説明

電子部品内蔵モジュール及び電子部品内蔵モジュールの製造方法

【課題】電子部品内蔵モジュールを実装する際の加熱により、電子部品内蔵モジュール内のはんだが溶融することに起因して発生するはんだの移動や飛散を抑制すること。
【解決手段】電子部品内蔵モジュール1は、電子部品2と、電子部品2が実装された基板3と、電子部品2及び基板3を覆う第1樹脂10と、第1樹脂10の表面を覆う第2樹脂4とを含む。第1樹脂10は、空隙を有する樹脂で構成される。そして、第1樹脂10は、基板3の表面の電子部品2が実装されている部分の厚さよりも電子部品2が実装されていない部分の厚さの方が大きくなるように構成される。第2樹脂4は、第1樹脂10よりも空隙率が低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を絶縁樹脂で覆った電子部品内蔵モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品内蔵モジュールは、複数の電子部品、例えば、受動素子や能動素子等をはんだによって基板に実装して、ひとまとまりの機能を持った電子部品としたものである。このような電子部品内蔵モジュールを電子機器の実装基板に実装する場合、電子部品内蔵モジュールの端子電極と基板の端子電極とをはんだで接合する。このとき、電子部品内蔵モジュール内の電子部品を基板に接合しているはんだが溶融し、はんだの移動や飛散等が発生することがある。特許文献1には、電子部品内蔵モジュールの封止樹脂の線膨張係数を所定範囲に規定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−234930号公報(0002〜0006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、封止樹脂の線膨張係数を所定範囲に規定することにより、封止樹脂の熱膨張による応力を減少させる。しかし、電子部品内蔵モジュールを実装基板へ実装する際のリフロー時に、電子部品内蔵モジュール内のはんだが飛び散ったり移動したりすることを抑制することについては改善の余地がある。本発明は、電子部品内蔵モジュールを実装する際の加熱により、電子部品内蔵モジュール内のはんだが溶融することに起因して発生するはんだの移動や飛散を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電子部品内蔵モジュールは、電子部品と、当該電子部品が実装された基板と、空隙を有する樹脂で構成されて、前記電子部品及び前記基板を覆うとともに、前記電子部品の、前記基板の表面と対向する側とは反対側における厚さよりも、前記基板表面の前記電子部品が実装されていない部分における厚さの方が大きい第1樹脂と、当該第1樹脂の表面を覆う、当該第1樹脂よりも空隙率の低い第2樹脂と、を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明は、電子部品及び基板を、空隙を有する第1樹脂で被覆し、さらに、第1樹脂を第2樹脂で覆うことにより、第1樹脂を介して電子部品を封止する。これによって、電子部品内蔵モジュールを電子機器の基板等へ実装する際の加熱によってはんだが溶融しても、はんだの移動や飛散の原因となる体積膨張は第1樹脂が有する空隙によって吸収される。その結果、電子部品内蔵モジュールを実装する際の加熱により、電子部品内蔵モジュール内のはんだが溶融することに起因して発生するはんだの移動や飛散を抑制できる。また、本発明は、はんだの移動や飛散に起因する電子部品の接触不良や短絡等の発生を極めて低く抑えることができるので、本発明に係る電子部品内蔵モジュールを用いて電子機器等を製造する場合、歩留の低下が抑制される。
【0007】
本発明の望ましい態様としては、前記電子部品は、はんだによって前記基板に実装されることが好ましい。これによって、電子部品内蔵モジュールを構成する電子部品を基板に接合するはんだの移動や飛散が抑制される。
【0008】
本発明の望ましい態様としては、前記第1樹脂は、前記電子部品が実装されていない部分で前記電子部品を前記基板に実装するはんだのフィレットを覆うことが好ましい。これによって、はんだのフィレットは、体積が大きくなる傾向にあるので、電子部品内蔵モジュールを実装する際の加熱によって多くのガスが前記フィレットから発生し、その結果、はんだの移動や飛散が発生しやすくなる。この構成によれば、第1樹脂がはんだのフィレットを覆うので、多量のガスが前記フィレットから発生しても、はんだの移動や飛散を抑制できる。
【0009】
本発明の望ましい態様としては、前記電子部品の前記基板に取り付けられる側とは反対側における前記第1樹脂の厚さは0であることが好ましい。これによって、電子部品からの熱を電子部品内蔵モジュールの外部へ逃がしやすくなる。また、電子部品内蔵モジュールの高さを抑制できる。
【0010】
本発明の望ましい態様としては、前記電子部品が実装されていない部分の前記第1樹脂は、前記基板に向かって前記電子部品の側面からの厚さが増加することが好ましい。通常、電子部品は、基板と対向する部分に設けられた端子電極、又は電子部品の側面に設けられた端子電極によって、基板の端子電極とはんだで接合される。このような構成によれば、電子部品の側面に必ず第1樹脂が設けられ、かつ第1樹脂は基板まで設けられることになるので、はんだを確実に覆うことができる。その結果、はんだの移動や飛散をより確実に抑制できる。
【0011】
本発明の望ましい態様としては、前記第1樹脂が有する前記空隙の大きさは、平均直径(D50)が0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。これによって、はんだの移動を確実に抑制できる。
【0012】
本発明の望ましい態様としては、前記第1樹脂の空隙率は、0.1%以上30%以下であることが好ましい。これによって、はんだの移動を十分に抑制できるとともに、第1樹脂の強度も確保できる。
【0013】
本発明の望ましい態様としては、前記第1樹脂は、平均直径(D50)が1μm以上10μm以下のフィラーを含むことが好ましい。これによって、はんだの移動を十分に抑制できるとともに、第1樹脂の強度も確保できる。
【0014】
本発明の望ましい態様としては、前記第2樹脂は、金属層で覆われることが好ましい。電子部品内蔵モジュールは、シールド層として金属層を表面(第2樹脂の表面)に有することが多い。この場合、電子部品内蔵モジュール内で発生した水蒸気やガスの逃げ場がなくなり、はんだの移動や飛散が発生しやすい環境となるが、空隙を有する第1樹脂によって、はんだの移動や飛散が抑制される。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法は、基板上に電子部品をはんだによって実装する実装工程と、フィラーが混入された第1樹脂の溶液を、前記基板に実装された電子部品及び前記基板に塗布する塗布工程と、少なくとも、前記電子部品の前記基板に取り付けられる側とは反対側に塗布された前記第1樹脂の溶液の厚さを減少させる膜厚減少工程と、前記第1樹脂を硬化させる第1硬化工程と、硬化後の前記第1樹脂を第2樹脂で覆う被覆工程と、前記第2樹脂を硬化させる第2硬化工程と、を含むことを特徴とする。これによって、はんだが溶融することに起因して発生するはんだの移動や飛散を抑制できる電子部品内蔵モジュールを製造できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、電子部品内蔵モジュールを実装する際の加熱により、電子部品内蔵モジュール内のはんだが溶融することに起因して発生するはんだの移動や飛散を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの断面図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールを基板に取り付けた状態を示す側面図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールを構成する第1樹脂の構造を示す模式図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールにおいて、電子部品を第1樹脂が覆う構造を示す拡大図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールにおいて、電子部品を第1樹脂が覆う構造を示す拡大図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【図7−1】図7−1は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法の説明図である。
【図7−2】図7−2は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法の説明図である。
【図7−3】図7−3は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法の説明図である。
【図7−4】図7−4は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法の説明図である。
【図7−5】図7−5は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法の説明図である。
【図7−6】図7−6は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法の説明図である。
【図8−1】図8−1は、第1樹脂を形成する方法の一例を示す図である。
【図8−2】図8−2は、第1樹脂を形成する方法の一例を示す図である。
【図9−1】図9−1は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法において、電子部品の表面に第1樹脂を形成しない場合の製造方法を示す説明図である。
【図9−2】図9−2は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法において、電子部品の表面に第1樹脂を形成しない場合の製造方法を示す説明図である。
【図9−3】図9−3は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法において、電子部品の表面に第1樹脂を形成しない場合の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態は、本発明を限定するものではない。また、下記の実施形態で開示された構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0019】
図1は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの断面図である。図2は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールを基板に取り付けた状態を示す側面図である。図3は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールを構成する第1樹脂の構造を示す模式図である。図1に示すように、電子部品内蔵モジュール1は、複数の電子部品2を基板(モジュール基板)3に実装して、一まとまりの機能を持つ電子部品としたものである。
【0020】
電子部品内蔵モジュール1を構成する電子部品2としては、例えば、コイルやコンデンサ、あるいは抵抗等の受動素子があるが、ダイオードやトランジスタ等の能動素子やIC(Integral Circuit)等も、電子部品2としてモジュール基板3の表面やモジュール基板3内に実装されてもよい。電子部品2は、これらに限定されるものではない。本実施形態では、コンデンサ2C、IC2P、抵抗2Rがモジュール基板3に実装されるが、以下においては、必要に応じて、適宜コンデンサ2C、IC2P、抵抗2Rを電子部品2という。
【0021】
図1に示すように、電子部品内蔵モジュール1は、電子部品2が実装されるモジュール基板3と、電子部品2及びモジュール基板3を覆う第1樹脂10と、第1樹脂10の表面を覆う第2樹脂4と、第2樹脂4を被覆するシールド層5と、を含んで構成される。電子部品2の端子電極とモジュール基板3の端子電極とは、はんだ6によって接合される。これによって、電子部品2がモジュール基板3に実装される。少なくとも第1樹脂10には、電気絶縁性を有するもの(絶縁樹脂)が用いられる。第2樹脂4も、電気絶縁性を有するものが好ましい。本実施形態では、いずれも電気絶縁性を有する絶縁樹脂を用いる。
【0022】
図1に示すように、電子部品内蔵モジュール1は、モジュール基板3に実装された電子部品2及び電子部品2が実装される側のモジュール基板3の表面(部品実装面という)が第1樹脂10で覆われる。そして、第1樹脂10は、第2樹脂4で覆われる。このように、電子部品内蔵モジュール1は、第2樹脂4によって第1樹脂10を介して複数の電子部品2及び部品実装面を覆うことで、モジュール基板3及び複数の電子部品2を一体化するとともに、強度が確保される。また、電子部品内蔵モジュール1は、第1樹脂10で複数の電子部品2及び部品実装面を覆うことで、電子部品内蔵モジュール1を実装する際のリフローにおいて、はんだの移動や飛散を抑制する。
【0023】
複数の電子部品2を覆った第2樹脂4の表面には、シールド層5が形成される。本実施形態において、シールド層5は導電材料(導電性を有する材料であり、本実施形態では金属)で構成されている。本実施形態では、シールド層5は単数の導電材料で構成されてもよいし、複数の導電材料の層で構成されてもよい。シールド層5は、第2樹脂4の表面を被覆することにより、第2樹脂4の内部に封入された電子部品2を電子部品内蔵モジュール1の外部からの高周波ノイズや電磁波等から遮蔽したり、電子部品2から放射される高周波ノイズ等を遮蔽したりする。このように、シールド層5は、電磁気シールドとして機能する。本実施形態において、シールド層5は、第2樹脂4の表面全体を被覆している。しかし、シールド層5は、電磁気シールドとして必要な機能を発揮できるように第2樹脂4を被覆すればよく、必ずしも第2樹脂4の表面全体を被覆する必要はない。したがって、シールド層5は、第2樹脂4の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。また、シールド層5を設ける必要がない場合は、これを設けなくてもよい。
【0024】
モジュール基板3は、部品実装面の反対側に、端子電極(モジュール端子電極)7を有する。モジュール端子電極7は、電子部品内蔵モジュール1が備える電子部品2と電気的に接続されるとともに、図2に示す、電子部品内蔵モジュール1が取り付けられる基板(電子機器が備える基板であり、以下、実装基板という)8の端子電極(実装基板端子電極)9とはんだ6によって接合される。これによって、電子部品内蔵モジュール1は、実装基板8に取り付けられるとともに、電子部品2と実装基板8との間で電気信号や電力をやり取りする。
【0025】
図2に示す実装基板8は、電子部品内蔵モジュール1が実装される基板であり、例えば、電子機器(車載電子機器、携帯電子機器等)に搭載される。実装基板8に電子部品内蔵モジュール1を実装する場合、例えば、実装基板端子電極9にはんだ6を含むはんだペーストを印刷し、実装装置(マウンタ)を用いて電子部品内蔵モジュール1を実装基板8に搭載する。そして、電子部品内蔵モジュール1が搭載された実装基板8をリフロー炉に入れて前記はんだペーストを加熱することにより、前記はんだペースト中のはんだ6を溶融させる。はんだ6が溶解し、その後硬化することによりモジュール端子電極7と実装基板端子電極9とが接合される。その後、電子部品内蔵モジュール1や実装基板8の表面に付着したフラックスが洗浄されて、電子部品内蔵モジュール1が実装基板8に実装される。
【0026】
電子部品内蔵モジュール1は、電子部品2を第2樹脂4で被覆されて封止されるので、電子部品2をモジュール基板3へ接合するはんだ6も第2樹脂4で被覆され、封止される。その結果、第2樹脂4で封止されているはんだ6は、二次実装時のリフロー(電子部品内蔵モジュール1を実装基板8に実装する際のリフロー)によって再び溶融してしまう。このとき、第2樹脂4中の水分に起因して発生する水蒸気や、再溶融したはんだ6あるいはフラックスの残渣から発生するガスに起因した力により、第2樹脂4で封止されているはんだ6がモジュール基板3の部品実装面と第2樹脂4との隙間を移動したり、飛散したりしてしまう。また、二次実装時のリフローによってはんだ6が溶融する際に膨張して、はんだ6が急激に動くことがある。
【0027】
本実施形態において、電子部品内蔵モジュール1は、第2樹脂4と電子部品2及びモジュール基板3との間に、図3に示すように空隙11を有する第1樹脂10が配置されており、第1樹脂10も電子部品2及びこれを接合するはんだ6を被覆する。電子部品内蔵モジュール1は、空隙11を有する第1樹脂10で電子部品2及びこれを接合するはんだ6を被覆しているので、二次実装時のリフローでは、空隙11が二次実装時におけるリフローの熱によって膨張する。膨張した空隙11は、第2樹脂4中の水分に起因する水蒸気、及びはんだ6から発生するガスを吸収できるので、はんだ6の移動や飛散を抑制する作用が得られる。
【0028】
特に、電子部品内蔵モジュール1がシールド層5によって密封される場合、水蒸気や蒸発したフラックスの残渣、あるいははんだ6から発生するガスは電子部品内蔵モジュール1内に閉じ込められ、はんだ6の移動や飛散が発生しやすい環境になる。しかし、電子部品内蔵モジュール1を構成する第1樹脂10の空隙11は、電子部品内蔵モジュール1内で発生した水蒸気やガスを効果的に吸収するので、はんだ6の移動や飛散を効果的に抑制できる。このように、本実施形態は、電子部品内蔵モジュール1がシールド層5を有する場合において、特に好ましい。
【0029】
第1樹脂10を覆う第2樹脂4は、第1樹脂10よりも空隙率が低い。空隙率は、単位体積あたりに存在する空隙11の体積の割合(vol%)である。第2樹脂4の空隙率を第1樹脂10よりも低くすることにより、第2樹脂4は第1樹脂10よりも強固になる。このような第2樹脂4によって、電子部品2を第1樹脂10とともにモジュール基板3へ封止して、電子部品内蔵モジュール1の十分な強度を確保する。第2樹脂4の空隙率は0%であってもよい。
【0030】
第1樹脂10を構成する空隙11は、例えば、第1樹脂10の基材となる樹脂にフィラーを添加して硬化させることにより、フィラー同士の隙間に樹脂が配合されて形成される。空隙率が0.1vol%以下になると気体の急激な膨張や溶解したはんだ6の急激な動きに起因する熱衝撃の緩和効果が得られず、二次実装時におけるリフローの際にはんだ6が移動してしまい、短絡や電子部品2の接触不良等を引き起こすおそれがある。
【0031】
空隙率が30vol%以上になると、第1樹脂10の強度が低下し、クラック等を生じやすくなるおそれがあるとともに、空隙11がつながりやすくなる結果、空隙11が管状に形成される。このため、二次実装時におけるリフローの際に、溶融したはんだ6が管状の空隙11に沿って生じるおそれがある。一方、空隙率を10vol%以内にすると、空隙11同士のつながりが低減され、溶融したはんだ6の移動がより抑制されるので好ましい。このように、はんだ6の移動や飛散を効果的に抑制するためには、第1樹脂10の空隙率は0.1vol%以上30vol%以下が好ましく、0.1vol%以上10vol%以下がより好ましい。
【0032】
図3に示す空隙11の平均直径(D50)で0.1μmよりも小さくなると、溶融したはんだ6の移動を抑制するための十分な効果が得られず、短絡や電子部品2の接触不良を引き起こすおそれがある。空隙11の平均直径(D50)で3μm以上になると、空隙11の中でも大きいものに溶融したはんだ6が移動することがあるが、10μm以下であれば電子部品内蔵モジュール1を構成する電子部品2の短絡や電気的特性に対しては特段の問題ない。空隙11の平均直径(D50)で0.1μm以上10μm以下の範囲であれば、溶融したはんだ6の移動を十分に抑制できる。このため、はんだ6の移動や飛散を効果的に抑制する観点から、空隙11の平均直径(D50)で0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.1μm以上3μm以下がより好ましい。また、空隙11の分布は、D50/(D90−D10)を0.1以上0.8以下とすることが好ましい。これによって、第1樹脂10内でのフィラーの分散や空隙11の分散が改善される。なお、平均直径(D50)は複数の空隙11の直径を測定した場合において、積算値50%の直径であり(メジアン径)、D90は積算値90%の直径でありD10は積算値10%の直径である。
【0033】
空隙11の平均直径は、完成した電子部品内蔵モジュール1を適切な位置で切断し、切断面をイオンミリングすることで樹脂ダレのない面を作製し、その切断面の任意の3箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真撮影して得られた画像から求めた。本実施形態において倍率は3000倍とした。空隙11の分布は、前記画像から求めたD50と累積度数直径の10%に該当するD10と90%に該当するD90とから規定した。空隙率は、完成した電子部品内蔵モジュール1を適切な位置で切断し、切断面をイオンミリングすることで樹脂ダレのない面を作製し、その切断面をSEM(倍率は3000倍)で写真撮影して得られた画像から求めた。得られた画像は、空隙のみが黒くなるように二値価処理され、空隙の体積比として空隙率を算出した。本実施形態においては、得られた画像の全面積に占める空隙の面積の割合を空隙の体積比とみなす。
【0034】
図4、図5は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールにおいて、電子部品を第1樹脂が覆う構造を示す拡大図である。電子部品内蔵モジュール1は、第1樹脂10で電子部品2及びモジュール基板3を覆う。図4に示すように、第1樹脂10は、電子部品反基板側RDでの厚さ(ta)よりも、非実装部分NDの厚さ(ts1、ts2、ts3、tt1、tt2、tt3)の方が大きい構造である。電子部品反基板側RDは、電子部品2の、モジュール基板3(より具体的にはモジュール基板3の表面(基板表面)3P)と対向する側とは反対側である。非実装部分NDは、電子部品2が実装されていない部分である。なお、基板表面3Pと電子部品2との間に第1樹脂10は存在しなくてもよい。
【0035】
電子部品反基板側RDにおける第1樹脂10は、電子部品2の基板表面3Pと対向する側(電子部品2がモジュール基板3に取り付けられる側であり、底面)2Bとは反対側(上面)2Tの表面に存在する。電子部品反基板側RDにおける第1樹脂10の厚さを非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さよりも小さくすることで、電子部品2からの熱を放出させやすくなる。特に、電子部品2が能動素子(例えば、IC2P)である場合、放熱量が大きくなるために有利である。
【0036】
図5に示すように、電子部品反基板側RDにおける第1樹脂10の厚さtaは0であってもよい。これによって、電子部品2からの放熱をより促進させることができる。また、電子部品反基板側RDにおける第1樹脂10の厚さを非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さよりも小さくすることにより、電子部品内蔵モジュール1の高さを小さくできるので、部品の低背化に好適である。
【0037】
非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さ(ts1、ts2、ts3、tt1、tt2、tt3)を電子部品反基板側RDよりも大きくすることで、電子部品2をモジュール基板3の端子電極(基板端子電極)3Tに接合するはんだ6を、第1樹脂10で確実に覆うことができる。これによって二次実装時のリフローによってはんだ6が加熱された際に、非実装部分NDの第1樹脂10の空隙11(図3参照)がはんだ6から発生するガスを効果的に吸収するとともに、はんだ6の溶融・膨張による熱衝撃を吸収できるので、はんだ6の移動や飛散をより確実に抑制できる。
【0038】
例えば、IC2Pは、底面2Bに端子電極(部品端子電極)2TBを有しており、部品端子電極2TBと基板端子電極3Tとがはんだ6によって接合される。第1樹脂10を上記構造とすることにより、このはんだ6が非実装部分NDに存在する第1樹脂10で確実に覆われる。これによって、非実装部分NDの第1樹脂10は、二次実装時のリフローにおいてはんだ6から発生するガスやはんだ6による熱衝撃を効果的に吸収して、はんだ6の移動や飛散をより確実に抑制できる。
【0039】
図4、図5に示すコンデンサ2Cは、両端部に設けられた部品端子電極2TSの端面2STと基板端子電極3Tとがはんだ6によって接合される。このような接合形態では、はんだ6はフィレット6fを形成する。第1樹脂10を上記構造とすることにより、非実装部分NDに存在する第1樹脂10はフィレット6f全体を覆う。これによって、第1樹脂10は、二次実装時のリフローにおいてはんだ6から発生するガスやはんだ6による熱衝撃を効果的に吸収して、はんだ6の移動や飛散をより確実に抑制できる。
【0040】
図4、図5に示すように、非実装部分NDは、電子部品2が存在しない部分である。非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さを電子部品反基板側RDよりも大きくすると、非実装部分NDにおける第1樹脂10を覆う第2樹脂4の厚さを電子部品反基板側RDよりも大きくすることができる。これによって、非実装部分NDにおいては、第1樹脂10を、より強度の高い第2樹脂4で支持する構造になるので、二次実装時のリフローにおいてはんだ6からの熱衝撃を第1樹脂10が受けた場合でも、その移動を第2樹脂4が確実に規制できる。その結果、はんだ6の移動や飛散をより確実に抑制できる。
【0041】
本実施形態において、電子部品反基板側RDにおける第1樹脂10の厚さ(ta)、及び非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さ(ts1、ts2、ts3、tt1、tt2、tt3)は、原則として、いずれも電子部品2の表面(上面2T、側面2S、部品端子電極2TSの端面2ST等)に直交する方向における寸法とする。この場合、非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さは、電子部品2の側面2Sから、第1樹脂10の谷底部10B(非実装部分NDにおける第1樹脂10の表面と基板表面3Pとの距離が最も小さくなる部分)の位置までの距離が最大値となる。
【0042】
本実施形態において、非実装部分NDにおける第1樹脂10は、モジュール基板3に向かって電子部品2の側面2S(電子部品2が部品端子電極2TSを有する場合は、その端面2STが電子部品2の側面に相当する)からの厚さが増加する。例えば、図4、図5に示す例において、電子部品2がIC2Pである場合、側面2Sからの厚さ、すなわち、側面2Sに直交する方向の寸法が、ts1<ts2<ts3となる。このように構成することで、非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さを電子部品反基板側RDよりも大きくする構造を確実に実現できる。また、非実装部分NDにおいては、第1樹脂10の厚さが電子部品2の上面2Tからモジュール基板3に向かって厚くなるので、電子部品2は第1樹脂10によって安定してモジュール基板3へ支持される。
【0043】
なお、非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さは、モジュール基板3の基板表面3Pに直交する方向における寸法(tt1、tt2、tt3)としてもよい。この場合、非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さは、電子部品2から離れるにしたがって減少する。すなわち、図4に示す例では、tt1>tt2>tt3となる。この場合、非実装部分NDにおける第1樹脂10の厚さは、第1樹脂10の谷底部10Bにおける厚さが最小値となる。次に、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法を説明する。次の説明は一例であって、他の方法によって電子部品内蔵モジュール1を製造してもよい。
【0044】
図6は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法を示すフローチャートである。図7−1〜図7−6は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法の説明図である。図8−1、図8−2は、第1樹脂を形成する方法の一例を示す図である。電子部品内蔵モジュール1を製造するにあたり、ステップS1において、図7−1に示すモジュール基板3に電子部品2を実装する(実装工程)。この状態を、モジュール素体3Aという。
【0045】
モジュール素体3Aは、例えば、次のような手順で作製される。
(1)モジュール基板3の端子電極にはんだ6を含むはんだペーストを印刷する。
(2)実装装置(マウンタ)を用いて電子部品2をモジュール基板3に搭載する。
(3)電子部品2が搭載されたモジュール基板3をリフロー炉に入れて前記はんだペーストを加熱することにより、前記はんだペーストのはんだ6が溶融し、その後硬化することにより電子部品2の端子電極とモジュール基板3の端子電極とを接合する。
(4)電子部品2やモジュール基板3の表面に付着したフラックスを洗浄する。
【0046】
次に、モジュール素体3Aが完成したら、ステップS2へ進み、図7−2に示すように、モジュール素体3Aの電子部品2及びモジュール基板3を第1樹脂10で被覆する。電子部品2及びモジュール基板3を被覆する第1樹脂10は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂であるが、これに限定されない)にフィラー(例えば、シリカやアルミナ)を添加して硬化させる。これによって、第1樹脂10には、フィラー同士の隙間に樹脂が配合されて空隙11が形成される。第1樹脂10は、熱硬化性樹脂の溶液にフィラーを添加して作製した第1樹脂溶液を、ディップ法やスピンコート法等によってモジュール素体3Aの表面に塗布し(塗布工程)、熱硬化させることで電子部品2及びモジュール基板3を被覆する。
【0047】
第1樹脂10を形成する熱硬化性樹脂の硬化前における分子量は100〜1000が好ましい。熱硬化性樹脂の硬化前における分子量が高すぎると、硬化前における熱硬化性樹脂の粘性が高くなりすぎる結果、第1樹脂10の膜厚を均一に形成することが難しくなる。また、前記分子量が低すぎると、硬化前における熱硬化性樹脂の粘性が低下し、電子部品2の近傍に熱硬化性樹脂が留まらず流れてしまう。したがって、第1樹脂10を形成する熱硬化性樹脂の硬化前における分子量は前記範囲が好ましい。
【0048】
第1樹脂10に含まれるフィラーは、球形状に近いものが好ましい。このようなフィラーを用いれば、第1樹脂10に含まれる空隙11の寸法、形状、分布を制御しやすいからである。しかし、フィラーの形状は、このようなものに限定されるものではない。第1樹脂10に含まれるフィラーは、平均直径(D50)を1μm以上10μm以下とすることが好ましく、2μm以上7μm以下とすることがより好ましい。また、フィラーの粒度分布は、D50/(D90-D10)を0.1〜0.8の範囲とすることが好ましい。このようにすれば、第1樹脂10内におけるフィラーや空隙11が均等に分散しやすくなる。なお、平均直径(D50)は複数のフィラーの直径を測定した場合において、積算値50%の直径であり(メジアン径)、D90は積算値90%の直径でありD10は積算値10%の直径である。フィラーの粒度分布は、粒度分布計で測定した数平均値(メジアン径)D50と累積度数粒径の10%に該当するD10と90%に該当するD90とから規定した。
【0049】
フィラーの種類は、電子部品内蔵モジュール1を構成する電子部品2や回路の電気的特性に影響を及ばさないものであれば特に限定されるものではないが、第1樹脂10を構成する熱硬化性樹脂に対して分散性がよいものであることが好ましい。例えば、平均直径が1μmより小さいフィラーを使用すると比表面積が大きくなることから必要とする熱硬化性樹脂の量が増加し、空隙率が小さくなる結果、はんだ6の移動や飛散を抑制する作用が低減する。また平均直径が10μmより大きいフィラーを使用すると、モジュール素体3Aの表面に塗布する際の膜厚を厚くしなくてはならない。さらに、形成された第1樹脂10の強度が低下し、クラックが発生しやすくなるおそれや、空隙11が大きくなりはんだの移動や飛散を抑制する作用が低減するおそれがある。
【0050】
フィラーは、大きい平均直径(D50)のフィラーを加えてもよい。また、フィラーの平均直径(D50)は、10μm以上50μm以下であることが好ましい。大きい平均直径(D50)のフィラーの添加量は、フィラーの全添加量に対して5体積%以上30体積%以下であることが好ましい。このように、平均直径の異なるフィラーを混合することによって、フィラー同士のパッキング状態の調整が可能になる。そして、適切な樹脂配合により、所望の空隙直径、空隙分布を実現しやすくなる。平均直径の異なるフィラーを用いる場合、すべて同じ種類のフィラーを用いてもよく、異なる種類(組成)のフィラーを用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0051】
図8−1は、ディップ法によってモジュール素体3Aの表面に第1樹脂溶液10Lを塗布する例を示している。この方法は、溶液槽に満たされた第1樹脂溶液10Lへモジュール素体3Aを浸漬する塗布工程と、モジュール素体3Aを引き上げた後、余分の第1樹脂溶液10Lを除去することによって、電子部品2の上面2Tに塗布された第1樹脂溶液10Lの厚さを少なくとも減少させる膜厚減少工程とを含む。余分の第1樹脂溶液10Lを除去する場合、超音波等によってモジュール素体3Aに振動を与えてもよい。これによって、効率よく余分の第1樹脂溶液10Lを除去し、第1樹脂溶液10Lの膜厚を減少させることができる。
【0052】
図8−2は、スピンコート法によってモジュール素体3Aの表面に第1樹脂溶液10Lを塗布する例を示している。この方法は、テーブルコーターやカーテンコーター等を用いて第1樹脂溶液10Lをモジュール素体3Aに塗布する塗布工程と、モジュール素体3Aをスピンコーター20の回転テーブル21に載置して、これを回転させることにより、電子部品2の上面2Tに塗布された第1樹脂溶液10Lの厚さを少なくとも減少させる膜厚減少工程とを含む。膜厚減少工程においては、比較的低い回転速度で回転テーブル21を回転させることにより、モジュール素体3Aの表面に塗布された第1樹脂溶液10Lの膜厚が均一になるようにする。
【0053】
スピンコート法は、余分な第1樹脂溶液10Lを確実に除去しやすい方法なので、図4、図5に示す、第1樹脂10の電子部品反基板側RDにおける厚さよりも非実装部分NDの厚さの方を大きくした構造を構成しやすい。また、スピンコート法は、電子部品2によりモジュール素体3Aの表面が凹凸形状である場合でも、第1樹脂10の前記構造を構成しやすい手法である。すなわち、スピンコート法によれば、余分な第1樹脂溶液10Lを確実に除去して、電子部品2の上面2Tや隣接する電子部品2の間に、適切な量の第1樹脂溶液10Lを残すことができる。なお、モジュール素体3Aの表面に第1樹脂溶液10Lを塗布する方法はこれらに限定されるものではない。
【0054】
モジュール素体3Aの表面に第1樹脂溶液10Lが塗布されたら、所定の時間加熱して熱硬化性樹脂を硬化させる(第1硬化工程)。これによって、モジュール素体3Aの表面に第1樹脂10が形成される。次に、ステップS3に進み、図7−3に示すように、第1樹脂10を第2樹脂4で被覆する。第2樹脂4は、例えば、エポキシ樹脂で構成される。本実施形態では、エポキシ樹脂のシート状材料を第1樹脂10の表面に載置して(被覆工程)、これを真空槽内で熱プレスすることにより、第2樹脂4を硬化させる(第2硬化工程)。これによって、第2樹脂4で第1樹脂10の表面を被覆する。その結果、電子部品2は、第1樹脂10を介して第2樹脂4によって封止される。この状態を、封止体3Bという。
【0055】
次に、ステップS4に進み、図7−4に示すように、封止体3Bのモジュール基板3を、電子部品内蔵モジュール1の単位(図7−4のC1で区画される単位)で途中まで切断する(ハーフダイス)。この場合、第2樹脂4及び第1樹脂10も電子部品内蔵モジュール1の単位で同時に切断される。その後、ステップS5に進み、図7−5に示すように、ハーフダイス後の封止体3Bの表面にシールド層5を形成する。この状態を、モジュール集合体3Cという。シールド層5は、例えば、無電解めっきで銅の第1層を形成した後、電解めっきで銅の第2層を形成し、さらに防錆層としてNiの層を電解めっきで形成することにより得られる。なお、シールド層5は必要に応じて形成される。
【0056】
シールド層5が形成されたら、ステップS6へ進み、モジュール集合体3Cのモジュール基板3を、電子部品内蔵モジュール1の単位(図7−5のC1で区画される単位)で完全に切断する。これによって、図7−6に示す電子部品内蔵モジュール1となる。電子部品内蔵モジュール1は、ステップS7で検査されて、検査に合格したものが製品となる。上述した手順が、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法の手順であり、これら手順によって第1樹脂10を有する電子部品内蔵モジュール1を製造できる。
【0057】
このようにして製造された電子部品内蔵モジュール1は、第1樹脂10がシールド層5の外部に露出していない。空隙11を有する第1樹脂10が電子部品内蔵モジュール1の外部に露出していると、第1樹脂10が外部からの水分の導入口になるおそれがある。しかし、本実施形態のように、第2樹脂4の表面にシールド層5を形成することにより、第1樹脂10がシールド層5で覆われるので、水分の導入口は存在しなくなる。その結果、電子部品内蔵モジュール1の内部への水分の浸入は極めて低く抑えられるので、第1樹脂10や第2樹脂4にクラック等が発生するおそれは極めて低くなる。これによって、電子部品内蔵モジュール1の耐久性が向上する。
【0058】
また、ステップS4のハーフダイスによって第1樹脂10の一部が第2樹脂4の表面に現れるが、第1樹脂10の空隙11によって表面積が増加するためにシールド層5と第1樹脂10との密着性が向上する。その結果、シールド層5を形成する場合には、シールド層5の保形効果が高くなるという利点もある。シールド層5を設ける場合、第1樹脂10がシールド層5と接触しないようにしてもよいが、一枚の基板から多数の電子部品内蔵モジュール1を製造する場合には、このような構成は困難である。
【0059】
本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法は、ハーフダイスによって第1樹脂10の一部が第2樹脂4の表面に現れるが、シールド層5を設けることにより、第2樹脂4の表面に現れた第1樹脂10を覆うことができる。その結果、完成した電子部品内蔵モジュール1は、内部への水分の導入口がなくなるので、上述したように、電子部品内蔵モジュール1の耐久性が向上する。
【0060】
図9−1〜図9−3は、本実施形態に係る電子部品内蔵モジュールの製造方法において、電子部品の表面に第1樹脂を形成しない場合の製造方法を示す説明図である。図5に示したように、電子部品2の上面2Tに第1樹脂10を設けない場合には、ステップS2における膜厚減少工程で、電子部品2の上面2Tから第1樹脂溶液10Lを除去する(膜厚を0にする)必要がある。例えば、図9−1に示すように、第1樹脂溶液10Lが塗布された電子部品2の上面2T上で、吸収ローラー23を転動させることによって、第1樹脂溶液10Lを吸収ローラー23で除去する。吸収ローラー23は、例えば、多孔質材料(ウレタン樹脂等)を外周部に有するものである。
【0061】
これによって、図9−2に示すように、電子部品2の上面2T上から第1樹脂溶液10Lが除去されて、電子部品反基板側RD(電子部品2の上面2T側に相当)には第1樹脂溶液10Lが存在せず、非実装部分NDには第1樹脂溶液10Lが存在する状態となる。この後、第1樹脂溶液10Lを熱硬化させ、上述したステップS3からステップS6を実行することにより、図9−3に示すような、電子部品2の上面2Tに第1樹脂10を設けない電子部品内蔵モジュール1aを製造できる。
【0062】
以上、本実施形態では、電子部品内蔵モジュールにおいて、電子部品及び基板を、空隙を有する第1樹脂で被覆し、さらに、第1樹脂を第2樹脂で覆うことにより、第1樹脂を介して電子部品を封止する。電子部品内蔵モジュールが、二次実装される際のリフローによって加熱されると、内部のはんだが溶融することにより、はんだの溶融・膨張によりはんだが移動や飛散したり、フラックス残渣や吸湿水分の蒸発による体積膨張によって溶融した半田が移動や飛散したりするといった現象が発生することがある。
【0063】
本実施形態では、電子部品を被覆する第1樹脂に、電子部品内蔵モジュール内の体積変化を吸収したり、内部で発生したガスを吸収したりする空隙を設ける。これによって、二次実装される際のリフローによってはんだが溶融しても、はんだの移動や飛散の原因となる体積膨張は第1樹脂が有する空隙によって吸収される。その結果、電子部品内蔵モジュールを実装する際の加熱により、電子部品内蔵モジュール内のはんだが溶融することに起因して発生するはんだの移動や飛散を抑制できる。
【0064】
(評価)
上述した第1樹脂10を有する電子部品内蔵モジュール1(図1参照)を作製し、はんだの移動、及び第1樹脂10の強度を評価した。第1樹脂10を形成するために、エポキシ樹脂の溶液に各種の球状フィラーを配合し、溶剤で希釈した樹脂溶液を用意した。電子部品2を実装したモジュール基板3に前記樹脂溶液をディップ法で塗布し、室温で2時間乾燥、150℃で1時間熱硬化させて第1樹脂10で電子部品2及びモジュール基板3を被覆した。これに、第2樹脂4を構成する樹脂シートを真空熱プレスで圧着し、150℃で1時間熱硬化させることにより、第1樹脂10を介して電子部品2及びモジュール基板3を第2樹脂4で被覆した。このようにして、評価用の電子部品内蔵モジュール(以下、評価体という)を作製した。
【0065】
はんだ移動の評価方法を説明する。評価体をリフロー炉で加熱し、透過X線を用いてリフロー後における評価体内のはんだの移動を観察した。はんだの移動が確認されたものは移動あり、移動していないものは移動なしとして判断した。一つの空隙率や空隙の平均直径等といった条件に対して電子部品内蔵モジュール1を複数個作成し、すべての評価体に対するはんだの移動が確認されたものの割合を(%)で評価した。リフローの条件は次の通りである。
【0066】
乾燥のための前処理として、評価体を125℃の環境に24時間放置した。次に、吸湿のための前処理として、乾燥後における評価体を60℃、相対湿度60%の環境に120時間放置した。その後、次の条件でリフローした。乾燥及び吸湿後における評価体をリフロー炉内に入れた後、炉内温度を150℃まで上昇させ、その後、120秒かけて180℃まで上昇させる。炉内温度を230℃まで上昇させてリフローを開始し、リフロー中は、炉内温度が230度以上かつ最高温度が260±3℃となるように30秒間保持する。その後、評価体をリフロー炉内から取り出して、リフローが完了する。
【0067】
(第1評価例)
平均直径が3μmの球状フィラーを用いて、空隙率の異なる第1樹脂10を有する評価体をそれぞれ作製した。評価結果を表1に示す。空隙率は、表1に示すように変化させた。なお、空隙の平均直径は0.7μmである。空隙の平均直径はD50の値である。第1評価例では、はんだの移動、第1樹脂10の強度を評価した。第1樹脂10の強度は、クラックの有無で評価した。第1樹脂10のクラックは、透過X線により観察した。表1から分かるように、空隙率が0.1%よりも小さくなると、はんだ6の移動を十分に抑制できない。また、空隙率が40%になると、第1樹脂10の強度が不足する。このことから、空隙率は、0.1%以上30%以下が好ましい。
【0068】
【表1】

【0069】
(第2評価例)
平均直径が1μm、3μm、5μm、7μm、30μmのフィラーから一つ、又は少なくとも二つの配合比率を変更することにより、空隙の平均直径が異なる第1樹脂10を有する評価体をそれぞれ作製した。空隙の平均直径は、表2に示すように変化させた。空隙の平均直径はD50の値である。評価結果を表2に示す。表2から分かるように、空隙の平均直径が0.1μmよりも小さくなると、はんだ6の移動を抑制できない。また、空隙の平均直径が20μmになると、はんだ6の移動を十分に抑制できない。このことから、空隙の平均直径は、0.1μm以上10μm以下が好ましい。
【0070】
【表2】

【0071】
(第3評価例)
平均直径が1μm、3μm、5μm、7μm、30μmのフィラーから一つ、又は少なくとも二つの配合比率を変更することにより、フィラーの平均直径が異なる第1樹脂10を有する評価体をそれぞれ作製した。フィラーの平均直径は、表3に示すように変化させた。フィラーの平均直径はD50の値である。評価結果を表3示す。表3から分かるように、フィラーの平均直径(D50)が1μmよりも小さくなると、はんだ6の移動を十分に抑制できない。また、フィラーの平均直径(D50)が15μmになると、第1樹脂10の強度が不足する。このことから、フィラーの平均直径(D50)は、1μm以上10μm以下が好ましい。
【0072】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明に係る電子部品内蔵モジュール及び電子部品内蔵モジュールの製造方法は、電子部品内蔵モジュール内の電子部品を接合するはんだの移動や飛散を抑制することに有用である。
【符号の説明】
【0074】
1、1a 電子部品内蔵モジュール
2 電子部品
2B 底面
2C コンデンサ
2R 抵抗
2S 側面
2ST 端面
2T 上面
2TB、2TS 部品端子電極
3 モジュール基板(基板)
3A モジュール素体
3B 封止体
3C モジュール集合体
3P 基板表面
3T 基板端子電極
4 第2樹脂
5 シールド層
6 はんだ
6f フィレット
7 モジュール端子電極
8 実装基板
9 実装基板端子電極
10 第1樹脂
10B 谷底部
10L 第1樹脂溶液
11 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、
当該電子部品が実装された基板と、
空隙を有する樹脂で構成されて、前記電子部品及び前記基板を覆うとともに、前記電子部品の、前記基板と対向する側とは反対側における厚さよりも、前記基板表面の前記電子部品が実装されていない部分における厚さの方が大きい第1樹脂と、
当該第1樹脂の表面を覆う、当該第1樹脂よりも空隙率の低い第2樹脂と、
を含む電子部品内蔵モジュール。
【請求項2】
前記電子部品は、はんだによって前記基板に実装される請求項1に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項3】
前記第1樹脂は、前記電子部品が実装されていない部分で前記電子部品を前記基板に実装するはんだのフィレットを覆う請求項2に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項4】
前記電子部品の前記基板に取り付けられる側とは反対側における前記第1樹脂の厚さは0である請求項1から3のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項5】
前記電子部品が実装されていない部分の前記第1樹脂は、前記基板に向かって前記電子部品の側面からの厚さが増加する請求項1から4のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項6】
前記第1樹脂が有する前記空隙の大きさは、平均直径(D50)が0.1μm以上10μm以下である請求項1から5のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項7】
前記空隙の大きさの分布は、前記第1樹脂の空隙率は、0.1%以上30%以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項8】
前記第1樹脂は、平均直径(D50)が1μm以上10μm以下のフィラーを含む請求項1から7のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項9】
前記第2樹脂は、金属層で覆われる請求項1から8のいずれか1項に記載の電子部品内蔵モジュール。
【請求項10】
基板上に電子部品をはんだによって実装する実装工程と、
フィラーが混入された第1樹脂の溶液を、前記基板に実装された電子部品及び前記基板に塗布する塗布工程と、
少なくとも、前記電子部品の前記基板に取り付けられる側とは反対側に塗布された前記第1樹脂の溶液の厚さを減少させる膜厚減少工程と、
前記第1樹脂を硬化させる第1硬化工程と、
硬化後の前記第1樹脂を第2樹脂で覆う被覆工程と、
前記第2樹脂を硬化させる第2硬化工程と、
を含む電子部品内蔵モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図7−5】
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【図7−6】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【公開番号】特開2011−171436(P2011−171436A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32521(P2010−32521)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】