説明

電子写真方式の画像形成装置の構成部品の再生方法及び再生構成部品

【課題】構成部品の表面に固着したトナーを適切かつ確実に除去し、しかも再生された構成部品間に品質上でばらつきが抑制された電子写真方式の画像形成装置の構成部品の再生方法を提供する。
【解決手段】ブラスト処理前に、有機溶剤と構成部品とを接触させる前処理を行なった後、構成部品の表面に固着したトナー形状に拠らずに以後の一様のブラスト処理を行なうことによって、構成部品の表面からほぼ完全に、トナーを除去することが可能となり、しかも、得られた再生品の品質がほぼ均質となる再生構成部品を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置の構成部品の再生方法及びこの再生方法によって再生された再生構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真方式の画像形成装置においては、環境負荷低減を目的に、資源循環型社会実現のため、画像形成装置の使用済の構成部品ないしユニットをユーザから回収後に分解、清掃、再組立し、再生構成部品として再使用したり、樹脂材料として利用したりするリサイクル活動が積極的に行なわれている。
【0003】
これらの画像形成装置の構成部品ないしユニットに使用されている構成部品を再利用するためには、それらユニットや構成部品に付着している微粒子粉体であるトナーを除去し清浄化する工程が必要であり、清浄化に必要なコストや環境負荷を減らすことが大きな課題となっている。
【0004】
このような構成部品を再生するために、トナーが付着した構成部品の表面に研磨剤粒子を吹き付けて構成部品の表面からトナーを除去するブラスト処理を行なうことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、特許文献2には、トナーが付着した画像形成装置の一構成部品である現像ローラの表面にウォータージェットで現像ローラの表面を洗浄して現像ローラを再生する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたブラスト処理やウォータージェットによる洗浄によって構成部品を再生する再生方法では、構成部品の表面に固く固着したトナーを十分に除去することが困難であり、しかも、トナーが十分に除去できる場合があっても、次の場合には、トナーが除去されずに残ってしまう等、再生に品質上のばらつきを生じる場合があり、不安定な再生となってしまう問題があった。
また特許文献2には、廃棄されていた現像ローラ再生処理方法が開示されている。この公報に記載の発明により、画像形成装置の現像ローラの再生が可能となった。
【0006】
また、特許文献3には、構成部品の表面に固着しているトナーに予め水を付着させ、このトナーに向かってドライアイス粒子を吹き付けて、ドライアイス粒子の昇華によってトナーに付着している水を冷却して氷化し、ドライアイス粒子の噴射によって、氷と共にトナーを除去することが提案されている。しかしながら、この再生方法においても、構成部品の表面に固く固着したトナーを十分に除去することが困難であり、十分に満足する結果を得ることができないだけでなく、トナーが十分に除去できる場合があっても、次の場合には、トナーが除去されずに残ってしまう等再生にばらつきを生じる場合があり、不安定な再生となってしまう問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、構成部品の表面に固着したトナーを適切かつ確実に除去し、しかも再生された構成部品間に品質上でばらつきが抑制された電子写真方式の画像形成装置の構成部品の再生方法、及びこの再生方法によって再生された再生構成部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも、固体粒子を吹き付けるブラスト処理により画像形成装置の構成部品の表面に固着したトナーを除去して当該構成部品を再生する画像形成装置の構成部品の再生方法において、前記ブラスト処理前に、有機溶剤と前記画像形成装置の構成部品とを接触させて前記固着したトナーを前記構成部品から剥離しやすくする前処理を行なうことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、
前記前処理による接触は、前記有機溶剤として柑橘系溶剤を含む前記有機溶剤中に前記構成部品を浸漬させて行うものであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、
前記柑橘系溶剤が、オレンジオイルであることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項2又は3記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、前記柑橘系溶剤を含む前記有機溶剤への浸漬時間が、5分〜1時間であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項2乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、前記前処理は超音波振動を付与しながら行うことを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項2乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、前記柑橘系溶剤を含む前記溶剤の浸漬時に20℃〜40℃に加熱することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、前記ブラスト処理で使用される固体粒子が、ドライアイス粒子であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は請求項7記載の構成部品の再生方法において、前記ドライアイス粒子の粒径が5〜100μmであることを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、前記画像形成装置の構成部品が、クリーニングローラ、現像ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、転写ローラから選択される少なくとも1つのローラであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法によって再生されたことを特徴とする画像形成装置の再生構成部品としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記ブラスト処理前に、トナーを溶解または膨潤する有機溶剤を用いて前記画像形成装置の構成部品の表面から前記トナーを剥離しやすいように前処理を行なうことによって、画像形成装置の構成部品の表面に固着したトナーを適切かつ確実に除去し、しかも再生された前記構成部品間に品質上でばらつきが抑制された電子写真方式の画像形成装置の構成部品の再生方法及びこの再生方法によって再生された再生構成部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】クリーニングローラの表面に固着しているトナー形状を示す断面図である。
【図2】本発明による再生構成部品を使用可能な一実施形態に係る電子写真方式の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2の画像形成装置における転写定着装置の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者は、構成部品の表面に固着したトナーを適切かつ確実に除去することについて種々検討を行なった。この検討の結果、電子写真方式の画像形成装置で使用される構成部品、例えば、後述する定着装置の金属性のクリーニングローラの表面に固着するトナーの形状は、種々様々であり、一様の固体粒子を吹き付ける処理であるサンドブラスト等によるブラスト処理では、クリーニングローラの表面に固着したトナーを十分に除去できない場合が発生し、再生品の品質にばらつきが発生することを究明した。
【0021】
即ち、図1に示すように、クリーニングローラCの表面に固着しているトナーTの形状は、図1(A)〜(E)で示すように、種々様々である。従って、例えば、(A)の形状で固着したトナーを除去するように、ブラスト処理のブラスト条件を調整すると、トナーの厚みが厚い(B)〜(E)においては、トナーの削り残りが生じてしまうことがあり、得られた再生品の品質にばらつきが発生していることが判明した。
【0022】
このような究明に基づき、更なる検討を進めた結果、画像形成装置の構成部品の再生方法において、ブラスト処理前に、トナーを溶解あるいは膨潤する有機溶剤で前記構成部品の表面から前記トナーを軟化させるように前処理を行なった後、構成部品の表面に固着したトナー形状に拠らずに以後の一様のブラスト処理を行なうことによって、構成部品の表面からほぼ完全に、トナーを除去することが可能となり、しかも、得られた再生品の品質がほぼ均質となる再生構成部品を製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0023】
このような前処理の際の接触に用いる有機溶剤としては、トナーを溶解する有機溶剤等も使用可能であるが、特に柑橘系溶剤を使用する場合には、異臭や有害ガスの発生の恐れもなく、安全かつ容易に固着したトナーを構成部品の表面から遊離してはがれやすくすることが可能となるので好適である。
【0024】
このような柑橘系溶剤とは、リモネンなどのテルペン系炭化水素で弱酸性(pHが3〜6)のものである。リモネン(limonene)は、単環式モノテルペノイドの一種で、下記構造式を有し、化学式としては、C1016、分子量は136.23であり、天然にはd体、l体、d/l体の三種類があるが、本発明においてはd体のものが好適である。
【0025】
【化1】

【0026】
具体的には、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツなどの柑橘類精油;花精油、ペパーミント油、スペアミント油、スパイス油などの植物精油;コーラナッツエキストラクト、コーヒーエキストラクト、ワニラエキストラクト、ココアエキストラクト、紅茶エキストラクト、スパイス類エキストラクトなどの油性のエキストラクト(コーヒーオイル等を含む)及びこれらのオレオレジン類;合成香料化合物、油性調合香料組成物及びこれらの任意の混合物等が挙げられる。これらは、柑橘系フルーツの皮などに含まれるものであり健康上問題となることは無い。このような柑橘系溶剤がトナーを溶解して構成部品の表面から遊離させる理由としては次のように考えられる。
【0027】
d−リモネンは、上述のような構造式を有し、下記構造式を有するポリスチレンと分子構造が類似しており、そのため、トナーの主成分であるポリスチレンを溶解し易く、さらに、ベンゼン環を有する芳香族系化合物との相溶性も高いことが推察され、このような性質により前述の本発明による効果を奏するものと考えられる。このように、単に柑橘系溶剤をトナーに混合すると、お互いに溶け合おうとする性質があるので、化学反応を使って別な物質に変化させるのではなく、有機溶剤に接触させることにより発熱などを伴わずに安全性も高い状態で、構成部品に固着したトナーを、構成部品の表面から遊離しやすくして剥離しやすくすることが可能となる。
【0028】
【化2】

【0029】
柑橘系溶剤は、有機溶剤として、そのまま用いることができる。また、柑橘系溶剤は有機溶剤に対して20重量%以上、好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜60重量%を添加して、有機溶剤中で表面にトナーが固着した画像形成装置の構成部品を接触させることにより行う。この接触の際に有機溶剤を攪拌させて行なうことができる。この接触際に、柑橘系溶剤を含む有機溶剤中に表面にトナーが固着した画像形成装置の構成部品を浸漬させて行なうことが望ましい。
【0030】
前記有機溶剤中には他の溶剤を加えることもでき、このような他の溶剤としては、特に制限されないが水溶性の溶剤およびアルコール系溶剤が好ましい。具体的には、イソプロピルアルコールや1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノールなどがあげられる。
【0031】
柑橘系溶剤の保存性向上のために、キレート剤、酵素、アルカリ剤(酸化塩を作るもの)、酸化剤(O2系)、着色剤やハーブ系成分スキンケアの栄養分(スクワラン、シロキサン、植物油脂、ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、レチノール、トコフェロール、セラミド、パラフィン、アルブミン水添硬化油、多価アルコール(PG、PEG、グリセリン、DPG、1.3BG、ソルビトール)、多糖類(キサンタンガン、β−グルカン、CMC、サイクロデキストリン、メトロース、マンナン、グアーガム、などを適宜添加することを妨げない。
【0032】
特に、前記柑橘系溶剤として、オレンジオイルを使用する場合には、より効果が高く好適である。
【0033】
また、本発明の再生方法では、前処理として表面にトナーが固着した画像形成装置の構成部品を前記有機溶剤へ接触には、有機溶剤中に浸漬させることが好ましい。この浸漬時間が、5分〜1時間内とすることで、表面に固着したトナーの固着力が低下して遊離しやすくなるので望ましい。5分より短いとトナーの構成部分の表面から遊離させる効果が薄く、1時間よりも長いとトナーが溶解され過ぎてブラスト処理におけるトナーの研削力が強く効きすぎることとなり構成部品の表面を損傷させる恐れがあるので1時間以内とすることが推奨される。
【0034】
更に、表面にトナーが固着した構成部品を前記有機溶剤と接触させる前処理の際に超音波振動を付与することにより、トナー固着物が構成部品の表面からより確実に遊離させることが可能となるので好ましい。この場合、超音波振動は、15〜50 kHzが好ましく、トナーの構成部品の表面への固着状態に応じて強度を調整することが好ましい。
また、前記有機溶剤と接触させる前処理の際に有機溶剤の液温を20℃〜40℃、好ましくは25℃〜35℃、更に好ましくは28℃〜32℃に加熱することで溶解または膨潤してトナーなどを遊離しやすくする効果が向上する。
一方、温度が低いと効果が少なく、温度が高すぎると固着物自体が熱により軟化し溶解性、膨潤性が変化するため効果が薄れることとなる。
【0035】
本発明で使用されるブラスト処理としては、固体粒子を構成部品の表面に吹き付けて、構成部品の表面に固着しているトナーを表面から除去するものであれば、使用可能である。具体的には、砂や重曹等の固体粒子を吹き付けるサンドブラストや重曹ブラストがあげられるが、ドライアイス粒子を吹き付けるドライアイスブラストを使用する場合には、サンドブラストや重曹ブラストなどと比べて、ブラストされるものによる汚濁がない。即ち、ドライアイスブラストの場合は、ドライアイスが昇華されることで空気中に二酸化炭素として飛散してしまうために、ブラストされる構成部品が汚濁されることを防止することができる。
ドライアイス粒子の粒径は、5〜100μm好ましくは10〜80μm更に好ましくは15〜50μmが好ましい。粒径が大きすぎても、また小さすぎてもブラスト効果が薄れる。
【0036】
本発明で対象とする画像形成装置の再生構成部品としては、電子写真方式の画像形成装置において用いられ、使用に伴いその表面にトナーや紙粉等が異物として付着する画像形成装置の構成部品に前記再生方法を採用することによって容易に得ることができる。特に、画像形成装置のクリーニングローラ、現像ローラ、定着ローラ、転写ローラ等各種弾性ローラ等は、表面にトナーが固着され易く、本発明による再生方法を適用する場合には、より効果的である。
【0037】
因みに、本発明による再生構成部品を使用可能な一実施形態に係る電子写真方式の画像形成装置について、図2に基づいて説明する。図2は、本発明による再生構成部品を使用可能な一実施形態に係る電子写真方式の画像形成装置の概略構成を示す図である。
【0038】
図1において、1は画像形成装置としてのカラー複写機の装置本体、2は入力画像情報に基づいたレーザ光を発する書込み部(露光部)、20Y、20M、20C、20BKは各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応したプロセスカートリッジ、21は各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにそれぞれ収容された感光体ドラム、22は感光体ドラム21上を帯電する帯電ローラ、感光体ドラム21にトナーを供給する現像ローラ23aをそれぞれ有する23Y、23M、23C、23BKは感光体ドラム21上に形成される静電潜像を現像する現像装置、24は感光体ドラム21上に形成されたトナー像を中間転写ベルト27に転写する転写バイアスローラ、25は感光体ドラム21上の未転写トナーを回収するクリーニング部、を示す。
【0039】
また、27は複数色のトナー像が重ねて転写される像担持体としての中間転写ベルト、28は転写定着ローラ67に中間転写ベルト27を介して対向するローラ部材、29は中間転写ベルト27上の未転写トナーを回収するクリーニング部(中間転写ベルトクリーニング部)、32Y、32M、32C、32BKは各現像装置23Y、23M、23C、23BKに各色のトナーを補給するトナー補給部、51は原稿Dを原稿読込部55に搬送する原稿搬送部、55は原稿Dの画像情報を読み込む原稿読込部、61は転写紙等の記録媒体Pが収納される給紙部、66は記録媒体P上にトナー像を転写・定着する転写定着装置、85は中間転写ベルト27を冷却する冷却ローラ、90は転写定着ローラ67の表面に残留したトナーを除去するクリーニング装置、を示す。
【0040】
ここで、転写定着装置66は、定着部材としての転写定着ローラ67、加圧部材としての加圧ローラ68、クリーニング装置90、等で構成される。また、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKは、それぞれ、感光体ドラム21、帯電部22、クリーニング部25が、一体化されたものである。そして、各プロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKにおける感光体ドラム21上では、それぞれ、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)の画像形成がおこなわれる。
【0041】
以下、画像形成装置における、通常のカラー画像形成時の動作について説明する。
まず、原稿Dは、原稿搬送部51の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送されて、原稿読込部55のコンタクトガラス53上に載置される。そして、原稿読込部55で、コンタクトガラス53上に載置された原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
【0042】
詳しくは、原稿読込部55は、コンタクトガラス53上の原稿Dの画像に対して、照明ランプから発した光を照射しながら走査させる。そして、原稿Dにて反射した光を、ミラー群及びレンズを介して、カラーセンサに結像する。原稿Dのカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部(不図示である。)で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0043】
そして、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像情報は、書込み部2に送信される。そして、書込み部2からは、各色の画像情報に基づいたレーザ光(露光光)が、それぞれ、対応するプロセスカートリッジ20Y、20M、20C、20BKの感光体ドラム21上に向けて発せられる。
【0044】
一方、4つの感光体ドラム21は、それぞれ、図2の時計方向に回転している。そして、まず、感光体ドラム21の表面は、帯電部22との対向位置で、一様に帯電される(帯電工程である。)。こうして、感光体ドラム21上には、帯電電位が形成される。その後、帯電された感光体ドラム21表面は、それぞれのレーザ光の照射位置に達する。
【0045】
書込み部2において、光源から画像信号に対応したレーザ光が各色に対応して射出される。レーザ光は、ポリゴンミラー3に入射して反射した後に、レンズ4、5を透過する。
レンズ4、5を透過した後のレーザ光は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色成分ごとに別の光路を通過することになる(露光工程である。)。
【0046】
イエロー成分に対応したレーザ光は、ミラー6〜8で反射された後に、紙面左側から1番目のプロセスカートリッジ20Yの感光体ドラム21表面に照射される。このとき、イエロー成分のレーザ光は、高速回転するポリゴンミラー3により、感光体ドラム21の回転軸方向(主走査方向)に走査される。こうして、帯電部22にて帯電された後の感光体ドラム21上には、イエロー成分に対応した静電潜像が形成される。
【0047】
同様に、マゼンタ成分に対応したレーザ光は、ミラー9〜11で反射された後に、紙面左から2番目のプロセスカートリッジ20Mの感光体ドラム21表面に照射されて、マゼンタ成分に対応した静電潜像が形成される。シアン成分のレーザ光は、ミラー12〜14で反射された後に、紙面左から3番目のプロセスカートリッジ20Cの感光体ドラム212表面に照射されて、シアン成分の静電潜像が形成される。ブラック成分のレーザ光は、ミラー15で反射された後に、紙面左から4番目のプロセスカートリッジ20BKの感光体ドラム21表面に照射されて、ブラック成分の静電潜像が形成される。
【0048】
その後、各色の静電潜像が形成された感光体ドラム21表面は、それぞれ、現像装置23Y、23M、23C、23BKとの対向位置に達する。そして、各現像装置23Y、23M、23C、23BKから現像ローラ23aによって感光体ドラム21上に各色のトナーが供給されて、感光体ドラム21上の潜像が現像される(現像工程である。)。
【0049】
その後、現像工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、複数のローラ部材に張架・支持された中間転写ベルト27との対向位置に達する。ここで、それぞれの対向位置には、中間転写ベルト27の内周面に当接するように転写バイアスローラ24が設置されている。そして、転写バイアスローラ24の位置で、中間転写ベルト27上に、感光体ドラム21上に形成された各色の画像(トナー像)が、順次重ねて転写される(第1転写工程である。)。
【0050】
そして、第1転写工程後の感光体ドラム21表面は、それぞれ、クリーニング部25との対向位置に達する。そして、クリーニング部25で、感光体ドラム21上に残存する未転写トナーが回収される(クリーニング工程である。)。その後、感光体ドラム21表面は、不図示の除電部を通過して、感光体ドラム21における一連の作像プロセスが終了する。
【0051】
他方、感光体ドラム21上の各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト27(像担持体)表面は、図中の矢印方向に走行して、転写定着ローラ67の位置に達する。そして、転写定着ローラ67の位置で、記録媒体P上に中間転写ベルト27上のフルカラーの画像が2次転写される(第2転写工程である。)。その後、中間転写ベルト27表面は、中間転写ベルトクリーニング部29の位置に達する。そして、中間転写ベルト27上の未転写トナーが中間転写ベルトクリーニング部29に回収されて、中間転写ベルト27上の一連の転写プロセスが完了する。
【0052】
また、中間転写ベルト27から転写されたトナー像を担持した転写定着ローラ67(定着部材)表面は、図2の時計方向に回転して、加圧ローラ68との当接位置(ニップ部である。)に達する。ここで、転写定着ローラ67は内設された加熱手段としてのヒータ70によって直接的に加熱されていて、転写定着ローラ67に担持されたトナー像が加熱・溶融される。そして、転写定着ローラ67と加圧ローラ68とのニップ部にて、転写定着ローラ67に担持されたトナー像(フルカラー画像)が記録媒体Pに転写される(第3転写工程である。)とともに定着される。
【0053】
その後、転写定着ローラ67表面は、クリーニングローラ75の位置に達する。そして、転写定着ローラ67上の残留トナーがクリーニングローラ75に回収されて、転写定着ローラ67上の一連の転写・定着プロセスが完了する。この場合、クリーニングローラ75は、図3に示すように、その表面に付着した残留トナーをクリーニングローラ75の表面から除去するブラシ状部材91とクリーニングブレード69を備えて、クリーニングローラ75の表面に付着しているトナーをブラシ部材91とクリーニングブレード69によって除去、クリーニングするようになっている。
【0054】
ここで、転写定着装置66の位置の記録媒体Pは、給紙部61から搬送ガイド63、レジストローラ64等を経由して搬送されたものである。詳しくは、記録媒体Pを収納する給紙部61から、給紙ローラ62により給送された転写紙Pが、搬送ガイド63を通過した後に、レジストローラ64に導かれる。レジストローラ64に達した記録媒体Pは、転写定着ローラ67上のトナー像とタイミングを合わせて、転写定着ローラ67と加圧ローラ68とのニップ部に向けて搬送される。その後、フルカラー画像が転写・定着された記録媒体Pは、排紙ローラ80によって、装置本体1外に出力画像として排出されて、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0055】
以上のような画像形成工程において、クリーニングローラ75、現像ローラ23a、定着ローラ77、転写ローラ24等各種弾性ローラ等は、表面にトナーが固着され易く、表面にトナーが固着したこれらのローラは、画像形成に大きな影響を与えるために、必要に応じて交換される。この際に、新品のローラに交換せずに、再生ローラに交換すれば、資源循環可能となり、環境負荷低減を図ることができる。
【0056】
この実施形態に係る画像形成装置においては、定着部分に用いられる金属製のクリーニングローラ75は、特にトナーの固着が著しいので、このクリーニングローラの再生方法について、実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明を説明するが、これらは本発明の一態様を示すに過ぎずこれらにより本発明の技術的範囲は限定されない。
【0058】
市場より回収された定着装置の構成部品であるクリーニングローラ5点について、それぞれ下記実施例及び比較例に基づいて洗浄を行なった。この場合、5点のクリーニングローラ75は、これらの使用条件によって、ローラ75の表面のー部に固着しているトナーの固着している状態がそれぞれ前述の図1(A)〜(E)に示すように異なっている。
【0059】
〔実施例1〕
市場にて回収された定着部に用いられている金属製クリーニングローラを、グレープフルーツオイル(生活の木社製、Frances Murphy、 マッサージ オイル レッグ グレープフルーツ)内に全体が浸るように前処理工程として3分間の浸漬沈降後、5μmのサンドからなるサンドブラスト噴射ノズルをクリーニングローラの回転中心部に向くように5cmの距離を置いて設置した。その前処理の際、特に加熱をせず15℃としている。クリーニングローラを60rpmで回転させ、サンドブラスト噴射ノズルをクリーニングローラの長手軸方向に0.5cm/sの速度で往復させながら2×105Paの噴射圧力で1分間噴射した。その後、サンドブラスト処理後におけるクリーニングローラの表面の損傷状態について、目視で観察した。その際、5種類の再生品について5段階評価を行なった。5段階評価としては、ランク5は、表面状態が新品と同等レベルで良好であることを示し、数字が低下するに表面状態が悪く、レベル1では、表面にトナーが多量に残存した最低の表面状態を示している。
【0060】
〔実施例2〕
前記前処理工程における浸漬時間を8分と変更した以外は実施例1と同様に処理を行ない、評価した。
【0061】
〔実施例3〕
実施例2で使用したグレープフルーツオイル(生活の木社製、Frances Murphy、 マッサージ オイル レッグ グレープフルーツ)をオレンジオイル(フロッシュ オレンジマルチクリーナー)に変更した以外は実施例2と同様に処理を行ない評価した。
【0062】
〔実施例4〕
実施例3において、クリーニングローラを前処理工程に用いる有機溶剤としてグレープフルーツオイル(生活の木社製、Frances Murphy、 マッサージ オイル レッグ グレープフルーツ)を用いてこれに浸漬した際に、その浸漬液に、35KHzの超音波振動を加えた以外は実施例3と同様に処理して評価を行なった。
【0063】
〔実施例5〕
実施例4において、サンドブラスト噴射を80μmの粒子径のドライアイスを使用したドライアイスブラスト処理に変更した以外は実施例4と同様に処理して評価を行なった。
【0064】
〔実施例6〕
実施例4において、33℃に加熱した以外は実施例4と同様に処理して評価を行なった。
【0065】
〔実施例7〕
実施例5において、ドライアイスの粒径を35μmに変更した以外実施例6と同様に処理して評価を行なった。
【0066】
〔比較例1〕
グレープフルーツオイル(生活の木社製、Frances Murphy、 マッサージ オイル レッグ グレープフルーツ)を使用した前処理を行なわずに80μmの粒子径のドライアイスを使用したドライアイスブラスト処理により実施例1と同様に処理して評価を行なった。
【0067】
表1に各実施例及び比較例で得られたクリーニングローラ再生品の評価結果を示す。
【0068】
【表1】

【0069】
表1の結果から明らかなように、比較例1で示す、前処理を行なわずに、ドライアイスブラスト処理を行なったものでは、クリーニングローラの表面状態がランク1と最低となり、しかもの5個のクリーニングローラにおいて再生されたローラの表面状態にバラツキが多く、品質上不均一な再生品となっていた。
【0070】
これに対し、本発明による各実施例のものでは、表面処理状態が2以上と適切に行なわれているだけでなく、回収品が異なるトナーの固着態のものでも一定の同一レベルの品質を示す表面処理がなされていた。特に、オレンジオイルを使用した実施例3〜5のものでは、グレープフルーツオイルを使用した実施例1、2のものに比べて表面状態がより向上した再生品が得られた。
【符号の説明】
【0071】
1 画像形成装置本体
2 露光部
20Y、20M、20C、20BK プロセスカートリッジ
21 感光体ドラム
22 帯電ローラ
23Y、23M、23C、23BK 現像装置
23a 現像ローラ
24 転写バイアスローラ
25 クリーニング装置
27 中間転写ベルト
28 ローラ部材
66 転写定着装置
67 定着ローラ
68 加圧ローラ
69 クリーニングブレード
75 クリーニングローラ
91 ブラシ部材
C クリーニングローラ
T トナー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2003−50506号公報
【特許文献2】特開平8−328375号公報
【特許文献3】特開2008−176134号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子を吹き付けるブラスト処理により画像形成装置の構成部品の表面に固着したトナーを除去して当該構成部品を再生する構成部品の再生方法において、
前記ブラスト処理前に、有機溶剤と前記画像形成装置の構成部品とを接触させて前記固着したトナーを前記構成部品から剥離しやすくする前処理を行なうことを特徴とする画像形成装置の構成部品の再生方法。
【請求項2】
請求項1記載の構成部品の再生方法において、
前記前処理による接触は、前記有機溶剤として柑橘系溶剤を使用し、当該柑橘系溶剤を含む溶剤中に前記構成部品を浸漬させて行うものであることを特徴とする画像形成装置の構成部品の再生方法。
【請求項3】
請求項2記載の構成部品の再生方法において、
前記柑橘系溶剤が、オレンジオイルであることを特徴とする画像形成装置の構成部品の再生方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の構成部品の再生方法において、
前記柑橘系溶剤を含む前記有機溶剤への浸漬時間が、5分〜1時間であることを特徴とする画像形成装置の構成部品の再生方法。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、
前記前処理は超音波振動を付与しながら行うことを特徴とする画像形成装置の構成部品の再生方法。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、前記柑橘系溶剤を含む前記溶剤の浸漬時に20℃〜40℃に加熱することを特徴とする画像形成装置の構成部品の再生方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、
前記ブラスト処理で使用される固体粒子が、ドライアイス粒子であることを特徴とする画像形成装置の構成部品の再生方法。
【請求項8】
請求項7記載の構成部品の再生方法において、前記ドライアイス粒子の粒径が5〜100μmであることを特徴とする画像形成装置の構成部品の再生方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法において、
前記構成部品が、クリーニングローラ、現像ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、転写ローラから選択されるローラであることを特徴とする画像形成装置の構成部品の再生方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項記載の画像形成装置の構成部品の再生方法によって再生されたことを特徴とする画像形成装置の再生構成部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−34043(P2011−34043A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279517(P2009−279517)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】