説明

電子デバイスおよびそれを用いた電子機器

【課題】配線パターンを切断,損傷することなくフレキシブル基板上に実装された電子部品をトランスファーモールド成形により封止することができる電子デバイスおよびそれを用いた電子機器を提供する。
【解決手段】封止体6a,6c,6eの外周縁かつその外周縁近傍の領域は、フレキシブル基板1の表面に配線パターンがなく、かつ、フレキシブル基板1の表面とベース基材22との間に配線パターンがなく、封止体6b,6d,6fの外周縁かつその外周縁近傍の領域は、フレキシブル基板1の表面に配線パターンがなく、かつ、フレキシブル基板1の表面とベース基材22との間に配線パターンがないようにする。上記フレキシブル基板1の発光素子2,受光素子3および通信用IC4が実装されている側に設けられた電極部を、フレキシブル基板1の他方の面側に設けられた電極部にスルーホール12を介して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フレキシブル基板に電子部品が実装された電子デバイスおよびそれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子デバイスとしては、フレキシブル基板に樹脂成形体が取り付けられたものがある(例えば、特開平9−102654号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
上記電子デバイスでは、フレキシブル基板に、予め樹脂封止されたフォトセンサーをはんだ付け等によりフレキシブル基板と電気的に接続した後、フォトセンサーとフレキシブル基板の隙間とフレキシブル基板の一部を覆うように射出成形により樹脂を形成している。また、フレキシブル基板に設けられた配線パターン上を覆う樹脂成形体の形状を、配線パターンの突出する方向に向かって徐々に樹脂成形体の厚みを薄くする保護突起を設けている。上記樹脂成形体技術によれば、樹脂成形体が設けられていないフレキシブル基板の領域は、可撓性があるので容易に撓むものの、配線パターン部分は、その突出する方向に向かって徐々に樹脂成形体の厚みを薄くする保護突起を設けているため、配線パターンに対して局所的に曲げ応力が印加されず、配線パターンの断線を防止することができる。
【0004】
しかしながら、上記従来の電子デバイスの樹脂成形体は、フォトセンサーが実装されたフレキシブル基板を射出成形金型で挟み込み加圧した後、熱可塑性樹脂を充填することで製作されるものであって、トランスファーモールド成形に適用される技術ではない。また、一般にトランスファーモールド成形時における金型の型締め圧力は、射出成形時における金型の型締め圧力に比較して数倍になるため、トランスファーモールド成形を行うときには、フレキシブル基板および配線パターンに対して、金型の型締め時に印加される圧力を緩和する必要がある。
【特許文献1】特開平9−102654号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の目的は、配線パターンを切断,損傷することなくフレキシブル基板上に実装された電子部品をトランスファーモールド成形により封止することができる電子デバイスおよびそれを用いた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明の電子デバイスは、可撓性を有するベース基材と、上記ベース基材の一方の面側に設けられた第1配線パターンと、上記ベース基材の他方の面側に設けられた第2配線パターンとを有するフレキシブル基板と、上記フレキシブル基板の一方の面側に実装され、上記第1配線パターンと電気的に接続された電子部品と、上記フレキシブル基板の一方の面側に設けられ、上記電子部品を封止した第1モールド樹脂部と、上記フレキシブル基板の他方の面側に設けられ、少なくとも上記電子部品に対向する領域を封止した第2モールド樹脂部とを備え、上記第1モールド樹脂部の外周縁かつその外周縁近傍の領域は、上記フレキシブル基板の表面に上記第1配線パターンがなく、かつ、上記フレキシブル基板の表面と上記ベース基材との間に上記第1配線パターンがなく、上記第2モールド樹脂部の外周縁かつその外周縁近傍の領域は、上記フレキシブル基板の表面に上記第2配線パターンがなく、かつ、上記フレキシブル基板の表面と上記ベース基材との間に上記第2配線パターンがないことを特徴とする。ここで、「電子部品」とは、発光素子,受光素子および通信用IC等の配線パターンと電気的に接続する必要のある部品のことである。また、これに限らず、キャパシタンス素子や抵抗素子等の能動素子、トランジスタ等の受動素子、および、集積回路等の部品であっても良い。
【0007】
上記構成の電子デバイスによれば、第1モールド樹脂部の外周縁かつその外周縁近傍の領域は、フレキシブル基板の表面に第1配線パターンがなく、かつ、フレキシブル基板の表面とベース基材との間に第1配線パターンがなく、第2モールド樹脂部の外周縁かつその外周縁近傍の領域は、フレキシブル基板の表面に第2配線パターンがなく、かつ、フレキシブル基板の表面とベース基材との間に第2配線パターンがないようにすることによって、トランスファーモールド成形時において第1,第2配線パターンを切断,損傷するような金型の型締め圧力が第1,第2配線パターンに加わることがない。つまり、トランスファー成形時、金型のキャビティの外側のフレキシブル基板に接する平面部は、フレキシブル基板のモールド樹脂部が形成される領域の外周を囲む領域を型締め圧力で押さえ、金型のキャビティの端部が線上にフレキシブル基板に当たるが、このフレキシブル基板に印加される型締め圧力とキャビティ側の圧力との圧力変化の大きい境界(第1,第2モールド樹脂部の外周縁に相当)とその境界近傍の領域において、金型とベース基材との間に第1,第2配線パターンがないようにすることによって、第1,第2配線パターンを切断,損傷するような圧力が第1,第2配線パターンに加わらないのである。したがって、配線パターンを切断,損傷することなくフレキシブル基板上に実装された電子部品をトランスファーモールド成形により封止することができる。
【0008】
また、一実施形態の電子デバイスは、上記第1配線パターンのうちの上記第1モールド樹脂部により封止された配線パターンが、上記第2配線パターンのうちの上記第2モールド樹脂部により封止されていない配線パターンにスルーホールを介して接続されていることを特徴とする。
【0009】
上記実施形態の電子デバイスによれば、第1配線パターンのうちの第1モールド樹脂部により封止された配線パターンを、第2配線パターンのうちの第2モールド樹脂部により封止されていない配線パターンにスルーホールを介して接続することによって、電子部品に接続された第1配線パターンをスルーホールと第2配線パターンを介して引き出すことが可能となる。
【0010】
また、一実施形態の電子デバイスは、上記第1,第2モールド樹脂部の外周部にアールを設けたことを特徴とする。
【0011】
上記実施形態の電子デバイスによれば、第1,第2モールド樹脂部の外周部にアールを設けることによって、トランスファー成形時にフレキシブル基板に印加される型締め圧力を、線状から面上に分散させ、第1,第2モールド樹脂部以外のフレキシブル基板の領域上に樹脂漏れが生じない強い圧力で型締めしても、フレキシブル基板に対するストレスを緩和できる。
【0012】
また、一実施形態の電子デバイスは、上記第1,第2モールド樹脂部の外周部と上記フレキシブル基板との間に補強材を設けたことを特徴とする。
【0013】
上記実施形態の電子デバイスによれば、第1,第2モールド樹脂部の外周部とベース基材との間に補強材を設けることによって、トランスファー成形時にフレキシブル基板に印加される型締め圧力を、線状から面上に分散させ、第1,第2モールド樹脂部以外のフレキシブル基板の領域上に樹脂漏れが生じない強い圧力で型締めしても、フレキシブル基板に対するストレスを緩和できる。
【0014】
また、一実施形態の電子デバイスは、上記第1モールド樹脂部に封止された上記電子部品が、光半導体素子または光半導体素子を含む集積回路であり、上記第1モールド樹脂部は、透光性を有するモールド樹脂からなると共に、レンズが一体成形により形成されていることを特徴とする。
【0015】
上記実施形態の電子デバイスによれば、透光性を有するモールド樹脂からなる第1モールド樹脂部に形成されたレンズによって、上記光半導体素子からの光信号を効率良く外部へ取り出したり、外部から受信する光信号を光半導体素子に効率良く取り込んだりできる。また、レンズを一体成形により形成することで、別にレンズを作成する工程が不要となりコストを低減できる。
【0016】
また、一実施形態の電子デバイスは、上記第1,第2モールド樹脂部に用いられた上記モールド樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする。
【0017】
上記実施形態の電子デバイスによれば、第1,第2モールド樹脂部のモールド樹脂に熱硬化性樹脂を用いることによって、トランスファーモールド成形により第1,第2モールド樹脂部を形成することができ、電子部品やボンディングワイヤ等へのストレスが少なく信頼性を向上できると共に、樹脂硬化が早いことにより生産性を向上できる。
【0018】
また、一実施形態の電子デバイスは、上記第1,第2モールド樹脂部が、上記フレキシブル基板に設けられた貫通穴に充填されたモールド樹脂を介して互いに接続されていることを特徴とする。
【0019】
上記実施形態の電子デバイスによれば、上記第1,第2モールド樹脂部が、フレキシブル基板に設けられた貫通穴に充填されたモールド樹脂を介して互いに接続され、第1,第2モールド樹脂部が一体化されているので、第1,第2モールド樹脂部がフレキシブル基板を両側から挟み込むようにして、第1,第2モールド樹脂部の剥がれ等を防止でき、信頼性を向上できる。
【0020】
また、この発明の電子機器は、上記いずれか1つの電子デバイスを用いたことを特徴とする。
【0021】
上記実施形態の電子機器によれば、配線パターンを切断,損傷することなくフレキシブル基板上に実装された電子部品をトランスファーモールド成形により封止する電子デバイスを用いることによって、簡単な構成で信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上より明らかなように、この発明の電子デバイスによれば、配線パターンを切断,損傷することなくフレキシブル基板上に実装された電子部品をトランスファーモールド成形により封止することが可能な電子デバイスを実現することができる。
【0023】
また、この発明の電子機器によれば、上記電子デバイスを用いることによって、簡単な構成で信頼性の高い電子機器を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の電子デバイスおよびそれを用いた電子機器を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1はこの発明の第1実施形態の電子デバイスの一例としての光デバイスの平面図であり、図2は図1の下方から見た上記光デバイスの側面図である。図1に示すように、フレキシブル基板1は、長方形状の本体部1aと、その本体部1aの中央から側方に延び、本体部1aの長手方向に屈曲する延伸部1bを有している。上記フレキシブル基板1の延伸部1bの先端に外部接続端子11を設けている。また、上記フレキシブル基板1は、可撓性を有するベース基材22(図3に示す)を有し、ベース基材22の一方の面側に第1配線パターン(図3の電極部8A,9A含む)を設け、ベース基材22の他方の面側に第2配線パターン(図3の電極部8B,9B含む)を設けている。上記フレキシブル基板1の第1,第2配線パターンの少なくとも一方の一部を、延伸部1b先端の外部接続端子11に接続している。例えば、上記フレキシブル基板1の第1配線パターンは、発光素子2、受光素子3、通信用IC4との電気的接続を一方の面側において行うものであり、第2配線パターンは、発光素子2および受光素子3と通信用IC4との間の接続、通信用IC4と延伸部1b先端の外部接続端子11との間の接続を他方の面側において行うものである。なお、第2配線パターンについては、発光素子または受光素子と外部接続端子との間の接続を行うものであっても良い。さらに、配線が複雑である場合には、第1配線パターンを通信用ICと延伸部1b先端の外部接続端子11との接続を行うものであっても良い。
【0026】
また、上記フレキシブル基板1の本体部1aの両短辺の近傍(長手方向の両端部)に、光半導体素子の一例としての発光素子2と受光素子3を夫々実装している。上記フレキシブル基板1の本体部1a上かつ発光素子2と受光素子3との間に、制御用集積回路の一例としての通信用IC4を実装している。上記フレキシブル基板1の本体部1aと延伸部1bの屈曲した部分との間に切り欠き20を設けている。また、上記受光素子3には、フォトダイオードを用いている。
【0027】
また、図2に示すように、上記フレキシブル基板1の本体部1a上に実装された発光素子2を、透光性を有するモールド樹脂からなる第1モールド樹脂部の一例としての封止体6aにより封止し、その封止体6aのフレキシブル基板1に対して反対側に第2モールド樹脂部の一例としての封止体6bを形成している。上記封止体6a,6bは、トランスファーモールド成形により一体に形成されている。
【0028】
また、上記フレキシブル基板1の本体部1a上に実装された受光素子3を、透光性を有するモールド樹脂からなる第1モールド樹脂部の一例としての封止体6cにより封止し、その封止体6cのフレキシブル基板1に対して反対側に第2モールド樹脂部の一例としての封止体6dを形成している。上記封止体6c,6dは、トランスファーモールド成形により一体に形成されている。
【0029】
さらに、上記フレキシブル基板1の本体部1a上に実装された通信用IC4を、透光性を有するモールド樹脂からなる第1モールド樹脂部の一例としての封止体6eにより封止し、その封止体6eのフレキシブル基板1に対して反対側に第2モールド樹脂部の一例としての封止体6fを形成している。上記封止体6e,6fは、トランスファーモールド成形により一体に形成されている。
【0030】
上記透光性を有するモールド樹脂としては、透明フィラー(例えばシリカガラス)を充填した透光性エポキシ樹脂を用い、透明フィラーの充填量を調整することにより所望の線膨張係数にしている。上記透光性エポキシ樹脂の一例としてフェノール系硬化エポキシ樹脂や酸無水系硬化エポキシ樹脂などがある。
【0031】
また、図2に示すように、発光素子2と受光素子3および通信用IC4は、トランスファーモールドによって、独立した封止体6a,6c,6eにより夫々封止されている。上記発光素子2の封止体6aに、光信号を効率良く外部へ取り出すためのレンズ7が一体形成されていると共に、受光素子3の封止体6cに、外部から受信する光信号を効率良く取り込むためのレンズ7が一体形成されている。
【0032】
また、図3は図1のIII−III線から見た断面図を示しており、受光素子3側の断面もこの図3に示す断面と同様の構成をしている。また、通信用IC4側の断面は、レンズを除いて図3に示す断面と同様の構成をしている。
【0033】
図3に示すように、フレキシブル基板1は、ベース基材22の実装面側に接着層21を介して第1配線パターンの一例としての電極部8A,9Aを形成している。また、上記ベース基材22の裏面側に接着層23を介して第2配線パターンの一例としての電極部8B,9Bを形成している。さらに、その電極部8B,9Bに接着層24を介して保護層25を形成している。上記電極部8Aと電極部8Bをスルーホール12を介して電気的に接続し、電極部9Aと電極部9Bをスルーホール12を介して電気的に接続している。
【0034】
上記フレキシブル基板1の実装面側に、発光素子2を接着層21と接着層26を介してダイボンディングにより実装している。上記フレキシブル基板1には、発光素子2の両側に貫通穴10を設けている。図3では、2つの貫通穴10を示しているが、貫通穴10を3以上設けてもよい。また、上記フレキシブル基板1上の電極部8A,9Aと発光素子2の電極とをボンディングワイヤ5を介して電気的に接続している。
【0035】
上記封止体6a,6b(封止体6c,6dおよび封止体6e,6f)は、トランスファーモールド成形時に貫通穴10を介して夫々連結されている。上記フレキシブル基板1の封止体6a(6c,6e)は、発光素子2、受光素子3、通信用IC4、ボンディングワイヤ5、および裏面側の配線部8B,9Bとを電気的に接続するスルーホール12を封止している。一方、上記フレキシブル基板1の裏面に形成されている封止体6b(6d,6f)は、スルーホール12を封止しない内側の領域にのみ形成されている。
【0036】
上記第1実施形態では、第1モールド樹脂部である封止体6a,6bと、第2モールド樹脂部である封止体6c,6dと、第3モールド樹脂部である封止体6e,6fは、トランスファーモールド成形により同時に形成しているが、第1モールド樹脂部と第2モールド樹脂部をトランスファーモールドにより透光性を有するモールド樹脂を用いて同時に形成し、第3モールド樹脂部を別のトランスファーモールド成形により透光性を有しないモールド樹脂を用いて形成してもよい。
【0037】
このようなフレキシブル基板1の構造によると、トランスファーモールド時にトランスファーモールド金型により型締めするときに直接金型が接する領域に配線部8A,9A,8B,9Bやスルーホール12を配置することなく、発光素子2と受光素子3および通信用IC4の電極間の配線や各電極と外部接続端子11との間の配線が可能となる。
【0038】
また、上記封止体6a〜6fに用いられる透光性を有するモールド樹脂は、封止される発光素子2、受光素子3、通信用IC4、ボンディングワイヤ5、電極8A,9A、およびフレキシブル基板1と同等の線膨張係数を有している。このため、封止後において、封止後の収縮や、動作温度環境における信頼性を高めることができる。
【0039】
上記光デバイスによれば、第1モールド樹脂部としての封止体6a,6c,6eの外周縁かつその外周縁近傍の領域は、フレキシブル基板1の表面に配線パターンがなく、かつ、フレキシブル基板1の表面とベース基材22との間に配線パターンがなく、第2モールド樹脂部としての封止体6b,6d,6fの外周縁かつその外周縁近傍の領域は、フレキシブル基板1の表面に配線パターンがなく、かつ、フレキシブル基板1の表面とベース基材22との間に配線パターンがないようにしている。つまり、上記封止体6a,6c,6eのサイズを大きくし、これに対して上記封止体6b,6d,6fのサイズを小さくし、このパッケージサイズ差によって、フレキシブル基板1に封止体6a,6c,6eに封止され上記封止体6b,6d,6fにて封止されない領域を形成し、その領域からスルーホール12を介して配線パターン(電極部8A,8B、9A,9B)を上記封止体6a,6c,6e側から上記封止体6b,6d,6f側へ引き出す。これによって、配線パターンにトランスファーモールド成形時における金型の型締め圧力が加わることがない。したがって、配線パターンを切断,損傷することなくフレキシブル基板1上に実装された電子部品(発光素子2,受光素子3および通信用IC4)をトランスファーモールド成形により封止することができる。
【0040】
また、上記フレキシブル基板1の一方の面側(発光素子2,受光素子3および通信用IC4が実装されている側)に設けられた第1配線パターンのうちの第1モールド樹脂部(封止体6a,6c,6e)により封止された電極部8A,9Aを、フレキシブル基板1の他方の面側(発光素子2,受光素子3および通信用IC4が実装されていない側)に設けられた第2配線パターンのうちの第2モールド樹脂部(封止体6b,6d,6f)により封止されていない電極部8B,9Bにスルーホール12を介して接続することによって、電子部品に接続された電極部8A,9Aをスルーホール12と電極部8B,9Bを介して第1モールド樹脂部から引き出すことが可能となる。
【0041】
また、上記第1,第2モールド樹脂部(封止体6a〜6f)の外周部にアール13を設けることによって、トランスファー成形時にフレキシブル基板1に印加される型締め圧力を、線状から面上に分散させ、第1,第2モールド樹脂部(封止体6a〜6f)以外のフレキシブル基板1の領域上に樹脂漏れが生じない強い圧力で型締めしても、フレキシブル基板1に対するストレスを緩和することができる。
【0042】
また、透光性を有するモールド樹脂からなる第1モールド樹脂部(封止体6a,6c)に形成されたレンズ7によって、発光素子2からの光信号を効率良く外部へ取り出したり、外部から受信する光信号を受光素子3に効率良く取り込んだりできる。また、レンズ7を一体成形により形成することで、別にレンズを作成する工程が不要となりコストを低減することができる。
【0043】
また、上記第1,第2モールド樹脂部(封止体6a〜6f)のモールド樹脂に熱硬化性樹脂を用いることによって、トランスファーモールド成形により第1,第2モールド樹脂部を形成することができ、電子部品やボンディングワイヤ等へのストレスが少なく信頼性を向上できると共に、樹脂硬化が早いことにより生産性を向上できる。
【0044】
また、上記第1,第2モールド樹脂部(封止体6a〜6f)が、フレキシブル基板1に設けられた貫通穴10に充填されたモールド樹脂を介して互いに接続され、第1,第2モールド樹脂部(封止体6a,6b、封止体6c,6d、封止体6e,6f)が一体化されているので、第1,第2モールド樹脂部がフレキシブル基板1を両側から挟み込むようにして、第1,第2モールド樹脂部の剥がれ等を防止でき、信頼性を向上できる。
【0045】
また、配線パターンを切断,損傷することなくフレキシブル基板1上に実装された電子部品をトランスファーモールド成形により封止する電子デバイスを用いることによって、簡単な構成で信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【0046】
また、上記フレキシブル基板1上に発光素子2と受光素子3が所定の間隔をあけて搭載され、発光素子2と受光素子3が透光性を有する第1,第2モールド樹脂部(6a,6b,6c,6d)で封止された構成によって、発光素子2を封止する第1モールド樹脂部(6a,6b)と受光素子3を封止する第2モールド樹脂部(6c,6d)との間のフレキシブル基板1の可撓性を利用して、発光素子2と受光素子3の位置や発光素子2の発光面と受光素子3の受光面の向きを任意に設定することが可能となる。したがって、上記発光素子2と受光素子3の配置の自由度が広がり、この光デバイスを光コネクタに用いた場合に、発光素子2と受光素子3の配置を任意に設定することができ、様々な用途に対応可能な汎用性の高い光デバイスを実現することができる。
【0047】
また、上記フレキシブル基板1上かつ発光素子2と受光素子3との間に通信用IC4を搭載し、その通信用IC4をモールド樹脂からなる封止体6e,6fで封止することによって、フレキシブル基板1の可撓性を利用して発光素子2と受光素子3の位置や発光素子2の発光面と受光素子3の受光面の向きを変えても、通信用IC4への影響が少なくストレスを低減して信頼性を向上できる。
【0048】
また、上記フレキシブル基板1の本体部1aの両側に発光素子2と受光素子3が配置され、外部と信号の受け渡しをする外部接続端子11を有する延伸部1bが本体部1aの略中央から延びているので、フレキシブル基板1の可撓性を利用して発光素子2と受光素子3の位置や発光素子2の発光面と受光素子3の受光面の向きを変えても延伸部1bへの影響が少ない。また、上記フレキシブル基板1の延伸部1bの外部接続端子11を外部に接続するときに延伸部1bをどの方向に曲げても、本体部1a側の発光素子2と受光素子3に加わる応力が小さく、信頼性を向上できる。
【0049】
また、上記フレキシブル基板1の延伸部1bは、発光素子2と受光素子3とを結ぶ線に略平行な方向に向かって屈曲しているので、フレキシブル基板1を全体的に小さくでき、製造時のコストを低減できる。
【0050】
また、上記フレキシブル基板1の本体部1aと延伸部1bとの間に設けられた切り欠き20によって、延伸部1bの先端側の外部接続端子11を外部に接続するときに延伸部1bを曲げる自由度が広がり、この光デバイスをハウジングに組み込むときの組立性が向上する。上記切り欠きの位置や形状は、これに限らず、延伸部を曲げる自由度が広がるものであればよい。
【0051】
なお、上記受光素子3としてのフォトダイオードとフォトダイオードの信号を処理する回路とを集積した半導体チップをフレキシブル基板1に実装してもよい。この場合、フォトダイオードとそのフォトダイオードの信号を処理する回路を別々に実装したり信号接続したりすることがなくなり、生産性と信頼性を向上できる。特に、上記光デバイスは、ホームネットワークや車載ネットワーク用のAV機器、セキュリティー機器等の電子機器に好適である。
【0052】
(第2実施形態)
図4はこの発明の第2実施形態の電子デバイスの一例としての光デバイスの断面図であり、この第2実施形態の光デバイスは、補強材を除いて第1実施形態の光デバイスと同様の構成をしており、同一構成部は同一参照番号を付して説明を省略し、図1,図2を援用する。
【0053】
図4に示すように、第1,第2モールド樹脂部である封止体6a,6bのフレキシブル基板1に接する外周部に、硬質樹脂(例えばポリイミドフィルム)からなる補強材14A,14Bを設けている。なお、補強材14A,14Bは、ダミーメタル等の他の硬質材料であってもよい。
【0054】
上記第2実施形態の光デバイスでは、トランスファー成型時に、フレキシブル基板1に印加される型締め圧力を、線状から面上に分散させる効果を生み、第1,第2モールド樹脂部(封止体6a,6b)以外のフレキシブル基板1上への樹脂漏れが生じないように型締めしても、補強材14A,14Bによってフレキシブル基板1へのストレスを緩和することができる。なお、図1,図2に示す封止体6c,6dおよび封止体6e,6fにおいても、同様にフレキシブル基板1に接する外周部に補強材14A,14Bを設けている。
【0055】
上記第2実施形態の光デバイスは、第1実施形態の光デバイスと同様の効果を有する。
【0056】
(第3実施形態)
図5はこの発明の第3実施形態の電子デバイスの一例としての光デバイスを用いた光コネクタの上面模式図である。この第3実施形態の光コネクタは、第1実施形態の光デバイスを用いており、図1,図2を援用する。
【0057】
上記第1実施形態の光デバイスは、図2に示すように、発光素子2と受光素子3および通信用IC4は、トランスファーモールドによって、独立した封止体6a,6c,6eにより夫々封止され、意図しない領域への樹脂漏れを抑制している。これにより、フレキシブル基板1の露出領域上に、発光素子2,受光素子3および通信用IC4に必要となるキャパシタンス素子の一例としてのバイパスコンデンサ15,抵抗素子16および水晶発振子17等をはんだ付けにより搭載している。
【0058】
この第3実施形態の光コネクタは、図5に示すように、光ファイバケーブルの先端部分に設けられた光プラグ部が挿入可能なレセプタクル31,32が設けられたハウジング30内に光デバイス(図1,図2に示す)を収納している。上記光デバイスのフレキシブル基板1の本体部1aが、平面の状態を保ったままでハウジング30内に配置されている。このとき、上記光デバイスのフレキシブル基板1を、本体部1aと延伸部1bとの連結部分である折り曲げ部1c(図1に示す)で折り曲げ、本体部1aと延伸部1bとが略直角になるようにしている。そして、発光素子2,受光素子3を封止する封止体6a,6cのレンズ7を、レセプタクル31,32に挿入される光プラグと光結合する位置に配置している。
【0059】
この第3実施形態の光デバイスを用いた光コネクタは、光ファイバケーブルを媒体とする光通信装置に用いられる。上記光通信装置は、光ファイバケーブルを介して接続された光コネクタを用いて機器間のデータ通信を行う。
【0060】
上記フレキシブル基板1上のモールド樹脂で封止されていない露出領域に、バイパスコンデンサ15,抵抗16および水晶発振子17を実装することによって、必要な回路をフレキシブル基板1上に構成できる。
【0061】
上記光コネクタによれば、発光素子2と受光素子3の配置の自由度が広い光デバイスを様々な仕様の光コネクタに適用でき、1種類の光デバイスを多種の光コネクタにおいて共用することにより大幅なコストダウンが図れる。
【0062】
また、上記発光素子2が搭載されている側と受光素子3が搭載されている側が同一平面に沿うように、光デバイスのフレキシブル基板1の本体部1aが、平面の状態を保ったままでハウジング30内に配置されているので、発光素子2と受光素子3との間隔が一義的に決まり、組立時の位置決めが容易にできる。
【0063】
また、上記フレキシブル基板1の延伸部1bは、本体部1aに対して略直角に折り曲げられていることによって、光コネクタの実装性が向上する。
【0064】
(第4実施形態)
図6はこの発明の第4実施形態の電子デバイスの一例としての光デバイスを用いた光コネクタの上面模式図である。この第4実施形態の光コネクタは、第1実施形態の光デバイスを用いており、図1,図2を援用する。また、上記第3実施形態の光コネクタと異なるのは、フレキシブル基板1の折り曲げ方である。
【0065】
前述の第3実施形態の光デバイスは、図5に示すように、フレキシブル基板1の本体部1aの長手方向に、発光素子2,受光素子3および通信用IC4を直線上に配置している。これに対して、この第4実施形態の図6に示す光コネクタでは、発光素子2,受光素子3を通信用IC4と180°向きが異なるように、フレキシブル基板1の本体部1aの両側を湾曲させて折り曲げている。すなわち、フレキシブル基板1の本体部1aの発光素子2が搭載されている側と受光素子3が搭載されている側を本体部1aの中央側に夫々折り返して、発光素子2の発光面と受光素子3の受光面とが同一方向外側に面するようにハウジング40内に配置している。
【0066】
そうして、発光素子2,受光素子3を夫々封止する封止体6a,6cのレンズ7は、レセプタクル41,42に挿入される光プラグと光結合する位置に配置される。
【0067】
この第4実施形態の光デバイスを用いた光コネクタは、光ファイバケーブルを媒体とする光通信装置に用いられる。
【0068】
上記光コネクタによれば、発光素子2と受光素子3の配置の自由度が広い光デバイスを様々な仕様の光コネクタに適用でき、1種類の光デバイスを多種の光コネクタにおいて共用することにより大幅なコストダウンが図れる。
【0069】
また、上記発光素子2が搭載されている側と受光素子3が搭載されている側を本体部1aの中央側に夫々折り返すように、かつ、発光素子2の発光面と受光素子3の受光面とが同一方向外側に面するように、フレキシブル基板の本体部1aがハウジング40内に配置されているので、フレキシブル基板1の本体部1aの折り返しの程度に応じて発光素子2と受光素子3との間隔を任意に設定できる。
【0070】
このように、上記第1〜第4実施形態の光デバイスによれば、フレキシブル基板1上に発光素子2と受光素子3が実装され、かつ、透光性を有するモールド樹脂により発光素子2と受光素子3を封止することによって、発光素子2と受光素子3の封止体6a,6bにレンズを一体成型することを可能にし、封止体以外のフレキシブル基板1上への樹脂漏れを抑制することができる。これにより、封止体が形成された領域以外のフレキシブル基板1の領域の可撓性を確保でき、例えば製品の光コネクタへの実装性を高めることができる。
【0071】
さらに、封止体が形成された領域以外のフレキシブル基板1の領域上への樹脂漏れを抑制することができるため、トランスファーモールド成形後に、封止体が形成された領域以外のフレキシブル基板1の領域に、例えばバイパスコンデンサ等の素子をはんだ付けにより実装することも可能となる。
【0072】
また、光ファイバケーブルを用いる光通信装置においては、全く同一機能であっても用途によって光コネクタの形状が異なり、このような光コネクタの仕様に合わせて多種の光デバイスを設計,生産することは価格的に不利となる。これに対して、この発明の光デバイスを用いた光コネクタでは、光送信部(送信側レセプタクル31,41)と光受信部(受信側レセプタクル32,42)のピッチが異なる多種の光コネクタにおいて1種類の光デバイスを共用することが可能となり、大幅なコスト削減を実現することができる。
【0073】
上記第1〜第4実施形態では、電子デバイスとして光通信に用いられる光デバイスについて説明したが、電子デバイスはこれに限らず、発光素子と受光素子を備えた光センサー等のデバイスにこの発明を適用してもよい。
【0074】
また、上記第1〜第4実施形態では、両面タイプのフレキシブル基板を用いた光デバイスについて説明したが、多層タイプのフレキシブル基板であってもよい。
【0075】
また、上記第1〜第4実施形態では、電子部品として発光素子2,受光素子3および通信用IC4をフレキシブル基板1上に実装した光デバイスについて説明したが、電子部品はこれに限らず、キャパシタンス素子,抵抗素子等の能動素子や、トランジスタ等の受動素子または集積回路であってもよい。
【0076】
さらに、上記第1〜第4実施形態の光デバイスでは、フレキシブル基板1の延伸部1bを、本体部1aの中央から延出させる構成としたが、これに限らず、発光素子2と受光素子3との間に位置し、本体部1aの延伸部1bとの接続部分と両素子2,3を封止するモールド樹脂6a,6cとの間に可撓性を有する構成であれば、一方の素子側に偏った位置から延出させる構成としても良い。なお、この場合においても、本体部1aの接続部分に対応する位置に、その幅内において通信用IC4および樹脂パッケージ6eを配置する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態の電子デバイスの一例としての光デバイスの上面図である。
【図2】図2は上記光デバイスの側面図である。
【図3】図3は図1のIII−III線から見た断面図である。
【図4】図4はこの発明の第2実施形態の電子デバイスの一例としての光デバイスの断面図である。
【図5】図5はこの発明の第3実施形態の電子デバイスの一例としての光デバイスを用いた光コネクタの上面模式図である。
【図6】図6はこの発明の第4実施形態の電子デバイスの一例としての光デバイスを用いた光コネクタの上面模式図である。
【符号の説明】
【0078】
1…フレキシブル基板
1a…本体部
1b…延伸部
1c…折り曲げ部
2…発光素子
3…受光素子
4…通信用IC
5…ボンディングワイヤ
6a〜6f…封止体
7…レンズ
8A,8B,9A,9B…電極部
10…貫通穴
11…外部接続端子
12…スルーホール
13…アール
14A,14B…補強材
15…バイパスコンデンサ
16…抵抗素子
17…水晶発振子
20…切り欠き
22…ベース基材
21,23,24…接着層
25…保護層
30,40…ハウジング
31,32,41,42…レセプタクル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するベース基材と、上記ベース基材の一方の面側に設けられた第1配線パターンと、上記ベース基材の他方の面側に設けられた第2配線パターンとを有するフレキシブル基板と、
上記フレキシブル基板の一方の面側に実装され、上記第1配線パターンと電気的に接続された電子部品と、
上記フレキシブル基板の一方の面側に設けられ、上記電子部品を封止した第1モールド樹脂部と、
上記フレキシブル基板の他方の面側に設けられ、少なくとも上記電子部品に対向する領域を封止した第2モールド樹脂部とを備え、
上記第1モールド樹脂部の外周縁かつその外周縁近傍の領域は、上記フレキシブル基板の表面に上記第1配線パターンがなく、かつ、上記フレキシブル基板の表面と上記ベース基材との間に上記第1配線パターンがなく、
上記第2モールド樹脂部の外周縁かつその外周縁近傍の領域は、上記フレキシブル基板の表面に上記第2配線パターンがなく、かつ、上記フレキシブル基板の表面と上記ベース基材との間に上記第2配線パターンがないことを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電子デバイスにおいて、
上記第1配線パターンのうちの上記第1モールド樹脂部により封止された配線パターンが、上記第2配線パターンのうちの上記第2モールド樹脂部により封止されていない配線パターンにスルーホールを介して接続されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子デバイスにおいて、
上記第1,第2モールド樹脂部の外周部にアールを設けたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電子デバイスにおいて、
上記第1,第2モールド樹脂部の外周部と上記フレキシブル基板との間に補強材を設けたことを特徴とする電子デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の電子デバイスにおいて、
上記第1モールド樹脂部に封止された上記電子部品は、光半導体素子または光半導体素子を含む集積回路であり、
上記第1モールド樹脂部は、透光性を有するモールド樹脂からなると共に、レンズが一体成形により形成されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の電子デバイスにおいて、
上記第1,第2モールド樹脂部に用いられた上記モールド樹脂が熱硬化性樹脂であることを特徴とする電子デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の電子デバイスにおいて、
上記第1,第2モールド樹脂部は、上記フレキシブル基板に設けられた貫通穴に充填されたモールド樹脂を介して互いに接続されていることを特徴とする電子デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の電子デバイスを用いたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−108362(P2006−108362A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−292568(P2004−292568)
【出願日】平成16年10月5日(2004.10.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】