説明

電子機器、フォーマット方法、フォーマット指示方法

【課題】 NV−RAMの適切な初期化の実現。
【解決手段】 初期処理において更新される情報を記憶する不揮発性記憶手段と、不揮発性記憶手段に記憶された情報に対する初期処理を行うための初期処理プログラム、及び不揮発性記憶手段に記憶された情報をフォーマットするフォーマットプログラムが記憶されたプログラムメモリ手段と、所定時点で初期処理プログラムに基づいて初期処理を実行するとともに、初期処理実行時であっても、入力されたフォーマット指示に基づいて、フォーマットプログラムに基づいたフォーマット処理を実行することができるようにされた制御手段と、所定の通信フォーマットによるデータバスを介して接続されることで、データバス上に存在する1以上の外部電子機器と通信可能とされる通信手段を備え、フォーマット指示は、上記通信手段により入力されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期処理において更新される情報を記憶した不揮発性記憶手段を有する電子機器、及び不揮発性記憶手段に関するフォーマット方法、さらにはそのフォーマットを実行させるフォーマット指示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルデータインターフェイスとして、IEEE(Institute of Electrical Engineers)1394データインターフェイスが知られている。IEEE1394データインターフェイスは、例えばSCSIなどよりもデータ転送レートが高速であり、周知のように、所要のデータサイズを周期的に送受信することが保証されるIsochronous通信が可能とされる。このため、IEEE1394データインターフェイスは、AV(Audio/Video)などのストリームデータをリアルタイムで転送するのに有利とされている。
【0003】
このような技術を背景として、各種デジタルAV機器やパーソナルコンピュータ装置等の電子機器を、例えばIEEE1394等のデータインターフェイス規格に従ったデータバスを介して相互に接続することで、機器間でAVデータを送受信できるようにしたAVシステムが提案されている。
【0004】
上記したAVシステムとしては、例えばアンプ機器を中心として、これに例えばCDプレーヤ、DVDプレーヤのほか、ビデオ機器などの各種AVソース出力機器をデータバスを介して接続することで、例えばいわゆるコンポーネント的なシステムを構築することが考えられる。
【0005】
このAVシステムにおけるアンプ機器の役割としては、データバスを介してAVソース出力機器から送信されるAVソース情報を入力して、最終的には音声信号としてスピーカなどに出力することになる。このために、アンプ機器としては、例えばデータバス上に存在する複数のAVソース出力機器のうちから、1つのAVソース出力機器を選択的に入力するための機能を有することになる。つまり入力ソース選択機能を有する。これは、例えばユーザがアンプ機器に対して行った入力ソースの選択操作に応じて、その選択操作により指定されるAVソース出力機器とデータバス上での論理的な相互接続関係を確立することで実現される。
【0006】
このような、AV機器やデータネットワークシステムの発展により、デジタルデータの複製や伝送が容易となることに伴って、音楽や映像などのデジタルデータコンテンツについての著作権保護が大きな問題となってきている。
このためコンテンツデータの著作権保護のために、データの暗号化、機器接続時の機器間の認証、著作権保護に不適切な機器の排除方式など、多様な技術が提案、実施されている。また例えば下記特許文献1には不正な複製を防止する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2000−306332
【0007】
上記したIEEE1394による機器間の接続の際にも、特にオーディオデータやビデオデータの伝送が行われる機器間においては、機器同士の認証処理によって互いに正当な機器(例えば正しい著作権保護機能を備えるものとしてライセンスされた機器)であることの認証が行われることを条件としてデータ伝送等が可能とされることなどが行われている。
例えばオーディオデータ等は暗号化されて伝送されるものとし、上記認証処理が完了することで送信側から受信側に暗号鍵が受け渡され、これによって受信側は暗号化されて送信されてくるデータの解読が可能となるようにしている。これによってコンテンツデータの無制限な伝送やコピーを抑止し、著作権保護機能を実現する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このような電子機器では、不揮発性メモリ(NV−RAM)を用い、電源オフでもデータが消失されないという特性を利用した各種の情報が記憶されるようにすることが多い。機器の動作のための各種係数、設定値、或いは認証に利用する情報などが記憶されることがある。
そして、不揮発性メモリに記憶される情報に対しては、例えば機器の電源オンの際に初期処理が行われ、必要な更新等が行われるものがある。
【0009】
ところで電子機器を製造する工場においては、出荷前に、不揮発性メモリの内容が適切に初期化できていることを確認したい。
例えば電子機器に、上記の電源オン時の不揮発性メモリに対する初期処理を実行するプログラムを記憶させた後であれば、電子機器を電源オンとすることで不揮発性メモリのデータを初期化することができる。
ところが、製造工程において搭載される不揮発性メモリは、当然ながら全く不定な内容の状態となっており、従ってデータ内容を読み出して判別し、データ更新を行うという上記初期処理が正しく行われる補償はない。
しかもこの処理は例えば表示部などで実行内容が表示されないものであるため工場においても確認する手段がない。
このため、出荷前の段階で、著作権保護機能のために用いる不揮発性メモリのデータ内容が必ずしも適正なデータ状態になっていないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで本発明はこのような事情に応じて、工場出荷前で不揮発性記憶手段のデータ内容を適切なものとし、さらに工程の効率化を実現できるようにすることを目的とする。
【0011】
このため本発明の電子機器は、初期処理において更新される情報を記憶する不揮発性記憶手段と、上記不揮発性記憶手段に記憶された情報に対する上記初期処理を行うための初期処理プログラム、及び上記不揮発性記憶手段に記憶された情報をフォーマットするフォーマットプログラムが記憶されたプログラムメモリ手段と、所定時点で上記初期処理プログラムに基づいて上記初期処理を実行するとともに、上記初期処理実行時であっても、入力されたフォーマット指示に基づいて、上記フォーマットプログラムに基づいたフォーマット処理を実行することができるようにされた制御手段とを備え所定の通信フォーマットによるデータバスを介して接続されることで、データバス上に存在する1以上の外部電子機器と通信可能とされる通信手段をさらに備えた場合、上記フォーマット指示は、上記通信手段により入力される。
また、所定の通信フォーマットによるデータバスを介して接続されることで、データバス上に存在する1以上の外部電子機器と通信可能とされる第1の通信手段と、上記第1の通信手段における所定の通信フォーマットとは異なる通信フォーマットによって外部電子機器と通信可能な第2の通信手段を更に備え、上記フォーマット指示は、上記第2の通信手段により入力される。
また、無線信号受信手段を更に備え、上記フォーマット指示は、上記無線信号受信手段により入力される。
また、記録媒体から情報を読み取る読取手段を更に備え、上記フォーマット指示は、上記読取手段により入力される。
【0012】
本発明のフォーマット方法は、所定の通信フォーマットによるデータバスで接続される外部電子機器との間で認証を行って通信状態を確立する電子機器において、初期処理において更新される情報を記憶する不揮発性記憶手段のフォーマット方法として、所定時点で、記憶されている初期処理プログラムに基づいて上記不揮発性記憶手段に対する初期処理を実行するとともに、上記初期処理の実行中であるか否かに関わらず、フォーマット指示が入力されることに応じて、記憶されているフォーマットプログラムに基づいて上記不揮発性記憶手段に対するフォーマット処理を実行するとともに、上記フォーマット指示は、上記所定の通信フォーマットによるデータバスを介して外部機器から入力される。
また、所定の通信フォーマットによるデータバスで接続される外部電子機器との間で認証を行って通信状態を確立する電子機器においては、上記フォーマット指示は、上記所定の通信フォーマットによるデータバス、又は上記所定の通信フォーマットとは異なる通信フォーマットによるデータバスにより入力される。
また上記フォーマット指示は、無線信号受信手段、又は記録媒体から情報を読み取る読取手段により入力される。
【0013】
本発明のフォーマット指示方法は、所定の通信フォーマットによるデータバスを介して接続され、データバス上に存在する他の電子機器との間で認証を行って通信状態を確立する電子機器に対して、不揮発性記憶手段のフォーマットを指示する方法である。そしてこのフォーマット指示方法は、機器起動時の上記不揮発性記憶手段に対する初期処理を行うための初期処理プログラムと、上記不揮発性記憶手段に記憶された情報をフォーマットするフォーマットプログラムと、上記電子機器に固有のID情報とを送信して記憶させ、上記電子機器が起動された際に、上記ID情報を用いて暗号化したフォーマット指示を送信して上記電子機器に上記フォーマットプログラムを実行させるとともに、上記電子機器に対して、上記初期処理プログラム、上記フォーマットプログラム、及び上記ID情報を送信した後、上記電子機器の起動を検出するための情報の送受信を行い、上記送受信によって上記電子機器の起動が検出されることに応じて、上記フォーマット指示の送信を行う。
【0014】
以上のような本発明の場合、電子機器では、初期処理プログラムとフォーマットプログラムが記憶されることで、不揮発性記憶手段に対する初期処理、及びフォーマット処理が実行可能となる。
初期処理とは、電源オンの際などにおいて、例えば不揮発性記憶手段に記憶されたデータを読み出してそのデータを更新するなどの処理である。
フォーマット処理とは、例えば工場出荷前に一度実行される処理であり、不揮発性記憶手段の情報内容の初期値を書き込むなどの処理である。
そして最初にフォーマット処理が行われるようにすることで、データ内容が不定な不揮発性記憶手段に対して適切なデータ状態とすることができる。つまりデータ内容が不定な状態の不揮発性記憶手段に対して初期処理が行われることでの不確実性をなくすことができる。
また、フォーマット処理は、フォーマット指示に基づいて、初期処理実行中であってもそれを中断して実行できるようにすることで、工程の効率化を実現できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子機器において電源オンなどの所定時点で初期処理プログラムに基づいて初期処理を実行するとともに、初期処理実行時であっても、入力されたフォーマット指示に基づいて、フォーマットプログラムに基づいたフォーマット処理が実行されるようにしている。従って、工場出荷前の段階で、初期処理プログラム及びフォーマットプログラムを記憶させた後の時点であって、電源オンとされた際にフォーマット指示を入力することで、不揮発性記憶手段のフォーマットが可能となり、これによって、データ内容が不定な不揮発性記憶手段を適切なデータ状態とすることができるという効果がある。つまりデータ内容が不定な状態の不揮発性記憶手段に対して初期処理が行われることでの不確実性をなくすことができる。
また、フォーマット処理は、フォーマット指示に基づいて、初期処理実行中であってもそれを中断して実行できるようにすることで、工程の効率化を実現できる。即ち電子機器が電源オンとされることで初期処理プログラムが起動されてしまうが、初期処理を中断してフォーマット処理を実行できることで工程の時短化が図られる。
【0016】
また、フォーマット指示は電子機器固有のID情報を用いて暗号化された状態で入力され、電子機器側ではID情報を用いて暗号解読を行い、フォーマット指示を認識するようにしていることで、例えばユーザーサイドなどでフォーマットプログラムを起動させるようなことを防止できる。即ち不揮発性記憶手段のフォーマット処理は工場側でのみ可能となり、ユーザーサイドでの不適切なデータ書込などを防止できる。
【0017】
また、フォーマット指示(フォーマットトリガ)は、所定の通信フォーマットによるデータバス、又は所定の通信フォーマットとは異なる通信フォーマットによるデータバス、又は無線信号受信手段、又は記録媒体から情報を読み取る読取手段により入力される。つまり、フォーマット指示の入力経路が多様化されることで、電子機器にフォーマット指示を入力する装置として多様な装置(多様な情報出力形態の装置)を使用できる。例えば必ずしもIEEE1394バス対応の指示装置を用いる必要はなくなり、工程現場において都合のよい機器を利用できるため、製造コストの低減や作業の効率化を実現できる。
【0018】
また、電子機器に対して、初期処理プログラム、フォーマットプログラム、及びID情報を送信した後、電子機器の起動を検出するための情報の送受信を行い、電子機器の起動が検出されることに応じて、フォーマット指示の送信を行うようにすることで、電子機器に最も効率よくフォーマット処理を実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。説明は次の順序で行う。
1.AVシステム
1−1 全体構成
1−2 STR(フロントパネル)
1−3 STR対応ディスクドライブ(フロントパネル)
1−4 STR(内部)
1−5 STR対応ディスクドライブ(内部)
2.IEEE1394による本実施の形態のデータ通信
2−1 概要
2−2 スタックモデル
2−3 信号伝送形態
2−4 機器間のバス接続
2−5 パケット
2−6 トランザクションルール
2−7 アドレッシング
2−8 CIP(Common Isochronous Packet)
2−9 コネクションマネージメント
2−10 FCPにおけるコマンド及びレスポンス
2−11 AV/Cコマンドパケット
3.SRM
4.NV−RAMフォーマット処理
4−1 初期処理及びフォーマット処理の処理系の構成
4−2 初期処理
4−3 フォーマットトリガ対応処理
4−4 フォーマットトリガ入力経路例
4−5 フォーマットトリガ送信処理例
【0020】
1.AVシステム
1−1 全体構成
図1は本発明の実施の形態の電子機器を含む電子機器システムの構成例を示している。
この電子機器システムは、複数のAV機器等をIEEE1394インターフェイスのデータバスにより相互通信可能に接続することで構築される。
【0021】
図1においては、AVシステムを構成する機器として、STR(Stereo Tuner Receiver)60と、STR対応ディスクドライブ30、同一メーカ機器100、他社メーカ機器110が示される。
【0022】
STR60は、図1に示すAVシステムの中心として機能するもので、主としてチューナ機能、外部ソース入力選択機能、及びアンプ機能を備えており、例えば図のようにして5チャンネルステレオ音声に対応するスピーカSP(FL)、SP(FR)、SP(SL)、SP(SR)、SP(C)を接続することができるようになっている。
スピーカSP(FL)はフロント左チャンネルスピーカ、スピーカSP(FR)はフロント右チャンネルスピーカ、スピーカSP(SL)はサラウンド左チャンネルスピーカ、スピーカSP(SR)はサラウンド右チャンネルスピーカ、スピーカSP(C)はセンターチャンネルスピーカである。
なお、例えばサブウーハスピーカを追加していわゆる5.1チャンネルスピーカシステムとするなど、他のスピーカ構成も可能である。
【0023】
詳しい構成は後述するが、STR60では、内部のチューナ部で受信した放送信号と、アナログオーディオ信号入力と、デジタルオーディオ信号入力と、さらにIEEE1394バス116を介して外部から入力される複数のオーディオソースについて選択を行い、最終的には、これを音声としてスピーカSPから出力させることができるように構成されている。
【0024】
また、この図には、STR60に対する操作を行うためのリモートコントローラRMも示されている。STR60は、このリモートコントローラRMに対して行われた操作に応じて送信されてくる操作コマンド信号を受信し、その操作コマンド信号の内容に応じた所要の動作を実行する。なお、この図では、STR60に対応するリモートコントローラRMのみが示されているが、実際としては、他の機器についてもリモートコントローラによる操作が可能とされていてよいものである。
【0025】
また、上記STR60と共に接続することで利便性の高い各種のシステム機能を実現することのできる機種として、ここではSTR対応ディスクドライブ30が示されている。STR対応ディスクドライブ30は、例えばSTR60と同一メーカ品とされる。
【0026】
STR対応ディスクドライブ30は、例えばCD(Compact Disc)、SACD(Super Audio CD)、DVD(Digital Versatile Disc)のそれぞれについて対応可能なディスクプレーヤとしての機能を有しており、装填されたディスクについての再生を行う。
そして、ディスクから再生して得られるオーディオデータを、IEEE1394バス116を介して送信出力することが可能とされる。
なお公知のように、CDから再生されるオーディオデータは、サンプリング周波数44.1KHz、16ビット量子化のリニアPCMデータである。
またDVDが再生される場合は、オーディオデータだけでなくビデオデータが再生される場合があり、従ってSTR対応ディスクドライブ30はビデオデコード機能も備えている。図1には示していないが、例えばCRT、液晶その他の表示デバイスがSTR対応ディスクドライブ30に接続されることで、DVDから再生された映像を表示出力することができる。
SACDは、ΣΔ変調を用いた1ビットデジタルオーディオ信号方式(DSD:Direct Stream Digital)を用いたメディアである。このDSD信号は、CDのサンプリング周波数fs(fs=44.1KHz)の64倍という高いサンプリング周波数による1ビット量子化のデジタルオーディオデータであり、可聴周波数帯域を越えた信号再生を可能としている。
このようなSACDに対応するために、STR対応ディスクドライブ30はDSD信号対応のデコード機能を有する。
【0027】
このようなSTR対応ディスクドライブ30が、IEEE1394バス116によりSTR60と接続されることで、CD、DVD、SACDの再生出力をSTR60に接続されているスピーカシステムにより実行することが可能となる。
【0028】
同一メーカ機器100は、STR60、STR対応ディスクドライブ30と同一メーカとされて、IEEE1394インターフェイスに対応した通信機能を有するデジタルAV機器である。ここでの同一メーカ機器100の実際としては、特に言及しないが、例えばCDプレーヤ、MDレコーダ/プレーヤや、デジタルVTRなどとされればよいものである。
この同一メーカ機器100としては、例えばSTR対応ディスクドライブ30、及びSTR対応MD機1などと比較した場合には、特にSTR60を中心とするシステムコンポーネント機能が与えられるようには構成されていない点が異なる。
ただし、メーカ内のみで有効となるコマンド(Vender Dependent Commandといわれる)の送受信によっては、STR60、STR対応ディスクドライブ30、STR対応MD機1と共に、そのメーカで規定した特定の機能を有するように動作することが可能とされるものである。
また、例えばSTR60に対して、この同一メーカ機器100から送信されてくるオーディオソースとしてのデータを選択して受信入力するようにマニュアル操作を行えば、これを音声としてモニタしたり、或いは録音することなどが可能である。
【0029】
他社メーカ機器110もまたIEEE1394インターフェイスに対応した通信機能を有する何らかのデジタルAV機器であるが、STR60、STR対応ディスクドライブ30とは製造メーカが異なる。ここでの他社メーカ機器110の実際としても、CDプレーヤ、MDレコーダ/プレーヤや、デジタルVTRなどとされればよい。ただし、この他社メーカ機器110の場合には、原則として上記したSTR60のメーカで規定するVender Dependent Commandには対応不可となる。
【0030】
なお、ここでは図示していないが、例えばこの図1に示す各AV機器としては、それぞれが商用交流電源から電力を入力するための電源コンセントが備えられる。もしくは、バッテリ駆動可能な構成であればバッテリを収納可能とされている。つまりは、各機器がそれぞれ独立して電力を得ることが可能とされているものである。
【0031】
1−2 STR(フロントパネル)
続いて、上記図1に示したシステムを構成する上で主となる、STR60と、このSTR60とコンポーネント的システムを組むSTR対応ディスクドライブ30の外観構成として、各々のフロントパネル部位について説明しておく。
【0032】
図2はSTR60本体のフロントパネル部位の様子を示している。
フロントパネル左下側には、電源キー120が設けられている。この電源キー120を操作することで、STR60は、電源のオン/オフが切り換わるようにされている。なお、ここでいう電源がオフの状態とは、スタンバイ電源は動作しているいわゆるスタンバイ状態を指しているもので、例えば商用交流電源(又はバッテリ)の供給が絶たれている状態とは異なる。この点では、以降説明する、STR対応ディスクドライブ30についても同様とされる。
また、ここでの詳しい説明は省略するが、STR60では、スリープ状態とするためのスリープモードも用意されていることで、省電力化が考慮されている。
また、電源キー120の左側にはヘッドフォンジャック86が設けられている。
【0033】
フロントパネルのほぼ中央部には、表示部87が配置されている。
この場合の表示部87としては、主として文字表示を行うためのFL管表示部87Aが設けられており、ここでは、1行14文字分の表示が行われるようにされている。そして、その周囲にはセグメント表示部87Bが設けられており、図示してはいないが所定の決められた内容がセグメントによって表示される。
表示部87の左側にはディスプレイキー127が設けられる。
ディスプレイキー127は、基本的には表示部75における表示内容を変更するためのものとされる。
【0034】
また、FL管表示部87Aの右側には、ジョグダイヤル125と、その上側にチューニングモードキー121、チューナキー122、ファンクション/メニューキー123、エンターキー124が示される。
チューニングモードキー121、チューナキー122は、STR60のチューナ機能に関連するキーであり、それぞれ、受信バンド、チューナモードの切り換えを行うときに使用する。
また、ファンクション/メニューキー123は、ファンクション選択やメニュー選択を行うためのキーとされ、エンターキー124は決定操作を行うときに使用される。
そして、ジョグダイヤル125は、所定の操作手順のもとで上記各キーと共に併用されるもので、これによりユーザは実際の各種操作を行うことができる。
【0035】
一例として、ファンクション/メニューキー123を1回押圧操作するごとに、FL管表示部87Aの表示内容は、FUNCTION→SOUND→SETUPのようにしてトグルで変化する。
そして例えば、FL管表示部87AにFUNCTIONと表示させた状態でジョグダイヤル125を回転操作すると、STR60が入力してモニタ音声として出力するソースの選択を変更していくことができるようになっている。このときのFL管表示部87Aには、ジョグダイヤル125の回転操作に応じて現在選択されている入力ソース名が表示されるようになっている。この操作によっては、例えばチューナ音声、アナログ入力、光デジタル入力、及びIEEE1394バスを介して入力される各ソース(機器)を所定順序に従って順次選択していくことが可能とされる。
なお、例えばチューニングモードキー121、チューナキー122、ファンクション/メニューキー123、エンターキー124などのキーは、その背面側に装飾用のLEDが設けられており、動作状態等に応じて点灯、点滅などするようにもされている。
【0036】
ボリュームジョグ126は、STR60から出力される音声信号レベル、つまり、例えばスピーカSPから出力される音量を調整するためのダイヤルキーとして備えられる。
【0037】
1−3 STR対応ディスクドライブ(フロントパネル)
図3は、STR対応ディスクドライブ30のフロントパネル部位を示している。
先ず、このSTR対応ディスクドライブ30のフロントパネル左下側においても、電源オン/オフ(スタンバイ)のための電源キー150が設けられている。
【0038】
また、このSTR対応ディスクドライブ30のフロントパネルの中央上部には、CD、SACD、DVDとしてのディスクを挿入/排出するためのディスク挿脱部159が設けられている。例えばディスク挿脱部159内に収納されて装填されている状態にあるCD等を排出させるためには、このディスク挿脱部159の右側に配置されるイジェクトキー151を操作する。
【0039】
上記ディスク挿脱部159の下側には、例えば1行14文字分の表示が可能なFL管表示部47Aと、セグメント表示部47Bとから成る表示部47が設けられている。この場合、FL管表示部47Aに対しては、例えば現在装填されているCD等にて再生されるトラックのトラックナンバ、再生時間等の再生状況を示す情報や、CD等のディスクに記録されているテキストデータなどが文字等として表示される。また、セグメント表示部47Bには再生モードなどが示される。
FL管表示部47Aにおける表示内容の切り換えは、表示部47の左側に配置されるディスプレイキー156を操作することによって行うことができる。
【0040】
また、フロントパネル上の右側には、CDの再生に関するキーとして、再生/一時停止キー152、停止キー153,頭出し・早送り/早戻しキー154,155が設けられている。
【0041】
またフロントパネル上の左側には、HATSキー157が設けられる。HATSキー157は、HATS機能をオン/オフする操作キーである。
HATS(High quality digital Audio Transmission System)とは、伝送クロックのジッタの影響によるデジタルオーディオ信号品質の低下を防止する機能である。
例えばSTR対応ディスクドライブ30からSTR60に対してIEEE1394バス116によりオーディオデータを伝送する際に、伝送クロックのジッタによりSTR60側では受信したオーディオデータに時間軸方向の揺らぎが発生する。そこで、STR60側では、受信したオーディオデータを伝送クロックに基づいて一旦バッファメモリに蓄積し、それを水晶系のクロックに基づいて読み出すことにより、オーディオデータの時間軸方向の揺らぎを解消するものである。 このHATS機能がオンの場合、STR対応ディスクドライブ30とSTR60の間ではフロー制御のための信号のやりとりが行われるものとなる。
【0042】
ここで、上記図2、図3に示すフロントパネルの様子からも分かるように、STR60、STR対応ディスクドライブ30は、それぞれが、自機のための表示部75,47を有している。換言すれば、例えばSTR及びSTR対応機器から成るシステムを、1つのオーディオコンポーネントシステムとして考えた場合、このコンポーネントシステムとして統合された表示部位というものは設けられてはいないことになる。これは、例えばIEEE1394を介して接続される機器としては、本来、個々に独立した存在であることに対応している。
【0043】
1−4 STR(内部)
続いて、STR60、STR対応ディスクドライブ30の各内部構成について説明する。
【0044】
先ず、図4のブロック図にはSTR60の内部構成例が示されている。
STR60においては、オーディオソースとして、IEEE1394バス116を介して送信されてくるオーディオ信号と、自身が備えるチューナのオーディオ信号と、光デジタル入力端子67から入力される外部デジタルオーディオ信号と、アナログ入力端子78から入力される外部アナログオーディオ信号との4種を入力可能とされる。
【0045】
IEEE1394インターフェイス61は、IEEE1394バス116を介して他の外部機器とデータの送受信を行うために設けられる。これにより、STR60としては、外部とのAVデータの送受信、及び各種コマンドの送受信が可能に構成されることとなる。
IEEE1394インターフェイス61では、IEEE1394バス116を介して受信したパケットを復調し、復調したパケットに含まれるデータを抽出する。そしてこの抽出したデータを内部データ通信に適合するフォーマットのデータに変換して出力する。
例えばIEEE1394バス116を介して他のAV機器からオーディオデータが送信されてくるとする。IEEE1394インターフェイス61では、この送信されてきたオーディオデータを受信して、上記パケットに対する復調処理を行う。
そして、送信元の機器をSTR対応ディスクドライブ30として考えた場合などにおいて、CD、DVDの再生データが受信された場合には、例えばIEC60958といわれるデジタルオーディオデータインターフェイスフォーマットのオーディオデータTD1に変換して出力する。
この場合、オーディオデータTD1は復調処理部66に供給される。復調処理部66においては、入力されたオーディオデータTD1について、例えばIEC60958フォーマットに従った所要の復調処理を施して、例えばリニアPCMデータ(PCM1)としてPCMセレクタ69に出力する。
【0046】
なお、光デジタル入力端子67から入力される外部デジタルオーディオ信号も例えばIEC60958フォーマットのデータとされており、この光デジタル入力端子67からの入力の場合も、復調処理部66で復調されてリニアPCMデータ(PCM1)としてPCMセレクタ69に供給される。
【0047】
SACDの再生データは暗号化されて送信されてくる。
IEEE1394インターフェイス61において、IEEE1394バス116を介してSACDの再生データが受信された場合には、IEEE1394インターフェース61は、パケット復調処理、暗号解読処理等を行って、64fs、ΣΔ変調による1ビット量子化のDSD信号TD3を出力する。
DSD信号TD3はデシメーションフィルタ65に供給され、デシメーションフィルタ65によってリニアPCMデータ(PCM3)に変換されてPCMセレクタ69に供給される。
【0048】
PLL63は伝送クロックに基づいてパケット復調処理のクロックを生成する。上述したHATS機能オフの場合は、PLL63で生成されたクロックに基づくDSD信号TD3、IEC60958データTD1が出力される。
RAM62はIEEE1394インターフェース61における送受信データバッファとして機能する。
クロック発振器64は水晶系のクロックを発生させる。
【0049】
上述したHATS機能がオンとされている場合において、CD,DVDの再生データがIEEE1394インターフェース61に受信された場合は、そのデータは一旦RAM62に書き込まれた後、クロック発振器64からの水晶系のクロックに基づいて読み出される。特にIEEE1394インターフェース61はIEC60958データに対する復調機能も備えており、このHATSオンの場合は、RAM62から読み出されたデータに対して復調を行い、リニアPCMデータ(PCM2)として出力し、これをPCMセレクタ69に供給する。
またHATS機能がオンとされている場合において、SACDの再生データがIEEE1394インターフェース61に受信された場合も、そのデータは一旦RAM62に書き込まれた後、クロック発振器64からの水晶系のクロックに基づいて読み出される。この場合、読み出されたDSD信号TD3はデシメーションフィルタ65に供給され、デシメーションフィルタ65によってリニアPCMデータ(PCM3)に変換されてPCMセレクタ69に供給される。
【0050】
チューナ部77は、STR60内に備えられており、アンテナ76にて受信されたラジオ放送の電波について、選局及び復調処理等を行って例えばアナログ音声信号としてセレクタ79に出力する。
また、アナログオーディオ信号入力端子78を介して入力されるアナログ音声信号もまたセレクタ79に対して入力される。
【0051】
セレクタ79では、例えばシステムコントローラ70の制御に応じて、チューナ部77とアナログオーディオ信号入力端子78の何れかを入力ソースとして選択して、選択したアナログオーディオ信号をA/D変換器68に対して供給する。A/D変換器68では入力されてきたアナログオーディオ信号をリニアPCMデータ(PCM4)に変換してPCMセレクタ69に供給する。
【0052】
PCMセレクタ69では、システムコントローラ70の制御に応じて、PCM1,PCM2,PCM3,PCM4として示した各リニアPCMデータを選択する。即ち入力ファンクション切換となる選択である。
PCMセレクタ69で選択されたリニアPCMデータはオーディオデコーダ80に供給される。
このオーディオデコーダ80は、DSP(Digital Signal Processor)により形成され、オーディオデータに対して各種所要の信号処理やスピーカチャンネル分離などが行われる。
さらにオーディオデコーダ80の出力はストリームプロセッサにおいてイコライジング処理その他の音場処理等が行われる。そしてこれら所要の信号処理が施された、例えば5チャンネル等のオーディオデータは、D/A変換器82おいてアナログオーディオ信号とされ、パワーアンプ部83で増幅処理される。
パワーアンプ部83で処理された音声信号は、STR80におけるスピーカ接続端子84に接続されたスピーカ部SPに供給され、音声として出力される。なお、このスピーカ部SPは図1に示したスピーカSP(FL)、SP(FR)、SP(SL)、SP(SR)、SP(C)に相当し、図示は省略したがスピーカ接続端子84は、各スピーカに対応して設けられる。
またパワーアンプ部83の出力はヘッドホンジャック86にも供給され、ヘッドホン出力が可能とされる。
【0053】
ところで、STR60に入力されたオーディオデータをIEEE1394バス116により外部機器に出力する場合、オーディオデコーダ80から出力されたデータがセレクタ85を介してIEEE1394インターフェース61に供給されるようになされる。或いは復調処理部66の出力がセレクタ85を介してIEEE1394インターフェース61に供給される。
この場合、IEEE1394インターフェース61に供給されるデータは、例えばIEC60958などのデジタルオーディオデータインターフェイスのフォーマットに適合する変調処理がされている形態のものとなる。
IEEE1394インターフェース61は、このように供給されたデータについて、例えばRAM62を利用して、パケット化をはじめとする所要の処理を施して、IEEE1394フォーマットに適合するフォーマットに変換する。そして、IEEE1394バス116を介して、目的の機器に対して送信出力を行う。
【0054】
システムコントローラ70は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM、フラッシュメモリなどを備えて構成され、STR60の全体についての各種動作制御を実行する。
システムコントローラ70は、ユーザーインターフェース制御として、ユーザーの操作やユーザーに対する表示出力に対応する制御を行う。即ちシステムコントローラ70に対しては、受信部89及び操作部88からの情報が入力される。例えば受信部89においては、リモートコントローラRMから送信されてきた無線のコマンド信号を受信し、この受信したコマンド信号がシステムコントローラ70に供給される。
操作部88は、例えば図2のようにフロントパネルに設けられている各種キーより成るものとされ、この操作部88に対して行われた操作に応じた操作情報がシステムコントローラ70に供給される。
システムコントローラ70では、上記のようにして入力されてくるコマンド信号及び操作情報に応答した所要の動作が得られるように、各種制御処理を実行する。
また、システムコントローラ70は、例えば上記したコマンド信号及び操作情報や、現在の動作状況等に応じた所要の内容の表示が行われるように、表示部87に対する表示制御を実行する。この表示部87は、前述もしたように、例えばFL管表示部87Aとセグメント表示部87Bとを備えている。
またシステムコントローラ70は、IEEE1394インターフェース61に対する制御を行い、IEEE1394バス116による通信動作を制御するものとなる。
例えばIEEE1394インターフェイス61においては、外部装置から送信されてくるコマンドやレスポンス等のデータを受信すること、或いは外部装置に対してコマンドやレスポンスを送信することも行うが、システムコントローラ70は、このコマンドやレスポンスの送受信処理についても必要な処理を実行する。
またシステムコントローラ70は、後述する、NV−RAM74に対する初期処理、フォーマット処理なども行う。
【0055】
プログラムメモリ73には、システムコントローラ70が、このSTR60における各種動作制御を実現するためのプログラム等が格納される。
また、また後述する、電源オン時に実行するNV−RAM74に対する初期処理、さらには工場出荷の時点でNV−RAM74を初期化するためのフォーマット処理のプログラムも記憶される。
【0056】
NV−RAM(不揮発性メモリ)74は電源オフ時にもデータ保持が可能な記憶領域であることから、設定された各種制御定数や、後述するSRMデータなどが格納される。
なお、プログラムメモリ73、NV−RAM74は、システムコントローラ70としてのチップ内部の記憶領域として形成されてもよいし、別体のチップとされてもよい。
【0057】
1−5 STR対応ディスクドライブ(内部)
次にSTR対応ディスクドライブ30の内部構成について図6のブロック図を参照して説明する。
CD,SACD,DVD等のディスク91は、前述した本体フロントパネルのディスク挿脱部159から挿入されることで、再生可能位置に装填される。
再生可能位置に装填されたディスク91は、CD再生動作時においてスピンドルモータ31によって一定線速度(CLV)で回転駆動される。そして光学ヘッド32によってディスク91にピット形態(エンボスピット、相変化ピット、色素変化ピット等)で記録されているデータが読み出され、RFアンプ35に供給される。光学ヘッド32において対物レンズ32aは2軸機構32bによって保持され、トラッキング及びフォーカス方向に変位可能とされる。
また光学ヘッド32はスレッド機構34によってディスク91の半径方向に移動可能とされる。
【0058】
RFアンプ35では再生RF信号のほか、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を生成し、これらのエラー信号はサーボ回路36に供給される。
サーボ回路36はフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号から、フォーカス駆動信号、トラッキング駆動信号、スレッド駆動信号等の各種駆動信号を生成し、2軸機構32b、及びスレッド機構34の動作を制御する。つまり、フォーカスサーボ制御及びトラッキングサーボ制御を実行する。
また、RFアンプ35において二値化された再生RF信号は、タイミングジェネレータ40に対しても出力されており、タイミングジェネレータ40においては、この再生RF信号の波形タイミングに基づいて、タイミング信号を生成してCLVプロセッサ41に対して出力する。CLVプロセッサ41では、入力されたタイミング信号に基づいて、スピンドルモータ31を所要のCLV速度により回転制御するための駆動信号を生成してスピンドルモータに供給する。これにより、ディスク91をCLVにより回転駆動するためのスピンドルサーボ制御が実行される。
またサーボ回路36,タイミングジェネレータ40に対しては、スピンドル起動/停止、各サーボ整定、トラックジャンプ、アクセスその他の必要処理を行うようにシステムコントローラ50が制御を行う。
【0059】
再生RF信号はDSDデコーダ37、AVデコーダ38に供給される。
CD、DVDの再生時にはAVデコーダ38が機能するように、またSACDの再生時にはDSDデコーダ37が機能するように、システムコントローラ50によって制御される。
AVデコーダ38は、CDから再生され2値化された再生信号(EFM信号)に対してEFM復調,エラー訂正デコード、デスクランブル等を行なう。またDVDから再生され2値化された再生信号(EFM+変調信号)に対してEFM+復調,エラー訂正デコード、デスクランブル等を行なう。
これらによって例えば16ビット量子化、44.1KHz サンプリングのフォーマットのオーディオデータにデコードを行い、IEEE1394インターフェース39に供給する。
また、AVデコーダ38は、ビデオデコーダとしての機能も備え、DVD再生時にはビデオ信号のデコードも行う。デコードされたビデオ信号は、ビデオ出力端子53から図示していない映像モニタ装置に供給され、映像出力される。
【0060】
DSDデコーダ37は、SACDから再生され2値化された再生信号からDSD信号をデコードする。DSD信号はIEEE1394インターフェース39に供給される。
なお、SACDは記録面が2層構造のディスクとされ、一方の層はDSD方式のデータ、他方の層はCD方式のデータが記録されるものもある。CD方式のデータが記録された層が再生される場合は、そのデコード処理はAVデコーダ38ににおいて行われることになる。
【0061】
またAVデコーダ38、DSDデコーダ37ではサブコード等の制御データも抽出可能な構成を採っている。
また、例えばディスク91のリードインエリアに例えばサブコード形態で記録されているTOC(Table Of Contents)情報を抽出することも行われる。これらのサブコードデータ、TOCはシステムコントローラ50に供給されることで、例えば各種制御に用いられる。
【0062】
また、RFアンプ35にて二値化された再生RF信号は、PLL回路55に対しても供給される。
PLL回路55は、入力されたEFM信号のチャンネルビットに同期したクロックを出力する。このクロックは、例えばDSDデコーダ37及びAVデコーダ38以降の信号処理回路系のクロックとして利用される。
【0063】
デコードされIEEE1394インターフェイス39に入力されたオーディオデータは、IEEE1394のフォーマットに適合するデータに変換され、IEEE1394バス116を介して外部機器に対して送信出力される。
なお、DSDデータの送信出力の際は、データに対して暗号化が行われる。
また、図示していないが、デジタルインターフェース及び光デジタル出力端子を設け、AVデコーダ38又はDSDデコーダ37から出力されるオーディオデータがデジタルデータ出力されるようにしてもよい。
また、D/A変換器、アナログ出力端子を設けて、デコードされたオーディオデータをアナログ音声信号に変換して、外部機器に出力するようにしてもよい。
【0064】
システムコントローラ50は、CPU、RAM,ROM等を備えたマイクロコンピュータとされ、上述してきた各種動作の制御を行う。
ディスク91の再生時には、ディスク91に記録されている管理情報、即ちTOCを読み出す必要がある。システムコントローラ50はこの管理情報に応じてディスク91に収録されたトラック数、各トラックのアドレスなどを判別し、再生動作制御を行うことになる。 このためシステムコントローラ50はディスク91が装填された際にTOCが記録されたディスクの最内周側(リードインエリア)の再生動作を実行させることによって読み出し、前述のようにしてTOC情報を抽出する。そして、このTOCを例えば内部のRAMなどに記憶させておき、以後そのディスク91に対する再生動作の際に参照できるようにしている。
【0065】
また、システムコントローラ50は、ユーザーの操作やユーザーに対する表示出力に対応する制御を行う。即ちシステムコントローラ50に対しては、受信部45及び操作部48からの情報が入力される。例えば受信部45においては、リモートコントローラRMから送信されてきた無線のコマンド信号を受信し、この受信したコマンド信号がシステムコントローラ50に供給される。
操作部48は、例えば図3のようにフロントパネルに設けられている各種キーより成るものとされ、この操作部48に対して行われた操作に応じた操作情報がシステムコントローラ50に供給される。
システムコントローラ50では、上記のようにして入力されてくるコマンド信号及び操作情報に応答した所要の動作が得られるように、各種制御処理を実行する。
また、システムコントローラ50は、例えば上記したコマンド信号及び操作情報や、現在の動作状況等に応じた所要の内容の表示が行われるように、表示部47に対する表示制御を実行する。
例えば表示部47にはディスクの総演奏時間、再生や録音時の進行時間などの時間情報や、トラックナンバ、ディスクネームやトラックネームなどのネーム情報、動作状態、動作モードなどの各種の表示が行なわれる。
この表示部47は、前述もしたように、例えばFL管表示部47Aとセグメント表示部47Bとを備えている。
またシステムコントローラ50は、IEEE1394インターフェース61に対する制御を行い、IEEE1394バス116による通信動作を制御する。
例えばIEEE1394インターフェイス39では、外部装置から送信されてくるコマンドやレスポンス等のデータを受信すること、或いは外部装置に対してコマンドやレスポンスを送信することも行うが、システムコントローラ50は、このコマンドやレスポンスの送受信処理についても必要な処理を実行する。
またシステムコントローラ50は、後述するNV−RAM43に対する初期処理、フォーマット処理なども行う。
【0066】
プログラムメモリ44には、システムコントローラ50がこのSTR対応ディスクドライブ30における各種動作制御を実現するためのプログラム等が格納される。
また後述する、電源オン時に実行するNV−RAM43に対する初期処理、さらには工場出荷の時点でNV−RAM43を初期化するためのフォーマット処理のプログラムも記憶される。
【0067】
NV−RAM(不揮発性メモリ)43は電源オフ時にもデータ保持が可能な記憶領域であることから、設定された各種制御定数や、後述するSRMデータなどが格納される。
なお、NV−RAM43、プログラムメモリ44は、システムコントローラ50としてのチップ内部の記憶領域として形成されてもよいし、別体のチップとされてもよい。
【0068】
2.IEEE1394による本実施の形態のデータ通信
2−1 概要
以降、本実施の形態としてのIEEE1394規格に従ったデータ通信について説明する。
【0069】
IEEE1394は、シリアルデータ通信の規格の1つとされる。
このIEEE1394によるデータ伝送方式としては、周期的に通信を行うIsochronous通信方式と、この周期と関係なく非同期で通信するAsynchronous通信方式が存在する。一般に、Isochronous通信方式はデータの送受信に用いられ、Asynchronous通信方式は各種制御コマンドの送受信に用いられる。そして、1本のケーブルを使用して、これら2種類の通信方式によって送受信を行うことが出来るようにされている。
そこで以降、上記したIEEE1394規格による本実施の形態の送信形態を前提として説明を行っていくこととする。
【0070】
2−2 スタックモデル
図6は、本実施の形態が対応するIEEE1394のスタックモデルを示している。
IEEE1394フォーマットにおいては、Asynchronous系(400)とIsochronous系(500)とに大別される。
ここで、Asynchronous系(400)とIsochronous系(500)に共通な層として、最下位にPhysical Layer(301)(物理層)が設けられ、その上位にLink Layer(302)(リンク層)が設けられる。Physical Layer(301)はハードウェア的な信号伝送を司るためのレイヤであり、Link Layer(302)はIEEE1394バスを例えば、機器毎に規定された内部バスに変換するための機能を有する層とされる。
【0071】
Physical Layer(301)、Link Layer(302)、及び次に説明するTransaction Layer(401)は、Event/Control/ConfigurationのラインによってSerial Bus Management303とリンクされる。
また、AV Cable/Connector304は、AVデータ伝送のための物理的なコネクタ、ケーブルを示している。
【0072】
Asynchronous系(400)における上記Link Layer(302)の上位には、Transaction Layer(401)が設けられる。Transaction Layer(401)は、IEEE1394としてのデータ伝送プロトコルを規定する層とされ、基本的なAsynchronous Transactionとしては、後述するようにして、Write Transaction,Read Transaction,Lock Transactionが規定される。
【0073】
そして、Transaction Layer(401)の上層に対してFCP(Function Control Protocol)(402)が規定される。FCP(402)は、AV/C Command(AV/C Digital Interface Command Set)(403)として規定された制御コマンドを利用することで、各種AV機器に対するコマンド制御を実行することが出来るようになっている。
【0074】
また、Transaction Layer(401)の上層に対しては、Connection Management Procedures(505)を利用して、後述するPlug(IEEE1394における論理的な機器接続関係)を設定するためのPlug Controll Registers(404)が規定される。
【0075】
Isochronous系(500)におけるLink Layer(302)の上位には、CIP Header Format(501)が規定され、このCIP Header Format(501)に管理される形態で、SD−DVCR Realtime Transmission(502),HD−DVCR Realtime Transmission(503),SDL−DVCR Realtime Transmission(504),MPEG2−TS Realtime Transmission(505),Audio and Music Realtime Transmission(506)等の伝送プロトコルが規定されている。
【0076】
SD−DVCR Realtime Transmission(502),HD−DVCR Realtime Transmission(503),SDL−DVCR Realtime Transmission(504)は、それぞれ、デジタルVTR(Video Tape Recorder)に対応するデータ伝送プロトコルである。
SD−DVCR Realtime Transmission(502)が扱うデータは、SD−DVCR recording format(508)の規定に従って得られたデータシーケンス(SD−DVCR data sequence(507))とされる。
また、HD−DVCR Realtime Transmission(503)が扱うデータは、HD−DVCR recording format(510)の規定に従って得られたデータシーケンス(SD−DVCR data sequence(509))とされる。
SDL−DVCR Realtime Transmission(504)が扱うデータは、SDL−DVCR recording format(512)の規定に従って得られるデータシーケンス(SD−DVCR data sequence(511))となる。
【0077】
MPEG2−TS Realtime Transmission(505)は、例えばデジタル衛星放送に対応するチューナ等に対応する伝送プロトコルで、これが扱うデータは、DVB recording format(514)或いはATV recording format(515)の規定に従って得られるデータシーケンス(MPEG2−TS data sequence(513))とされる。
【0078】
また、Audio and Music Realtime Transmission(506)は、例えば本実施の形態のMDシステムを含むデジタルオーディオ機器全般に対応する伝送プロトコルであり、これが扱うデータは、Audio and Music recording format(517)の規定に従って得られるデータシーケンス(Audio and Music data sequence)とされる。
【0079】
2−3 信号伝送形態
図7は、IEEE1394バスとして実際に用いられるケーブルの構造例を示している。
この図においては、コネクタ600Aと600Bがケーブル601を介して接続されていると共に、ここでは、コネクタ600Aと600Bのピン端子として、ピン番号1〜6の6ピンが使用される場合を示している。
コネクタ600A,600Bに設けられる各ピン端子については、ピン番号1は電源(VP)、ピン番号2はグランド(VG)、ピン番号3はTPB1、ピン番号4はTPB2、ピン番号5はTPA1、ピン番号5はTPA2とされている。
そして、コネクタ600A−600B間の各ピンの接続形態は、
ピン番号1(VP)−ピン番号1(VP)
ピン番号2(VG)−ピン番号2(VG)
ピン番号3(TPB1)−ピン番号5(TPA1)
ピン番号4(TPB2)−ピン番号6(TPA2)
ピン番号5(TPA1)−ピン番号3(TPB1)
ピン番号6(TPA2)−ピン番号3(TPB2)
のようになっている。そして、上記ピン接続の組のうち、
ピン番号3(TPB1)−ピン番号5(TPA1)
ピン番号4(TPB2)−ピン番号6(TPA2)
の2本のツイスト線の組により、差動で信号を相互伝送する信号線601Aを形成し、
ピン番号5(TPA1)−ピン番号3(TPB1)
ピン番号6(TPA2)−ピン番号3(TPB2)
の2本のツイスト線の組により、差動で信号を相互伝送する信号線601Bを形成している。
【0080】
上記2組の信号線601A及び信号線601Bにより伝送される信号は、図8(a)に示すデータ信号(Data)と、図8(b)に示すストローブ信号(Strobe)である。
図8(a)に示すデータ信号は、信号線601A又は信号線601Bの一方を使用してTPB1,2から出力され、TPA1,2に入力される。
また、図8(b)に示すストローブ信号は、データ信号と、このデータ信号に同期する伝送クロックとについて所定の論理演算を行うことによって得られる信号であり、実際の伝送クロックよりは低い周波数を有する。このストローブ信号は、信号線601A又は信号線601Bのうち、データ信号伝送に使用していない他方の信号線を使用して、TPA1,2から出力され、TPB1,2に入力される。
【0081】
例えば、図8(a),図8(b)に示すデータ信号及びストローブ信号が、或るIEEE1394対応の機器に対して入力されたとすると、この機器においては、入力されたデータ信号とストローブ信号とについて所定の論理演算を行って、図8(c)に示すような伝送クロック(Clock)を生成し、所要の入力データ信号処理に利用する。
IEEE1394フォーマットでは、このようなハードウェア的データ伝送形態を採ることで、高速な周期の伝送クロックをケーブルによって機器間で伝送する必要をなくし、信号伝送の信頼性を高めるようにしている。
なお、上記説明では6ピンの仕様について説明したが、IEEE1394フォーマットでは電源(VP)とグランド(VG)を省略して、2組のツイスト線である信号線601A及び信号線601Bのみからなる4ピンの仕様も存在する。例えば、本実施の形態のMDレコーダ/プレーヤ1では、実際には、この4ピン仕様のケーブルを用いることで、ユーザにとってより簡易なシステムを提供できるように配慮している。
【0082】
2−4 機器間のバス接続
図9は、IEEE1394バスによる機器間接続の形態例を模式的に示している。この図では、機器A,B,C,D,Eの5台の機器(Node)がIEEE1394バス(即ちケーブルである)によって相互通信可能に接続されている場合が示されている。
IEEE1394インターフェイスでは、機器A,B,CのようにしてIEEE1394バスにより直列的に接続するいわゆる「ディージチェーン接続」が可能とされる。また、図9の場合であれば、機器Aと、機器B,D,E間の接続形態に示すように、或る機器と複数機器とが並列的に接続されるいわゆる「ブランチ接続」も可能とされる。
システム全体としては、このブランチ接続と上記ディージチェーン接続とを併用して最大63台の機器(Node)を接続可能とされる。但し、ディージチェーン接続によっては、最大で16台(16ポップ)までの接続が可能とされている。また、SCSIで必要とされるターミネータはIEEE1394インターフェイスでは不要である。
そしてIEEE1394インターフェイスでは、上記のようにしてディージチェーン接続又はブランチ接続により接続された機器間で相互通信を行うことが可能とされている。つまり、図9の場合であれば、機器A,B,C,D,E間の任意の複数機器間での相互通信が可能とされる。
【0083】
また、IEEE1394バスにより複数の機器接続を行ったシステム(以降はIEEE1394システムともいう)内では、機器ごとに割与えられるNodeIDを設定する処理が実際には行われる。この処理を、図10により模式的に示す。
ここで、図10(a)に示す接続形態によるIEEE1394システムにおいて、ケーブルの抜き差し、システムにおける或る機器の電源のオン/オフ、PHY(Physical Layer Protocol)での自発発生処理等が有ったとすると、IEEE1394システム内においてはバスリセットが発生する。これにより、各機器A,B,C,D,E間においてIEEE1394バスを介して全ての機器にバスリセット通知を行う処理が実行される。
【0084】
このバスリセット通知の結果、図10(b)に示すようにして、通信(Child−Notify)を行うことで隣接する機器端子間で親子関係が定義される。つまり、IEEE1394システム内における機器間のTree構造を構築する。そして、このTree構造の構築結果に従って、ルートとしての機器が定義される。ルートとは、全ての端子が子(Ch;Child)として定義された機器であり、図10(b)の場合であれば、機器Bがルートとして定義されていることになる。逆に言えば、例えばこのルートとしての機器Bと接続される機器Aの端子は親(P;Parent)として定義されているものである。
【0085】
上記のようにしてIEEE1394システム内のTree構造及びルートが定義されると、続いては、図10(c)に示すようにして、各機器から、自己のNode−IDの宣言としてSelf−IDパケットが出力される。そしてルートがこのNode−IDに対して順次承認(grant)を行っていくことにより、IEEE1394システム内における各機器のアドレス、つまりNode−IDが決定される。
【0086】
2−5 パケット
IEEE1394フォーマットでは、図12に示すようにしてIsochronous cycle(nominal cycle)の周期を繰り返すことによって送信を行う。この場合、1Isochronous cycleは、125μsecとされ、帯域としては100MHzに相当する。なお、Isochronous cycleの周期としては125μsec以外とされても良いことが規定されている。そして、このIsochronous cycleごとに、データをパケット化して送信する。
【0087】
この図に示すように、Isochronous cycleの先頭には、1Isochronous cycleの開始を示すCycle Start Packetが配置される。
このCycle Start Packetは、ここでの詳しい説明は省略するが、Cycle Masterとして定義されたIEEE1394システム内の特定の1機器によってその発生タイミングが指示される。
Cycle Start Packetに続いては、Isochronous Packetが優先的に配置される。Isochronous Packetは、図のように、チャンネルごとにパケット化されたうえで時分割的に配列されて転送される(Isochronous subactions)。また、Isochronous subactions内においてパケット毎の区切りには、Isochronous gapといわれる休止区間(例えば0.05μsec)が設けられる。
このように、IEEE1394システムでは、1つの伝送線路によってIsochronousデータをマルチチャンネルで送受信することが可能とされている。
【0088】
ここで、例えば本実施の形態のMDレコーダ/プレーヤが対応する圧縮オーディオデータ(以降はATRACデータともいう)をIsochronous方式により送信することを考えた場合、ATRACデータが1倍速の転送レート1.4Mbpsであるとすれば、125μsecである1Isochronous cycle周期ごとに、少なくともほぼ20数バイトのATRACデータをIsochronous Packetとして伝送すれば、時系列的な連続性(リアルタイム性)が確保されることになる。
例えば、或る機器がATRACデータを送信する際には、ここでの詳しい説明は省略するが、IEEE1394システム内のIRM(Isochronous Resource Manager)に対して、ATRACデータのリアルタイム送信が確保できるだけの、Isochronous パケットのサイズを要求する。IRMでは、現在のデータ伝送状況を監視して許可/不許可を与え、許可が与えられれば、指定されたチャンネルによって、ATRACデータをIsochronous Packetにパケット化して送信することが出来る。これがIEEE1394インターフェイスにおける帯域予約といわれるものである。
【0089】
Isochronous cycleの帯域内においてIsochronous subactionsが使用していない残る帯域を用いて、Asynchronous subactions、即ちAsynchronousのパケット送信が行われる。
図11では、Packet A,Packet Bの2つのAsynchronous Packetが送信されている例が示されている。Asynchronous Packetの後には、ack gap(0.05μsec)の休止期間を挟んで、ACK(Acknowledge)といわれる信号が付随する。ACKは、後述するようにして、Asynchronous Transactionの過程において、何らかのAsynchronousデータの受信が有ったことを送信側(Controller)に知らせるためにハードウェア的に受信側(Target)から出力される信号である。
また、Asynchronous Packet及びこれに続くACKからなるデータ伝送単位の前後には、10μsec程度のsubaction gapといわれる休止期間が設けられる。
ここで、Isochronous PacketによりATRACデータを送信し、上記ATRACデータに付随するとされるAUXデータファイルをAsynchronous Packetにより送信するようにすれば、見かけ上、ATRACデータとAUXデータファイルとを同時に送信することが可能となるものである。
【0090】
2−6 トランザクションルール
図12(a)の処理遷移図には、Asynchronous通信における基本的な通信規則(トランザクションルール)が示されている。このトランザクションルールは、FCPによって規定される。
図12(a)に示すように、先ずステップS11により、Requester(送信側)は、Responder(受信側)に対してRequestを送信する。Responderでは、このRequestを受信する(ステップS12)と、先ずAcknowledgeをRequesterに返送する(ステップS13)。送信側では、Acknowledgeを受信することで、Requestが受信側にて受信されたことを認知する(ステップS14)。
この後、Responderは先のステップS12にて受信したRequestに対する応答として、ResponseをRequesterに送信する(ステップS15)。Requesterでは、Responseを受信し(ステップS16)、これに応答してResponderに対してAcknowledgeを送信する(ステップS17)。ResponderではAcknowledgeを受信することで、Responseが送信側にて受信されたことを認知する。
【0091】
上記図12(a)により送信されるRequest Transactionとしては、図12(b)の左側に示すように、Write Request、Read Request、Lock Requestの3種類に大別して定義されている。
Write Requestは、データ書き込みを要求するコマンドであり、Read Requestはデータの読み出しを要求するコマンドである。Lock Requestはここでは詳しい説明は省略するが、swap compare、マスクなどのためのコマンドである。
【0092】
また、Write Requestは、後に図示して説明するAsynchronous Packet(AV/C Command Packet)に格納するコマンド(operand)のデータサイズに応じてさらに3種類が定義される。Write Request(data quadlet)は、Asynchronous Packetのヘッダサイズのみによりコマンドを送信する。Write Request(data block:data length=4byte)、Write Request(data block:data length≠4byte)は、Asynchronous Packetとしてヘッダに対してdata blockを付加してコマンド送信を行うもので、両者は、data blockに格納されるoperandのデータサイズが4バイトであるかそれ以上であるのかが異なる。
【0093】
Read Requestも同様にして、Asynchronous Packetに格納するoperandのデータサイズに応じて、Read Request(data quadlet)、Read Request(data block:data length=4byte)、Read Request(data block:data length≠4byte)の3種類が定義されている。
【0094】
また、Response Transactionとしては、図12(b)の右側に示されている。
上述した3種のWrite Requestに対しては、Write Response或いはNo Responseが定義される。
また、Read Request(data quadlet)に対してはRead Response(data quadlet)が定義され、Read Request(data block:data length=4byte)、又はRead Request(data block:data length≠4byte)に対しては、Read Response(data block)が定義される。
【0095】
Lock Requestに対しては、Lock Responseが定義される。
【0096】
2−7 アドレッシング
図13は、IEEE1394バスのアドレッシングの構造を示している。
図13(a)に示すように、IEEE1394フォーマットでは、バスアドレスのレジスタ(アドレス空間)として64ビットが用意される。
このレジスタの上位10ビットの領域は、IEEE1394バスを識別するためのバスIDを示し、図13(b)に示すようにしてバスIDとしてbus#0〜#1022の計1023のバスIDを設定可能としている。bus#1023はlocal busとして定義されている。
【0097】
図13(a)においてバスアドレスに続く6ビットの領域は、上記バスIDにより示されるIEEE1394バスごとに接続されている機器のNode IDを示す。Node IDは、図13(c)に示すようにして、Node #0〜#62までの63のNode IDを識別可能としている。
上記バスID及びNode IDを示す計16ビットの領域は、後述するAV/C Command Packetのヘッダにおけるdestination IDに相当するもので、このバスID及びNode IDによって、或るバスに接続された機器がIEEE1394システム上で特定される。
【0098】
図13(a)においてNode IDに続く20ビットの領域は、register spaceであり、このregister spaceに続く28ビットの領域は、register addressである。
register spaceの値は最大で[F FF FFh]とされて、図13(d)に示すregisterを示し、このregisterの内容が、図13(e)に示すようにして定義される。register addressは、図13(e)に示すレジスタのアドレスを指定している。
【0099】
簡単に説明すると、図13(e)のレジスタにおいて、例えばアドレス512[0 00 02 00h]から始まるSerial Bus−dependent Registersを参照することで、Isochronous cycleのサイクルタイムや、空きチャンネルの情報が得られる。
また、アドレス1024[0 00 04 00h]から始まるConfiguration ROMには、Node Unique ID、及びsubunit ID等のNodeに関する所要の情報が格納される。
これらNode Unique ID、及びsubunit IDは、実際にそのデバイスがIEEE1394バスに接続されたときに、その接続関係を確立する際などに必要となるものである。
【0100】
Node Unique IDは、デバイスごとに固有とされ、8バイトによって表現されるデバイス情報であり、たとえ同一機種間であっても、同じNode Unique IDを有している他の機器は無いものとされる。
【0101】
また、subunit IDとしては、そのNodeとしての機器の製造メーカ名を示すVender Name(module_vender_ID)や、Nodeとしての機器の機種名を示すModel Name(model_ID)等の情報を有して形成される。
【0102】
Node Unique IDは、デバイスごとに固有とされ、8バイトによって表現されるデバイス識別情報であり、たとえ同一機種間であっても、同じNode Unique IDを有している機器は無いものとされる。
また、Vender Nameは、そのNodeの製造メーカ名を示す情報であり、Model Nameは、そのNodeの機種を示す情報である。従って、これらVender Name及びModel Nameを共通に有する機器は存在することになる。
従って、Configuration ROMの内容を参照することで、その機種に付されているNode Unique IDを識別することができ、また、subunit IDの内容からは、そのNodeの製造メーカ、及び機種等を識別することが可能になる。なお、Node Unique IDは必須であるのに対して、Vender Name,Model Nameはオプションであり、必ずしも機器に対してセットしておく必要は無いものとされている。
【0103】
2−8 CIP(Common Isochronos Packet)
図14は、CIP(Common Isochronos Packet)の構造を示している。つまり、図11に示したIsochronous Packetのデータ構造である。
前に述べたように、本実施の形態のMDレコーダ/プレーヤが対応する記録再生データの1つである、ATRACデータ(オーディオデータ)は、IEEE1394通信においては、Isochronous通信によりデータの送受信が行われる。つまり、リアルタイム性が維持されるだけのデータ量をこのIsochronous Packetに格納して、1Isochronous cycle毎に順次送信するものである。
【0104】
CIPの先頭32ビット(1quadlet)は、1394パケットヘッダとされている。
1394パケットヘッダにおいて上位から順に16ビットの領域は、data_Length、続く2ビットの領域はtag、続く6ビットの領域はchannel、続く4ビットはtcode、続く4ビットは、syとされている。
そして、1394パケットヘッダに続く1quadletの領域はheader_CRCが格納される。
【0105】
header_CRCに続く2quadletの領域がCIPヘッダとなる。
CIPヘッダの上位quadletの上位2ビットには、それぞれ‘0’‘0’が格納され、続く6ビットの領域はSID(送信ノード番号)を示す。SIDに続く8ビットの領域はDBS(データブロックサイズ)であり、データブロックのサイズ(パケット化の単位データ量)が示される。続いては、FN(2ビット)、QPC(3ビット)の領域が設定されており、FNにはパケット化する際に分割した数が示され、QPCには分割するために追加したquadlet数が示される。
SPH(1ビット)にはソースパケットのヘッダのフラグが示され、DBCにはパケットの欠落を検出するカウンタの値が格納される。
【0106】
CIPヘッダの下位quadletの上位2ビットにはそれぞれ‘0’‘0’が格納される。そして、これに続いてFMT(6ビット)、FDF(24ビット)の領域が設けられる。FMTには信号フォーマット(伝送フォーマット)が示され、ここに示される値によって、当該CIPに格納されるデータ種類(データフォーマット)が識別可能となる。 具体的には、MPEGストリームデータ、Audioストリームデータ、デジタルビデオカメラ(DV)ストリームデータ等の識別が可能になる。このFMTにより示されるデータフォーマットは、例えば図6に示した、CIP Header Format(401)に管理される、SD−DVCR Realtime Transmission(502),HD−DVCR Realtime Transmission(503),SDL−DVCR Realtime Transmission(504),MPEG2−TS Realtime Transmission(505),Audio and Music Realtime Transmission(506)等の伝送プロトコルに対応する。
FDFは、フォーマット依存フィールドであり、上記FMTにより分類されたデータフォーマットについて更に細分化した分類を示す領域とされる。オーディオに関するデータで有れば、例えばリニアオーディオデータであるのか、MIDIデータであるのかといった識別が可能になる。
例えば本実施の形態のATRACデータであれば、先ずFMTによりAudioストリームデータの範疇にあるデータであることが示され、FDFに規定に従った特定の値が格納されることで、そのAudioストリームデータはATRACデータであることが示される。
【0107】
ここで、例えばFMTによりMPEGであることが示されている場合、FDFにはTSF(タイムシフトフラグ)といわれる同期制御情報が格納される。また、FMTによりDVCR(デジタルビデオカメラ)であることが示されている場合、FDFは、図14の下に示すように定義される。ここでは、上位から順に、50/60(1ビット)により1秒間のフィールド数を規定し、STYPE(5ビット)によりビデオのフォーマットがSDとHDの何れとされてるのかが示され、SYTによりフレーム同期用のタイムスタンプが示される。
【0108】
上記CIPヘッダに続けては、FMT,FDFによって示されるデータが、n個のデータブロックのシーケンスによって格納される。FMT,FDFによりATRACデータであることが示される場合には、このデータブロックとしての領域にATRACデータが格納される。
そして、データブロックに続けては、最後にdata_CRCが配置される。
【0109】
2−9 コネクションマネージメント
IEEE1394フォーマットにおいては、「プラグ」といわれる論理的接続概念によって、IEEE1394バスによって接続された機器間の接続関係が規定される。
図15は、プラグにより規定された接続関係例を示しており、この場合には、IEEE1394バスを介して、VTR1、VTR2、セットトップボックス(STB;デジタル衛星放送チューナ)、モニタ装置(Monitor)、及びデジタルスチルカメラ(Camera)が接続されているシステム形態が示されている。
【0110】
ここで、IEEE1394のプラグによる接続形態としては、point to point−connectionと、broadcast connectionとの2つの形態が存在する。
point to point−connectionは、送信機器と受信機器との関係が特定され、かつ、特定のチャンネルを使用して送信機器と受信機器との間でデータ伝送が行われる接続形態である。
これに対して、broadcast connectionは、送信機器においては、特に受信機器及び使用チャンネルを特定せずに送信を行うものである。受信機側では、特に送信機器を識別することなく受信を行い、必要が有れば、送信されたデータの内容に応じた所要の処理を行う。
図15の場合であれば、point to point−connectionとして、STBが送信、VTR1が受信とされてチャンネル#1を使用してデータの伝送が行われるように設定されている状態と、デジタルスチルカメラが送信、VTR2が受信とされてチャンネル#2を使用してデータの伝送が行われるように設定されている状態とが示されている。
また、デジタルスチルカメラからは、broadcast connectionによってもデータ送信を行うように設定されている状態が示されており、ここでは、このbroadcast connectionによって送信したデータを、モニタ装置が受信して所要の応答処理を行う場合が示される。
【0111】
上記のような接続形態(プラグ)は、各機器におけるアドレス空間に設けられるPCR(Plug Contorol Register)によって確立される。
図16(a)は、oPCR[n](出力用プラグコントロールレジスタ)の構造を示し、図16(b)は、iPCR[n](入力用プラグコントロールレジスタ)の構造を示している。これらoPCR[n]、iPCR[n]のサイズは共に32ビットとされている。
図16(a)のoPCRにおいては、例えば上位1ビットのon−lineに対して‘1’が格納されていると、そのプラグがIsochronousデータの送信が可能なオンラインであることが示され、続くbroadcast connection counter(1ビット)に‘1’が格納されているとbroadcast connectionによる送信であることが示される。続くpoint to point connection counter(6ビット)には、そのプラグに対して張られているpoint to point connectionの数が示される。そして、上位11ビット目から6ビットの領域のchannel numberで示されるチャンネルにより送信することが示される。
また、図16(b)のiPCRにおいても、例えば上位1ビットのon−lineに対して‘1’が格納されていれば、そのプラグがIsochronousデータの受信が可能なオンラインであることが示され、続くbroadcast connection counter(1ビット)に‘1’が格納されているとbroadcast connectionによる送信であることが示される。続くpoint to point connection counter(6ビット)には、そのプラグに対して張られているpoint to point connectionの数が示され、上位11ビット目から6ビットの領域のchannel numberで示されるチャンネルにより送信することが示される。
【0112】
そして、図16(a)のoPCR、及び図16(b)のiPCRにおけるbroadcast connection counterには、broadcast connectionによる送信/受信とされる場合において、broadcast connectionを張っているノード数が格納される。
また、図16(a)のoPCR、及び図16(b)のiPCRにおけるpoint to point connection counterには、point to point connectionによる送信/受信とされる場合において、point to pointを張っているノード数が示される。
【0113】
2−10 FCPにおけるコマンド及びレスポンス
Asynchronous通信によるデータの伝送は、図6に示したFCP(402)によって規定されることになる。そこで、ここでは、FCPにより規定されるトランザクションについて説明する。
【0114】
FCPとしては、Asynchronous通信において規定されるWrite Transaction(図12参照)を使用する。従って、本実施の形態におけるAUXデータの伝送も、このFCPにより、Asynchronous通信の中のWrite Transactionを使用することで行われるものである。
FCPをサポートする機器は、Command/Responceレジスタを備え、次に図17により説明するようにしてCommand/Responceレジスタに対してMessageを書き込むことでトランザクションを実現する。
【0115】
図17の処理遷移図においては、先ずCOMMAND送信のための処理として、ステップS21として示すように、ControllerがTransaction Requestを発生して、Write Request PacketをTargetに対して送信する処理を実行する。Targetでは、ステップS22として、このWrite Request Packetを受信して、Command/Responceレジスタに対してデータの書き込みを行う。また、この際、TargetからはControllerに対してAcknowledgを送信し、Controllerでは、このAcknowledgを受信する(S23→S24)。ここまでの一連の処理が、COMMANDの送信に対応する処理となる。
【0116】
続いては、COMMANDに応答した、RESPONSEのための処理として、TargetからWrite Request Packetが送信される(S25)。Controllerではこれを受信して、Command/Responceレジスタに対してデータの書き込みを行う(S26)。また、Controllerでは、Write Request Packetの受信に応じて、Targetに対してAcknowledgを送信する(S27)。Targetでは、このAcknowledgを受信することで、Write Request PacketがControllerにて受信されたことを知る(S28)。
つまり、ControllerからTarget対するCOMMAND伝送処理と、これに応答したTargetからControllerに対するRESPONSE伝送処理が、FCPによるデータ伝送(Transaction)の基本となる。
【0117】
2−11 AV/Cコマンドパケット
図6により説明したように、Asynchronous通信において、FCPは、AV/Cコマンドを用いて各種AV機器に対する通信を行うことができるようにされている。
Asynchronous通信では、Write,Read,Lockの3種のトランザクションが規定されているのは、図12にて説明した通りであり、実際には各トランザクションに応じたWrite Request/Responce Packet,Read Request/Responce Packet,Lock Request/Responce Packetが用いられる。そして、FCPでは、上述したようにWrite Transactionを使用するものである。
そこで図18に、Write Request Packet(Asynchronous Packet(Write Request for Data Block))のフォーマットを示す。本実施の形態では、このWrite Request Packetが即ち、AV/Cコマンドパケットして使用される。
【0118】
このWrite Request Packetにおける上位5quadlet(第1〜第5quadlet)は、packet headerとされる。
packet headerの第1quadletにおける上位16ビットの領域はdestination_IDで、データの転送先(宛先)のNode IDを示す。続く6ビットの領域はtl(transact label)であり、パケット番号を示す。続く2ビットはrt(retry code)であり、当該パケットが初めて伝送されたパケットであるか、再送されたパケットを示す。続く4ビットの領域はtcode(transaction code)は、指令コードを示している。そして、続く4ビットの領域はpri(priority)であり、パケットの優先順位を示す。
【0119】
第2quadletにおける上位16ビットの領域はsource_IDであり、データの転送元のNode_ID が示される。
また、第2quadletにおける下位16ビットと第3quadlet全体の計48ビットはdestination_offsetとされ、COMMANDレジスタ(FCP_COMMAND register)とRESPONSEレジスタ(FCP_RESPONSE register)のアドレスが示されれる。
上記destination_ID及びdestination_offsetが、IEEE1394フォーマットにおいて規定される64ビットのアドレス空間に相当する。
【0120】
第4quadletの上位16ビットの領域は、data_lengthとされ、後述するdatafield(図18において太線により囲まれる領域)のデータサイズが示される。
続く下位16ビットの領域は、extended_tcodeの領域とされ、tcodeを拡張する場合に使用される領域である。
【0121】
第5quadletとしての32ビットの領域は、header_CRCであり、Packet headerのチェックサムを行うCRC計算値が格納される。
【0122】
Packet headerに続く第6quadletからdata blockが配置され、このdata block内の先頭に対してdatafieldが形成される。
datafieldとして先頭となる第6quadletの上位4ビットには、CTS(Command and Transaction Set)が記述される。これは、当該Write Request PacketのコマンドセットのIDを示すもので、例えば、このCTSの値について、図のように[0000]と設定すれば、datafieldに記述されている内容がAV/Cコマンドであると定義されることになる。つまり、このWrite Request Packetは、AV/Cコマンドパケットであることが示されるものである。従って、本実施の形態においては、FCPがAV/Cコマンドを使用するため、このCTSには[0000]が記述されることになる。
【0123】
CTSに続く4ビットの領域は、ctype(Command type;コマンドの機能分類)、又はコマンドに応じた処理結果(レスポンス)を示すresponseが記述される。
【0124】
図19に、上記ctype及びresponseの定義内容を示す。
ctype(Command)としては、[0000]〜[0111]を使用できるものとしており、[0000]はCONTROL、[0001]はSTATUS、[0010]はINQUIRY、[0011]はNOTIFYとして定義され、[0100]〜[0111]は、現状、未定義(reserved)とされている。
CONTROLは機能を外部から制御するコマンドであり、STATUSは外部から状態を間い合わせるコマンド、INQUIRYは、制御コマンドのサポートの有無を外部から問い合わせるコマンド、NOTIFYは状態の変化を外部に知らせることを要求するコマンドである。
また、responseとしては、[1000]〜[1111]を使用するものとしており、[1000]はNOT IMPLEMENTED、[1001]はACCEPTED、[1010]はREJECTED、[1011]はIN TRANSITION、[1100]はIMPLEMENTED/STABLE、[1101]はCHANGED、[1110]はreserved、[1111]はINTERIMとしてそれぞれ定義されている。
これらのresponseは、コマンドの種類に応じて使い分けられる。例えば、CONTOROLのコマンドに対応するresponseとしては、NOT IMPLEMENTED、ACCEPTED、REJECTED、或いはINTERIMの4つのうちの何れかがResponder側の状況等に応じて使い分けられる。
【0125】
図18において、ctype/responseに続く5ビットの領域には、subunit−typeが格納される。は、subunit−typeは、COMMMANDの宛先またはRESPONSEの送信元のsubunitが何であるのか(機器)を示す。IEEE1394フォーマットでは、機器そのものをunitと称し、そのunit(機器)内において備えられる機能的機器単位の種類をsubunitと称する。例えば一般のVTRを例に採れば、VTRとしてのunitは、地上波や衛星放送を受信するチューナと、ビデオカセットレコーダ/プレーヤとの、2つのsubunitを備える。
subunit−typeとしては、例えば図20(a)に示すように定義されている。つまり、[00000]はMonitor、[00001]〜[00010]はreserved、[00011]はDisc recorder/player、[00100]はVCR、[00101]はTuner、[00111]はCamera、[01000]〜[11110]はreserved、[11111]は、subunitが存在しない場合に用いられるunitとして定義されている。
【0126】
図18において、上記subunit−typeに続く3ビットには、同―種類のsubunitが複数存在する場合に、各subunitを特定するためのid(Node_ID)が格納される。
【0127】
上記id(Node_ID)に続く8ビットの領域には、opcodeが格納され、続く8ビットの領域には、operandが格納される。
opcodeとは、オぺレーションコード(Operation Code)のことであって、operandには、opcodeが必要とする情報(パラメータ)が格納される。これらopcodeはsubunitごとに定義され、subunitごとに固有のopcodeのリストのテーブルを有する。例えば、subunitがVCRであれば、opcodeとしては、例えば図20(b)に示すようにして、PLAY(再生),RECORD(記録)などをはじめとする各種コマンドが定義されている。operandは、opcode毎に定義される。
【0128】
図18におけるdatafieldとしては、上記第6quadletの32ビットが必須とされるが、必要が有れば、これに続けて、operandを追加することが出来る(Additional operands)。
datafieldに続けては、data_CRCが配置される。なお、必要が有れば、data_CRCの前にpaddingを配置することが可能である。
【0129】
3.SRM
続いてSRMについて説明する。SRMとはSystem Renewability Messagesの略で、5C−DTCP(Digital Transmission Content Protection)対応の機器(IEEE1394、USB、MOSTなど)でFULL認証に対応している機器に用いられる著作権保護のための情報である。そして著作権保護に適合していない機器のいわゆるブラックリストとしての内容を含む。
そしてSRMは機器間の認証処理の際に用いられる(認証処理時に参照される)情報の一つである。
【0130】
SRMデータは図21に示すSRM発行機関115によって、承認された電子機器に対して発行される。
まず、ここで図21に示す機器A,B,Cは、それぞれ適正な5C−DTCP対応機器として、SRM発行機関115に承認(ライセンス)された機器であるとする。SRM発行機関115は、承認した機器に対しては、ライセンスを示す電子署名DS(Device Certificate)を発行する。機器A,B,Cは、SRM発行機関115が発行した電子署名DS(a)、DS(b)、DS(c)をそれぞれ機器内部に格納するものとなる。
【0131】
一方、SRM発行機関115は、必要に応じて随時SRMを発行する。例えば著作権保護に不適切な機器が発見されることなどに応じてSRMを発行する。
SRMデータのデータ内容の一例を図22に示す。
図22のようにSRMデータは、まず、Type、Generation、Version Numberのデータが設けられ、SRMデータのヘッダとして、タイプ、世代、バージョンが示される。
また、CRL長として、CRLのデータ長が記録され、それに続いて可変長データとしてCRLが記録される。CRLとは「Certificate Revocation List」であり、即ちSRM発行機関115がライセンス取り消しを行った電子機器のリスト情報、即ちブラックリスト情報である。
また電子署名(DTLA Signature)が記録される。これは、SRM発行機関115が、当該SRMデータ自体を正当なデータとして証明する電子署名である。
【0132】
例えば今、CRLとしてリストアップされている機器が存在しないとする。つまりSRMデータが発行されていないとする。そして図21のようにSRM発行機関115は機器A,B,Cをそれぞれライセンス承認したとする。
SRM発行機関115は機器A,B,Cに対してそれぞれ個別の電子署名DS(a)、DS(b)、DS(c)を付与する。
各機器A,B,Cは、付与された電子署名DS(*)を装置内に記憶することになる。
また、SRMデータは発行されていないため、例えば単に図22のようなSRMデータ形式において、実内容が含められていないSRMデータを保持している。
これは、単にSRMデータ用の領域を確保しているのみでもよいし、上記SRMデータのヘッダ部分のみが記録されたものでもよい。
【0133】
なお、あくまでも説明上の都合として、仮に、実内容(CRLブラックリスト)が存在しない状態、つまりまだ実効的なSRMデータが発行されていない時点での各機器に格納されているSRMデータを、バージョン0.0のSRMデータと呼ぶこととする。
【0134】
その後、仮に機器Cが著作権保護処理が不十分な機器であると認定され、SRM発行機関115が機器Cに対するライセンスを取り消すとする。このとき、SRM発行機関115は、機器Cに付与した電子署名DS(c)をCRLにリストアップしたSRMデータを発行する。
説明上、仮に、このSRMデータをバージョン1.0のSRMデータとする。
この場合、機器A,Bは、何らかの手法で記憶しているSRMデータ(バージョン0.0)を発行されたSRMデータ(バージョン1.0)に更新することになる。
もちろん、その後、SRM発行機関115は、必要に応じて、バージョン1.1、1.2、2.0・・・などというように、SRMデータの発行を行う。各電子機器A、B・・・は、その都度SRMデータの更新が必要になる。
【0135】
更新を実行可能とし、また適切な認証を行って適切な著作権保護を実現するため、ライセンスされた機器には、次のことが義務づけられる。
1)機器間で認証処理を行った後、相手機器からSRMデータを受信した場合は、必要に応じ、機器内部に格納(更新)する。
2)機器間で認証処理を行った後、必要に応じて認証相手機器に対し、機器内部に記憶されているSRMデータを送信する。
3)認証途中で認証相手が機器内部のSRMデータのCRLに記載されていると判明した場合は、それ以降認証を行わない(認証処理を中止し、認証エラーとする)。
【0136】
これらは、将来著作権保護が不充分と判定された製品があった場合に、その製品を穏やかに市場から排除する機能を持たせることを目的としている。
図23で例を挙げて説明する。
図23(a)は、SRM発行時期や機器の製造時期を時間軸上に示したものである。
図23(a)で或る時期において、SRMデータはバージョン0.0とされており、これはCRLとしてリストアップされる機器が存在しない時期のものであったとする。つまりSRMデータがまだ発行されていない時期である。
【0137】
その後、ある時期に機器Aが製造され、SRM発行機関115によってライセンスされて電子署名DS(a)が付与されたとする。機器Aでは図23(b)のように電子署名DS(a)が記録されると共に、保持するSRMデータはバージョン0.0である。
【0138】
またその後、ある時期に機器Cが製造され、SRM発行機関115によってライセンスされて電子署名DS(c)が付与されたとする。機器Cには図23(c)のように電子署名DS(c)が記録される。保持するSRMデータはバージョン0.0である。
ところが、その後、機器Cはライセンスが取り消される事態となり、SRM発行機関115は、機器CをCRLにリストアップしたバージョン1.0のSRMデータを発行することになったとする。
【0139】
バージョン1.0のSRMデータ発行後、機器Bが製造され、その製造時までにバージョン1.0のSRMデータがメーカサイドに伝達されていれば、機器Bにはバージョン1.0のSRMデータが格納できるものとなる。例えば図23(b)に示すように、機器Bには機器Cの電子署名DS(c)がCRLとしてブラックリストに載せられたバージョン1.0のSRMデータが格納される。
【0140】
このような状況の後、ある時、図23(b)に示すように機器A,BがIEEE1394バス116により接続され、通信確立を行う際に、相互の認証処理が行われたとする。上記のようにライセンス機器には認証後のSRMデータの送受信が義務づけられているため、認証後、機器Bは機器Aに対してバージョン1.0のSRMデータを送信することになる。機器Aは、送信されてきたバージョン1.0のSRMデータが、記憶しているバージョン0.0のSRMデータよりも新しいものであることから、記憶しているSRMデータを更新することになる。これによって図示するように、機器Aにおいても、機器Cの電子署名DS(c)がCRLとしてブラックリストに載せられたバージョン1.0のSRMデータが格納されるものとなる。
【0141】
さらにその後、ある時点で図23(c)に示すように機器A,CがIEEE1394バス116により接続され、通信確立を行うことになったとする。ところが、機器Aは、相手側の機器C(DS(c))が格納しているSRMデータにCRLとして登録されている機器であることから、認証エラーとしての処理を行うことになる。つまり機器A,C間の通信は確立されず、オーディオデータ等の伝送は実行できないものとなる。
【0142】
このようにして、ライセンス取り消しが行われた機器Cは、認証エラーとされ、これによって著作権保護が不十分な機器を排除することで、著作権保護機能を維持するものである。
このような状況において、適切に不適切機器を排除するためには、SRMデータは各機器内においてなるべく迅速に更新(バージョンアップ)されることが必要であることが理解される。
このため上記のように、認証時にSRMデータの送受信が行われるようにし、必要に応じてSRMデータの更新が実行できるようにしている。
【0143】
またユーザーサイドでの機器において新バージョンのSRMデータを入力する手法としては、電子機器とパーソナルコンピュータをIEEE1394バス116で接続し、パーソナルコンピュータ側でアプリケーションを起動して、SRMデータを電子機器に送信するという手法がある。
例えばパーソナルコンピュータがネットワーク通信で発行されたSRMデータを受信できる場合や、CD−ROMなどによってSRMデータが提供されるようにすれば、そのパーソナルコンピュータを用いて電子機器のSRMデータ更新を実行させることができる。
【0144】
本例のSTR60やSTR対応ディスクドライブ30のようなIEEE1394によるデータ伝送を行う機器においては、接続状態において認証が行われ、互いに正当な機器(例えば正しい著作権保護機能を備えるものとしてライセンスされた機器)であることを確認する。その際に上記したようにSRMデータを参照して、正当なライセンス機器であるか否かの確認も行われるものである。
そして、STR対応ディスクドライブ30からSTR60へのオーディオデータの伝送を考えた場合、特にSACDの再生データであるDSDデータについては、暗号化して送信することが行われる。
STR対応ディスクドライブ30は、DSDデータの送信の際には、DSDデータを暗号化し、その暗号化データが配されたパケットデータ(アイソクロナスパケット)を、IEEE1394インターフェース39から送信することになる。
一方、データ受信側となるSTR60では、STR対応ディスクドライブ30との認証成立時に、STR対応ディスクドライブ30が使用する暗号鍵を受け取っている。
【0145】
4.NV−RAMフォーマット処理
4−1 初期処理及びフォーマット処理の処理系の構成
本例においては、STR対応ディスクドライブ30、STR60において、NV−RAM43、74に対しては電源オンの際などに毎回、初期処理が行われて所要のデータ更新が行われる。
一方、電子機器を製造する工場における工程を考えると、初期処理のためのプログラムが機器に書き込まれることで、その機器は初期処理が可能となり、例えば電源を投入されることに応じてNV−RAMに対する初期処理を実行する。
しかしながら製造当初のNV−RAMは、そのデータ内容が全く不定であるため、初期処理によって正しいデータ状態とできる確証はない。
そこで本例では工場での工程段階でNV−RAMに対するフォーマット処理を後述するようにして実行できるようにすることで、NV−RAMデータを正しい状態とさせ、かつ工程での効率向上をはかる。
【0146】
以下、STR対応ディスクドライブ30の例で説明する。
図24は、図5に示したSTR対応ディスクドライブ30において、NV−RAM43の初期処理及びフォーマット処理に関するブロックを抽出して示したものである。
即ちシステムコントローラ50、IEEE1394インターフェース39、NV−RAM43、プログラムメモリ44、表示部47を示している。
また図24に示すパーソナルコンピュータ250は、工場における装置としてのパーソナルコンピュータであり、ここではプログラムの書き込み及びフォーマット指示装置として機能するものである。
このパーソナルコンピュータ250はIEEE1394対応の機器とされ、IEEE1394バス116によってSTR対応ディスクドライブ30と接続される。
なお、NV−RAM43、プログラムメモリ44は、システムコントローラ50としてのチップ内部の記憶領域として形成されるものであってもよいことはもちろんである。
【0147】
4−2 初期処理
本例では、プログラムメモリ44に初期処理プログラム及びフォーマットプログラムが書き込まれることで、システムコントローラ50がNV−RAM43に対する初期処理及びフォーマット処理を行うことが可能となる。初期処理は、例えば電源オン時に毎回行われる処理であり、特に次回の電源オン時のために所定のデータ更新を行う処理などを含む。一方フォーマット処理は工場出荷前に一度だけ行われるもので、原則的には出荷後、例えばユーザーサイドなどでは実行されないものである。
【0148】
ここではまず、初期処理について説明する。
STR対応ディスクドライブ30において、NV−RAM43に対する初期処理を図26に示す。例えばSTR対応ディスクドライブ30が電源オンとされた際に、システムコントローラ50が実行する処理である。
まずステップF101として、システムコントローラ50はNV−RAM43のデータを読み出す。この場合、読み出されたデータは、今回の電源オン状態で実行する各種処理に用いるものとなる。例えば電源オン後、接続されたSTR60などの機器との間で認証を行う際には、NV−RAM43から読み出されたSRMデータが参照される。
【0149】
ステップF102以降では、次回の電源オン又はリセット時に使用するためのデータをNV−RAM43に書き込む処理を行う。
まずステップF102でNV−RAM43に書き込む内容を決定する。
ステップF103では、決定したデータ内容についてのNV−RAM43への書込を開始する。
この書込は、数回に分けられて行われる。
即ち、ステップF104での一定時間待機と、ステップF105への一部データの書込を、ステップF106で全て書込完了と判断されるまで、繰り返して行うことになる。
このステップF103〜F106の処理で、新たなデータがNV−RAM43に書き込まれ、これによってNV−RAM43に対する初期処理が完了する。
【0150】
4−3 フォーマットトリガ対応処理
次に、工場出荷前に行われる処理を説明する。
まず図25で工場出荷前に行われる処理の流れを説明する。なお、図25(a)はフォーマットトリガが発生しない場合、図25(b)はフォーマットトリガが発生された場合を、それぞれ示しており、本例は図25(b)のようにフォーマットトリガが発生されることで、NV−RAM43に対する適切な初期化(フォーマット)が効率よく行われるようにしているものである。
【0151】
図24に示したように、IEEE1394バス116を介してパーソナルコンピュータ250が接続された状態で、まず図25(a)において、手順ST1として示すように、パーソナルコンピュータ250からSTR対応ディスクドライブ30に対してプログラム書込が行われる。
即ちここでは、システムコントローラ50が上記の初期処理を実行するための初期処理プログラムと、フォーマットトリガに対応するためのフォーマットプログラム、及び機器固有のID情報が、パーソナルコンピュータ250からSTR対応ディスクドライブ30に入力される。STR対応ディスクドライブ30のシステムコントローラ50は、手順ST2として示すように、供給された初期処理プログラム、フォーマットプログラム、及びID情報を、プログラムメモリ44に格納する。
【0152】
その後、手順ST3として示すようにSTR対応ディスクドライブ30本体がリセットされ、起動(電源オン)されたとすると、システムコントローラ50は、プログラムメモリ44に格納されているプログラムに基づいた動作を実行することになるため、電源オン時の処理として、上述したNV−RAM43に対する初期処理を実行することになる(手順ST4)。
即ち図26で説明した処理として、NV−RAM43からのデータ読出や、次回のデータのNV−RAM43への書込を行う。
この初期処理には、例えば10〜20秒程度という、比較的長い時間を要するものとなっている。
【0153】
ところが上述のように工場で組み込まれた段階のNV−RAM43においては、データ内容は全く不定である。このため、手順ST4として初期処理が行われても、処理後のデータ状態が適切なものであるという確証はない。
そこで、本例では、図25(b)に示すように、手順ST1、ST2でプログラム書込が行われた後、手順ST3で機器リセット/起動が行われて、システムコントローラ50が手順ST4の初期処理を開始した際に、パーソナルコンピュータ250がSTR対応ディスクドライブ30に対してフォーマットトリガを供給する(手順ST5)。
フォーマットトリガが入力されると、システムコントローラ50は、初期処理を中断して、手順ST6としてフォーマット処理を実行するものとなる。このフォーマット処理とは、所要のデータの初期値を強制的にNV−RAM43に書き込む処理となる。
【0154】
手順ST1,ST2においてプログラムメモリ44に格納されているプログラムとしてのフォーマットプログラムは、システムコントローラ50がフォーマットトリガの対応するための処理プログラムであり、またNV−RAM43に書き込むべき初期値のデータが組み込まれている。
このフォーマットプログラムがプログラムメモリ44に格納されることで、システムコントローラ50はフォーマットトリガ入力に対応したフォーマット処理が可能となる。
【0155】
図27にシステムコントローラ50が実行するフォーマットトリガ対応処理を示す。
システムコントローラ50は、ステップF201としてフォーマットトリガの入力を認識したら、ステップF202に進む。
なお、フォーマットトリガはパーソナルコンピュータ250において暗号化されて送信されてくる。例えばスクランブルがかけられた状態で送信される。この際にパーソナルコンピュータ250は、STR対応ディスクドライブ30に対して付与したID情報を用いて暗号化処理を行う。
STR対応ディスクドライブ30は、パーソナルコンピュータ250のフォーマットトリガの入力に対しては、付与されたID情報を用いて解読し、そのフォーマットトリガが、正しく自身宛に発せられたフォーマットトリガと認識することで、ステップF202に進むものとされる。
これは、例えばユーザーサイドなどでフォーマット処理が実行できないようにするためである。
【0156】
ステップF202,F203では、所定時間待機しながら初期処理に対して割込可能であるか否かを判別する。
図25(b)に示したように、STR対応ディスクドライブ30は電源オンとされることに応じて初期処理を開始する。パーソナルコンピュータ250がフォーマットトリガを送信するのは、当然ながらSTR対応ディスクドライブ30が電源オンとされた以降となるため、STR対応ディスクドライブ30側にとってはフォーマットトリガが入力された時点では初期処理を実行中であることが多い。このため、ステップF202,F203で、初期処理に対して割込可能なタイミングを検出するものとなる。
図26で説明したように、初期処理ではステップF104,F105で一定時間待機しながらNV−RAM43への書込を行うようにしている。そこでこのフォーマットトリガ対応処理では、その初期処理における書込の待機期間を、割込タイミングとして検出するものとなる。
そして割込可能なタイミングとなった時点でステップF204に進む。
【0157】
なお、もちろん図25の手順ST4としての初期処理が終了した後にフォーマットトリガが入力された場合も、システムコントローラ50は図27の処理を開始することになり、その場合は、初期処理実行中でないためステップF202,F203での待機は実質的に不要である。つまり即座にステップF204に進めばよい。
但し、製造工程の効率化、時短化を考えれば、手順ST14の初期処理の完了を待つことは適切ではなく、なるべくSTR対応ディスクドライブ30が電源オンとされたら直ぐにフォーマットトリガを発生させることが好ましい。
このため上記のようにフォーマットプログラムによる処理が初期処理に対して割込可能としていることで、工程の効率化を実現するものである。
【0158】
システムコントローラ50は、ステップF204に進むと、初期処理を中断してフォーマットプログラムにおける情報をロードする。そしてステップF205で、ロードしたフォーマット情報からNV−RAM43に書き込むべきデータ内容を決定する。
そして図26のステップ103に進み、NV−RAM43に対する書込を実行する。
【0159】
即ちシステムコントローラ50は、フォーマットトリガが入力された場合、例え初期処理実行中であったとしても、それを中断して、NV−RAM43に書き込むべき情報の初期値を設定し、その後初期処理のステップF103からの処理を行うことで、所要のデータ等に関して初期値をNV−RAM43に書き込むようにしている。
従って、NV−RAM43には、フォーマットプログラムに従った初期値が書き込まれることになる。これが本例でいうフォーマット処理である。
このようなフォーマット処理が行われることで、初期状態におけるNV−RAM43のデータを適切な値とすることができる。即ちNV−RAM43のデータ内容が不定な状態から初期処理が行われることでは、初期処理後のデータ内容が適切なものであるとは確証できないが、フォーマット処理により、必ず適切な情報内容とすることができ、出荷するSTR対応ディスクドライブ30として適切なものとできる。
【0160】
もちろん、その後は、出荷前であろうとユーザーサイドにわたった後であろうと、最初の電源オン時の初期処理は、フォーマットされた状態のNV−RAM43に対して行われるため、適切な処理が実行される。
また、フォーマットトリガは暗号化されて入力されるため、ユーザーサイドで実行することはできず、従って悪意のフォーマット処理で必要なデータが改竄されるような事態を防止できる。
【0161】
なお、上記フォーマット処理中には、システムコントローラ50は表示部47にフォーマット中であることを表示するようにする。すると、作業者は機器がフォーマット中であることを認識でき、作業上都合がよい。
【0162】
4−4 フォーマットトリガ入力経路例
ところで上記説明では、フォーマットトリガはIEEE1394バス116を介してパーソナルコンピュータ250から入力されるものとした。
この場合は、フォーマットトリガを入力してフォーマットを指示する装置は、上記パーソナルコンピュータ250のようにIEEE1394バス116に接続できる機器でなければならない。
ところが工場における都合や設備状況、或いはフォーマットさせる工程の手順やフォーマットさせる機器の数などによっては、IEEE1394対応でない機器によってフォーマットトリガを入力できると好ましい場合がある。
【0163】
そこで、例えばSTR対応ディスクドライブ30における、フォーマットトリガの入力経路の例について述べる。
図28は、上記図24のようなSTR対応ディスクドライブ30の構成において、さらに4つのフォーマットトリガ入力経路を備えるようにしたものである。
【0164】
STR対応ディスクドライブ30は図5に示したように、リモートコマンダRMからの操作コマンドを受信する受信部45を備えている。例えばこれを赤外線受信部とした場合、受信部45により図28に示すように、赤外線でフォーマットトリガを送信出力するフォーマット指示装置94から、フォーマットトリガを受信入力することができる。例えば図5の構成においてフォーマットトリガが赤外線信号として受信部45に受信された場合、これがシステムコントローラ50に供給されることで、図28に示す赤外線受信部45によるフォーマットトリガ入力経路が実現される。
【0165】
また図28では、ICカードリーダ55を示している。これはICカード、メモリカード等のカードメディアに対して接触式或いは非接触式で情報を読み取る装置である。
例えばパーソナルコンピュータ250で生成したフォーマットトリガとしての情報をICカード92に格納し、このICカード92の情報をICカードリーダ55に読み取らせるようにすることで、フォーマットトリガの入力が可能となる。
【0166】
また図28ではアンテナ57及びチューナ56を示している。例えばこのチューナ56は、フォーマット指示装置93から送信されるフォーマットトリガを受信復調してシステムコントローラ50に供給するものとなる。
これによって電波による無線信号としてフォーマットトリガを入力する入力経路が実現される。
【0167】
また図28では、USBインターフェース58を示しており、USBケーブルによってフォーマット指示装置95としての外部機器と接続される状態を示している。
このようにIEEE1394以外の、USBのような他のインターフェース方式において接続された機器からフォーマットトリガを入力できるようにすることも考えられる。
もちろんUSBではなく、MOST、コントロールA1など他の方式での接続も考えられる。
このように他のインターフェース方式によってフォーマットトリガの入力を可能とすれば、フォーマット指示装置95としては、IEEE1394バスに対応していない機器でも実現できる。例えばパーソナルコンピュータ或いはその他の電子機器として、IEEE1394バスに対応していない機器も、フォーマット指示装置95として利用できるものとなる。
【0168】
この図28では以上のように、赤外線入力経路、カードメディアからの入力経路、電波送信による入力経路、IEEE1394バス以外のインターフェース方式の入力経路を例示した。もちろん他にも入力経路例は考えられる。そしてこのようにIEEE1394バスによる入力経路以外でも、多様な入力経路を持つようにすれば、フォーマット指示装置も多様化できる。つまり電子機器製造メーカにおける、製品に対する出荷前の工程の都合上、或いは工場設備に応じて、フォーマット指示装置を用意できる。これは、製造のコストダウンや効率化を促進できる。
【0169】
また、ここではフォーマットトリガの入力経路として説明したが、これを図25に手順ST1として示したプログラムやID情報の書込経路として用いることも当然に可能である。
つまりプログラムやIDの書込からフォーマットトリガまでとして、工程上必要とされるフォーマット指示装置を多様な形態で実現できる。
【0170】
4−5 フォーマットトリガ送信処理例
ところで、STR対応ディスクドライブ30のような電子機器にプログラムやIDを書き込ませた後、電源オンとなった際に、直ぐにフォーマットトリガを供給するようにすれば、STR対応ディスクドライブ30等において初期処理を中断させてフォーマット処理を実行させることになるため、工程の効率化に適していると前述した。
例えば作業者が、STR対応ディスクドライブ30を電源オンとした直後に、パーソナルコンピュータ250を操作してフォーマットトリガを供給させることで、無駄な初期処理を行う時間を解消できる。
【0171】
一方、フォーマット指示装置がSTR対応ディスクドライブ30の電源オンを監視するようにすれば、作業者の操作をまたなくとも効率的なフォーマット処理を実現できる。
ここでは、例えば図24のようにパーソナルコンピュータ250がフォーマット指示装置となる場合において、フォーマットトリガを自動送信する動作を図29,図30で説明する。
【0172】
図30は、フォーマット指示装置であるパーソナルコンピュータ250において実行される処理例である。
パーソナルコンピュータ250はステップF301で、STR対応ディスクドライブ30に対して初期処理プログラム、フォーマットプログラム、機器IDを送信し、STR対応ディスクドライブ30のプログラムメモリ44に格納させる。
【0173】
その後は、ステップF302でSTR対応ディスクドライブ30に対して機器IDの読出要求を行い、読出成功となったか否かを監視する。この機器IDの読出要求は、読出成功となるまで繰り返す。
STR対応ディスクドライブ30は、電源オンとなった時点では、パーソナルコンピュータ250からの機器IDの読出要求を認識するため、そのレスポンスとして機器IDを送信する。
これによって読出成功となったら、パーソナルコンピュータ250はステップF304に進んで、フォーマットトリガを送信するものである。
【0174】
パーソナルコンピュータ250が、図30の処理を行うことで、STR対応ディスクドライブ30におけるプログラム書込からフォーマット処理までの流れは図29のようになる。
手順ST11でパーソナルコンピュータ250から初期処理プログラム、フォーマットプログラム、機器IDが送信されると、STR対応ディスクドライブ30のシステムコントローラ50は手順ST12としてこれらをプログラムメモリ44に格納させる。
その後、STR対応ディスクドライブ30の本体がリセットされ(ST13)、ある時点で起動(電源オン)されるとする(ST15)。
パーソナルコンピュータ250は、プログラムやIDを送信した後は、上記図30のステップF302により、機器ID読出要求を行う。これが図29には機器ID要求の手順ST14−1、ST14−2・・・ST14−nとして示されている。
【0175】
STR対応ディスクドライブ30がリセットされている期間は、機器IDに対するレスポンスは行われないため、機器IDの読出要求は繰り返しおこなわれる。
手順ST15としてSTR対応ディスクドライブ30が電源オンとされると、システムコントローラ50は、初期処理プログラムに基づいて初期処理を開始する(ST16)。また、このとき機器IDの読出要求(ST14−n)を認識するため、そのレスポンスとして機器IDをパーソナルコンピュータ250に対して送信する。
パーソナルコンピュータ250は、STR対応ディスクドライブ30からのレスポンスとして機器IDの送信があったら、フォーマットトリガを送信する(ST18)。システムコントローラ50は、フォーマットトリガの入力に応じて、上記図27の処理を実行する。即ち初期処理を中断してフォーマット処理が行われる(ST19)。
【0176】
このような動作によれば、パーソナルコンピュータ250がSTR対応ディスクドライブ30に対してプログラム書込を行った後の電源オンを監視しているため、最適なタイミングでフォーマットトリガを送信することができる。つまりSTR対応ディスクドライブ30側では、無駄な初期処理を長く実行することなくフォーマット処理を実行できる。従って、当該工程を効率よく実行できる。
【0177】
なお、ここではパーソナルコンピュータ250をフォーマット指示装置とする例で述べたが、図28に示したフォーマット指示装置95など、他のフォーマット指示装置を使用する場合でも、STR対応ディスクドライブ30での電源オンを監視するようにすることで、最適なタイミングでフォーマットトリガを送信することができる。
もちろん電源オンの検出方式は多様に考えられる。
また、図30の処理では、STR対応ディスクドライブ30にプログラム書込を行なわせる機器が、STR対応ディスクドライブ30電源オンを監視し、フォーマットトリガを送信する場合の処理としたが、プログラム書込を実行させる機器と、フォーマットトリガを送信する機器が別の機器であってもよい。例えばパーソナルコンピュータ250によってプログラム書込を実行させた後、フォーマット指示装置93,94,95などでフォーマットトリガを送信するような例である。
その場合、フォーマットトリガを送信する機器は図30のステップF302以降が行われるようにすればよい。
【0178】
以上、本発明の実施の形態を、STR対応ディスクドライブ30及びパーソナルコンピュータ250を主な例として説明したが、もちろん他の機器でも本発明は適用できる。
例えば本発明の電子機器、フォーマット方法はSTR60としても同様に適用できる。
さらには、図1に示した機器100,110についても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本発明の実施の形態におけるAVシステムの構成例の説明図である。
【図2】STRのフロントパネルの正面図である。
【図3】STR対応ディスクドライブのフロントパネルの正面図である。
【図4】STRの内部構成例を示すブロック図である。
【図5】STR対応ディスクドライブの内部構成例を示すブロック図である。
【図6】本実施の形態に対応するIEEE1394のスタックモデルを示す説明図である。
【図7】IEEE1394に使用されるケーブル構造を示す説明図である。
【図8】IEEE1394における信号伝送形態を示す説明図である。
【図9】IEEE1394におけるバス接続規定を説明するための説明図である。
【図10】IEEE1394システム上でのNode ID設定手順の概念を示す説明図である。
【図11】IEEE1394におけるPacket送信の概要を示す説明図である。
【図12】Asynchronous通信における基本的な通信規則(トランザクションルール)を示す処理遷移図である。
【図13】IEEE1394バスのアドレッシング構造を示す説明図である。
【図14】CIPの構造図である。
【図15】プラグにより規定された接続関係例を示す説明図である。
【図16】プラグコントロールレジスタを示す説明図である。
【図17】Asynchronous通信において規定されるWrite Transactionを示す処理遷移図である。
【図18】Asynchronous Packet(AV/Cコマンドパケット)の構造図である。
【図19】Asynchronous Packetにおける、ctype/responceの定義内容を示す説明図である。
【図20】Asynchronous Packetにおける、subunit_typeと、opcodeの定義内容例を示す説明図である。
【図21】SRM発行の説明図である。
【図22】SRMのデータ内容の説明図である。
【図23】認証処理時のSRMの使用の説明図である。
【図24】実施の形態の初期処理及びフォーマット処理の説明のためのブロック図である。
【図25】実施の形態のフォーマット処理タイミングの説明図である。
【図26】実施の形態の初期処理のフローチャートである。
【図27】実施の形態のフォーマットトリガ対応処理のフローチャートである。
【図28】実施の形態のフォーマットトリガの多様な入力経路の説明図である。
【図29】実施の形態の電子機器の起動検出によるフォーマット処理タイミングの説明図である。
【図30】実施の形態のPC側のフォーマットトリガ出力のための処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0180】
30 STR対応ディスクドライブ 43 NV−RAM、50,70 システムコントローラ、54 フラッシュメモリ、60 STR、39,61 IEEE1394インターフェース、43,74 NV−RAM、44,73 プログラムメモリ、116 IEEE1394バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
初期処理において更新される情報を記憶する不揮発性記憶手段と、
上記不揮発性記憶手段に記憶された情報に対する上記初期処理を行うための初期処理プログラム、及び上記不揮発性記憶手段に記憶された情報をフォーマットするフォーマットプログラムが記憶されたプログラムメモリ手段と、
所定時点で上記初期処理プログラムに基づいて上記初期処理を実行するとともに、上記初期処理実行時であっても、入力されたフォーマット指示に基づいて、上記フォーマットプログラムに基づいたフォーマット処理を実行することができるようにされた制御手段と、
所定の通信フォーマットによるデータバスを介して接続されることで、データバス上に存在する1以上の外部電子機器と通信可能とされる通信手段を備え、
上記フォーマット指示は、上記通信手段により入力される
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
所定の通信フォーマットによるデータバスを介して接続されることで、データバス上に存在する1以上の外部電子機器と通信可能とされる第1の通信手段と、
上記第1の通信手段における所定の通信フォーマットとは異なる通信フォーマットによって外部電子機器と通信可能な第2の通信手段を更に備え、
上記フォーマット指示は、上記第2の通信手段により入力されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
無線信号受信手段を更に備え、
上記フォーマット指示は、上記無線信号受信手段により入力されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
記録媒体から情報を読み取る読取手段を更に備え、
上記フォーマット指示は、上記読取手段により入力されることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
所定の通信フォーマットによるデータバスで接続される外部電子機器との間で認証を行って通信状態を確立する電子機器において、初期処理において更新される情報を記憶する不揮発性記憶手段のフォーマット方法として、
所定時点で、記憶されている初期処理プログラムに基づいて上記不揮発性記憶手段に対する初期処理を実行するとともに、
上記初期処理の実行中であるか否かに関わらず、フォーマット指示が入力されることに応じて、記憶されているフォーマットプログラムに基づいて上記不揮発性記憶手段に対するフォーマット処理を実行するとともに、
上記フォーマット指示は、上記所定の通信フォーマットによるデータバスを介して外部機器から入力される
ことを特徴とするフォーマット方法。
【請求項6】
所定の通信フォーマットによるデータバスで接続される外部電子機器との間で認証を行って通信状態を確立する電子機器において、
上記フォーマット指示は、上記所定の通信フォーマットとは異なる通信フォーマットによるデータバスにより入力されることを特徴とする請求項に記載のフォーマット方法。
【請求項7】
上記フォーマット指示は、無線信号受信手段により入力されることを特徴とする請求項に記載のフォーマット方法。
【請求項8】
上記フォーマット指示は、記録媒体から情報を読み取る読取手段により入力されることを特徴とする請求項に記載のフォーマット方法。
【請求項9】
所定の通信フォーマットによるデータバスを介して接続され、データバス上に存在する他の電子機器との間で認証を行って通信状態を確立する電子機器に対して、機器起動時の不揮発性記憶手段に対する初期処理を行うための初期処理プログラムと、上記不揮発性記憶手段に記憶された情報をフォーマットするフォーマットプログラムと、上記電子機器に固有のID情報とを送信して記憶させ、
上記電子機器が起動された際に、上記ID情報を用いて暗号化したフォーマット指示を送信して上記電子機器に上記フォーマットプログラムを実行させるとともに、
上記電子機器に対して、上記初期処理プログラム、上記フォーマットプログラム、及び上記ID情報を送信した後、上記電子機器の起動を検出するための情報の送受信を行い、
上記送受信によって上記電子機器の起動が検出されることに応じて、上記フォーマット指示の送信を行う
ことを特徴とするフォーマット指示方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate


【公開番号】特開2009−54176(P2009−54176A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263838(P2008−263838)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【分割の表示】特願2003−278874(P2003−278874)の分割
【原出願日】平成15年7月24日(2003.7.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】