説明

電子線装置及び該装置を用いたデバイス製造方法

【課題】高スループットで電位コントラストの測定等を高信頼性で行うことができ、構造が簡単な電子線装置、及び該装置を用いて歩留まり良くデバイスを製造するためのデバイス製造方法を提供すること
【解決手段】パターンが形成された試料を電子線で照射し、該試料の評価を行うための電子線装置は、電子線源EG、対物レンズ14、電磁偏向器11、12及び二次電子線検出器17を収容した電子光学鏡筒1を備え、対物レンズ14は、上部電極18、中央電極19及び下部電極20から構成され、上部電極18、中央電極19及び下部電極20に電圧を印加するための制御電源21を更に備え、制御電源21は、中央電極19に一定値の電圧を印加し、上部電極18でダイナミック・フォーカスを行って対物レンズ14が合焦条件を満たすよう動作する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
この発明は、最小線幅0.1ミクロン以下のパターンを有するウェーハの欠陥検査、線幅測定、合わせ精度測定等の評価を行うための電子線装置、及び、該装置を用いて歩留まり良くデバイスを製造するための製造方法に関する。
【従来の技術】
【0003】
従来、電子線をウェーハ等の試料に照射し、該試料から発生する二次電子線を検出して欠陥検査、CD検査、欠陥Review SEM、合わせ精度測定等を行う装置は公知である。特に、電荷を付与してパターンを帯電させ、その結果として表面に現れる電位を測定して試料の欠陥を評価する方法は、光を用いたのでは不可能であるため、電子線を使用して広く行われている。
【0004】
従来の電子線装置において試料上のパターンの電位コントランストを得る場合、二次電子線に対するエネルギー・フィルタを設けない装置の分解能は小さいが、こうしたエネルギー・フィルタを設けた装置は小さい電位の分解能で測定可能であることがわかっている。このエネルギー・フィルタの機能を対物レンズに持たせると、対物レンズの収差係数が大きくなるという問題がある。また、試料の評価場所を正しく電子光学系の下に合わせるため、描画装置と同様のレジストレーション用のサブシステムが必要になり、装置全体が大型且つ複雑になるという問題もある。
【0005】
加えて、従来の電子線装置においては、種々の問題、例えば、
一次電子線と二次電子線とを分離するためのE×B分離器について、どのような構造が簡単であり、所望の精度が得られるのかが不明であった、
ショット雑音が大きく、所要の信号/雑音比を得るには大きいビーム電流を必要とした、
凸状のウェーハをフラットに吸着することのできる静電チャックが存在しなかった、
一次光学系の視野の重複部分においては2倍の、場合によっては4倍のドーズが与えられる場所ができ、ウェーハの破壊が生じるおそれがあった、
対物レンズとその上側のレンズとの間に走査用偏向器を配置するためのスペースを確保するのが困難であった、
等の問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記の種々の問題を解決するために提案されたものであり、その目的は、高スループットで電位コントラストの測定等を高信頼性で行うことができ、構造が簡単な電子線装置、及び該装置を用いて歩留まり良くデバイスを製造するためのデバイス製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明に係る電子線装置は、
パターンが形成された試料を電子線で照射し、該試料の評価を行うための電子線装置であって、
電子線源、対物レンズ、電磁偏向器及び二次電子線検出器を収容した電子光学鏡筒を備え、
前記対物レンズは、上部電極、中央電極及び下部電極から構成され、
前記上部電極、前記中央電極及び前記下部電極に電圧を印加するための制御電源を更に備え、
前記制御電源は、前記中央電極に一定値の電圧を印加し、前記上部電極でダイナミック・フォーカスを行って前記対物レンズが合焦条件を満たすよう動作することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明に係る電子線装置は、
前記制御電源は、前記ダイナミック・フォーカスの制御として、前記上部電極に対して3つの異なる電圧を与え、
前記3つの異なる電圧を与えたときの二次電子線の信号強度を測定し、該信号強度から二次関数近似を行い、
該二次関数の立ち上がり傾斜の最大値に対応する電圧値と前記二次関数の最大値に対応する電圧値の中間値を前記上部電極の電圧とする
ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明に係る電子線装置は、前記制御電源が、前記上部電極、前記中間電極及び前記下部電極相互間の電圧差を20kV以下になるよう電圧を印加することを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明に係る電子線装置は、前記中央電極の厚みが、光軸方向において2mm以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明に係る電子線装置は、前記試料が、互いに重なり合わないように分割された複数の小領域を含み、該小領域のみの評価を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明に係る電子線装置は、前記パターンの画素寸法をpとし、前記パターンを照射する電子線のビーム寸法をdとしたとき、前記p及び前記dが0.9<d/p<1.2を満たすことを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明に係るデバイス製造方法は、請求項1〜6のいずれか一つに記載の電子線装置を用いてプロセス途中の又はプロセス終了後のウェーハの評価を行うことを特徴とする。
【発明の実施の形態】
【0014】
図1は、この発明に係る電子線装置の一つの実施の形態を概略的に示す図である。同図において、電子光学鏡筒1の内部には、カソード2、ウェーネルト3及びアノード4からなる電子銃EGが設けられ、電子銃EGから放出された一次電子線はクロスオーバー5を第1の開口板6と第1のコンデンサ・レンズ7との間に作る条件で、正方形の成形開口を有する第1の開口板6を照射する。これにより一次電子線は第1のコンデンサ・レンズ7で縮小され、クロスオーバー像8を第2の開口板9の正方形の開口に形成する。更に、一次電子線は第2のコンデンサ・レンズ10によって縮小され、静電偏向器11と電磁偏向器12とからなるE×B分離器13を通過した後、対物レンズ14によって収束されて、第1の開口板6に形成された正方形の開口の縮小像がウェーハ15上に形成される。
【0015】
一次電子線の照射によってウェーハ15から放出された二次電子線は、対物レンズ14によって加速、収束された後、E×B分離器13よって図の右側へ偏向されて軌道16を取り、二次電子線検出器17で検出される。なお、対物レンズ14は上部電極18、中央電極19及び下部電極20を有しており、これらの電極に制御電源21から所要の電圧が印加される。
【0016】
E×B分離器13は、例えば、8極の静電偏向器とサドルタイプの電磁偏向器とを組み合わせたもので構成することができるので、構造が簡単であるうえ、一次電子線に対して余分な収差を発生させないという利点がある。ここで、E×B分離器の代わりに、電磁偏向器のみを用いても、走査視野によっては二次電子線の検出が可能である。
【0017】
一次電子線によりウェーハ15を走査するために、一次電子線は静電偏向器11と他の静電偏向器22とによって軌道23を通るよう制御される。このように、2段目の静電偏向器としてE×B分離器13の静電偏向器11を用いるので、対物レンズ14の上部のスペースを有効に利用することができる。そのうえ、2段目の静電偏向器は対物レンズ14に近い方が有利であることをも考慮すると、E×B分離器13の静電偏向器11に2段目の静電偏向器としての機能をも持たせることにより、2段目の静電偏向器を最良の位置に配置することができる。
【0018】
ウェーハ15には、制御電源21から−4kVの電圧が印加される。この場合、制御電源21からの電圧の立ち下がり速度は例えば100V/10秒程度にしないとデバイスが破壊される恐れがあり、徐々にウェーハ15に電圧が印加される。
【0019】
ウェーハ15を静電的に吸着保持するため、図2に示すように、3個の電極24〜26からなる電極板を有する静電チャック27が設けられる。このとき、ウェーハ15と対物レンズ14との間の放電を回避するため、3個の電極24〜26のうち、電極板の中央の部分に相当する中央電極24と電極板の周辺の一部の部分に相当する第1の電極25には0Vの電圧が与えられ、ウェーハ15に印加される電圧が−4kVに達した後に、電極板の周辺の残りの部分に相当する第2の電極26に0Vの電圧が与えられる。図2に示す構造の静電チャックを使用することにより、上に凸のウェーハであっても、その全面を平坦に吸着保持することができる。
【0020】
ウェーハ15を上記の静電チャックに載置するため、まずウェーハ15はロボット28からエンバイロンメント・チャンバ29に供給され、そこでウェーハ15の回転やウェーハ15の正しいxy座標位置への配置を含むプリアライメントが行われる。次いで、ローディング・チャンバ30を大気圧にした後、ゲート・バルブ31を開けてウェーハ15をローディング・チャンバ30に入れる。そこで、ローディング・アームをローディング・チャンバ30から引き抜いてからゲート・バルブ31を閉じ、ローディング・チャンバ30を排気する。ローディング・チャンバ30の真空度が1×10−6Torr以下になったときにゲート・バルブ32を開け、静電チャックが一部に設けられたローディング・アームでウェーハ15を静電チャックの電極24〜26に載置する。
【0021】
なお、図1において、参照数字33はウェーハ15を載置するためのステージを、34はバルブを、35はバルブ34を介して鏡筒1内を排気するためのイオン・ポンプを示している。ウェーハ15を載置するステージ33を、強磁性体である鉄からなるワーキング・チャンバ(図示せず)内に収容することにより、ウェーハ15を磁気シールドすることが好ましい。
【0022】
図1に示す電子銃EGは、ヒーター電圧を充分大きくし又はウェーネルト電圧を充分深くすることにより、空間電荷制限条件で動作させる。その結果、ピクセル当たりの二次電子線の検出数が50あれば、欠陥検査等の評価を十分信頼性良く実施し得る。さらに、二次電子線の電子がピクセル当たり検出される数が100であれば、Review SEMとしての機能を持たせることが可能である。このReview SEMの場合、ステージ33を停止させて観察を行う。
【0023】
次に、対物レンズ14について説明すると、合焦条件を満たすよう対物レンズ14を制御するため、対物レンズ14の中央電極19に印加する電圧は予め決められた一定値とし、上部電極18でダイナミック・フォーカスが行われる。これは以下の手順で実現される。まず、ダイのコーナー部のダイシング・ライン等の、x軸及びy軸に平行なパターンが接近して存在するウェーハ位置で上部電極18に3つの異なる電圧を与える。これらの電圧値のそれぞれにおいて、x方向及びy方向に平行なパターン・エッジをそれぞれy方向及びx方向に走査し、その時の二次電子線の信号強度の立ち上がりの傾斜をy方向の走査及びx方向の走査に対して測定する。例えば、y方向の走査に対する立ち上がりの傾斜がamV/μm、amV/μm及びamV/μmであり、x方向走査に対する立ち上がりの傾斜がbmV/μm、bmV/μm及びbmV/μmであったとする。これらの立ち上がりの傾斜から、上部電極18に印加した電圧に対する二次関数近似を用いて、立ち上がりの傾斜の最大値amV/μm、bmV/μmを求める。次いで、これらの最大値を与える上部電極18の電圧をそれぞれ求め、それらの中間の値に上部電極18の電圧をセットする。
【0024】
なお、立ち上がりの傾斜の最大値を与える上部電極18の電圧が予め指定された値よりも大きいときには、EB分離器13の静電偏向器11に非点補正を行う電圧を重畳させることが好ましい。
【0025】
図3は、対物レンズ14の中央電極19の光軸付近の厚みを変えたときの軸上色収差の変化を示すグラフであり、試料面でのビームの開口半角は30ミリラジアンである。また、上部電極18と中央電極19との間の電圧差及び中央電極19と下部電極20との間の電圧差は、ともに20kV以下になるように調整した。この状態で、線41は、二次電子線のフィルタ作用が生じる電圧を下部電極20に与えたときの軸上色収差を示しており、線42は、軸上色収差係数が最小になる電圧を下部電極20に与えた状態での軸上色収差を示している。
【0026】
なお、軸上色収差は、エネルギ幅によるビームのボケ量を表す。そこで、軸上色収差を△Cc、軸上色収差係数をCcとし、αを試料面のビームの開口半角を表すとすると、
【0027】
〔数1〕
△Cc=Cc(△V/V)α
が成り立つ。したがって、△Ccは、単位開口半角当たり、単位(エネルギ幅/ビーム・エネルギ)当たりに発生する収差である。
【0028】
図3のグラフから、
(1)中央電極19の厚みが2mm以下の場合には、下部電極20に二次電子線のフィルタ作用が生じる電圧を印加した条件でのみ、一次電子線の合焦条件が満たされること、
(2)中央電極19の厚みが1.5mm以下の場合には、下部電極20に二次電子線のフィルタ作用が生じる電圧を印加した条件で、軸上色収差係数を大幅に低減することができること、
(3)中央電極19の厚みが1.0mm以下の場合には、軸上色収差が100nm以下となり、最も好ましいこと、
がわかる。
【0029】
図4は、ウェーハ15のダイの並びの方向を測定するアライメント機構を説明するための図である。同図において、参照数字51はダイシング・ライン、51’は一つのダイシング・ライン51のy方向の辺のうちの一つ、52はダイシング・ライン51の上に設けられたテスト・ビア、53はステージ33が第1の位置にあるときの電子光学系の視野、54はステージ33を第1の位置からy方向に単位長さだけ移動させて第2の位置に置いたときの電子光学系の視野、55はチップ領域をそれぞれ示している。
【0030】
そこで、ダイの並び方向とステージ33のy方向への移動方向とのズレを補正するため、まず、電子光学系の視野53内でy方向に延びる一つのダイシング・ライン51の一つの辺51’のx方向の位置と、電子光学系の視野54内での前記の辺51’のx方向の位置とをそれぞれ測定し、次いで、それらの位置間の差をy方向の単位長さで割り算する。これにより、ダイの並び方向とステージ33のy方向への移動方向とのズレ角が算出される。したがって、ステージ33をy方向へ連続的に移動させるとき、前記ズレ角を補正するようにステージ33をx方向に移動させればよい。
【0031】
図4においては、y軸に平行な隣り合うダイシング・ライン及びx軸に平行な隣り合うダイシング・ラインで囲まれたチップ領域55を被評価対象とする。こうすることにより、チップ領域55に2重にビーム照射が行われることがないので、照射量を所定値以下に保つならば、デバイス酸化膜等を破損させる恐れがない。
【0032】
図5は、一次電子線のビーム寸法をd、ピクセル寸法をpとしたときのd/pを横軸に取ったときの種々のパラメータの変化を表すグラフを示している。グラフ61はMTFの値を示す曲線であり、ビーム寸法dが大のとき(いわゆる、ぼけたビームで観察するとき)コントラストがどのように小さくなるかを示している。グラフ62は一次電子線のビーム電流を表す曲線であり、軸上色収差が支配的になっている場合にはビーム電流はビーム径の4乗に比例する。即ち、グラフ62は傾斜が4:1の右上がりの直線である。グラフ63はMTFの値の2乗を示す曲線である。なお、MTFはModulation Transfer Functionの略であり、ボケたビームで臭気構造を走査したときの信号コントラストの劣化の程度を表す。
【0033】
ショット雑音が支配的な場合には、二次電子検出器17から出力される信号のS/N比は、iをビーム電流とするとき、
【0034】
〔数2〕
S/N=MTF(N/2)1/2∝MTF(i)1/2
で表される。したがって、S/N比を最大にするには、(MTF)iを最大にすればよい。(MTF)iは、グラフ62で示す値とグラフ63で示す値との積であり、グラフ64によって表される、上に凸の曲線になる。このグラフ64から、
(1)d/p≒1.1のとき、S/N比は最大になる、
(2)1.0<d/p<1.15のとき、S/N比は最大値とほぼ同じ値になる、
(3)0.9<d/p<1.2のとき、S/N比は充分大きい値である、
ことがわかる。
【0035】
次に、図6及び図7を用いて、本発明の半導体デバイス製造方法について説明する。本発明の半導体デバイス製造方法は、上記した評価装置を用いて、プロセス途中あるいは完成後のウェーハの評価を行うものである。以下に、一般的な半導体デバイス製造方法について、図6及び図7のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
図6に示すように、半導体デバイス製造方法は、概略的に分けると、ウェーハを製造するウェーハ製造工程S1、ウェーハに必要な加工処理を行うウェーハ・プロセッシング工程S2、露光に必要なマスクを製造するマスク製造工程S3、ウェーハ上に形成されたチップを1個づつに切り出し、動作可能にするチップ組立工程S4、及び、完成したチップを検査するチップ検査工程S5によって構成されている。これら工程はそれぞれ、幾つかのサブ工程を含んでいる。
【0037】
上記した工程の中で、半導体デバイスの製造に決定的な影響を及ぼす工程は、ウェーハ・プロセッシング工程である。これは、この工程において、設計された回路パターンをウェーハ上に形成し、かつ、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成するからである。
【0038】
このように半導体デバイスの製造に影響を及ぼすウェーハ・プロセッシング工程のサブ工程において実行されたウェーハの加工状態を評価することが重要であり、該サブ工程について、以下に説明する。
【0039】
まず、絶縁層となる誘電体薄膜を形成するとともに、配線部及び電極部を形成する金属薄膜を形成する。薄膜形成は、CVDやスパッタリング等により実行される。次いで、形成された誘電体薄膜及び金属薄膜、並びにウェーハ基板を酸化し、かつ、マスク製造工程S3によって作成されたマスク又はレチクルを用いて、リソグラフィ工程において、レジスト・パターンを形成する。そして、ドライ・エッチング技術等により、レジスト・パターンに従って基板を加工し、イオン及び不純物を注入する。その後、レジスト層を剥離し、ウェーハを検査する。
【0040】
このようなウェーハ・プロセッシング工程は、必要な層数だけ繰り返し行われ、チップ組立工程S4においてチップ毎に分離される前のウェーハが形成される。
【0041】
図7は、図6のウェーハ・プロセッシング工程のサブ工程であるリソグラフィ工程を示すフローチャートである。図7に示すように、リソグラフィ工程は、レジスト塗布工程S21、露光工程S22、現像工程S23及びアニール工程S24を含む。
【0042】
レジスト塗布工程S21において、CVDやスパッタリングを用いて回路パターンが形成されたウェーハ上にレジストを塗布し、露光工程S22において、塗布されたレジストを露光する。そして、現像工程S23において、露光されたレジストを現像してレジスト・パターンを得、アニール工程S24において、現像されたレジスト・パターンをアニールして安定化させる。これら工程S21〜S24は、必要な層数だけ繰り返し実行される。
【0043】
本発明の半導体デバイス製造方法においては、図1に関連して説明した電子線装置を、完成したチップを検査するチップ検査工程S5において用いることにより、微細なパターンを有する半導体デバイスであっても、歪み、ぼけ等が低減された画像を得ることができるので、ウェーハの欠陥を確実に検出することができる。なお、電子線装置が近傍に配置される加工装置は、評価を必要とする加工を行うものであれば、どのような加工装置であってもよい。
〔発明の効果〕
【0044】
以上、この発明に係る電子線装置及び該装置を用いたデバイス製造方法の一つの実施の形態について説明したところから理解されるとおり、この発明は、
(1)対物レンズの電極の寸法を、二次電子線に対するフィルタ効果を持つ値にすることができるので、軸上色収差係数を小さくすることができる、
(2)レジストレーションを極めて短時間に行うことができ、しかも、レジストレーションをウェーハの評価中にも実施できるので、スループットに影響を与えることがない、
(3)簡単な構造で、二次電子線を一次光学系から分離するE×B分離器を得ることができるので、一次電子線の収差を容易に計算することができる、
(4)ショット雑音をTFE電子銃の13%まで低減することができる、
(5)上に凸のウェーハでも全面を平坦にチャックすることができる、
(6)デバイス、特にゲート酸化膜を破壊する恐れがない、
(7)対物レンズの電極をアースに近い電圧にした状態で、ダイナミック・フォーカスを実施することができる、
(8)二次電子検出器からの出力のS/N比を最大値又はそれに近い値にすることができる、
(9)E×B分離器と走査用の偏向器とを最適位置に配置することができる、
等の格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明に係る電子線装置の一つの実施の形態を概略的に示す図である。
【図2】図1の電子線装置において使用される静電チャックの一例を示す平面図である。
【図3】図1の電子線装置に設けられた対物レンズの中央電極の厚みと軸上色収差との関係を示すグラフである。
【図4】図1の電子線装置におけるレジストレーションの方法と被評価領域とを説明するための図である。
【図5】図1の電子線装置におけるビーム径/ピクセル寸法に対するビーム電流、MTF及びS/N比の関係を示す対数曲線を示す図である。
【図6】本発明に係る電子線装置を適用して半導体デバイスを製造する方法のフローチャートである。
【図7】図6に示したウェーハ・プロセッシング工程のサブ工程であるリソグラフィ工程を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0046】
1:鏡筒、 2:カソード、 3:ウェーネルト、 4:アノード、 EG:電子銃、5:クロスオーバー、 6:第1の開口板、 7:第1のコンデンサ・レンズ、 8:クロスオーバー像、 9:第2の開口板、 10:第2のコンデンサ・レンズ、 11:静電偏向器、 12:電磁偏向器、 13:E×B分離器又は電磁偏向器、 14:対物レンズ、 15:ウェーハ、 16:二次電子軌道、 17:二次電子検出器、 18:上部電極、 19:中央電極、 20:下部電極、 21:制御電源: 22:静電偏向器、 23:偏向軌道、 24、25、26:電極、 27:静電チャック、 28:ロボット、 29:エンバイロンメント・チャンバ、 30:ローディング・チャンバ、 31、32:ゲート・バルブ、 33:ステージ、 34:バルブ、 35:イオン・ポンプ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された試料を電子線で照射し、該試料の評価を行うための電子線装置であって、
電子線源、対物レンズ、電磁偏向器及び二次電子線検出器を収容した電子光学鏡筒を備え、
前記対物レンズは、上部電極、中央電極及び下部電極から構成され、
前記上部電極、前記中央電極及び前記下部電極に電圧を印加するための制御電源を更に備え、
前記制御電源は、前記中央電極に一定値の電圧を印加し、前記上部電極でダイナミック・フォーカスを行って前記対物レンズが合焦条件を満たすよう動作することを特徴とする電子線装置。
【請求項2】
請求項1記載の電子線装置であって、
前記制御電源は、前記ダイナミック・フォーカスの制御として、前記上部電極に対して3つの異なる電圧を与え、
前記3つの異なる電圧を与えたときの二次電子線の信号強度を測定し、該信号強度から二次関数近似を行い、
該二次関数の立ち上がり傾斜の最大値に対応する電圧値と前記二次関数の最大値に対応する電圧値の中間値を前記上部電極の電圧とする
ことを特徴とする電子線装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子線装置であって、前記制御電源は、前記上部電極、前記中間電極及び前記下部電極相互間の電圧差を20kV以下になるよう電圧を印加することを特徴とする電子線装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の電子線装置であって、前記中央電極の厚みが、光軸方向において2mm以下であることを特徴とする電子線装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子線装置であって、前記試料が、互いに重なり合わないように分割された複数の小領域を含み、該小領域のみの評価を行うことを特徴とする電子線装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電子線装置であって、前記パターンの画素寸法をpとし、前記パターンを照射する電子線のビーム寸法をdとしたとき、前記p及び前記dが0.9<d/p<1.2を満たすことを特徴とする電子線装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の電子線装置を用いてプロセス途中の又はプロセス終了後のウェーハの評価を行うことを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−294627(P2006−294627A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122814(P2006−122814)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【分割の表示】特願2001−368960(P2001−368960)の分割
【原出願日】平成13年12月3日(2001.12.3)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】