説明

電子装置およびその製造方法

【課題】導電性接着剤を介して基板と電子部品とを接続したものを、接着補助剤を介してモールド樹脂で封止してなる電子装置において、接着補助剤の溶剤が導電性接着剤に浸透するのを防止する。
【解決手段】基板10の一面に搭載された電子部品20と、電子部品20と基板10の一面との間に介在する導電性接着剤30と、基板10の一面、電子部品20および導電性接着剤30を封止するモールド樹脂40と、基板10の一面とモールド樹脂40との間に介在し、モールド樹脂40の接着性を確保する接着補助剤50とを備える電子装置において、導電性接着剤30のうちモールド樹脂40と接する面には、当該面を被覆して保護する保護材60が設けられ、当該面は保護材60を介してモールド樹脂40に接しており、保護材60と接着補助剤中の溶剤50とは、溶解度パラメータの差が3以上の材料よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着剤を介して基板と電子部品とを接続したものをモールド樹脂で封止してなる電子装置、および、そのような電子装置の製造方法に関し、特に、モールド樹脂と基板との接着性を確保するために樹脂封止前に基板に塗布される接着補助剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の電子装置としては、基板の一面上にエポキシ樹脂に導電性のフィラーを含んでなる導電性接着剤を塗布し、この導電性接着剤の上に電子部品を搭載し、次に導電性接着剤を硬化して、電子部品と基板とを電気的に接続した後、接着補助剤を基板の一面に塗布して硬化し、続いて、この接着補助剤が形成された基板の一面、電子部品および導電性接着剤をモールド樹脂で封止したものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電子装置においては、モールド樹脂はエポキシ樹脂などよりなり、接着補助剤はポリアミドなどの樹脂を溶剤にとかしてなるものであり、接着補助剤は、基板の一面とモールド樹脂との間に介在し、モールド樹脂の接着性を確保している。
【特許文献1】特開平7−278301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者の検討によれば、導電性接着剤を介して電子部品が搭載されている基板の一面に、接着補助剤を塗布したとき、接着補助剤中の溶剤が導電性接着剤に浸透して、導電性接着剤が膨潤し、導電性接着剤における電気的な接続抵抗の上昇を引き起こすことがわかった。
【0005】
この場合、単純には、接着補助剤を無くした構成とすればよいが、そうすると、基板とモールド樹脂との接着性が低下し、モールド樹脂の剥離が生じ、さらには、基板の一面上でワイヤボンディングがなされている場合には、モールド樹脂の剥離による当該ワイヤの断線などの不具合が予想される。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、導電性接着剤を介して基板と電子部品とを接続したものを、接着補助剤を介してモールド樹脂で封止してなる電子装置において、接着補助剤中の溶剤が導電性接着剤に浸透するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、導電性接着剤(30)のうちモールド樹脂(40)と接する面には、当該面を被覆して保護する保護材(60)が設けられ、当該面は保護材(60)を介してモールド樹脂(40)に接しており、保護材(60)と接着補助剤(50)中の溶剤とは、溶解度パラメータの差が3以上の材料よりなることを特徴としている。
【0008】
本発明は実験的に見出されたものであり、導電性接着剤(30)のうちモールド樹脂(40)と接する面を、接着補助剤(50)中の溶剤とは溶解度パラメータの差が3以上の材料よりなる保護材(60)によって被覆して保護すれば、保護膜(60)が接着補助剤(50)を弾くため、接着補助剤(50)中の溶剤が導電性接着剤(30)に浸透するのを防止することができる。
【0009】
ここで、請求項2に記載の発明のように、モールド樹脂(40)はエポキシ樹脂であり、導電性接着剤(30)はエポキシ樹脂に導電性のフィラーを含んでなるものであり、接着補助剤(50)はポリアミドを溶剤としてのN−メチルピロリドンで希釈してなるものにできる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、基板(10)の一面に導電性接着剤(30)を塗布し、この導電性接着剤(30)の上に電子部品(20)を搭載し、次に、導電性接着剤(30)を硬化して電子部品(20)と基板(10)とを電気的に接続し、次に、基板(10)の一面に、モールド樹脂(40)の接着性を確保する接着補助剤(50)を塗布・硬化により形成し、続いて、接着補助剤(50)が形成された基板(10)の一面、電子部品(20)および導電性接着剤(30)をモールド樹脂(40)で封止する電子装置の製造方法において、次のような特徴を有するものである。
【0011】
すなわち、硬化した導電性接着剤(30)のうちモールド樹脂(40)と接する面に、接着補助剤(50)中の溶剤との溶解度パラメータの差が3以上の材料よりなる保護材(60)を塗布・硬化により形成することにより、当該面を保護材(60)によって被覆した後、接着補助剤(50)を塗布することを特徴としている。
【0012】
本発明は実験的に見出されたものであり、導電性接着剤(30)のうちモールド樹脂(40)と接する面を、接着補助剤(50)中の溶剤とは溶解度パラメータの差が3以上の材料よりなる保護材(60)によって被覆して保護すれば、その後、接着補助剤(50)を塗布しても、保護膜(60)が接着補助剤(50)を弾くため、接着補助剤(50)中の溶剤が導電性接着剤(30)に浸透するのを防止することができる。
【0013】
そして、この製造方法においても、請求項4に記載の発明のように、モールド樹脂(40)はエポキシ樹脂であり、導電性接着剤(30)はエポキシ樹脂に導電性のフィラーを含んでなるものであり、接着補助剤(50)はポリアミドを溶剤としてのN−メチルピロリドンで希釈してなるものにできる。
【0014】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る電子装置の概略断面構成を示す図である。本実施形態の電子装置は、たとえば自動車のECUなどに用いられるものであり、大きくは、基板10と、基板10の一面に搭載された電子部品20と、電子部品20と基板10とを電気的に接続する導電性接着剤30と、これら部材10〜30を封止するモールド樹脂40と、基板10とモールド樹脂40との接着性を確保する接着補助剤50とを備えて構成されている。
【0017】
基板10としては、特に限定されるものではないが、セラミック基板や、プリント基板などの各種の回路基板、配線基板が挙げられる。また、基板10としては、リードフレームなどであってもよい。
【0018】
電子部品20は、この基板10の一面(図1中の上面)に導電性接着剤30によって表面実装されるものであれば、何でもよいが、たとえば、電子部品20としては、ICチップ、ダイオード、コンデンサ、抵抗などが挙げられる。
【0019】
導電性接着剤30は、一般的なエポキシ系導電性接着剤であり、具体的には、エポキシ樹脂とこのエポキシ樹脂に含有・分散されたAgやCuなどの導電性フィラーとからなる組成物である。
【0020】
モールド樹脂40は、ナフタレン型エポキシ樹脂など、この種の一般的なエポキシ樹脂よりなるものであり、ディスペンス法やトランスファーモールド法などにより、成型されたものである。
【0021】
また、接着補助剤50はモールド樹脂40のプライマとして用いられるものであり、ここでは、基板10の一面および電子部品20とモールド樹脂40との間に介在して設けられている。この接着補助剤50の機能は、基板10の一面および電子部品20とモールド樹脂40との接着性の向上、および、内部応力の緩和などである。
【0022】
たとえば、接着補助剤50としては、ポリエーテルアミドイミド(PAI)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)などの樹脂を、NMP(N−メチルピロリドン)やアセトンなどの溶剤で希釈した一般的な材料を用いて形成されている。そして、この接着補助剤50は、液状のものをポッティングや印刷などにより、塗布し、これを硬化させることで配置されている。
【0023】
また、図1に示されるように、接着補助剤50は、導電性接着剤30のうちモールド樹脂40と接する面とモールド樹脂40との間には介在されていない。導電性接着剤30のうちモールド樹脂40と接する面とは、電子部品20の外周端部からはみ出している導電性接着剤30の表面であり、この面には従来では接着補助剤が塗布される。
【0024】
しかし、本実施形態では、この導電性接着剤30のうち電子部品20の外周端部からはみ出している表面には、接着補助剤50は存在せず、代わりに当該表面を被覆して保護する保護材60が設けられている。そして、導電性接着剤30の当該表面は保護材60を介してモールド樹脂40に接している。
【0025】
本実施形態では、この保護材60を形成する材料と接着補助剤50中の溶剤とは、その溶解度パラメータの差が3以上とされている。ここで、岩波書店、理化学辞典第5版(1406頁)によれば、「溶解度パラメータとは、液体のモル蒸発熱をΔH、モル体積をVとするとき、δ=(ΔH/V)1/2により定義される量δをいう。ヒルデブランド(Hildebrand,J.H)の正則溶液の理論で出てくる量で、たとえば2成分系での各成分の活量は、2成分の溶解度パラメータの差に直接依存し、溶解度は両者の溶解度パラメータの差が小さいほど大きくなる」とされている。
【0026】
この溶解度パラメータ(Solubility Parameter、以下、SP値という)は、固有物性値であり、経験的にSP値が近い物質は混ざりやすい傾向を持つことが知られている。
【0027】
そして、本実施形態では、保護材60を形成する材料のSP値を、上記接着補助剤50中の溶剤のSP値に対して3以上の差を有するものとしている。ここで、SP値の差とは絶対値であり、当該SP値の差が3以上であれば、保護材60のSP値が接着補助剤50中の溶剤のSP値よりも大きくても小さくてもよい。
【0028】
具体的に、モールド樹脂40を形成する材料のSP値、たとえばナフタレン型エポキシ樹脂のSP値は11.6、導電性接着剤30を形成する材料のSP値、たとえば導電性フィラーを含むエポキシ樹脂のSP値は11.2、接着補助剤50中の溶剤であるN−メチルピロリドンのSP値は11.0である。
【0029】
そして、具体的に、このような接着補助剤50中の溶剤に対して上記SP値の差が3以上であるような保護材60の形成材料としては、たとえばフッ素樹脂(SP値:3.6)やシリコーンゴム(SP値:8.0)などが挙げられる。
【0030】
また、接着補助剤50中の溶剤とモールド樹脂40とについては、互いにSP値の差が小さいものを用いることにより、基板10とモールド樹脂40との密着性を維持し、モールド樹脂40を剥離しにくくしている。
【0031】
かかる電子装置は、基板10の一面に、導電性接着剤30を塗布し、その上に電子部品20を搭載し、次に導電性接着剤30を硬化して電子部品20と基板10とを電気的に接続した後、導電性接着剤30の表面に保護材60を塗布・硬化して配置し、その後、基板10の一面および電子部品20に接着補助剤50を塗布・硬化して配置し、その後、モールド樹脂40による封止を行うことにより製造される。
【0032】
つまり、本実施形態の製造方法では、導電性接着剤30を硬化した後、硬化した導電性接着剤30のうちモールド樹脂40と接する面に、接着補助剤50中の溶剤とのSP値の差が3以上の材料よりなる保護材60を塗布・硬化して形成することにより、導電性接着剤30の当該面を保護材60によって被覆し、その後、接着補助剤50の塗布を行い、これを硬化するのである。
【0033】
このように、本実施形態では、導電性接着剤30のうちモールド樹脂40と接する面を、接着補助剤50中の溶剤とはSP値の差が3以上の材料よりなる保護材60によって被覆して保護するようにしているため、その後、接着補助剤50を塗布しても、保護膜60が接着補助剤50を弾き、接着補助剤50の溶剤が導電性接着剤30に浸透するのを防止することができる。
【0034】
これは、保護材60を形成する材料と接着補助剤50中の溶剤とで、互いのSP値の差を3以上に大きくしてやれば、保護材60と接着補助剤50とが、実質的に混ざらないものとなるためである。このことは、本発明者が行った実験を根拠とするものであり、この検討について、次に述べる。
【0035】
図2は、本発明者が行った実験検討に用いたサンプルを示す概略断面図であり、1回目の接続抵抗値の測定の様子を示している。ここでは、基板10としてセラミック基板10を用いた。
【0036】
セラミック基板10は、サイズが1インチ□で厚さ1mm、材質はアルミナであり、電子部品20が搭載される一面にAuメッキ11が施されている。電子部品20は積層セラミックコンデンサであり、サイズは3.2×1.6×1.25mmで、電極材質はAg/Pdである。
【0037】
導電性接着剤30としては、導電性フィラーを含むエポキシ樹脂(SP値:11.2)を用い、モールド樹脂40としては、ナフタレン型エポキシ樹脂(SP値:11.6)を用い、接着補助剤50としては、ポリアミドをN−メチルピロリドン(SP値:11.0)で希釈したものを用いた。
【0038】
また、保護材60を形成する材料としては、フッ素樹脂(SP値:3.6)、シリコーンゴム(SP値:8.0)、ポリスチレン(SP値:9.0)、塩化ビニリデン樹脂(SP値:12.2)、エポキシ樹脂(SP値:11.0)を用い、これら各種の材料について、サンプルを作製し、検討を行った。
【0039】
<接着剤硬化>:印刷パターンを開口した図示しないメタルマスクを用いて、基板10に導電性接着剤30を印刷し、電子部品20を無荷重で搭載した後、恒温槽にて導電性接着剤30を硬化させた。導電性接着剤30の印刷膜厚は60umであり、硬化条件は150℃×30分硬化とした。こうして、セラミック基板10と電子部品20とが導電性接着剤30で接続されるが、この状態が図2に示される。
【0040】
<接続抵抗測定1回目>:この導電性接着剤30の硬化後であって保護材60の塗布前に、接続抵抗測定の1回目を行った。この接続抵抗値は、導電性接着剤30を介した電子部品20と基板10との電気的な接続抵抗値である。
【0041】
図2に示されるように、接続抵抗値は、定電流源K1とデジタルマルチメータK2を用い、4端子法で測定した。電流は10mAを流して電圧を測定し、R=V/Iの関係から抵抗値を求めた。この方法によって、作製したサンプルについて、1回目の接続抵抗値を測定した。
【0042】
<保護材塗布>:次に、図2に示されるサンプルに対して、硬化した導電性接着剤30のうちモールド樹脂40と接する面に、ディスペンス法により、保護材60を塗布・硬化により形成した。これによって上記図1に示されるように、導電性接着剤30の当該面を保護材60によって被覆した。
【0043】
<接着補助剤塗布>:次に、基板10の一面および電子部品20の表面に、ディスペンス法を用いて接着補助剤50を塗布し、加熱して硬化させた。
【0044】
<接続抵抗測定2回目>:この後、基板10の金メッキ11のうち接着補助剤50の付いていないところにプローブを当て、上記同様の4端子法によって、2回目の接続抵抗値を測定した。
【0045】
<モールド樹脂封止>:その後、基板10の一面上にディスペンス法によって、モールド樹脂40を塗布し、基板10の一面および電子部品20をモールド樹脂40で封止し、モールド樹脂40を硬化させた。これにより、サンプルとして、上記図1に示されるものと同様の形状を有する電子装置を作製した。
【0046】
図3は、比較例と本実施形態の各サンプルについて上記した1回目および2回目の接続抵抗値を調査した結果を示す図である。ここで、比較例のサンプルは、従来構造に相当するものであり、上記した実験検討のサンプルの製造工程のうち保護材塗布を省略した工程により、本発明者が作製したものである。
【0047】
また、図3における本実施形態のサンプルは、保護材60にシリコーンゴムを用いた構造のものであり、この場合、接着補助剤50中の溶剤とのSP値の差は3である。そして、図3には、これら比較例および実施形態の各サンプルについて、n数:10にて測定した値が示されている。
【0048】
図3に示されるように、比較例と本実施形態とで、1回目の接続抵抗値に差は見られなかった。しかし、2回目の接続抵抗値については、保護材を持たない比較例のサンプルでは、1回目の接続抵抗値から平均値で約15倍、上昇した。一方、本実施形態のサンプルの接続抵抗値は、1回目と2回目とで実質的に変化がなかった。
【0049】
また、図4は、上記実験検討において、保護材60の種類を変えたサンプルを作製し、保護材60と接着補助剤50中の溶剤とのSP値の差を振った場合における2回目の接続抵抗値の結果を示す図である。図4には、当該SP値の差を変えた各サンプルについて、n数:10にて測定した値が示されている。
【0050】
図4において、各サンプルの1回目の接続抵抗値は、上記図3に示される1回目の接続抵抗値であり、図4に示される2回目の接続抵抗値が上昇してしまうサンプルは、本実施形態の効果を奏しない不適当なものである。図4に示されるように、当該SP値の差が3以上になると、1回目の接続抵抗値と比較して抵抗値の上昇が見られなかった。
【0051】
具体的には、上記実験検討のところに挙げた具体的な保護材60のうちフッ素樹脂(SP値:3.6)およびシリコーンゴム(SP値:8.0)については、SP値が11.0である接着補助剤50中の溶剤(NMP)に対して当該SP値の差が3以上となり、それによる効果については図4からも確認される。しかし、本実施形態では、ポリスチレン(SP値:9.0)、塩化ビニリデン樹脂(SP値:12.2)、エポキシ樹脂(SP値:11.0)は、保護材60として不適当であることは図4から明らかである。
【0052】
また、この現象について考察すると、上記図3に示した比較例では、保護材が無いため、エポキシ系導電性接着剤30にSP値が近い50のNMPが、当該導電性接着剤30に浸透して膨潤し、抵抗が上昇したと考えられる。
【0053】
一方で、本実施形態の電子装置においては、保護材60と接着補助剤50中の溶剤とでSP値の差が3以上の場合、接着補助剤50と保護材60との間で双方が弾き、導電性接着剤30に接着補助剤50の付着が無く、接着補助剤50中の溶剤の浸透がないため、導電性接着剤30が膨潤せず、抵抗上昇が抑制された。
【0054】
このように、本発明者が行った実験検討の結果から、本実施形態においては、保護材60を形成する材料と接着補助剤50中の溶剤とで、互いのSP値の差を3以上にしているのである。
【0055】
(他の実施形態)
図5は、他の実施形態としての電子装置の概略断面構成を示す図である。上記実施形態では、保護材60は、導電性接着剤30のうちモールド樹脂40と接する面に設けられており、電子部品20のうちモールド樹脂40と接する表面には設けられていないが、図5に示されるように、保護材60は、さらに電子部品20の当該表面を覆うように塗布・硬化されて設けられてもよい。
【0056】
この場合、電子部品20の表面に接着補助剤50が存在する場合に比べて、電子部品20とモールド樹脂40との接着性が低下することになるが、ワイヤボンディングを要する電子部品等のモールド樹脂40との密着力が必要でない場合には、むしろ剥離した方が、接続部に周辺環境の冷熱ストレスを受け難くなり、寿命は向上する。電子部品20の表面に接着補助剤50を塗布しない場合は、部品自体もモールド樹脂40との密着力が高まり、より安定な構造体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【図2】本発明者が行った実験検討に用いたサンプルを示す概略断面図である。
【図3】比較例と本実施形態について接続抵抗値を調査した結果を示す図である。
【図4】保護材と接着補助剤中の溶剤とのSP値の差と、接続抵抗値との関係を調査した結果を示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る電子装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 基板
20 電子部品
30 導電性接着剤
40 モールド樹脂
50 接着補助剤
60 保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(10)と、
前記基板(10)の一面に搭載された電子部品(20)と、
前記電子部品(20)と前記基板(10)の一面との間に介在し、これら両部材(10、20)を電気的に接続する導電性接着剤(30)と、
前記基板(10)の一面、前記電子部品(20)および前記導電性接着剤(30)を封止するモールド樹脂(40)と、
前記基板(10)の一面と前記モールド樹脂(40)との間に介在し、前記モールド樹脂(40)の接着性を確保する接着補助剤(50)とを備える電子装置において、
前記導電性接着剤(30)のうち前記モールド樹脂(40)と接する面には、当該面を被覆して保護する保護材(60)が設けられ、当該面は前記保護材(60)を介して前記モールド樹脂(40)に接しており、
前記保護材(60)と前記接着補助剤(50)中の溶剤とは、溶解度パラメータの差が3以上の材料よりなることを特徴とすることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記モールド樹脂(40)はエポキシ樹脂であり、前記導電性接着剤(30)はエポキシ樹脂に導電性のフィラーを含んでなるものであり、前記接着補助剤(50)はポリアミドを前記溶剤としてのN−メチルピロリドンで希釈してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
基板(10)の一面に導電性接着剤(30)を塗布し、この導電性接着剤(30)の上に電子部品(20)を搭載し、
次に、前記導電性接着剤(30)を硬化して前記電子部品(20)と前記基板(10)とを電気的に接続し、
次に、前記基板(10)の一面に、モールド樹脂(40)の接着性を確保する接着補助剤(50)を塗布・硬化により形成し、
続いて、前記接着補助剤(50)が形成された前記基板(10)の一面、前記電子部品(20)および前記導電性接着剤(30)をモールド樹脂(40)で封止する電子装置の製造方法において、
硬化した前記導電性接着剤(30)のうち前記モールド樹脂(40)と接する面に、前記接着補助剤(50)中の溶剤との溶解度パラメータの差が3以上の材料よりなる保護材(60)を塗布・硬化により形成することにより、当該面を前記保護材(60)によって被覆した後、前記接着補助剤(50)を塗布することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記モールド樹脂(40)はエポキシ樹脂であり、前記導電性接着剤(30)はエポキシ樹脂に導電性のフィラーを含んでなるものであり、前記接着補助剤(50)はポリアミドを前記溶剤としてのN−メチルピロリドンで希釈してなるものであることを特徴とする請求項3に記載の電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−129826(P2010−129826A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303872(P2008−303872)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】