説明

電子部品実装装置および電子部品実装装置におけるペースト転写方法

【課題】塗膜形成ステージにおけるペーストの残量管理を適正に行って、ペーストの転写品質を安定させることができる電子部品実装装置および電子部品実装装置におけるペースト転写方法を提供することを目的とする。
【解決手段】塗膜形成面24aにフラックス25の塗膜を形成するスキージ28aと、塗膜形成面24aのフラックス25を掻き寄せるスクレーパ29aの間に検出方向を塗膜形成面24aに向けて配設された光センサ14によってフラックス25の凸状部25aを検出することにより、塗膜形成ステージ24へのフラックス25の補給の要否を判断するペースト残量検出手段を備え、スクレーパ29aによる掻取り動作に際し、塗膜形成ステージ24が移動開始した後に光センサ14によってフラックス25を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品にペーストを転写して基板に実装する電子部品実装装置およびペースト転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子などの電子部品を回路基板に実装する形態として、半導体素子を樹脂基板に実装した半導体パッケージを半田バンプを介して回路基板に半田接合により実装する方法が用いられるようになっている。半田バンプを介して電子部品を基板に接合する半田接合においては、フラックスや半田ペーストなどの半田接合補助剤を半田バンプに供給した状態で半田バンプを基板の電極に着地させることが行われている。
【0003】
このためこのような半導体パッケージを対象とする電子部品実装装置には、フラックスや半田ペーストを転写するためのペースト転写装置が配置される。このようなペースト転写装置として、部品供給部に装着されるパーツフィーダと装着互換性を持たせた形式のペースト転写装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献に示す例においては、塗膜形成面を有する矩形形状の塗膜形成ステージを往復動させることにより、塗膜形成面と所定の膜形成隙間だけ隔てて配設された成膜スキージによってペーストの塗膜を形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−108884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の特許文献例を含め、塗膜形成ステージをスキージに対して往復動させる直動型のペースト転写装置には、その構成に起因して塗膜形成ステージにおけるペーストの残量を適正に検出することが難しいという課題があった。すなわち一般にペースト残量の検出は、塗膜形成ステージ上にスキージによって塗膜を形成する成膜動作においてスキージによって押しのけられるローリング状態のペーストの残留量を光センサによって検出することによって行われる。
【0006】
ところが直動型のペースト転写装置においては、塗膜形成ステージ上にスキージによって塗膜を形成する成膜動作と、転写に供された後に再度成膜動作を行う前に塗膜形成ステージ上のペーストを掻き寄せる掻寄せ動作を反復して実行する必要があることから、成膜動作終了時にはスキージはペーストを掻き寄せるスクレーパに極く近接した位置にある。このため、スキージによって押しのけられたペースとの残量がそのまま正常な塗膜形成を継続するのに十分な残留量であるか否かを光センサによって検出することが難しく、ペーストの適正な残量管理が困難でペーストの転写品質が安定しないという課題があった。
【0007】
そこで本発明は、塗膜形成ステージにおけるペーストの残量管理を適正に行って、ペーストの転写品質を安定させることができる電子部品実装装置および電子部品実装装置におけるペースト転写方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子部品実装装置は、部品供給部から搭載ヘッドによって電子部品を取り出して基板に移送搭載する電子部品実装装置であって、前記搭載ヘッドに保持された電子部品に転写により塗布されるペーストを塗膜の状態で供給するペースト転写装置を備え、前記ペースト転写装置は、上面に前記塗膜を形成するための塗膜形成面が形成された矩形形状の塗膜形成ステージと、前記塗膜形成ステージを往復動させるステージ駆動手段と、前記塗膜形成面との間に膜形成隙間を保って配設され、塗膜形成ステージの往復動により前記塗膜を形成するスキージと、前記塗膜形成面に当接し、塗膜形成ステージの往復動により塗膜形成面上のペーストを掻き寄せるスクレーパと、前記スキージと前記スクレーパとの間に検出方向を前記塗膜形成面に向けて配設された光センサによって前記ペーストの残量を検出して補給の要否を判断するペースト残量検出手段とを備え、前記ペースト残量検出手段は、前記スクレーパによるペーストの掻寄せ動作に際し、前記塗膜形成ステージが移動開始した後に前記光センサによってペーストを検出する。
【0009】
本発明の電子部品実装装置におけるペースト転写方法は、部品供給部から搭載ヘッドによって電子部品を取り出して基板に移送搭載する電子部品実装装置に装備されたペースト転写装置によって、前記搭載ヘッドに保持された電子部品に転写により塗布されるペーストを塗膜の状態で供給する電子部品実装装置におけるペースト転写方法であって、前記ペースト転写装置は、上面に前記塗膜を形成するための塗膜形成面が形成された矩形形状の塗膜形成ステージと、前記塗膜形成ステージを往復動させるステージ駆動手段と、前記塗膜形成面との間に膜形成隙間を保って配設され、塗膜形成ステージの往復動により前記塗膜を形成するスキージと、前記塗膜形成面に当接し、塗膜形成ステージの往復動により塗膜形成面上のペーストを掻き寄せるスクレーパと、前記スキージと前記スクレーパとの間に検出方向を前記塗膜形成面に向けて配設された光センサによって、前記ペーストの残量を検出して補給の要否を判断するペースト残量検出手段とを備え、前記ペースト残量検出手段は、前記スクレーパによるペーストの掻寄せ動作に際し、前記塗膜形成ステージが移動開始した後に前記光センサによってペーストを検出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗膜形成ステージの往復動により塗膜を形成するスキージと、塗膜形成面上のペーストを掻き寄せるスクレーパとを備えたペースト転写装置において、スキージとスクレーパとの間に検出方向を塗膜形成面に向けて配設された光センサによってペーストの残量を検出して補給の要否を判断するペースト残量検出手段を備え、スクレーパによるペーストの掻寄せ動作に際し、塗膜形成ステージが移動開始した後に光センサによってペーストを検出することにより、スキージの先端部近傍のペーストを光センサで検出することが困難な構成にあっても、塗膜形成ステージにおけるペーストの残量管理を適正に行って、ペーストの転写品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置の平面図
【図2】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置に用いられるペースト転写ユニットの斜視図
【図3】本発明の一実施の形態の電子部品実装装置に用いられるペースト転写ユニットの構造説明図
【図4】本発明の一実施の形態のペースト転写装置の動作説明図
【図5】本発明の一実施の形態のペースト転写装置の動作説明図
【図6】本発明の一実施の形態のペースト転写装置の動作説明図
【図7】本発明の一実施の形態のペースト転写装置におけるペースト供給要否判断の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1、図2を参照して電子部品実装装置の構造を説明する。図1において、電子部品実装装置1の基台1aには、X方向(基板搬送方向)に基板搬送機構2が配設されている。基板搬送機構2は部品実装作業の対象となる基板3を搬送する。基板搬送機構2の両側に電子部品を供給する部品供給部が配設されており、一方側の部品供給部4Aには、テープに保持された電子部品を供給する複数のテープフィーダ6およびテープフィーダ6などの他のパーツフィーダと装着互換性を有するペースト転写ユニット7(ペースト転写装置)が、テープフィーダ6と並列して着脱自在に装着されている。ペースト転写ユニット7は、以下に説明する搭載ヘッド10に保持された電子部品に転写により塗布されるフラックス(ペースト)を、塗膜の状態で供給する機能を有するものである。他方側の部品供給部4Bには、電子部品を収納したトレイ5aを供給するトレイフィーダ5がセットされる。
【0013】
基台1aのX方向の1端部には、基板搬送機構2と直交するY方向にY軸テーブル8が配設されている。Y軸テーブル8には2基のX軸テーブル9A,9BがY方向の移動自在に結合されており、X軸テーブル9A,9Bには搭載ヘッド10が装着されている。X軸テーブル9A,Y軸テーブル8を駆動することにより、搭載ヘッド10は下部に装着されたノズル10a(図2参照)によって部品供給部4Aのテープフィーダ6から電子部品Pをピックアップし、基板搬送機構2に位置決め保持された基板3に移送搭載する。また同様にX軸テーブル9B,Y軸テーブル8を駆動することにより、搭載ヘッド10は部品供給部4Bのトレイフィーダ5に保持されたトレイ5aから電子部品Pをピックアップし、基板搬送機構2に位置決め保持された基板3に移送搭載する。
【0014】
X軸テーブル9A,9Bには搭載ヘッド10と一体的に移動する基板認識カメラ11が装備されており、搭載ヘッド10が基板3の上方に移動することにより、基板認識カメラ11もともに移動して基板3を撮像する。基台1aにおいてそれぞれの部品供給部4と基板搬送機構2との間には、部品認識カメラ12およびノズルストッカ13が配設されている。ノズルストッカ13は搭載ヘッド10に装着されるノズル10aを複数の部品種について収納しており、搭載ヘッド10をノズルストッカ13にアクセスさせて所定のノズル交換動作を実行させることにより、搭載ヘッド10におけるノズル10aを部品種に応じて交換することができる。
【0015】
電子部品Pを保持した搭載ヘッド10を部品認識カメラ12の上方でX方向に相対移動させることにより、部品認識カメラ12は電子部品Pの画像を下方から読み取り、これにより搭載ヘッド10に保持された状態における電子部品Pの種類や形状が認識される。搭載ヘッド10による電子部品Pの搭載動作においては、基板認識カメラ11による基板認識結果と、部品認識カメラ12による部品認識結果を加味して基板3における搭載位置の補正が行われる。
【0016】
次に図3,図4を参照して、ペースト転写ユニット7の構造を説明する。図3に示すように、ペースト転写ユニット7は長尺形状のベース部20に以下に説明する各部を設けた構成となっており、ベース部20は部品供給部4Aに設けられたフィーダベース16(図3(a)参照)にY方向に長手方向を合わせて、搭載ヘッド10のアクセス方向(矢印a)の反対側から着脱自在に装着される。なお本明細書においては、搭載ヘッド10のアクセス側を前側とし、その反対方向を後側と定義している。
【0017】
ペースト転写ユニット7は他のテープフィーダ6と同様にフィーダベース16と係合してベース部20を固定するための係合部20aが設けられており、さらに係合部20aから後方にはハンドル21が突出して設けられている。ペースト転写ユニット7をフィーダベース16に装着する際には、ベース部20の下面側をフィーダベース16の上面に沿わせ、ハンドル21を把持して前方に押し込むことにより、係合部20aがフィーダベース16の後端部に係合し、これによりベース部20は所定位置に装着される。
【0018】
ベース部20の上面にはガイドレール22が長手方向に配設されており、ガイドレール22にスライド自在に嵌着したスライダ23は塗膜形成ステージ24の下面に固着されている。図3に示すように、塗膜形成ステージ24の下面に結合されたナット34には送りねじ32が螺号しており、送りねじ32はベース部20の後端部側に配置されたモータ31によって回転駆動される。したがってモータ31を駆動することにより、塗膜形成ステージ24はベース部20の上面において長手方向に往復動する。
【0019】
すなわち、ガイドレール22、スライダ23、ナット34、送りねじ32、モータ31は、塗膜形成ステージ24をベース部20に対して長手方向に往復動させるステージ駆動手段となっている。このスキージ駆動手段は、作業者の安全を確保するため安全カバー33で覆われている。ここで、ステージ駆動手段の駆動源としてのモータ31を搭載ヘッド10のアクセス方向の反対側に配置した構成となっており、これにより、搭載ヘッド10による部品搭載動作における搭載ヘッド10のペースト転写ユニット7へのアクセスが阻害されることがない。
【0020】
塗膜形成ステージ24は矩形状部材の上面側に底面が平滑な凹部を形成した構造であり、この凹部の底面はフラックス25の塗膜を形成するための塗膜形成面24aとなっている。そして、塗膜形成面24aの前側の端部には、搭載ヘッド10に保持された電子部品Pにフラックス25の塗膜を転写する転写エリア26が設定されている。ここで、転写エリア26のサイズは、搭載ヘッド10の複数(ここでは8個)のノズル10aに保持された複数の電子部品Pに対して、一括してフラックス25を転写することができるように設定されている。このとき、塗膜形成ステージ24は矩形形状であることから、塗膜形成ステージ24の幅寸法に対して極力大きな転写エリア26を設定することができ、ペースト転写ユニット7の全体幅を極力小さくすることが可能となっている。
【0021】
塗膜形成ステージ24の上方において、転写エリア26の後方であって搭載ヘッド10との干渉が生じない位置には、成膜スキージユニット28および掻寄せユニット29が配置されており、さらに成膜スキージユニット28および掻寄せユニット29の間には、ペースト供給シリンジ30のニードル30aが挿入配置されている。成膜スキージユニット28は、ベース部20に立設されたブラケット27によって保持されており、これにより、ベース部20に対して水平方向の位置が固定された形態となっている。
【0022】
成膜スキージユニット28の詳細構造について、図3(a)、(b)を参照して説明する。なお図3(b)は、図3(a)におけるA断面を示している。図3(a)において、成膜スキージユニット28は、下方に延出して下端部が塗膜形成面24aとの間に膜形成隙間g(図4(a)参照)を保って配設されたスキージ28aを備えており、スキージ28aは連結部材35に結合されている。連結部材35はブラケット27にスライドユニット37を介して装着されており、したがってスキージ28aはブラケット27に対して上下動自在となっている。
【0023】
塗膜形成面24aにフラックス25が供給された状態の塗膜形成ステージ24を前述のステージ駆動手段によってY方向に水平移動させることにより、スキージ28aは塗膜形成面24aにおいてフラックス25を延展して膜形成隙間gに応じた厚みの塗膜を形成する。そして塗膜形成後の塗膜形成ステージ24を搭載ヘッド10によるアクセス方向側へ移動させることにより、図3に示すように、フラックス25の塗膜が形成された転写エリア26を搭載ヘッド10によるペーストの転写動作位置に位置させることができる。
【0024】
掻寄せユニット29は下方に延出したスクレーパ29aを備えている。スクレーパ29aは下方に付勢されて、塗膜形成ステージ24の高さ位置に関わらず常に塗膜形成面24aに当接した状態にある。塗膜形成ステージ24をステージ駆動手段によってY方向に往復動させることにより、スクレーパ29aは塗膜形成ステージ24上のフラックス25を掻き寄せる。
【0025】
塗膜形成ステージ24の上方には、反射式の光センサ14が、スキージ28aとスクレーパ29aとの間に検査光軸14aによる検出方向を塗膜形成面24aに向けて配設されている。光センサ14は検査光を塗膜形成面24aに照射し、その反射光を受光する。この受光信号を検出処理部15によって検出処理することにより、塗膜形成面24aにおけるフラックス25の残量を検出する。そしてこの検出結果を制御・駆動ユニット45が受信することにより、フラックス25の補給の要否を判断する。
【0026】
したがって、光センサ14、検出処理部15および制御・駆動ユニット45は、スキージ28aとスクレーパ29aとの間に検出方向を塗膜形成面24aに向けて配設された光センサ14によってペーストであるフラックス25の残量を検出して補給の要否を判断するペースト残量検出手段を構成する。このペースト残量検出手段は、後述するように、スクレーパ29aによるフラックス25の掻取り動作に際し、塗膜形成ステージ24が移動開始した後に光センサ14によってフラックス25を検出するようになっている。そしてペースト残量検出手段によりフラックス25の補給が必要と判断された場合には、ペースト供給シリンジ30およびニードル30aより成るペースト供給手段によって、塗膜形成ステージ24にフラックス25を供給する。
【0027】
連結部材35には上下方向に配設された昇降部材36が結合されており、ベース部20の内部に貫入した昇降部材36の下端部には、カムフォロア38が結合されている。ベース部20の内部にはモータ40が水平姿勢で配設されており、モータ40の回転軸に結合された円板カム39は、カムフォロア38に当接している。この状態でモータ40を回転駆動することにより、昇降部材36は円板カム39のカム特性にしたがって昇降し、これによりスキージ28aは塗膜形成面24aに対して昇降する。
【0028】
すなわち、昇降部材36、カムフォロア38、円板カム39、モータ40はスキージ28aの上下方向の位置を調整するスキージ位置調整手段となっており、後述する成膜動作において、スキージ28aの上下方向の位置を調整して、スキージ28aの下端部と塗膜形成面24aとの間の膜形成隙間を変更することができ、これにより塗膜形成面24aにおけるフラックス25の塗膜の厚さが可変となっている。なお、スキージ位置調整手段として、ここではカムフォロア38と円板カム39とを組み合わせたカム機構を採用しているが、昇降部材36を任意に昇降させることが可能な直動機構であれば、カム機構以外の駆動方式を用いることができる。
【0029】
図3(a)に示すように、ベース部20の下面側に設けられた係合部20aには、ユニット側接続部41を構成するエアカプラ41a、電気コネクタ41bが設けられており、エアカプラ41a、電気コネクタ41bは、それぞれエア配管、電気配線によってペースト転写ユニット7に内蔵された制御・駆動ユニット45に接続されている。制御・駆動ユニット45は、ステージ駆動手段の駆動源であるモータ31や成膜スキージユニット28の駆動源であるモータ40の制御・駆動、ペースト供給シリンジ30からフラックス25を吐出させるための圧空の供給や制御、さらに光センサ14、検出処理部15による塗膜形成面24aにおけるフラックス25の補給要否の判断を行う機能を有している。
【0030】
フィーダベース16の後端部には、エアカプラ42a、電気コネクタ42bより成るベース側接続部42を備えており、エアカプラ42a、電気コネクタ42bは、それぞれエア配管、電気配線によって制御・電源部43、圧空供給源44と接続されている。ペースト転写ユニット7をフィーダベース16に沿って前方にスライドさせて装着した状態では、ユニット側接続部41はベース側接続部42に嵌合する。これにより制御・電源部43が制御・駆動ユニット45と電気的に接続され、さらに制御・駆動ユニット45には圧空供給源44から圧空が供給可能となる。そしてペースト転写ユニット7を後方へスライドさせることによりこれらの接続が遮断される。
【0031】
すなわちペースト転写ユニット7は、フィーダベース16に設けられたベース側接続部42と接続され、制御信号の伝達や動力の供給を行うユニット側接続部41を備えた構成となっている。これによりペースト転写ユニット7のフィーダベース16への装着動作のみで、別途接続作業を行うことなく、制御・駆動ユニット45には制御・電源部43からの制御信号の伝達および駆動電力の供給がなされ、また圧空供給源44からは駆動用の圧空が制御・駆動ユニット45に対して供給される。
【0032】
次に図4、図5を参照して、ペースト転写ユニット7によって行われる成膜動作および掻寄せ動作について説明する。まず図4(a)は、塗膜形成ステージ24が後退位置にあって、成膜動作の開始前にスキージ28a、スクレーパ29aが塗膜形成面24aにおいて成膜開始側の端部(この例では右端部)に位置し、スキージ28a、スクレーパ29aの間にニードル30aを介してフラックス25が供給された状態を示している。成膜動作の開始に際してはスキージ28aの下端部と塗膜形成面24aとの間の膜形成隙間gを、電子部品Pのバンプにフラックス25を転写するのに適正な膜厚tに設定する。
【0033】
次いで、ステージ移動手段を駆動して、図4(b)に示すように、塗膜形成ステージ24を前進させる(矢印b)。これにより、塗膜形成面24a上においてフラックス25がスキージ28aによって延展され、塗膜形成面24aには膜厚tの塗膜が形成される。そして図4(c)に示すように、複数のノズル10aに電子部品Pを保持した搭載ヘッド10が塗膜形成ステージ24上に移動し、ここでノズル10aを昇降させて(矢印c)転写動作を行うことにより、電子部品Pのバンプにはフラックス25が転写により塗布される。
【0034】
この後、フラックス25の掻寄せ動作が行われる。すなわち、図4(d)に示すように、スキージ28aを上昇(矢印d)させた状態で、塗膜形成ステージ24を後退させる(矢印e)。これにより、塗膜形成面24a上に存在するフラックス25はスクレーパ29aによって一方側に掻き寄せられ、スキージ28aとスクレーパ29aとの間に溜められ、これにより図4(a)に示す状態に戻る。そしてこの後、成膜動作と掻寄せ動作が同様に反復して実行される。
【0035】
図5、図6は、図4に示す成膜動作および掻寄せ動作を反復する過程において実行される光センサ14によるフラックス25の検出方法を示すものである。図5(a)は、図4(c)に示す状態、すなわち塗膜形成面24aのフラックス25を電子部品Pに転写した後、スクレーパ29aによるフラックス25の掻取り動作を開始する前の状態を示している。この状態において、塗膜形成面24aに十分なフラックス25の残量が存在する場合には、成膜動作によってスキージ28aによって延展されずに押しのけられたフラックス25が、スキージ28aのスキージング方向の側面に付着して盛り上がった状態にある。
【0036】
この状態で掻き寄せ動作を開始する際には、まず図5(b)に示すように、スキージ28aを上昇させる(矢印f)。このとき、スキージ28aの側面に付着していたフラックス25もともに付着状態で上昇する。この後、図5(c)に示すように、塗膜形成ステージ24を後退方向(矢印g)に移動させることにより、スキージ28aに付着状態のフラックス25が塗膜形成ステージ24の移動によってスキージ28aへの付着状態から離脱する。
【0037】
離脱したフラックス25は、塗膜形成面24a上でフラックス25が部分的に上方に凸出した形状の凸状部25aを形成する。そしてこの凸状部25aは、光センサ14によって検出される。すなわち光センサ14から投射された検査光は凸状部25aによって反射され、その反射光を光センサ14が受光して出力される受光信号を検出処理部15が検出処理することにより、フラックス25の残量が検出される。
【0038】
図6(a)は、スクレーパ29aによるフラックス25の掻取り動作を開始する前の状態において、塗膜形成面24aに残留するフラックス25の残量が少なく、成膜動作によってスキージ28aによって延展されずに押しのけられたフラックス25がわずかとなった状態を示している。この状態で掻き寄せ動作を開始する際には、まず図6(b)に示すように、スキージ28aを上昇させる(矢印f)。このとき、スキージ28aの下面に付着していたフラックス25もともに付着状態で上昇する。この後、図6(c)に示すように、塗膜形成ステージ24を後退方向(矢印g)に移動させることにより、スキージ28aに付着状態のフラックス25が塗膜形成ステージ24の移動によってスキージ28aへの付着状態から離脱する。離脱したフラックス25は、塗膜形成面24a上でフラックス25が部分的に上方に凸出した形状の凸状部25aを形成する。
【0039】
そしてこの凸状部25aは、光センサ14によって検出される。すなわち光センサ14から投射された検査光は凸状部25aによって反射され、その反射光を光センサ14が受光して出力される受光信号を検出処理部15が検出処理することにより、フラックス25の残量が検出される。図6に示す例のように、塗膜形成面24aに残留するフラックス25の残量が少なくて残量検出が困難な場合にあっても、本実施の形態においては凸状部25aを検出対象としていることから、フラックス25が残量していることを確実に検出することができる。したがって、不必要にペースト補給を実行することに起因する無駄を排して、ペースト消耗量を減少させることが可能となっている。
【0040】
すなわち図5,図6に示す例において、光センサ14は、スキージ28aに付着状態のフラックス25が塗膜形成ステージ24の移動により付着状態から離脱することによって塗膜形成面24aに形成されたフラックス25の凸状部25aを検出する。そしてこの凸状部25aの検出状態により、塗膜形成面24aにおけるフラックス25の残量が十分か否か、すなわちフラックス25の補給要否が判断される。本実施の形態においては、このペースト残量検出は、スクレーパ29aによるフラックス25の掻取り動作に際し、塗膜形成ステージ24が移動開始した後に光センサ14によってフラックス25を検出することにより行われる。そして光センサ14によるフラックス25の検出は、予め検出エリアAとして塗膜形成面24aに設定された範囲を検査光軸14aが走査する時間内においてのみ行うようにしている。
【0041】
次に図7を参照して、光センサ14による凸状部25aの検出結果に基づいて行われるフラックス25(ペースト)補給要否判断について説明する。この判断処理は制御・駆動ユニット45の制御処理機能によって行われ、制御・駆動ユニット45は検出処理部15によって検出処理された結果を受信して、所定の判断アルゴリズムに基づきフラックス25補給要否を判断する。
【0042】
図7において、ステージ位置変位欄50は、掻寄せ動作における塗膜形成ステージ24の移動変位量の経時変化を直線Gによって示している。すなわち、塗膜形成ステージ24が前進端に位置している状態は、図5(a)、(b)、図6(a)、(b)の状態に対応している。そして図5(b)、図6(b)に示すようにスキージ28aが上昇した後、タイミングtaにて塗膜形成ステージ24が後進端へ向けて移動を開始し、タイミングtbにて後進端に到達する。
【0043】
本実施の形態では、塗膜形成ステージ24が移動するタイミングta〜タイミングtbにおいて、光センサ14はタイミングtaから塗膜形成面24aに設定される検出エリアAに対応する監視対象時間が経過するタイミングtcまでの時間内においてのみ、換言すれば、塗膜形成ステージ24が移動開始から検出エリアAとして設定された所定距離だけ移動するまでの時間内においてのみ、光センサ14によってフラックス25を検出するようにしている。
【0044】
このように、塗膜形成面24aにおいて検出対象となる検出エリアAを限定することは、以下のような技術的意義を有している。すなわち、ペースト転写ユニット7において転写対象となるペーストの種類はフラックス25に限定されず、例えばクリーム半田なども対象となる。ところがフラックス25が半透明体であるのに対し、クリーム半田には半田粒子が含有されているため灰色を呈しており、光センサ14の検出対象とする場合の光反射特性が大きく異なる。例えば、フラックス25の場合には、盛り上がった形状の凸状部25aを形成している場合においてのみフラックス25が検出される。これに対し、クリーム半田の場合には、塗膜形成面24aの表面に薄い塗膜状態で存在している場合にあっても光センサ14によって検出される。
【0045】
本実施の形態においては、ペーストの検出目的は残量が適正で補給を要するか否かを判断するためであることから、単なる薄膜状態で存在するペーストが検出された結果、補給不要と判断される事態を排除する必要がある。このため、ここでは図5(c)に示すように、ペーストが単なる薄膜状態で存在すると推定される範囲を光センサ14による検出対象から除外し、凸状部25aが存在する可能性のある検出エリアAのみを監視対象としている。この検出エリアAは、ペースト転写ユニット7において実際に対象となるペーストについて転写動作を反復して試行した結果に基づき設定される。
【0046】
センサ検出応答パターン欄51は、上述の監視対象時間における光センサ14の検出結果に基づいてペースト補給要否を判断する基準を示している。ここでは、ペーストであるフラックス25の残量を光センサ14の検出応答時間の長短によって判断するようにしており、予め設定されたしきい値T以上か未満かによって、フラックス25の補給要否を判断する。すなわち、第1パターン51aは、フラックス25の残量が十分である場合の光センサ14の検出応答パターンを示しており、検出応答時間t1がしきい値Tを超えていることから補給不要と判断される。これに対し、第2パターン51bは、フラックス25の残量が少ない場合の光センサ14の検出応答パターンを示しており、検出応答時間t2がしきい値Tを下回っていることから補給要と判断される。そしてこのように補給要と判断されたならば、ペースト供給手段であるペースト供給シリンジ30によって、塗膜形成ステージ24にフラックス25を供給するペースト補給が実行される。
【0047】
上記説明したように、本実施の形態に示す電子部品実装装置および電子部品実装装置におけるペースト転写方法においては、塗膜形成ステージ24の往復動により塗膜を形成するスキージ28aと、塗膜形成面24a上のフラックス25を掻き寄せるスクレーパ29aとを備えた構成において、スキージ28aとスクレーパ29aとの間に検出方向を塗膜形成面24aに向けて配設された光センサ14によってフラックス25の残量を検出して補給の要否を判断するペースト残量検出手段を備え、スクレーパ29aによるフラックス25の掻取り動作に際し、塗膜形成ステージ24が移動開始した後に光センサ14によってフラックス25を検出するようにしたものである。これにより、スクレーパ29aがスキージ28aに近接して配置され、スキージ28aの先端部近傍のフラックス25を光センサで検出することが困難な構成にあっても、塗膜形成ステージ24におけるペーストの残量管理を適正に行って、ペーストの転写品質を安定させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の電子部品実装装置および電子部品実装装置におけるペースト転写方法は、塗膜形成ステージにおけるペーストの残量管理を適正に行って、ペーストの転写品質を安定させることができるという効果を有し、搭載前にペーストの供給を必要とする電子部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0049】
1 電子部品実装装置
3 基板
4A、4B 部品供給部
6 テープフィーダ
7 ペースト転写ユニット
10 搭載ヘッド
24 塗膜形成ステージ
24a 塗膜形成面
25 フラックス(ペースト)
26 転写エリア
28a スキージ
29a スクレーパ
30 ペースト供給シリンジ
P 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品供給部から搭載ヘッドによって電子部品を取り出して基板に移送搭載する電子部品実装装置であって、
前記搭載ヘッドに保持された電子部品に転写により塗布されるペーストを塗膜の状態で供給するペースト転写装置を備え、前記ペースト転写装置は、
上面に前記塗膜を形成するための塗膜形成面が形成された矩形形状の塗膜形成ステージと、
前記塗膜形成ステージを往復動させるステージ駆動手段と、
前記塗膜形成面との間に膜形成隙間を保って配設され、塗膜形成ステージの往復動により前記塗膜を形成するスキージと、
前記塗膜形成面に当接し、塗膜形成ステージの往復動により塗膜形成面上のペーストを掻き寄せるスクレーパと、
前記スキージと前記スクレーパとの間に検出方向を前記塗膜形成面に向けて配設された光センサによって前記ペーストの残量を検出して補給の要否を判断するペースト残量検出手段とを備え、
前記ペースト残量検出手段は、前記スクレーパによるペーストの掻取り動作に際し、前記塗膜形成ステージが移動開始した後に前記光センサによってペーストを検出することを特徴とする電子部品実装装置。
【請求項2】
前記光センサは、前記スキージに付着状態のペーストが前記塗膜形成ステージの移動により前記付着状態から離脱することによって塗膜形成面に形成されたペーストの凸状部を検出することを特徴とする請求項1記載の電子部品実装装置。
【請求項3】
前記ペースト残量検出手段は、前記塗膜形成ステージが移動開始から検出エリアとして設定された所定距離だけ移動するまでの時間内においてのみ、前記光センサによってペーストを検出することを特徴とする請求項1または2記載の電子部品実装装置。
【請求項4】
前記ペースト残量検出手段によりペーストの補給が必要と判断された場合に前記塗膜形成ステージにペーストを供給するペースト供給手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子部品実装装置。
【請求項5】
部品供給部から搭載ヘッドによって電子部品を取り出して基板に移送搭載する電子部品実装装置に装備されたペースト転写装置によって、前記搭載ヘッドに保持された電子部品に転写により塗布されるペーストを塗膜の状態で供給する電子部品実装装置におけるペースト転写方法であって、
前記ペースト転写装置は、上面に前記塗膜を形成するための塗膜形成面が形成された矩形形状の塗膜形成ステージと、前記塗膜形成ステージを往復動させるステージ駆動手段と、前記塗膜形成面との間に膜形成隙間を保って配設され、塗膜形成ステージの往復動により前記塗膜を形成するスキージと、前記塗膜形成面に当接し、塗膜形成ステージの往復動により塗膜形成面上のペーストを掻き寄せるスクレーパと、前記スキージと前記スクレーパとの間に検出方向を前記塗膜形成面に向けて配設された光センサによって、前記ペーストの残量を検出して補給の要否を判断するペースト残量検出手段とを備え、
前記ペースト残量検出手段は、前記スクレーパによるペーストの掻取り動作に際し、前記塗膜形成ステージが移動開始した後に前記光センサによってペーストを検出することを特徴とする電子部品実装装置におけるペースト転写方法。
【請求項6】
前記光センサは、前記スキージに付着状態のペーストが前記塗膜形成ステージの移動により前記付着状態から離脱することによって塗膜形成面に形成されたペーストの凸状部を検出することを特徴とする請求項5記載の電子部品実装装置におけるペースト転写方法。
【請求項7】
前記ペースト残量検出手段は、前記塗膜形成ステージが移動開始から検出エリアとして設定された所定距離だけ移動するまでの時間内においてのみ、前記光センサによってペーストを検出することを特徴とする請求項5または6記載の電子部品実装装置におけるペースト転写方法。
【請求項8】
前記ペースト転写装置はペースト供給手段を備え、前記ペースト残量検出手段によりペーストの補給が必要と判断されたならば、前記塗膜形成ステージにペーストを供給することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の電子部品実装装置におけるペースト転写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−74004(P2013−74004A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210364(P2011−210364)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】