説明

電子ビーム描画方法、電子ビーム描画装置、凹凸パターン担持体および磁気ディスク媒体

【課題】被描画体上へ同心円状のパターンを精度よくかつ簡単な制御で描画する。
【解決手段】ロータリエンコーダ53を備えた回転ステージ41上に載置された被描画体上に電子ビームを照射し、該回転ステージ41を回転させつつ同心円状のパターンを描画する電子ビーム描画方法において、所定の同心円に沿ったパターンを描画後、特定のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとし、電子ビームの照射をオフとした状態で、電子ビームの照射位置を半径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、電子ビームの照射をオフとしてから回転ステージ41が1回転した際に生じる特定のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオンとして所定の同心円に隣接する同心円に沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から回転ステージが1回転した際に生じる特定のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとする工程を繰り返して同心円状のパターンを描画する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクリートトラックメディアやビットパターンメディアなどの高密度磁気記録媒体用のインプリントモールドや磁気転写用マスター担体などを作製する際に、所望の凹凸パターンに応じたパターンを描画するための電子ビーム描画方法および電子ビーム描画装置に関するものである。
【0002】
また、本発明は、上記電子ビーム描画方法を用いた描画を行う工程を経て作製される、凹凸パターン表面を有するインプリントモールドあるいは磁気転写用マスター担体などを含む凹凸パターン担持体、さらには該凹凸パターン担持体であるインプリントモールドを用いて凹凸パターンが転写されてなる磁気ディスク媒体および磁気転写用マスター担体を用いて磁化パターンが転写されてなる磁気ディスク媒体に関するものである。
【背景技術】
【0003】
現状の磁気ディスク媒体では一般に同心円状のトラック配置が採用されており、サーボパターンなどの情報パターンは同心円状のトラックに沿って形成されている。また、記録密度のさらなる高密度化の要請から、隣接するデータトラックを溝(グルーブ)からなるグルーブパターン(ガードバンド)で分離し、隣接トラック間の磁気的干渉を低減するようにしたディスクリートトラックメディア(DTM)が注目されている。ここで、データトラック間に設けられるグルーブもまた同心円状に形成される。さらに高密度化を図るために提案されているビットパターンメディア(BPM)は単磁区を構成する磁性体(単磁区微粒子)が物理的に孤立して規則的に配列されてなり、微粒子1個に1ビットを記録するメディアである。
【0004】
従来、高密度の磁気ディスク媒体を製造するための磁気転写用マスター担体の原盤などに、サーボパターンなどの所定の高密度パターンをパターニングするための電子ビーム記録装置が提案されている。
【0005】
さて、同心円状のパターンを描画する場合、その電子ビームを隣接トラック(隣接する同心円)に送る際の送り方法が問題となる。1つの同心円を描画した後、回転ステージを半径方向にトラックピッチ移動させ隣接トラックの描画を行う方法も考えられるが、1トラック描画する毎にトラックピッチ分移動させ、回転を安定させた後に、次のトラックを描画する必要があるため、非常に時間がかかるという問題がある。
【0006】
かかる問題を解決するための、同心円状のトラックパターンを形成するための方法が特許文献1および非特許文献1などに提案されている。
【0007】
非特許文献1および特許文献1には電子ビーム記録装置を用いた高密度パターニングに関するものであり、1回転させる間に回転ステージを半径方向に1トラックピッチ分移動させるよう制御して、同時に1回転中で1トラックピッチ分徐々に半径方向にビームを偏向させることにより、1回転分描画を行って円の始点と終点をつなぎ合わせ1トラックを描画した後、電子ビームを高速偏向させその外側のトラックの描画に移る方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−367241号公報
【非特許文献1】PIONNER R&D Vol.14 No.1 p.1-8「電子ビーム記録装置を用いた高密度パターニング」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1および特許文献1には明確な記載はないが、これらの従来の同心円トラック描画方法では、1回転中に発生するエンコーダパルスのうちの特定の1つのエンコーダパルスを基準として、1つのトラックの描画から次のトラックの描画へ移行するよう制御されていると考えられる。
【0009】
図9に、従来に行われていたと考えられる制御信号のタイミングチャートを、図10にはこの制御によるトラック送りで描画される同心円を説明するための図を示す。図9(A)はステージの回転、同図(B)はエンコーダパルス、同図(C)はビーム偏向、同図(D)、(E)はそれぞれ非特許文献1、特許文献1の手法での電子ビーム照射オン/オフのタイミングを示すものである。図10(A)は同心円描画時のトラック送り位置を示し、同図(B)、(C)はそれぞれ、非特許文献1、特許文献1の手法での電子ビーム照射オン/オフした場合のトラック送り位置での描画軌跡を示すものである。
【0010】
図10(A)に示すように、同心円を描画する際には、所定角度位置において、描画を開始し、1回転して所定角度位置で描画を終了し、次のトラック(同心円)に描画位置を移動して次のトラックの描画を開始する。
【0011】
より詳細には、図9に示すように、トラック1(Tr1)の描画はエンコーダパルスzを起点として開始し、1回転後にカウントされる同一のエンコーダパルスzを終点として終了し、さらにこのパルスzを起点としてビームが隣接トラック2(Tr2)に偏向されてTr2の描画が開始される。同様にしてエンコーダパルスzによりTr2の描画が終了すると共にTr3の描画が開始される。
【0012】
このとき、非特許文献1の手法では図9(D)に示すように電子ビーム照射は常にオンとされている。そのため、ビームを隣接トラックに移動させる際にも電子ビーム照射が続けられているため、図10(B)で示すように、露光軌跡が偏向箇所で隣接トラックと繋がってしまうことになる。
【0013】
一方、特許文献1の手法では図9(E)に示すように、エンコーダパルスzを起点として電子ビーム照射がオフされ、ビームの偏向時には電子ビーム照射がオフとなっていることから露光軌跡が隣接するトラックと繋がることはない。しかしながら、回転ステージは回転を続けているために、半径方向にビームを移動させた場合、図10(C)で示すように、Tr2の描画開始位置が周方向にわずかながらずれてしまう。このずれのために、Tr2の描画終了を次のエンコーダパルスzで行うと、トラックとトラックが完全には繋がらず、トラックに途切れが生じてしまうという問題がある。
【0014】
また、特許文献1および非特許文献1の手法では、回転ステージの1回転と半径方向への直線的な移動、さらにはビームの偏向とを同期して行う必要があるため、複雑な制御を行わなくてはならない。
【0015】
本発明は上記事情に鑑みて、同心円状のパターンを描画する際に隣接同心円(トラック)間につなぎ目が生じたり、1つの同心円状のパターンに途切れが生じたりすることのない電子ビーム描画方法および装置を提供することを目的とするものである。
【0016】
また、本発明は、電子ビームにより精度よく描画されたパターンを有する、インプリントモールドや磁気転写用マスター担体などの凹凸パターン担持体を提供すること、および、その凹凸パターン担持体を用いて凹凸パターンもしくは磁気パターンが転写されてなる磁気ディスク媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の電子ビーム描画方法は、ロータリエンコーダを備えた回転ステージ上に載置された被描画体上に電子ビームを照射し、該回転ステージを回転させつつ同心円状のパターンを描画する電子ビーム描画方法において、
所定の同心円に沿ったパターンを描画後、特定のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとし、
前記電子ビームの照射をオフとした状態で、前記電子ビームの照射位置を半径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、前記電子ビームの照射をオフとしてから前記回転ステージが1回転した際に生じる前記特定のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオンとして前記所定の同心円に隣接する同心円に沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から前記回転ステージが1回転した際に生じる前記特定のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオフとする工程を繰り返して同心円状のパターンを描画することを特徴とするものである。
【0018】
なお、「所定の同心円に隣接する同心円」とは、所定の同心円よりも1トラックピッチ半径が大きいあるいは小さい同心円である。またここでは、同心円状のパターンを描画することにより、結果として同心円状のトラックを描画することとなる。
【0019】
また、本発明の第2の電子ビーム描画方法は、ロータリエンコーダを備えた回転ステージ上に載置された被描画体上に電子ビームを照射し、該回転ステージを回転させつつ同心円状のパターンを描画する電子ビーム描画方法において、
所定の同心円に沿ったパターンを描画後、第1のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとし、
前記電子ビームの照射をオフとした状態で、前記電子ビームの照射位置を半径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、前記第1のエンコーダパルスとは異なる第2のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオンとして前記所定の同心円に隣接する同心円に沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から、前記回転ステージが1回転した時に生じる前記第2のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオフとする工程を繰り返すことにより同心円状のパターンを描画することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第2の電子ビーム描画方法においては、特に、前記第2のエンコーダパルスが、前記電子ビームを偏向させた直後に発生するエンコーダパルスであることが好ましい。
【0021】
本発明の第1の電子ビーム描画装置は、上記本発明の第1の電子ビーム描画方法を実施可能な装置であり、ロータリエンコーダを備えた、被描画体が載置される回転ステージと、前記被描画体上に同心円状のパターン描画を行うための電子ビームを出射する電子銃と、前記電子銃から出射された前記電子ビームの照射位置を、前記被描画体上において前記同心円の径方向に偏向させる偏向手段と、前記被描画体への前記電子ビーム照射のオン、オフを行うブランキング手段と、前記各手段による作動を連係制御するコントローラとを備えた電子ビーム描画装置であって、
前記コントローラが、所定の同心円に沿ったパターンを描画後、前記ロータリエンコーダからの特定のエンコーダパルスを起点として前記ブランキング手段を制御して前記電子ビームの照射をオフとすると共に、前記偏向手段を制御して、前記電子ビームの照射位置を前記径方向にトラックピッチ分だけ偏向させ、前記電子ビームの照射をオフとした時点から前記回転ステージが1回転した際に生じる前記特定のエンコーダパルスを起点として前記電子ビームの照射をオンとして前記所定のトラックに隣接するトラックに沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から前記回転ステージが1回転した際に生じる前記特定のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオフとするように前記ブランキング手段を制御するものであることを特徴とする。
【0022】
本発明の第2の電子ビーム描画装置は、上記本発明の第2の電子ビーム描画方法を実施可能な装置であり、ロータリエンコーダを備えた、被描画体が載置される回転ステージと、前記被描画体上に同心円状のパターン描画を行うための電子ビームを出射する電子銃と、前記電子銃から出射された前記電子ビームの照射位置を、前記被描画体上において前記同心円の径方向に偏向させる偏向手段と、前記被描画体への前記電子ビーム照射のオン、オフを行うブランキング手段と、前記各手段による作動を連係制御するコントローラとを備えた電子ビーム描画装置であって、
前記コントローラが、所定の同心円に沿ったパターンを描画後、前記ロータリエンコーダからの第1のエンコーダパルスを起点として前記ブランキング手段を制御して前記電子ビームの照射をオフとすると共に、前記偏向手段を制御して、前記電子ビームの照射位置を前記径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、前記第1のエンコーダパルスとは異なる第2のエンコーダパルスを起点として前記電子ビームの照射をオンとして前記所定のトラックに隣接するトラックの描画を開始し、該描画の開始から前記回転ステージが1回転した際に生じる前記第2のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオフとするように前記ブランキング手段を制御するものであることを特徴とする。
【0023】
前記第2のエンコーダパルスが、前記電子ビームを偏向させた直後に発生するエンコーダパルスに設定されていることが特に望ましい。
【0024】
本発明の凹凸パターン担持体は、基盤上に塗布されたレジストに、請求項1から3いずれか1項記載の電子ビーム描画方法により同心円状の所望のパターンを描画露光し、該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製されたことを特徴とするものである。ここで、凹凸パターン担持体とは、表面に所望の凹凸パターン形状を有する担体であり、その凹凸パターンの形状を被転写媒体に転写するためのインプリントモールド、凹凸パターンの形状に応じた磁化パターンを被転写媒体に転写するための磁気転写用マスター担体などである。
【0025】
本発明の磁気ディスク媒体は、基盤上に塗布されたレジストに、請求項1から3いずれか1項記載の電子ビーム描画方法により同心円状の所望のパターンを描画露光し、該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製されたインプリントモールドを用い、該モールドの表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた凹凸パターンが転写されてなることを特徴とするものである。具体的には、ディスクリートトラックメディアやビットパターンメディアが挙げられる。
【0026】
本発明の磁気ディスク媒体は、基盤上に塗布されたレジストに、請求項1から3いずれか1項記載の電子ビーム描画方法により同心円状の所望のパターンを描画露光し、該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された磁気転写用マスター担体を用い、該マスター担体の表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた磁化パターンが磁気転写されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1の電子ビーム描画方法および装置によれば、所定の同心円に沿ったパターンを描画後、特定のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとし、電子ビームの照射をオフとした状態で、電子ビームの照射位置を半径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、電子ビームの照射をオフとしてから回転ステージが1回転した際に生じる特定のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオンとして所定の同心円に隣接する同心円に沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から回転ステージが1回転した際に生じる特定のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとする工程を繰り返して同心円状のパターンを描画するので、隣接同心円間が繋がることなく、また1つの同心円状のパターンが途中で途切れることなく精度よく描画することができる。また、描画時にステージの移動を伴わないために上述の特許文献1および非特許文献1のようなステージの回転と直線移動との同期を取るという複雑な制御を要しない。
【0028】
本発明の第2の電子ビーム描画方法および装置によれば、所定の同心円に沿ったパターンを描画後、第1のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとし、電子ビームの照射をオフとした状態で、電子ビームの照射位置を半径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、第1のエンコーダパルスとは異なる第2のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオンとして所定のトラックに隣接するトラックに沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から、回転ステージが1回転した時に生じる第2のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとする工程を繰り返すことにより同心円状のパターンを描画するので、隣接同心円間が繋がることなく、また1つの同心円状のパターンが途中で途切れることなく精度よく描画することができる。また、描画時にステージの移動を伴わないために上述の特許文献1および非特許文献1のようなステージの回転と直線移動との同期を取るという複雑な制御を要しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1に示す電子ビーム描画システム20は、本発明の実施の形態の電子ビーム描画装置40および信号送出装置60備えている。電子ビーム描画装置40は、基板11a上に電子ビーム用レジスト11bが塗設されてなる被描画体11を支持する回転ステージ41および該ステージ41の中心軸42と一致するように設けられたモータ軸を有するスピンドルモータ44を備えた回転ステージユニット45と、該回転ステージユニット45の一部を貫通し、回転ステージ41の一半径方向(図中矢印Y方向)に延びる一本のシャフト46と、該回転ステージユニット45をシャフト46に沿って移動させるための直線移動手段49とを備えている。回転ステージユニット45の一部には、上記シャフト46と平行に配された、精密なネジきりが施されたロッド47が螺合され、このロッド47は、パルスモータ48によって正逆回転されるようになっており、このロッド47とパルスモータ48により回転ステージユニット45の直線移動手段49が構成される。また、回転ステージ41の回転検出のため、エンコーダスリットの読み取りによって所定回転位相で等間隔にエンコーダパルスを発生するエンコーダ53が設置され、このエンコーダパルス信号がコントローラ50に送出される。なお、コントローラ50は、スピンドルモータ44の駆動すなわち回転ステージ41の回転速度、パルスモータ48の駆動すなわち直線移動手段49による直線移動、電子ビームの変調、偏光手段21および22の制御、ブランキング手段24のブランキング26のオン・オフ制御等を行う制御手段であり、タイミング制御における基準クロック信号を発生するクロック手段(不図示)を内蔵している。
【0031】
さらに、電子ビーム描画装置40は、電子ビームを出射する電子銃23、電子ビームEBをY方向(基盤径方向)およびY方向に直交するX方向(円周方向)へ偏光させる偏光手段21、22、電子ビームEBの照射をオン・オフするためのブランキング手段24としてアパーチャ25およびブランキング26(偏向器)を備えており、電子銃23から出射された電子ビームEBは偏向手段21、22および図示しないレンズ等を経て、被描画体11上に照射される。
【0032】
ブランキング手段24における上記アパーチャ25は、中心部に電子ビームEBが通過する透孔を備え、ブランキング26はオン・オフ信号の入力に伴って、オン信号時には電子ビームEBを偏向させることなくアパーチャ25の透孔を通過させて照射し、一方、オフ信号時には電子ビームEBを偏向させてアパーチャ25の透孔を通過させることなくアパーチャ25で遮断して、電子ビームEBの照射を行わないように作動する。
【0033】
信号送出装置60は、被描画体に描画すべき所望の微細パターンの描画データを記憶し、前述のコントローラ50に描画データ信号を送出するものであり、コントローラ50は描画データ信号に基づいて前述のような連係制御を行い、電子ビーム描画装置40により被描画体の全面に所望の微細パターンを描画するものである。
【0034】
上述の電子ビーム描画装置40を用いた、本発明の第1の電子ビーム描画方法の実施の形態を図2に示すタイミングチャートを参照して説明する。図2(A)はステージ41の回転、同図(B)はエンコーダパルス、同図(C)はビーム偏向(ビーム照射位置)、同図(D)はブランキング手段24による電子ビーム照射オン/オフのタイミングを示すものである。図2に示すように、トラック1(Tr1)の描画は所定のエンコーダパルスzを起点として開始し、1回転後にカウントされる同一のエンコーダパルスzを終点として終了する。このエンコーダパルスzは、回転ステージが1回転する間に1回、特有の角度位置でカウントされるパルスである。図2(B)においてz(n)のnは説明の便宜上付した描画開始からステージが何回転目かを示す数字である。
【0035】
トラック1(Tr1)の描画開始はエンコーダパルスz(1)で開始し、次のエンコーダパルスz(2)でブランキング手段24によりビームがオフとされることにより終了する。それと同時にこのエンコーダパルスz(2)を起点として、偏向手段21によりビームの照射位置は径方向(Y方向)に1トラックピッチ分だけ偏向される。エンコーダパルスz(2)の後、ビームはオフのまま回転ステージ41が1回転し、エンコーダパルスz(3)を起点として、ブランキング手段21によりビームがオンとされてトラック1(Tr1)に隣接するトラック2(Tr2)の描画を開始する。その後再びエンコーダパルスz(4)を検出するまで回転ステージの回転に伴ってトラック2の同心円が描画される。エンコーダパルスz(4)でブランキング手段24によりビームは再びオフとされ、同時にビームはさらに径方向に1トラックピッチ偏向される。この手順が繰り返されることにより複数の同心円が描画される。この描画方法では、全ての同心円の描画開始位置および終了位置が特有のエンコーダパルスzを起点として定められ、ステージを2回転させて1つの同心円を描画している。この方法によれば、トラック間のつながりや、1トラック中のパターンに飛びのない同心円が精度よく描画できると共に、コントローラで行う制御が非常に簡単なものとなる。
【0036】
なお、ここでトラックの描画とは同心円状のパターンの描画と同義であり、現実には、パターンが描画されることにより、結果として同心円状のトラックが形成されることとなる。
【0037】
上記工程においてビーム照射位置の径方向への偏向は偏向手段21により行われるが、一般に偏向手段21による径方向への偏向距離には限度である。従って、1トラックピッチずつ偏向を繰り返し、偏向手段21による径方向への偏向の限界に達した後に(たとえば8トラック分の同心円を描画した後に)は、ビームの偏向手段21による径方向への偏向を一旦解除すると共に、直線移動手段49を用いて回転ステージを8トラック分程度半径方向に移動させる工程を要する。
【0038】
このように、偏向手段21によるビーム偏向により複数の同心円トラックを順次描画する工程と、回転ステージ41を移動させる工程を繰り返し、最内周から最外周に亘る同心円トラックを描画する。
【0039】
第1の実施形態の電子ビーム描画装置40のコントローラ50は、上記のような描画方法を実施するために、ロータリエンコーダか53らの特定のエンコーダパルスを起点としてブランキング手段24を制御して電子ビームの照射をオフとすると共に、偏向手段21を制御して、電子ビームの照射位置を径方向にトラックピッチ分だけ偏向させ、電子ビームの照射をオフとした時点から回転ステージ41が1回転した際に生じる特定のエンコーダパルスを起点として電子ビームの照射をオンとして所定のトラックに隣接するトラックの描画を開始し、該描画の開始から回転ステージ41が1回転した際に生じる特定のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとするようにブランキング手段24を制御するよう構成されている。さらに、所定トラック数(例えば8トラック)毎に一旦ブランキング手段によりビームをオフとして、直線移動手段により回転ステージを半径方向に移動させると共に、偏向手段によるビームの偏向を一旦リセットする制御を行うように構成されている。
【0040】
次に、第2の実施形態の電子ビーム描画装置40を用いた、本発明の第2の電子ビーム描画方法の実施の形態を図3に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、第2の電子ビーム描画方法を実施する場合には、電子ビーム描画装置40のコントローラ50の構成が上記実施の形態の場合と異なるが、この点については後述する。
【0041】
図3(A)はステージ41の回転、同図(B)はエンコーダパルス、同図(C)はビーム偏向(ビーム照射位置)、同図(D)はブランキング手段24による電子ビーム照射オン/オフのタイミングを示すものである。図3に示すように、トラック1(Tr1)の描画は第1のエンコーダパルスA1を起点として開始し、1回転後にカウントされる同一のエンコーダパルスA1を終点として終了する。すなわち、トラック1(Tr1)の描画開始はエンコーダパルスA1で開始し、1回転後のエンコーダパルスA1でブランキング手段24によりビームがオフとされることにより終了する。それと同時にこのエンコーダパルスA1を起点として、偏向手段21によりビームの照射位置は径方向に1トラックピッチ分だけ偏向される。次に、偏向手段21によるビームの偏向が完了した後に検出されるエンコーダパルスA2を起点として、ブランキング手段24によりビームがオンとされてトラック1(Tr1)に隣接するトラック2(Tr2)の描画を開始する。その後再びエンコーダパルスA2を検出するまで回転ステージの回転に伴ってトラック2の描画がなされ、同心円が描画される。エンコーダパルスA2でブランキング手段24によりビームは再びオフとされ、同時にビームはさらに径方向に1トラックピッチ偏向される。この手順が繰り返されることにより複数の同心円トラックが描画される。この描画方法では、ある1つの同心円とそれに隣接する同心円を描画する際には、1つの同心円を描画する起点および終点としたエンコーダパルスとは異なるエンコーダパルスを起点および終点として隣接する同心円を描画するので、同心円の起点位置(回転角度位置)が徐々にずれてくる。従って、特定のエンコーダパルスで描画起点、終点を制御する構成の第1の実施形態と比較すると制御が複雑になるが、ステージが2回転する前に次のトラックの描画を開始するので、第1の実施形態の場合よりも全体の描画は短時間で行うことができる。
【0042】
上記第1の実施形態の場合と同様に、ビーム照射位置の径方向への偏向は偏向手段21により行われ、1トラックピッチずつ偏向を繰り返し、偏向手段による径方向への偏向の限界に達した後に(たとえば10トラック分の同心円を描画した後に)は、ビームの偏向手段による径方向への偏向を一旦解除すると共に、直線移動手段を用いて回転ステージを10トラック分程度半径方向に移動させる工程を要する。
【0043】
このように、偏向手段による偏向により複数の同心円トラックを順次描画する工程と、回転ステージを移動させる工程を繰り返し、最内周から最外周に亘る所望数の同心円トラックを描画する。
【0044】
上記第2の実施形態の電子ビーム描画方法を実施するため、電子ビーム描画装置40のコントローラ50は、ロータリエンコーダ53からの第1のエンコーダパルスA1を起点としてブランキング手段24を制御して電子ビームの照射をオフとすると共に、偏向手段21を制御して、電子ビームの照射位置を径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、第1のエンコーダパルスとは異なる第2のエンコーダパルスを起点として電子ビームの照射をオンとして所定のトラックに隣接するトラックの描画を開始し、該描画の開始から回転ステージ41が1回転した際に生じる第2のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとするようにブランキング手段24を制御するよう構成されている。さらに、所定トラック数(例えば10トラック)毎に一旦ブランキング手段24によりビームをオフとして、直線移動手段49により回転ステージ41を半径方向に移動させると共に、偏向手段によるビームの偏向を一旦最初の状態(1トラック目を描画する状態)に戻すように制御する。
【0045】
次に、本発明の電子ビーム描画方法および装置を用いてディスクリートラックメディア用のインプリントモールド作製の製造工程について図4を参照して簡単に説明する。
【0046】
回転ステージ41に設置する被描画体11は、例えばシリコン、ガラスあるいは石英からなる基板11aの表面にネガ型電子ビーム描画用レジスト11bが塗設されたものである。
【0047】
このレジスト11b上に例えば、前述の第1の実施形態の描画方法を用いて同心円状のパターンの描画、ここでは、同心円状のグルーブ15を描画する。実用上は、サーボ領域にサーボパターンを、データ領域にグルーブを描画すれば、サーボ信号も同時に転写できるため好ましいが、同心円状のグルーブのみが描画されたものに対する要請もあり、ここではグルーブのみが描画される場合について説明する。
【0048】
コントローラ50は、既述の第1の実施形態の描画方法の制御を行い、同心円状のグルーブ15を描画する(図4(A))。最外周トラック側から最内周側に順次トラックに沿ったグルーブ15の描画を行い、図4(B)に示すように、全域に亘る同心円トラックを描画する。本実施形態の描画方法により、トラック送り時に隣接トラックとの繋がりなく、また、1つのトラック内に不要な飛びが生じていない同心円を描画することができる。
【0049】
なお、グルーブの幅と電子ビーム描画用レジストの感度とを考慮しながら、電子ビームEBの出力およびビーム径を調整することが望ましい。
【0050】
次に、レジストを現像処理して、所望のパターンがレジストに転写された基板を得る。パターン状のレジストをマスクとして基板をエッチングし、その後レジストを除去し、表面に凹凸パターンを有するインプリントモールドを得る。
【0051】
なお、レジストとしてポジ型電子ビーム描画用レジストを用いた場合、レジストを除去して得られた、表面に凹凸パターンを有する被描画体を原盤として、電鋳などによりインプリントモールドを得る。
【0052】
図5は、上記の電子ビーム描画方法によって描画された微細パターンを備えたインプリントモールド70を用いて微細パターンを転写形成してディスクリートトラックメディア80を形成する過程を示す概略断面図である。
【0053】
インプリントモールド70は、上述のように同心円状のグルーブ15が描画され、その後、現像、エッチング等の処理を経て形成された微細凹凸パターン72を備えている。
【0054】
このインプリントモールド70を用いて、インプリント法によって磁気記録媒体80を作製する一例を説明する。磁気記録媒体80は、基板81上に磁性層82を備え、その上にマスク層を形成するためのレジスト樹脂層83が被覆されている。そして、このレジスト樹脂層83に、前記インプリントモールド70の凹凸微細パターン72が押し当てられて、紫外線照射によって上記レジスト樹脂層83を硬化させて、微細パターン72の凹凸形状が転写形成される。その後、レジスト樹脂層83の凹凸形状に基づき磁性層82をエッチングすることにより、磁性層82による微細パターンが形成されたディスクリートトラックメディア用の磁気記録媒体80を作製することができる。
【0055】
このようにして得られるディスクリートトラックメディア80を図6に示す。図6に示すように、ディスクリートトラックメディア80は同心円状のグルーブ15が形成されており、このグルーブ15には、例えばSiO2などが埋め込まれている。
【0056】
なお、グルーブと共に、サーボパターンを描画する場合には、サーボパターン領域についてはサーボパターン描画のために、電子ビームを変調し描画する必要がある。サーボ信号の描画方法については、例えば、特開2004−158287号記載の描画方法を採用することができる。
【0057】
また、上記ではディスクリートトラックメディアの製造について説明したが、ビットパターンメディアも同様の工程で製造することができる。
【0058】
次に、上述の電子ビーム描画装置40を用いた磁気転写用マスター担体の作製方法および磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写による磁気記録媒体の製造について簡単に説明する。図7は、磁気転写用マスター担体の原盤となる、描画後の被描画体11を示す斜視図であり、図8はその磁気転写の基本工程の一例を示す断面模式図である。
【0059】
マスター担体の作製工程はインプリントモールドの作製方法とほぼ同様である。回転ステージに設置する被描画体11は、例えばシリコン、ガラスあるいは石英からなる基板11aの表面にネガ型電子ビーム描画用レジスト11bが塗設されたものであり、このレジスト11b上に、サーボ信号に対応して変調した電子ビームを走査させることにより1トラック毎に所望のパターン16を描画する。隣接トラックへのトラック送りは前述の第1あるいは第2の実施形態の描画方法で行い、それぞれのトラックにおけるサーボパターン16の描画は例えば、既述の特開2004−158287号記載の描画方法によって行う。なお、図7中点線で示した同心円は実際に描画されているパターンではなく同心円トラックを模式的に示したものである。
【0060】
その後、電子ビーム描画用レジストを現像処理して、同心円に沿ったパターンが電子ビーム描画用レジストに転写された基盤を得る。これが磁気転写用マスター担体の原盤となる。
【0061】
次に、この原盤の表面の凹凸パターン表面に薄い導電層を成膜し、その上に、電鋳を施し、金属の型をとったポジ状凹凸パターンを有する基板91を得る。その後、原盤から所定厚みとなった基板91を原盤から剥離する。基板91の表面の凹凸パターンは、原盤の凹凸形状が反転されたものである。
【0062】
基板91の裏面を研磨した後、この基板の凹凸パターン上に磁性層92を被覆したものを磁気転写用マスター担体90とする。基板91の凹凸パターンの凸部あるいは凹部形状は、原盤のレジストの凹凸パターンに依存した形状となる。
【0063】
次に、上記のようにして作製された磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法について説明する。
【0064】
磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写により情報が転写される磁気ディスク媒体85は、例えば、基板86の両面または片面に磁気記録層87が形成されたハードディスク、フレキシブルディスク等の円盤状磁気記録媒体であり、ここでは、磁気記録層の磁化容易方向が記録面に対して垂直な方向に形成されている垂直磁気記録媒体とする。
【0065】
図8は、この磁気転写の基本工程を説明するための図であり、図8(A)は磁界を一方向に印加して磁気ディスク媒体を初期直流磁化する工程、(B)はマスター担体と磁気ディスク媒体とを密着して初期直流磁界とは反対方向に磁界を印加する工程、(C)は磁気転写後の状態をそれぞれ示す図である。なお、図8において磁気ディスク媒体85についてはその下側記録層86側のみを示している。
【0066】
図8(A)に示すように、予め磁気ディスク媒体85に初期直流磁界Hinをトラック面に垂直な一方向に印加して磁気記録層87の磁化を初期直流磁化させておく。その後、図8(B)に示すように、この磁気ディスク媒体85の記録層87側の面とマスター担体90の軟磁性層92側の面とを密着させ、磁気ディスク媒体85のトラック面に垂直な方向に初期直流磁界Hinとは逆方向の転写用磁界Hduを印加して磁気転写を行う。その結果、図8(c)に示すように、磁気ディスク媒体85の磁気記録層87にはマスター担体90の凹凸パターンに応じた情報(例えばサーボ信号)が磁気的に転写記録される。ここでは、磁気ディスク媒体85の下側記録層87へのマスター担体90による磁気転写について説明したが、図8に示すように、磁気ディスク媒体85の上側記録層87についても上側用のマスター担体と密着させて下側記録層と同様にして、該下側記録層と同時に磁気転写を行う。
【0067】
なお、面内磁気記録媒体への磁気転写の場合にも、上記垂直磁気記録媒体用とほぼ同様のマスター担体90が使用される。この面内記録の場合には、磁気ディスク媒体の磁化を、予めトラック方向に沿った一方向に初期直流磁化しておき、マスター担体と密着させてその初期直流磁化方向と略逆向きの転写用磁界を印加して磁気転写を行うものであり、この転写用磁界がマスター担体90の凸部磁性層に吸い込まれ、凸部に対応する部分の磁気ディスク媒体の磁性層の磁化は反転せず、その他の部分の磁化が反転する結果、凹凸パターンに対応した磁化パターンを磁気ディスク媒体に記録することができる。
【0068】
以上説明した、本発明の電子ビーム描画方法を用いた、インプリントモールド、磁気転写用マスター担体の上述の製造方法は一例であり、本発明の電子ビーム描画方法を用いて同心円に沿ったパターンの描画を行い、凹凸パターンを形成する工程を経るものであれば上述の作製方法に限るものではない。
【0069】
なお、本発明の電子ビーム描画方法は、透明部材に複数の同心円が形成されてなるフレネルレンズのような光学素子を作製する際に、精度よく複数の同心円を描画する際にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の電子ビーム描画方法を実施する一実施形態の電子ビーム描画システムの要部側面図(A)および部分平面図(B)である。
【図2】本発明の第1の実施形態の電子ビーム描画方法における偏向信号等の各種制御信号のタイミングチャート
【図3】本発明の第2の実施形態の電子ビーム描画方法における偏向信号等の各種制御信号のタイミングチャート
【図4】ディスクリートメディア用のグルーブパターンの描画工程を示す図
【図5】電子ビーム描画方法または微細パターン描画システムによって描画された微細パターンを備えた本発明インプリントモールドを用いて微細パターンを転写形成している過程を示す概略断面図
【図6】ディスクリートメディア80を示す斜視図
【図7】磁気転写用マスター担体用の原盤に描画する描画パターンを示す斜視図
【図8】(A)初期磁界印加時、(B)転写用磁界印加時、(C)磁気転写後のそれぞれの磁気転写工程を示す断面図
【図9】従来の同心円パターン描画時の偏向信号等の各種制御信号のタイミングチャート
【図10】(A)従来の同心円描画時のトラック送り位置を示す模式図、(B)従来例1のトラック送り方法によるトラック描画軌跡を示す拡大図、(C)従来例2のトラック送り方法によるトラック描画軌跡を示す拡大図
【符号の説明】
【0071】
11 被描画体
15 グルーブパターン
EB 電子ビーム
X 周方向
Y ディスク半径方向
20 電子ビーム描画システム
21、22 偏向手段
23 電子銃
24 ブランキング手段
25 アパーチャ
26 ブランキング
40 電子ビーム描画装置
41 回転ステージ
44 スピンドルモータ
45 回転ステージユニット
49 直線移動手段
50 コントローラ
53 エンコーダ
60 信号送出装置
70 インプリントモールド
71 ディスク基板
72 微細凹凸パターン
80 磁気記録媒体
81 基板
82 磁性層
83 レジスト樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリエンコーダを備えた回転ステージ上に載置された被描画体上に電子ビームを照射し、該回転ステージを回転させつつ同心円状のパターンを描画する電子ビーム描画方法において、
所定の同心円に沿ったパターンを描画後、特定のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとし、
前記電子ビームの照射をオフとした状態で、前記電子ビームの照射位置を半径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、前記電子ビームの照射をオフとしてから前記回転ステージが1回転した際に生じる前記特定のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオンとして前記所定の同心円に隣接する同心円に沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から前記回転ステージが1回転した際に生じる前記特定のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオフとする工程を繰り返して同心円状のパターンを描画することを特徴とする電子ビーム描画方法。
【請求項2】
ロータリエンコーダを備えた回転ステージ上に載置された被描画体上に電子ビームを照射し、該回転ステージを回転させつつ同心円状のパターンを描画する電子ビーム描画方法において、
所定の同心円に沿ったパターンを描画後、第1のエンコーダパルスで電子ビームの照射をオフとし、
前記電子ビームの照射をオフとした状態で、前記電子ビームの照射位置を半径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、前記第1のエンコーダパルスとは異なる第2のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオンとして前記所定の同心円に隣接する同心円に沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から、前記回転ステージが1回転した時に生じる前記第2のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオフとする工程を繰り返すことにより同心円状のパターンを描画することを特徴とする電子ビーム描画方法。
【請求項3】
前記第2のエンコーダパルスが、前記電子ビームを偏向させた直後に発生するエンコーダパルスであることを特徴とする請求項2記載の電子ビーム描画方法。
【請求項4】
ロータリエンコーダを備えた、被描画体が載置される回転ステージと、前記被描画体上に同心円状のパターン描画を行うための電子ビームを出射する電子銃と、前記電子銃から出射された前記電子ビームの照射位置を、前記被描画体上において前記同心円の径方向に偏向させる偏向手段と、前記被描画体への前記電子ビーム照射のオン、オフを行うブランキング手段と、前記各手段による作動を連係制御するコントローラとを備えた電子ビーム描画装置であって、
前記コントローラが、所定の同心円に沿ったパターンを描画後、前記ロータリエンコーダからの特定のエンコーダパルスを起点として前記ブランキング手段を制御して前記電子ビームの照射をオフとすると共に、前記偏向手段を制御して、前記電子ビームの照射位置を前記径方向にトラックピッチ分だけ偏向させ、前記電子ビームの照射をオフとした時点から前記回転ステージが1回転した際に生じる前記特定のエンコーダパルスを起点として前記電子ビームの照射をオンとして前記所定の同心円に隣接する同心円に沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から前記回転ステージが1回転した際に生じる前記特定のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオフとするように前記ブランキング手段を制御するものであることを特徴とする電子ビーム描画装置。
【請求項5】
ロータリエンコーダを備えた、被描画体が載置される回転ステージと、前記被描画体上に同心円状のパターン描画を行うための電子ビームを出射する電子銃と、前記電子銃から出射された前記電子ビームの照射位置を、前記被描画体上において前記同心円の径方向に偏向させる偏向手段と、前記被描画体への前記電子ビーム照射のオン、オフを行うブランキング手段と、前記各手段による作動を連係制御するコントローラとを備えた電子ビーム描画装置であって、
前記コントローラが、所定の同心円に沿ったパターンを描画後、前記ロータリエンコーダからの第1のエンコーダパルスを起点として前記ブランキング手段を制御して前記電子ビームの照射をオフとすると共に、前記偏向手段を制御して、前記電子ビームの照射位置を前記径方向にトラックピッチ分だけ偏向させた後、前記第1のエンコーダパルスとは異なる第2のエンコーダパルスを起点として前記電子ビームの照射をオンとして前記所定の同心円に隣接する同心円に沿ったパターンの描画を開始し、該描画の開始から前記回転ステージが1回転した際に生じる前記第2のエンコーダパルスで前記電子ビームの照射をオフとするように前記ブランキング手段を制御するものであることを特徴とする電子ビーム描画装置。
【請求項6】
前記第2のエンコーダパルスが、前記電子ビームを偏向させた直後に発生するエンコーダパルスに設定されていることを特徴とする請求項5記載の電子ビーム描画装置。
【請求項7】
基盤上に塗布されたレジストに、請求項1から3いずれか1項記載の電子ビーム描画方法により同心円状の所望のパターンを描画露光し、該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製されたことを特徴とする凹凸パターン担持体。
【請求項8】
基盤上に塗布されたレジストに、請求項1から3いずれか1項記載の電子ビーム描画方法により同心円状の所望のパターンを描画露光し、該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製されたインプリントモールドを用い、該モールドの表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた凹凸パターンが転写されてなることを特徴とする磁気ディスク媒体。
【請求項9】
基盤上に塗布されたレジストに、請求項1から3いずれか1項記載の電子ビーム描画方法により同心円状の所望のパターンを描画露光し、該所望のパターンに応じた凹凸パターンを形成する工程を経て作製された磁気転写用マスター担体を用い、該マスター担体の表面に設けられた前記凹凸パターンに応じた磁化パターンが磁気転写されてなることを特徴とする磁気ディスク媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−223155(P2009−223155A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69366(P2008−69366)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】