説明

電動自転車およびそのブレーキ調整方法

【課題】容易且つ正確にブレーキレバーのストロークを調整することが可能な電動自転車を提供することを目的とする。
【解決手段】回生充電機能を備えた電動自転車であって、ブレーキ装置37は、ブレーキ本体と、ブレーキレバー50の操作に連動して切換えられるブレーキスイッチ52とを有し、ブレーキレバー50を操作していない開放位置Aとブレーキ本体が作動する作動開始位置Bとの間の遊びの範囲S1内に、ブレーキスイッチ52のオン・オフが切換えられるスイッチ切換位置Cが設定され、ブレーキスイッチ52がオンに切換えられることで回生充電機能が働き、ブレーキレバー50が操作されて開放位置Aからスイッチ切換位置Cに達し、ブレーキスイッチ52がオフからオンに切換えられると、バッテリーの残量表示灯とモード表示灯との輝度が増大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生充電機能を有する電動自転車およびそのブレーキ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動自転車としては例えば、ペダルにかかる踏力を検出し、この踏力に応じた補助動力をモータによって発生し、モータの補助動力により前車輪を回転駆動させるものがある。モータは前車輪に設けられ、フレームには、モータに駆動用の電力を供給するバッテリーが設けられている。
【0003】
図10に示すように、ハンドル16には、機械式のブレーキ(例えばキャリパーブレーキやローラーブレーキ等)を作動させるブレーキレバー18が設けられている。ブレーキとブレーキレバー18とはブレーキワイヤ19を介して連動連結されている。
【0004】
電動自転車には、制動時にモータから発生した電気をバッテリーに充電する回生充電機能が備えられている。回生充電機能の作動および停止はブレーキスイッチ20のオン・オフによって切換えられる。すなわち、ブレーキレバー18を操作して、ブレーキスイッチ20がオフからオンに切換えられると、回生充電機能が働いて回生充電が行なわれ、モータから発生した電気がバッテリーに充電される。ブレーキレバー18から手を離して操作を止めると、ブレーキスイッチ20がオンからオフに切換えられて、回生充電機能が働かず回生充電が行なわれない。
【0005】
ブレーキレバー18については、ブレーキレバー18を操作していない開放位置Aと、ブレーキが機械的に作動する作動開始位置Bと、ブレーキスイッチ20が切換えられるスイッチ切換位置Cと、ブレーキレバー18を最大ストローク操作したときの最大操作位置Dとが設定されている。スイッチ切換位置Cは開放位置Aと作動開始位置Bとの間の遊びの範囲S1内に設定されている。また、スイッチ切換位置Cと作動開始位置Bとの間は所定のストロークS2だけ離れている。
【0006】
これによると、電動自転車を走行している状態で、ブレーキレバー18を操作していないときは、図10の実線で示すように、ブレーキレバー18が開放位置Aにあり、ブレーキスイッチ20がオフの状態に保たれるため、回生充電機能は働かず、回生充電は行なわれない。
【0007】
また、ブレーキレバー18を操作した場合、図10の一点鎖線に示すように、ブレーキレバー18が開放位置Aからスイッチ切換位置Cに達した時点で、ブレーキスイッチ20がオフからオンに切換えられるため、回生充電が開始される。さらにブレーキレバー18を操作して、図10の二点鎖線に示すように、ブレーキレバー18がスイッチ切換位置Cから作動開始位置Bに達した時点で、ブレーキが作動して車輪に制動力が付与される。尚、ブレーキレバー18がスイッチ切換位置Cと最大操作位置Dとの間に位置しているときに回生充電機能が働き、回生充電が行なわれる。
【0008】
下記特許文献1には、ブレーキレバーの操作に連動して切換えられるブレーキスイッチが設けられ、ブレーキスイッチの切換えによって回生充電の実行及び停止を切換える電動自転車が開示されている。
【特許文献1】特開2003−204602
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記の従来形式では、機械式のブレーキが実際に作動するよりも前に、ブレーキスイッチ20がオンに切換えられて回生充電機能を働かせる方が制動力のより多くを回生電流として回収することができる。したがって、前記所定のストロークS2を大きく設定することにより、回生充電量を多くすることができる。
【0010】
しかしながら、前記所定のストロークS2を大きくした場合、その分、作動開始位置Bと最大操作位置Dとの間のストロークS3が減少するため、ブレーキの制動力が低下し、制動力不足を招くことになる。
【0011】
逆に、前記所定のストロークS2を小さくした場合、機械式のブレーキが実際に作動していない状態で回生充電機能が働いている時間が短くなるため、回生充電量が減ってしまう。
【0012】
したがって、機械式のブレーキの制動力を確保することと回生充電量を確保することとをバランス良く両立させるためには、ブレーキワイヤ19を調整して、前記所定のストロークS2を最適な値に調整する必要がある。しかしながら、作業者は、ブレーキスイッチ20が切換えられるスイッチ切換位置Cを正確に把握することは難しく、前記所定のストロークS2の調整に手間を要するといった問題がある。
【0013】
また、製品出荷前に、前記所定のストロークS2を最適な値に調整しても、その後、使用年月の経過にともなってブレーキワイヤ19が伸びることがあり、このようにブレーキワイヤ19が伸びてしまうと、作動開始位置Bが最大操作位置D側へ変動して、前記所定のストロークS2が増大するとともに作動開始位置Bと最大操作位置Dとの間のストロークS3が減少するため、このままだとブレーキの制動力不足を招くことになる。したがって、このような場合、前記所定のストロークS2が減るとともにストロークS3が増えるようにブレーキワイヤ19を調整する必要があるが、前記と同様に、スイッチ切換位置Cを正確に把握することは難しいため、前記所定のストロークS2の調整に手間を要するといった問題がある。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、容易且つ正確にブレーキレバーのストロークを調整することが可能な電動自転車およびそのブレーキ調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記従来の課題を解決するために、本第1発明は、ブレーキレバーを操作していない開放位置とブレーキ本体が作動する作動開始位置との間の遊びの範囲内に、ブレーキスイッチが切換えられるスイッチ切換位置が設定され、
ブレーキレバーが操作されてブレーキスイッチが切換えられたことを表示する表示手段が設けられ、
ブレーキスイッチの切換えにより回生充電機能が働くものである。
【0016】
これによると、ブレーキレバーのストロークを調整する場合、ブレーキレバーが開放位置からスイッチ切換位置に達すると、ブレーキスイッチが切換えられ、表示手段はブレーキスイッチが切換えられたことを表示する。これにより、作業者は、表示手段を目視することで、ブレーキレバーがスイッチ切換位置に達したことを容易且つ正確に認識(把握)することができる。
【0017】
このようにして認識したスイッチ切換位置から実際にブレーキ本体が作動する作動開始位置までのストロークを求め、求められた前記ストロークが最適な値(目的とする値)になるようにブレーキ連動部材を調整することにより、前記ストロークを最適な値に容易且つ正確に調整することが可能である。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、表示手段の表示に基づいてスイッチ切換位置を容易且つ正確に把握することができるため、ブレーキレバーのスイッチ切換位置と作動開始位置との間のストロークを最適な値に容易且つ正確に調整することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本第1発明は、機械式のブレーキ装置と、補助動力を発生するモータと、モータに駆動用の電力を供給するバッテリーとが設けられ、制動時に、モータから発生した電気をバッテリーに充電する回生充電機能を備えた電動自転車であって、ブレーキ装置は、ブレーキ本体と、ブレーキレバーと、ブレーキ本体とブレーキレバーとの間に連動連結されるブレーキ連動部材と、ブレーキレバーの操作に連動して切換えられるブレーキスイッチとを有し、ブレーキレバーを操作していない開放位置とブレーキ本体が作動する作動開始位置との間の遊びの範囲内に、ブレーキスイッチが切換えられるスイッチ切換位置が設定され、ブレーキレバーが操作されてブレーキスイッチが切換えられたことを表示する表示手段が設けられ、ブレーキスイッチの切換えにより回生充電機能が働くものである。
【0020】
これによると、電動自転車を走行しているとき、ブレーキレバーを制動方向へ操作し、ブレーキレバーが開放位置からスイッチ切換位置に達すると、ブレーキスイッチが切換えられ、回生充電機能が働く。さらに引き続いてブレーキレバーを制動方向へ操作し、ブレーキレバーがスイッチ切換位置から作動開始位置に達すると、ブレーキ本体が作動して制動力が付与される。
【0021】
また、ブレーキレバーのストロークを調整する場合、電動自転車を停止させた状態で、ブレーキレバーを制動方向へ操作し、ブレーキレバーが開放位置からスイッチ切換位置に達すると、ブレーキスイッチが切換えられ、表示手段はブレーキスイッチが切換えられたことを表示する。これにより、表示手段を目視することで、ブレーキレバーがスイッチ切換位置に達したことを容易且つ正確に認識(把握)することができる。
【0022】
さらに引き続いてブレーキレバーを制動方向へ操作し、ブレーキレバーがスイッチ切換位置から作動開始位置に達すると、ブレーキ本体が作動し、車輪に制動力が付与される。これにより、ブレーキレバーが作動開始位置に達したことを容易且つ正確に認識(把握)することができる。
【0023】
前記のようにして認識したスイッチ切換位置から作動開始位置までのストロークを求め、求められたストロークが最適な値になるようにブレーキ連動部材を調整する。これにより、スイッチ切換位置と作動開始位置との間のストロークを最適な値に容易且つ正確に調整することが可能である。
【0024】
本第2発明は、表示手段は表示灯であるものである。
これによると、ブレーキレバーが操作されてスイッチ切換位置に達すると、表示灯はブレーキスイッチが切換えられたことを表示するため、表示灯を目視することにより、スイッチ切換位置を容易且つ正確に把握することができる。
【0025】
本第3発明は、ブレーキスイッチが切換えられたときの表示灯の明るさは、ブレーキスイッチが切換えられていないときの表示灯の明るさと比べて、変化するものである。
これによると、ブレーキレバーが操作されてスイッチ切換位置に達すると、表示灯の明るさが変化するため、表示灯を目視することにより、スイッチ切換位置を容易且つ正確に把握することができる。
【0026】
本第4発明は、前記第1発明から第3発明のいずれか1項に記載の電動自転車のブレーキ調整方法であって、ブレーキレバーを操作し、表示手段によってブレーキスイッチの切換えが表示された時点からブレーキ本体が作動し始める時点までのブレーキレバーのストロークを求め、前記求められたストロークが最適な値になるようにブレーキ連動部材を調整するものである。
【0027】
これによると、表示手段の表示に基づいてスイッチ切換位置を容易且つ正確に把握することができるため、ブレーキレバーのスイッチ切換位置と作動開始位置との間のストロークを最適な値に容易且つ正確に調整することが可能である。
【0028】
以下、本発明における実施の形態を説明する。
図1に示すように、31は電動自転車であり、フレーム32と、前および後車輪34,34と、ハンドル35と、ペダル36と、機械式の前および後ブレーキ装置37,38(図3参照)と、補助動力を発生させるモータ39と、モータ39に駆動用の電力を供給する二次電池のバッテリー40と、ライト41と、操作盤42等が設けられている。
【0029】
モータ39は、ブラシレスモータであり、前車輪33側に設けられている。バッテリー40はフレーム32に着脱自在に設けられ、操作盤42はハンドル35に設けられている。図2に示すように、操作盤42には、電源をオン・オフする電源ボタン44と、モータ39によるアシスト力を切換えるためのアシスト切換ボタン45と、ライト41の点灯・消灯を切換えるライトボタン46と、バッテリー40の残量を表示する複数の残量表示灯47a〜47cと、アシストモードを表示する複数のモード表示灯48a〜48cとが設けられている。尚、残量表示灯47a〜47cおよびモード表示灯48a〜48cはそれぞれLEDからなる。
【0030】
図3,図4に示すように、前ブレーキ装置37は、前車輪33を機械的に制動する前ブレーキ本体49と、前ブレーキレバー50と、前ブレーキ本体49と前ブレーキレバー50との間に連動連結される前ブレーキワイヤ51(ブレーキ連動部材の一例)と、前ブレーキレバー50の操作に連動して切換えられる一方のブレーキスイッチ52とを有している。図4(a)に示すように、前ブレーキ本体49は、キャリパーブレーキであり、ワイヤ調整ねじ49aとブレーキブロック49bとを有している。
【0031】
前記前ブレーキ装置37と同様に、後ブレーキ装置38は、後車輪34を機械的に制動する後ブレーキ本体54と、後ブレーキレバー55と、後ブレーキワイヤ56(ブレーキ連動部材の一例)と、他方のブレーキスイッチ57とを有している。図4(b)に示すように、後ブレーキ本体54は、ローラーブレーキであり、ワイヤ調整ねじ54aを有している。
【0032】
前および後ブレーキレバー50,55はそれぞれ、ハンドル35の左右両端部に取付けられた一方および他方のレバー台59に、軸60を支点に回動自在に設けられている。図5に示すように、前および後ブレーキワイヤ51,56はそれぞれ、アウターケーシング61と、アウターケーシング61内に挿入されたインナーケーブル62と、インナーケーブル62の一端に設けられた端末部材63とを有している。
【0033】
端末部材63は、磁石で構成されており、前および後ブレーキレバー50,55にそれぞれ取付けられている。これにより、前および後ブレーキレバー50,55はそれぞれ、端末部材63を介して、前および後ブレーキワイヤ51,56に接続されている。一方および他方のブレーキスイッチ52,57はそれぞれ、一方および他方のレバー台59に設けられており、端末部材63の磁力によってオン・オフが切換えられる近接スイッチの一種である。
【0034】
また、電動自転車31には、制動時に、モータ39から発生した電気をバッテリー40に充電する回生充電機能と、ブレーキスイッチ52,57のオン・オフに基づいて回生充電機能の作動および停止を切換える制御装置58(図8参照)と、電動自転車31の走行速度を検出する速度センサ67と、ペダル36に作用するトルクを検出するトルクセンサ68とが備えられている。
【0035】
制御装置58は、ドライブ回路66によりモータ39をPWM制御(パルス幅変調制御)しており、両方のブレーキスイッチ52,57がオフであれば、回生充電を行なわず、少なくともいずれか片方のブレーキスイッチ52,57がオフからオンに切換えられると、回生充電機能を働かせて回生充電を行なうように制御する。
【0036】
尚、電源ボタン44をオンにすると、主電源が入って制御装置58が作動し、制御装置58は、現在のバッテリー40の残量に対応する残量表示灯47a〜47cを点灯させるとともに、現在のアシストモードに対応するいずれかのモード表示灯48a〜48cを点灯させる(図2参照)。両方のブレーキスイッチ52,57がオフのとき、制御装置58は、例えば、バッテリー40の残量が約70〜100%の場合、全ての残量表示灯47a〜47cを第1の所定の輝度(明るさの一例)で点灯させ、バッテリー40の残量が約40〜70%の場合、2個の残量表示灯47a,47bを第1の所定の輝度で点灯させ、バッテリー40の残量が約10〜40%の場合、1個の残量表示灯47aを第1の所定の輝度で点灯させ、バッテリー40の残量が約0〜10%の場合、1個の残量表示灯47aを第1の所定の輝度で点滅させ、また、モータ39のアシスト力の強さを示すアシストモードが「強」に切換えられている場合、モード表示灯48aを第1の所定の輝度で点灯させ、アシストモードが「標準」に切換えられている場合、モード表示灯48bを第1の所定の輝度で点灯させ、アシストモードが「オートマチック」に切換えられている場合、モード表示灯48cを第1の所定の輝度で点灯させる。
【0037】
尚、制御装置58は、各残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとをPWM制御しており、デューティー比を変えることによって各残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとの輝度(明るさの一例)を変化させることができる。さらに、制御装置58は、電動自転車31の走行中において、少なくともいずれか片方のブレーキスイッチ52,57がオフからオンに切換えられると、全ての残量表示灯47a〜47cを点滅させ、また、電動自転車31の停止中において、少なくともいずれか片方のブレーキスイッチ52,57がオフからオンに切換えられると、前記第1の所定の輝度(両ブレーキスイッチ52,57が共にオフの時の輝度)よりも約10%程度増大させた第2の所定の輝度で残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとを点灯させる。
【0038】
尚、残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとは、少なくともいずれか片方のブレーキスイッチ52,57がオフからオンに切換えられたことを表示する表示手段の一例である。
【0039】
図5〜図7に示すように、各ブレーキレバー50,55についてはそれぞれ、ブレーキレバー50,55を操作していない開放位置A(図5参照)と、ブレーキ本体49,54が作動する作動開始位置B(図7参照)と、ブレーキスイッチ52,57のオン・オフが切換えられるスイッチ切換位置C(図6参照)と、ブレーキレバー50,55を最大ストローク操作したときの最大操作位置D(図7の仮想線参照)とが設定されている。図5に示すように、スイッチ切換位置Cは開放位置Aと作動開始位置Bとの間の遊びの範囲S1内に設定されている。また、スイッチ切換位置Cと作動開始位置Bとの間は所定のストロークS2だけ離れている。
【0040】
尚、開放位置Aとスイッチ切換位置Cとの間は各ブレーキスイッチ52,57がオフに保たれ、スイッチ切換位置Cと最大操作位置Dとの間は各ブレーキスイッチ52,57がオンに保たれる。
【0041】
以下、上記構成における作用を説明する。
例えば、電動自転車31を出荷する前の調整工程において、作業者が電動自転車31を停止させた状態で電源ボタン44を押してオンにすると(ステップ−1)、主電源が入って制御装置58が起動する(ステップ−2)。
【0042】
制御装置58は、速度センサ67で検出される走行速度が所定速度(例えば時速6km)以下かを判断する(ステップ−3)。この際、電動自転車31は停止しているため、速度センサ67で検出される走行速度は所定速度以下となり、回生充電は行なわれない(ステップ−4)。
【0043】
次に、制御装置58は、両方のブレーキスイッチ52,57が共にオフかを判断する(ステップ−5)。作業者が前後両ブレーキレバー50,55を操作せず、図5の実線で示すように、両方のブレーキレバー50,55が共に開放位置Aにある場合、両方のブレーキスイッチ52,57が共にオフに切換えられた状態となる。これにより、制御装置58は、現在のバッテリー40の残量に対応する残量表示灯47a〜47cと現在のアシストモードに対応するいずれかのモード表示灯48a〜48cとを、第1の所定の輝度で点灯させる(ステップ−6)。
【0044】
例えば、バッテリー40の残量が約40〜70%の場合、2個の残量表示灯47a,47bが第1の所定の輝度で点灯し、アシストモードが「標準」に切換えられている場合、モード表示灯48bが第1の所定の輝度で点灯する。
【0045】
また、ブレーキを調整する場合は、作業者が前ブレーキレバー50と後ブレーキレバー55との少なくとも片方を制動方向Eに操作する。これにより、図6に示すように、例えば前ブレーキレバー50が開放位置Aからスイッチ切換位置Cに達すると、前記ステップ−5において、一方のブレーキスイッチ52がオフからオンに切換えられる。これにより、制御装置58は、デューティー比を大きくして、前記第1の所定の輝度よりも大きな第2の所定の輝度で残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとを点灯させる(ステップ−7)。例えば、バッテリー40の残量が約40〜70%の場合、2個の残量表示灯47a,47bが第2の所定の輝度で点灯し、アシストモードが「標準」に切換えられている場合、モード表示灯48bが第2の所定の輝度で点灯する。
【0046】
このように残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとの輝度が大きくなって明るさが増すことにより、作業者は、残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとを目視することで、図6に示すように、前ブレーキレバー50がスイッチ切換位置Cに達したことを容易且つ正確に認識(把握)することができる。
【0047】
さらに作業者が引き続いて前ブレーキレバー50を制動方向Eに操作することにより、図7の実線で示すように、前ブレーキレバー50が作動開始位置Bに達すると、前ブレーキ本体49が機械的に作動して、前ブレーキ本体49のブレーキブロック49bが前車輪33のリム33aに当接する。この際、作業者は、ブレーキブロック49bの動きを目視すること或いは前車輪33を手で回して回らなくなることにより、前ブレーキレバー50が作動開始位置Bに達したことを容易且つ正確に認識(把握)することができる。
【0048】
作業者は、前記のようにして認識したスイッチ切換位置Cから作動開始位置Bまでの所定のストロークS2(図5参照)を求め、求められた所定のストロークS2が最適な値(目的とする値)になるように、ワイヤ調整ねじ49a(図4参照)を回して前ブレーキワイヤ51を調整する。
【0049】
このように、作業者は残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとの輝度の増大に基づいてスイッチ切換位置Cを容易且つ正確に把握することができるため、前ブレーキレバー50のスイッチ切換位置Cと作動開始位置Bとの間の所定のストロークS2を最適な値に容易且つ正確に調整することが可能である。
【0050】
また、前記ステップ−5において、前ブレーキレバー50と同様に、後ブレーキレバー55が開放位置Aからスイッチ切換位置C(図6参照)に達すると、他方のブレーキスイッチ57がオフからオンに切換えられる。これにより、制御装置58が第2の所定の輝度で残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとを点灯させるため(ステップ−7)、後ブレーキレバー55についても、スイッチ切換位置Cと作動開始位置Bとの間の所定のストロークS2(図5参照)を最適な値に容易且つ正確に調整することが可能である。
【0051】
また、電動自転車31を出荷した後、利用者が電動自転車31に乗る際、図9に示すように、先ず、利用者が電動自転車31を停止させた状態で電源ボタン44を押してオンにすると(ステップ−1)、主電源が入って制御装置58が起動する(ステップ−2)。
【0052】
利用者が前後両ブレーキレバー50,55を操作していない場合、両方のブレーキスイッチ52,57が共にオフに切換えられた状態となり(ステップ−5)、これにより、制御装置58は、現在のバッテリー40の残量に対応する残量表示灯47a〜47cと現在のアシストモードに対応するいずれかのモード表示灯48a〜48cとを、第1の所定の輝度で点灯させる(ステップ−6)。
【0053】
利用者は、アシストモードを切換えたい場合、図2に示すように、アシスト切換ボタン45を押して切換えることができる。例えば、アシストモードを「強」モードにした場合、「標準」モードよりも強力なアシスト力がモータ39から発生し、また、「オートマチック」モードにした場合、走行条件に応じてモータ39のアシスト力が自動的に変化する。
【0054】
その後、利用者がペダル36を踏んで電動自転車31を発進させると、走行中は、ペダル36に作用するトルクがトルクセンサ68によって検出され、制御装置58は前記検出されたトルクに応じてモータ39の出力トルクを制御する。
【0055】
走行中、制御装置58は、前記ステップ−3において速度センサ67で検出される走行速度が所定速度以下かを判断し、所定速度を超えた場合、両方のブレーキスイッチ52,57が共にオフかを判断する(ステップ−8)。
【0056】
利用者が前および後ブレーキレバー50,55の少なくとも片方を制動方向Eに操作し、一方および他方のブレーキスイッチ52,57の少なくとも片方がオフからオンに切換えられた場合、制御装置58は、回生充電機能を働かせて、バッテリー40に対して回生充電を行なうように制御するとともに、全ての残量表示灯47a〜47cを点滅させる(ステップ−9)。これにより、利用者は、残量表示灯47a〜47cを目視することで、回生充電が行なわれていることを認識(把握)することができる。
【0057】
また、利用者が前および後ブレーキレバー50,55の両方とも操作していない場合、前記ステップ−8において一方および他方のブレーキスイッチ52,57は両方ともオフであり、これにより、制御装置58は、回生充電を行なわず、現在のバッテリー40の残量に対応する残量表示灯47a〜47cと現在のアシストモードに対応するいずれかのモード表示灯48a〜48cとを第1の所定の輝度で点灯させる(ステップ−10)。
【0058】
また、製品出荷前に、前記のようにして所定のストロークS2(図5参照)を最適な値に調整しても、その後、使用年月の経過にともなってブレーキワイヤ51,56のインナーケーブル62が伸びることがあり、このようにインナーケーブル62が伸びてしまうと、作動開始位置Bが最大操作位置D側へ変動して、前記所定のストロークS2が増大するとともに作動開始位置Bと最大操作位置Dとの間のストロークS3(図7参照)が減少するため、このままだとブレーキ装置37,38の制動力が低下してしまう。したがって、このような場合、利用者は自転車販売店等に電動自転車31を持ち込み、自転車販売店等の作業者が前記ステップ−1〜ステップ−7の行程を実施することにより、前および後ブレーキ装置37,38の所定のストロークS2を最適な値に容易且つ正確に調整することができる。
【0059】
前記実施の形態では、残量表示灯47a〜47cは、バッテリー40の残量を表示する本来の残量表示機能に加えて、輝度を変化させて、両ブレーキスイッチ52,57の少なくとも片方がオフからオンに切換えられたことを表示する切換表示機能も有している。同様に、モード表示灯48a〜48cは、選択されたアシストモードを表示する本来のモード表示機能に加えて、輝度を変化させて、両ブレーキスイッチ52,57の少なくとも片方がオフからオンに切換えられたことを表示する切換表示機能も有している。これにより、部品点数を削減することができる。
【0060】
尚、残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとは別に、両ブレーキスイッチ52,57の少なくともいずれか片方がオフからオンに切換えられたことを表示する専用の表示灯を設けてもよい。
【0061】
前記実施の形態では、前記ステップ−5において、両ブレーキスイッチ52,57の少なくともいずれか片方がオフからオンに切換えられると、前記ステップ−7において、第1の所定の輝度よりも大きな第2の所定の輝度で残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとを点灯させているが、第2の所定の輝度を第1の所定の輝度よりも小さくしてもよい。また、第2の所定の輝度を第1の所定の輝度よりも10%程度増大させているが、10%という数値に限定されるものではなく、他の数値でもよい。
【0062】
前記実施の形態では、前ブレーキ装置37に一方のブレーキスイッチ52を備え、後ブレーキ装置38に他方のブレーキスイッチ57を備えたが、前ブレーキ装置37と後ブレーキ装置38とのいずれか片方のみにブレーキスイッチを備えてもよい。
【0063】
前記実施の形態では、残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとの輝度を第1の所定の輝度と第2の所定の輝度とに変化させているが、照度を変化させてもよい。
【0064】
前記実施の形態では、残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとの輝度を変化させているが、残量表示灯47a〜47cとモード表示灯48a〜48cとのいずれか片方の表示灯だけの輝度を変化させてもよい。
【0065】
前記実施の形態では、図2に示すように、残量表示灯47a〜47cを3個設けたが、3個以外の複数個又は単数個設けてもよい。同様に、モード表示灯48a〜48cを3個設けたが、3個以外の複数個設けてもよい。
【0066】
前記実施の形態では、ブレーキ本体49,54として、キャリパーブレーキやローラーブレーキを用いたが、これら以外の形式のブレーキを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、回生充電機能を有した電動自転車に最適であり、ブレーキの調整が容易に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態における電動自転車の側面図
【図2】同、電動自転車の操作盤の図
【図3】同、電動自転車のハンドルの図
【図4】同、電動自転車の前ブレーキ装置の前ブレーキ本体と後ブレーキ装置の後ブレーキ本体との図
【図5】同、電動自転車の前および後ブレーキレバーの操作位置を示す図
【図6】同、電動自転車の前および後ブレーキレバーの操作位置を示す図
【図7】同、電動自転車の前および後ブレーキレバーの操作位置を示す図
【図8】同、電動自転車の制御系のブロック図
【図9】同、電動自転車の制御装置による制御を示すフローチャート
【図10】従来の電動自転車のブレーキレバーの操作位置を示す図
【符号の説明】
【0069】
31 電動自転車
37 前ブレーキ装置
38 後ブレーキ装置
39 モータ
40 バッテリー
47a〜47c 残量表示灯(表示手段)
48a〜48c モード表示灯(表示手段)
49 前ブレーキ本体
50 前ブレーキレバー
51 前ブレーキワイヤ(ブレーキ連動部材)
52 一方のブレーキスイッチ
54 後ブレーキ本体
55 後ブレーキレバー
56 後ブレーキワイヤ(ブレーキ連動部材)
57 他方のブレーキスイッチ
A 開放位置
B 作動開始位置
C スイッチ切換位置
S1 遊びの範囲
S2 所定のストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式のブレーキ装置と、補助動力を発生するモータと、モータに駆動用の電力を供給するバッテリーとが設けられ、制動時に、モータから発生した電気をバッテリーに充電する回生充電機能を備えた電動自転車であって、
ブレーキ装置は、ブレーキ本体と、ブレーキレバーと、ブレーキ本体とブレーキレバーとの間に連動連結されるブレーキ連動部材と、ブレーキレバーの操作に連動して切換えられるブレーキスイッチとを有し、
ブレーキレバーを操作していない開放位置とブレーキ本体が作動する作動開始位置との間の遊びの範囲内に、ブレーキスイッチが切換えられるスイッチ切換位置が設定され、
ブレーキレバーが操作されてブレーキスイッチが切換えられたことを表示する表示手段が設けられ、
ブレーキスイッチの切換えにより回生充電機能が働くことを特徴とする電動自転車。
【請求項2】
表示手段は表示灯であることを特徴とする請求項1記載の電動自転車。
【請求項3】
ブレーキスイッチが切換えられたときの表示灯の明るさは、ブレーキスイッチが切換えられていないときの表示灯の明るさと比べて、変化することを特徴とする請求項2記載の電動自転車。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動自転車のブレーキ調整方法であって、
ブレーキレバーを操作し、表示手段によってブレーキスイッチの切換えが表示された時点からブレーキ本体が作動し始める時点までのブレーキレバーのストロークを求め、
前記求められたストロークが最適な値になるようにブレーキ連動部材を調整することを特徴とするブレーキ調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−28970(P2010−28970A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186601(P2008−186601)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】