説明

電子部品用積層体の製造方法

【課題】接合工程での位置決め精度が高く、量産適用が可能な電子部品用積層体の製造手法を提供する。
【解決手段】接合工程では、リードフレーム21となる金属板21Aと、パターン化金属箔25Bを有する両面金属張積層体40と、スペーサー33となる金属板33Aとを、ろう接により形成した金属層を介して接合する。この際、金型121のピン121aを、治具111及び両面金属張積層体40に設けられた位置決め用の孔111c及び40aに挿入し、治具111に固定されたリードフレーム21となる金属板21Aと、両面金属張積層体40のパターン化金属箔25Bと、スペーサー33となる金属板33Aとが上下に重なり合うように配置した状態で、加熱しながら当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばIGBT素子を搭載した半導体パワーモジュールなどに使用可能な電子部品用積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制御用電力素子の大容量化に伴い、制御用モーターのみならず駆動用モーターも直流モーターから交流モーターへ変化している。交流モーターを用いることで、メンテナンスフリー、大容量化、きめ細かい制御が達成される。そのため、交流モーターは、例えば高速鉄道、ハイブリッド自動車、電気自動車への利用が進展している。交流モーターを制御する電力素子の中心となるIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)モジュールに使用される絶縁基板には、絶縁性と熱伝導性を併せ持つことが必要とされており、従来は、セラミック基板が中心に使用されていた。セラミック基板は、絶縁性と熱伝導性に優れており、信頼性を有するが、価格が高い、重い、構造が複雑になるといった欠点がある。このような欠点が、IGBTモジュールを例えば自動車用途へ利用する上で問題となっている。
【0003】
これら欠点を解消するため、例えば、特許文献1では、パワーモジュールにおいて絶縁基板の材料として絶縁樹脂接着シートを用いることが提案されている。
【0004】
絶縁基板の材料として、特許文献1のようにセラミックスの代わりに絶縁樹脂接着シートを使用する場合、IGBTモジュールの構造から、絶縁樹脂接着シートには、IGBT素子に電気的に接続される金属板(リードフレーム)と、放熱部材への熱伝導を媒介する金属板(スペーサー)との間の絶縁性を確保しながら、ある程度の伝熱性を有しており、さらに熱衝撃に耐える接着性が要求される。また、IGBT素子のリードフレームのように小型で厚みのある部材と絶縁樹脂接着シートとのプレス加工による接着を行うためには、圧力むらの防止、位置決め精度の確保など、難易度の高い課題を個別の形状ごとに調整して解決する必要がある。例えば、絶縁性を確保するための沿面距離をとりながら、絶縁樹脂接着シート上にプレス加工により部分的にリードフレームを接着させる場合、リードフレームの厚みを吸収しながらプレスを行う必要があるため、圧力むらによる歪みが生じやすく、非常に難易度が高い。また、プレス圧力により、沿面距離部分への樹脂の流れ出しが起こりやすいので、加圧部分にボイド等の欠陥が発生しやすく、絶縁耐圧が低下するおそれがある。さらに、電力素子として使用する場合、絶縁樹脂接着シートとリードフレームとの接合面が長期にわたり高温にさらされる。そのため、リードフレームの材質である銅が高温で絶縁樹脂接着シート層中へ拡散し、該接着シート層が脆弱になり、接着力が低下することも懸念される。
【0005】
そこで、発明者らは、絶縁基板の材料として、絶縁樹脂接着層の上下に金属箔層が接着した両面金属張積層体を用いる方法を提案した(特願2010−53873、特願2010−82408)。この方法では、両面金属張積層体を用いることにより、リードフレーム等の部材との接合を金属接合技術のみによって行うことができる。そのため、従来法でのプレス加工における技術課題を回避できるとともに、総工程数も削減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−288054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、IGBTモジュールに代表されるパワー半導体モジュールの製造において、絶縁基板の材料として両面金属張積層体を使用することにより、多くの問題を改善することが可能である。しかし、この方法では、リードフレームとスペーサーとの間に、片面の金属箔がエッチング加工された両面金属張積層体を配置し、これらを位置合わせして重ね、ハンダ等の金属接合技術により接合する必要がある。この接合工程では、精度の高い位置決めを行う必要があると共に、工業的規模での量産を行う上で生産効率を高める必要がある。
【0008】
本発明の目的は、接合工程での位置決め精度が高く、量産適用が可能な電子部品用積層体の製造手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面の電子部品用積層体の製造方法は、半導体素子を支持するリードフレームと、前記リードフレームに電気伝導可能かつ熱伝導可能に接合された第1の金属箔層と、前記第1の金属箔層に接着した絶縁樹脂接着層と、前記絶縁樹脂接着層に接着した第2の金属箔層と、前記第2の金属箔層に熱伝導可能に接合され、放熱部材への熱伝導を媒介する伝熱金属層と、を備えた電子部品用積層体の製造方法であって、
前記リードフレームとなる金属板が島状に担持され、かつ位置決め用貫通孔を有する第1の治具と、前記絶縁樹脂接着層の片面に前記第1の金属箔層が島状に形成され、他方の面に前記第2の金属箔層が積層されており、かつ位置決め用貫通孔を有する金属・樹脂積層体と、前記伝熱金属層となる金属板が固定された第2の治具と、を準備する工程と、
前記リードフレームとなる金属板と前記第1の金属箔層と前記伝熱金属層となる金属板とを位置合わせした状態でろう接により形成した金属層を介して重ね合わせ、加熱することにより接合する工程と、
接合後に前記第1の治具と、前記金属・樹脂積層体とを切断することにより積層体を得る工程と、
を備えている。
【0010】
本発明の第1の側面の電子部品用積層体の製造方法では、前記第2の治具が位置決め用突起を有しており、前記接合する工程では、前記位置決め用突起に前記位置決め用貫通孔を係合させて位置合わせを行ってもよい。この場合、前記第1の治具及び前記金属・樹脂積層体が、テープ状に形成されており、リール・トウ・リール方式で連続的に供給されるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の第1の側面の電子部品用積層体の製造方法では、前記第2の治具が位置決め用貫通孔を有しており、前記接合する工程では、位置決め用突起を有する第3の治具を用いて、前記位置決め用突起に前記位置決め用貫通孔を係合させて位置合わせを行ってもよい。この場合、前記第1の治具、前記金属・樹脂積層体及び第2の治具が、テープ状に形成されており、リール・トウ・リール方式で連続的に供給されるようにしてもよい。
【0012】
本発明の第2の側面の電子部品用積層体の製造方法は、半導体素子を支持するリードフレームと、前記リードフレームに電気伝導可能かつ熱伝導可能に接合された第1の金属箔層と、前記第1の金属箔層に接着した絶縁樹脂接着層と、前記第2の金属箔層に接着した、放熱部材への熱伝導を媒介する伝熱金属層と、を備えた電子部品用積層体の製造方法であって、
前記リードフレームとなる金属板が島状に担持され、かつ位置決め用貫通孔を有する第1の治具と、前記絶縁樹脂接着層の片面に前記第1の金属箔層が島状に形成され、他方の面に前記伝熱金属層が積層されており、かつ位置決め用貫通孔を有する金属・樹脂積層体と、を準備する工程と、
前記リードフレームとなる金属板と前記第1の金属箔層とを位置合わせした状態で、ろう接により形成した金属層を介して重ね合わせ、加熱することにより接合する工程と、
接合後に前記第1の治具と、前記金属・樹脂積層体とを切断することにより積層体を得る工程と、
を備えている。
【0013】
本発明の第2の側面の電子部品用積層体の製造方法は、前記接合する工程では、位置決め用突起を有する第3の治具を用いて、前記位置決め用突起に前記位置決め用貫通孔を係合させて位置合わせを行ってもよい。この場合、前記第1の治具及び前記金属・樹脂積層体が、テープ状に形成されており、リール・トウ・リール方式で連続的に供給されるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明の第1及び第2の側面の電子部品用積層体の製造方法は、両面金属張積層体の片面の金属箔を部分的にエッチングすることにより、前記金属・樹脂積層体を調製する工程をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子部品用積層体の製造方法では、エッチング後の両面金属張積層体と、リードフレームとなる金属板との接合を、例えばハンダ付け等の慣用の金属接合技術により容易に行うことが出来る。また、接合工程では、位置決め用の貫通孔を利用して位置合わせを行うことにより、接合時の位置ずれを防止できる上、沿面距離も十分に高い精度で確保することができるので、信頼性の高い電子部品を製造できる。さらに、リードフレームとなる金属板や、伝熱金属層となる金属板を複数個支持できる治具を用いることにより、工業的規模での大量生産への対応も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明方法を適用可能な半導体モジュールの構成例を示す断面図である。
【図2】本発明方法を適用可能な積層体の構成例を示す断面図である。
【図3】両面金属張積層体の構成例を示す断面図である。
【図4】両面金属張積層体の積層前の状態を示す説明図である。
【図5】両面金属張積層体をエッチングした後の状態を示す説明図である。
【図6】接合工程における接合前の状態を示す説明図である。
【図7A】接合工程における接合前の状態を示す部分断面図である。
【図7B】接合工程における接合した状態を示す部分断面図である。
【図8】切断工程における切断前の状態を示す部分断面図である。
【図9】切断され積層体の構成を示す断面図である。
【図10】実装工程の説明図である。
【図11】本発明方法を適用可能な半導体モジュールの変形例を示す断面図である。
【図12】本発明方法を適用可能な積層体の変形例を示す断面図である。
【図13】本発明方法を適用可能な半導体モジュールの別の変形例を示す断面図である。
【図14】本発明方法を適用可能な積層体の別の変形例を示す断面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態で使用可能な積層体製造装置の概略構成図である。
【図16】第2の実施の形態の接合工程における接合直前の状態を示す説明図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態で使用可能な積層体製造装置の概略構成図である。
【図18】第3の実施の形態の使用可能な積層体製造装置の変形例を示す図面である。
【図19】実施例のリードフレーム治具の構造を説明する図面である。
【図20】実施例のパターン化積層板の構造を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施の形態について説明する。まず、第1の実施の形態の製造方法によって製造される積層体を適用可能な半導体モジュールについて説明する。図1は、半導体モジュールの概略構成例を示す断面図である。図1に示すように、パワーモジュール100は、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、還流ダイオード(FWD)などの半導体素子1を有する積層体3と、外部電極端子(図示せず)に接続された導電部材5a,5bと、導電部材5a,5bにそれぞれ接続する中継基板7a,7bと、隣接する半導体素子1どうし、及び半導体素子1と中継基板7a,7bとを接続するボンディングワイヤ9と、これらを収容するケース11と、積層体3との間で熱交換を行う放熱部材としてのヒートシンク13と、を備えている。また、ケース11の内部には、例えばシリコーンゲル等の絶縁樹脂15が必要な量で充填され、硬化させることにより封止されている。
【0018】
なお、図1のパワーモジュール100はあくまでも例示であり、本発明は、様々な構成の半導体モジュールに適用可能である。
【0019】
<積層体>
次に、本実施の形態において製造対象となる積層体3の構成について、図2を参照しながら詳細に説明する。積層体3は、半導体素子1と、接合層17を介して半導体素子1を支持するリードフレーム21と、リードフレーム21に接合層23を介して電気伝導可能かつ熱伝導可能に接合された第1の金属箔層25と、この第1の金属箔層25に接着した絶縁樹脂接着層27と、絶縁樹脂接着層27に接着した第2の金属箔層29と、この第2の金属箔層29に接合層31を介して熱伝導可能に接合され、ヒートシンク13への熱伝導を媒介する伝熱金属層としてのスペーサー33と、を備えている。図2では、スペーサー33は、ヒートシンク13に面接触して設けられているが、スペーサー33とヒートシンク13との間に、さらに熱伝導性の部材が介在していてもよい。なお、図2における符号Lは、沿面距離である。積層体3をパワーモジュール100に組み込んだ場合に、絶縁樹脂接着層27が十分な絶縁性能と耐圧性能を確保できるようにするためには、リードフレーム21及び第1の金属箔層25の端部から、絶縁樹脂接着層27の端部までの距離(沿面距離L)を十分に確保することが重要となる。
【0020】
図2に示す半導体素子1、リードフレーム21、スペーサー33は、いずれも公知の構成である。リードフレーム21、スペーサー33としては、例えば厚みが0.5mm〜3mm程度の銅板、アルミニウム板などを用いることができる。
【0021】
リードフレーム21と第1の金属箔層25とは、ろう接により形成した金属層によって接合されており、例えば300℃程度の温度で溶融する金属を主成分とするろう材やハンダ、金属系接着剤等によって接合されている。つまり、リードフレーム21と第1の金属箔層25との間には、導電性及び熱伝導性を有する金属材料からなる接合層23が設けられている。接合層23の材質としては、例えばハンダ材料として、錫を主成分とする、銀、銅、ニッケル、ゲルマニウム、アンチモン、インジウム又はビスマス等の合金が好適に使用できる。また、金属系接着剤としては、市販品として入手可能であり、例えばニホンハンダ株式会社製のMAX101(商品名)、株式会社日本スペリア社製のSN100C P800 D2(商品名)等が好適に使用できる。
【0022】
また、第2の金属箔層29とスペーサー33も、上記と同様にろう接により形成した金属層によって接合されており、例えばろう材やハンダ、金属系接着剤等によって接合されている。つまり、第2の金属箔層29とスペーサー33との間には、熱伝導性を有する金属材料からなる接合層31が設けられている。
【0023】
絶縁樹脂接着層27は、例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、BTレジン、カルド樹脂(フルオレン樹脂)、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂などの絶縁性の樹脂材料によって形成することができる。また、絶縁樹脂接着層27には、出来るだけ耐熱性の高い絶縁材料を用いることが好ましい。このような観点から、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、BTレジンを用いることが好ましい。
【0024】
絶縁樹脂接着層27の厚みは、必要な絶縁耐圧性能を確保しながら、熱伝導性を損なわない観点から、例えばポリイミド樹脂では、10μm〜200μmが好ましく、12μm〜100μmがより好ましく、18μm〜75μmが更に好ましい。また、例えばエポキシ樹脂では、50μm〜300μmが好ましく、80μm〜200μmがより好ましい。
【0025】
第1の金属箔層25及び第2の金属箔層29としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、鉄箔、ニッケル箔、ベリリウム箔、亜鉛箔、インジウム箔、銀箔、金箔、スズ箔、ジルコニウム箔、ステンレス箔、タンタル箔、チタン箔、鉛箔、マグネシウム箔、マンガン箔及びこれらの合金箔が挙げられる。これらの中でも、銅箔が好ましい。なお、ここでいう「銅箔」には、銅以外に、銅を主成分とする銅合金からなるものも含まれる。銅箔は、好ましくは銅含有率が90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。銅箔には、例えばクロム、ジルコニウム、ニッケル、シリコン、亜鉛、ベリリウム、コバルト等の金属を含有していてもよい。
【0026】
第1の金属箔層25及び第2の金属箔層29の厚みは、それぞれ、原料となる両面金属張積層体を形成する場合のプレス加工性を高めるため、例えば12μm〜150μmが好ましく、12μm〜70μmがより好ましい。
【0027】
第1の金属箔層25及び第2の金属箔層29において、絶縁樹脂接着層27と接している側の面には、接着力の向上を目的として、化学的な表面処理を施しておくことが好ましい。そのような表面処理としては、例えば防錆処理、ニッケルめっき処理、粗化エッチング、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート、シランカップリング剤等による化学的処理を挙げることができる。この中でも、特に防錆処理を施しておくことが好ましい。防錆処理は、金属箔に例えば亜鉛めっき処理およびクロメート処理を順次施して防錆層を形成するものである(図4参照)。亜鉛めっき処理およびクロメート処理は、公知の方法で行うことができる。第1の金属箔層25及び第2の金属箔層29に防錆処理を施しておくことにより、リードフレーム21及び第1の金属箔層25、又はスペーサー33及び第2の金属箔層29から、例えばCuイオン等の金属イオンが絶縁樹脂接着層27へ拡散することが防止される。従って、Cuイオン等の金属イオンの拡散が原因で、絶縁樹脂接着層27に脆弱層が形成されて劣化し、接着力が低下することを防止できる。以上のように、第1の金属箔層25及び第2の金属箔層29に表面処理を行なっておくことにより、絶縁樹脂接着層27の接着性が長期間に渡り維持される。従って、積層体3を、例えば図1のパワーモジュール100に組み込んだ場合に、パワーモジュール100の信頼性を高めることができる。このような観点から、第1の金属箔層25及び第2の金属箔層29として回路配線基板等の電子材料用途に適用される銅箔を使用することが望ましい。防錆処理を施した市販の銅箔としては、例えば日本電解株式会社製のHL箔(商品名)、同USLP箔(商品名)、古河電工株式会社製のWS箔(商品名)、同GTS箔(商品名)、三井金属鉱山株式会社製のVLP箔(商品名)、日鉱金属株式会社製のHA箔(商品名)、同BHYA箔(商品名)等が挙げられ、これらは好適に利用できる。
【0028】
図1に示すパワーモジュール100では、絶縁樹脂接着層27を境にして、半導体素子1側と、接地電位に置かれたヒートシンク13側とが電気的に絶縁されている必要がある。このような観点から、積層体3においては、半導体素子1とスペーサー33の間に高い絶縁耐圧性を有する絶縁樹脂接着層27を介在させている。また、半導体素子1が通電により発熱したまま放熱できないと故障の原因になるので、冷却を効率的に行う必要がある。そこで、半導体素子1に、絶縁性を確保する絶縁樹脂接着層27として比較的熱抵抗が低い樹脂材料の薄膜を用いるとともに、複数の金属層(第2の金属箔層29、接合層31、スペーサー33)を介してヒートシンク13を接続し、半導体素子1を積極的に冷却するようにしている。
【0029】
[積層体の製造方法]
図3〜図10を参照しながら、積層体3の製造方法について説明する。本実施の形態の積層体の製造方法は、例えば、両面金属張積層体を準備する工程、エッチング工程、接合工程、切断工程、及び実装工程を含むことができる。
【0030】
<両面金属張積層体>
まず、図3に示すような両面金属張積層体40を準備する。図4は、積層前の状態の一例を示している。両面金属張積層体40は、樹脂フィルム27A、金属箔25A及び金属箔29Aを含んでいる。樹脂フィルム27Aは、加工後に積層体3において上記絶縁樹脂接着層27となるものであり、絶縁樹脂接着層27と同様の材質で形成されている。金属箔25A,29Aは、加工後に積層体3において、それぞれ、上記第1の金属箔層25、上記第2の金属箔層29となるものであり、第1の金属箔層25、第2の金属箔層29と同様の材質で形成されている。金属箔25A,29Aの樹脂フィルム27Aに当接させる側の面には、図4に示すように、例えば防錆層などの表面処理層41を形成しておくことが好ましい。
【0031】
この両面金属張積層体40は、例えば図4に示すように、樹脂フィルム27Aの両側に、それぞれ金属箔25Aと金属箔29Aを配置して、これらを張り合わせることにとって製造できる。樹脂フィルム27Aと金属箔25A,29Aとのラミネートは、公知の方法により行うことが出来る。例えば、通常のハイドロプレス、真空タイプのハイドロプレス、オートクレーブ加圧式真空プレス、連続式熱ラミネータ等により行うことができる。これらの中でも、十分なプレス圧力が得られ、金属箔25A,29Aの酸化を防止できる、といった利点が得られる真空ハイドロプレスや連続式熱ラミネータを用いることが好ましい。なお、連続式熱ラミネータを用いる場合、樹脂フィルム27Aと金属箔25A,29Aとのラミネートは、これらを長いフィルム状にした形態で、ロール・トゥ・ロール方式で行うことができるので、効率的である。
【0032】
樹脂フィルム27Aと金属箔25A,29Aとを張り合わせる際には、例えば、樹脂フィルム27A又はその接着面が、熱可塑性ポリイミド樹脂で構成されている場合には、200〜400℃程度の範囲内の温度に加熱しながらプレスすることが好ましく、280〜400℃の範囲内がより好ましく、300〜400℃の範囲内の温度がさらに好ましい。また、プレス圧力については、使用するプレス機の種類にもよるが、100〜150Kgf/cm程度が好ましい。また、例えば樹脂フィルム27A又はその接着面が、エポキシ樹脂で構成されている場合には、140〜220℃程度の範囲内の温度に加熱しながらプレスすることが好ましく、160〜200℃の範囲内がより好ましく、プレス圧力は50〜150Kgf/cm程度が好ましい。
【0033】
また、図示は省略するが、両面金属張積層体40は、例えば、樹脂フィルム27Aと金属箔25A又は金属箔29Aとを積層した2層積層体の樹脂フィルム27A側に、残りの金属箔25A又は金属箔29Aのうちの片方を重ね合わせ、熱圧着することによって作製することもできる。さらに、両面金属張積層体40は、樹脂フィルムと金属箔25Aとを積層した2層積層体と、樹脂フィルムと金属箔29Aとを積層した2層積層体とを別々に準備し、金属箔25A及び金属箔29Aが外側になるように、樹脂フィルムどうしを貼り合わせるようにして重ね合わせ、熱圧着することによって作製することもできる。この場合は、2層の樹脂フィルムが積層されて樹脂フィルム27Aとなる。以上のいずれの場合においても、熱圧着の方法は特に制限されず、上述と同様のラミネート方法、ラミネート条件を採用することが出来る。
【0034】
両面金属張積層体40としては、市販の両面金属張積層体を使用することもできる。この場合、特に電子材料用途に適した両面金属張積層体を使用することが好ましい。そのような市販品としては、例えば新日鐵化学株式会社製MB18−25−18CEG(商品名)、同MB18−12−18FR(商品名)、同MB12−12−12REG(商品名)、同SB18−25−18CE(商品名)、パナソニック電工株式会社製セムスリーR1788(商品名)などを好ましく用いることができる。
【0035】
また、樹脂フィルム27Aとなるポリイミドフィルムとしては、市販のポリイミド樹脂又はポリイミドフィルムも好適に使用可能であり、例えば東レ・デュポン株式会社製のカプトンEN(商品名)、鐘淵化学株式会社製のアピカルNPI(商品名)、宇部興産株式会社製のユーピレックス(商品名)等が挙げられる。さらに、このような非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面又は両面に、1種類以上の熱可塑性ポリイミドの前駆体溶液を塗布した後、熱処理して樹脂フィルム27Aを形成することもできる。市販の熱可塑性ポリイミド樹脂の前駆体溶液としては、例えば新日鐵化学株式会社製のSPI−200N(商品名)、同SPI−300N(商品名)、同SPI−1000G(商品名)、東レ株式会社製のトレニース#3000(商品名)等が挙げられる。
【0036】
以上のように、両面金属張積層体40は種々の方法で準備することができるが、いずれの方法で作製した両面金属張積層体40についても、特に制限なく利用できる。
【0037】
<エッチング工程>
次に、図5に示すように、両面金属張積層体40の一方の側の金属箔(図5では、金属箔25A)を、エッチングによって所定のパターン(例えば島状)に加工する。すなわち、両面金属張積層体40の片側の面の金属箔25Aをエッチングにより部分的に除去し、複数のパターン化金属箔25Bを形成する。エッチングは、フォトリソグラフィー技術を利用して実施できる。例えば、まず、両面金属張積層体40の金属箔25Aに所定のレジストパターンを形成する。次に、塩化第二鉄又は塩化第二銅を主成分とする水溶液等のエッチング液を用いて露出した部分の金属箔25Aをエッチングし、その後レジストを剥離すればよい。
【0038】
エッチングは、積層体3に加工した場合に第1の金属箔層25となるパターン化金属箔25Bの周囲に、樹脂フィルム27Aが露出するように行う。樹脂フィルム27Aの露出部分は、後の切断工程で樹脂フィルム27Aと金属箔29Aを切断する際の切断部位となる。
【0039】
なお、金属箔25Aへのエッチングと同様の方法で、金属箔29Aを所定のパターン(例えば島状)にエッチングしておくこともできる。
【0040】
<接合工程>
接合工程では、リードフレーム21となる金属板21Aと、パターン化金属箔25Bを有する両面金属張積層体40と、スペーサー33となる金属板33Aとを、ろう接により形成した金属層を介して接合する。図6は、これらの接合前の状態の一例を示す斜視図であり、図7Aは図6と同様に接合前の状態の一例を示す部分断面図であり、図7Bは接合した状態の一例を示す部分断面図である。接合工程は、例えば加熱手段(ヒーター)を備えた容器(加熱炉)内で行うことができるが、図6〜7Bでは容器は図示を省略している。
【0041】
リードフレーム21となる金属板21Aは、図6に示すように、第1の治具としての治具111により支持されている。治具111は、枠状に設けられた本体111aの内側に、例えば格子状に設けられた複数の支持部111bを有しており、これらの支持部111bに金属板21Aの4辺が接続され、固定されている。図6では、治具111に4個の金属板21Aが支持された状態を示している。また、本体111aには、位置決め用の孔111cが複数箇所(図6では4箇所)に設けられている。治具111は、例えば金属板21Aと同様の材質の金属箔等の材質で構成できる。
【0042】
金属・樹脂積層体としての両面金属張積層体40には、上記金属板21Aの配置に対応して上面に4個のパターン化金属箔25Bが島状に形成されている。各パターン化金属箔25Bは、その下方周囲に十分な沿面距離Lが確保できるように、大きなサイズの樹脂フィルム27Aによって支持されている。金属箔29Aは、樹脂フィルム27Aと同じ大きさで樹脂フィルム27Aに積層されている。両面金属張積層体40の樹脂フィルム27Aと金属箔29Aには、位置決め用の孔40aが複数箇所(図6では4箇所)に設けられている。
【0043】
接合工程を行う容器(図示せず)内には、スペーサー33となる金属板33Aを位置決め固定する第2の治具としての金型121が配置されている。金型121には、位置決め用突起としてのピン121aが複数(図6では4本)設けられている。ピン121aは、治具111及び両面金属張積層体40に設けられた位置決め用の孔111c及び40aに挿入されることにより、接合工程での位置ずれを防止する役割を有する。また、金型121には、上記金属板21A及びパターン化金属箔25Bの配置に対応して複数の凹部121bが形成されており、この凹部121bにスペーサー33となる金属板33Aを位置決めして配置しておくことができる。図6では、上面に4箇所の凹部121bが設けられ、4個の金属板33Aを配置している。
【0044】
接合工程では、図7Aに示したように、予めパターン化金属箔25B及び金属箔29Aにハンダペースト23A,31Aを塗布しておく。なお、ハンダペーストは、対向する接合面のどちらかに塗布しておけばよいので、金属板21Aや、金属板33Aに塗布しておいてもよい。また、金属板21Aや、金属板33Aにおける接合面には、例えば錫を主成分とするめっき処理や、金又はニッケル等のめっき処理を予め施しておいてもよい。次に、治具111に固定されたリードフレーム21となる金属板21Aと、両面金属張積層体40のパターン化金属箔25Bと、スペーサー33となる金属板33Aとが上下に重なり合うように配置した状態で、ハンダペースト23A,31Aを介して当接させ、加熱する。これにより、ハンダペースト23A,31Aが溶融し、図7Bに示したように、金属板21Aとパターン化金属箔25Bとの間、金属箔29Aと金属板33Aとの間が、それぞれ金属接合層23A,31Aを介して接合される。この接合工程は、金型121のピン121aを、治具111及び両面金属張積層体40に設けられた位置決め用の孔111c及び40aに挿入して行われる。所定時間の加熱後、治具111及び両面金属張積層体40の位置決め用の孔111c,40aと金型121のピン121aとの係合を解除する。このように、位置決め用の孔111c,40aと金型121のピン121aとの係合を利用して接合時の位置精度を確保することにより、加熱時のハンダペースト23A,31Aの溶融による横方向への位置ずれを防止し、沿面距離Lを確保できる。なお、金型121における金属板33Aと接する面には、金属板33Aとの分離を容易とするための離型処理を施してもよい。
【0045】
同時に接合させる金属板21Aと両面金属張積層体40のパターン化金属箔25Bと金属板33Aの数は、4個に限らず例えば1〜3個でもよいし、5個以上であってもよい。生産性を高めるためには、治具111及び金型121に多数の金属板21A及び金属板33Aを配置し、多数のパターン化金属箔25Bを形成した両面金属張積層体40を用いて一括で接合工程を行うことが好ましい。治具111及び両面金属張積層体40の位置決め用の孔111c,40aの数と金型121のピン121aの本数も適宜増減できる。
【0046】
なお、図7A,7Bでは、両面金属張積層体40の上下両側に金属板21A及び金属板33Aを位置合わせして配置し、これら3つを同時に接合する場合を例に挙げたが、まず両面金属張積層体40のパターン化金属箔25Bと金属板21Aを接合した後、金属箔29Aと金属板33Aを接合してもよいし、あるいは、まず両面金属張積層体40の金属箔29Aと金属板33Aを接合した後、金属板21Aとパターン化金属箔25Bを接合してもよい。このように接合工程を多段階に分けて行う場合、金属板21A−パターン化金属箔25B間、及び金属箔29A−金属板33A間に介在させるハンダの融点を変えて、融点の高いハンダから先に接合するようにしてもよい。この場合、相対的に高融点のハンダ材料としては、例えば、ニホンハンダ株式会社製のPF305(商品名)(融点;220℃)、同FNS(商品名)(融点;219℃)、同O3(商品名)(融点;221℃)、同24(商品名)(融点;240℃)、タムラ化研株式会社製のTFL−204−SIS(商品名)(融点;220℃)、同TFL−204−151(商品名)(融点;220℃)、同TFL−204−MDS(商品名)(融点;213℃)、株式会社日本スペリア製のSN100C P800(商品名)(融点;227℃)、同SN100CL(商品名)(融点;227℃)等、相対的に低融点のハンダ材料としては、例えば、タムラ化研株式会社製のTFL−801−17(商品名)(融点;195〜209℃)、同TFL−401−11(商品名)(融点;139℃)、株式会社日本スペリア社製のB157(商品名)(融点;139℃)、同SN88(商品名)(融点;198〜210℃)等を用いることができる。接合工程の回数を省略できるという観点では、図7A,7Bに示したように、金属板21Aとパターン化金属箔25B、及び金属箔29Aと金属板33Aを同時に接合することが好ましい。
【0047】
<切断工程>
切断工程では、例えば図8に示したようなカッターユニット131を用いることができる。図8では、一つのカッターユニット131のみを示している。カッターユニット131は、下部の固定刃131Aと上部の可動刃131Bとから構成されている。可動刃131Bは、治具111の支持部111bを切断するための小刃131B1と、樹脂フィルム27A及び金属箔29Aを切断する大刃131B2とを有しており、図示しない駆動手段により上下動される。従って、可動刃131Bを下降させることにより、治具111、樹脂フィルム27A及び金属箔29Aから、図9に示したように、両面金属張積層体40の上下両側に金属板21A及び金属板33Aが接合された所定の大きさの積層体60が部分的に打ち抜かれる。この際、十分な沿面距離Lが確保できるように、パターン化金属箔25Bよりも大きな範囲で樹脂フィルム27Aの打ち抜きを行う。なお、この切断工程においても、カッターユニット131と位置決め用のピン(図示省略;図6の金型121のピン121aを参照)を備えた切断装置を用いることが可能であり、治具111及び両面金属張積層体40の位置決め用の孔111c,40aと当該ピンとを係合させて位置決めを行いながら高精度に切断を行うことができる。また、複数(例えば4つ)のカッターユニット131を備えた切断装置を用いることによって、同時に複数の打ち抜きを行うことができるので、生産効率を高めることができる。この切断工程においては、上記のように治具111の支持部111b並びに樹脂フィルム27A及び金属箔29Aを同時で切断することが好ましいが、例えば小刃131B1によって先ず治具111の支持部111bを切断した後、続いて大刃131B2によって樹脂フィルム27A及び金属箔29Aを切断してもよい。なお、切断の方法は、特に制限はなく、プレス打ち抜きに限らず、例えば回転ソー、ウォータージェット等を用いて行うこともできる。
【0048】
<実装工程>
次に、図10に示すように、積層体60の最上部の金属板21の上に、例えばIGBT素子やFWD素子などの半導体素子1を接合する。接合方法は、ハンダ付け、金属系接着剤等の金属接合技術によって実施できる。図10では、ハンダペースト17Aを半導体素子1に塗布して、リードフレーム21に接合する方法を示している。なお、半導体素子1への配線の接続は常法によって行うことができるので、ここでは説明を省略する。
【0049】
以上のようにして、図2に示すように、半導体素子1、接合層17、リードフレーム21、接合層23、第1の金属箔層25、絶縁樹脂接着層27、第2の金属箔層29、接合層31、スペーサー33が、上からこの順に積層された積層体3を製造することができる。以後は、常法に従い、ヒートシンク13と接合し、モジュール化することによって、例えばパワーモジュール100を製造することができる。
【0050】
<変形例>
以上の工程において、積層体60を作成せず、半導体素子1と、金属板21Aと、パターン化金属箔25Bが形成された両面金属張積層体40と、金属板33Aとを同時に接合することも可能である。すなわち、上記接合工程と実装工程とを同時に行うことができる。例えば、図示は省略するが、半導体素子1、金属板21A、エッチング後のパターン化金属箔25Bを有する両面金属張積層体40、及び金属板33Aを、対向する接合面のいずれかにハンダペースト17A,23A,31Aを塗布した後、図6〜図7Bと同様に、位置決め用の孔及びピンにより位置合わせして配置し、これら4つのパーツを同時に接合してもよい。
【0051】
また、金属板21Aに半導体素子1が予め接合されているものを用いて図6〜図7Bと同様に接合工程を行うことにより、上記実装工程を省略することも可能である。
【0052】
また、本実施の形態の製造方法は、例えば図11及び図12に示したような構成の積層体とパワーモジュールの製造にも適用できる。なお、図11及び図12において、図1及び図2と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。図11は、異なる半導体素子が実装されている積層体3A,3Bを備えたパワーモジュール101を示している。例えば、積層体3AにはIGBT素子1Aが実装されており、積層体3BにはFWD素子1Bが実装されている。積層体3A,3Bは、それぞれ基本的に図1に例示したものと同様の構成と機能を有しているが、図12に拡大して示したように、二つの積層体3A,3Bにおいて、絶縁樹脂接着層27、第2の金属箔層29、接合層31、スペーサー33が共通化されている。換言すれば、リードフレーム21、接合層23、第1の金属箔層25は、IGBT素子1A側とFWD素子1B側で異なる電気的制御を受ける部分であるため、別々に分離させているが、絶縁樹脂接着層27より下層は、熱伝導機能が確保できればよいので共有されている。
【0053】
このような構造の積層体3A,3Bは、エッチング工程でのパターン設計で十分な沿面距離Lが確保できるようにするとともに、切断工程で切り出される積層体がそれぞれ2つのパターン化金属箔25Bを含むように切断する点以外は、上記と同様に製造することができる。積層体3A,3Bでは、最終的に一枚の絶縁樹脂接着層27の上に、2つの半導体素子(IGBT素子1A、FWD素子1B)を実装しているが、リードフレーム21の積層にプレス加工は必要とせず、ハンダ付けやロウ付けにより容易に接合を行なうことができるため、従来法のような問題は生じない。すなわち、図12のような構造を、金属板(リードフレーム21)をプレス加工により絶縁樹脂接着層27に圧着させることによって製造することは非常に難易度が高いが、両面金属張積層体40を用いることによって容易に製造できる。なお、共通化された絶縁樹脂接着層27の上には、2つに限らず、3つ以上の半導体素子でも制約なく簡単に実装できる。このように、絶縁樹脂接着層27を共有化して複数の半導体素子を容易に実装できることも、両面金属張積層体40を用いることの大きなメリットである。
【0054】
さらに、本実施の形態の製造方法は、例えば図13及び図14に示したような構成の積層体とパワーモジュールの製造にも適用できる。なお、図13及び図14において、図1及び図2と同じ構成については、同一の符号を付して説明を省略する。図13及び図14に示した積層体3C及びパワーモジュール102は、スペーサー33を有しない点以外は、図1及び図2に示した積層体3及びパワーモジュール100と同様の構成である。積層体3Cを製造する場合は、金属箔29Aとして厚みの大きなものを用いることにより、金属板33Aを省略できる。従って、図6における金型121の凹部121bは不要であり位置決め用のピン121aを有する台座(図示せず)を用いて接合工程を行うことにより製造できる。このように、本実施の形態の製造方法は、種々の構成の積層体の製造に適用可能である。
【0055】
以上述べたように、本実施の形態の積層体の製造方法では、樹脂フィルム27Aの両面の金属箔(パターン化金属箔25B、金属箔29A)と、リードフレーム21となる金属板21A及びスペーサー33となる金属板33Aとの接合工程において、位置決め用の孔(孔111c、40a)とピン(ピン121a)を利用して位置合わせを行うことができる。よって、接合時の位置ずれを防止できる上、十分な沿面距離Lを高い精度で確保することが可能になり、信頼性の高い電子部品を製造できる。さらに、リードフレーム21となる金属板21Aや金属板33Aを複数個支持できる治具111や金型121を用いることにより、工業的規模での大量生産への対応も可能になる。
【0056】
また、本実施の形態の積層体の製造方法では、材料として両面金属張積層体40を用いることにより、絶縁樹脂接着層とその上下の金属板とのプレス加工による接着を省略できる。つまり、両面金属張積層体40を用いれば、積層体3における他の部材と積層は、金属接合技術のみによって行うことができる。そのため、従来法でのプレス加工の技術課題を回避できるだけでなく、総工数削減も可能となる。両面金属張積層体40の製造は、既に技術的に確立されているプリント基板等の電子材料用途の両面金属張積層体の製造と同じプロセスで実施が可能であり、例えばプレス加工やキャスト法など種々の方法で容易に行うことができる。この工程をプレス加工で行う場合でも、図4に示すように、薄い樹脂フィルム27Aと金属箔25A,29Aとの積層プレスとなるため、リードフレーム等の金属板の形状とは無関係に一定の条件で実施できる上、大面積でのプレスであるため、均一な接着が可能であり、圧力むらが生じにくい。また、リードフレーム等の金属板に対して個別にプレス加工を行う従来法に比べて工数も削減できる。さらに、樹脂フィルム27Aや金属箔25A,29A、さらに両面金属張積層体40として、調達が容易な市販品を用いることも可能である。特に、市販のプリント基板用金属箔やプリント基板用両面金属張積層体は、金属箔表面に粗化処理、防錆処理がされており、新たにこれらの処理を行う必要がない。また、防錆処理により、積層体3が長期に高温にさらされても、Cuイオン等の金属イオンの拡散が起こりにくく、接着力の低下が抑制される。
【0057】
また、絶縁樹脂接着層27における沿面距離Lの確保は、両面金属張積層体40のエッチングによる金属箔25Aの部分的な除去により行うことができるので、難易度の高いプレス加工による位置ずれなどの問題が起こりにくい。すなわち、従来法で個別に条件出しが必要であったプレス工程での沿面距離Lの調整は不要になる。しかも、エッチング工程では、フォトリソグラフィー技術を利用できるため、沿面距離Lの精度の確保も容易である。
【0058】
本実施の形態の製造方法は、以上の優れた特長により、積層体3を組み込んだ半導体モジュールの信頼性を高めることができる。
【0059】
[第2の実施の形態]
次に図15及び図16を参照しながら、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の積層体の製造方法は、例えば、両面金属張積層体を準備する工程、エッチング工程、接合工程、切断工程、及び実装工程を含むことができる。ここで、接合工程及び切断工程以外は、第1の実施の形態と同様に実施できるので、説明を省略する。図15は、本実施の形態における接合工程と切断工程とを連続的に行うための積層体製造装置の概略構成を示す図面である。図15中、符号201はキャリアテープ供給部、符号202はハンダ塗布部、符号203は接合部、符号204は切断部、符号205はキャリアテープ回収部、符号206は積層体回収部である。また、図16は、接合部203における接合直前の状態を示す斜視図である。
【0060】
第1の治具としてのキャリアテープ211Aを巻回させた供給リール212Aと、キャリアテープ211Bを巻回させた供給リール212Bと、第2の治具としてのキャリアテープ211Cを巻回させた供給リール212Cと、が準備される。キャリアテープ供給部201には、供給リール212A,212B,212Cがそれぞれ着脱可能に装着される3つのリール支軸213A,213B,213Cが配備されている。
【0061】
図16にも示すように、キャリアテープ211Aの下面には、所定間隔でリードフレーム21となる金属板21Aが、後の工程で引き剥がし可能な接着剤により島状に固定されている。なお、好ましい変形例では、キャリアテープ211Aに金属板21Aが一体成形されたものを使用することができる。またキャリアテープ211Aの左右の端部には、送り方向に対して平行に、所定間隔でスプロケット孔214A,214A…が設けられている。
【0062】
キャリアテープ211Bは、所定間隔でパターン化金属箔25Bが島状に形成された両面金属張積層体40である。キャリアテープ211Bの左右の端部には、送り方向に対して平行に、所定間隔でスプロケット孔214B,214B…が設けられている。
【0063】
キャリアテープ211Cの上面には、所定間隔でスペーサー33となる金属板33Aが、後の工程で引き剥がし可能な接着剤により島状に固定されている。なお、好ましい変形例では、キャリアテープ211Cに金属板33Aが一体成形されたものを使用することができる。キャリアテープ211Cの左右の端部には、送り方向に対して平行に、所定間隔でスプロケット孔214C,214C…が設けられている。
【0064】
ハンダ塗布部202は、塗布具221A及び221Bを備えており、キャリアテープ211Bの両面(パターン化金属箔25B及び金属箔29A)の所定の部位に、ハンダペースト23A,31Aを部分的に塗布する。なお、ハンダペーストは、対向する接合面のどちらかに塗布しておけばよいので、キャリアテープ211Aの金属板21Aや、キャリアテープ211Cの金属板33Aに塗布しておいてもよい。
【0065】
接合部203には、圧接部231Aと、図示しない加熱手段(ヒーター)を備えたリフロー部231Bと、位置決め解除部231Cが設けられている。圧接部231Aには、キャリアテープ211A〜211Cを位置決め固定する第3の治具としての台座232と、キャリアテープ211A〜211Cを台座232へ向けて押圧する加圧手段233とが配備されている。加圧手段233は台座232に対向して設けられ、図示しない駆動機構によって台座232へ向けて所定のストロークで進出し、退避できるように構成されている。また、加圧手段233は、台座232とともに、キャリアテープ211A,211B及び211Cの進行方向に移動可能に構成されている。台座232には、位置決め用のピン232aが複数(例えば4本)設けられている。ピン232aがキャリアテープ211A〜211Cに設けられたスプロケット孔214A〜214Cに挿入されることにより、接合工程での位置ずれが防止される。なお、加圧手段233は補助的な機能としては有利であるが、無くても構わない。
【0066】
台座232の前方(キャリアテープ211A〜211Cの進行方向の上流側)には、キャリアテープの送り駆動用のスプロケット234A,234B,234Cが配置されている。また、位置決め解除部231Cの後方(キャリアテープ211A〜211Cの進行方向の下流側)には、スプロケット234Dが配置されている。スプロケット234A,234B,234C、234Dの外周面にはキャリアテープ211A〜211Cに設けられたスプロケット孔214A〜214Cに係合する爪が設けられている。そして、スプロケット234A,234B,234C,234Dを同期させながら間欠的に所定角度ずつ回転駆動させることによって、キャリアテープ211A〜211Cが所定長さずつピッチ送りされる。なお、図15における符号235は、キャリアテープ211A〜211Cの浮き上がりを防止するための押さえとなるピンチローラである。
【0067】
スプロケット234A,234B,234C,234Dを駆動させることによって、接合部203の圧接部231A内へ、図16に示したように、キャリアテープ211Aの下面に固定された金属板21Aと、キャリアテープ211B(両面金属張積層体40)のパターン化金属箔25Bと、キャリアテープ211Cの上面に固定された金属板33Aとが上下に重なり合うように配置した状態で供給される。なお、この段階で、ハンダ塗布部202を通過したキャリアテープ211Bのパターン化金属箔25B及び金属箔29Aには、部分的にハンダペースト23A,31Aが塗布されている。
【0068】
そして、加圧手段233によりキャリアテープ211Aの上面(金属板21Aの反対側)を押圧する。押圧により、3本のキャリアテープ211A,211B,211Cが接近し、金属板21Aとパターン化金属箔25B、金属箔29Aと金属板33Aとが、それぞれ金属接合層(ハンダペースト23A,31A)を介して当接した状態となる。
【0069】
次に、金属板21Aとパターン化金属箔25B、及び金属箔29Aと金属板33Aとの積層部分は、加圧手段233と台座232に挟み込まれたままリフロー部231Bへ送られる。リフロー部231B内は、ハンダを溶融させる所定の温度に維持されているため、ハンダが溶融し、金属板21Aとパターン化金属箔25B、金属箔29Aと金属板33Aとがそれぞれ接合される。この際、キャリアテープ211A〜211Cに設けられたスプロケット孔214A〜214Cに、台座232の位置決め用のピン232aが挿入されていることにより、横方向の位置ずれが防止される。そして、金属板21Aとパターン化金属箔25B、及び金属箔29Aと金属板33Aとの積層部分は、リフロー部231Bから位置決め解除部231Cへ送られる。位置決め解除部231Cは常温であるため、ハンダが冷却され接合部分が強固に接着される。そして、位置決め解除部231Cで加圧手段233を退避させることにより、キャリアテープ211A〜211Cのスプロケット孔214A〜214Cと台座232のピン232aとの係合がはずれるので、再びスプロケット234A,234B,234C、234Dを回転駆動させることにより、金属板21Aとパターン化金属箔25B、及び金属箔29Aと金属板33Aとの積層部分を位置決め解除部231Cの外へ送り出すことができる。
【0070】
接合部203を通過し、部分的に接着した状態のキャリアテープ211A〜211Cは、スプロケット234Eによってさらに切断部204へ送られる。
【0071】
切断部204には、カッターユニット241が設けられている。カッターユニット241の構成は、第1の実施の形態のカッターユニット131(図8参照)と同様であるため、説明を省略する。カッターユニット241では、キャリアテープ211A〜211Cから、両面金属張積層体40の上下両側に金属板21A及び金属板33Aが接合された積層体60(図9参照)が部分的に打ち抜かれる。なお、図15では、部分的に接着した状態のキャリアテープ211A〜211Cをスプロケット234Eによって反転させてから切断部204に供給しているが、スプロケット234Eを設けず(反転させず)にそのまま切断部204へ供給してもよい。
【0072】
切断部204を通過した打ち抜き後のキャリアテープ211A〜211Cは、スプロケット234Fによってさらにキャリアテープ回収部205に送られ、回収される。
【0073】
積層体回収部206では、切断部204で打ち抜かれた積層体60が例えばベルトコンベア261により搬送され、回収される。
【0074】
以上のようにして、リードフレーム21と、接合層23と、第1の金属箔層25と、絶縁樹脂接着層27と、第2の金属箔層29と、接合層31と、スペーサー33が、上からこの順に積層された積層体60(図9参照)をリール・トゥ・リール方式で連続的に製造することができる。以降の工程(実装工程)は、第1の実施の形態と同様に実施できる。
【0075】
本実施の形態では、キャリアテープ211A〜211Cを用いて連続的に積層体60を製造できるので、生産性に優れており、しかも、スプロケット234A〜234Dにより所定ピッチでキャリアテープ211A〜211Cを送ることができるので、位置決め精度に優れ、信頼性の高い電子部品を製造できる。
【0076】
本実施の形態における他の構成及び効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0077】
[第3の実施の形態]
次に図17を参照しながら、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の積層体の製造方法は、例えば、両面金属張積層体を準備する工程、エッチング工程、接合工程、切断工程、及び実装工程を含むことができる。ここで、エッチング工程、接合工程及び切断工程以外は、第1の実施の形態と同様に実施できるので、説明を省略する。図17は、本実施の形態におけるエッチング工程と接合工程と切断工程とを連続的に行うための積層体製造装置の概略構成を示す図面である。図17中、符号40は両面銅張積層板(CCL)等の両面金属張積層体であり、符号302はエッチング加工部、符号303はハンダ塗布部303、符号304は接合部、符号305は図示しない熱風オーブンを備えた加熱部、符号306は切断部、符号307A,307Bは、両面金属張積層体40を図中矢印で示す方向へ搬送する一対のロールである。なお、図17中のA−Aの間は接続しているものとする。
【0078】
本実施の形態では、両面金属張積層体40をロール・トゥ・ロール方式で搬送させながら、これをキャリアとして目的の積層体を連続的に製造する。まず、ロール307Aから送り出された両面金属張積層体40は、エッチング加工部302へ送られる。エッチング加工部302では、両面金属張積層体40の両側の金属箔が所定のパターンにエッチングされる。この際、金属箔25A及び金属箔29Aの両方をエッチングしてパターン化金属箔25B及びパターン化金属箔29Bを形成する。ここで、本実施の形態では、パターン化金属箔29Bの面積よりもパターン化金属箔25Bの面積が大きくなるようにエッチング加工を行う。また、エッチング加工部では、例えばドリル加工や打ち抜き加工により図示しないスプロケット孔も形成する。以降の工程では、エッチング加工後の両面金属張積層体を符号301Aで示す。
【0079】
次に、ハンダ塗布部303では、塗布具311A、311Bにより、両面金属張積層体301Aのパターン化金属箔25B及びパターン化金属箔29Bにハンダペースト23A,31Aを塗布する。この工程は第1及び第2の実施の形態と同様に行うことができる。
【0080】
次に、接合部304では、パターン化金属箔25Bの側にリードフレーム21となる金属板21Aを備えたリードフレーム治具312を配置し、パターン化金属箔29Bの側にスペーサー33となる金属板33Aが固定された金型313を配置する。リードフレーム治具312は、枠状の治具本体(図示省略)と、金属板21Aと、治具本体に金属板21Aを接続する支持部312aと、を有している。リードフレーム治具312は、一枚の金属板を打ち抜き加工することによって形成されている。また、治具本体には、金属板21Aを間に挟んで対角線上に2つの位置決め用の孔が設けられている。また、金型313は、位置決め用のピン313aと、スペーサー33となる金属板33Aを位置決めして固定しておくための凹部313bを有している。そして、位置決め用のピン313aを、両面金属張積層体301Aのスプロケット孔(図示省略)及びリードフレーム治具312の位置決め用の孔(図示省略)に挿入して位置合わせし、金属板21Aとパターン化金属箔25Bとパターン化金属箔29Bと金属板33Aを積層する。
【0081】
次に、積層した状態の金属板21Aとパターン化金属箔25Bとパターン化金属箔29Bと金属板33Aを、金型313に装着した状態で加熱部305に搬入する。加熱部305では、位置決め用のピン313aによって位置合わせをしたまま、例えば300℃以上の温度で15〜30分間に加熱し、ハンダペースト23A,31Aを溶融させて金属板21Aとパターン化金属箔25B、パターン化金属箔29Bと金属板33Aを接合し、積層部分301Bを形成する。
【0082】
次に、積層部分301Bを金型313に装着した状態で、加熱部305から搬出し、所定温度例えば40℃以下まで冷却してハンダを固化させた後、金型313を取り外して切断部306へ搬入する。切断部306では、積層部分301Bからカッター314によってリードフレーム治具312の支持部312aと、両面金属張積層体301Aの樹脂フィルム27A(図示省略)を切断し、積層体60’を得る。本実施の形態では、パターン化金属箔29Bよりパターン化金属箔25Bが大面積にエッチング加工されているため、切断部306で切断する際に、単一の可動刃314aによる打ち抜きが可能になる。
【0083】
<変形例>
図18は、第3の実施の形態の積層体の製造方法の変形例を示している。この変形例では、図18における加熱部305までの工程は、図17と同様であり、加熱部305から搬出した後の工程を細分化している。具体的には、本変形例は、第1の切断部320での第1の切断工程、第2の切断部321での第2の切断工程、及び第3の切断部323での第3の切断工程を含んでいる。なお、図18において、図17と同じ構成には同一の符号を付して説明を省略する。また、図18中のA−Aの間、及びB−Bの間は接続しているものとする。
【0084】
本変形例では、積層部分301Bを加熱部305で処理するまでの工程は、図17と同様であるため、説明を省略する。積層部分301Bを加熱部305から搬出し、所定温度例えば40℃以下まで冷却した後、金型313を取り外して第1の切断部320へ搬入する。第1の切断部320では、まず積層部分301Bからカッター320Aによってリードフレーム治具312の支持部312aを切断する。以降の工程では、両面金属張積層体301Aの樹脂フィルム27A(図示省略)のみによってロール307A,307B間が接続された状態となる。
【0085】
次に、積層部分301Bを第2の切断部321に搬送し、図示しない打ち抜きプレス機でリードフレーム治具312の支持部312aの残部などの余分な部分を除去する。
【0086】
次に、積層部分301Bを洗浄部322に搬送し、ハンダペースト23A,31A中に含まれていたフラックス(松やになど)の成分を洗浄液Sで洗い落とし清浄化する。洗浄液Sとしては、例えば塩化メチレン、トリクレン又は臭素系洗浄剤を用いることができる。
【0087】
次に、積層部分301Bを第3の切断部323に搬送し、図示しない打ち抜きプレス機で両面金属張積層体301Aの樹脂フィルム27Aから積層部分301Bを打ち抜くことにより、積層体60’を得ることができる。
【0088】
以上のように、本変形例では、第3の実施の形態において、切断工程を多段階に分けるとともに、洗浄工程を含めている。本実施の形態における他の構成及び効果は、第1及び第2の実施の形態と同様である。
【実施例】
【0089】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0090】
[実施例1]
(リードフレーム治具の作製)
銅板X1(縦80mm×横80mm×厚さ1mm)を用意し、図19に示したように、枠状の治具本体401と、リードフレームとなる中央部金属板402と、治具本体401に中央部金属板402を接続する支持部403とが残るように打ち抜きによる加工を行った後、治具本体401に位置決め用の孔404(直径3.2mm)を2箇所、短軸ドリルで孔明け加工を行い、リードフレーム治具Jを作製した。
【0091】
(金型の作製)
銅板X2(縦80mm×横80mm×厚さ10mm)を用意し、銅板X3(縦50mm×横50mm×厚さ1mm)をはめ込むための溝(深さ0.5mm)を銅板X2の中央部に形成し、位置決め用のピン(直径3.2mm)を銅版X2に2箇所立てることによって、金型Mを作製した。
【0092】
(目的の積層体の作製)
銅箔層411(厚さ18μm)、ポリイミド樹脂層412(厚さ25μm)、及び銅箔層413(厚さ18μm)から構成される積層板Y(新日鐵化学株式会社製、商品名;MB18−25−18CEG、長尺状、幅80mm)を用意し、この積層板Yにおける銅箔層411及び413にエッチング加工を施すことによって、銅箔層411側の中央部に縦60mm×横60mmの銅箔部411aが残るように、及び銅箔部411aの周辺を囲むような5mm幅の枠411bをそれぞれ島状に形成し、さらに銅箔層413側の中央部に縦50mm×横50mmの銅箔部413aが残るように島状に形成し、パターン化積層板Y2を得た。このパターン化積層板Y2の枠411bの対角線上に位置決め用の孔(直径3.2mm)411cを2箇所、短軸ドリルで孔明け加工を行った(図20を参照)。形成した銅箔部411a及び413aの表面にハンダペースト(タムラ化研株式会社製、商品名;ソルダーペーストLFSOLDER TLF−204−151)を均一に塗布し、中間体Y3を作製した。
【0093】
次に、金型Mの2個のピンと、中間体Y3及びリードフレーム治具Jの位置決め孔によって位置合わせを行って、金型Mの上に中間体Y3及びリードフレーム治具Jを積層した。これらを積層した状態で、予め310℃に加熱した熱風オーブンに挿入して20分間加熱した。熱風オーブンより取り出し、40℃以下に冷却後、カッターによってリードフレーム治具Jを切断し、金型Mを外した後、打ち抜きプレスで不要部分を取り除いた。続いて、中間体Y3におけるポリイミド樹脂層412を切断及び打ち抜きして除去し、目的の積層体を得た。
【0094】
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。当業者は本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を成し得、それらも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
21A…金属板、25B…パターン化金属箔、27A…樹脂フィルム、29A…金属箔、33A…金属板、40…両面金属張積層体、40a…位置決め用の孔、111…治具、111a…本体、111b…支持部、111c…位置決め用の孔、121…金型、121a…ピン、121b…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を支持するリードフレームと、前記リードフレームに電気伝導可能かつ熱伝導可能に接合された第1の金属箔層と、前記第1の金属箔層に接着した絶縁樹脂接着層と、前記絶縁樹脂接着層に接着した第2の金属箔層と、前記第2の金属箔層に熱伝導可能に接合され、放熱部材への熱伝導を媒介する伝熱金属層と、を備えた電子部品用積層体の製造方法であって、
前記リードフレームとなる金属板が島状に担持され、かつ位置決め用貫通孔を有する第1の治具と、前記絶縁樹脂接着層の片面に前記第1の金属箔層が島状に形成され、他方の面に前記第2の金属箔層が積層されており、かつ位置決め用貫通孔を有する金属・樹脂積層体と、前記伝熱金属層となる金属板が固定された第2の治具と、を準備する工程と、
前記リードフレームとなる金属板と前記第1の金属箔層と前記伝熱金属層となる金属板とを位置合わせした状態でろう接により形成した金属層を介して重ね合わせ、加熱することにより接合する工程と、
接合後に前記第1の治具と、前記金属・樹脂積層体とを切断することにより積層体を得る工程と、
を備えた電子部品用積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第2の治具が位置決め用突起を有しており、前記接合する工程では、前記位置決め用突起に前記位置決め用貫通孔を係合させて位置合わせを行う請求項1に記載の電子部品用積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第1の治具及び前記金属・樹脂積層体が、テープ状に形成されており、リール・トウ・リール方式で連続的に供給される請求項2に記載の電子部品用積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第2の治具が位置決め用貫通孔を有しており、前記接合する工程では、位置決め用突起を有する第3の治具を用いて、前記位置決め用突起に前記位置決め用貫通孔を係合させて位置合わせを行う請求項1に記載の電子部品用積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の治具、前記金属・樹脂積層体及び第2の治具が、テープ状に形成されており、リール・トウ・リール方式で連続的に供給される請求項4に記載の電子部品用積層体の製造方法。
【請求項6】
半導体素子を支持するリードフレームと、前記リードフレームに電気伝導可能かつ熱伝導可能に接合された第1の金属箔層と、前記第1の金属箔層に接着した絶縁樹脂接着層と、前記第2の金属箔層に接着した、放熱部材への熱伝導を媒介する伝熱金属層と、を備えた電子部品用積層体の製造方法であって、
前記リードフレームとなる金属板が島状に担持され、かつ位置決め用貫通孔を有する第1の治具と、前記絶縁樹脂接着層の片面に前記第1の金属箔層が島状に形成され、他方の面に前記伝熱金属層が積層されており、かつ位置決め用貫通孔を有する金属・樹脂積層体と、を準備する工程と、
前記リードフレームとなる金属板と前記第1の金属箔層とを位置合わせした状態で、ろう接により形成した金属層を介して重ね合わせ、加熱することにより接合する工程と、
接合後に前記第1の治具と、前記金属・樹脂積層体とを切断することにより積層体を得る工程と、
を備えた電子部品用積層体の製造方法。
【請求項7】
前記接合する工程では、位置決め用突起を有する第3の治具を用いて、前記位置決め用突起に前記位置決め用貫通孔を係合させて位置合わせを行う請求項6に記載の電子部品用積層体の製造方法。
【請求項8】
前記第1の治具及び前記金属・樹脂積層体が、テープ状に形成されており、リール・トウ・リール方式で連続的に供給される請求項7に記載の電子部品用積層体の製造方法。
【請求項9】
両面金属張積層体の片面の金属箔を部分的にエッチングすることにより、前記金属・樹脂積層体を調製する工程をさらに備えた請求項1から8のいずれか1項に記載の電子部品用積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−15282(P2012−15282A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149584(P2010−149584)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】