説明

電子放出デバイス,電子放出表示デバイス,および電子放出デバイスの製造方法

【課題】電子放出デバイス,電子放出表示デバイス,および電子放出デバイスの製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による電子放出デバイスは,基板2と,基板2上に形成される主電極6aと補助電極6bとを含むカソード電極6と,補助電極6b上に形成される抵抗層14と,抵抗層14と連結する電子放出部12と,電子放出部12を露出させる第1開口部8aを備え,基板2上に形成される絶縁層8と,第1開口部8aに対応する第2開口部10aを備え,絶縁層8上に形成されるゲート電極10とを含み,抵抗層14はその厚さ方向に沿って変化する比抵抗値を有する。抵抗層14は,補助電極6bの構成物質の一部を拡散させて形成される。これにより,別途の追加工程なしに容易に抵抗層14を形成でき,高価な抵抗層材料を使う必要がなく,通常の抵抗層とは違って耐酸性が強くエッチング工程時にエッチング液によって損傷しないという効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子放出デバイス,電子放出表示デバイス,および電子放出デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に,電子放出素子は,電子源として熱陰極を用いる方式と冷陰極を用いる方式に分類される。
【0003】
ここで,冷陰極を用いる方式の電子放出素子としては,電界放出アレイ(Field Emitter Array;FEA)型,表面伝導エミッション(Surface−Conduction Emission;SCE)型,金属−絶縁層−金属(Metal−Insulator−Metal;MIM)型および金属−絶縁層−半導体(Metal−Insulator−Semiconductor;MIS)型などが知られている。
【0004】
この中で,電界放出アレイ(FEA)型電子放出素子は,真空中で電子放出部に電界が加わる時,電子放出部から電子が容易に放出される原理を用いる。電子放出部は,仕事関数が低いか,或いは縦横比が大きい物質,例えば炭素ナノチューブ,黒鉛およびダイヤモンド状炭素のような炭素系物質からなる。
【0005】
電界放出アレイ(FEA)型電子放出素子は,電子放出部と電子放出を制御する駆動電極を含み,一つのカソード電極と一つのゲート電極とを備える。この電子放出素子は,一つの基板にアレイ状に配置されて電子放出デバイスを構成し,電子放出デバイスは,蛍光層とアノード電極などで構成された発光ユニットを備えた他の基板と結合して電子放出表示デバイスを構成する。
【0006】
通常のFEA型電子放出表示デバイスは,真空容器を構成する第1基板と第2基板とを含む。第1基板上には,電子放出部と共に,電子放出部の電子放出を制御する駆動電極として,カソード電極とゲート電極とが形成される。また,第1基板に対向する第2基板の内側の面には,蛍光層と共に,第1基板側から放出した電子を蛍光層に向かって加速させるアノード電極が形成される。
【0007】
カソード電極は,電子放出部と電気的に連結して,電子放出に必要な電流を電子放出部に供給する。ゲート電極は,カソード電極との電位差を用いて電界を形成することにより,電子放出を制御する。
【0008】
しかしながら,実際に電子放出デバイスを駆動する時,駆動電極,特に,カソード電極の内部抵抗によって,各画素に配置された電子放出部に印加される電圧に差が発生する。その結果,画素別電子放出部の放出電流量に差が発生し,電子放出デバイスが光源または表示装置に用いられる場合に,各画素において輝度差が感知されるという問題が発生する。
【0009】
故に,従来は駆動電極の構成物質を変更して,抵抗値を減少させるか,或いはカソード電極と電子放出部との間に抵抗層をおく構造が提案された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常の場合,抵抗層は,特定の比抵抗値を有する物質をスクリーン印刷したり,薄膜ドーピングするなどの方法で形成される。しかし,この比抵抗値を有する物質は,一般的に高価であるため,材料費の上昇を誘発する。さらに,抵抗層の製作工程が既存の工程とは異なる場合,抵抗層形成のための製作設備が別途必要となる。また,従来の抵抗層の多くは耐酸性が弱いため,後続工程でエッチング液によって損傷しやすいという問題がある。
【0011】
そこで,本発明は,上記問題に鑑みてなされたものであり,本発明の目的とするところは,電極の内部抵抗による電圧降下を補償し,電子放出部の放出電流量を均一化でき,より容易に製作できる抵抗層を備えた電子放出デバイス,電子放出表示デバイス,および電子放出デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,基板と;基板上に形成される主電極と補助電極とを含むカソード電極と;補助電極上に形成される抵抗層と;抵抗層と連結される電子放出部と;電子放出部を露出させる第1開口部を備え,基板上に形成される絶縁層と;第1開口部の位置に対応する第2開口部を備え,絶縁層上に形成されるゲート電極と;を含み,抵抗層は,その厚さ方向に沿って変化する比抵抗値を有することを特徴とする,電子放出デバイスが提供される。
【0013】
また,比抵抗値は,抵抗層の厚さ方向に沿って漸進的に変わるように構成されてもよい。
【0014】
また,抵抗層の比抵抗値は,補助電極に近い面から電子放出部に近い面に接近するほど大きくなるように構成されてもよい。
【0015】
また,抵抗層は,電子放出デバイスの画素領域ごとに一つずつ形成されてもよい。
【0016】
また,主電極は透明物質で形成され,補助電極は拡散性物質からなるものであってもよい。
【0017】
また,補助電極は,銀からなるものであってもよい。
【0018】
また,補助電極は,電子放出部に対応する位置に形成されたホールを含んでもよい。
【0019】
抵抗層は,厚さが1〜10μmの範囲内であってもよい。
【0020】
また,上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,互いに対向配置される第1基板および第2基板と;第1基板上に形成され,主電極と補助電極とを含むカソード電極と;補助電極上に形成され,その厚さ方向に沿って変化する比抵抗値を有する抵抗層と;抵抗層と連結する電子放出部と;絶縁層を挟んでカソード電極から分離されて位置するゲート電極と;第1基板に対向する第2基板の一面に形成される蛍光層と;蛍光層の一面に配置されるアノード電極と;を含むことを特徴とする,電子放出表示デバイスが提供される。
【0021】
また,比抵抗値は,抵抗層の厚さ方向に沿って漸進的に変わるように構成されてもよい。
【0022】
また,抵抗層の比抵抗値は,補助電極と接する面から電子放出部と接する面に近くなるほど大きくなるように構成されてもよい。
【0023】
また,補助電極は銀からなるものであってもよい。
【0024】
また,抵抗層は,電子放出表示デバイスの画素領域ごとに一つずつ形成されてもよい。
【0025】
また,電子放出部は,炭素ナノチューブ,黒鉛,黒鉛ナノファイバー,ダイヤモンド,ダイヤモンド状炭素,フラーレンおよびシリコンナノワイヤーからなる群から選択された少なくとも一つの物質を含んでもよい。
【0026】
また,上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板上にカソード電極を形成する段階と;カソード電極上の所定位置に被拡散層を形成する段階と;カソード電極に含まれている導電物質を被拡散層に拡散させて,被拡散層を抵抗層に変化させる段階と;基板上に絶縁層とゲート電極とを形成する段階と;抵抗層に連結する電子放出部を形成する段階と;を含むことを特徴とする,電子放出デバイスの製造方法が提供される。
【0027】
また,被拡散層を抵抗層に変化させる段階は,加熱処理を含んでもよい。
【0028】
また,被拡散層を形成する段階と,絶縁層を形成する段階とは,同種の絶縁物質を用い,同一工程条件で処理されてもよい。
【0029】
また,カソード電極形成段階は,基板上に主電極を形成する段階と主電極上に拡散性物質を含む補助電極を形成する段階とを含んでもよい。
【0030】
また,補助電極は,銀を使用して形成されてもよい。
【0031】
また,電子放出部を形成する段階は,基板面に形成された構造物の上に,電子放出物質と感光性物質とを含むペースト状の混合物を塗布する段階と,塗布された混合物の少なくとも一部分を露光によって部分硬化させる段階(露光段階)と,硬化しなかった混合物を除去する段階(現像段階)とを含んでもよい。
【0032】
また,主電極は透明導電物質で形成され,補助電極には基板上に設定される画素領域ごとに少なくとも一つのホールが形成され,電子放出部は,ペースト状混合物の露光時に補助電極のホールを通して,紫外線を選択的に透過・照射させて形成されてもよい。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明によれば,電極の内部抵抗による電圧降下を補償し,電子放出部の放出電流量を均一化でき,より容易に製作できる抵抗層を備えた電子放出デバイス,電子放出表示デバイス,および電子放出デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0035】
図1および図2に示されるように,本発明の一実施形態による電子放出表示デバイスは,内部空間部を挟んで互いに平行に対向配置される第1基板2と第2基板4とを含む。第2基板4と対向する第1基板2の面には,電子放出素子がアレイ状に配置されて,第1基板と共に電子放出デバイスを構成する。この電子放出デバイスは,第2基板4および第2基板4に配置される発光ユニットと結合して,電子放出表示デバイスを構成する。
【0036】
より具体的には,第1基板2の上には,第1基板2の一方向(図1のy軸方向)に沿って帯状パターンにカソード電極6が形成され,カソード電極6を覆うようにして,第1基板2の上全体に絶縁層8が形成される。絶縁層8の上には,ゲート電極10がカソード電極6と直交する方向(図1のx軸方向)に沿って帯状パターンに形成される。
【0037】
本実施形態で,カソード電極6とゲート電極10との交差領域を単位画素と定義すれば,各単位画素ごとにカソード電極6の上に抵抗層14が形成され,抵抗層14の上には一つ以上の電子放出部12が形成される。そして,絶縁層8とゲート電極10には,それぞれ各電子放出部12に対応する第1開口部8aと第2開口部10aとが形成され,第1基板2上に電子放出部12を露出させる。
【0038】
ここで,カソード電極6は,主電極6a上に補助電極6bが積層される2層構造からなる。補助電極6bは,拡散性物質からなり,主電極6aの抵抗値より小さい抵抗値を持ってカソード電極6のライン抵抗(電流路としての抵抗)を低減する。
【0039】
主電極6aとしては,インジウム錫酸化物(ITO)のような透明導電物質を用いることができ,補助電極6bとしては,拡散係数が大きい銀(Ag)を用いることができる。補助電極6bは,電子放出表示デバイスの製作時に,その内部の導電物質を被拡散層13(図5cに図示)に拡散させて,被拡散層13を所定範囲の比抵抗値を有する抵抗層14に変化させる。
【0040】
抵抗層14は,カソード電極6の抵抗により電圧降下が発生する時,各画素の電圧条件を均一に制御する役割を果たす。つまり,抵抗層14は,カソード電極6の抵抗値より大きい抵抗を持って,カソード電極6の全体的なライン抵抗を増加させ,各単位画素の放出電流量を全体的に減少させるか,或いは単位画素間の放出電流量の差を減少させる。要するに,抵抗層14は,全体的に画素別放出電流量を下向平準化させる。
【0041】
また,抵抗層14は,抵抗層14の厚さ方向に沿って変化する比抵抗値を有することができる。特に,抵抗層14の比抵抗値を漸進的に変化させることができ,一例として,抵抗層14の比抵抗値は補助電極6bと接する面から電子放出部12と接する面に近づくほど大きくすることができる。このように抵抗層14の比抵抗値は厚さ方向に沿って変わる特定導電物質の密度差に応じて変わる。
【0042】
図3に示されているように,特定導電物質の密度は,補助電極6bと接する面から電子放出部12と接する面に近づくほど漸進的に小さくなる。一例として,この特定導電物質が小さい比抵抗値(つまり,高い導電性)を有する場合,抵抗層14の中でこの特定導電物質の密度分布が稠密な部分が,その密度に比例して小さい抵抗値を有する。
【0043】
比抵抗値は,10Ωcm〜10Ωcm範囲内で漸進的に変えることができる。この比抵抗値の変化については後述する。
【0044】
そして,抵抗層14は,1〜10μm範囲内の厚さを有することができる。
【0045】
本実施形態で電子放出部12は,真空中で電界が加えられれば電子を放出する物質,たとえば炭素系物質またはナノメートルサイズ物質からなる。電子放出部12に使用することが望ましい物質としては,炭素ナノチューブ,黒鉛,黒鉛ナノファイバー,ダイヤモンド,ダイヤモンド状炭素,フラーレン(C60),シリコンナノワイヤーおよびこれらの組み合わせ物質がある。
【0046】
図面では,電子放出部12が円形に形成され,各画素領域でカソード電極6の長手方向に沿って一列に配列されているが,電子放出部12の平面形状,画素領域当たりの個数,および配列形態などは図示した例に限られない。
【0047】
また,図面では抵抗層14が四角形に形成され,各画素領域全面にわたって形成されているが,その形状と配列も多様に変更できる。特に,抵抗層14は各単位画素内にある電子放出部12の下部に個別に配置することもできる。
【0048】
図4に示されるように,カソード電極6’の補助電極6b’は,各単位画素内に位置する部分に少なくとも一つ以上のホール7を備えることができる。このホール7は,各電子放出部12に対応する位置に形成され,その大きさは電子放出部12の大きさより大きくなるように構成されることが望ましい。但し,その形状,大きさ,配列などは多様に変更できる。このホール7は,電子放出部12の製造方法の特徴に起因するものであって,後で詳述する。
【0049】
ゲート電極10と絶縁層8の上には,電子放出部12から放出される電子の集束性を高めるために集束電極(図示せず)を形成できる。この場合,カソード電極6とゲート電極10との間に位置する絶縁層8を第1絶縁層とすると,ゲート電極10と集束電極との間に第2絶縁層(図示せず)が形成されてゲート電極と集束電極とを絶縁させる。
【0050】
そして,第1基板2に対向する第2基板4の一面には蛍光層18と黒色層20とが形成され,蛍光層18と黒色層20の表面にはアルミニウムのような金属膜からなるアノード電極22が形成される。アノード電極22には,外部から電子ビーム加速に必要な高電圧が印加され,蛍光層18で放射された可視光のうち,第1基板2に向かって放射された可視光を,第2基板4側に反射させて画面の輝度を高める。
【0051】
一方,アノード電極22には,金属膜ではないインジウム錫酸化物のような透明導電物質を使うことができる。この場合,アノード電極22は,第2基板4上に形成された蛍光層18と黒色層20の一面に位置し,所定のパターンに区分されて,複数形成されることができる。
【0052】
そして,第1基板2と第2基板4との間にはスペーサ24が設置されて,第1基板2と第2基板4の間隔を維持させる。この時,スペーサ24は,黒色層20が位置する非発光領域に対応して配置されるので,画像表示を妨げることはない。
【0053】
上記構成の電子放出表示デバイスは,外部からカソード電極6,ゲート電極10,およびアノード電極22に所定の電圧を印加して駆動される。例えば,カソード電極6とゲート電極10の間には数〜数十ボルトの電位差を有する駆動電圧が印加され,アノード電極22には数百〜数千ボルトの(+)電圧が印加される。
【0054】
したがって,カソード電極6とゲート電極10との間の電位差が臨界値以上である画素で電子放出部12から電子が放出され,放出された電子は,アノード電極22に印加された高電圧に引かれて対応する蛍光層18に衝突し,これを発光させる。
【0055】
特に,カソード電極6の上に形成された抵抗層14が,カソード電極6の各部位による電位差を補完することにより,各画素の放出電流量を均一にする。
【0056】
次に,図5A〜図5Gを参照して,本発明の一実施形態による電子放出デバイスの製造方法について説明する。
【0057】
まず,図5Aに示されているように,第1基板2上に導電膜,一例として透明なITOをコーティングし,これを帯形状にパターニングして,主電極6aを形成する。
【0058】
次に,図5Bに示されているように,主電極6aの帯状パターンに沿って主電極6aの上に補助電極6bをコーティングする。この補助電極6bの構成物質には,前述したように,拡散係数が大きい銀(Ag)のような物質を用いることができる。
【0059】
次に,図5Cに示されているように,補助電極6bの単位画素ごとに絶縁ペーストを塗布して,被拡散層13を形成する。この被拡散層13は後述する絶縁層8を形成するペーストをそのまま用いることができ,工程設備,塗布方法などもそのまま用いることができる。そして,この補助電極6b上に塗布された被拡散層13を加熱処理,例えば,焼成を行う。この時,補助電極6bにある導電物質の一部が被拡散層13に拡散し,その結果被拡散層13は初期の絶縁性を喪失し,抵抗層14に変化する。図5Cで導電物質の拡散方向を矢印で示した。
【0060】
図5Dは,抵抗層14が補助電極6b上に形成された状態をそのまま示す。補助電極6bの物質として拡散係数が大きい物質を使ったのは,焼成時に補助電極6b内の導電物質の被拡散層への拡散率を高めるためである。特に,抵抗層14は厚さ方向に沿って補助電極6bから距離が遠くなるほど比抵抗値が大きくなるが,これはその距離が遠くなるほど補助電極6b内にある導電物質の拡散量が減るためである。これにより,抵抗層14は前述したように,厚さ方向に沿って順次に変わる比抵抗値を持つようになる。
【0061】
そして,抵抗層14の比抵抗値は,焼成温度,時間および拡散物質の成分などによって調節される。一例として,抵抗層14の比抵抗値を低くする場合,焼成温度を高め,焼成時間を長くする。そうすれば,拡散量が増加して,抵抗層14の比抵抗値は低くなる。
【0062】
このような抵抗層14の形成方法は,既存の抵抗層形成方法より比抵抗値の調節が容易に行える。つまり,従来の方法では,アモルファスシリコン(a−Si)にドーパントの濃度を調節して,抵抗層の比抵抗値を調節するため,比抵抗値を均一に調節することは難しいが,本発明の実施形態による抵抗層14の形成方法には,温度および時間などにより比抵抗値を容易に調節できるという長所がある。また,本発明の実施形態による抵抗層14の形成方法は,既存の構造に用いられる補助電極を用いるので工程の側面からも簡単になる長所がある。
【0063】
さらに,図5Eに示されているように,第1基板2全体に絶縁物質を塗布して,絶縁層8を形成する。絶縁層8上に再び導電膜をコーティングし,マスク層を用いて導電膜に第2開口部10aを形成する。
【0064】
そして,図5Fに示されているように,第1基板2をエッチング液に浸漬して,第2開口部10aによって露出した絶縁層8の部位をエッチングし,絶縁層8に第1開口部8aを形成した後に,導電膜を帯状にパターニングしてゲート電極10を完成する。
【0065】
最後に,図5Gに示されているように,抵抗層14上に電子放出部12を形成して,電子放出デバイスを完成する。この電子放出部12を形成する方法には直接成長法,化学気相蒸着法,スパッタリング法およびスクリーン印刷法など多様な方法を用いることができる。
【0066】
そして,電子放出デバイスを含む電子放出表示デバイスは,電子放出デバイス上にスペーサを固定し,第2基板上に蛍光層,黒色層,およびアノード電極を形成した後,ガラスフリットを用いて第1基板と第2基板との周縁を接合させ,内部空間部を排気させて完成される。
【0067】
次に,本発明の他の実施形態による電子放出デバイスの製造方法について図6A〜図6Dを参照して示す。
【0068】
本実施形態による電子放出デバイスの主電極6a,補助電極6b’,抵抗層14,絶縁層8およびゲート電極10は前述した電子放出デバイスの製造方法と同一である。但し,補助電極6b’に単位画素領域当たり少なくとも一つ以上のホール7が形成される点のみが異なる。このホール7は,パターニングされたマスク層を用いて,補助電極6b’に形成される。
【0069】
このように補助電極6b’は,ホール7が形成された場合も,被拡散層焼成時に導電物質を四方に拡散させて,被拡散層を抵抗層14に変化させる。
【0070】
図6Aは,主電極6a,ホール7が備わる補助電極6b’,抵抗層14,絶縁層8およびゲート電極10が形成された状態を示している。
【0071】
次に,図6Bに示されているように,電子放出物質と感光性物質とを含むペースト状混合物を製造し,これを第1基板2の面上に形成された構造物上全体に塗布する。
【0072】
その次に,図6Cに示されているように,第1基板2の後面に露光マスク30を配置した状態で第1基板2の後面から紫外線(矢印で図示)を照射する。この露光マスク30は,補助電極6b’に形成されたホール7の位置に対応する位置に開口部30aを備える。したがって,紫外線は,補助電極6b’のホール7および露光マスク30の開口部30aを通じて,抵抗層14のホール7に対応する部位の混合物を選択的に硬化させる。
【0073】
ここで,補助電極6b’は紫外線を透過させないので,補助電極6b’にホール7が形成されていない場合,混合物を硬化できない問題が発生する。このため,補助電極6b’にホール7を形成するものである。この時,導電物質が拡散された後にも,抵抗層14は透明なので後面露光作業が可能になる。
【0074】
また,本実施形態による電子放出デバイスは,補助電極6b’のホール7によって露光マスク30なしに後面露光作業が可能である。
【0075】
その次に,図6Dに示されているように,現像によって硬化しない混合物を除去し,残った混合物を乾燥および焼成して電子放出部12を形成する。
【0076】
以上説明したように,本発明による電子放出デバイスおよび電子放出表示デバイスは,補助電極の導電物質を絶縁膜に拡散させて,絶縁膜を抵抗層に変化させるため,抵抗層を形成する工程を別途追加することなく容易に抵抗層を形成することができる。また,高価な抵抗層材料を使用する必要もない。また,通常の抵抗層とは異なり,耐酸性が強いため,エッチング工程時にエッチング液によって損傷しないという長所がある。
【0077】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態による電子放出表示デバイスの部分分解斜視図である。
【図2】図1に示された電子放出表示デバイスの部分断面図である。
【図3】図2に示された抵抗層の比抵抗値変化の状態を示す断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態による電子放出表示デバイスの主要部を示す分解斜視図である。
【図5A】本発明の一実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図5B】本発明の一実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図5C】本発明の一実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図5D】本発明の一実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図5E】本発明の一実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図5F】本発明の一実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図5G】本発明の一実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図6A】本発明の他の実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図6B】本発明の他の実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図6C】本発明の他の実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【図6D】本発明の他の実施形態による電子放出デバイスの製造方法を説明するために示す各段階での概略図である。
【符号の説明】
【0079】
2 第1基板
4 第2基板
6 カソード電極
6a 主電極
6b 補助電極
8 絶縁層
8a 第1開口部
10a 第2開口部
10 ゲート電極
12 電子放出部
13 被拡散層
14 抵抗層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
前記基板上に形成される主電極と補助電極とを含むカソード電極と;
前記補助電極上に形成される抵抗層と;
前記抵抗層と連結される電子放出部と;
前記電子放出部を露出させる第1開口部を備え,前記基板上に形成される絶縁層と;
前記第1開口部に対応して形成された第2開口部を備え,前記絶縁層上に形成されるゲート電極と;
を含み,
前記抵抗層は,その厚さ方向に沿って変化する比抵抗値を有することを特徴とする,電子放出デバイス。
【請求項2】
前記比抵抗値は,前記抵抗層の厚さ方向に沿って漸進的に変わることを特徴とする,請求項1に記載の電子放出デバイス。
【請求項3】
前記抵抗層の比抵抗値は,前記補助電極に近い面から前記電子放出部に近い面に接近するほど大きくなることを特徴とする,請求項2に記載の電子放出デバイス。
【請求項4】
前記抵抗層は,前記電子放出デバイスの画素領域ごとに一つずつ形成されることを特徴とする,請求項3に記載の電子放出デバイス。
【請求項5】
前記主電極は透明物質で形成され,前記補助電極は拡散性物質からなることを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載の電子放出デバイス。
【請求項6】
前記補助電極は,銀からなることを特徴とする,請求項5に記載の電子放出デバイス。
【請求項7】
前記補助電極は,前記電子放出部に対応する位置に形成されたホールを含むことを特徴とする,請求項5または6のいずれかに記載の電子放出デバイス。
【請求項8】
前記抵抗層は,厚さが1〜10μmの範囲内にあることを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載の電子放出デバイス。
【請求項9】
互いに対向配置される第1基板および第2基板と;
前記第1基板上に形成され,主電極と補助電極とを含むカソード電極と;
前記補助電極上に形成され,その厚さ方向に沿って変化する比抵抗値を有する抵抗層と;
前記抵抗層と連結する電子放出部と;
絶縁層を挟んで前記カソード電極から分離されて位置するゲート電極と;
前記第1基板に対向する前記第2基板の一面に形成される蛍光層と;
前記蛍光層の一面に配置されるアノード電極と;
を含むことを特徴とする,電子放出表示デバイス。
【請求項10】
前記比抵抗値は,前記抵抗層の厚さ方向に沿って漸進的に変わることを特徴とする,請求項9に記載の電子放出表示デバイス。
【請求項11】
前記抵抗層の比抵抗値は,前記補助電極と接する面から前記電子放出部と接する面に近くなるほど大きくなることを特徴とする,請求項10に記載の電子放出表示デバイス。
【請求項12】
前記補助電極は,銀からなることを特徴とする,請求項11に記載の電子放出表示デバイス。
【請求項13】
前記抵抗層は,前記電子放出表示デバイスの画素領域ごとに一つずつ形成されることを特徴とする,請求項11または12のいずれかに記載の電子放出表示デバイス。
【請求項14】
前記電子放出部は,炭素ナノチューブ,黒鉛,黒鉛ナノファイバー,ダイヤモンド,ダイヤモンド状炭素,フラーレンおよびシリコンナノワイヤーからなる群から選択された少なくとも一つの物質を含むことを特徴とする,請求項10〜13のいずれかに記載の電子放出表示デバイス。
【請求項15】
基板上にカソード電極を形成する段階と;
前記カソード電極の上の所定位置に被拡散層を形成する段階と;
前記カソード電極に含まれている導電物質を前記被拡散層に拡散させて,前記被拡散層を抵抗層に変化させる段階と;
前記基板上に絶縁層とゲート電極とを形成する段階と;
前記抵抗層と連結する電子放出部を形成する段階と;
を含むことを特徴とする,電子放出デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記被拡散層を前記抵抗層に変化させる段階は,加熱処理を含むことを特徴とする,請求項15に記載の電子放出デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記被拡散層を形成する段階と,前記絶縁層を形成する段階とは,同種の絶縁物質を用い,同一工程条件で処理することを特徴とする,請求項15または16のいずれかに記載の電子放出デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記カソード電極を形成する段階は,基板上に主電極を形成する段階と,前記主電極上に拡散性物質を含む補助電極を形成する段階とを含むことを特徴とする,請求項15〜17のいずれかに記載の電子放出デバイスの製造方法。
【請求項19】
前記補助電極は,銀を使用して形成されることを特徴とする,請求項18に記載の電子放出デバイスの製造方法。
【請求項20】
前記電子放出部を形成する段階は,前記基板面に形成された構造物の上に,電子放出物質と感光性物質とを含むペースト状の混合物を塗布する段階と,塗布された混合物の少なくとも一部分を露光によって部分硬化させる段階と,硬化しなかった混合物を除去する段階とを含むことを特徴とする,請求項18または19のいずれかに記載の電子放出デバイスの製造方法。
【請求項21】
前記主電極は,透明導電物質で形成され,前記補助電極には,前記基板上に設定される画素領域ごとに少なくとも一つのホールが形成され,前記電子放出部は,前記ペースト状混合物の露光時に,前記補助電極のホールを通して,紫外線を選択的に透過・照射させて形成されることを特徴とする,請求項20に記載の電子放出デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−286636(P2006−286636A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94338(P2006−94338)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】