電子部品の実装構造およびキャビティ基板の製造方法
【課題】製造が容易でかつ小型化された電子部品の実装構造を提供する。
【解決手段】メインボード12上の第1の電子部品13を収容するキャビティ部24を有するキャビティ基板21と、このキャビティ基板21に実装された第2の電子部品14とを備える。キャビティ部24は、第1の電子部品13と対向するベース層23と、ベース層23からメインボード12に向けて延びるキャビティ層25とによって形成される。キャビティ層25は、メインボード12側から見て、キャビティ部24の一部を除いてキャビティ部24を囲む形状に形成されている。
【解決手段】メインボード12上の第1の電子部品13を収容するキャビティ部24を有するキャビティ基板21と、このキャビティ基板21に実装された第2の電子部品14とを備える。キャビティ部24は、第1の電子部品13と対向するベース層23と、ベース層23からメインボード12に向けて延びるキャビティ層25とによって形成される。キャビティ層25は、メインボード12側から見て、キャビティ部24の一部を除いてキャビティ部24を囲む形状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイン基板上の電子部品を収容するキャビティ基板を備えた電子部品の実装構造およびキャビティ基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のさらなる小型・薄型化を図るために、電子部品を三次元的に並べて実装する高密度実装技術が求められるようになってきた。従来のこの種の実装技術を用いたデバイスとしては、たとえば特許文献1に記載されている半導体パッケージがある。
【0003】
特許文献1に開示されている半導体パッケージは、図25に示すように、半導体素子1が実装されたパッケージ基板2とキャビティ基板3とを備えている。パッケージ基板2は、半導体素子1が上側に位置する状態でメイン基板4の上に第1の半田ボール5によって実装されている。キャビティ基板3は、パッケージ基板2の上方に位置する板状部3aと、この板状部3aの一側部とメイン基板4とを接続するための凸部3bとを備えている。
【0004】
前記凸部3bは、第2の半田ボール6によってメイン基板4に実装されている。キャビティ基板3に実装されている半導体素子1は、前記板状部3aの上に位置付けられている。また、この板状部3aは、半田ボール7によってパッケージ基板2に実装されている。
特許文献1に示す半導体パッケージを含めて一般に、半導体素子を基板上に直接実装する場合は、半導体素子と基板との間に補強樹脂(アンダーフィル樹脂)が充填されている。このように補強樹脂を充填する理由は、半導体素子と基板との間の半田バンプを補強するためである。すなわち、基板と半導体素子との熱膨張率の差に起因して生じた熱応力を補強樹脂に分散させて緩和することができるから、半導体素子と基板との間の半田バンプが熱応力で破損されることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている半導体パッケージは、製造工数が多く、しかも大型であるという問題があった。製造工数が多くなる理由は、半田を溶融させる工程が2回必要になるからである。すなわち、パッケージ基板2と半導体素子1との間の半田を溶融、凝固させた後にここに補強樹脂を塗布し、その後、パッケージ基板2とキャビティ基板3との間の半田を溶融させなければならない。なお、半田を溶融させる工程を1回にしてしまうと、半田を溶融、凝固させた後にパッケージ基板2の外側から半導体素子1まで補強樹脂を供給しなければならない。この場合は、前記半導体素子1の周囲に位置している半田ボール7によって補強樹脂が遮られてしまい、補強樹脂を半導体素子1とパッケージ基板2との間に供給することができなくなってしまう。
【0007】
特許文献1に示す半導体パッケージが大型になる主な理由は、パッケージ基板2とキャビティ基板3とを接続する半田ボール7のランドと、半導体素子1との間のクリアランスを広く形成する必要があるからである。このクリアランスは、前記補強樹脂がパッケージ基板2上を濡れ拡がり、パッケージ基板2上の前記ランドに流れることを防ぐために広く形成されている。また、特許文献1に示す半導体パッケージは、キャビティ基板3の板状部3aとメイン基板4との間にパッケージ基板2を収容可能な高さを有するキャビティ部を形成しなければならない。すなわち、この半導体パッケージは、パッケージ基板2の外形が大きくなることと、キャビティ基板3の高さが高くなることとが原因で大型になっていた。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、製造が容易でかつ小型化された電子部品の実装構造およびキャビティ基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る電子部品の実装構造は、メイン基板に実装された第1の電子部品を収容するキャビティ部を有し、前記メイン基板に実装されたキャビティ基板と、前記キャビティ部における前記第1の電子部品とは反対側に実装された第2の電子部品とを備え、前記キャビティ部は、前記第1の電子部品に前記メイン基板とは反対側から対向するベース層と、前記ベース層から前記メイン基板に向けて延びて前記メイン基板に実装されたキャビティ層とによって形成され、前記キャビティ層は、前記メイン基板側から見て、前記キャビティ部の一部を除いてキャビティ部を囲む形状に形成されているものである。
【0010】
また、本発明に係るキャビティ基板の製造方法は、電子部品収容用の複数のキャビティ部が互いに直交する2方向にそれぞれ等間隔おいて並ぶように基板母材を形成するステップと、前記基板母材を切断線が2方向に延びるように切断して個々のキャビティ基板に分断するステップとを有し、前記2方向に延びる切断線のうち少なくとも一方の切断線が前記キャビティ部を横切ることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メイン基板に第1の電子部品およびキャビティ基板を実装した状態でもキャビティ部内が露出するようになる。補強樹脂は、この露出部分から供給することができる。このため、全ての部品をメイン基板に実装した後に第1の電子部品とメイン基板との間に補強樹脂を充分に充填することができる。この実装構造は、このように補強樹脂が充分に供給されるから、第1の電子部品とメイン基板との間の接続の信頼性が高いものとなる。
【0012】
したがって、本発明に係る電子部品の実装構造は、補強樹脂を充分に充填できる構成を採りながら、全ての半田の溶融、凝固を1度に行うことができるから、特許文献1に示す半導体パッケージに較べて製造が容易になる。
また、この電子部品の実装構造キャビティ基板と第1の電子部品との間に補強樹脂がランドに流れることを防ぐためのスペースを形成する必要がないから、第1の電子部品とキャビティ基板との間のクリアランスを狭く形成することができる。
【0013】
しかも、第1の電子部品をメイン基板に直接実装できるから、キャビティ基板のベース部をメイン基板に近接して位置するように形成することができる。この結果、本発明によれば、特許文献1記載の半導体パッケージより小型化された電子部品の実装構造を提供することができる。
本発明に係るキャビティ基板の製造方法によれば、キャビティ部の一部を除いてキャビティ部を囲む形状のキャビティ層を有するキャビティ基板を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コの字型キャビティ基板を用いた三次元実装構造の平面図である。
【図2】コの字型キャビティ基板を用いた三次元実装構造の断面図で、同図は図1におけるII-II線断面図である。
【図3】キャビティ層の形状がコの字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図4】キャビティ基板を用いた三次元実装構造の製造方法を説明するための断面図で、同図は実装時の状態を示す。
【図5】キャビティ基板を用いた三次元実装構造の製造方法を説明するための断面図で、同図はリフロー工程後の状態を示す。
【図6】コの字型キャビティ基板を用いた三次元実装構造の他の実施例を示す断面図である。
【図7】複数のキャビティ部を有する三次元実装構造を示す断面図である。
【図8】キャビティ層の形状がH字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図9】キャビティ層の形状が十字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図10】キャビティ層の形状がT字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図11】キャビティ層の形状が×字型のキャビティ基板で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図12】キャビティ部に実装した電子部品の両辺から補強樹脂を塗布した三次元実装構造の平面図である。
【図13】キャビティ部に実装した電子部品の両辺から補強樹脂を塗布した三次元実装構造の断面図で、同図は図12におけるXIII-XIII線断面図である。
【図14】キャビティ部に実装した電子部品の両辺から補強樹脂を塗布した三次元実装構造の断面図で、同図は図12におけるXIV-XIV線断面図である。
【図15】キャビティ層の形状がニの字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図16】複数のキャビティ基板を使用した三次元実装構造を示す断面図である。
【図17】は、メインボード上に実装した第1の電子部品の周囲全域をキャビティ基板で覆う実装構造の一例を示す断面図である。
【図18】キャビティ層の形状と、接続端子数、実装可能キャビティ部面積、キャビティ基板サイズの関係を示す図である。同図(A)はキャビティ層の形状がロ字型の場合を示し、同図(B)はキャビティ層の形状がコ字型の場合を示し、同図(C)はキャビティ層の形状がT字型の場合を示し、同図(D)と(E)はキャビティ層の形状がニの字型の場合を示す。
【図19】キャビティ層の形状がコの字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図20】キャビティ層の形状がH字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図21】キャビティ層の形状が十字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図22】キャビティ層の形状がT字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図23】キャビティ層の形状がニの字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図24】キャビティ層の形状が×字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図25】従来の実装構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施例)
以下、本発明に係る電子部品の実装構造およびキャビティ基板の製造方法の一実施例を図1〜図6によって詳細に説明する。この実施例においては、本発明に係る電子部品の実装構造を単に三次元実装構造という。
図1および図2に示す三次元実装構造11は、本発明でいうメイン基板としてのメインボード12の上に第1の電子部品13と第2の電子部品14とを上下方向に並ぶように実装する実装構造である。
【0016】
前記第1の電子部品13は、BGA(Ball grid array)、CSP(Chip Size Package)、WLCSP(Wafer Level Chip Size Package)、ベアチップなどの能動部品や、チップコンデンサ、チップ抵抗、チップコイルなどの受動部品である。この第1の電子部品13は、メインボード12上に半田バンプ16などの接続材料で直接実装されている。第1の電子部品13とメインボード12との間には、補強樹脂(アンダーフィル樹脂)17が充填されている。
【0017】
前記第2の電子部品14は、CSPやBGA、QFP(Quad Flat Package) 、SOP(Small Outline Package) 、TSOP(thin small out-line package)などのパッケージからなる電子部品18と、チップコンデンサ、チップ抵抗、チップコイルなどの電子部品19などが用いられている。この第2の電子部品14は、後述するキャビティ基板21の上に半田バンプ22などの接続材料で実装されており、キャビティ基板21を介してメインボード12に支持されている。
【0018】
キャビティ基板21は、図1〜図3に示すように、前記第1の電子部品13に前記メインボード12とは反対側から対向するベース層23と、このベース層23の下方にキャビティ部24(図2,3参照)を形成するためのキャビティ層25とによって構成されている。
このキャビティ基板21は、樹脂基板、セラミック基板、Si基板など、どのような基材で作られたものでも使用することができる。すなわち、この明細書において、キャビティ基板21の断面図には樹脂のハッチングを施してあるが、キャビティ基板21の材料は樹脂材料に限定されることはない。
【0019】
前記ベース層23は、平面視において四角形の板状に形成されている。このベース層23は、図2に示すように、第1の電子部品13とは所定のクリアランスをおいて離間している。
前記キャビティ層25は、前記ベース層23から前記メインボード12に向けて延びるように形成されており、前記メインボード12に半田バンプ26などの接続材料で実装されている。キャビティ層25とメインボード12との間には、図2に示すように、補強樹脂17が充填されている。
【0020】
この実施例によるキャビティ層25は、図3(B)に示すように、メインボード12側から見てコ字状に形成されている。言い換えれば、前記キャビティ層25は、前記メインボード12側から見て、前記キャビティ部24の一部(一側部)を除いてキャビティ部24を囲む形状に形成されている。このようなキャビティ層25の内側に形成されているキャビティ部24は、キャビティ層25によって囲まれていない開口部24aを介してキャビティ部外の空間と連通されることになる。キャビティ層25の下面、すなわちメインボード12と対向する面には、その形成範囲の全域にわたって多数の半田バンプ26が設けられている。
【0021】
この実施例に示す第1の電子部品13は、図1および図2に示すように、前記開口部24aからキャビティ部24の外に突出する突出部13aを有している。このように第1の電子部品13の一部をキャビティ部24から突出させた理由は、補強樹脂17を浸透させる位置を視認できるようにするためである。BGAやCSPなど補強樹脂17が必要な電子部品は、その一端部を前記開口部24aから突出させるか、突出していなくても開口部24aの近傍に位置付けることにより、補強樹脂17を直接塗布することができ、半田バンプ16部分の接続の信頼性が高くなる。
【0022】
次に、この実施例による三次元実装構造11によってメインボード12上に第1、第2の電子部品13,14を実装する手順を図4および図5によって説明する。
先ず、図4に示すように、メインボード12上に半田ペースト27を印刷し、第1の電子部品13を搭載する。次に、第1の電子部品13の周囲の所定の位置にキャビティ基板21を搭載する。キャビティ基板21は、予め所定の形状に形成しておき、ベース層23の上に第2の電子部品14(電子部品18,19)を実装しておくことが望ましい。
【0023】
その後、メインボード12上にキャビティ基板21を搭載する。このとき、キャビティ基板21のキャビティ部24内に第1の電子部品13が収容されるように、キャビティ基板21を第1の電子部品13の上に被せる。このように第1の電子部品13とキャビティ基板21とをメインボード12に搭載した後、これらをまとめてリフロー炉(図示せず)に供給し、半田バンプ16,22,26を溶融、凝固させる。
【0024】
この結果、図5に示すように、メインボード12に第1の電子部品13とキャビティ基板21とが接続された状態となる。その後、補強樹脂17を塗布するものについては、図2中に矢印Aで示すように、キャビティ部24の前記開口部24aから、メインボード12と第1の電子部品13との間に補強樹脂17を浸透させて充填する。また、キャビティ基板21のキャビティ層25とメインボード12との間にも補強樹脂17を充填する。
【0025】
したがって、この実施例による三次元実装構造11においては、全ての電子部品をメインボード12に実装した後にメインボード12と第1の電子部品13との間に補強樹脂17を充分に充填することができる。この結果、この三次元実装構造11によれば、前記補強樹脂17を充分に充填できる構成を採りながら、全ての半田の溶融、凝固を1回のリフロー工程で行うことができるから、特許文献1に示す半導体パッケージに較べて製造が容易になる。
【0026】
また、この三次元実装構造11においては、キャビティ基板21と第1の電子部品13との間に補強樹脂17が半田バンプ接続用ランド(図示せず)に流れることを防ぐためのスペースを形成する必要がない。このため、この三次元実装構造11によれば、第1の電子部品13とキャビティ層25との間のクリアランスを狭く形成することができる。しかも、第1の電子部品13をメインボード12に直接実装できるから、キャビティ基板21をベース層23がメインボード12に近接して位置するように形成することができる。この結果、この実施例によれば、特許文献1記載の半導体パッケージより小型化された三次元実装構造を提供することができる。
【0027】
この実施例においては、前記メインボード12と第1の電子部品13との間に補強樹脂17が充填されている。このため、この実施例によれば、メインボード12と第1の電子部品13との間の接続の信頼性が高い三次元実装構造を提供することができる。
この実施例による三次元実装構造11において、前記キャビティ基板21のベース層23は、前記第1の電子部品13とは離間している。このため、メインボード12とキャビティ基板21との熱膨張率の差が大きくてもリフロー後に熱応力で反りが生じるようなことはない。したがって、この実施例によれば、第1の電子部品13やキャビティ基板21の実装不良が生じ難い三次元実装構造を提供することができる。
【0028】
この実施例による第1の電子部品13は、前記キャビティ部24の開口部24aからキャビティ部24の外に突出する突出部13aを有している。このため、この実施例によれば、補強樹脂17を浸透させる位置を目視で確認でき、この位置に補強樹脂供給用ノズルを接近させることができるから、補強樹脂17を確実に塗布することができる。
第1の電子部品13は、図6に示すように、その全体をキャビティ部24の内部に収容させることができる。この場合は、同図中に矢印Aで示すように、補強樹脂17を前記開口部24aからメインボード12と第1の電子部品13との間に少量ずつ浸透させることによって、前記同様に充分に補強樹脂17を充填することができる。
【0029】
(第2の実施例)
キャビティ基板には、図7〜図11に示すように、複数のキャビティ部を設けることができる。これらの図において、前記図1〜図6によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0030】
図7に示すキャビティ基板21は、同図においてベース層23の左右方向の中央部にキャビティ層25が設けられており、このキャビティ層25の両側にそれぞれキャビティ部24が形成されている。このキャビティ層25は、図8(B)に示すように、メインボード12側から見てH字型に形成されている。
【0031】
すなわち、この実施の形態においても、キャビティ層25は、メインボード12側から見て、キャビティ部24の一部(一側部)を除いてキャビティ部24を囲む形状に形成されている。この実施例に示す二つのキャビティ部24は、キャビティ層25によって囲まれていない開口部24aを介してそれぞれキャビティ部外の空間と連通されている。
このように複数のキャビティ部24を有するキャビティ基板21は、図9〜図11に示すように形成することができる。
【0032】
図9に示すキャビティ基板21のキャビティ層25は、メインボード12側から見て十字型に形成されている。図9に示すキャビティ基板21には、4つのキャビティ部24が形成されている。
図10に示すキャビティ基板21のキャビティ層25は、メインボード12側から見てT字型に形成されている。
図11に示すキャビティ基板21のキャビティ層25は、メインボード12側から見てX字型に形成されている。
【0033】
(第3の実施例)
本発明に係る三次元実装構造は、図12〜図15に示すように、第1の電子部品の両端部がキャビティ部から突出する構成を採ることができる。これらの図において、前記図1〜図11によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0034】
この実施例によるキャビティ基板21のキャビティ層25は、図15(B)に示すように、メインボード12側から見てニの字型に形成されている。すなわち、キャビティ基板21に形成されているキャビティ部24は、その両端部に形成されている開口部24a,24aを介してキャビティ部外の空間と連通されている。
【0035】
この実施例による第1の電子部品13の一端部と他端部とは、図12および図13に示すように、キャビティ部24の前記二つの開口部24a,24aからキャビティ部外にそれぞれ突出している。このため、補強樹脂17を塗布する作業は、前記二箇所の突出部分に補強樹脂供給用ノズルを接近させて目視しながら容易に行うことができる。なお、実装面積を少しでも削減したい場合は、キャビティ基板21の形成範囲の内側に第1の電子部品13の全体を収容させてもよい。この場合において補強樹脂17を塗布するに当たっては、前記開口部24aから補強樹脂17を少量ずつ浸透させ、第1の電子部品13とメインボード12との間に充填する。
【0036】
(第4の実施例)
本発明に係る三次元実装構造11は、図16に示すように、複数のキャビティ基板を用いて構成することができる。図16において、前記図1〜図15によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0037】
図16に示す三次元実装構造11は、第1のキャビティ基板31と、第2のキャビティ基板32とを備えている。第1のキャビティ基板31は、複数のキャビティ部24を有するもので、上述した第2の実施例において図8〜図11を用いて説明したもキャビティ基板21と同一のものである。第2のキャビティ基板32は、上述した第1の実施例において図3を用いて説明したキャビティ基板21と同一のものである。
【0038】
この実施例による三次元実装構造11においては、第1、第2のキャビティ基板31,32を互いに隣り合うように並べることによって形成されたキャビティ空間33内に第1の電子部品13が収容されている。このキャビティ空間33は、第1のキャビティ基板21に形成されているキャビティ部24の開口部24aと、第2のキャビティ基板21に形成されているキャビティ部24の開口部24aとを互いに対向させることによって形成されている。
【0039】
この相対的に広い空間からなるキャビティ空間33には、相対的に大型の第1の電子部品13が収容されている。この大型の第1の電子部品13とメインボード12との間に補強樹脂17を充填するためには、図14中に矢印Bで示すように、第1、第2のキャビティ基板31,32どうしの間に形成されている隙間34を通して行うことができる。
【0040】
上述した第1〜第4の実施例に示すキャビティ基板21と、第1、第2のキャビティ基板31,32とは、キャビティ部24の一部が切り欠かれた形状に形成されているから、後述するように実装面積を低減することができる。この理由を図17と図18とを用いて説明する。図17は、メインボード12上に実装した第1の電子部品13の周囲全域をキャビティ基板で覆う実装構造の一例を示す断面図である。同図において、前記図1〜図15によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0041】
図17に示すキャビティ基板21のキャビティ層25は、メインボード12側から見てロ字型に形成されている。通常、メインボード12上に実装した第1の電子部品13の周囲全域をキャビティ基板21のキャビティ層25で覆う場合、キャビティ層25の加工精度、キャビティ基板21とメインボード12のSR精度、表面実装時の搭載精度などを考慮し、図17に示すように、第1の電子部品13とキャビティ壁(キャビティ部24の内側壁)のクリアランスaや、キャビティ壁とはんだバンプランド間クリアランスbが必要となる。このクリアランスaとクリアランスbの合計値は、場合によっては1mm以上になるため、キャビティ基板21の外形が必要以上に大きくなってしまう。しかし、キャビティ層25の形状を、コの字、T字、ニの字型などに形成することにより、この無駄なスペースとなっているクリアランスを減らすことが可能となる。
【0042】
図18にはキャビティ層25の形状を、ロの字、コの字、T字、ニの字型にした場合の、接続端子数、実装可能なキャビティ部24の面積、キャビティ基板21の実装面積の比較例について示している。図18においては、接続端子が設けられる領域を左下がりのハッチングで示し、実装可能なキャビティ部24を右下がりのハッチングによって示している。クリアランス部分にはハッチングを施していない。
【0043】
図18において、1ブロックは、1辺が0.4mmのサイズを示している。図18は、0.4mmピッチで接続端子を並べた時の状態を示すように描いてある。実装可能なキャビティエリアと、接続端子との間は、前述したクリアランスを確保するために1.2mm(3ブロック)離している。また、接続端子数は、Min140ピン確保することを前提条件として試算している。
この試算結果を下記の表1に示す。この試算結果から、コの字、T字、ニの字については、ロの字に比べて、同等の接続端子数や実装可能なキャビティ部24面積を確保しながら、キャビティ基板21のサイズ(実装面積)を約10〜25%も削減できることが示されている。
【0044】
【表1】
このため、上述した各実施例に示すように、キャビティ基板21のキャビティ層25をメインボード12側から見てコの字、T字、ニの字のうちいずれか一つの形状に形成することによって、キャビティ層25がロ字型である場合に較べて、キャビティ基板21の外形(実装面積)を小さく形成することができる。また、キャビティ層25の形状がH字型、X字型、十字型の場合であっても、キャビティ部24の開口部24aには前記クリアランス部分が不要であるから、上記同様にキャビティ基板21の外形を小さく形成することができる。
【0045】
次に、上述した各実施例で示したキャビティ基板21を製造する方法を図19〜図24によって詳細に説明する。これらの図において、前記図1〜図15によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
上述した各実施例で示したキャビティ基板21を製造するためには、先ず、例えば図19に示すように、公知の技術を用いて基板母材41を製造する。この基板母材41には、電子部品収納用の複数のキャビティ部24が互いに直交する2方向にそれぞれ等間隔おいて並ぶように形成されている。この2方向とは、平面視において四角形となるように形成された基板母材41の互いに直交する2辺と平行な方向である。
【0046】
次に、前記基板母材41を図示していないダイサーによって後述するように切断する。このダイサーは、予め定めたダイシングライン(切断線)に沿って平行移動しながら基板母材41を切断する構造のものが用いられている。このダイサーによって基板母材41を切断するためには、図19〜図24に示すように、第1の切断線42と第2の切断線43とに沿ってダイサーを平行移動させて行う。
【0047】
上述した各実施例で示したキャビティ基板21のうち、キャビティ層25がメインボード12側から見てコ字型に形成されているキャビティ基板21を製造するためには、図19に示すように第1、第2の切断線42,43を位置付ける。
図19に示す第1の切断線42は、キャビティ部24どうしの間のみを通って延びている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともにキャビティ部24を横切っている。第2の切断線43がキャビティ部24を横切る位置は、キャビティ部24の一側部であって、平面視において内壁面24bと重なる位置である。
【0048】
基板母材41は、これらの第1、第2の切断線42,43に沿って切断されることにより、コ字型のキャビティ層25を有する複数のキャビティ基板21に分断される。
キャビティ層25が平面視においてH字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線43を図20に示すように位置付ける。図20に示す第1の切断線42は、キャビティ部24の中央部を横切るように位置付けられている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともにキャビティ部24どうしの間のみを通るように位置付けられている。
【0049】
キャビティ層25が平面視において十字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線42,43を図21に示すように位置付ける。図21に示す第1の切断線42は、キャビティ部24の中央部を横切るように位置付けられている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともにキャビティ部24の中央部を横切るように位置付けられている。
【0050】
キャビティ層25が平面視においてT字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線42,43を図22に示すように位置付ける。図22に示す第1の切断線42は、キャビティ部24の一側部であって、平面視において内壁面24bと重なる位置に位置付けられている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともにキャビティ部24の中央部を横切るように位置付けられている。
【0051】
キャビティ層25が平面視において二の字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線42,43を図23に示すように位置付ける。図23に示す第1の切断線42は、キャビティ部24どうしの間のみを通るように位置付けられている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともに、キャビティ部24の互いに対向する二側部であって、平面視において内壁面24bと重なる位置を通るように位置付けられている。
【0052】
キャビティ層25が平面視においてX字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線42,43を図24に示すように位置付ける。図24に示す第1の切断線42は、キャビティ部24の二つの対角線のうち一方の対角線の上に位置付けられている。また、第2の切断線43は、第1の切断線42が横切っていない他のキャビティ部24の他方の対角線上に位置付けられている。
【0053】
基板母材41を上述したように切断するに当たって、キャビティ基板21の配線(図示せず)や第1、第2の42,切断線43の位置については、切断する位置を考慮して予め適切に設計しておく必要がある。具体的に説明すると、前記配線を引き回すエリアは、第1、第2の切断線42,43から十分離間するように形成する。図19〜図24に示すような特殊なキャビティ基板21をダイシングする場合、キャビティ部24の内壁面24bやキャビティ部24間の中央を狙って精度良く切断することが望まれるが、実際には基板の位置合わせ精度やダイサーの精度によって、多少切断位置がずれることが懸念される。
【0054】
この問題を解決する方法として、ダイサーのブレードとしてブレード幅(刃の幅)が十分厚いものを使うことが望ましい。この場合、配線引き回しエリアはダイシング時のブレード幅を考慮して第1、第2の切断線43から離間させておくことが望ましい。また、第1、第2の切断線42,43の線幅についても、十分な領域を確保しておくことが望ましい。
【0055】
上述したように基板母材41を分断してキャビティ基板21を製造する製造方法によれば、キャビティ部24の一部を除いてキャビティ部24を囲む形状のキャビティ層25を有するキャビティ基板21を簡単に製造することができる。
【0056】
なお、上述した各実施例においては、メインボード12と第1の電子部品13との間に補強樹脂17を塗布する例を示したが、補強樹脂17を塗布せず、実装面積を削減するためだけにこの三次元実装構造11を用いても良い。
【実施例1】
【0057】
上述した三次元実装構造11と製造方法の具体的な一例を説明する。先ず、メインボード12上にSnAgCuの鉛フリーハンダペーストを所定の位置に印刷する。続いて、0.3mm厚で、0.4mmピッチの半田バンプ端子を有する、6mm四方のWLCSPをメインボード12上にマウンターを用いて搭載する。
続いて、キャビティ基板21をWLCSPの周囲の所定の位置に搭載する。ここで、キャビティ基板21は、10mm四方のサイズとなっていて、8×7mmのキャビティを有するように、キャビティ層25がコの字型に加工されたものとする。キャビティ部24の内壁面24bとWLCSPとの間にはそれぞれ1mmのクリアランスが形成されている。
【0058】
キャビティ部24の深さは、WLCSPと接触しないように0.4mmの深さで形成しておく。キャビティ基板21のベース層23とキャビティ層25を合計した厚さは0.65mm程度とする。第1の電子部品13と、キャビティ基板21(第2の電子部品14が搭載されたもの)とを搭載したメインボード12は、最高250℃のリフロー炉に流し、半田を溶融させメインボード12とそれぞれ接続する。
【0059】
完成した三次元実装構造体に、最後に補強樹脂17を塗布する。補強樹脂17はまずWLCSPに充填するため、キャビティ基板21の開口部24aから露出しているWLCSPの一辺(6mm幅)に少量ずつ塗布する。補強樹脂17を塗布するノズルは、WLCSPから0.1〜0.5mm程度離れたところに移動させ、WLCSPに直接塗布する。
WLCSPの半田接続部に十分補強樹脂17が塗布された後、キャビティ基板21全体に補強樹脂17を塗布する。なお、WLCSPのサイズが小さかったり、浸透性が高い補強樹脂17を用いる場合には、WLCSPとキャビティ基板21に一括で補強樹脂17を塗布しても良い。なお、ここで説明した部品の各種設計値は、目的とする三次元実装構造11に合わせて、その都度最適になるよう設定することが望ましい。
【0060】
一方、キャビティ基板21を製造する工程で使用するダイサーは、そのブレード幅(刃の幅)が0.3〜0.8mmなど十分厚いものを使うことが望ましい。この場合、配線引き回しエリアはダイシングのブレード幅を考慮して第1、第2の切断線43から少なくとも片側0.2〜0.5mm程度、離しておくことが望ましい。またダイシングライン幅(第1、第2の切断線43の線幅)についても約0.3〜0.8mmと、十分な領域を確保しておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0061】
12…メインボード、13…第1の電子部品、14…第2の電子部品、21…キャビティ基板、23…ベース層、24…キャビティ部、24a…開口部、25…キャビティ層、41…基板母材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メイン基板上の電子部品を収容するキャビティ基板を備えた電子部品の実装構造およびキャビティ基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のさらなる小型・薄型化を図るために、電子部品を三次元的に並べて実装する高密度実装技術が求められるようになってきた。従来のこの種の実装技術を用いたデバイスとしては、たとえば特許文献1に記載されている半導体パッケージがある。
【0003】
特許文献1に開示されている半導体パッケージは、図25に示すように、半導体素子1が実装されたパッケージ基板2とキャビティ基板3とを備えている。パッケージ基板2は、半導体素子1が上側に位置する状態でメイン基板4の上に第1の半田ボール5によって実装されている。キャビティ基板3は、パッケージ基板2の上方に位置する板状部3aと、この板状部3aの一側部とメイン基板4とを接続するための凸部3bとを備えている。
【0004】
前記凸部3bは、第2の半田ボール6によってメイン基板4に実装されている。キャビティ基板3に実装されている半導体素子1は、前記板状部3aの上に位置付けられている。また、この板状部3aは、半田ボール7によってパッケージ基板2に実装されている。
特許文献1に示す半導体パッケージを含めて一般に、半導体素子を基板上に直接実装する場合は、半導体素子と基板との間に補強樹脂(アンダーフィル樹脂)が充填されている。このように補強樹脂を充填する理由は、半導体素子と基板との間の半田バンプを補強するためである。すなわち、基板と半導体素子との熱膨張率の差に起因して生じた熱応力を補強樹脂に分散させて緩和することができるから、半導体素子と基板との間の半田バンプが熱応力で破損されることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−206230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている半導体パッケージは、製造工数が多く、しかも大型であるという問題があった。製造工数が多くなる理由は、半田を溶融させる工程が2回必要になるからである。すなわち、パッケージ基板2と半導体素子1との間の半田を溶融、凝固させた後にここに補強樹脂を塗布し、その後、パッケージ基板2とキャビティ基板3との間の半田を溶融させなければならない。なお、半田を溶融させる工程を1回にしてしまうと、半田を溶融、凝固させた後にパッケージ基板2の外側から半導体素子1まで補強樹脂を供給しなければならない。この場合は、前記半導体素子1の周囲に位置している半田ボール7によって補強樹脂が遮られてしまい、補強樹脂を半導体素子1とパッケージ基板2との間に供給することができなくなってしまう。
【0007】
特許文献1に示す半導体パッケージが大型になる主な理由は、パッケージ基板2とキャビティ基板3とを接続する半田ボール7のランドと、半導体素子1との間のクリアランスを広く形成する必要があるからである。このクリアランスは、前記補強樹脂がパッケージ基板2上を濡れ拡がり、パッケージ基板2上の前記ランドに流れることを防ぐために広く形成されている。また、特許文献1に示す半導体パッケージは、キャビティ基板3の板状部3aとメイン基板4との間にパッケージ基板2を収容可能な高さを有するキャビティ部を形成しなければならない。すなわち、この半導体パッケージは、パッケージ基板2の外形が大きくなることと、キャビティ基板3の高さが高くなることとが原因で大型になっていた。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、製造が容易でかつ小型化された電子部品の実装構造およびキャビティ基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係る電子部品の実装構造は、メイン基板に実装された第1の電子部品を収容するキャビティ部を有し、前記メイン基板に実装されたキャビティ基板と、前記キャビティ部における前記第1の電子部品とは反対側に実装された第2の電子部品とを備え、前記キャビティ部は、前記第1の電子部品に前記メイン基板とは反対側から対向するベース層と、前記ベース層から前記メイン基板に向けて延びて前記メイン基板に実装されたキャビティ層とによって形成され、前記キャビティ層は、前記メイン基板側から見て、前記キャビティ部の一部を除いてキャビティ部を囲む形状に形成されているものである。
【0010】
また、本発明に係るキャビティ基板の製造方法は、電子部品収容用の複数のキャビティ部が互いに直交する2方向にそれぞれ等間隔おいて並ぶように基板母材を形成するステップと、前記基板母材を切断線が2方向に延びるように切断して個々のキャビティ基板に分断するステップとを有し、前記2方向に延びる切断線のうち少なくとも一方の切断線が前記キャビティ部を横切ることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メイン基板に第1の電子部品およびキャビティ基板を実装した状態でもキャビティ部内が露出するようになる。補強樹脂は、この露出部分から供給することができる。このため、全ての部品をメイン基板に実装した後に第1の電子部品とメイン基板との間に補強樹脂を充分に充填することができる。この実装構造は、このように補強樹脂が充分に供給されるから、第1の電子部品とメイン基板との間の接続の信頼性が高いものとなる。
【0012】
したがって、本発明に係る電子部品の実装構造は、補強樹脂を充分に充填できる構成を採りながら、全ての半田の溶融、凝固を1度に行うことができるから、特許文献1に示す半導体パッケージに較べて製造が容易になる。
また、この電子部品の実装構造キャビティ基板と第1の電子部品との間に補強樹脂がランドに流れることを防ぐためのスペースを形成する必要がないから、第1の電子部品とキャビティ基板との間のクリアランスを狭く形成することができる。
【0013】
しかも、第1の電子部品をメイン基板に直接実装できるから、キャビティ基板のベース部をメイン基板に近接して位置するように形成することができる。この結果、本発明によれば、特許文献1記載の半導体パッケージより小型化された電子部品の実装構造を提供することができる。
本発明に係るキャビティ基板の製造方法によれば、キャビティ部の一部を除いてキャビティ部を囲む形状のキャビティ層を有するキャビティ基板を簡単に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】コの字型キャビティ基板を用いた三次元実装構造の平面図である。
【図2】コの字型キャビティ基板を用いた三次元実装構造の断面図で、同図は図1におけるII-II線断面図である。
【図3】キャビティ層の形状がコの字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図4】キャビティ基板を用いた三次元実装構造の製造方法を説明するための断面図で、同図は実装時の状態を示す。
【図5】キャビティ基板を用いた三次元実装構造の製造方法を説明するための断面図で、同図はリフロー工程後の状態を示す。
【図6】コの字型キャビティ基板を用いた三次元実装構造の他の実施例を示す断面図である。
【図7】複数のキャビティ部を有する三次元実装構造を示す断面図である。
【図8】キャビティ層の形状がH字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図9】キャビティ層の形状が十字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図10】キャビティ層の形状がT字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図11】キャビティ層の形状が×字型のキャビティ基板で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図12】キャビティ部に実装した電子部品の両辺から補強樹脂を塗布した三次元実装構造の平面図である。
【図13】キャビティ部に実装した電子部品の両辺から補強樹脂を塗布した三次元実装構造の断面図で、同図は図12におけるXIII-XIII線断面図である。
【図14】キャビティ部に実装した電子部品の両辺から補強樹脂を塗布した三次元実装構造の断面図で、同図は図12におけるXIV-XIV線断面図である。
【図15】キャビティ層の形状がニの字型のキャビティ基板を示す図で、同図(A)は断面図、同図(B)は底面図である。同図(B)においては、同図(A)の破断位置をA−A線によって示す。
【図16】複数のキャビティ基板を使用した三次元実装構造を示す断面図である。
【図17】は、メインボード上に実装した第1の電子部品の周囲全域をキャビティ基板で覆う実装構造の一例を示す断面図である。
【図18】キャビティ層の形状と、接続端子数、実装可能キャビティ部面積、キャビティ基板サイズの関係を示す図である。同図(A)はキャビティ層の形状がロ字型の場合を示し、同図(B)はキャビティ層の形状がコ字型の場合を示し、同図(C)はキャビティ層の形状がT字型の場合を示し、同図(D)と(E)はキャビティ層の形状がニの字型の場合を示す。
【図19】キャビティ層の形状がコの字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図20】キャビティ層の形状がH字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図21】キャビティ層の形状が十字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図22】キャビティ層の形状がT字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図23】キャビティ層の形状がニの字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図24】キャビティ層の形状が×字型のキャビティ基板の製造方法を説明するための斜視図である。
【図25】従来の実装構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施例)
以下、本発明に係る電子部品の実装構造およびキャビティ基板の製造方法の一実施例を図1〜図6によって詳細に説明する。この実施例においては、本発明に係る電子部品の実装構造を単に三次元実装構造という。
図1および図2に示す三次元実装構造11は、本発明でいうメイン基板としてのメインボード12の上に第1の電子部品13と第2の電子部品14とを上下方向に並ぶように実装する実装構造である。
【0016】
前記第1の電子部品13は、BGA(Ball grid array)、CSP(Chip Size Package)、WLCSP(Wafer Level Chip Size Package)、ベアチップなどの能動部品や、チップコンデンサ、チップ抵抗、チップコイルなどの受動部品である。この第1の電子部品13は、メインボード12上に半田バンプ16などの接続材料で直接実装されている。第1の電子部品13とメインボード12との間には、補強樹脂(アンダーフィル樹脂)17が充填されている。
【0017】
前記第2の電子部品14は、CSPやBGA、QFP(Quad Flat Package) 、SOP(Small Outline Package) 、TSOP(thin small out-line package)などのパッケージからなる電子部品18と、チップコンデンサ、チップ抵抗、チップコイルなどの電子部品19などが用いられている。この第2の電子部品14は、後述するキャビティ基板21の上に半田バンプ22などの接続材料で実装されており、キャビティ基板21を介してメインボード12に支持されている。
【0018】
キャビティ基板21は、図1〜図3に示すように、前記第1の電子部品13に前記メインボード12とは反対側から対向するベース層23と、このベース層23の下方にキャビティ部24(図2,3参照)を形成するためのキャビティ層25とによって構成されている。
このキャビティ基板21は、樹脂基板、セラミック基板、Si基板など、どのような基材で作られたものでも使用することができる。すなわち、この明細書において、キャビティ基板21の断面図には樹脂のハッチングを施してあるが、キャビティ基板21の材料は樹脂材料に限定されることはない。
【0019】
前記ベース層23は、平面視において四角形の板状に形成されている。このベース層23は、図2に示すように、第1の電子部品13とは所定のクリアランスをおいて離間している。
前記キャビティ層25は、前記ベース層23から前記メインボード12に向けて延びるように形成されており、前記メインボード12に半田バンプ26などの接続材料で実装されている。キャビティ層25とメインボード12との間には、図2に示すように、補強樹脂17が充填されている。
【0020】
この実施例によるキャビティ層25は、図3(B)に示すように、メインボード12側から見てコ字状に形成されている。言い換えれば、前記キャビティ層25は、前記メインボード12側から見て、前記キャビティ部24の一部(一側部)を除いてキャビティ部24を囲む形状に形成されている。このようなキャビティ層25の内側に形成されているキャビティ部24は、キャビティ層25によって囲まれていない開口部24aを介してキャビティ部外の空間と連通されることになる。キャビティ層25の下面、すなわちメインボード12と対向する面には、その形成範囲の全域にわたって多数の半田バンプ26が設けられている。
【0021】
この実施例に示す第1の電子部品13は、図1および図2に示すように、前記開口部24aからキャビティ部24の外に突出する突出部13aを有している。このように第1の電子部品13の一部をキャビティ部24から突出させた理由は、補強樹脂17を浸透させる位置を視認できるようにするためである。BGAやCSPなど補強樹脂17が必要な電子部品は、その一端部を前記開口部24aから突出させるか、突出していなくても開口部24aの近傍に位置付けることにより、補強樹脂17を直接塗布することができ、半田バンプ16部分の接続の信頼性が高くなる。
【0022】
次に、この実施例による三次元実装構造11によってメインボード12上に第1、第2の電子部品13,14を実装する手順を図4および図5によって説明する。
先ず、図4に示すように、メインボード12上に半田ペースト27を印刷し、第1の電子部品13を搭載する。次に、第1の電子部品13の周囲の所定の位置にキャビティ基板21を搭載する。キャビティ基板21は、予め所定の形状に形成しておき、ベース層23の上に第2の電子部品14(電子部品18,19)を実装しておくことが望ましい。
【0023】
その後、メインボード12上にキャビティ基板21を搭載する。このとき、キャビティ基板21のキャビティ部24内に第1の電子部品13が収容されるように、キャビティ基板21を第1の電子部品13の上に被せる。このように第1の電子部品13とキャビティ基板21とをメインボード12に搭載した後、これらをまとめてリフロー炉(図示せず)に供給し、半田バンプ16,22,26を溶融、凝固させる。
【0024】
この結果、図5に示すように、メインボード12に第1の電子部品13とキャビティ基板21とが接続された状態となる。その後、補強樹脂17を塗布するものについては、図2中に矢印Aで示すように、キャビティ部24の前記開口部24aから、メインボード12と第1の電子部品13との間に補強樹脂17を浸透させて充填する。また、キャビティ基板21のキャビティ層25とメインボード12との間にも補強樹脂17を充填する。
【0025】
したがって、この実施例による三次元実装構造11においては、全ての電子部品をメインボード12に実装した後にメインボード12と第1の電子部品13との間に補強樹脂17を充分に充填することができる。この結果、この三次元実装構造11によれば、前記補強樹脂17を充分に充填できる構成を採りながら、全ての半田の溶融、凝固を1回のリフロー工程で行うことができるから、特許文献1に示す半導体パッケージに較べて製造が容易になる。
【0026】
また、この三次元実装構造11においては、キャビティ基板21と第1の電子部品13との間に補強樹脂17が半田バンプ接続用ランド(図示せず)に流れることを防ぐためのスペースを形成する必要がない。このため、この三次元実装構造11によれば、第1の電子部品13とキャビティ層25との間のクリアランスを狭く形成することができる。しかも、第1の電子部品13をメインボード12に直接実装できるから、キャビティ基板21をベース層23がメインボード12に近接して位置するように形成することができる。この結果、この実施例によれば、特許文献1記載の半導体パッケージより小型化された三次元実装構造を提供することができる。
【0027】
この実施例においては、前記メインボード12と第1の電子部品13との間に補強樹脂17が充填されている。このため、この実施例によれば、メインボード12と第1の電子部品13との間の接続の信頼性が高い三次元実装構造を提供することができる。
この実施例による三次元実装構造11において、前記キャビティ基板21のベース層23は、前記第1の電子部品13とは離間している。このため、メインボード12とキャビティ基板21との熱膨張率の差が大きくてもリフロー後に熱応力で反りが生じるようなことはない。したがって、この実施例によれば、第1の電子部品13やキャビティ基板21の実装不良が生じ難い三次元実装構造を提供することができる。
【0028】
この実施例による第1の電子部品13は、前記キャビティ部24の開口部24aからキャビティ部24の外に突出する突出部13aを有している。このため、この実施例によれば、補強樹脂17を浸透させる位置を目視で確認でき、この位置に補強樹脂供給用ノズルを接近させることができるから、補強樹脂17を確実に塗布することができる。
第1の電子部品13は、図6に示すように、その全体をキャビティ部24の内部に収容させることができる。この場合は、同図中に矢印Aで示すように、補強樹脂17を前記開口部24aからメインボード12と第1の電子部品13との間に少量ずつ浸透させることによって、前記同様に充分に補強樹脂17を充填することができる。
【0029】
(第2の実施例)
キャビティ基板には、図7〜図11に示すように、複数のキャビティ部を設けることができる。これらの図において、前記図1〜図6によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0030】
図7に示すキャビティ基板21は、同図においてベース層23の左右方向の中央部にキャビティ層25が設けられており、このキャビティ層25の両側にそれぞれキャビティ部24が形成されている。このキャビティ層25は、図8(B)に示すように、メインボード12側から見てH字型に形成されている。
【0031】
すなわち、この実施の形態においても、キャビティ層25は、メインボード12側から見て、キャビティ部24の一部(一側部)を除いてキャビティ部24を囲む形状に形成されている。この実施例に示す二つのキャビティ部24は、キャビティ層25によって囲まれていない開口部24aを介してそれぞれキャビティ部外の空間と連通されている。
このように複数のキャビティ部24を有するキャビティ基板21は、図9〜図11に示すように形成することができる。
【0032】
図9に示すキャビティ基板21のキャビティ層25は、メインボード12側から見て十字型に形成されている。図9に示すキャビティ基板21には、4つのキャビティ部24が形成されている。
図10に示すキャビティ基板21のキャビティ層25は、メインボード12側から見てT字型に形成されている。
図11に示すキャビティ基板21のキャビティ層25は、メインボード12側から見てX字型に形成されている。
【0033】
(第3の実施例)
本発明に係る三次元実装構造は、図12〜図15に示すように、第1の電子部品の両端部がキャビティ部から突出する構成を採ることができる。これらの図において、前記図1〜図11によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0034】
この実施例によるキャビティ基板21のキャビティ層25は、図15(B)に示すように、メインボード12側から見てニの字型に形成されている。すなわち、キャビティ基板21に形成されているキャビティ部24は、その両端部に形成されている開口部24a,24aを介してキャビティ部外の空間と連通されている。
【0035】
この実施例による第1の電子部品13の一端部と他端部とは、図12および図13に示すように、キャビティ部24の前記二つの開口部24a,24aからキャビティ部外にそれぞれ突出している。このため、補強樹脂17を塗布する作業は、前記二箇所の突出部分に補強樹脂供給用ノズルを接近させて目視しながら容易に行うことができる。なお、実装面積を少しでも削減したい場合は、キャビティ基板21の形成範囲の内側に第1の電子部品13の全体を収容させてもよい。この場合において補強樹脂17を塗布するに当たっては、前記開口部24aから補強樹脂17を少量ずつ浸透させ、第1の電子部品13とメインボード12との間に充填する。
【0036】
(第4の実施例)
本発明に係る三次元実装構造11は、図16に示すように、複数のキャビティ基板を用いて構成することができる。図16において、前記図1〜図15によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0037】
図16に示す三次元実装構造11は、第1のキャビティ基板31と、第2のキャビティ基板32とを備えている。第1のキャビティ基板31は、複数のキャビティ部24を有するもので、上述した第2の実施例において図8〜図11を用いて説明したもキャビティ基板21と同一のものである。第2のキャビティ基板32は、上述した第1の実施例において図3を用いて説明したキャビティ基板21と同一のものである。
【0038】
この実施例による三次元実装構造11においては、第1、第2のキャビティ基板31,32を互いに隣り合うように並べることによって形成されたキャビティ空間33内に第1の電子部品13が収容されている。このキャビティ空間33は、第1のキャビティ基板21に形成されているキャビティ部24の開口部24aと、第2のキャビティ基板21に形成されているキャビティ部24の開口部24aとを互いに対向させることによって形成されている。
【0039】
この相対的に広い空間からなるキャビティ空間33には、相対的に大型の第1の電子部品13が収容されている。この大型の第1の電子部品13とメインボード12との間に補強樹脂17を充填するためには、図14中に矢印Bで示すように、第1、第2のキャビティ基板31,32どうしの間に形成されている隙間34を通して行うことができる。
【0040】
上述した第1〜第4の実施例に示すキャビティ基板21と、第1、第2のキャビティ基板31,32とは、キャビティ部24の一部が切り欠かれた形状に形成されているから、後述するように実装面積を低減することができる。この理由を図17と図18とを用いて説明する。図17は、メインボード12上に実装した第1の電子部品13の周囲全域をキャビティ基板で覆う実装構造の一例を示す断面図である。同図において、前記図1〜図15によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
【0041】
図17に示すキャビティ基板21のキャビティ層25は、メインボード12側から見てロ字型に形成されている。通常、メインボード12上に実装した第1の電子部品13の周囲全域をキャビティ基板21のキャビティ層25で覆う場合、キャビティ層25の加工精度、キャビティ基板21とメインボード12のSR精度、表面実装時の搭載精度などを考慮し、図17に示すように、第1の電子部品13とキャビティ壁(キャビティ部24の内側壁)のクリアランスaや、キャビティ壁とはんだバンプランド間クリアランスbが必要となる。このクリアランスaとクリアランスbの合計値は、場合によっては1mm以上になるため、キャビティ基板21の外形が必要以上に大きくなってしまう。しかし、キャビティ層25の形状を、コの字、T字、ニの字型などに形成することにより、この無駄なスペースとなっているクリアランスを減らすことが可能となる。
【0042】
図18にはキャビティ層25の形状を、ロの字、コの字、T字、ニの字型にした場合の、接続端子数、実装可能なキャビティ部24の面積、キャビティ基板21の実装面積の比較例について示している。図18においては、接続端子が設けられる領域を左下がりのハッチングで示し、実装可能なキャビティ部24を右下がりのハッチングによって示している。クリアランス部分にはハッチングを施していない。
【0043】
図18において、1ブロックは、1辺が0.4mmのサイズを示している。図18は、0.4mmピッチで接続端子を並べた時の状態を示すように描いてある。実装可能なキャビティエリアと、接続端子との間は、前述したクリアランスを確保するために1.2mm(3ブロック)離している。また、接続端子数は、Min140ピン確保することを前提条件として試算している。
この試算結果を下記の表1に示す。この試算結果から、コの字、T字、ニの字については、ロの字に比べて、同等の接続端子数や実装可能なキャビティ部24面積を確保しながら、キャビティ基板21のサイズ(実装面積)を約10〜25%も削減できることが示されている。
【0044】
【表1】
このため、上述した各実施例に示すように、キャビティ基板21のキャビティ層25をメインボード12側から見てコの字、T字、ニの字のうちいずれか一つの形状に形成することによって、キャビティ層25がロ字型である場合に較べて、キャビティ基板21の外形(実装面積)を小さく形成することができる。また、キャビティ層25の形状がH字型、X字型、十字型の場合であっても、キャビティ部24の開口部24aには前記クリアランス部分が不要であるから、上記同様にキャビティ基板21の外形を小さく形成することができる。
【0045】
次に、上述した各実施例で示したキャビティ基板21を製造する方法を図19〜図24によって詳細に説明する。これらの図において、前記図1〜図15によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
上述した各実施例で示したキャビティ基板21を製造するためには、先ず、例えば図19に示すように、公知の技術を用いて基板母材41を製造する。この基板母材41には、電子部品収納用の複数のキャビティ部24が互いに直交する2方向にそれぞれ等間隔おいて並ぶように形成されている。この2方向とは、平面視において四角形となるように形成された基板母材41の互いに直交する2辺と平行な方向である。
【0046】
次に、前記基板母材41を図示していないダイサーによって後述するように切断する。このダイサーは、予め定めたダイシングライン(切断線)に沿って平行移動しながら基板母材41を切断する構造のものが用いられている。このダイサーによって基板母材41を切断するためには、図19〜図24に示すように、第1の切断線42と第2の切断線43とに沿ってダイサーを平行移動させて行う。
【0047】
上述した各実施例で示したキャビティ基板21のうち、キャビティ層25がメインボード12側から見てコ字型に形成されているキャビティ基板21を製造するためには、図19に示すように第1、第2の切断線42,43を位置付ける。
図19に示す第1の切断線42は、キャビティ部24どうしの間のみを通って延びている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともにキャビティ部24を横切っている。第2の切断線43がキャビティ部24を横切る位置は、キャビティ部24の一側部であって、平面視において内壁面24bと重なる位置である。
【0048】
基板母材41は、これらの第1、第2の切断線42,43に沿って切断されることにより、コ字型のキャビティ層25を有する複数のキャビティ基板21に分断される。
キャビティ層25が平面視においてH字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線43を図20に示すように位置付ける。図20に示す第1の切断線42は、キャビティ部24の中央部を横切るように位置付けられている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともにキャビティ部24どうしの間のみを通るように位置付けられている。
【0049】
キャビティ層25が平面視において十字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線42,43を図21に示すように位置付ける。図21に示す第1の切断線42は、キャビティ部24の中央部を横切るように位置付けられている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともにキャビティ部24の中央部を横切るように位置付けられている。
【0050】
キャビティ層25が平面視においてT字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線42,43を図22に示すように位置付ける。図22に示す第1の切断線42は、キャビティ部24の一側部であって、平面視において内壁面24bと重なる位置に位置付けられている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともにキャビティ部24の中央部を横切るように位置付けられている。
【0051】
キャビティ層25が平面視において二の字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線42,43を図23に示すように位置付ける。図23に示す第1の切断線42は、キャビティ部24どうしの間のみを通るように位置付けられている。また、第2の切断線43は、前記第1の切断線42とは直交する方向に延びるとともに、キャビティ部24の互いに対向する二側部であって、平面視において内壁面24bと重なる位置を通るように位置付けられている。
【0052】
キャビティ層25が平面視においてX字型を呈するキャビティ基板21を形成するためには、第1、第2の切断線42,43を図24に示すように位置付ける。図24に示す第1の切断線42は、キャビティ部24の二つの対角線のうち一方の対角線の上に位置付けられている。また、第2の切断線43は、第1の切断線42が横切っていない他のキャビティ部24の他方の対角線上に位置付けられている。
【0053】
基板母材41を上述したように切断するに当たって、キャビティ基板21の配線(図示せず)や第1、第2の42,切断線43の位置については、切断する位置を考慮して予め適切に設計しておく必要がある。具体的に説明すると、前記配線を引き回すエリアは、第1、第2の切断線42,43から十分離間するように形成する。図19〜図24に示すような特殊なキャビティ基板21をダイシングする場合、キャビティ部24の内壁面24bやキャビティ部24間の中央を狙って精度良く切断することが望まれるが、実際には基板の位置合わせ精度やダイサーの精度によって、多少切断位置がずれることが懸念される。
【0054】
この問題を解決する方法として、ダイサーのブレードとしてブレード幅(刃の幅)が十分厚いものを使うことが望ましい。この場合、配線引き回しエリアはダイシング時のブレード幅を考慮して第1、第2の切断線43から離間させておくことが望ましい。また、第1、第2の切断線42,43の線幅についても、十分な領域を確保しておくことが望ましい。
【0055】
上述したように基板母材41を分断してキャビティ基板21を製造する製造方法によれば、キャビティ部24の一部を除いてキャビティ部24を囲む形状のキャビティ層25を有するキャビティ基板21を簡単に製造することができる。
【0056】
なお、上述した各実施例においては、メインボード12と第1の電子部品13との間に補強樹脂17を塗布する例を示したが、補強樹脂17を塗布せず、実装面積を削減するためだけにこの三次元実装構造11を用いても良い。
【実施例1】
【0057】
上述した三次元実装構造11と製造方法の具体的な一例を説明する。先ず、メインボード12上にSnAgCuの鉛フリーハンダペーストを所定の位置に印刷する。続いて、0.3mm厚で、0.4mmピッチの半田バンプ端子を有する、6mm四方のWLCSPをメインボード12上にマウンターを用いて搭載する。
続いて、キャビティ基板21をWLCSPの周囲の所定の位置に搭載する。ここで、キャビティ基板21は、10mm四方のサイズとなっていて、8×7mmのキャビティを有するように、キャビティ層25がコの字型に加工されたものとする。キャビティ部24の内壁面24bとWLCSPとの間にはそれぞれ1mmのクリアランスが形成されている。
【0058】
キャビティ部24の深さは、WLCSPと接触しないように0.4mmの深さで形成しておく。キャビティ基板21のベース層23とキャビティ層25を合計した厚さは0.65mm程度とする。第1の電子部品13と、キャビティ基板21(第2の電子部品14が搭載されたもの)とを搭載したメインボード12は、最高250℃のリフロー炉に流し、半田を溶融させメインボード12とそれぞれ接続する。
【0059】
完成した三次元実装構造体に、最後に補強樹脂17を塗布する。補強樹脂17はまずWLCSPに充填するため、キャビティ基板21の開口部24aから露出しているWLCSPの一辺(6mm幅)に少量ずつ塗布する。補強樹脂17を塗布するノズルは、WLCSPから0.1〜0.5mm程度離れたところに移動させ、WLCSPに直接塗布する。
WLCSPの半田接続部に十分補強樹脂17が塗布された後、キャビティ基板21全体に補強樹脂17を塗布する。なお、WLCSPのサイズが小さかったり、浸透性が高い補強樹脂17を用いる場合には、WLCSPとキャビティ基板21に一括で補強樹脂17を塗布しても良い。なお、ここで説明した部品の各種設計値は、目的とする三次元実装構造11に合わせて、その都度最適になるよう設定することが望ましい。
【0060】
一方、キャビティ基板21を製造する工程で使用するダイサーは、そのブレード幅(刃の幅)が0.3〜0.8mmなど十分厚いものを使うことが望ましい。この場合、配線引き回しエリアはダイシングのブレード幅を考慮して第1、第2の切断線43から少なくとも片側0.2〜0.5mm程度、離しておくことが望ましい。またダイシングライン幅(第1、第2の切断線43の線幅)についても約0.3〜0.8mmと、十分な領域を確保しておくことが望ましい。
【符号の説明】
【0061】
12…メインボード、13…第1の電子部品、14…第2の電子部品、21…キャビティ基板、23…ベース層、24…キャビティ部、24a…開口部、25…キャビティ層、41…基板母材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン基板に実装された第1の電子部品を収容するキャビティ部を有し、前記メイン基板に実装されたキャビティ基板と、
前記キャビティ部における前記第1の電子部品とは反対側に実装された第2の電子部品とを備え、
前記キャビティ部は、前記第1の電子部品に前記メイン基板とは反対側から対向するベース層と、
前記ベース層から前記メイン基板に向けて延びて前記メイン基板に実装されたキャビティ層とによって形成され、
前記キャビティ層は、前記メイン基板側から見て、前記キャビティ部の一部を除いてキャビティ部を囲む形状に形成されていることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項2】
請求項1記載の電子部品の実装構造において、前記メイン基板と第1の電子部品との間には補強樹脂が充填されていることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の電子部品の実装構造において、前記キャビティ基板のベース層は、前記第1の電子部品とは離間していることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載の電子部品の実装構造において、前記第1の電子部品は、前記キャビティ部における前記キャビティ層によって囲まれていない開口部からキャビティ部の外に突出する突出部を有していることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載の電子部品の実装構造において、前記キャビティ層は、前記メイン基板側から見てコの字、ニの字、H字、X字、T字、十字形状のうちいずれか一つの形状に形成されていることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項6】
電子部品収容用の複数のキャビティ部が互いに直交する2方向にそれぞれ等間隔おいて並ぶように基板母材を形成するステップと、
前記基板母材を切断線が2方向に延びるように切断して個々のキャビティ基板に分断するステップとを有し、
前記2方向に延びる切断線のうち少なくとも一方の切断線は前記キャビティ部を横切ることを特徴とするキャビティ基板の製造方法。
【請求項1】
メイン基板に実装された第1の電子部品を収容するキャビティ部を有し、前記メイン基板に実装されたキャビティ基板と、
前記キャビティ部における前記第1の電子部品とは反対側に実装された第2の電子部品とを備え、
前記キャビティ部は、前記第1の電子部品に前記メイン基板とは反対側から対向するベース層と、
前記ベース層から前記メイン基板に向けて延びて前記メイン基板に実装されたキャビティ層とによって形成され、
前記キャビティ層は、前記メイン基板側から見て、前記キャビティ部の一部を除いてキャビティ部を囲む形状に形成されていることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項2】
請求項1記載の電子部品の実装構造において、前記メイン基板と第1の電子部品との間には補強樹脂が充填されていることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の電子部品の実装構造において、前記キャビティ基板のベース層は、前記第1の電子部品とは離間していることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちいずれか一つに記載の電子部品の実装構造において、前記第1の電子部品は、前記キャビティ部における前記キャビティ層によって囲まれていない開口部からキャビティ部の外に突出する突出部を有していることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちいずれか一つに記載の電子部品の実装構造において、前記キャビティ層は、前記メイン基板側から見てコの字、ニの字、H字、X字、T字、十字形状のうちいずれか一つの形状に形成されていることを特徴とする電子部品の実装構造。
【請求項6】
電子部品収容用の複数のキャビティ部が互いに直交する2方向にそれぞれ等間隔おいて並ぶように基板母材を形成するステップと、
前記基板母材を切断線が2方向に延びるように切断して個々のキャビティ基板に分断するステップとを有し、
前記2方向に延びる切断線のうち少なくとも一方の切断線は前記キャビティ部を横切ることを特徴とするキャビティ基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−155169(P2011−155169A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16296(P2010−16296)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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