説明

電子キー

【課題】電子キーの誤操作を抑制することにある。
【解決手段】携帯電話2及び車両間の距離が予め定められた携帯電話2の操作に適した距離となるタイミング以後における携帯電話2の操作のみが有効とされる。すなわち、携帯電話2の操作に適した距離となるタイミング前の操作はユーザの意図しない操作である可能性が高いため、同タイミング前の操作を無効とされる。これにより、ユーザの意図する操作を有効としつつ、ユーザの操作意思のない携帯電話2の誤操作を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制御対象である車両及び住宅等との無線通信を通じてドアの施解錠をはじめとする各種制御を行う電子キーが知られている。電子キーには、ドアの施錠及び解錠を行うロックスイッチ及びアンロックスイッチ等の各種スイッチが設けられる。ユーザは制御対象から離れた位置においても、電子キーの各スイッチを操作することで、上記したような制御対象の各種制御が可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、近年ではこの種の電子キーにおいて、スイッチ操作に限らずその他ユーザの動作に基づき電子キーの操作を行うことができ、制御対象側の各種制御を可能とする技術が存在する。具体的には、例えば電子キーに加速度センサ等の衝撃検知センサを設けて、ユーザの電子キーへの所定の叩き又は振り操作を通じて車両側の各種制御が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−54525
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の電子キーは、ユーザのカバン、衣服のポケット等に収納される。このため、ユーザの歩行等の動作に伴い意図せず電子キーのスイッチ操作が行われてドアが解錠等するおそれがある。また、ユーザの動作により操作が可能とされる電子キーにおいては、上記同様に意図せず電子キーの操作が行われる可能性が高い。例えば、上記叩き操作等により操作される電子キーにおいては、ユーザの歩行動作に伴う衝撃を叩き操作等として誤って検出されるおそれがある。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、誤操作を抑制した電子キーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ユーザに携帯されて同ユーザの操作に応じて自身の識別コードを含む制御を要求する旨の要求信号を制御対象側に送信する電子キーにおいて、前記電子キーに対するユーザの操作態様を検出する操作検出手段と、前記制御対象の周囲に形成される通信エリアに進入したときに、前記制御対象との間で相互通信を自動的に開始し、通信が開始してから一定時間経過して、前記制御対象との間の距離が予め定められた前記電子キーの操作に適した距離となるタイミングにおいて前記制御対象との間の通信が確立することにより前記制御対象との間での情報の授受を可能とする通信手段と、ユーザによる前記電子キーの操作が有効とされるタイミングにて、ユーザにその旨を通知する伝達手段と、前記操作検出手段の検出結果に基づき操作内容を判断するとともに、前記伝達手段による前記通知から一定時間内におけるユーザの操作を有効として、前記操作内容に応じた制御を要求する旨を含む前記要求信号を前記制御対象側に送信する制御装置と、を備えたことをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、電子キー及び制御対象間の距離が予め定められた電子キーの操作に適した距離となるタイミングで伝達手段を介してユーザにその旨が通知されて、同通知から一定時間内における電子キーの操作のみが有効とされる。すなわち、電子キーの操作に適した距離となるタイミング前の操作はユーザの意図しない操作である可能性が高いため、同タイミング前の操作を無効とされる。これにより、ユーザの意図する操作を有効としつつ、ユーザの操作意思のない電子キーの誤操作を抑制できる。なお、電子キー及び制御装置の通信が確立するときに、電子キーの操作に適した距離となるタイミングとなる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電子キーにおいて、前記通信手段及び前記制御対象間で送受信される無線信号の信号強度を検出する信号強度検出手段を備え、前記制御装置は前記信号強度検出手段の検出する無線信号の信号強度の値に基づき、前記電子キー及び前記制御対象間の距離を判断するとともに、前記電子キーの操作に適した距離以下となった旨の判断をした場合に、前記伝達手段による通知を行うとともにユーザによる前記電子キーの操作を有効とすることをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、信号強度検出手段の検出結果を通じて、前記電子キーを携帯するユーザの位置が判断可能とされる。具体的には、制御装置は電子キーの操作に適した距離以下である旨判断した場合にはユーザの操作を有効とする。また、電子キーの操作に適した距離を越える旨判断した場合には、たとえ通信手段及び制御対象間の通信が確立していたとしても、ユーザの操作を無効とする。ここで、電子キーの操作に適した距離を越える位置における操作は誤操作である可能性が高い。従って、電子キーの操作に適した距離を越える位置における操作を無効とすることで誤操作を抑制できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の電子キーにおいて、前記操作検出手段は前記電子キーへの叩き操作に伴う衝撃を検出する加速度検出手段であって、前記制御装置は前記加速度検出手段の検出結果に基づき前記ユーザの操作としての前記電子キーに対する叩き操作の有無及び叩き操作の回数を判断し、前記叩き操作の回数に応じた制御を要求する旨を含む前記要求信号を前記制御対象側に送信することをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、電子キーを叩くことで同電子キーの操作が可能となる。これにより、ユーザは、例えば電子キーをポケット、カバン等に収納した状態で叩き操作できるため、利便性が高い。ところで、電子キーには、それを携帯するユーザの歩行等の動作に伴い衝撃が加わる。このように、電子キーに叩き操作に類する衝撃が加わる可能性が高い状況においても、通信手段及び制御対象間の通信が確立していない、すなわち電子キーの操作に適した距離となるタイミング前である場合には、ユーザに操作意思がないとして電子キーへの叩き操作は無効とされる。これにより、ユーザの操作意思のない電子キーの誤操作を防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子キーの誤操作を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態における電子キーシステムの構成図。
【図2】第1の実施形態における検出された加速度の推移と、その加速度における叩き操作の判断基準を示したグラフ。
【図3】第1の実施形態における車両及びその通信エリアを示した上面図。
【図4】第2の実施形態における解錠時のRSSIの推移を示したグラフ。
【図5】第2の実施形態における施錠時のRSSIの推移を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる電子キーを電子キーシステムに具体化した第1の実施形態について説明する。本実施形態においては、電子キーとして携帯電話が利用される。すなわち、携帯電話は、通常の通話等の機能に加え、車両ドアの施解錠を可能とする電子キーとしての機能を有する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の車両に搭載される電子キーシステム1においては、車両のユーザが所持する携帯電話2と、制御対象に相当する車両に搭載される車載装置3との間での通信が可能である。ここでの携帯電話2及び車載装置3間の通信には、携帯電話2から車載装置3に車両ドアの施解錠を要求する旨の要求信号が単方向に送信されるワイヤレス通信と、携帯電話2及び車載装置3間で2.4GHz帯の無線信号に情報が付加された情報信号が双方向で送受信されるBluetooth(R)通信とがある。Bluetooth通信は数m〜数十m離間した情報機器間において情報信号に含まれる情報のやりとりを可能とする通信規格である。Bluetooth通信は、特別な許可なしに利用できる利点から様々な分野の電子機器に搭載されている。
【0017】
<携帯電話>
携帯電話2は、例えばユーザの衣服のポケット、カバン等に収納された状態で携帯される。ユーザは後述する所定のタイミングにおいて外部から衣服、カバン等を介して携帯電話2を所定回数だけ叩くことで、簡易に車両ドアの施解錠に係る操作を行うことができる。
【0018】
図1に示すように、携帯電話2は、マイコン23と、送信回路24と、送信アンテナ25と、加速度センサ21と、スレーブ通信部26と、振動素子27とを備えている。なお、携帯電話2には、図示しない電池が内蔵され、各部に動作電源を供給している。また、携帯電話2には、携帯電話本来の機能である通話機能等を発揮するために、上記構成の他に各種構成が備えられているが、ここでは車両ドアの施解錠に係る操作に必要な構成についてのみ図示し、その他の構成は省略している。
【0019】
加速度センサ21は、携帯電話2が叩かれたときに加わる衝撃(加速度)に応じた電圧を検出結果として、マイコン23に出力する。なお、加速度センサ21には機械式、光学式、半導体式等あるが携帯電話2に内蔵可能であって携帯電話2への衝撃(加速度)を検出できるものであれば何れのタイプであってもよい。
【0020】
マイコン23は、不揮発性のメモリ23aを備えるとともに、そのメモリ23aには、加速度センサ21の検出結果が車両ドアの施解錠に係る叩き操作によるものか否かを判別するしきい値等の各種数値と、車両毎に設定されたIDコード等が記憶されている。
【0021】
マイコン23は、図2に示す加速度センサ21の検出結果に基づき、叩き操作の有無及びその回数を判別する。マイコン23は、検出される加速度としきい値Aとの比較を通じて叩き操作であるか否かを判断する。また、マイコン23は、しきい値A以上となる加速度の検出時間も加味して、叩き操作の有無を判断する。これは、叩き操作においては瞬間的に大きい加速度が検出されると想定されるからである。すなわち、図2に実線で示すように、加速度センサ21により検出される加速度がしきい値A以上であって、その検出期間が設定時間T1未満である場合には、叩き操作であると判断される。ここで、図2に2点鎖線で例示する歩行に伴う振動等に比べて、叩き操作においては瞬間的に大きい加速度が検出される。しきい値Aはシミュレーションによって、歩行に伴う振動等により発生する加速度(電圧)以上であって、叩き操作に伴い生じる加速度(電圧)未満となるように設定されている。マイコン23は、一定時間T10において、しきい値A以上の加速度が3回に亘り計測されたときには、ユーザにより車両ドアの解錠を要求する旨の操作がされたと判断をする。また、マイコン23は、一定時間T10において、しきい値A以上の加速度が2回に亘り計測されたときには、ユーザにより車両ドアの施錠を要求する旨の操作がされたと判断をする。このように、車両ドアの解錠に係る叩き操作回数を施錠に係る叩き操作回数に比べて多くすることで、ユーザの意図なく車両ドアの解錠に係る叩き操作回数(本例においては3回)に達しづらくなる。これにより、ユーザの操作意図のない操作により車両ドアが解錠されることが抑制され、車両のセキュリティ性が向上する。
【0022】
図1に示すように、スレーブ通信部26は、後述する車載装置3に備えられるマスタ通信部35との間でBluetooth通信を行う。マイコン23は、スレーブ通信部26に常時待機電力を供給することで、マスタ通信部35からの無線信号を常時受信可能な待ち受け状態とする。これにより、マスタ通信部35が発信する無線信号を受信したとき、スレーブ通信部26は自動でマスタ通信部35との通信を開始する。スレーブ通信部26及びマスタ通信部35間の通信態様の詳細については後で述べる。
【0023】
マイコン23は、図示しないタイマを通じて両通信部26,35間で通信が確立した時点から一定時間T10(図2参照)の計測を開始する。また、通信確立時において、マイコン23は加速度センサ21に電力を供給して携帯電話2への叩き操作が検出可能な状態とするとともに、ユーザに通信が確立した旨を告知するために振動素子27を介して数秒間に亘り携帯電話2を振動させる。
【0024】
マイコン23は通信確立時から一定時間T10内において、加速度センサ21の検出結果に基づき車両ドアの解錠を要求する旨の叩き操作があるか否か判断する。ここで、通信開始から一定時間経過後には、ユーザが電子キーを操作すると想定される時間となる。換言すると、ユーザが電子キーを操作すると想定される時間に通信が完了するように、両通信部26,35間の通信開始位置(後述する通信エリア41の大きさ)は設定される。
【0025】
図2に示すように、マイコン23は、通信確立から一定時間T10内に、前述のように携帯電話2への3回に亘る叩き操作が検出されたときには、車両ドアの解錠を要求する旨の操作があったと判断する。この場合には、マイコン23は車両に対して車両ドアの解錠を要求する旨の操作コード(解錠要求用操作コード)と、メモリ23aに記憶されるIDコードとを含む解錠要求信号を生成する。そして、マイコン23は、この解錠要求信号を送信回路24に出力する。
【0026】
また、マイコン23は前述のように携帯電話2への2回に亘る叩き操作が検出されたときには、車両ドアの施錠を要求する旨の操作があったと判断する。この場合には、車両に対してドアの施錠を要求する旨の操作コード(施錠要求用操作コード)と、メモリ23aに記憶されるIDコードとを含む施錠要求信号を生成する。そして、マイコン23は、この施錠要求信号を送信回路24に出力する。
【0027】
送信回路24は、マイコン23から入力された解錠要求信号や施錠要求信号を所定周波数帯の電波に変調して、送信アンテナ25を介して車両側に送信する。なお、本実施形態において所定周波数帯はRF(Radio Frequency)帯である。
【0028】
また、マイコン23は通信確立から一定時間T10経過したときに、有効な叩き操作の有無に関わらず、加速度センサ21への電力の供給を停止する。すなわち、通信確立から一定時間T10を経過した後の叩き操作は無効となる。このように、加速度センサ21の作動時間を通信確立から一定時間T10に限ることで、加速度センサ21に費やす電力を低減することができるとともに、携帯電話2の操作可能期間が限定されるため、誤操作の可能性を減らすことができる。
【0029】
<車載装置>
図1に示すように、車載装置3は、受信アンテナ31と、受信回路32と、車載制御部33と、マスタ通信部35と、を備えている。また、車載制御部33には、車両ドアが閉じた状態において車両ドアを自動的に施解錠するドアロック装置40が電気的に接続されている。
【0030】
受信アンテナ31は、携帯電話2から無線送信される解錠要求信号や施錠要求信号を受信するための媒体である。受信回路32は、受信アンテナ31により受信された解錠要求信号や施錠要求信号を復調して受信信号を生成するとともに、その受信信号を車載制御部33に出力する。解錠要求信号を受信したとき、受信回路32から車載制御部33に出力される受信信号には、解錠要求用操作コードとIDコードとが含まれる。また、施錠要求信号を受信したとき、受信回路32から車載制御部33に出力される受信信号には施錠要求用操作コードとIDコードとが含まれる。
【0031】
車載制御部33は、不揮発性のメモリ33aを備えるとともに、そのメモリ33aには、車両に対応する携帯電話2に記憶されるIDコードと同一のIDコードが記憶されている。
【0032】
車載制御部33は、受信回路32から入力された受信信号にメモリ33aに記憶されたIDコードと一致するIDコード及び解錠要求用操作コードが含まれているとき、正規の携帯電話2による車両ドアの解錠に関する要求があった旨を認識する。このように認識したとき、車載制御部33はドアロック装置40を通じて車両ドアを解錠する。
【0033】
また、車載制御部33は、受信回路32から入力された受信信号にメモリ33aに記憶されたIDコードと一致するIDコード及び施錠要求用操作コードが含まれているとき、正規の携帯電話2による車両ドアの施錠に関する要求があった旨を認識する。このように認識したとき、車載制御部33はドアロック装置40を通じて車両ドアを施錠する。
【0034】
マスタ通信部35は、前述のようにスレーブ通信部26との間でBluetooth通信を行う。具体的には、図3に示すように、マスタ通信部35は無線信号(2.4GHz帯)を車両周辺に送信する。そして、マスタ通信部35(車載装置3)を中心として当該無線信号が送信される半径約10mのピコネット(Piconet)と称する通信エリア41が形成される。
【0035】
次に、携帯電話2による車両ドアの解錠の態様について説明する。
図3に示すように、通信エリア41に携帯電話2を携帯するユーザが進入すると、両通信部26,35間において通信が開始される。この通信が開始された時刻から通信が確立するまでに、5秒程度の通信確立時間を要する。通信確立後にはマスタ通信部35及びスレーブ通信部26間において、適宜無線信号に情報が付加された情報信号が送受信されることで、各種情報のやりとりが可能となる。
【0036】
また、通信が確立したときには、マイコン23は振動素子27を介して携帯電話2を数秒間に亘り振動させる。これにより、ユーザは通信が確立したことを知覚できるとともに、その後一定時間T10に亘り携帯電話2の叩き操作を通じて車両ドアの解錠が可能であることを認識することができる。
【0037】
前述のように、通信開始から通信確立まで約5秒の通信確立時間を要するところ、その間にユーザは車両に近づいている。ここで、例えばユーザが時速5kmで歩行していた場合には、毎秒約1m進むことになる。よって、図3に示すように、ユーザが時速5kmで直線的に車両に向かって歩行しているときには、通信開始の地点を通信エリア41の最外側である車両(マスタ通信部35)から約10mの位置とすると、ユーザは通信開始から5秒後には車両から5m離れた地点に位置すると想定される。すなわち、上記歩行条件においては、ユーザが車両から5m離れた地点に位置した時点において、一定時間T10がユーザにより電子キーが操作されると想定される時間が開始される。なお、ユーザが車両から5m離れた地点に位置すると同時に通信が確立した時点は、携帯電話2による車両ドアの解錠操作に適した距離となるタイミングに相当する。また、図3に示すように、上記一般的な歩行条件においては、車両から半径5mにて形成されるエリアが携帯電話2の解錠操作に適した解錠操作可能エリア42となる。
【0038】
ここで、携帯電話2の解錠に係る操作が可能とされる解錠操作可能エリア42は、例えば以下のように設定される。すなわち、一般的に利便性の観点からは、車両から一定距離だけ離れた位置において車両ドアの解錠操作が可能なことが好ましい。しかし、過度に離れた位置からの車両ドアの解錠を許容すると、今度は車両のセキュリティ性が問題となる。ユーザの車両から適切な距離は、これら利便性及びセキュリティ性の兼ね合いを考慮して、本例において解錠操作可能エリア42は車両から半径5m程度に設定されている。
【0039】
このように、携帯電話2は、解錠操作可能エリア42における携帯電話2への叩き操作を有効とする。すなわち、車両から過度に離れた位置からの携帯電話2の操作を無効とすることで、意図せずに車両ドアが解錠することが防止され、車両のセキュリティ性を確保できる。また、車両から適度に離れた位置からの携帯電話2の操作を有効とすることで、車両ドアの開操作前に車両ドアを解錠でき、利便性を確保することができる。なお、解錠操作可能エリア42は歩行速度等の歩行条件に応じて若干変更するものの、解錠操作可能エリア42外であって通信エリア41内における解錠に係る操作は無効とされるため、誤操作が抑制され、かつ利便性は確保される。
【0040】
マイコン23は、前述のように通信確立時から一定時間T10経過したときに、加速度センサ21への電力供給を停止する。すなわち、携帯電話2の叩き操作が可能な時間を車両側との通信確立時から一定時間T10内に制限している。一定時間T10は、ユーザが車両ドアの開操作をする以前すなわち、ユーザが車両まで到達するときに経過するように設定されている。具体的には、上記一般的な歩行条件において、車両から5m離れた地点(通信確立地点)から車両に到達するまでに要する時間は約5秒間である。このため、本例において、一定時間T10は5秒程度に設定される。すなわち、マイコン23は、通信確立から一定時間T10内において、携帯電話2が3回に亘り叩き操作されたと認識した場合には、車両側に解錠要求信号を送信する。これにより、車両ドアは解錠される。このように、通信確立時を基準として携帯電話2の操作が可能となる時間を一定時間T10に制限することで、携帯電話2への叩き操作が予想される期間における操作のみを有効とすることができる。ここでいう、操作が予想される期間とは、車両から5m離れた位置(通信確立位置)から車両に到達するまでの期間である。これにより、携帯電話2の操作に適した車両との距離における携帯電話2の車両ドア解錠に係る必要な操作を可能としつつ、解錠操作の可能性の低い期間、すなわち通信確立前及び通信確立時から一定時間T10経過後における携帯電話2の操作を無効とすることで、携帯電話2の誤操作を抑制できる。
【0041】
また、携帯電話2とは別に設けられる図示しないメカニカルキーを車両の運転席近傍に設けられる同じく図示しないキー孔に差し込み操作することにより、車両エンジンを始動又は停止することができる。
【0042】
次に、携帯電話2による車両ドアの施錠の態様について説明する。
ユーザの降車時においては、マスタ通信部35及びスレーブ通信部26間において通信は確立している。車載装置3は、エンジン停止後において、ユーザが降車するにあたって車両ドアが開かれた後に車両ドアが閉じられたとき、その旨の無線信号を、マスタ通信部35を介して携帯電話2側に送信する。マイコン23は、この無線信号を、スレーブ通信部26を通じて受信すると、加速度センサ21に電力を供給して、同加速度センサ21を起動させる。加速度センサ21の起動後の一定時間において、マイコン23は携帯電話2が2回に亘り叩き操作されたと認識した場合には、車両側に施錠要求信号を送信する。これにより、車両ドアが施錠される。
【0043】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)携帯電話2及び車両間の距離が予め定められた携帯電話2の操作に適した距離となるタイミング以後における携帯電話2の操作のみが有効とされる。すなわち、携帯電話2の操作に適した距離となるタイミング前の操作はユーザの意図しない操作である可能性が高いため、同タイミング前の操作を無効とされる。これにより、ユーザの意図する操作を有効としつつ、ユーザの操作意思のない携帯電話2の誤操作を抑制できる。なお、携帯電話2(スレーブ通信部26)及び車両(マスタ通信部35)間の通信が確立するときに、携帯電話2の操作に適した距離となるタイミングとなる。
【0044】
(2)携帯電話2を叩くことで同携帯電話2の操作が可能となる。これにより、ユーザは、例えば携帯電話2をポケット、カバン等に収納した状態で叩き操作できるため、利便性が高い。ところで、携帯電話2には、それを携帯するユーザの歩行等の動作に伴い衝撃が加わる。このように、携帯電話2に叩き操作に類する衝撃が加わる可能性が高い状況においても、携帯電話及び車両間の通信が確立していない、すなわち携帯電話2の操作に適した距離となるタイミング前である場合には、ユーザに操作意思がないとして携帯電話2への叩き操作は無効とされる。これにより、ユーザの操作意思のない携帯電話2の誤操作を防止できる。
【0045】
(3)携帯電話2及び車両間の通信が確立したとき、すなわち携帯電話2の操作が有効とされた時点において、以降の操作が有効となる旨が振動素子27、ひいては携帯電話2の振動を通じてユーザに伝達される。これにより、ユーザはどの時点で携帯電話2の操作が可能となるかを容易に知ることができるところ、通信確立前における携帯電話2の操作が無効とされる期間におけるユーザによる携帯電話2の誤操作が抑制される。
【0046】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について、図4及び図5を参照して説明する。この実施形態の電子キーシステム1は、ユーザ及び車両間の距離に基づき携帯電話2の叩き操作の認否を決定する点で、上記第1の実施形態と異なっている。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、この実施形態の電子キーは、図1に示す第1の実施形態の電子キーとほぼ同様の構成を備えている。
【0047】
図1の一点鎖線で示すように、携帯電話2にはRSSI検出回路29が備えられている。そして、RSSI検出回路29は、通信確立後におけるマスタ通信部35からスレーブ通信部26に送信される無線信号(2.4GHz帯)の受信信号強度RSSI(Receive Signal Strength Indication)を検出して、その検出結果をマイコン23へ出力する。ここで、図4に示すように、携帯電話2が車載装置3に接近するにつれて、RSSI検出回路29により検出されるRSSIは大きくなる。このため、マイコン23はRSSIの値に基づき、車載装置3(車両)及び携帯電話2(ユーザ)間の距離を判断できる。
【0048】
マイコン23のメモリ23aには、車載装置3及び携帯電話2間の距離の判断基準となるしきい値Bが記憶されている。図4に示されるように、しきい値Bはシミュレーション等により携帯電話2及び車載装置3間の距離が5mのときのRSSIを計測して決定する。
【0049】
まず、車両ドアの解錠時における携帯電話2の叩き操作の認否について説明する。
マイコン23はスレーブ通信部26及びマスタ通信部35間で通信確立した後に、RSSIがしきい値B以上となったときから一定時間T11に亘って車両ドアの解錠に係る叩き操作を有効とする。このときマイコン23は、振動素子27を介して携帯電話2を振動させることで、ユーザに操作が有効となった旨を知らせる。これにより、ユーザは叩き操作が有効なタイミングを容易に知ることができる。なお、本実施形態においては、通信エリア41を大きく形成したり、通信確立時間を短くしたりすることで、スレーブ通信部26及びマスタ通信部35間の通信確立時の携帯電話2及び車載装置3間の距離を5m以上とする。これにより、RSSIがしきい値Bとなったとき、すなわち携帯電話2及び車載装置3間の距離が5mとなったときに通信が確立されている。
【0050】
マイコン23は、加速度センサ21の検出結果に基づき一定時間T11内において、携帯電話2への3回の叩き操作が検出されたときには、送信回路24を介して解錠要求信号を送信する。これにより、車両ドアを解錠することができる。ここで、一定時間T11は、第1の実施形態と同様に、車両から5m離れたユーザが同車両に到達すると想定される時間(5秒程度)に設定される。ここで、車両から半径5m以内の範囲は第1の実施形態と同様に、解錠操作可能エリア42である。この解錠操作可能エリア42は第1の実施形態において説明したように、利便性及びセキュリティ性の兼ね合いを考慮して設定されている。なお、本実施形態における解錠操作可能エリア42は一定である点が第1の実施形態と異なる。
【0051】
一方、マイコン23は、スレーブ通信部26及びマスタ通信部35間で通信が確立した後であっても、RSSIがしきい値B未満のときには、車両ドアの解錠に係る叩き操作を無効とする。例えば、ユーザが通信エリア41(図3参照)に進入して通信が開始された後に、ユーザが通信エリア41の最外側において立ち止まった場合であっても、通信開始から5秒程度経過したときにはスレーブ通信部26及びマスタ通信部35で通信が確立する。このように、通信確立時にユーザが解錠操作可能エリア42に位置しているときには、RSSIがしきい値B未満となるため、叩き操作は無効とされる。これにより、解錠操作可能エリア42の外における位置からの解錠操作が防止され、車両のセキュリティ性が確保される。
【0052】
また、通信確立後にRSSIがしきい値B以上となることで、ユーザの叩き操作が有効とされた場合であっても、再びRSSIがしきい値B未満となった場合には、再びユーザの叩き操作は無効とされる。これは、ユーザが一旦車両に近づいて解錠操作可能エリア42に進入した後に、同解錠操作可能エリア42から出た場合に見られるRSSIの推移である。このように、再びRSSIがしきい値B未満となった場合における叩き操作を無効とすることで、解錠操作可能エリア42の外からの車両ドアの不用意な解錠操作が防止されて、セキュリティ性が向上する。なお、マイコン23は振動素子27を介して、携帯電話2を前記操作が有効とされた時点における振動と異なる態様で振動させることで、ユーザの叩き操作が無効となった旨を知らせてもよい。
【0053】
次に、車両ドアの施錠時における携帯電話2の叩き操作の認否について説明する。
車両ドアの施錠は、ユーザが降車して車両を離れる際に実行される。そのため、図5に示すように、RSSI検出回路29により検出されるRSSIは漸減していく。ここで、RSSIがしきい値C以下となったときから一定時間T12において、施錠に係る叩き操作は有効とされる。RSSIがしきい値C以下となったとき、マイコン23は振動素子27を介して、携帯電話2を振動させることでユーザに叩き操作が有効となった旨を知らせる。これにより、ユーザは叩き操作が有効なタイミングを容易に知ることができる。
【0054】
しきい値Cはシミュレーション等により携帯電話2及び車載装置3間の距離が、例えば1mとなったときのRSSIをしきい値Cとして設定する。すなわち、マイコン23は、ユーザが車両(車載装置3)から1mだけ離れて位置したときから一定時間T12内において、2回の叩き操作が検出されたときには、送信回路24を介して施錠要求信号を送信する。これにより、車両ドアを施錠することができる。このように、車両ドアの施錠時においても、携帯電話2の叩き操作が有効な時間を一定時間T12に限定することで誤叩き操作を防止できる。なお、RSSIがしきい値C以下となることで、ユーザの叩き操作が有効とされた場合であっても、再びRSSIがしきい値Cを越えた場合には、再びユーザの叩き操作は無効とされる。
【0055】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(3)の作用効果に加え以下の作用効果を奏することができる。
(4)RSSI検出回路29の検出結果を通じて、携帯電話2を携帯するユーザの位置が判断可能とされる。すなわち、マイコン23において、携帯電話2の操作に適した距離以下である旨判断する場合にはユーザの操作を有効とし、携帯電話2の操作に適した距離を越える旨判断する場合には、たとえ携帯電話2及び車両間の通信が確立していたとしても、ユーザの操作を無効とする。ここで、携帯電話2の操作に適した距離を越える、すなわち解錠操作可能エリア42を外れる位置における操作は誤操作である可能性が高い。従って、携帯電話2の操作に適した距離を越える位置における操作を無効とすることで、誤操作を抑制できる。
【0056】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第1及び第2の実施形態においては、Bluetooth通信を利用して携帯電話2及び車載装置3間(正確にはスレーブ通信部26及びマスタ通信部35間)での双方向通信を行っていた。しかし、通信規格は携帯電話2及び車載装置3間において、双方向通信が可能であれば、Bluetooth通信に限らず、例えばZigbee通信等の通信規格であってもよい。また、たとえ、前述した各種通信規格を利用した通信でなくても、無線信号にて携帯電話2及び車載装置3間の双方向通信が可能であればよい。
【0057】
・第1及び第2の実施形態においては、携帯電話2に振動素子27を設けて、振動素子27を介して携帯電話2を振動させることで、ユーザに携帯電話2及び車載装置3間の通信が確立したことを知らせることができる。しかし、ユーザに通信が確立したことを認識させることが可能であれば、その手段は振動に限定されない。すなわち、携帯電話2に備えられる音を出力するスピーカを介して、通信確立時に音声にてユーザに通信が確立した旨を知らせてもよい。このように、音声を通じて告知することにより、特に携帯電話2をバックに収納していた場合にも、ユーザに通信が確立した旨を知らせることができる。また、振動及び音声の両手段にて通信が確立した旨をユーザに知らせてもよい。
【0058】
・第1及び第2の実施形態においては、携帯電話2はポケット等に収納された状態のまま叩き操作されていたが、ポケット等から取り出して操作することも可能である。この場合には、例えば携帯電話2を一方の手のひらに載せた状態において、他方の手で携帯電話2を叩く、若しくは携帯電話2を握った状態でその手を自分の太腿等に叩き付けることで、マイコン23が叩き操作があったと判断しうる加速度が検出される。
【0059】
・第1及び第2の実施形態においては、マイコン23は、加速度センサ21により検出される加速度が、しきい値A以上であって検出時間が設定時間T1未満である場合には、叩き操作であると判断していた。しかし、この設定時間T1を省略してもよい。この場合には、検出される加速度がしきい値A以上となった時点で叩き操作であると判断するため、迅速な叩き操作の判断が可能となり、ひいてはより迅速な車両ドアの施解錠が可能となる。
【0060】
・第1及び第2の実施形態においては、携帯電話2を叩き操作することで、車両ドアの施解錠が可能である。しかし、叩き操作による制御内容は車両ドアの施解錠に限らず、例えばエンジンの始動及び停止をする制御、ウィンドウの開閉制御、ランプの点灯、消灯制御、エアコンディショナーのオン、オフ制御等であってもよい。
【0061】
マイコン23は叩き操作された回数に基づき上記した多種の制御内容のうち、何れが選択されたかを判断する。そして選択された制御を実行することを要求する旨の信号を送信回路24及び送信アンテナ25を介して車両側に出力する。例えば、マイコン23は4回叩き操作がされるとエンジン始動を要求する旨、5回叩き操作がされるとウィンドウを開くことを要求する旨の信号を送信回路24及び送信アンテナ25を介して車両側に出力する。なお、叩き操作にてエンジン始動を可能とする場合には、車載装置3は車両ドアの施解錠及び開閉等の車両状況に基づき、ユーザが車内に存在するか否か判断し、車内に存在する場合のみエンジンを始動させる。この場合においても、車両から過度に離れた位置からの誤叩き操作が無効とされる。
【0062】
・第1及び第2の実施形態においては、加速度センサ21の作動時間は通信確立又は携帯電話2が車両から所定距離に達してから一定時間に限られていたが、加速度センサ21は通信確立の成否等に限らず常時作動していてもよい。この場合には、叩き操作が無効とされる時間において、携帯電話2に叩き操作がされたときには、マイコン23はその叩き操作は無効である旨を、例えば振動素子27による振動を介して、ユーザに知らせることができる。このときの振動は通信確立時の振動とユーザが識別できるよう振動態様を変更して設定する。これにより、ユーザは叩き操作が無効となったことを知覚できる。
【0063】
・第1及び第2の実施形態においては、電子キーとして携帯電話2が利用されていたが、車両ドアの施解錠等の車載装置3の制御を行う専用の電子キーとして構成してもよい。
・第1及び第2の実施形態においては、携帯電話2を叩くことで車両ドアの施解錠に係る操作が可能であった。しかし、操作態様はこれに限定されない。例えば、携帯電話2のスイッチ操作を通じて車両ドアの施解錠に係る操作を可能としてもよいし、携帯電話2に備えられる音を検出するマイクを通じてユーザの声により車両ドアの施解錠に係る操作を可能としてもよい。これら構成であっても、スイッチ操作の場合にはポケットに携帯電話2を収納した状態において、ユーザの動作により意図せずスイッチが押されるおそれがあり、声による操作の場合にはユーザの意図しない発声等により車両ドアの施解錠に係る操作が認識されるおそれがある。このような問題に対しても、ユーザによる操作を有効とするタイミング及び位置を限定することで、誤操作を防止できる。
【0064】
・第1及び第2の実施形態においては、マイコン23は通信確立から一定時間T10経過したときに、加速度センサ21への電力の供給を停止して、車両ドアの解錠に係る携帯電話2への操作を無効としていた。しかし、一旦、解錠に係る操作が無効とされた携帯電話2を再び操作可能とすることが可能である。例えば第1の実施形態においては、車両ドアの解錠に係る操作を行うことなく、通信確立から一定時間T10経過したときには、ユーザは、一度、通信エリア41の外に出る。そして、ユーザは、再び通信エリア41に進入して車両に接近することで、携帯電話2及び車載装置3間で通信が確立して、解錠に係る操作が可能となる。
【0065】
・第1の実施形態においては通信確立時、第2の実施形態においては通信が確立した後に携帯電話2が車両から所定距離に到達時から一定時間T10〜T12を越える時間において叩き操作がされても、解錠要求信号又は施錠要求信号が送信されることはない。しかし、上記一定時間T10〜T12を越える時間において、叩き操作がされたときにも解錠要求信号又は施錠要求信号が送信されてもよい。この場合、車載装置3は、上記一定時間T10〜T12を越える時間において受信した解錠要求信号又は施錠要求信号に応じず、車両ドアを施解錠しない。このようにしても、上記一定時間T10〜T12を越える時間におけるユーザの叩き操作を無効とでき、誤操作を抑制できる。また、加速度センサ21により検出された加速度をマイコン23は何ら判断することなく、送信回路24及び送信アンテナ25を介して車両側に加速度情報信号として送信してもよい。この場合、車載制御部33は受信アンテナ31及び受信回路32を介して受信した前記加速度情報に基づき叩き操作の有無及び叩き操作の回数を判断し、一定時間T10〜T12内であれば、判断結果に基づき施解錠に係る処理を実行する。
【0066】
・第1及び第2の実施形態においては、マイコン23は2回の叩き操作で車両ドアの施錠、3回の叩き操作で車両ドアの解錠が要求された旨判断する。しかし、叩き操作の回数は、これに限定されず、例えば、5回の叩き操作で車両ドアの施錠、6回の叩き操作で車両ドアの解錠が要求された旨判断してもよい。
【0067】
・第1及び第2の実施形態においては、携帯電話2は制御対象である車両を制御するために叩き操作されていたが、携帯電話2の制御対象は車両に限定するものではなく、例えば住宅用のキーシステムに適用してもよい。この場合には、電子キーを叩き操作することで住宅用のドアの施解錠、玄関のライトの点灯、消灯等を行うことができる。本構成においても、ユーザによる操作を有効とするタイミング及び位置を限定することで、携帯電話2の操作の簡易性を確保しつつ誤操作を防止できる。
【0068】
・第1及び第2の実施形態においては、解錠要求信号及び施錠要求信号を送受信するために、携帯電話2に送信回路24及び送信アンテナ25を設け、車載装置3に受信回路32及び受信アンテナ31を設けていた。しかし、スレーブ通信部26からマスタ通信部35に両要求信号を送信可能であれば、送信回路24及び送信アンテナ25並びに受信回路32及び受信アンテナ31は省略可能である。本構成において、例えば車両ドアの解錠の際には、スレーブ通信部26及びマスタ通信部35間において通信が確立したときから一定時間T10において、3回に亘り叩き操作がされると解錠要求信号がスレーブ通信部26からマスタ通信部35に送信される。これにより、車両ドアの解錠が可能となる。本構成によれば、上記送信回路24、受信回路32等が省略可能であるため、電子キーシステムをより簡単に構成できる。
【0069】
・第2の実施形態においては、RSSI検出回路29は携帯電話2に設けられていたが、RSSI検出回路29を車載装置3に設けてもよい。この場合であっても、RSSI検出回路29からマスタ通信部35に送信される無線信号のRSSIに基づき携帯電話2及び車載装置3の距離を判断でき、車載装置3にて適切な位置に存在する携帯電話2からの解錠要求信号又は施錠要求信号のみを有効とされて、車両ドアの施解錠が行われる。
【0070】
・第2の実施形態においては、解錠操作可能エリア42である車両の半径5m以内に近づいたときの叩き操作が有効とされていた。しかし、利便性及びセキュリティ性が考慮されていれば、解錠操作可能エリア42は半径5mに限定されない。
【0071】
・第2の実施形態においては、マイコン23は通信確立後に、RSSIがしきい値B以上となったときには、一定時間T11に亘って車両ドアの解錠に係る叩き操作を有効としていた。しかし、マイコン23はRSSIがしきい値B以上となったときから、携帯電話2を携帯するユーザが車両に到達したときに検出されるRSSIとなる時点まで、車両ドアの解錠に係る叩き操作を有効としてもよい。この場合には、通信確立後に解錠操作可能エリア42内において、立ち止まって他の動作等を行っている間に一定時間T11が経過したときにも、車両ドアの解錠に係る叩き操作が可能である。
【0072】
上記処理は、施錠に係る操作においても適用が可能である。具体的には、マイコン23はRSSIがしきい値C以下となったときから、車両ドアの施錠に係る操作が想定される範囲を外れたときに検出されるRSSIとなる時点まで、車両ドアの施錠に係る叩き操作を有効とする。
【0073】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜4の何れか一項に記載の電子キーにおいて、制御装置は、操作を有効とする時間を前記通信手段及び前記制御対象間の通信確立から、ユーザが車両に到達すると想定される一定時間までとする電子キー。
【0074】
同構成によれば、電子キーの操作が有効な時間が通信手段及び制御対象間の通信確立からユーザが車両に到達すると想定されるまでの一定時間に限定されるため、さらに誤操作が抑制される。
【0075】
(ロ)請求項1〜4の何れか一項に記載の電子キーにおいて、前記電子キーとして携帯電話が利用される電子キー。
同構成によれば、携帯電話が電子キーとして利用される。ここで、携帯電話には種々の機能を発揮するために、通信手段、制御装置、加速度検出手段等が予め備えられている。このため、既存の携帯電話に新たな構成を付加することなく、電子キーとして利用できる。
【0076】
(ハ)ユーザの操作に応じて自身の識別コードを含む制御を要求する旨の要求信号を制御対象側に送信するユーザに携帯される電子キーと、前記電子キーからの前記要求信号に含まれる識別コードの照合が成立したときには制御対象の制御を実行する制御対象側制御装置と、を備える電子キーシステムにおいて、前記電子キーに設けられる同電子キーに対するユーザの操作態様を検出する操作検出手段と、前記電子キー及び前記制御対象にそれぞれ設けられ、前記制御対象の周囲に形成される通信エリアに前記電子キーが進入したときに、前記制御対象及び前記電子キーの間で相互通信を自動的に開始し、通信が開始してから一定時間経過して、前記電子キーと前記制御対象との間の距離が予め定められた前記電子キーの操作に適した距離となるタイミングにおいて前記制御対象及び前記電子キーの間の通信が確立することにより前記電子キー及び前記制御対象との間での情報の授受を可能とする通信手段と、前記操作検出手段の検出結果に基づき操作内容を判断するとともに、前記操作内容に応じた制御を要求する旨を含む前記要求信号を前記制御対象側に送信する電子キー側制御装置と、を備え、前記制御対象側制御装置は、前記通信手段を介して前記電子キー側制御対象との通信が確立したときにおいて、受信した要求信号を有効として操作内容に応じて前記制御対象を制御し、前記通信手段を介して前記電子キー側制御対象との通信が確立しないときにおいて、受信した要求信号を無効とする電子キーシステム。
【0077】
同構成によれば、電子キー及び制御対象間の距離が予め定められた電子キーの操作に適した距離となるタイミング後における電子キーの操作のみが有効とされる。従って、電子キーの操作に適した距離となるタイミング前の時間におけるユーザの電子キーへの操作は、ユーザの操作意思のない操作である可能性が高いとして、その操作は無効とされる。これにより、ユーザの操作意思のない電子キーの誤操作が抑制される。
【符号の説明】
【0078】
1…電子キーシステム、2…携帯電話、3…車載装置、21…加速度センサ(操作検出手段、加速度検出手段)、23…マイコン(制御装置)、26…スレーブ通信部(通信手段)、27…振動素子(伝達手段)、29…RSSI検出回路(信号強度検出手段)、33…車載制御部、35…マスタ通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに携帯されて同ユーザの操作に応じて自身の識別コードを含む制御を要求する旨の要求信号を制御対象側に送信する電子キーにおいて、
前記電子キーに対するユーザの操作態様を検出する操作検出手段と、
前記制御対象の周囲に形成される通信エリアに進入したときに、前記制御対象との間で相互通信を自動的に開始し、通信が開始してから一定時間経過して、前記制御対象との間の距離が予め定められた前記電子キーの操作に適した距離となるタイミングにおいて前記制御対象との間の通信が確立することにより前記制御対象との間での情報の授受を可能とする通信手段と、
ユーザによる前記電子キーの操作が有効とされるタイミングにて、ユーザにその旨を通知する伝達手段と、
前記操作検出手段の検出結果に基づき操作内容を判断するとともに、前記伝達手段による前記通知から一定時間内におけるユーザの操作を有効として、前記操作内容に応じた制御を要求する旨を含む前記要求信号を前記制御対象側に送信する制御装置と、を備えた電子キー。
【請求項2】
請求項1に記載の電子キーにおいて、
前記通信手段及び前記制御対象間で送受信される無線信号の信号強度を検出する信号強度検出手段を備え、
前記制御装置は前記信号強度検出手段の検出する無線信号の信号強度の値に基づき、前記電子キー及び前記制御対象間の距離を判断するとともに、前記電子キーの操作に適した距離以下となった旨の判断をした場合に、前記伝達手段による通知を行うとともにユーザによる前記電子キーの操作を有効とする電子キー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子キーにおいて、
前記操作検出手段は前記電子キーへの叩き操作に伴う衝撃を検出する加速度検出手段であって、
前記制御装置は前記加速度検出手段の検出結果に基づき前記ユーザの操作としての前記電子キーに対する叩き操作の有無及び叩き操作の回数を判断し、前記叩き操作の回数に応じた制御を要求する旨を含む前記要求信号を前記制御対象側に送信する電子キー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−63961(P2011−63961A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214221(P2009−214221)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】