からなる銅メッキ積層体を、各銅メッキ層間にプラスチックフィルムの表面と略平行に連続する境界面が形成され、かつ各境界面の上下に位置する銅メッキ層が互いに一体化されるように構成したため、各銅メッキ層が2面以上の複数の境界面において、面方向及び厚さ方向の機械的応力を吸収することができ、銅積層プラスチックフィルムの耐屈曲性を著しく向上させることができるとともに、銅積層プラスチックフィルムのメッキ層間の剥離を防止することができる。
【0010】
特に、請求項2に記載の発明によれば、ポリイミドフィルムに銅スパッタ粒子を含有するスパッタ膜を形成して、このスパッタ膜上に銅メッキ層を形成することによって、スパッタ膜と銅メッキ層との結合力を高めることができ、銅積層プラスチックフィルムの剥離強度及び耐屈曲性を一段と向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る銅積層ポリイミドフィルム(銅積層プラスチックフィルム)について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態の銅積層ポリイミドフィルムの断面図であり、図2は、銅メッキ積層体3の任意断面を走査型電子顕微鏡にて倍率10,000倍で観察した写真である。なお、図1の断面図は、目視の便宜のために白黒を反転させて示してある。
【0012】
本実施形態の銅積層ポリイミドフィルムは、図1に示すように、数十umの膜厚を有するポリイミドフィルムW1上に、スパッタ膜2と少なくとも3層以上(本実施形態においては7層)の銅メッキ層3a〜3gからなる銅メッキ積層体3とが形成されている。
【0013】
このスパッタ膜2は、主成分として、ニクロムスパッタ粒子及び銅スパッタ粒子を含有して、100nm以上〜300nm以下の厚さに形成されており、ポリイミドフィルムW1との接触表面側にニクロムスパッタ粒子が含有されるとともに、スパッタ膜2の表層側に銅スパッタ粒子が含有されている。
【0014】
また、銅メッキ積層体3は、各銅メッキ層3a〜3gが電解メッキ法によって形成されて、ポリイミドフィルムW1との接触表面側の銅メッキ層3aから表層側の銅メッキ層3gに向けて、漸次膜厚が大きくなるように形成されており、5um以上〜20μm以下の総膜厚を有している。
【0015】
さらに、銅メッキ積層体3は、これらの各銅メッキ層3a〜3g間に、ポリイミドフィルムW1の表面と略平行に連続する境界面31が厚さ方向に少なくとも2面(本実施形態においては6面)形成されている。これらの境界面31は、図2において、ポリイミドフィルムW1の表面と略平行に連続する白すじとして現れており、これらの白すじは、銅メッキ層3a〜3gの上部表面が酸化されて形成されたものであると推測される。
【0016】
また、銅メッキ積層体3は、各境界面31の上下に位置する銅メッキ層3a〜3g(例えば、銅メッキ層3aと3b)が互いに一体化されて構成されている。これは、下部の銅メッキ層3a〜3fと上部の銅メッキ層3b〜3gとが下部の銅メッキ層3a〜3f上部表面の酸化銅によって一体化されている(例えば、メッキ層3aとメッキ層3bとがメッキ層3a上部表面の酸化銅によって一体化されている)ものと推測される。
【0017】
このように、銅メッキ積層体3は、各銅メッキ層3a〜3g間に境界面31が形成されているため、屈曲させた際に、各銅メッキ層3a〜3gがそれぞれ面方向及び厚さ方向の機械的応力を吸収するようになっているとともに、各境界面31の上下に位置する銅メッキ層3a〜3g(例えば、銅メッキ層3aと3b)が互いに一体化されているため、メッキ層3a〜3g間の剥離が防止されるようになっている。
【0018】
上述の銅積層ポリイミドフィルムは、銅メッキ層3a〜3gからなる銅メッキ積層体3を、各メッキ層3a〜3g間にポリイミドフィルムW1の表面と略平行に連続する境界面31が形成され、かつ各境界面31の上下に位置する銅メッキ層3a〜3gが互いに一体化されるように構成したため、各銅メッキ層3a〜3gが境界面31において面方向及び厚さ方向の機械的応力を吸収することができ、銅積層ポリイミドフィルムの耐屈曲性を著しく向上させることができるとともに、メッキ層3a〜3g間の剥離を防止することができる。
【0019】
また、銅積層ポリイミドフィルムは、表層側に銅スパッタ粒子が含有されたスパッタ膜2上に銅メッキ積層体3を形成したため、スパッタ膜2と銅メッキ層3との結合力を高めることができ、剥離強度及び耐屈曲性を一段と向上させることができる。
【0020】
なお、本発明は、上述の実施形態により何ら限定されるものではなく、例えば、スパッタ膜2の代わりに無電解メッキによって導電性を有する無電解メッキ層を形成してもよいものである。
【実施例】
【0021】
まず、上述の実施形態の図2に示す銅メッキ積層体3が形成された銅積層ポリイミドフィルムを準備する。次いで、この銅積層ポリイミドフィルムのポリイミドフィルムW1を剥離した後に、15cm角に切断して、スパッタ膜2及び銅メッキ積層体3からなる実施例箔1を5枚用意した。
【0022】
この実施例箔1の耐屈曲性を、MIT耐折試験機にて5回測定した。このMIT耐折試験機による耐屈曲性の測定方法は、実施例箔1に電力を供給した状態で、繰り返し、実施例箔1を屈曲させて、抵抗値が上昇してしまった際の屈曲回数を計測するものであり、その結果を表1及び図5に示した。
なお、実施例におけるMIT耐折試験機の条件は、R=0.38、角度135°、速度170回/min、加重500gで行った。
【0023】
次いで、比較例として、図3と図4とに示す銅メッキ積層体が形成された銅積層ポリイミドフィルムを準備した。これらの銅積層ポリイミドフィルムのポリイミドフィルムW1を剥離した後に、15cm角に切断して、スパッタ膜及び銅メッキ積層体からなる比較例箔1と比較例箔2とを各々5枚ずつ用意した。
次に、これらの比較例箔1と比較例箔2の耐屈曲性を、それぞれMIT耐折試験機にて、実施例箔1と同様に計測して、表1及び図5に示した。
なお、比較例箔1および比較例箔2の銅メッキ積層体は、それぞれ走査型電子顕微鏡による倍率10,000倍の図3および図4の写真でも白すじ31が視認できないものであり、境界面31を有していないものである。
【0024】
【表1】

【0025】
表1及び図5から判るように、比較例箔1及び比較例箔2の屈曲回数が101回〜186回であるのに対して、実施例箔1は、屈曲回数が222回〜244回であり、耐屈曲性が著しく向上した。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態の銅積層ポリイミドフィルムを示す断面図である。
【図2】本実施形態の銅メッキ積層体3の断面を走査型電子顕微鏡によって撮影した写真である。
【図3】ポリイミドフィルムW1上に銅メッキ積層体が形成されている比較例の銅積層ポリイミドフィルムの写真であって、走査型電子顕微鏡によって撮影した比較例箔1の断面を示すための写真である。
【図4】ポリイミドフィルムW1上に銅メッキ積層体が形成されている比較例の銅積層ポリイミドフィルムの写真であって、走査型電子顕微鏡によって撮影した比較例箔2の断面を示すための写真である。
【図5】MIT耐折試験機による耐屈曲性試験結果を示す棒グラフである。
【符号の説明】
【0027】
W1 ポリイミドフィルム(プラスチックフィルム)
2 スパッタ膜(導電層)
3 銅メッキ積層体
3a〜3g 銅メッキ層
31 境界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム上に、少なくとも3層以上の銅メッキ層からなる銅メッキ積層体が形成された銅積層プラスチックフィルムであって、
上記銅メッキ積層体は、上記銅メッキ層間に上記プラスチックフィルムの表面と略平行に連続する境界面が形成されるとともに、これらの境界面の上下に位置する各上記銅メッキ層が互いに一体化されて構成されていることを特徴とする銅積層プラスチックフィルム。
【請求項2】
上記プラスチックフィルムは、ポリイミドフィルムであり、このポリイミドフィルム上に銅スパッタ粒子を含有するスパッタ膜が形成されるとともに、このスパッタ膜上に上記銅メッキ積層体が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の銅積層プラスチックフィルム。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−229888(P2008−229888A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68741(P2007−68741)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000176822)三菱伸銅株式会社 (116)
【Fターム(参考)】