説明

電力増幅器

【課題】本発明は、電子入力信号51を増幅するための電力増幅器およびそのような電力増幅器を伴うマルチバンドが可能なフロントエンドに関する。
【解決手段】電力増幅器は、入力部52および出力部53を有する増幅器トランジスタステージ1と、増幅器トランジスタステージ1の出力部53と入力部52の間に配置された帰還ループ4を備える。帰還ループ4は、RF経路にコンデンサ41および抵抗性要素44を、DC給電経路に誘導性要素42を備え、前記抵抗性要素は、帰還ループ内に可変抵抗として構成された帰還トランジスタ45およびバイアス制御回路46を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照として本明細書に組み込まれる優先権出願EP04292850.7に基づく。
【0002】
本発明は、電子入力信号を増幅するための電力増幅器ならびにそのような電力増幅器を装備したマルチバンドが可能なフロントエンドに関する。
【背景技術】
【0003】
電力増幅器は、通信産業で広く使用されている。UMTS、WiMax、高速データファイバ伝送システムあるいはマイクロ波システムなどの通信応用分野では、広帯域信号、例えばスペクトラム拡散信号を効率的な方式で増幅することができる電力増幅器を必要としている。広帯域電力増幅器は、使用周波数範囲に対してゲインの変動を示すことがしばしばであるので、その電力増幅器がカバーするべき複数の周波数帯域に対して同じ出力電力を供給することは難しい。
【0004】
例えば、可変減衰器を使用して周波数に対するゲインの変動を補償する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、電子入力信号を増幅するための電力増幅器であって、入力部および出力部を有する増幅器トランジスタステージと、増幅器トランジスタステージの出力部と入力部の間に配置された帰還ループを備え、前記帰還ループが、RF経路にコンデンサおよび抵抗性要素を、DC給電経路に誘導性要素を備え、前記抵抗性要素が、帰還ループ内に可変抵抗として構成された帰還トランジスタおよびバイアス制御回路を備える電力増幅器によって実現される(RF=無線周波数、DC=直流)。さらに、本発明は、そのような電力増幅器を1つまたは複数個備える基地送信局または例えばマルチバンド/複数標準対応の携帯電話のようなユーザ端末のためのマルチバンド可能なフロントエンドを対象にしている。
【0006】
RF経路にコンデンサが、DC給電経路に誘導性要素が加えられている前述の帰還ループのRF経路内に帰還トランジスタを使用しているので、増幅器の一定のゲインおよび安定性制御を達成することができる。使用する周波数範囲に対するゲインの変動を補償するにはこのゲインおよび安定性制御で十分である。異なる周波数帯域での出力を調整するためにこのような帰還ループが使用される。本発明は、広帯域の電力増幅器の、周波数に対するゲインの動き(例えば前置増幅チェーン内での)を改善し、したがってマルチバンド可能なフロントエンド、例えばUMTS基地局または携帯端末の出力電力の動きを改善する。本発明は、さらに可変減衰器または従来から今までマルチバンド可能なフロントエンドの増幅チェーン内で使用されてきた可変ゲイン増幅器ステージを節約することを可能にし、それによってゲイン変動の問題に対する強力で安価な解決策を提供する。
【0007】
本発明のさらなる利点は、従属請求項によって示される本発明の実施形態によって実現される。
【0008】
バイアス制御回路は、帰還トランジスタを異なる入力電圧でバイアスする。それによってバイアス制御回路は、帰還ループを、したがって電力増幅器を電子入力信号の特定の周波数帯域に適合させる。
【0009】
電力増幅器は、電子入力信号の異なる周波数範囲に対応する異なるバイアス電圧を記憶するルックアップテーブルを備えていることが好ましい。例えば、ルックアップテーブルの値は、1.8GHzから2.7GHzまでの周波数範囲をカバーする。バイアス制御回路は、ルックアップテーブルにアクセスし、ルックアップテーブルのバイアス電圧値それぞれに従ったバイアス電圧を帰還トランジスタに印加する。
【0010】
バイアス制御回路は、電子入力信号の周波数帯域を示す制御信号を受けるための入力部を有することが好ましい。フロントエンドの従属する制御ユニットが、この制御信号を生成することができる。さらに、電力増幅器を据え付ける際に設定されるジャンパまたはスイッチによってその制御信号に影響を与えることができる。
【0011】
本発明のさらなる実施形態によれば、バイアス制御回路は、電力増幅器の電子入力信号の周波数帯域を決定し、この様にして決定されたデータによってルックアップテーブルから対応するバイアス電圧値を選択する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態によれば、バイアス制御回路は増幅器トランジスタステージの出力信号を分析し、自動的にバイアス電圧を適応させて所与のゲインを達成する。
【0013】
増幅器のトランジスタステージは、高周波数の、特に1GHzより高い周波数の電子信号を増幅するようになされた1つまたは複数の増幅器トランジスタを備えていることが好ましい。例えば、電力増幅器トランジスタステージは、電界効果トランジスタ1つあるいはこの様なトランジスタを2つ以上並列に配置したものを備えている。
【0014】
帰還ループのFR経路は、帰還ループを帰還トランジスタおよび/または増幅器トランジスタステージの特性に適合させるために使用される誘導性要素をさらに備えることが好ましい。
【0015】
本発明のこれらのならびにその他の特徴および利点は、現状での好ましい例示的な実施形態についての下記の詳細説明を添付図面とともに読めばより良く理解されよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、電子入力信号51を増幅する広帯域電力増幅器を示し、電力増幅器は、増幅器トランジスタステージ1、入力整合回路網2、出力整合回路網3および帰還ループ4を有する。
【0017】
入力整合回路網2および出力整合回路網3は、電力増幅器の入力/出力の動きを増幅チェーンの隣接する構成要素に適合させる適合回路網である。例えば、入力整合回路網は、ここでは2つの伝送線21および22ならびにコンデンサ23を備える。例えば、出力整合回路網3はここでは伝送線31を備える。
【0018】
増幅器トランジスタステージ1は、電界効果トランジスタ11を備える。電界効果トランジスタ11のゲートは、入力整合回路網2に接続されている。電界効果トランジスタ11のドレーンは、出力整合回路網3に接続されている。さらに、増幅器トランジスタステージによって供給することができるRF出力を改善するために、並列に配置された2つ以上の電界効果トランジスタを増幅器トランジスタステージ1に備えることが可能である。
【0019】
さらに増幅トランジスタとして、他の種類のトランジスタ、例えばバイポーラトランジスタを使用することが可能である。
【0020】
増幅器トランジスタステージ1は、入力52および出力53を有する。増幅器トランジスタステージのこの出力53とこの入力52の間に帰還ループ4が配置されている。帰還ループ4は、RF経路内にコンデンサ41および帰還トランジスタ45を有する。DCをRF経路から阻止するためにDC給電経路に誘導性要素42を使用する。
【0021】
コンデンサ41の一端子は増幅器トランジスタステージ1の出力部53に接続されている。コンデンサ41のその他の端子は、帰還トランジスタ45のドレーンおよびDC給電経路内の誘導性要素42に接続されている。帰還トランジスタ45のソースは増幅器トランジスタステージ11の入力部52に接続されている。誘導性要素42のその他の端子は電源電圧43に接続されている。帰還トランジスタ45のゲートはバイアス制御回路46に接続されている。
【0022】
コンデンサ41は帰還ループ4に印加されたDC電圧を阻止する。誘導性要素42はRF信号をDC給電から阻止する。例えば、その誘導性要素はコンデンサと接続されたλ/4のラインである。
【0023】
バイアス制御回路46は、帰還トランジスタ45を異なる入力電圧でバイアスする。バイアス制御回路46によって印加された入力電圧は電子入力信号51の周波数帯域に依存することが好ましい。
【0024】
例えば、図1に例示されている電力増幅器は、UMTS通信システムのマイクロBTS(ノードB)のためのマルチバンド電力増幅器である(BTS=ベーストランシーバステーション;UMTS=ユニバーサルモバイルテレコミュニケーションシステム)。これはいくつかの周波数帯域、例えば1.8から2.0GHz帯域および2.5〜2.7GHz帯域をカバーしている。
【0025】
帰還トランジスタの適切なバイアス電圧は、各周波数帯域のためのゲート電圧を含むルックアップテーブルを使用して調整することができるか、あるいは増幅器出力信号を分析することにより適応可能とすることができる。
【0026】
図2〜図5は、異なるバイアス電圧についての周波数に対する信号ゲイン、Kファクタ、入力反射および出力反射を示している。電力増幅器が取り扱わなくてはならない周波数帯域に依存して、バイアス制御回路が帰還トランジスタ45のゲートに特定のバイアス電圧を印加する。
【0027】
例えば、ルックアップテーブル47は、異なる周波数範囲に対応する異なるバイアス電圧値を記憶する。
【0028】
初期化ステップの最中に、電力増幅器が取り扱う周波数範囲それぞれについて対応するバイアス電圧値が決められる。選択されるバイアス電圧値は、それぞれの周波数帯域での動作のために使用可能な信号ゲイン、Kファクタ、入力お反射よび出力反射に依存する。例えば、Kファクタは1より大きな値を有しなければならないし、信号ゲインは予め決められた最低値を有しなければならない。入出力整合の品質は帰還ループ4にも影響され、したがって帰還トランジスタのバイアス範囲を選ぶときには入力および出力反射を考慮に入れなければならない。次いで、例えば、シミュレーションまたは測定によって計算された図2〜図5のような図表によりバイアス電圧値が選定される。
【0029】
バイアス制御回路46は、例えば、ディジタル/アナログコンバータによってルックアップテーブル47のディジタルバイアス電圧値を、帰還トランジスタ45のゲートに印加するアナログバイアス電圧に変換する。
【0030】
例えば、バイアス制御回路は、電子入力信号51の周波数帯域を示す制御信号6を受ける。バイアス制御回路46は、ルックアップテーブル47にアクセスし、制御信号6内に示された周波数帯域にリンクするバイアス電圧値を選定し、ルックアップテーブ47のその選択されたバイアス電圧値に対応するバイアス電圧を帰還トランジスタ45のゲートに印加する。
【0031】
本発明のさらなる実施形態によれば、バイアス制御回路46は、電子入力信号51の周波数帯域を例えば帯域通過フィルタバンクによって決定する。
【0032】
本発明のさらなる実施形態によれば、バイアス制御回路はさらなる帰還ループを介して増幅器トランジスタステージ1の出力部53に接続されている。バイアス制御回路は、この帰還ループを通して出力信号の信号レベルを決定し、帰還トランジスタ45に供給されるバイアス電圧を適合させて出力部53の平均信号レベルが所与の閾値内に設定されるようにする。
【0033】
2つのトランジスタ、増幅トランジスタ11と帰還トランジスタ45を、そのパッケージを通して導く4つのコネクタをもつ単一のチップの上で集積することが可能である。4つのコネクタは、コンデンサ41および誘導性要素42を接続するために使用される。このように設計者は、適切なDC阻止コンデンサを使用するためのあらゆる選択肢を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による電力増幅器のブロック図である。
【図2】周波数に対する信号ゲインを示す図表である。
【図3】周波数に対するKファクタを示す図表である。
【図4】周波数に対する入力反射を示す図表である。
【図5】周波数に対する出力反射を示す図表である。
【符号の説明】
【0035】
1、11 増幅器トランジスタステージ
2 入力整合回路網
3 出力整合回路網
4 帰還ループ
6 制御信号
21、22、31 伝送線
23、41 コンデンサ
11 電界効果トランジスタ
42 誘導性要素
43 電源電圧
44 抵抗性要素
45 帰還トランジスタ
46 バイアス制御回路
47 ルックアップテーブル
51 電子入力信号
52 入力
53 出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子入力信号を増幅するための電力増幅器であって、入力部および出力部を有する増幅器トランジスタステージと、増幅器トランジスタステージの出力部と入力部の間に配置された帰還ループを備え、前記帰還ループが、RF経路にコンデンサおよび抵抗性要素を、DC給電経路に誘導性要素を備え、前記抵抗性要素が、帰還ループ内に可変抵抗として構成された帰還トランジスタおよびバイアス制御回路を備え、コンデンサの一端子が増幅器トランジスタステージの出力部に接続され、コンデンサのその他の端子が、帰還トランジスタおよび誘導性要素に接続され、バイアス制御回路が、帰還トランジスタを異なる入力電圧でバイアスするようになされている電力増幅器。
【請求項2】
電力増幅器が、電子入力信号の異なる周波数範囲に対応する異なるバイアス電圧値をもつルックアップテーブルを備え、バイアス制御回路が、ルックアップテーブルにアクセスし、ルックアップテーブルのバイアス電圧値に従ったバイアス電圧を帰還トランジスタに印加するように構成された請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項3】
バイアス制御回路が、電子入力信号の周波数帯域を示す制御信号を受けるための入力部を有し、バイアス制御回路が、示された周波数帯域にバイアス電圧を調整するように構成されている請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項4】
バイアス制御回路が、電子入力信号の周波数帯域を決定するように構成されている請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項5】
バイアス制御回路が、増幅器トランジスタステージの出力信号を分析し、自動的にバイアス電圧を適応させるように構成された請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項6】
増幅器トランジスタステージが、高周波数、特に1GHzより高い周波数の電子入力信号を増幅するようになされた1つまたは複数の増幅器トランジスタを備える請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項7】
帰還ループが、RF経路にさらなる誘導性要素をさらに備える請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項8】
増幅器トランジスタステージが、並列に配置された2つ以上のトランジスタを備える請求項1に記載の電力増幅器。
【請求項9】
電子入力信号を増幅する1つまたは複数の電力増幅器を備えるマルチバンド可能なフロントエンドであって、電力増幅器が、入力部および出力部を有する増幅器トランジスタステージと、増幅器トランジスタステージの出力部と入力部の間に配置された帰還ループを備え、前記帰還ループが、RF経路にコンデンサおよび抵抗性要素を、DC給電経路に誘導性要素を備え、前記抵抗性要素が、帰還ループ内に可変抵抗として構成された帰還トランジスタおよびバイアス制御回路を備え、コンデンサの一端子が増幅器トランジスタステージの出力部に接続され、コンデンサのその他の端子が、帰還トランジスタおよび誘導性要素に接続され、バイアス制御回路が、帰還トランジスタを異なる入力電圧でバイアスするようになされている、マルチバンド可能なフロントエンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−157917(P2006−157917A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−341486(P2005−341486)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(391030332)アルカテル (1,149)
【Fターム(参考)】