説明

電極接続用接着剤

【課題】電極接続用接着剤を介して電極間を接続する際に、低温かつ短時間で硬化させることができるとともに、電極間の接続信頼性を向上することができ、かつ保存安定性と耐熱性に優れる電極接続用接着剤を提供することを目的とする。
【解決手段】エポキシ樹脂を主成分とし、導電性粒子、および硬化剤を含有する電極接続用接着剤2を介して、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5と、配線基板1の金属電極4が接続されている。そして、電極接続用接着剤2は、エポキシ樹脂として、分子量が10000以上であるとともに、ガラス転移温度が80℃以上であるフェノキシ樹脂と、結晶性エポキシ樹脂を含有するとともに、硬化剤として、粉末状の尿素系硬化剤とマイクロカプセル型硬化剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の被接合部材の間に設けられ、加熱加圧処理を行うことにより、複数の被接合部材の各々に形成された電極間を接続する電極接続用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、高機能化の流れの中で、構成部品(例えば、液晶製品における電子部品)内の接続端子の微小化が進んでいる。このため、エレクトロニクス実装分野においては、そのような端子間の接続を容易に行える種々の電極接続用接着剤として、フィルム状の接着剤が広く使用されている。例えば、金メッキされた銅電極からなる金属電極が形成されたフレキシブルプリント配線板(FPC)と、ITO電極からなる配線電極が形成されたガラス基板等の配線基板の接合や、ICチップ等の電子部品とリジッド基板(PCB)の接合に使用されている。
【0003】
この電極接続用接着剤は、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂と熱硬化性樹脂の硬化を促進させるための硬化剤に導電性粒子を分散させた接着剤であり、接続対象の間に挟まれ、加熱、加圧されて、接続対象を接着する。即ち、加熱、加圧により接着剤中の樹脂が流動し、例えば、フレキシブルプリント配線板の表面に形成された銅電極と、配線基板の表面に形成されたITO電極の隙間を封止すると同時に、導電性粒子の一部が対峙する銅電極とITO電極の間に噛み込まれて電気的接続が達成される。そして、電極接続用接着剤においては、当該電極接続用接着剤の厚み方向に相対峙する、接続された電極間の抵抗(接続抵抗、または導通抵抗)を低くするという導通性能と、電極接続用接着剤の面方向に隣り合う電極間の抵抗(絶縁抵抗)を高くするという絶縁性能が必要とされている。
【0004】
また、一般に、この電極接続用接着剤においては、低温(150℃以下)硬化性と高い保存安定性が要求され、これらの低温硬化性と保存安定性を両立させるための電極接続用接着剤が提案されている。より具体的には、エポキシ樹脂を主成分とし、エポキシ樹脂硬化剤として、尿素系硬化剤とアミド系硬化剤を併用した電極接続用接着剤が開示されている。そして、このような構成により、保存安定性に優れ、低温硬化が実現できる電極接続用接着剤を得ることができると記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、ポリサルファイト骨格を有するエポキシ樹脂と、熱可塑性エラストマー成分を含有するエポキシ樹脂および架橋ゴム成分を含有するエポキシ樹脂の少なくとも一方のエポキシ樹脂と、軟化点が50℃以上の固形エポキシ樹脂を主成分とし、エポキシ樹脂硬化剤として、尿素系硬化剤と潜在性硬化剤を併用した電極接続用接着剤が開示されている。そして、このような構成により、保存安定性に優れ、低温硬化が実現できる電極接続用接着剤を得ることができると記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開昭59−136368号公報
【特許文献2】特許第3400881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の電極接続用接着剤においては、エポキシ樹脂とアミド系硬化剤の反応速度が遅いため、電極接続用接着剤を低温(150℃以下)かつ短時間(例えば、10秒以下)で硬化させることが困難であった。また、上記特許文献2に記載の電極接続用接着剤においては、接着剤の耐熱性に乏しく、電極接続用接着剤に要求される耐環境性をクリアすることができないという問題があった。また、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応速度が非常に遅く、接着剤の硬化に長時間を要するため、電極接続用接着剤を低温(150℃以下)かつ短時間(例えば、10秒以下)で硬化させることが困難であった。更に、フレキシブルプリント配線板の基材(例えば、ポリイミド樹脂からなる基材)と、ガラスエポキシ基板等の配線基板に対する密着力が十分に得られず、電極接続用接着剤を介して電極間を接続する際に、電極間の接続信頼性が低下するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、電極接続用接着剤を介して電極間を接続する際に、低温かつ短時間で硬化させることができるとともに、電極間の接続信頼性を向上することができ、かつ保存安定性と耐熱性に優れる電極接続用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、エポキシ樹脂を主成分とし、導電性粒子、および硬化剤を含有する電極接続用接着剤において、エポキシ樹脂が、分子量が10000以上であるとともに、ガラス転移温度が80℃以上であるフェノキシ樹脂と、結晶性エポキシ樹脂を含有し、硬化剤が、粉末状の尿素系硬化剤とマイクロカプセル型硬化剤を含有することを特徴とする。
【0009】
同構成によれば、電極接続用接着剤に含有されるエポキシ樹脂として、分子量が10000以上であるとともに、ガラス転移温度が80℃以上であるフェノキシ樹脂を使用するため、フレキシブルプリント配線板の基材(例えば、ポリイミド樹脂からなる基材)やガラスエポキシ基板等の配線基板に対する密着力が向上する。その結果、例えば、フレキシブルプリント配線板の金属電極(例えば、金メッキが施された銅電極)と配線基板の配線電極(例えば、金メッキが施された銅電極)間を、電極接続用接着剤を介して接続する際に、電極間の接続信頼性が向上する。また、電極接続用接着剤に含有されるエポキシ樹脂として、結晶性エポキシ樹脂を使用するため、電極接続用接着剤の耐熱性が向上し、電極接続用接着剤に要求される耐環境性をクリアすることが可能になるとともに、エポキシ樹脂硬化剤との反応性が高くなり、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応速度が速くなるため、電極接続用接着剤を短時間(例えば、10秒間)で硬化させることが可能になる。また、電極接続用接着剤に含有される硬化剤として、粉末状の尿素系硬化剤とマイクロカプセル型硬化剤を併用するため、結晶性エポキシ樹脂を含有する電極接続用接着剤において低温(150℃以下)かつ短時間(例えば、10秒間)で硬化させるとともに、電極接続用接着剤の保存安定性を向上させることが可能になる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電極接続用接着剤であって、電極接続用接着剤の全体に対する尿素系硬化剤の配合量が1質量%以上20質量%以下であるとともに、マイクロカプセル型硬化剤100質量部に対する尿素系硬化剤の配合量が20質量部以上100質量部以下であることを特徴とする。同構成によれば、電極接続用接着剤を低温で確実に硬化させることが可能になるとともに、電極接続用接着剤の保存安定性を確実に向上することが可能になる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の電極接続用接着剤であって、フェノキシ樹脂の分子量が、30000以上であることを特徴とする。同構成によれば、フレキシブルプリント配線板の基材やガラスエポキシ基板等の配線基板に対する密着力がより一層向上するため、電極接続用接着剤を介して金属電極と配線電極間を接続する際に、電極間の接続信頼性がより一層向上する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電極接続用接着剤であって、尿素系硬化剤の平均粒径が3μm以上15μm以下であることを特徴とする。
【0013】
同構成によれば、電極接続用接着剤の保存安定性を確実に向上させることができるとともに、電極接続用接着剤を介して金属電極と配線電極間を接続する際に、電極間の接続信頼性を確実に向上させることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の電極接続用接着剤であって、導電性粒子が、磁性を有する金属単体、磁性を有する2種類以上の合金、磁性を有する金属と他の金属との合金、磁性を有する金属を含む複合体からなる群より選ばれる1の金属または複合体であることを特徴とする。
【0015】
同構成によれば、導電性粒子として、磁性を有する金属単体、磁性を有する2種類以上の合金、磁性を有する金属と他の金属との合金、磁性を有する金属を含む複合体からなる群より選ばれる1の金属または複合体を使用することにより、かかる金属または複合体自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子を配向させることが可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電極接続用接着剤であって、前記導電性粒子は径と長さの比(アスペクト比)が5以上の導電性粒子であり、かつ前記電極接続用接着剤の形状はフィルム状であり、前記導電性粒子がフィルムの厚み方向に配向していることを特徴とする。
【0017】
同構成によれば、導電性粒子は径と長さの比(アスペクト比)が5以上の導電性粒子であるため、導電性粒子の配合量を増やすことなく、接続したい電極同士を電気的に接続することが可能になる。また、導電性粒子がフィルムの厚み方向に配向しているため、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、接続したい多数の電極間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になるという効果が、より一層向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温かつ短時間で硬化させることができるとともに、電極間の接続信頼性を向上することができ、かつ保存安定性と耐熱性に優れる電極接続用接着剤を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、電極接続用接着剤により接合される被接合部材として、リジッドな基材上に形成された第1の電極を有する配線基板と、フレキシブルな基材上に形成された第2の電極を有するフレキシブルプリント配線板を例に挙げて説明する。図1は、本実施形態に係る電極接続用接着剤により、フレキシブルプリント配線板を実装した配線基板を示す断面図である。図1に示すように、熱硬化性樹脂を主成分とし、フィルム形状を有する電極接続用接着剤2を介して、第1の基板である配線基板1(例えば、ガラス基板やガラスエポキシ基板等)が有する第1の電極である金属電極4が、第2の基板であるフレキシブルプリント配線板3が有する第2の電極である金属電極5に接続されている。なお、フレキシブルプリント配線板3の基材としては、柔軟性に優れた樹脂材料からなるフィルム状の基材が使用される。かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミドやポリアミドイミドなどの、フレキシブルプリント配線板用として耐熱性のある樹脂のフィルムがいずれも使用可能である。また、汎用性のある樹脂フィルムとして、例えば、ポリアミド系の樹脂フィルム特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートが好適に使用される。
【0020】
本発明の金属電極4,5としては、例えば、フレキシブルプリント配線板3の表面に、銅箔等の金属箔を積層し、当該金属箔を、常法により、露光、エッチング、メッキ処理することにより形成された、金メッキが施された銅電極が使用される。
【0021】
また、本発明に使用される電極接続用接着剤2は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、導電性粒子を含有するものを使用する構成としている。例えば、エポキシ樹脂を主成分とし、当該樹脂中に導電性粒子が分散されたものが使用でき、エポキシ樹脂に、ニッケル、銅、銀、金あるいは黒鉛等の導電性粒子の粉末が分散されたものが挙げられる。なお、電極接続用接着剤2としては、厚みが10μm〜40μmのものを使用することができる。
【0022】
そして、本実施形態においては、エポキシ樹脂として、分子量が10000以上の高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂を使用する構成としている。このようなフェノキシ樹脂を使用することにより、樹脂中の水酸基の含有量が増加するため、強力な水素結合を得ることができるようになり、フレキシブルプリント配線板3の基材(例えば、ポリイミド樹脂からなる基材)やガラスエポキシ基板等の配線基板1に対する親和性が向上する。従って、フレキシブルプリント配線板3の基材や配線基板1に対する密着力が向上するため、電極接続用接着剤2を介して金属電極5と金属電極4間を接続する際に、電極間の接続信頼性が向上する。なお、上記密着力をより一層向上させるとの観点から、分子量が30000以上のフェノキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0023】
また、高分子量のエポキシ樹脂を使用すると、フィルム形成性が高くなるとともに、接続温度における樹脂の溶解粘度を高くでき、後述の導電性粒子の配向を乱すことなく接続できるという効果が得られる。
【0024】
また、本実施形態においては、上述のフェノキシ樹脂として、ガラス転移温度が80℃以上のものを使用する構成としている。このような構成により、電極接続用接着剤2のガラス転移温度が向上し、耐熱性が向上するため、電極接続用接着剤2に要求される耐環境性をクリアすることが可能になる。なお、ここでいう「ガラス転移温度」とは、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された電極接続用接着剤2、および電極接続用接着剤2を構成するフェノキシ樹脂の各々の物性値のことをいう。
【0025】
また、本実施形態においては、エポキシ樹脂として、上述のフェノキシ樹脂と併用して結晶性エポキシ樹脂を使用する構成としている。なお、ここで言う「結晶性」とは、「融点を有し、融点を超えると急激に粘度が低下する現象」のことを言う。このような構成により、結晶性エポキシ樹脂は、加熱により、速やかに粘度が低下するため、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応速度が速くなる。従って、電極接続用接着剤2を短時間(例えば、10秒以下)で硬化させることが可能になる。結晶性エポキシ樹脂の融点は、50℃以上90℃以下が好ましい。融点が50℃よりも低い場合と成膜が難しくなる。また融点が90℃を超えると、反応速度を向上する効果が低くなる。
【0026】
結晶性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、F型の蒸留品、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等を使用することができる。
【0027】
また、結晶性エポキシ樹脂としては、500以下の低分子量エポキシ樹脂を使用することが好ましい。これは、低分子量のエポキシ樹脂を使用すると、架橋密度が高まって耐熱性が向上するとともに、樹脂の凝集力が高まるため、接着力が高くなるという効果が得られるからである。
【0028】
このように、本実施形態においては、高分子量エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂と低分子量エポキシ樹脂である結晶性エポキシ樹脂とを組み合わせて使用することにより、電極接続用接着剤2の性能のバランスを取ることが可能になる。なお、フェノキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂の配合量は、電極接続用接着剤2の性能のバランスを考慮して、適宜、選択することができる。
【0029】
なお、本実施形態においては、電極接続用接着剤2の全体に対するフェノキシ樹脂の配合量を10質量%以上40質量%以下とする構成としている。これは、フェノキシ樹脂の配合量が、10質量%より小さい場合は、うまくフィルム化できないという問題が生じ40質量%より大きい場合は、実装時の流動性が悪くなり接続抵抗が高くなるからである。
【0030】
また、本実施形態においては、電極接続用接着剤2の全体に対する結晶性エポキシ樹脂の配合量を10質量%以上40質量%以下とする構成としている。これは、結晶性エポキシの配合量が、10質量%より小さい場合は反応速度を高める効果が薄くなり、40質量%より大きい場合は、実装時に樹脂が流動しすぎて接続信頼性を損なうからである。
【0031】
また、本実施形態においては、エポキシ樹脂硬化剤として、尿素系硬化剤を使用する構成としている。この尿素系硬化剤は低温(150℃以下)での硬化性に優れているため、上述の結晶性エポキシ樹脂を含有する電極接続用接着剤2において尿素系硬化剤を併用することにより、電極接続用接着剤2を低温(150℃以下)かつ短時間(10秒以下)で硬化させることが可能になる。
【0032】
また、尿素系硬化剤として、粉末形状を有するものを使用することが好ましい。粉末状の硬化剤を溶かさないよう接着剤中に分散させることにより、エポキシ樹脂と硬化剤が十分に接触しない状況を実現できるため、電極接続用接着剤2の保存安定性を向上することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態においては、粉末形状を有する尿素系硬化剤として、平均粒径が3μm以上15μm以下のものを使用することが好ましい。これは、平均粒径が3μmよりも小さい場合は、上述の結晶性エポキシ樹脂と尿素系硬化剤の接触面積が増加するため、室温において結晶性エポキシ樹脂と尿素系硬化剤の反応が開始してしまい、電極接続用接着剤2の保存安定性が低下するという不都合が生じる場合がある。また、平均粒径が15μmよりも大きい場合は、フィルム形状を有する電極接続用接着剤2を作成する場合に、フィルムの表面が凹凸形状となり、電極接続用接着剤2を介して金属電極5と金属電極4間を接続する際に、尿素系硬化剤が溶け残るため、金属電極5と金属電極4間の接続信頼性が低下する場合があるためである。
【0034】
なお、本実施形態においては、電極接続用接着剤2の全体に対する尿素系硬化剤の配合量を1質量%以上20質量%以下とする構成としている。これは、尿素系硬化剤の配合量が、1質量%より小さい場合は、低温硬化性が十分に向上しない場合があり、20質量%より大きい場合は、保存安定性が低下する場合があるからである。
【0035】
また、本実施形態においては、エポキシ樹脂硬化剤として、上述の尿素系硬化剤と併用して潜在性硬化剤を使用する構成としている。この潜在性硬化剤は、低温での保存安定性に優れ、室温では殆ど硬化反応を起こさないが、熱や光等により、速やかに硬化反応を行う硬化剤である。この潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、アミンイミド、ポリアミン系、第3級アミン、アルキル尿素系等のアミン系、ジシアンジアミド系、酸無水物系、フェノール系、および、これらの変性物が例示され、これらは単独または2種以上の混合物として使用できる。
【0036】
また、これらの潜在性硬化剤中でも、低温での保存安定性、および速硬化性に優れているとの観点から、イミダゾール系潜在性硬化剤が好ましく使用される。イミダゾール系潜在性硬化剤としては、公知のイミダゾール系潜在性硬化剤を使用することができる。より具体的には、イミダゾール化合物のエポキシ樹脂との付加物が例示される。イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ドデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾールが例示される。
【0037】
また、本実施形態においては、特に、これらの潜在性硬化剤を、ポリウレタン系、ポリエステル系等の高分子物質や、ニッケル、銅等の金属薄膜およびケイ酸カルシウム等の無機物で被覆してマイクロカプセル化したマイクロカプセル型硬化剤を使用する構成としている。このようなマイクロカプセル型硬化剤を使用することにより、電極接続用接着剤2の保存安定性と耐熱性が向上する。
【0038】
また、本実施形態においては、マイクロカプセル型硬化剤として、平均粒径が5μm以下のものを使用することが好ましい。これは、平均粒径が5μmよりも大きい場合は、実装時に十分に溶解せず溶け残るという不都合が生じる場合があるためである。
【0039】
なお、本実施形態においては、電極接続用接着剤2の全体に対するマイクロカプセル型硬化剤の配合量を20質量%以上50質量%以下とする構成としている。これは、マイクロカプセル型硬化剤の配合量が、20質量%より小さい場合は、硬化反応が完全に進行しないという不都合が生じる場合があり、50質量%より大きい場合は、余剰な硬化剤が接着剤中に残り、接続信頼性に悪影響を及ぼすという不都合が生じる場合があるからである。
【0040】
また、本実施形態においては、マイクロカプセル型硬化剤100質量部に対する尿素系硬化剤の配合量を20質量部以上100質量部以下とする構成としている。これは、尿素系硬化剤の配合量が、20質量%より小さい場合は、低温硬化性が十分に向上しない場合があり、100質量%より大きい場合は、保存安定性が低下する場合があるからである。
【0041】
また、電極接続用接着剤2として、図2に示すように、導電性粒子6を含む異方導電性接着剤も使用することができる。より具体的には、当該異方導電性接着剤として、例えば、上述のエポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂と結晶性のエポキシ樹脂を主成分とし、当該樹脂中に、微細な金属粒子(例えば、球状の金属微粒子や金属でメッキされた球状の樹脂粒子からなる金属微粒子)が多数、直鎖状に繋がった形状、または針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有する金属粉末により形成された導電性粒子6が分散されたものを使用することができる。なお、ここで言うアスペクト比とは、図3に示す、導電性粒子6の短径(導電性粒子6の断面の長さ)Rと長径(導電性粒子6の長さ)Lの比のことを言う。
【0042】
このような導電性粒子6を使用することにより、異方導電性接着剤として、電極接続用接着剤2の面方向(厚み方向Xに直交する方向であって、図2の矢印Yの方向)においては、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、厚み方向Xにおいては、多数の金属電極4−金属電極5間を、一度にかつ各々を独立して接続し、低抵抗を得ることが可能になる。
【0043】
また、導電性粒子6のアスペクト比が5以上であることが好ましい。このような導電性粒子6を使用することにより、電極接続用接着剤2として、異方導電性接着剤を使用する場合に、導電性粒子6間の接触確率が高くなる。従って、導電性粒子6の配合量を増やすことなく、金属電極4と金属電極5を電気的に接続することが可能になる。
【0044】
また、この異方導電性接着剤において、導電性粒子6の長径Lの方向を、フィルム状の異方導電性接着剤を形成する時点で、異方導電性接着剤の厚み方向Xにかけた磁場の中を通過させることにより、当該厚み方向Xに配向させて用いるのが好ましい。このような配向にすることにより、上述の、隣り合う電極間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、多数の金属電極4−金属電極5間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になるという効果が、より一層向上する。
【0045】
また、本発明に使用される金属粉末は、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自体が有する磁性により、磁場を用いて導電性粒子6を配向させることが可能になるからである。例えば、ニッケル、鉄、コバルトおよびこれらを含む2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0046】
なお、導電性粒子6のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性粒子6の場合は、断面の最大長さを短径としてアスペクト比を求める。また、導電性粒子6は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性粒子6の最大長さを長径としてアスペクト比を求める。
【0047】
本実施形態の電極接続用接着剤を用いたフレキシブルプリント配線板等の配線板の実装方法としては、エポキシ樹脂を主成分とする電極接続用接着剤2を介して、加熱加圧処理を行うことにより、当該エポキシ樹脂を硬化させ、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5を配線基板1の金属電極4に接続する。
【0048】
より具体的には、ガラス基板等の配線基板1上に、フェノキシ樹脂と結晶性エポキシ樹脂を主成分とし、マイクロカプセル型硬化剤、尿素系硬化剤、および導電性粒子を含有する導電性の電極接続用接着剤2を載置し、当該電極接続用接着剤2を所定の温度に加熱した状態で、配線基板1の方向へ所定の圧力で加圧し、電極接続用接着剤2を配線基板1上に仮接着する。次いで、フレキシブルプリント配線板3を下向きにした状態で、配線基板1の表面に形成された金属電極4と、フレキシブルプリント配線板3の表面に形成された金属電極5との位置合わせをしながら、フレキシブルプリント配線板3を電極接続用接着剤2上に載置することにより、配線基板1とフレキシブルプリント配線板3との間に電極接続用接着剤2を介在させる。次いで、電極接続用接着剤2を所定の温度に加熱した状態で、フレキシブルプリント配線板3を介して、当該電極接続用接着剤2を配線基板1の方向へ所定の圧力で加圧することにより、電極接続用接着剤2を加熱溶融させる。なお、上述のごとく、電極接続用接着剤2は、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を主成分としているため、当該電極接続用接着剤2は、上述の温度にて加熱をすると、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。また、マイクロカプセル型硬化剤は、カプセルによる被覆状態を解除して、カプセル内部の硬化剤を溶融させるために、ある程度の温度が必要となるため、上述の加熱加圧処理においては、まず、尿素系硬化剤とエポキシ樹脂の硬化反応が開始され、次いで、マイクロカプセル型硬化剤とエポキシ樹脂の硬化反応が開始されることになる。そして、予め設定した電極接続用接着剤2の硬化時間が経過すると、電極接続用接着剤2の硬化温度の維持状態、および加圧状態を開放し、冷却を開始することにより、導電性の電極接続用接着剤2を介して、金属電極4と金属電極5を接続し、フレキシブルプリント配線板3を配線基板1上に実装する。
【0049】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、電極接続用接着剤2に含有されるエポキシ樹脂として、分子量が10000以上であるとともに、ガラス転移温度が80℃以上であるフェノキシ樹脂を使用する構成としている。従って、フレキシブルプリント配線板3の基材やガラスエポキシ基板等の配線基板1に対する密着力が向上するため、電極接続用接着剤2を介して金属電極5と金属電極4間を接続する際に、電極間の接続信頼性を向上させることができる。また、電極接続用接着剤2に含有されるエポキシ樹脂として、結晶性エポキシを使用する構成としている。従って、電極接続用接着剤2の耐熱性が向上するため、電極接続用接着剤2に要求される耐環境性をクリアすることが可能になる。更に、結晶性エポキシを使用することにより、エポキシ樹脂硬化剤との反応性が高くなり、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応速度が速くなるため、電極接続用接着剤2を短時間(例えば、10秒間)で硬化させることが可能になる。また、本実施形態においては、電極接続用接着剤2に含有される硬化剤として、粉末状の尿素系硬化剤を使用する構成としている。従って、結晶性エポキシ樹脂を含有する電極接続用接着剤2において尿素系硬化剤を併用することにより、電極接続用接着剤2を低温(150℃以下)かつ短時間(例えば、10秒間)で硬化させることが可能になるとともに、電極接続用接着剤2の保存安定性を向上することが可能になる。また、電極接続用接着剤2に含有される硬化剤として、マイクロカプセル型硬化剤を使用する構成としている。従って、電極接続用接着剤2の保存安定性と耐熱性を向上させることが可能になる。
【0050】
(2)本実施形態においては、分子量が30000以上フェノキシ樹脂を使用する構成としている。従って、フレキシブルプリント配線板3の基材やガラスエポキシ基板等の配線基板1に対する密着力がより一層向上するため、電極接続用接着剤2を介して金属電極5と金属電極4間を接続する際に、電極間の接続信頼性がより一層向上する。
【0051】
(3)本実施形態においては、電極接続用接着剤2の全体に対する尿素系硬化剤の配合量を1質量%以上20質量%以下に設定するとともに、マイクロカプセル型硬化剤100質量部に対する尿素系硬化剤の配合量を20質量部以上100質量部以下に設定する構成としている。従って、電極接続用接着剤2を低温で確実に硬化させることが可能になるとともに、電極接続用接着剤2の保存安定性を確実に向上させることが可能になる。
【0052】
(4)本実施形態においては、尿素系硬化剤の平均粒径が3μm以上15μm以下に設定する構成としている。従って、電極接続用接着剤2の保存安定性を確実に向上させることができるとともに、電極接続用接着剤2を介して金属電極5と金属電極4間を接続する際に、電極間の接続信頼性を確実に向上させることができる。
【0053】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
・上記実施形態においては、電極接続用接着剤2を介して、フレキシブルプリント配線板3の金属電極5を配線基板1の金属電極4に接続する構成としたが、本発明の電極接続用接着剤2を、例えば、ICチップ等の電子部品の突起電極(または、バンプ)と配線基板1の金属電極4との接続に使用する構成としても良い。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0055】
(実施例1)
(接着剤の作製)
導電性粒子として、長径Lの分布が3μmから20μm、短径Rの分布が0.1μmから0.3μmである直鎖状ニッケル微粒子を用いた。また、エポキシ樹脂としては、(1)フェノキシ樹脂〔InChem(株)製、商品名PKHH、分子量:52000、ガラス転移温度:92℃〕、および(2)結晶性エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン4032D、分子量:約280、融点:約75℃〕を使用した。また、硬化剤としては、(3)マイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤〔旭化成エポキシ(株)製、商品名ノバキュアHX3932HP、平均粒径:3μm〕、および(4)粉末状の尿素系硬化剤〔アデカ(株)製、商品名EH−4370S、平均粒径:5μm〕を使用し、これら(1)〜(4)を重量比で(1)60/(2)40/(3)40/(4)20の割合で配合した。そして、これらのエポキシ樹脂、硬化剤を、2−エトキシエチルアセタートに溶解して、分散させた後、三本ロールによる混練を行い、固形分が50重量%である溶液を作製した。この溶液に、固形分の総量(Ni粉末+樹脂)に占める割合で表される金属充填率が、0.2体積%となるように上記Ni粉末を添加した後、遠心攪拌ミキサーを用いて攪拌することによりNi粉末を均一に分散し、接着剤用の複合材料を作製した。次いで、この複合材料を離型処理したPETフィルム上にドクターナイフを用いて塗布した後、磁束密度100mTの磁場中、60℃で30分間、乾燥、固化させることにより、膜中の直鎖状粒子が磁場方向に配向した、厚さ30μmのフィルム形状の異方導電性をもつ電極接続用接着剤を作製した。
【0056】
(接続信頼性評価)
まず、幅80μm、長さ3m、高さ18μmの金メッキが施された銅電極が120μm間隔で32個配列されたフレキシブルプリント配線板(ポリイミド樹脂からなる基材を有するもの)と、幅80μm、長さ3mm、高さ18μmの金メッキが施された銅電極が120μm間隔で32個配列された配線基板(ガラスクロスエポキシ基板)とを用意した。そして、このフレキシブルプリント配線板と配線基板の間に作製した接着剤を挟み、接着剤が所定の温度(140℃)になるように、適切な温度(150℃)に加熱されたプレスヘッドをフレキシブルプリント配線板の上方に設置し、当該プレスヘッドを配線基板の方向に移動させて、電極接続用接着剤を所定の温度(140℃)に加熱しながら、4MPaの圧力で10秒間加圧して接着させて実装し、電極接続用接着剤を介して、電極間が接着されたフレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を得た。次いで、この接合体において、銅電極、および接着剤を介して接続された連続する32個の電極の抵抗値を四端子法により求め、求めた値を32で除することにより、1電極あたりの接続抵抗(以下、「初期接続抵抗」という。)を求めた。そして、この評価を10回繰り返し、初期接続抵抗の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0057】
(耐熱性評価)
また、耐熱性試験として、上記の温度(140℃)にて実装されたフレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を、温度を80℃に設定した恒温恒湿槽中に500時間放置した後、接合体を恒温恒湿槽から取り出し、再び、上記と同様にして、接続抵抗(以下、「500時間後の接続抵抗」という。)の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0058】
(保存安定性評価)
また、作製した接着剤を25℃の温度で1ヶ月間放置した後、上述と同様にして、フレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を得た。その後、上述と同一条件により、接続信頼性評価、および耐熱性評価を行った、以上の結果を表1に示す。
【0059】
(反応率評価)
反応率評価として、上記の温度(140℃)にて実装されたフレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体において、電極間に存在する樹脂硬化物を採取し、フーリエ変換赤外分光法により、未反応のエポキシ基の残存率を測定し、その結果から硬化反応率を求めた。以上の結果を表1に示す。
【0060】
(ガラス転移温度の測定)
作製した接着剤を10枚重ねて140℃で5分間加熱プレスすることにより、厚さ200μmの硬化物フィルムを作製した。次いで、動的粘弾性測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー、EXSTAR6000 DMS)を使用して、昇温速度10℃/分、周波数1Hz、加重5gの条件の下、動的粘弾性測定法(DMA法)により、作製した接着剤を構成する樹脂の硬化物のガラス転移温度を測定した。より具体的には、貯蔵弾性率と損失弾性率の比に相当するtanδを測定し、その最大値をガラス転移温度とした。なお、硬化物のサンプルとして、幅2mm、長さ10mmのものを使用した。
【0061】
(比較例1)
接着剤を作製するにあたり、実施例1において使用したマイクロカプセル型イミダゾール系硬化剤の代わりに、アミド系硬化剤であるジシアンジアミド〔アデカ(株)製、商品名EH−3636AS、平均粒径:18μm〕を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続信頼性評価、耐熱性評価、保存安定性評価、反応率評価およびガラス転移温度の測定を行った、以上の結果を表1に示す。
【0062】
(比較例2)
接着剤を作製するにあたり、実施例1において使用した結晶性エポキシ樹脂の代わりに、非結晶性エポキシ樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂〔大日本インキ化学工業(株)製、商品名エピクロン850〕を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続信頼性評価、耐熱性評価、保存安定性評価、反応率評価およびガラス転移温度の測定を行った、以上の結果を表1に示す。
【0063】
(比較例3)
接着剤を作製するにあたり、実施例1において使用したフェノキシ樹脂の代わりに、ビスフェノールA/F型フェノキシ樹脂〔JER(株)製、商品名:JER4275、分子量:約60000、ガラス転移温度:68℃〕を使用したこと以外は、上述の実施例1と同様にして、接着剤を作製し、フレキシブルプリント配線板と配線基板の接合体を得た。その後、上述の実施例1と同一条件により、接続信頼性評価、耐熱性評価、保存安定性評価、反応率評価およびガラス転移温度の測定を行った、以上の結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

表1に示すように、実施例1においては、初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗が殆ど変化しておらず、電極間の接続信頼性が高いことが判る。これは、実施例1の電極接続用接着剤においては、エポキシ樹脂として、分子量が10000以上であるとともに、ガラス転移温度が80℃以上であるフェノキシ樹脂を使用したため、フレキシブルプリント配線板の基材や配線基板1に対する密着力が向上したためであると考えられる。また、実施例1においては、初期接触抵抗に対して500時間後の接続抵抗が殆ど変化しておらず、耐熱性に優れていることが判る。これは、実施例1の電極接続用接着剤においては、エポキシ樹脂として、結晶性エポキシを使用するとともに、硬化剤として、マイクロカプセル型硬化剤を使用したためであると考えられる。また、実施例1においては、接着剤を25℃の温度で1ヶ月間放置した後の初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗が殆ど変化しておらず、保存安定性に優れていることが判る。これは、実施例1の電極接続用接着剤においては、硬化剤として、粉末状の尿素系硬化剤とマイクロカプセル型硬化剤を使用したためであると考えられる。また、実施例1においては、硬化反応率が高く、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応速度が速くなり、電極接続用接着剤を低温(150℃以下)かつ短時間(例えば、10秒間)で硬化させることができることが判る。これは、実施例1の電極接続用接着剤においては、結晶性エポキシ樹脂を含有する電極接続用接着剤において尿素系硬化剤を併用したためであると考えられる。なお、実施例1においては、接着剤を構成する樹脂の硬化物のガラス転移温度が比較例1,2に比し高くなっているが、これは、実施例1の電極接続用接着剤においては、エポキシ樹脂として、ガラス転移温度が80℃以上であるフェノキシ樹脂を使用したためであると考えられる。
【0065】
一方、比較例1においては、表1に示すように、初期接触抵抗に比し、500時間後の接続抵抗が大幅に上昇しており、電極間の接続信頼性を維持することができなかったことが判る。これは、表1に示すように、比較例1においては、アミド系硬化剤を使用しているため、実施例1に比し、硬化反応率が低く、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応速度が遅いため、エポキシ樹脂と硬化剤を反応させる際に、反応効率が大幅に低下したためであると考えられる。以上より、比較例1においては、電極接続用接着剤を低温(150℃以下)かつ短時間(例えば、10秒間)で硬化させることが困難であることが判る。
【0066】
また、比較例2においては、表1に示すように、初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗が殆ど変化していないが、実施例1に比し、初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗のいずれも大きい値となっていることが判る。特に、実施例1に比し、500時間後の接続抵抗が大きい値となっており、耐熱性に乏しいことが判る。これは、比較例2においては、非結晶性エポキシ樹脂を使用しているためであると考えられる。また、比較例2においては、表1に示すように、初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗が殆ど変化していないが、実施例1に比し、初期接触抵抗、および500時間後の接続抵抗のいずれも大きい値となっており、実施例1に比し、電極間の接続信頼性が劣ることが判る。これは、比較例2においては、非結晶性エポキシ樹脂を使用しているため、実施例1に比し、硬化反応率が低く、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応速度が遅いため、エポキシ樹脂と硬化剤を反応させる際に、反応効率が低下したためであると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の活用例としては、複数の被接合部材の間に設けられ、加熱加圧処理を行うことにより、複数の被接合部材の各々に形成された電極間を接続する電極接続用接着剤およびこれを用いた電極接続方法が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本実施形態に係る電極接続用接着剤により、フレキシブルプリント配線板を実装した配線基板を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電極接続用接着剤として、導電性粒子を含有する異方導電性接着剤を使用し、異方導電性接着剤を介して、フレキシブルプリント配線板を配線基板に実装した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電極接続用接着剤において使用される導電性粒子を説明するための図である。
【符号の説明】
【0069】
1…配線基板、2…電極接続用接着剤、3…フレキシブルプリント配線板、4…金属電極(金メッキが施された銅電極)、5…金属電極(金メッキが施された銅電極)、6…導電性粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂を主成分とし、導電性粒子、および硬化剤を含有する電極接続用接着剤において、
前記エポキシ樹脂が、分子量が10000以上であるとともに、ガラス転移温度が80℃以上であるフェノキシ樹脂と、結晶性エポキシ樹脂を含有し、前記硬化剤が、粉末状の尿素系硬化剤とマイクロカプセル型硬化剤を含有することを特徴とする電極接続用接着剤。
【請求項2】
前記電極接続用接着剤の全体に対する前記尿素系硬化剤の配合量が1質量%以上20質量%以下であるとともに、前記マイクロカプセル型硬化剤100質量部に対する前記尿素系硬化剤の配合量が20質量部以上100質量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の電極接続用接着剤。
【請求項3】
前記フェノキシ樹脂の分子量が、30000以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電極接続用接着剤。
【請求項4】
接着剤中に存在する前記尿素系硬化剤の平均粒径が3μm以上15μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電極接続用接着剤。
【請求項5】
前記導電性粒子が、磁性を有する金属単体、磁性を有する2種類以上の合金、磁性を有する金属と他の金属との合金、磁性を有する金属を含む複合体からなる群より選ばれる1の金属または複合体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電極接続用接着剤。
【請求項6】
前記導電性粒子は径と長さの比(アスペクト比)が5以上の導電性粒子であり、かつ前記電極接続用接着剤の形状はフィルム状であり、前記導電性粒子がフィルムの厚み方向に配向していることを特徴とする請求項5に記載の電極接続用接着剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−24416(P2010−24416A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191105(P2008−191105)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】