説明

集積回路相互接続構造のGCIB処理

集積回路内の金属(304)の相互接続の製造工程および品質を改善するために、ガスクラスタ・イオンビーム(GCIB)(128)によって集積回路相互接続構造の溝やビア内の材料を取り除いたり再配分したりする方法が開示されている。この工程では、構造の入口の領域での不要な「ネックイン」を広げ、構造の頚部または底部等のより厚い領域から側壁に、バリア金属(308)を再堆積させたり、スパッタリングによって構造の底部の余分で不要な材料の一部を取り除く。GCIB処理は、バリア金属堆積後で銅シード層(310)/銅(312)電気メッキ前に適用することも、銅シード層(310)の形成後で電気メッキ前に適用することもできる。この方法は、既知の相互接続堆積技術の有用性を、次世代以降の集積回路まで拡張できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一般に、集積回路内の金属相互接続の製造工程および品質を改善するために、集積回路相互接続構造にガスクラスタ・イオンビーム(GCIB)を適用することに関し、より詳細には、二重ダマスク相互接続構造を含む、集積回路相互接続構造の溝やビア内の材料を取り除いたり再配分したりすることで、工程および品質を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体業界では、回路密度の増大によって、寸法はますます小さくなり、より多くの数のトランジスタを各素子内に配置するようになっている。さらに、これらのトランジスタを相互接続する課題が困難になっている。相互接続の高密度化により直面する問題のいくつかは、相互接続内の抵抗が高くなることで放熱が増え、消費電力が大きくなり、信号遅延が長くなることである。寸法をより小さくすることが必要なため、この業界では二重ダマスク処理が開発された。二重ダマスク処理では、半導体の誘電体層内の溝および孔のパターンをエッチングし、次にそのパターンに充填する金属を堆積させる。次に化学機械研磨(CMP)ステップを用いて、表面を平坦化し、さらに次の誘電体材料層を堆積させパターン形成する。充填した溝は金属相互接続ラインを構成し、充填した孔は様々な金属層を互いに接続する接点ビアを構成する。
【0003】
二重ダマスク処理の開発によって、この業界では、高アスペクト比の形態を備えた素子の開発し、さらに相互接続金属として、アルミニウムではなく銅を備えた素子の開発を可能にした。このような高アスペクト比の相互接続構造の製造での困難の一つは、金属導体を被覆し、周囲の半導体材料への拡散を防ぐために用いられるバリア金属であり、このバリア金属は、溝およびビアの側壁上に連続的な層を構成するように堆積させなければならない。使用される一般的なバリア金属は、Ta、TiN、TaN、WNなどである。このようなバリア金属薄膜を堆積させる現在の方法には、物理的蒸着法(PVD)、イオン化物理的蒸着法(iPVD)、化学的気相成長法がある。さらに、銅の相互接続金属を堆積させる現在の方法では、次に電気メッキの銅で溝およびビアに充填させる前に、堆積させるための銅のシード層を必要とする。
【0004】
これらのバリア材料および銅シード層を高アスペクト比の1/4μm以下のビアおよび溝に堆積させると、構造の上部、側壁および底部の膜厚が不均一になることが多い。これらの効果によって、半導体素子の性能に悪影響を与える少なくとも三つの別個の問題が生じる。第一に、溝またはビア上部の余分な材料の張り出しによって、開口部に「ネックイン」を発生させ、次の薄膜堆積や相互接続金属での構造の充填を制限したり妨げたりする。さらに、この問題は、相互接続金属内に空隙を発生させ、素子の損傷につながる。第二に、特に構造の底部の角の近傍での側壁の被覆が十分でないことで、銅の拡散を防ぐバリア材料層や、次の銅の電気メッキを可能にする銅シード層が薄くなりすぎて、素子の損傷につながる。第三に、余分なバリア薄膜の堆積によって、溝またはビアの底部に材料が盛り上がり、相互接続金属(1.7〜3.5μΩcm)に比べて、構造の実質的な固有抵抗値が高くなる(一般に100〜1000μΩcm)。この問題によって、相互接続金属の接触抵抗が実質的に高くなり、素子の性能/速度に悪影響を与える。
【0005】
平坦な材料面のエッチングまたはクリーニングのために、GCIBを使用することが従来から知られている(例えば、米国特許第5,814,194号、Deguchiなどを参照)。この議論では、ガスクラスタはナノサイズの材料の集合体であり、標準温度および圧力の条件下でガス状である。このようなクラスタは一般に、クラスタを構成するために緩やかに拘束された数個から数千個の分子の集合体からなる。このクラスタは、電子ボンバードまたは他の手段によってイオン化され、所定の制御可能なエネルギの指向性ビームに構成される。より大きなサイズのクラスタは、分子当たりのエネルギは控えめでありながら、クラスタ・イオン当たりでは多くのエネルギを保持できるので、最も役立つことが多い。このクラスタは衝撃で分解し、各分子は全クラスタ・エネルギのわずかな部分だけを保持する。従って、大きなクラスタの衝撃の影響はかなりのものであるが、非常に浅い表面領域に限定される。このため、イオンクラスタは様々な表面改質処理に有効で、モノマーイオンビーム処理のように、より深い表面下に損傷を生じる性質はない。
【0006】
このようなCGIBの生成および加速手段は、前述の参考資料(米国特許第5,814,194号)に記載されている。現在利用可能なイオンクラスタ・ソースは、広いサイズ分布、nを備えたクラスタ・イオンを生成する(ここで、n=各クラスタ内の分子数。この議論を通して、アルゴン等の単原子ガスの場合、単原子ガスの原子は分子と呼び、このような単原子ガスのイオン化された原子は分子イオン、または単にモノマーイオンと呼ぶ)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、この発明の目的は、バリア材料やシード材料の堆積後に、残りの材料の一体性を有意に損なったり劣化させることなく、余分な材料の張り出しを備えた溝またはビア構造の上部を開いたり広げたりする方法を提供し、次の薄膜堆積や構造の充填を可能にする方法を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、材料の一体性を有意に損なったり劣化させることなく、溝またはビア内の通常は構造の上部または底部であるより厚い領域から側壁に、バリア材料やシード材料を効率的かつ効果的に再配分する方法を提供し、構造をより均一で連続的は薄膜で被覆することである。
【0009】
この発明の別の目的は、金属相互接続ラインや接点ビア内に存在する空隙を低減した半導体素子の製造方法を提供し、素子の製造歩留まりを向上させることである。
【0010】
この発明のさらに別の目的は、バリア材料や銅シード材料の堆積後に、溝やビアの開口部での材料の余分な張り出しによる素子の損傷を修復可能な半導体素子の効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の上記の目的、さらに別の目的や利点は、下記に説明されるこの発明の実施例によって実現される。
【0012】
この発明では、GCIBを用いて、二重ダマスク相互接続構造を含む集積回路相互接続構造の溝やビアの材料の除去や再配分を行い、集積回路内の金属相互接続の製造工程や品質を改善する。この工程では、次に薄膜の堆積や構造の充填が可能なように、バリア材料やシード材料を堆積させた後に、溝やビア構造の上部を開くか広げ、構造をより均一で連続的な薄膜で被覆するために、溝またはビア内のより厚い領域からバリア材料やシード材料を再配分したり、残りの材料の一体性を有意に損なったり劣化させることなく、構造の底部の余分で不要な材料の一部を取り除いたりする。GCIB処理は、バリア金属材料堆積後で銅シード層/銅の電気メッキ前に適用することも、銅シード層形成後で銅の電気メッキ前に適用することもできる。
【0013】
この発明は、金属相互接続ラインや接点ビア内に存在する空隙を低減し、素子の製造歩留まりを向上させ、損傷した素子の修復を可能にし、現在の相互接続堆積技術の有用性を次世代以降の集積回路にまで拡張する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、従来から知られている形態のGCIB処理装置100の典型的な構成の基本要素の概略図であり、次のように説明される。真空容器102は、三つの連絡したチャンバであるソースチャンバ104、イオン化/加速チャンバ106、および処理チャンバ108に分けられる。三つのチャンバは、真空ポンプシステム146a、146b、146cによって各々適切な動作圧力まで排気される。ガス蓄積シリンダ111内に蓄積された凝縮性ガス112(例えば、アルゴンまたはN2)は、ガス測定バルブ113およびガス供給管114を介して、所定の圧力で滞留チャンバ116に送られ、適切な形状のノズル110を介して、実質的により低い圧力の真空内に放出される。その結果、超音速ガスジェット118となる。ジェット内の膨張による冷却はガスジェット118の一部をクラスタに凝縮し、各クラスタは緩やかに束縛された数個から数千個の原子または分子からなる。ガススキム孔120は、クラスタ・ジェット内に凝縮されないガス分子をクラスタ・ジェットから部分的に分離し、圧力が高いと問題になる下流領域の圧力を最小にする(例えば、イオナイザ122、高電圧電極126、および処理チャンバ108)。適切に凝縮可能なソースガス112にはアルゴン、窒素、二酸化炭素、酸素などのガスが含まれるが、これらのガスには必ずしも限定されない。
【0015】
ガスクラスタを含む超音波ガスジェット118が形成された後、そのクラスタはイオナイザ122でイオン化される。イオナイザ122は一般に電子衝撃イオナイザであり、一または複数の白熱フィラメント124から熱電子を生成し、その電子を加速誘導し、イオナイザ122を通過させたガスジェット118内のガスクラスタと衝突させる。電子衝撃で、クラスタから電子が放出され、クラスタの一部を正にイオン化させる。一組の適切なバイアスの高電圧電極126は、イオナイザからクラスタ・イオンを抽出し、ビームを生成し、所望のエネルギ(一般に1keVから数十keV)まで加速し、集束してGCIB128を形成する。フィラメント電源136は、イオナイザ・フィラメント124を加熱する電圧VFを提供する。アノード電源134は、フィラメント124から放出された熱電子を加速する電圧VAを提供し、ガスジェット118を含むクラスタを照射して、イオンを生成する。抽出電源138は、高電圧電極をバイアスする電圧VEを提供し、イオナイザ122のイオン化領域からイオンを抽出し、GCIB128を形成する。加速器電源140は、イオナイザ122に対して高電圧電極をバイアスする電圧VACCを提供し、全GCIB加速エネルギがVACC電子ボルト(eV)と等しくなるようにする。一つまたは複数のレンズ電源(例えば図の142、144)は、GCIB128を集束する電位(例えば、VL1、VL2)で高電圧電極をバイアスするために設けることができる。
【0016】
加工品152は、GCIB処理で処理される半導体ウェハまたは他の加工品であってもよく、GCIB128の経路内に配置した加工品ホルダ150上に保持される。多くの用途では大きな加工品の処理を空間的に均一に行えるように考えられているので、走査システムは空間的に均一な結果を得られるように、大きな領域にわたってGCIB128を均一に走査することが望ましい。直角に配置された二対の静電走査板130、132は、所望の処理領域全体でラスタまたは他の走査パターンを生成するように利用できる。ビーム走査を行う場合、GCIB128は走査型GCIB148となり、GCIB48は加工品152の表面全体を走査する。
【0017】
図2は機械走査型GCIB処理装置200の基本要素の概略を示しており、GCIB処理装置200は機械的走査技術を用いて、GCIBに対して加工品152を走査する。GCIB形成は図1に示したものと同様であるが、図2の機械走査型GCIB処理装置200の場合、GCIB128は静止しており(走査されない)、GCIB128に対して加工品152を機械的に走査し、加工品152の表面全体にGCIB128の効果を分布させる。また、図1の単一のソースガス供給に対して、第二および第三ガス蓄積シリンダ250、256内に各々格納した別の凝縮性ソースガス252、258が追加されている。三つの制御バルブ246、248、254は、凝縮性ソースガス112、252、258の流れを各々制御する。適切な制御によって、バルブ246、248、254はガス供給管114を介して滞留チャンバ116に、任意のソースガス112、252、または258を選択したり、二つ以上のガス112、252、258の混合物を供給できる。バルブ246、248、254は好ましくは、完全にシャットオフ可能な電気制御型マスフロ制御バルブである。
【0018】
X走査アクチュエータ202は、X走査モーション208の方向(紙面に対して直交する方向)に加工品ホルダ150を直線的に移動させる。Y走査アクチュエータ204は、X走査モーション208と直交するY走査モーション210の方向に、加工品ホルダ150を直線的に移動させる。X走査およびY走査モーションの組み合わせによって、加工品ホルダ150に保持された加工品152を、GCIB128に対してラスタ状の走査モーションで移動させ、GCIB128で加工品152の表面を均一に照射し、加工品152を均一に処理する。加工品ホルダ150は、GCIB128の軸に対して所定の角度で加工品152を配置し、GCIB128が加工品152の正面に対して、所定のビーム入射角206を有するようにする。ビーム入射角206は90°または他の角度であってもよく、GCIB128に露出させた加工品152の面上の溝またはビアを必要に応じて配置できる。Y走査中、加工品ホルダ150で保持した加工品152は、指示部152A、150Aで各々指示した代わりの位置「A」に示した位置から移動する。二つの位置の間の移動中、加工品152はGCIB128に対して走査され、両方の極端な位置では、GCIB128の経路から完全に外れるように移動する(オーバスキャン)。図2には明確には示されていないが、同様の走査およびオーバスキャンは、直交するX走査モーション208の方向でも行われる(紙面に対して直交する方向)。
【0019】
ビーム電流センサ222は、加工品ホルダ150がGCIB128の経路から外れて走査されたとき、GCIB128のサンプルを遮断するように、GCIB128の経路内の加工品ホルダ150の向こう側に配置する。ビーム電流センサ222は好ましくはファラデカップ等であり、電気的絶縁マウント212を介して真空容器102の壁に取り付ける。
【0020】
コントローラ220は、マイクロコンピュータベースのコントローラであってもよく、電気ケーブル216を介して、X走査アクチュエータ202およびY走査アクチュエータ204に接続し、X走査アクチュエータ202およびY走査アクチュエータ204を制御して、GCIB128の内外に加工品152を配置し、GCIB128に対して加工品152を均一に走査し、GCIB128による加工品152の均一な処理を実現する。コントローラ220は、リード214を介して、ビーム電流センサ222で集めたサンプルビーム電流を受け取り、GCIBを監視し、望ましい所定の照射量が送られたとき、GCIB128から加工品152を取り除くことで、加工品152が受け取るGCIB照射量を制御する。さらに、コントローラ220は、電気ケーブル218を介して、バルブ246、248、254に接続し、バルブ246、248、254を制御して、任意のガス112、252、または258を選択したり、各成分ガスの割合を制御した混合物において二つ以上のガスを選択する。さらに、コントローラ220は、ガス供給管114を介した滞留チャンバ116への所定のソースガスまたはガス混合物の流速を設定し、既知の成分を制御したガスジェット118を生成する。従って、ソースガスは単一のガスであっても、二つ以上のガスの混合物であってもよく、既知の成分を制御したソースガスから形成したGCIB128を生成できる。コントローラ220は、機械走査型GCIB処理装置200の他の機能および動作を制御する全体的なシステム・コントローラの一部であってもよい。なお、追加のバルブで制御した追加のガスを備えた追加のガスシリンダを設けて、GCIBソースガス成分の混合可能性を増大させることもできる。また、例えば、シリンダ111等の任意の単一ガスシリンダに、所定の割合の二つ以上のソースガスのソースガス混合物を充填し、単一のガスシリンダおよびバルブを用いて、ソースガス混合物を提供することもできる。
【0021】
図3は、集積回路製造段階の典型的な銅相互接続ビア構造300を示している。金属相互接続層302、304は、最終的に集積回路上のいくつかの相互接続層になるものの二つである。二つの金属相互接続層302、304の間の相互接続ビアには、バリア材料308と銅シード材料310を形成した後、電気メッキ銅材料312を充填する。二つの金属相互接続層302、304は、層間誘電体材料306によって分離されている。相互接続金属として銅を用いない他の相互接続ビア構造は、銅シード層310を除いて図3に示されているものと同様の形態を有する。
【0022】
図4は、薄膜堆積処理中に発生する可能性がある問題を示す銅相互接続ビア構造400の概略図である。バリア材料308や銅シード材料310の不均一な分布によって、溝またはビアの上部に余分な材料の張り出し410が生じることがある。この材料の張り出し410は、溝またはビア開口部の「ネックイン」を引き起こし、次に相互接続金属304による薄膜の堆積や構造の充填を制限したり妨げたりする。相互接続金属304を構造内に充填できない場合、空隙420が形成される。バリア材料308や銅シード材料310の不均一な分布によって、特に構造430の底部の角の近傍で側壁の被覆が不十分となることもある。側壁の被覆が不十分であると、バリア材料層が薄すぎて銅の拡散を防ぐことができなかったり、銅シード層が薄くなりすぎて次の銅の電気メッキを行えなくなる。バリア材料308や銅シード材料310の不均一な分布によって、溝やビア440の底部に材料が盛り上がることもある。この底部のより厚い材料440によって、構造は相互接続金属304に比べて実質的に高い固有抵抗を有するようになったり、構造430の底部の角の近傍で銅シード材料310の被覆が不連続になることもある。
【0023】
この発明によるガスクラスタ・イオンビーム技術を適用することで、次の薄膜堆積や構造の充填を可能にするために、バリア材料やシード材料堆積後に、溝またはビア構造の上部を開くか広げ、より均一で連続的な膜で構造を被覆するために、溝またはビア内のより厚い領域からバリア材料やシード材料を再配分したり、残りの材料の一体性を有意に損なったり劣化させることなく、構造の底部の余分で不要な材料の一部を取り除くことができる。
【0024】
相互接続溝またはビアの側壁に存在するバリア材料や銅シード材料のエッチング/スパッタリングは、集積回路表面に対してほぼ法線方向(円筒の相互接続ビアの軸に対してほぼ平行、または溝状ビアの場合は溝の正中面に対してほぼ平行)に入射するガスクラスタ・イオンビームを適用することで非常に小さくできる。好ましくは、GCIBは、適切なビームフラックス密度と実用上一致したとおりの低い発散率および放射率を有し、実用的な処理速度を提供する。なお、このような実用的なGCIBは、数度程度のばらつきを有することができる。ビアの軸に対する平行度からのビーム要素のばらつきのために、側壁に衝突するようなガスクラスタ・イオンは、ほぼ法線方向で面に衝突するものに比べて非常に低いスパッタ量となる。このスパッタ特性は、既存のモノマーイオンを用いるときに発生するものとは著しく異なる。モノマーイオンは、ほぼ法線方向より低い入射角の方がずっと高いスパッタ量となり、これは側壁の破壊につながる。モノマーイオンは、スパッタで取り除かれない下地材料にも損傷を与える。GCIBエッチングは、材料の一体性を有意に損なったり劣化させることなく、相互接続ビアまたは溝の底部の材料を選択的に取り除いたり再配分することに有効である。GCIBエッチングは、残りの材料の一体性を有意に損なったり劣化させることなく、溝またはビア構造の上部を開いたり広げたりすることにも有効である。
【0025】
この発明では、アルゴン等の不活性ガスからなるGCIBを反応性ガスと同時に用いることもできる。例えば、相互接続ビアの底部で材料を取り除くために、不活性ガスと、フッ素(F)、SF6、CF4、Cl2、BCl3等の反応性ガスの混合物のガスクラスタ・イオンを有するGCIBを用いて、ビアの底部で材料を揮発させることもできる。GCIB処理で不活性ガスクラスタのみを用いる場合、ビア構造の底部からのスパッタ材料が、ビアの側壁に再堆積する傾向がある。GCIBクラスタにフッ素を含むガスを加えることで、ビアの側壁へのスパッタ材料の再堆積が低減される。さらに、酸素または水素ガスをクラスタに加えると、ビア底部の残留物に炭素材料が存在する場合や、例えばフッ素関連の反応性ガスとしてCF4を用いる場合など、ガスクラスタ・イオンビーム成分に炭素が含まれる場合などに、C−Fポリマの形成を最小にできる。ポリマ形成を低減することで、ビアの底部から側壁にスパッタ材料が再堆積する傾向も低減される。二重ダマスク相互接続構造では、バリア材料や銅シード材料の除去は、GCIBの入射に対して法線方向の近傍の全ての面で発生する。これは、CMPでは薄くすることが難しい金属管誘電体上部の材料を薄くするという利点も提供する。
【0026】
より多くの既存のプラズマ・エッチングまたは反応性イオンエッチング技術に比べて、溝またはビア構造からのGICB除去や再配分には、いくつかの利点がある。1)GCIB処理は、10−4Torr以下で容易に実行される。この処理圧の低さは重要であり、反応性イオンの平均自由行程もそれに応じて長くなり、ビームの平行度もある程度保持できる。2)ガスクラスタ・ビームはノズルソースから形成され、一般にビーム光学系および加速系を用いて、実質的に平行なガスクラスタ・イオンビームを形成する。3)ガスクラスタ・イオンは、ほぼ法線方向で(ビアの軸に対して平行に)表面に衝突するように導くことができる。4)ガスクラスタ・イオンは、ガス粒子の混合物によって形成され、バリア材料や銅シード材料と反応する(ハロゲンを含む分子F、SF6、CF4、Cl2、BCl3など)。5)ガスクラスタ・イオンは、O2またはH2などの結合ガスを含むことができ、これらはフリーラジカル(フッ素化)分子と反応し、フッ素化粒子の高分子化を防ぐのに役立つ。6)さらに、GCIBクリーニング処理を追加して、バリア材料や銅シード材料から表面酸化物や汚染物を除去できる。7)GCIB処理チャンバは、堆積クラスタツールと容易に接続でき、次にシード堆積またはプラグ充填ステップを行う前の再酸化を最小にできる。8)銅ダマスク処理の場合、より低い銅金属相互接続層の表面をGCIBで露出させ調整し、次に銅粒子を成長させるためのシード層を最適化できる。
【0027】
図5は、溝の底部の断面図についての走査型電子顕微鏡写真であり、構造の側壁および底部の角近傍でのバリア材料の不均一分布および被覆を示している。
【0028】
図6は、この発明によるガスクラスタ・イオンビーム処理後の溝底部の断面図についての走査型電子顕微鏡写真であり、より均一で連続的なバリア材料層を示している。この例では、ガスクラスタ・イオンビーム処理は2ステップで行われ、第一ステップではより素早く材料を再配分するために強い処理を行い、第二ステップでは弱い処理を行って、滑らかで高品質な表面仕上げを行った。2ステップ処理の詳細は、(表1)に示されている。列挙した処理パラメータは決して限定するものではなく、当業者には明らかなように、他の処理値を同様に用いることもできる。
【0029】
表1 型的なGCIB処理条件
ステップ カ゛スヒ゛ーム・エネルキ゛(keV) イオン照射量(イオン/cm2
1 Ar 25 1×1016
2 Ar 3 3×1015
図7は、接点ビアの断面図についての走査型電子顕微鏡写真であり、バリア材料堆積後の構造上部の余分な量の材料を示している。ビアは完全に閉鎖され、次に銅シード材料および電気メッキの銅堆積で構造を充填できず、相互接続金属または接点ビア内に空隙が形成される。
【0030】
図8は、接点ビアの断面図についての走査型電子顕微鏡写真であり、この発明によるガスクラスタ・イオンビーム処理後、ビア上部でバリア材料を除去したことを示し、次の構造の処理を可能にしている。この例では、ガスクラスタ・イオンビーム処理は、図6に示した例、つまり(表1)に示した2ステップ処理とほぼ同様である。
【0031】
様々な実施例についてこの発明を説明してきたが、当然のことながら、この発明はその精神の範囲内の別のおよび他の様々な実施例でも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
その他の目的や別の目的と共に、この発明をよりよく理解できるように添付の図面および詳細な説明を参照する。
【図1】この発明で用いられる静電走査型GCIB処理装置の基本要素を示す概略図である。
【図2】この発明で用いられる機械走査型GCIB処理装置の基本要素を示す概略図である。
【図3】集積回路の二つの金属相互接続層の間の典型的な銅相互接続ビアの概略図である。
【図4】薄膜堆積処理中に発生する可能性がある問題を示す銅相互接続ビアの概略図である。
【図5】溝の底部の断面図についての走査型電子顕微鏡写真であり、側壁および底部近傍の角でのバリア材料の不均一な分布および被覆を示している。
【図6】この発明による処理後の溝の底部の断面図についての走査型電子顕微鏡写真であり、より均一で連続的なバリア材料層を示している。
【図7】接点ビアの断面図についての走査型電子顕微鏡写真であり、バリア材料堆積後の構造の上部での余分な量の材料を示している。
【図8】接点ビアの断面図についての走査型電子顕微鏡写真であり、構造の上部でのバリア材料の除去を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板内に延びその、不要な材料が開口部の大きさを狭めるかまたは低減している凹部を処理する方法であって、加速したガスクラスタ・イオンビームを不要な材料に制御可能なように導くステップを有する方法。
【請求項2】
加速したガスクラスタ・イオンビームが、不要な材料の一部または全部を取り除くように不要な材料をエッチングする請求項1記載の方法。
【請求項3】
不要な材料が、バリア材料である請求項2記載の方法。
【請求項4】
不要な材料が、シード材料である請求項2記載の方法。
【請求項5】
不要な材料が、Ta、TiN、TaN、WNおよびCuからなるグループから選択した少なくとも一つの成分を含む金属である請求項2記載の方法。
【請求項6】
ガスクラスタ・イオンビームが、不活性ガスクラスタ・イオンを有する請求項2記載の方法。
【請求項7】
ガスクラスタ・イオンビームが、Ar、F、SF6、CF4、O、およびHからなるグループから選択したガスクラスタ・イオンを有する請求項2記載の方法。
【請求項8】
ガスクラスタ・イオンビームが、Cl2およびBCl3からなるグループから選択したガスクラスタ・イオンを有する請求項2記載の方法。
【請求項9】
ガスクラスタ・イオンビームが、不活性ガス成分、ハロゲン関連ガス成分、およびOとHからなるグループから選択した成分を有する請求項2記載の方法。
【請求項10】
凹部が中心軸を備えた実質的に円筒のビアであり、
前記中心軸に対してほぼ平行にガスクラスタ・イオンビームを導く請求項2記載の方法。
【請求項11】
凹部が仮想的正中面を備えた溝であり、
仮想的正中面とほぼ平行にガスクラスタ・イオンビームを導く請求項2記載の方法。
【請求項12】
半導体基板内に延びる凹部の開口部、または内部に不均一に分布した材料を再配分する方法であって、加速したガスクラスタ・イオンビームを材料に導くステップを有する方法。
【請求項13】
さらに凹部が側壁と底部を含み、
加速したガスクラスタ・イオンビームが材料の一部を移動し、不均一に分布した材料の均一性を向上させる請求項12記載の方法。
【請求項14】
不均一に分布した材料が、バリア材料である請求項13記載の方法。
【請求項15】
不均一に分布した材料が、シード材料である請求項13記載の方法。
【請求項16】
不均一に分布した材料が、開口部の近傍の領域でより厚く、凹部内の領域でより薄く、
加速したガスクラスタ・イオンビームが、より厚い領域からより薄い領域に材料の一部を再配分する請求項13記載の方法。
【請求項17】
側壁と底部が接合している底部の角を凹部がさらに含み、
不均一に分布した材料が、底部の角またはその近傍に不連続部を有し、
加速したガスクラスタ・イオンビームが、不均一に分布した材料の一部を再配分し、不連続部を充填する請求項13記載の方法。
【請求項18】
不均一に分布した材料が、Ta、TiN、TaN、WNおよびCuからなるグループから選択した少なくとも一つの成分を含む金属である請求項13記載の方法。
【請求項19】
ガスクラスタ・イオンビームが、不活性ガスクラスタ・イオンを有する請求項13記載の方法。
【請求項20】
ガスクラスタ・イオンビームが、Ar、F、SF6、CF4、O、およびHからなるグループから選択したガスクラスタ・イオンを有する請求項13記載の方法。
【請求項21】
ガスクラスタ・イオンビームが、Cl2およびBCl3からなるグループから選択したガスクラスタ・イオンを有する請求項13記載の方法。
【請求項22】
ガスクラスタ・イオンビームが、不活性ガス成分、ハロゲン関連ガス成分、およびOとHからなるグループから選択した成分を有する請求項13記載の方法。
【請求項23】
凹部が中心軸を備えた実質的に円筒のビアであり、
前記中心軸に対してほぼ平行にガスクラスタ・イオンビームを導く請求項13記載の方法。
【請求項24】
凹部が仮想的正中面を備えた溝であり、
仮想的正中面とほぼ平行にガスクラスタ・イオンビームを導く請求項13記載の方法。
【請求項25】
半導体基板内に延び、開口部を遮断する不要な材料によって内部に空隙が形成された凹部を処理する方法であって、加速したガスクラスタ・イオンビームを不要な材料に導くステップを有する方法。
【請求項26】
加速したガスクラスタ・イオンビームが、凹部の遮断された開口部を再び開くように、不要な材料をエッチングする請求項25記載の方法。
【請求項27】
不均一に分布した材料が、バリア材料である請求項25記載の方法。
【請求項28】
不均一に分布した材料が、シード材料である請求項25記載の方法。
【請求項29】
不均一に分布した材料が、Ta、TiN、TaN、WNおよびCuからなるグループから選択した少なくとも一つの成分を含む金属である請求項25記載の方法。
【請求項30】
ガスクラスタ・イオンビームが、不活性ガスクラスタ・イオンを有する請求項25記載の方法。
【請求項31】
ガスクラスタ・イオンビームが、Ar、F、SF6、CF4、O、およびHからなるグループから選択したガスクラスタ・イオンを有する請求項25記載の方法。
【請求項32】
ガスクラスタ・イオンビームが、Cl2およびBCl3からなるグループから選択したガスクラスタ・イオンを有する請求項25記載の方法。
【請求項33】
ガスクラスタ・イオンビームが、不活性ガス成分、ハロゲン関連ガス成分、およびOとHからなるグループから選択した成分を有する請求項25記載の方法。
【請求項34】
凹部が中心軸を備えた実質的に円筒のビアであり、
前記中心軸に対してほぼ平行にガスクラスタ・イオンビームを導く請求項25記載の方法。
【請求項35】
凹部が仮想的正中面を備えた溝であり、
仮想的正中面とほぼ平行にガスクラスタ・イオンビームを導く請求項25記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−507670(P2006−507670A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551732(P2004−551732)
【出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/035190
【国際公開番号】WO2004/044954
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(505099750)エピオン コーポレーション (9)
【Fターム(参考)】