説明

電気・電子モジュール及びその製造方法

【課題】 本発明の目的は、生産性の向上した電気・電子モジュール及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】電子回路基板5には、電子部品5Aが装着される。電子回路基板5は、金属ベース1に搭載される。金属端子3は、電子回路基板の電子回路5Aに接続される。電子回路基板5は、熱硬化性の樹脂8により封止される。コネクタは、樹脂モールドされたハウジング部11と、ハウジング部11と別体で構成されるとともに、金属端子3を固定整列するための樹脂モールドされた端子保持部品9とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の実装された電子回路基板を有する電気・電子モジュール及びその製造方法に係り、特に、樹脂成形材料により電子回路基板を一体成形したもので、自動車用として用いるに好適な電気・電子モジュール及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に用いられているの電気・電子モジュールは、ケースに電子部品の実装された電子回路基板を収納して、シリコーンゲルなどで電子部品と電子回路基板を封止した後、キャップを接着することにより取り付ける構造である。そのため、備品点数と作業工数が多くなるとともに、電気・電子モジュールが大きく、かつ厚い物であった。
【0003】
一方、自動車の分野では、居住性向上の観点から、エンジンルームを狭くして、車室空間を広くする傾向にあるため、電気・電子モジュールに対しても、小型化・薄型化が求められている。また、電気・電子モジュールが、エンジンルーム内に装着されるケースも増加しているため、耐水・耐ガス等の耐環境性の向上も求められている。
【0004】
そこで、本発明者らは、先に、電子回路基板を、直に樹脂成形材料を用いて一体成形し、薄型化を図ったものを提案している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の構造では、予め樹脂でポッティングした後、コネクタ、電子回路基板及び金属ベースを、熱硬化性の封止樹脂でトランスファモールドしている。さらに、樹脂がポッティングされる金属ベースの内壁面に、ポッティング樹脂の移動を拘束する部材を備えることで、トランスファモールド時の成形圧により発生する応力に耐えるようにしている。
【0005】
【特許文献1】特開2008-186955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のものでは、ポッティング樹脂の硬化のために、ポッティング樹脂が有するガラス転移点以上の温度(これはしばしば120℃を越えるものになる)で、数時間加熱する必要がある。このように、ポッティング樹脂を利用するものでは、加熱時間を要するため、生産性が低下するという問題があった。また、加熱のためのエネルギが必要であるという問題があった。
【0007】
また、トランスファモールド時の成形圧により、ポッティング樹脂が移動するのを拘束するための部材をケースに追加工する必要があり、生産性が低下するという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、生産性の向上した電気・電子モジュール及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、電子部品の装着された電子回路基板と、該電子回路基板を搭載するための金属ベースと、前記電子回路基板の電子回路に接続され、かつ外部電子回路系と着脱自在に接続される接続用金属端子を有する樹脂で形成されているコネクタと、前記電子回路基板を被覆する熱硬化性の樹脂とを有する電気・電子モジュールであって、前記コネクタは、樹脂モールドされたハウジング部と、該ハウジング部と別体で構成されるとともに、前記金属端子を固定整列するための樹脂モールドされた端子保持部材とから構成されるようにしたものである。
かかる構成により、生産性を向上し得るものとなる。
【0010】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記コネクタのハウジング部は、前記熱硬化性の樹脂のモールド後に組み付けられるものである。
【0011】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記端子保持部材に組み付けられるとともに、前記金属端子が挿入される磁性材を備えるようにしたものである。
【0012】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記金属端子は、前記端子保持部材に圧入されているものである。
【0013】
(5)上記目的を達成するために、本発明は、金属端子を固定整列するとともに樹脂モールドされた端子保持部材を金属ベースに組み付け、そして、電子部品の装着された電子回路基板を前記金属ベースに搭載した後、前記金属端子を前記電子回路基板の電子回路に接続し、前記電子回路基板を熱硬化性の樹脂で被覆し、樹脂モールドされたコネクタのハウジング部を組み付けるようにしたものである。
かかる方法により、生産性を向上し得るものとなる。
【0014】
(6)上記(5)において、好ましくは、前記熱硬化性の樹脂をモールドする時、少なくとも前記端子保持部材の一部をブロックにより押えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電気・電子モジュールの生産性を向上し得るものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1〜図20を用いて、本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの構成及び製造方法について説明する。
最初に、図1〜図4を用いて、本実施形態による電気・電子モジュールの全体構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの全体構成を示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態による電気・電子モジュールのトランスファモールド前の全体構成を示す斜視図である。図3は、本発明の一実施形態による電気・電子モジュールのトランスファモールド後の全体構成を示す斜視図である。図4は、本発明の一実施形態による電気・電子モジュールのコネクタハウジング組付け後の全体構成を示す斜視図である。なお、図1〜図4において、同一符号は同一部分を示している。
【0017】
図1に示すように、金属端子3は、電気・電子モジュールの外部に設けられているハーネスと電子回路基板5間を電気的に接続するための部品である。金属端子3は、電源の供給を受けたり、外部センサからの信号入力、外部アクチュエータへの信号出力を仲介する。金属端子3としては、錫めっきや金めっきが施された黄銅材を使用する。金属端子3は、L字に曲げられ、端子保持部品9に圧入去れ、保持されている。金属端子3の一方の端部は、電子回路基板5の上面(基板搭載面(基板5をベース1に搭載する面)と反対の面)から突き出るようになっている。金属端子3の他方の端部は、コネクタハウジング部11の内部に突出している。金属端子3の数は、48本、若しくは60本、若しくはそれ以上である。
【0018】
端子保持部品9の材料としては、無機質フィラを含む熱可塑性樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン(PA66)やポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用される。端子保持部品9は、熱可塑性樹脂によりモールド成形される。端子保持部品9は、モールド成形後、金属端子3の断面積よりも小さな穴加工がされ、その穴に、金属端子3が圧入される。なお、端子保持部品9のモールド形の中に、予め複数本の金属端子をセットし、インサートモールドにより、端子保持部品9に複数本の金属端子3が固定された引退成型品を用いることもできる。ただし、この場合、モールド形の中に、予め複数本の金属端子をセットするのに手間が掛かるため、端子保持部品9に金属端子3を圧入する方式の方が、生産性が向上する。
【0019】
コネクタハウジング部11は、コネクタ固定ねじ6(図2)を用いて、金属ベース1に固定される。なお、接着剤を用いて固定するようにしてもよいものである。コネクタハウジング部11の材料としては、無機質フィラを含む熱可塑性樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン(PA66)やポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用される。コネクタハウジング部11は、熱可塑性樹脂によりモールド成形される。
【0020】
金属ベース1は、電子回路基板5の固定、電子回路基板5上の電子部品が発生する熱の放熱、及び電気・電子モジュール取り付けの際の取り付け固定部材となる。金属ベース1の材料としては、一般的にアルミ、アルミ合金、銅、銅合金、鉄(表面をメッキしたものも含む)などが使用される。また、金属ベース1の製法としては、主に、ダイカスト、プレス、焼結や切削加工が用いられる。
【0021】
端子整列板4は、金属端子3の一方の端部を電子回路基板5の端子接続用穴への挿入を容易にするためのガイド穴を有する部材である。
【0022】
電子回路基板5は、電子回路の配線パターンが形成されており、回路の機能に応じた各種電子部品5Aが、はんだや銀ペースト接着剤を用いて接続されている。電子回路基板5の材料として、セラミック、ガラエポ、金属等が使用される。また、図2に示すように、電子回路基板5は、端子接続用穴を、金属端子3に合わせるように、金属ベース1の上に搭載される。そして、電子回路基板5は、基板固定ねじ7で、金属ベース1に固定された後に、金属端子3が、はんだで電子回路基板5の配線パターン接続される。
【0023】
次に、図3に示すように、電子回路基板5は、封止樹脂8で成形封止される。封止樹脂8は、電子回路基板5を包む様に封止することで、外部環境から電子回路を保護する。封止樹脂8の成形には、トランスファモールドを使用する。
【0024】
最後に、図4に示すように、コネクタハウジング部11は、コネクタ固定ねじ6(図2)を用いて、金属ベース1に固定される。
【0025】
ここで、トランスファモールドで樹脂封止するため、電気・電子モジュールは、
・型温170〜180℃
・数十トンの力で型締め
・数十kgf/cm2の成形圧力
の環境下にさらされる。
【0026】
封止樹脂8の材料は、無機質フィラを含み40℃以下において固形であるエポキシ樹脂(熱硬化樹脂)が使用される。エポキシ樹脂材料は、エポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤とからなる組成であり、40℃以下で固形のオルソクレゾール型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂などと、フェノールノボラック樹脂、オルソクレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノール樹脂、またはナフタレン骨格を有するフェノール樹脂などとの組み合わせから得ることができる。
【0027】
また、エポキシ樹脂成形材料には、低弾性率化による低応力化を図るため、シリコーンゴムまたはオイルやブタジエン系ゴムなどの低応力化材を含むことができる。無機質フィラとしては、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、酸化マグネシウムなどの破砕状または球状の少なくとも1種類以上を用いることができる。
【0028】
トランスファモールドは、半導体素子の封止方法として一般的に用いられているが、半導体素子のサイズとしては、せいぜい30mm×30mm程度のものであった。
【0029】
一方、本実施形態で用いる、自動車用電気・電子モジュールの電子回路基板5のサイズは、100mm×100mmのサイズを超えるものである。この時、封止樹脂8の体積比は、30倍を越えるため、以下点について考慮が必要である。
【0030】
トランスファモールドに使用される熱硬化性樹脂は、加熱することにより一旦溶融し、時間とともに刻々と粘度が変わる(硬くなっていく)性質を有している。すなわち、封止樹脂8の流動特性が変化する。トランスファモールドは、封止樹脂8が溶融している間に、金型内に封止樹脂8を注入し、封止樹脂8が固まるまでその状態を保持する工法である。従って、電気・電子モジュールの封止樹脂8の流れ方向のサイズや注入する封止樹脂8の体積が、封止樹脂8の流動性(成形性)に影響を及ぼすことになる。
【0031】
半導体の場合、サイズが30mm角程度であるので、封止樹脂の粘度が低いうちに注入することができる。しかしながら、大型の電子回路基板5を封止する電気・電子モジュールの場合、封止樹脂8の注入が終了するまでに、封止樹脂8の粘度が上昇する可能性がある。粘度が上昇すると、金型の隅々まで封止樹脂8が回り込まない不具合、所謂ショートショットが発生する。
【0032】
ショートショットを回避する対策の一つとしては、成形圧力を上げることが考えられる。しかし、コネクタのハウジング部が、金属ベースに固定されていて、且つコネクタの金属端子配線部分の一部を、トランスファモールド前に、予め樹脂でポッティングする構造を採用する電気・電子モジュールにおいては、成形圧力により発生する応力が、ポッティング樹脂と金属ベース間の接着強度を上回る状況が発生することが考えられる。
【0033】
ここで、図5を用いて、従来の電気・電子モジュールの要部構成について説明する。
図5は、従来の電気・電子モジュールの要部構成を示す断面図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0034】
従来は、金属ベース1の内壁に、ポッティング樹脂12の移動を拘束する拘束部材19を備えることで、トランスファモールド時の成形圧力を拘束し、コネクタ2側に応力を伝え難い構造としている。拘束部材19は、図示のように凸状のものを用いているが、凹状のものを用いることもある。封止樹脂8をモールド型無いに注入すると、図示の右手方向から左手方向への成形圧力が加わり、ポッティング樹脂12が左方向に移動しようとする。それに対して、拘束部材19がポッティング樹脂12の移動を拘束する
ここで、樹脂ポッティングについては、ポッティング樹脂12の硬化のために、ポッティング樹脂12が有するガラス転移点以上の温度(これはしばしば120℃を越えるものになる)で、数時間加熱する必要があるため、生産性が低下する。ポッティング樹脂としては、熱硬化性樹脂が用いられる。図5に示したものを、反時計回りに90度回転させ、コネクタハウジング部2が下向きとなり、コネクタハウジング部2の上部(図3における右側の部分)と金属ベース1とで形成される凹部に、液体状態の熱硬化性樹脂が注入された後、数時間加熱することで樹脂が硬化し、ポッティング樹脂12が形成される。
【0035】
また、金属ベース1にポッティング樹脂12の移動を拘束する部材19は、内壁に設ける構造上、アンダーカットになるため、金型での形成が困難であり、追加機械加工が必要となるため、生産性が損なわれる。また、機械加工するため、加工後に、マシンオイルの残渣が付着したままになる可能性があるが、金属ベース1と封止樹脂8間の接着によって電子回路基板5部の気密性を確保する構造としては、残渣が封止樹脂8の界面剥離発生の原因となる可能性がある。
【0036】
次に、図1及び図6を用いて、本実施形態による電気・電子モジュールのコネクタ部の構成について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による電気・電子モジュールのコネクタ部の構成を示す断面図である。なお、図1〜図4と同一符号は、同一部分を示している。
【0037】
図6に示すように、本実施形態では、コネクタ部を、図6(A)に示すコネクタハウジング11と、図6(B)に示す端子サブアッシー10に分離した構成とする。
【0038】
コネクタハウジング11は、電気・電子モジュールの外部に設けられているハーネスに組み付けられた相手側コネクタと、機械的に結合するための部材であり、場合によっては、相手側コネクタとの組合せで防水機能も有する。
【0039】
端子サブアッシー10は、基本的に、金属端子3と、金属端子3を整列保持する端子保持部品9からなる。
【0040】
金属端子3は、電気・電子モジュールの外部に設けられているハーネスと電子回路基板5間を電気的に接続するための部材であり、電源の供給を受けたり、外部センサからの信号入力、外部アクチュエータへの信号出力を仲介する。
【0041】
端子保持部品9は、熱可塑性樹脂によりモールド成形される。端子保持部品9は、金属ベース1に組付けた時に蓋の機能も有する。
【0042】
但し、組付けただけの状態では、端子サブアッシー10は、トランスファモールド時の成形圧で押し出されてしまうので、剛性の高い例えば金属の部材で製作した端子サブアッシー押えブロックで、端子保持部品9の少なくとも一部を押えて、トランスファモールドする。端子サブアッシー押えブロックは、トランスファモールド設備側に設けてもよいし、あるいは、金属ベース1に一時的に固定してもよいものである。
【0043】
トランスファモールド直後は、図3に示したように、金属端子3が剥き出しの状態となっている。
【0044】
そして、最終的に、図4に示したようにコネクタハウジング11を組付ける。コネクタハウジング11の固定には、コネクタ固定ねじ6や接着剤を用いることができる。
【0045】
次に、図7〜図20を用いて、本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造方法について説明する。
図7〜図20は、本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。なお、図7〜図20において、図1〜図6と同一符号は同一部分を示している。
【0046】
本実施形態の電気・電子モジュールは、トランスファモールドにより成形される。
【0047】
図7に示すように、金属ベース1に端子サブアッシー10を組付け、端子整列板4を装着する。
【0048】
次に、図8に示すように、金属ベース1に電子回路基板5を組付ける。
【0049】
次に、図9に示すように、金属端子3と電子回路基板5の配線パターンとをはんだ付けする。
【0050】
次に、図10に示すように、電気・電子モジュールサブアッシー20を金型下型15にセットする。ここで、上型14と下型15は、外形形成のために任意の形状に掘り込まれており、170〜180℃に加熱されている。それとともに、常温で固形状態である成形樹脂タブレット8’をポット16に装填する。ここで、電気・電子モジュールサブアッシー20は、予め規定の温度で予備加熱しておくと、サイクルタイムが短縮できる。
【0051】
次に、図11に示すように、上型14に下型15を、数10トンの力で、型締めする。
【0052】
次に、図12に示すように、端子サブアッシー押えブロック13を押し付けて、端子サブアッシー10を保持する。
【0053】
次に、図13に示すように、任意の速度で、プランジャー17を押し上げる。
【0054】
すると、図14に示すように、成形樹脂タブレット8‘が溶融し、金型内に注入される。
【0055】
次に、図15に示すように、封止樹脂8が充填されたところで、およそ数10kgf/cm2の成形圧を印加し、約3分間その状態を保持してキュアする。
【0056】
次に、図16に示すように、上型14及び下型15を離型するとともに、端子サブアッシー押えブロック13を引き離す。
【0057】
次に、図17に示すように、カル18と呼ばれる封止樹脂8の余分な個所を除去する。
【0058】
これにより、図18に示すように、成形が完了する。
【0059】
次に、図19に示すように、コネクタハウジング11を組付ける。
【0060】
そして、図20に示すように、組立て完了となる。
【0061】
これにより、樹脂ポッティングする必要がなくなり、また、金属ベース1の追加加工も不要になる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、予め樹脂ポッティングをしておかなくても、トランスファモールド時の成形圧により発生する応力に耐えることができるので、金属ベース1の追加加工も不要になるため、生産性を向上できる。また、樹脂ポッティングのための加熱が不要となり、エネルギの無駄をなくすることができる。
【0063】
また、コネクタは複雑な形状であり、且つ、高い寸法精度が要求される。コネクタハウジング部11の材料としては、無機質フィラを含む熱可塑性樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン(PA66)やポリフェニレンサルファイド(PPS)が使用されるが、これらの樹脂は硬化収縮するために、「ひけ」や「反り」が発生する。「ひけ」や「反り」の発生度合いは、局所的な樹脂のボリュームのバランスや樹脂流動時に生じる無機質フィラの配向等による。そのため、樹脂肉厚の均一化、肉盗みや金型に設けるゲート位置等の設計上の制約が生じる。
【0064】
しかしながら、本実施形態では、コネクタハウジング部と端子保持部を別部品とすることで、それぞれの部品形状が単純化できるため、寸法精度の向上、あるいは、形状設計の自由度を高めることができる。
【0065】
次に、図21を用いて、本発明の他の実施形態による電気・電子モジュールの構成及び製造方法について説明する。なお、本実施形態による電気・電子モジュールの全体構成は、図1〜図4に示したものと同様である。
図21は、本発明の他の実施形態による電気・電子モジュールのコネクタ部の構成を示す断面図である。なお、図1〜図4と同一符号は、同一部分を示している。
【0066】
本実施形態では、図21に示すように、端子サブアッシー10の端子保持部品9に、フェライトのような磁性材21を組み付けている。磁性材21に形成された穴に、金属端子3が挿入される。これにより、電気・電子モジュールの電気配線に乗る伝導ノイズを減衰することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態によれば、予め樹脂ポッティングをしておかなくても、トランスファモールド時の成形圧により発生する応力に耐えることができるので、金属ベース1の追加加工も不要になるため、生産性を向上できる。また、樹脂ポッティングのための加熱が不要となり、エネルギの無駄をなくすることができる。
【0068】
また、コネクタハウジング部と端子保持部を別部品とすることで、それぞれの部品形状が単純化できるため、寸法精度の向上、あるいは、形状設計の自由度を高めることができる。
【0069】
さらに、電気配線に乗る伝導ノイズを減衰することができる。
【0070】
本発明は、電子回路を用いたトランスファモールド封止方式の電気・電子モジュールに広く応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールのトランスファモールド前の全体構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールのトランスファモールド後の全体構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールのコネクタハウジング組付け後の全体構成を示す斜視図である。
【図5】従来の電気・電子モジュールの要部構成を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールのコネクタ部の構成を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図10】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図11】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図12】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図13】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図14】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図15】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図16】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図17】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図18】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図19】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図20】本発明の一実施形態による電気・電子モジュールの製造時の各工程を示す断面図である。
【図21】本発明の他の実施形態による電気・電子モジュールのコネクタ部の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…金属ベース
2…コネクタ
3…金属端子
4…端子整列板
5…電子回路基板
5A…電子部品
6…コネクタ固定ねじ
7…基板固定ねじ
8…封止樹脂
8‘…封止樹脂タブレット
9…端子保持部品
10…端子サブアッシー
11…コネクタハウジング部
12…ポッティング樹脂
13…端子サブアッシー押えブロック
14…上型
15…下型
16…ポット
17…プランジャー
18…封止樹脂カル部
19…樹脂拘束部材
20…電気・電子モジュールサブアッシー
21…磁性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の装着された電子回路基板と、該電子回路基板を搭載するための金属ベースと、前記電子回路基板の電子回路に接続され、かつ外部電子回路系と着脱自在に接続される接続用金属端子を有する樹脂で形成されているコネクタと、前記電子回路基板を被覆する熱硬化性の樹脂とを有する電気・電子モジュールであって、
前記コネクタは、樹脂モールドされたハウジング部と、該ハウジング部と別体で構成されるとともに、前記金属端子を固定整列するための樹脂モールドされた端子保持部材とから構成されることを特徴とする電気・電子モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の電気・電子モジュールにおいて、
前記コネクタのハウジング部は、前記熱硬化性の樹脂のモールド後に組み付けられることを特徴とする電気・電子モジュール。
【請求項3】
請求項1記載の電気・電子モジュールにおいて、
前記端子保持部材に組み付けられるとともに、前記金属端子が挿入される磁性材を備えることを特徴とする電気・電子モジュール。
【請求項4】
請求項1記載の電気・電子モジュールにおいて、
前記金属端子は、前記端子保持部材に圧入されていることを特徴とする電気・電子モジュール。
【請求項5】
金属端子を固定整列するとともに樹脂モールドされた端子保持部材を金属ベースに組み付け、そして、電子部品の装着された電子回路基板を前記金属ベースに搭載した後、前記金属端子を前記電子回路基板の電子回路に接続し、
前記電子回路基板を熱硬化性の樹脂で被覆し、
樹脂モールドされたコネクタのハウジング部を組み付けることを特徴とする電気・電子モジュールの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の電気・電子モジュールの製造方法において、
前記熱硬化性の樹脂をモールドする時、少なくとも前記端子保持部材の一部をブロックにより押えることを特徴とする電気・電子モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−170728(P2010−170728A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10198(P2009−10198)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】