説明

電気エネルギを蓄積する装置

【課題】電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【解決手段】電気エネルギを蓄積する装置は、第1の磁性セクション110と、第2の磁性セクション120と、第1の磁性セクション110と第2の磁性セクション120との間に配置された誘電体セクション130と、を備える。この誘電体セクション130により電気エネルギを蓄積し、ダイポール115,125をそれぞれに有する第1の磁性セクション110および第2の磁性セクション120により電流リークを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気エネルギを蓄積する装置に関する。特に、本発明は電気エネルギを蓄積する磁気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギ蓄積部は我々の生活にとって非常に重要である。回路に使用されるコンデンサや携帯装置に使用される電池などの部品、電気エネルギ蓄積部は、電気デバイスの性能および作動時間に影響を与える。
【0003】
しかし、従来のエネルギ蓄積部にはいくつかの問題点があった。例えば、コンデンサには、総合的な性能を低下させる電流リークの問題があった。また、電池は充電/放電が部分的に行われると、メモリ効果の問題により性能が低下することがあった。
【0004】
巨大磁気抵抗効果(Giant Magnetoresistance Effect)とは、薄い磁性セクションと薄い非磁性セクションとが交互に形成された構造中でみられる量子力学的効果である。外部磁界が印加されると、巨大磁気抵抗効果によりゼロ磁場の高抵抗状態から高磁場の低抵抗状態へと電気抵抗が大幅に変化する。
【0005】
そのため、巨大磁気抵抗効果は、良好な性能を有する絶縁体として利用することができる。巨大磁気抵抗効果を有する装置は、電気エネルギを蓄積することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の理由から、巨大磁気抵抗効果を有し、電気エネルギを蓄積する装置が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、電気エネルギを蓄積する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 第1の磁性セクションと、第2の磁性セクションと、前記第1の磁性セクションと前記第2の磁性セクションとの間に配置された誘電体セクションと、を備え、前記誘電体セクションにより電気エネルギを蓄積し、ダイポール(双極子)をそれぞれに有する前記第1の磁性セクションおよび前記第2の磁性セクションにより電流リークを防ぐことを特徴とする電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0009】
(2) 前記誘電体セクションは薄膜であることを特徴とする(1)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0010】
(3) 前記誘電体セクションは誘電体材料からなることを特徴とする(1)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0011】
(4) 前記第1の磁性セクションまたは前記第2の磁性セクションは薄膜であることを特徴とする(1)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0012】
(5) 前記第1の磁性セクションに隣接して配置され、前記第1の磁性セクションの前記ダイポールを制御する第1の金属デバイスをさらに備えることを特徴とする(1)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0013】
(6) 前記第2の磁性セクションに隣接して配置され、前記第2の磁性セクションの前記ダイポールを制御する第2の金属デバイスをさらに備えることを特徴とする(1)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0014】
(7) 前記電気エネルギを蓄積する装置が電気エネルギを蓄積するとき、前記第1の磁性セクションの前記ダイポールと、前記第2の磁性セクションの前記ダイポールとが同じ向きであることを特徴とする(1)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0015】
(8) 前記電気エネルギを蓄積する装置を充電するときに、前記第1の磁性セクションおよび前記第2の磁性セクションが電源に接続されることを特徴とする(1)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0016】
(9) 前記電気エネルギを蓄積する装置を放電するときに、前記第1の磁性セクションおよび前記第2の磁性セクションが負荷デバイスに接続されることを特徴とする(1)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0017】
(10) 複数の磁性セクションと、2つの隣接する前記磁性セクション間にそれぞれ配置された複数の誘電体セクションと、を備え、前記誘電体セクションにより電気エネルギを蓄積し、ダイポールをそれぞれに有する前記磁性セクションにより電流リークを防ぐことを特徴とする電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0018】
(11) 前記誘電体セクションは薄膜であることを特徴とする(10)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0019】
(12) 前記誘電体セクションは誘電体材料からなることを特徴とする(10)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0020】
(13) 前記磁性セクションは薄膜であることを特徴とする(10)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0021】
(14) 前記磁性セクションに隣接して配置され、各磁性セクションの前記ダイポールをそれぞれ制御する複数の金属デバイスをさらに備えることを特徴とする(10)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0022】
(15) 前記電気エネルギを蓄積する装置が電気エネルギを蓄積するときに、前記磁性セクションの前記ダイポール同士が同じ向きであることを特徴とする(10)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0023】
(16) 前記電気エネルギを蓄積する装置を充電するときに、前記磁性セクションの一部が電源に接続されることを特徴とする(10)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【0024】
(17) 前記電気エネルギを蓄積する装置を放電するときに、前記磁性セクションの一部が負荷デバイスに接続されることを特徴とする(10)に記載の電気エネルギを蓄積する装置を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、巨大磁気抵抗効果を利用した電気エネルギ蓄積装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態による電気エネルギを蓄積する装置を示す模式図である。電気エネルギを蓄積する装置は、第1の磁性セクション110と、第2の磁性セクション120と、第1の磁性セクション110と第2の磁性セクション120の間に配置された誘電体セクション130とを有する。誘電体セクション130は、電気エネルギを蓄積するために用いられ、ダイポール(例えば、115および125)を有する第1の磁性セクション110および第2の磁性セクション120は、電流リークの発生を防ぐために用いられる。
【0028】
誘電体セクション130は薄膜であり、BaTiO、TiOなどの誘電体材料からなる。しかし、誘電体材料は完全な絶縁体ではないため、小さな電流が誘電体セクション130を流れることがあった。
【0029】
そのため、絶縁効果により電流が流れること(例えば、電流リーク)を防ぐために、第1の磁性セクション110および第2の磁性セクション120を利用する。第1の磁性セクション110および第2の磁性セクション120は薄膜であり、ダイポールを有するこれら2つの磁性セクションを用いると電流リークを防ぐことができる。
【0030】
電気エネルギを蓄積する装置は、第1の磁性セクション110に隣接して配置された第1の金属デバイス140をさらに有する。第1の金属デバイス140は、第1の磁性セクション110のダイポール115を制御するために用いる。また、この電気エネルギを蓄積する装置は、第2の磁性セクション120に隣接して配置された第2の金属デバイス150をさらに有する。この第2の金属デバイス150は、第2の磁性セクション120のダイポール125を制御するために用いる。そして、第1の金属デバイス140および第2の金属デバイス150により外部磁界を印加すると、磁性セクション110,120のダイポールを制御することができる。
【0031】
金属デバイス140,150は、図1に示す位置だけに限定されるわけではなく、実際の必要に応じて配置することができる。
【0032】
上述したように、金属デバイス140,150を利用して磁性セクション110,120のダイポール115,125を制御し、誘電体セクション130を有するダイポール115,125と組み合わせると、電気エネルギを蓄積し、電流リークの発生を防ぐことができる。この装置が電気エネルギを蓄積するとき、第1の磁性セクション110のダイポール115(右向きの矢印「→」で示す)と、第2の磁性セクション120のダイポール125(右向きの矢印「→」で示す)とは同じ向きである。そのため、第1の磁性セクション110および第2の磁性セクション120は、電流リークの発生を防ぎ、誘電体セクション130中に電気エネルギを蓄積させることができる。
【0033】
すなわち、第1の磁性セクション110のダイポール115と、第2の磁性セクション120のダイポール125とが同じ向きであるとき、誘電体セクション130の電子のスピン方向は一方向を向くため電流リークが低減される。このように電流リークが低減されると、エネルギを長期間蓄積し、電気エネルギの損失を少なくすることができる。
【0034】
図1の矢印「→」は、磁性セクションのダイポールを例示しているだけであり、ダイポールの方向がこの方向だけに限定されるわけではない。
【0035】
図2は、本発明の一実施形態による電気エネルギを蓄積する装置の充電を行うときの状態を示す模式図である。この電気エネルギを蓄積する装置を充電するとき、第1の磁性セクション110および第2の磁性セクション120は、電源260に接続され、電気エネルギが電源260から誘電体セクション130に供給される。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態による電気エネルギを蓄積する装置の放電を行うときの状態を示す模式図である。この電気エネルギを蓄積する装置を放電するとき、第1の磁性セクション110および第2の磁性セクション120は、負荷デバイス370に接続される。電気エネルギは、誘電体セクション130から負荷デバイス370に与えられる。
【0037】
磁性セクション110,120のダイポールは、電源または負荷デバイスにより容易に影響されるため、磁性セクション110,120の絶縁効率が良好ではない。そのため、電流は磁性セクションを通る。
【0038】
この電気エネルギを蓄積する装置は、容量値の大きなコンデンサと見なすことができる。さらに、この電気エネルギを蓄積する装置は電池として利用することができる。この電気エネルギを蓄積する装置は、電池機能を有するが、メモリ効果の問題は発生しない。そのため、性能を低下させずに充放電を完全にあるいは部分的に行うことができる。
【0039】
あるいは、この電気エネルギを蓄積する装置は、大きなアレイ状に配列されたデバイスを並列に配置し、さらに大きなエネルギを蓄積してもよい。さらに複数の装置を積層させ、図4に示すようにさらに大きなエネルギが蓄積できるようにしてもよい。
【0040】
図4に示すもう一つの実施形態では、4つの磁性セクション110a,110b,110c,110dおよび3つの誘電体セクション130a,130b,130cが使用されている。この電気エネルギを蓄積する装置は、複数の磁性セクション110a,110b,110c,110dと、2つの隣接する磁性セクション間にそれぞれ配置された複数の誘電体セクション130a,130b,130cとを有する。例えば、誘電体セクション130aは、磁性セクション110aと磁性セクション110bとの間に配置され、誘電体セクション130bは、磁性セクション110bと磁性セクション110cとの間に配置されている。誘電体セクション130a,130b,130cは、電気エネルギを蓄積するために用いられ、ダイポール115a,115b,115c,115dをそれぞれに有する磁性セクション110a,110b,110c,110dは、電気エネルギのリークを防ぐために用いられる。
【0041】
電気エネルギを蓄積する装置は、磁性セクションのダイポールを制御するために、磁性セクションに隣接するようにそれぞれ配置された複数の金属デバイス(図示せず)をさらに有する。
【0042】
この装置が電気エネルギを蓄積するとき、磁性セクション110a,110b,110c,110dのダイポール115a,115b,115c,115dは同じ向きである。
【0043】
電気エネルギを蓄積する装置は、充電するときに磁性セクションの一部を電源に接続し、放電するときに磁性セクションの一部を負荷デバイスに接続する。すなわち、電気エネルギを蓄積する装置の充電または放電を行うとき、両端における磁性セクション110a,110dが電源または負荷デバイスに接続されるか、全ての磁性セクション110a,110b,110c,110dが電源または負荷デバイスに接続される。
【0044】
本発明では好適な実施形態を前述の通り開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知するものなら誰でも、本発明の主旨と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態による電気エネルギを蓄積する装置を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態による電気エネルギを蓄積する装置の充電を行うときの状態を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態による電気エネルギを蓄積する装置の放電を行うときの状態を示す模式図である。
【図4】本発明のもう一つの実施形態による装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0046】
110 第1の磁性セクション
110a 磁性セクション
110b 磁性セクション
110c 磁性セクション
110d 磁性セクション
115 ダイポール
115a ダイポール
115b ダイポール
115c ダイポール
115d ダイポール
120 第2の磁性セクション
125 ダイポール
130 誘電体セクション
130a 誘電体セクション
130b 誘電体セクション
130c 誘電体セクション
140 第1の金属デバイス
150 第2の金属デバイス
260 電源
370 負荷デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の磁性セクションと、
第2の磁性セクションと、
前記第1の磁性セクションと前記第2の磁性セクションとの間に配置された誘電体セクションと、を備え、
前記誘電体セクションにより電気エネルギを蓄積し、ダイポールをそれぞれに有する前記第1の磁性セクションおよび前記第2の磁性セクションにより電流リークを防ぐことを特徴とする電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項2】
前記誘電体セクションは薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項3】
前記誘電体セクションは誘電体材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項4】
前記第1の磁性セクションまたは前記第2の磁性セクションは薄膜であることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項5】
前記第1の磁性セクションに隣接して配置され、前記第1の磁性セクションの前記ダイポールを制御する第1の金属デバイスをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項6】
前記第2の磁性セクションに隣接して配置され、前記第2の磁性セクションの前記ダイポールを制御する第2の金属デバイスをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項7】
前記電気エネルギを蓄積する装置が電気エネルギを蓄積するとき、前記第1の磁性セクションの前記ダイポールと、前記第2の磁性セクションの前記ダイポールとが同じ向きであることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項8】
前記電気エネルギを蓄積する装置を充電するときに、前記第1の磁性セクションおよび前記第2の磁性セクションが電源に接続されることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項9】
前記電気エネルギを蓄積する装置を放電するときに、前記第1の磁性セクションおよび前記第2の磁性セクションが負荷デバイスに接続されることを特徴とする請求項1に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項10】
複数の磁性セクションと、
2つの隣接する前記磁性セクション間にそれぞれ配置された複数の誘電体セクションと、を備え、
前記誘電体セクションにより電気エネルギを蓄積し、ダイポールをそれぞれに有する前記磁性セクションにより電流リークを防ぐことを特徴とする電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項11】
前記誘電体セクションは薄膜であることを特徴とする請求項10に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項12】
前記誘電体セクションは誘電体材料からなることを特徴とする請求項10に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項13】
前記磁性セクションは薄膜であることを特徴とする請求項10に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項14】
前記磁性セクションに隣接して配置され、各磁性セクションの前記ダイポールをそれぞれ制御する複数の金属デバイスをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項15】
前記電気エネルギを蓄積する装置が電気エネルギを蓄積するときに、前記磁性セクションの前記ダイポール同士が同じ向きであることを特徴とする請求項10に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項16】
前記電気エネルギを蓄積する装置を充電するときに、前記磁性セクションの一部が電源に接続されることを特徴とする請求項10に記載の電気エネルギを蓄積する装置。
【請求項17】
前記電気エネルギを蓄積する装置を放電するときに、前記磁性セクションの一部が負荷デバイスに接続されることを特徴とする請求項10に記載の電気エネルギを蓄積する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−177536(P2008−177536A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290306(P2007−290306)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(507291707)ノーザン ライツ セミコンダクター コーポレイション (21)
【Fターム(参考)】