説明

除去器およびそれを備える燃料改質装置

【課題】エネルギ変換手段EGを備えるエネルギシステム全体としての効率の低下を抑制しつつ、酸素富化空気を生成することができる除去器およびそれを備える燃料改質装置を提供する。
【解決手段】酸素富化空気に基づくエネルギ源である水素が供給されるエンジンEGを備える燃料供給システムに搭載されるとともに、供給される空気中の窒素を除去して酸素富化空気を生成する除去器において、エンジンEGの排熱の熱エネルギを利用して、空気中から窒素を除去するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の窒素を除去する除去器およびそれを備える燃料改質装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エネルギ変換手段としての内燃機関に燃料を供給する燃料供給システムに搭載される燃料改質器であって、水蒸気改質による吸熱反応と部分酸化(燃焼)による発熱反応を共に反応容器内で進行させ、熱をバランスさせながら水素を生成する自己熱改質法(ATR)を利用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の従来技術では、空気中の窒素を除去した酸素富化空気(高純度酸素ガス)と、燃料とを改質器に供給するシステムを備えている。これによれば、改質器における燃料の燃焼速度を速くすることができ、燃焼時の熱出力を増大させることができるので、即効的な水素の生成が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−170182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の従来技術では、空気中から窒素を除去する手法として、空気中から酸素を分離する酸素分離膜を用いている。この場合、酸素分離膜の前後に所定の差圧を発生させる必要があるため、上記従来技術では、酸素分離膜の下流側に空気ポンプ(ブロワ)を配置し、この空気ポンプを作動させることにより当該差圧を発生させている。
【0006】
ここで、上記空気ポンプは、燃料供給システムの系外からエネルギを供給することにより作動するが、一般に、酸素分離膜の前後に所定の差圧を発生させるための所用動力は大きく、内燃機関を備えるエネルギシステム全体としてエネルギ効率が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、エネルギ変換手段EGを備えるエネルギシステム全体としての効率の低下を抑制しつつ、酸素富化空気を生成することができる除去器およびそれを備える燃料改質装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、酸素富化空気に基づくエネルギ源が供給されるエネルギ変換手段(EG)を備えるエネルギ源供給システムに搭載されるとともに、供給される空気中の窒素を除去して酸素富化空気を生成する除去器において、エネルギ変換手段(EG)の排熱の熱エネルギを利用して、空気中から窒素を除去するように構成されていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、エネルギ変換手段(EG)の排熱というエネルギ源供給システムの系内のエネルギを利用して、空気中から窒素を除去して酸素富化空気を生成することができる。したがって、エネルギ変換手段(EG)を備えるエネルギシステム全体としての効率の低下を抑制しつつ、酸素富化空気を生成することが可能となる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、エネルギ源として少なくとも水素をエネルギ変換手段(EG)へ供給するエネルギ源供給システムに搭載されるとともに、水素を含有する燃料と空気とが供給され、燃料を改質して水素を生成させる燃料改質装置において、燃料の一部と空気とを燃焼させる燃焼部(32)と、燃焼に伴って発生する燃焼熱を利用して残りの燃料を水素に変換する変換部(33)とを有する改質器(3)と、改質器(3)に供給される空気中の窒素を除去して酸素富化空気を生成する除去器(4)とを備え、除去器(4)は、変換部(33)にて変換された水素が供給されるエネルギ変換手段(EG)の排熱の熱エネルギを利用して、空気中から窒素を除去するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、エネルギ変換手段(EG)の排熱というエネルギ源供給システムの系内のエネルギを利用して、空気中から窒素を除去して酸素富化空気を生成することができる。したがって、エネルギ変換手段(EG)を備えるエネルギシステム全体としての効率の低下を抑制しつつ、除去器(4)において酸素富化空気を生成することが可能となる。このため、エネルギシステム全体としての効率の低下を抑制しつつ、燃料改質装置において即効的な水素の生成が可能となる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の燃料改質装置において、除去器(4)は、空気中の窒素または酸素を選択可逆的に吸収・放出する吸収剤(42a、42b)と、吸収剤(42a、42b)に熱を供給する熱供給手段(43a、43b)とを有する除去部(41a、41b)を少なくとも2つ備えており、少なくとも2つの除去部(41a、41b)は、窒素または酸素を吸収剤(42a、42b)に吸収させる吸収モードと、熱供給手段(43a、43b)により供給された熱によって吸収剤(42a、42b)に吸収された窒素または酸素を放出させる放出モードとが、切替可能に構成されており、少なくとも2つの除去部(41a、41b)のうち、一方の除去部(41a)と他方の除去部(41b)において、吸収モードおよび放出モードのうち互いに異なるモードが実行されるように構成されており、熱供給手段(43a、43b)は、エネルギ変換手段(EG)の排熱を吸収剤(42a、42b)に供給することを特徴とする。
【0013】
これによれば、一方の除去部(41a)と他方の除去部(41b)において、吸収モードおよび放出モードのうち互いに異なるモードが実行されるので、一方の除去部(41a)および他方の除去部(41b)のうちいずれか一方から、常時酸素富化空気を流出させて、改質器(3)に供給することが可能となる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明のように、吸収剤(42a、42b)は、窒素および酸素それぞれの分子サイズの差異を利用して、空気中の窒素または酸素を選択可逆的に吸収・放出してもよい。
【0015】
また、請求項5に記載の発明のように、吸収剤(42a、42b)は、当該吸収剤(42a、42b)と窒素または酸素との分子間結合力の差異を利用して、空気中の窒素または酸素を選択可逆的に吸収・放出してもよい。
【0016】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態における燃料供給システム100の全体構成図である。
【図2】除去器4を示す全体構成図である。
【図3】吸収剤42a、42bを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。図1は、本実施形態の燃料供給システム100の全体構成図である。本実施形態では、本発明の除去器を、エネルギ源供給システムとしての燃料供給システム100に適用している。この燃料供給システム100は、車両に適用されており、車両走行用の駆動力(機械エネルギ)を出力するエネルギ変換手段としてのエンジン(内燃機関)EGへ燃料および水素を供給するものである。
【0019】
まず、燃料供給システム100は、加圧されて液化された高圧液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵手段としての高圧タンク10を備えている。
【0020】
この高圧タンク10に貯蔵される燃料は、分子中に少なくとも1つの水素原子が含まれる燃料が採用されている。燃料として、分子中に少なくとも1つの水素原子が含まれる燃料を採用することで、燃料を改質することによって可燃性を有する水素ガスを生成することができる。
【0021】
また、燃料としては、エンジンEGにて燃料として燃焼させるために可燃性を有し、さらに、その製造コストを低減させるために高圧下においては常温(15℃〜25℃程度)でも液化させやすいものであることが望ましい。
【0022】
そこで、本実施形態では、燃料として、分子中に3つの水素原子を含有し、さらに可燃性を有しており、常温であっても1.5MPa以下で液化する燃料として、アンモニア(NH)を採用している。
【0023】
この他にも同等の性質を有する燃料として、ジメチルエーテル、アルコール含有燃料等を採用することもできる。さらに、水素を含有する燃料であって、同燃料の分子中に、硫黄(S)、酸素(O)、窒素(N)およびハロゲンのうち少なくとも1種の原子が含まれるものであり、かつ、分子間にて水素結合が発現するものを採用してもよい。
【0024】
高圧タンク10の燃料流出口には、気化器20の燃料流入口が接続されている。気化器20は、高圧タンク10から流出した液相状態の燃料(液体燃料)を気化させる気化手段である。
【0025】
気化器20にて気化された気相状態の燃料(気体燃料)は、気化器20の燃料流出口から流出する。気化器20から流出した気体燃料の流れは、2つの流れに分岐され、分岐された一方の気体燃料は、気体燃料をエンジンEGの燃焼室内へ噴射供給する燃料噴射弁(インジェクタ)へ流入し、分岐された他方の気体燃料は、気体燃料を改質して水素ガスを発生させる燃料改質装置30へ流入する。
【0026】
燃料改質装置30は、気体燃料を触媒下で改質可能温度まで加熱して改質反応させることによって、水素ガスを発生させる燃料改質手段である。本実施形態では、燃料として水素含有燃料であるアンモニアを採用しているので、燃料を300℃〜700℃まで加熱して、触媒下にて改質反応をさせて水素ガスを発生させている。燃料改質装置30にて生成された水素ガスは、燃料噴射弁に流入する。
【0027】
燃料改質装置30では、水蒸気改質による吸熱反応と部分酸化(燃焼)による発熱反応を共に改質器内で進行させ、熱をバランスさせながら水素を生成する自己熱改質法(ATR)による改質が行われる。
【0028】
燃料改質装置30は、燃料であるアンモニアの改質が行われる反応容器としての改質器3と、改質器3内にアンモニアを流入させる燃料入口部301と、改質器3内に空気を流入させる空気入口部302とを備えている。
【0029】
空気入口部302と改質器3との間には、改質器3に供給される空気中の窒素を除去して酸素富化空気を生成する除去器4が設けられている。この除去器4の詳細については後述する。
【0030】
改質器3の内部には、アンモニアを改質して水素を生成するための触媒31が設けられている。また、改質器3内の一部は、燃料入口部301から流入したアンモニアの一部を燃焼(部分酸化)させる燃焼部32を構成しており、改質器3内の残りの部分は、当該燃焼に伴って発生する燃焼熱を利用して残りの燃料を水素に変換する変換部33を構成している。
【0031】
次に、本実施形態における除去器4の詳細な構成について説明する。図2は、本実施形態における除去器4を示す全体構成図である。
【0032】
図2に示すように、除去器4は、2つの除去部41a、41bを備えている。各除去部41a、41bは、それぞれ、空気入口部302から空気が流入するように構成されている。
【0033】
除去部41a、41bの内部には、空気入口部302から流入した空気のうち、酸素を選択可逆的に吸収(吸蔵)・放出(脱離)する吸収剤42a、42bが設けられている。ここで、吸収剤42a、42bとして、例えばゼオライト(モレキュラシーブ)等を用いることで、酸素の物理吸着により酸素を選択的に吸収することができる。
【0034】
図3は、本実施形態における吸収剤42a、42bを示す模式図である。図3に示すように、吸収剤42a、42bには、多数の孔部420が形成されている。この孔部420は、酸素分子は入り込むことができるが、酸素分子より大きい窒素分子は入り込むことができないサイズに形成されている。したがって、吸収剤42a、42bは、空気中から酸素を選択的に吸収(吸着)することができる。
【0035】
また、吸収剤42a、42bは、酸素を選択的に吸収する際に熱を放出する。このため、吸収剤42a、42bを低温にすることで、吸収剤42a、42bの孔部420に酸素を吸着させることができ、吸収剤42a、42bを加熱して高温にすることで、吸収剤42a、42bの孔部420から酸素を脱離させることができる。
【0036】
図2に戻り、除去部41a、41bには、吸収剤42a、42bをエンジンEGの排ガスの有する熱(排熱)により加熱可能な熱交換器43a、43bが設けられている。具体的には、熱交換器43a、43bは、加熱用熱媒体としてのエンジンEGの排ガスが流通可能に構成されている。このため、熱交換器43a、43bでは、排ガスと吸収剤42a、42bとの間で熱交換を行い、排ガスの有する熱により吸収剤42a、42bを加熱することができる。したがって、熱交換器34a、34bは、吸収剤42a、42bに熱を供給する熱供給手段に相当する。
【0037】
2つの除去部41a、41bの空気入口側には、第1電気式三方弁44が接続されている。第1電気式三方弁44は、図示しない制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される流路切替手段である。
【0038】
具体的には、第1電気式三方弁44は、入口44a、第1出口44bおよび第2出口44cを形成する三つの弁を有する。第1電気式三方弁44の入口44aは、空気入口部302に接続されている。第1電気式三方弁44の第1出口44bは、2つの除去部41a、41bのうち一方の除去部(以下、第1除去部41aという)の空気入口側に接続されている。第1電気式三方弁44の第2出口44cは、2つの除去部41a、41bのうち他方の除去部(以下、第2除去部41bという)の空気入口側に接続されている。
【0039】
そして、第1電気式三方弁44の第1出口44bが開弁され、第2出口44cが閉弁されることで、空気入口部302から流出した空気が第1除去部41aにのみ流入する。一方、第1電気式三方弁44の第1出口44bが閉弁され、第2出口44cが開弁されることで、空気入口部302から流出した空気が第2除去部41bにのみ流入する。
【0040】
2つの除去部41a、41bの出口側には、電気式四方弁45が接続されている。電気式四方弁45は、制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される流路切替手段である。
【0041】
電気式四方弁45は、第1除去部41aの出口側と窒素を系外へ排出する排気口(図示せず)との間、および第2除去部41bの出口側と改質器3の入口側との間を同時に接続する第1回路と、第1除去部41aの出口側と改質器3の入口側との間、および第2除去部41bの出口側と排気口との間を同時に接続する第2回路とを切り替える機能を果たす。
【0042】
2つの除去部41a、41bにおける熱交換器43a、43bの排ガス入口側には、第2電気式三方弁46が接続されている。第2電気式三方弁46は、制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される流路切替手段である。
【0043】
具体的には、第2電気式三方弁46は、入口46a、第1出口46bおよび第2出口46cを形成する三つの弁を有する。第2電気式三方弁46の入口46aは、エンジンEGの排ガス出口側に接続されている。第2電気式三方弁46の第1出口46bは、第1除去部41aにおける熱交換器(以下、第1熱交換器43aという)の排ガス入口側に接続されている。第2電気式三方弁46の第2出口46cは、第2除去部41bにおける熱交換器(以下、第2熱交換器43bという)の排ガス入口側に接続されている。
【0044】
そして、第2電気式三方弁46の第1出口46bが開弁され、第2出口46cが閉弁されることで、エンジンEGから流出した排ガスが第1熱交換器43aにのみ流入する。一方、第2電気式三方弁46の第1出口46bが閉弁され、第2出口46cが開弁されることで、エンジンEGから流出した排ガスが第2熱交換器43bにのみ流入する。
【0045】
したがって、第2電気式三方弁46を制御することで、第1熱交換器43aおよび第2熱交換器43bのうちいずれか一方にのみ、排ガスを供給することができる。
【0046】
除去部41a、41bは、吸収モード(吸蔵モード)および放出モード(脱離モード)の2つのモードを実行可能に構成されている。ここで、吸収モードは、除去部41a、41bにおいて、吸収剤42a、42bが酸素を選択的に吸収するモードである。また、放出モードは、除去部41a、41bにおいて、排ガスが流通している熱交換器43a、43bによって吸収剤42a、42bに対して熱を供給するとともに、吸収剤42a、42bから酸素を脱離させて放出するモードである。
【0047】
ところで、除去器4は、第1除去部41aと第2除去部41bにおいて、吸収モードおよび放出モードのうち互いに異なるモードが実行されるように構成されている。すなわち、除去器4は、第1除去部41aにおいて吸収モードが実行されている際には、第2除去部41bにおいて放出モードが実行されるようになっており、第1除去部41aにおいて放出モードが実行されている際には、第2除去部41bにおいて吸収モードが実行されるようになっている。
【0048】
除去部41a、41bにおいて実行されるモードの切り替えは、制御装置によって第1電気式三方弁44、電気式四方弁45および第2電気式三方弁46の作動を制御することにより行われる。また、電気式四方弁45および第2電気式三方弁46の作動は、第1電気式三方弁44の作動に連動している。
【0049】
具体的には、第1電気式三方弁44にて空気入口部302から流出した空気を第1除去部41aに流入させる回路に切り替える際には、電気式四方弁45にて第1除去部41aの出口側と排気口との間、および第2除去部41bの出口側と改質器3の入口側との間を同時に接続する第1回路に切り替えるとともに、第2電気式三方弁46にてエンジンEGから流出した排ガスを第2熱交換器43bに流入させる回路に切り替える。
【0050】
これにより、第1除去部41aでは、吸収剤42aに酸素が吸収される吸収モードが実行される。そして、第1除去部41aからは、吸収剤42aに吸収されなかった窒素が流出し、系外へと排出される。
【0051】
また、第2除去部41bでは、第2熱交換器43bにて吸収剤42bに熱が供給されることで、吸収剤42bに吸収されていた酸素が放出される放出モードが実行される。そして、第2除去部41bからは酸素富化空気が流出し、改質器3へ供給される。
【0052】
一方、第1電気式三方弁44にて空気入口部302から流出した空気を第2除去部41bに流入させる回路に切り替える際には、電気式四方弁45にて第1除去部41aの出口側と改質器3の入口側との間、および第2除去部41bの出口側と排気口との間を同時に接続する第2回路に切り替えるとともに、第2電気式三方弁46にてエンジンEGから流出した排ガスを第1熱交換器43aに流入させる回路に切り替える。
【0053】
これにより、第1除去部41aでは、第1熱交換器43aにて吸収剤42aに熱が供給されることで、吸収剤42aに吸収されていた酸素が放出される放出モードが実行される。そして、第1除去部41aからは酸素富化空気が流出し、改質器3へ供給される。
【0054】
また、第2除去部41bでは、吸収剤42bに酸素が吸収される吸収モードが実行される。そして、第2除去部41bからは、吸収剤42bに吸収されなかった窒素が流出し、系外へと排出される。
【0055】
以上説明したように、燃料改質装置30には、気化器20にて気化されたアンモニアと、除去器4にて生成された酸素富化空気とが供給され、改質器3の変換部33にて改質(変換)が行われて水素が生成する。そして、この水素がエネルギ源としてエンジンEGに供給されて、エンジンEGから機械エネルギが出力される。したがって、本実施形態における燃料改質装置30の改質器3にて生成された水素が、特許請求の範囲に記載された「酸素富化空気に基づくエネルギ源」に対応している。
【0056】
本実施形態によれば、除去器4の除去部41a、41bは、改質器3の変換部33にて改質(変換)された水素が供給されるエンジンEGの排熱の熱エネルギを利用して、空気中の窒素を除去することができる。すなわち、除去器4において、エンジンEGの排熱という燃料供給システム100の系内のエネルギを利用して、空気中の窒素を除去して酸素富化空気を生成することができる。したがって、エンジンEGを備えるエネルギシステム全体としての効率の低下を抑制しつつ、除去器4において酸素富化空気を生成することが可能となる。このため、エネルギシステム全体としての効率の低下を抑制しつつ、燃料改質装置30において即効的な水素の生成が可能となる
また、本実施形態では、第1除去部41aと第2除去部41bにおいて、吸収モードおよび放出モードのうち互いに異なるモードが実行されるので、第1除去部41aおよび第2除去部41bのうちいずれか一方から、常時酸素富化空気を流出させて、改質器3に供給することが可能となる。
【0057】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0058】
(1)上記実施形態では、除去部41a、41bに、酸素を選択的に吸収する吸収剤42a、42bを設け、除去部41a、41bにおいて、吸収モード時に吸収剤42a、42bに酸素を吸収させ、放出モード時に吸収剤42a、42bに吸収されていた酸素を放出させて、酸素富化空気を改質器3へ供給する例について説明したが、これに限らず、除去部41a、41bに、窒素を選択的に吸収する吸収剤42a、42bを設けてもよい。
【0059】
この場合、除去部41a、41bにおいて、吸収モード時に吸収剤42a、42bに窒素を吸収させて、酸素富化空気を改質器3へ供給し、放出モード時に吸収剤42a、42bに吸収されていた窒素を放出させて、系外へ排出する。
【0060】
(2)上記実施形態では、吸収剤42a、42bとしてゼオライト(モレキュラシーブ)等を用いることで、酸素の物理吸着により酸素を選択可逆的に吸収・放出させる例について説明したが、これに限らず、吸収剤42a、42bとして、例えばモリブデンを用いることで、吸収剤42a、42bと窒素または酸素との分子間結合力の差異を利用して、空気中の窒素を選択可逆的に吸収・放出させてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、除去器4を、第1除去部41aおよび第2除去部41bにおいて、吸収モードおよび放出モードのうち互いに異なるモードが実行されるように構成した例について説明したが、これに限らず、第1除去部41aおよび第2除去部41bにおいて、互いに同じモードが実行されるように構成してもよい。
【0062】
(4)上記実施形態では、除去器4を、2つの除去部(すなわち、第1除去部41aおよび第2除去部41b)を備えるように構成した例について説明したが、これに限らず、除去部は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
3 改質器
4 除去器
32 燃焼部
33 変換部
41a、41b 除去部
42a、42b 吸収剤
43a、43b 熱交換器(熱供給手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素富化空気に基づくエネルギ源が供給されるエネルギ変換手段(EG)を備えるエネルギ源供給システムに搭載されるとともに、供給される空気中の窒素を除去して前記酸素富化空気を生成する除去器であって、
前記エネルギ変換手段(EG)の排熱の熱エネルギを利用して、前記空気中から前記窒素を除去するように構成されていることを特徴とする除去器。
【請求項2】
エネルギ源として少なくとも水素をエネルギ変換手段(EG)へ供給するエネルギ源供給システムに搭載されるとともに、水素を含有する燃料と空気とが供給され、前記燃料を改質して水素を生成させる燃料改質装置であって、
前記燃料の一部と前記空気とを燃焼させる燃焼部(32)と、前記燃焼に伴って発生する燃焼熱を利用して残りの前記燃料を水素に変換する変換部(33)とを有する改質器(3)と、
前記改質器(3)に供給される前記空気中の窒素を除去して酸素富化空気を生成する除去器(4)とを備え、
前記除去器(4)は、前記変換部(33)にて変換された前記水素が供給されるエネルギ変換手段(EG)の排熱の熱エネルギを利用して、前記空気中から前記窒素を除去するように構成されていることを特徴とする燃料改質装置。
【請求項3】
前記除去器(4)は、前記空気中の窒素または酸素を選択可逆的に吸収・放出する吸収剤(42a、42b)と、前記吸収剤(42a、42b)に熱を供給する熱供給手段(43a、43b)とを有する除去部(41a、41b)を少なくとも2つ備えており、
前記少なくとも2つの除去部(41a、41b)は、前記窒素または前記酸素を前記吸収剤(42a、42b)に吸収させる吸収モードと、前記熱供給手段(43a、43b)により供給された前記熱によって前記吸収剤(42a、42b)に吸収された前記窒素または前記酸素を放出させる放出モードとが、切替可能に構成されており、
前記少なくとも2つの除去部(41a、41b)のうち、一方の前記除去部(41a)と他方の前記除去部(41b)において、前記吸収モードおよび前記放出モードのうち互いに異なるモードが実行されるように構成されており、
前記熱供給手段(43a、43b)は、前記エネルギ変換手段(EG)の排熱を前記吸収剤(42a、42b)に供給することを特徴とする請求項2に記載の燃料改質装置。
【請求項4】
前記吸収剤(42a、42b)は、前記窒素および前記酸素それぞれの分子サイズの差異を利用して、前記空気中の窒素または酸素を選択可逆的に吸収・放出することを特徴とする請求項3に記載の燃料改質装置。
【請求項5】
前記吸収剤(42a、42b)は、当該吸収剤(42a、42b)と前記窒素または前記酸素との分子間結合力の差異を利用して、前記空気中の窒素または酸素を選択可逆的に吸収・放出することを特徴とする請求項3に記載の燃料改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−95625(P2013−95625A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239110(P2011−239110)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】