電気光学装置、及び電子機器
【課題】光リーク電流の発生を防止すると共に、実効的な画素開口率を大きくして表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現する。
【解決手段】TFT基板10上に、マトリクス状に形成された複数の走査線11a及び複数のデータ線6aと、この走査線11aとデータ線6aに電気的に接続されたTFT30と、このTFT30に電気的に接続された画素電極9aと、このTFT30の上方であって入射光側から少なくとも半導体層1a上を覆う反射膜91とを備え、この反射膜91の側壁を傾斜角度δの傾斜面91aとし、傾斜面91aに入射した光を画素開口領域方向へ反射させることで、実効的な画素開口率を大きくする。
【解決手段】TFT基板10上に、マトリクス状に形成された複数の走査線11a及び複数のデータ線6aと、この走査線11aとデータ線6aに電気的に接続されたTFT30と、このTFT30に電気的に接続された画素電極9aと、このTFT30の上方であって入射光側から少なくとも半導体層1a上を覆う反射膜91とを備え、この反射膜91の側壁を傾斜角度δの傾斜面91aとし、傾斜面91aに入射した光を画素開口領域方向へ反射させることで、実効的な画素開口率を大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層での光リーク電流の発生を抑制すると共に、実効的な画素開口率の向上を実現する電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の電気光学装置は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等を画素選択用のスイッチング素子として用いるアクティブマトリクス駆動形式が多く採用されている。このTFTのチャネル領域に入射光が照射されると、光による励起で光リーク電流が発生してTFTの特性が変化してしまう。TFTの特性の変化は、表示面における画質の不均一やコントラスト比の低下、フリッカ特性の劣化等の原因となる。
【0003】
そのため、従来から、TFTのチャネル領域やその周辺領域を遮光する各種技術が提案されている。例えば特許文献1(特開2001−330858号公報)には、TFTのチャネル領域上に、遮光性を有する導電膜を積層し、この導電膜でチャネル領域を覆うことで、チャネル領域やその周辺領域を遮光する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−330858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の電気光学装置においては、表示画像の高品位化、高輝度化という要請が強く、それに対応するには各画素の開口率を大きくする必要性がある。しかし、各画素の開口率を大きくすることは、相対的に、上述した文献に開示されているような遮光膜、及び遮光機能を有する膜の線幅を減少させることになるが、TFTに対する遮光性を確保した状態で膜の線幅を減少させるには限界がある。その結果、TFTのチャネル領域、及びその周辺に入射される光を確実に遮光した状態で、表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することは困難である。
【0005】
これに対処するに、光の入射側にマイクロレンズを配設することで実効的な画素開口率を大きくする技術も知られているが、マイクロレンズを必要とする分、製品コストが高くなってしまう問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、TFTのチャネル領域、及びその周辺に入射される光を確実に遮光して光リーク電流の発生を防止することができると共に、マイクロレンズ等の特殊なレンズを用いることなく実効的な画素開口率を大きくして表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することができ、相対的に製品コストの低減を図ることのできる電気光学装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明による第1の電気光学装置は、基板上に、マトリクス状に形成された複数の走査線及び複数のデータ線と、前記走査線とデータ線に電気的に接続されたトランジスタと、前記トランジスタに電気的に接続された画素電極と、前記トランジスタの上方に配設されていると共に入射光側から該トランジスタの少なくとも半導体層を覆う遮光膜とを備える電気光学装置において、前記遮光膜が高反射材料で形成されていると共に、該遮光膜の側壁が設定傾斜角度の傾斜面となっていることを特徴とする。
【0008】
このような構成では、半導体層を覆う遮光膜を高反射材料で形成すると共に、この遮光膜の側壁を設定傾斜角度の傾斜面としたので、この傾斜面に入射された光は、画素電極の形成領域にほぼ対応する位置に設けられている画素開口領域側へ反射される。その結果、半導体層、特にチャネル領域、及びその周辺領域に入射される光を遮光して光リーク電流の発生を防止することができると共に、傾斜面からの反射光を画素開口領域へ導くようにしたので実効的な画素開口率が大きくなり、表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することができる。更に、マイクロレンズ等の特殊なレンズを用いることなく実効的な画素開口率を大きくしたので、相対的に製品コストの低減を実現することができる。
【0009】
第2の電気光学装置は、第1の電気光学装置において、前記遮光膜が、前記半導体層の上方に配設されている前記データ線によって形成されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成では、遮光膜を、半導体層の上方に配設されているデータ線で形成したので、半導体層に入射しようとする光を確実に防止することができる。
【0011】
第3の電気光学装置は、第1の電気光学装置において、前記遮光膜が、前記半導体層の上方に配設されていると共に前記画素電極の電位を保持する蓄積容量を構成する電極であることを特徴とする。
【0012】
このような構成では、遮光膜を、半導体層の上方に配設されていると共に蓄積容量を構成する電極としたので、この蓄積容量が入射光を反射させる傾斜面を有することとなり、従って蓄積容量は傾斜面が形成されている分だけ容量面積が増加し、画素保持容量を大きくすることができる。
【0013】
第4の電気光学装置は、第1の電気光学装置において、前記遮光膜が、前記データ線又は前記蓄積容量の下層に形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成では、遮光膜を、データ線又は蓄積容量の下層に形成したので、遮光膜に入射しようとする光を、データ線又は蓄積容量により確実に防止することができる。
【0015】
第5の電気光学装置は、第1の電気光学装置において、前記遮光膜が、前記トランジスタの上方に少なくとも2層配設されており、一方の遮光膜が前記半導体層の上方に配設されている前記データ線によって形成され、他方の遮光膜が前記半導体層の上方に配設されていると共に前記画素電極の電位を保持する蓄積容量を構成する電極であることを特徴とする。
【0016】
このような構成では、一方の遮光膜を半導体層の上方に配設されているデータ線によって形成し、他方の遮光膜を半導体層の上方に配設されていると共に蓄積容量を構成する電極としたので、各反射膜に形成されている傾斜面により入射光を開口領域側へ効率よく反射させることができ、実効的な開口率をより大きくすることができるばかりでなく、蓄積容量は傾斜面が形成されている分だけ容量面積が増加し、画素保持容量を大きくすることができる。
【0017】
第6の電気光学装置は、第1〜第5の電気光学装置において、前記遮光膜の前記傾斜面の裾部が断面視において前記半導体層が形成されている位置よりも出射光側へ延在されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成では、傾斜面の裾部が断面視において半導体層が形成されている位置よりも出射光側へ延在されているので、反射光が半導体層へ入射することが無くなり、光リーク電流の発生をより確実に防止することができる。
【0019】
第7の電気光学装置は、第1〜第6の電気光学装置において、前記傾斜面の傾斜角度δは、基板に対して垂直方向へ入射される入射光の最大入射角をθi、隣接するトランジスタ間を結ぶ線と隣接する該トランジスタと前記傾斜面とを結ぶ線との挟角をΔとした場合、
0<θi+π−2δ<(π/2)−Δ
を満たす角度に設定されていることを特徴とする。
【0020】
このような構成では、遮光膜に形成した傾斜面の傾斜角度δを、入射光の最大入射角θiと、隣接するトランジスタ間を結ぶ線と隣接する該トランジスタと前記傾斜面とを結ぶ線とのなす挟角Δとに基づいて設定するようにしたので、反射面で反射した光は常に画素開口領域へ導かれるようになり、従って、この反射光が半導体層へ入射することが無く、光リーク電流の発生を確実に防止することができる。
【0021】
又、本発明による第1の電子機器は、第1〜第7の電気光学装置を備えて構成されていることを特徴とする。このような構成では、本発明による電子機器が第1〜第7の電気光学装置の何れか1つを備えているので、表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1〜図7に本発明の第1実施形態を示す。図1は電気光学装置である液晶装置をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図、図2はTFT基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置であって、図1のH-H'断面図、図3はTFT基板上に形成する隣接した複数の画素について各層の要部の成膜パターンを示す平面図、図4は一つの画素に着目した液晶装置の模式的断面図、図5(a)は図3のV-V線で示す模式的断面図、同(b)は(a)の平面図である。尚、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0024】
図1〜図4を参照して本実施形態で採用する液晶装置の全体構成について説明する。図1、図2に示すように、電気光学装置の一例である液晶装置は、TFT基板10と、これに対向配置される対向基板20とを有し、両基板10,20の対向面間の画像表示領域10aの周囲に設けたシール領域がシール材52を介して貼り合わされている。更に、この両基板10,20の対向面間とシール材52とで囲まれた領域内に、電気光学物質としての液晶50が封入されている。尚、シール材52の1辺に内部に液晶50を注入する液晶注入口108が形成されており、この液晶注入口108が、内部に液晶を注入した後、封止材109で封止される。
【0025】
又、対向基板20の4隅には、上下導通材106が設けられており、TFT基板10に設けられた上下導通端子107と対向基板20に設けられた対向電極21との間で電気的に導通されている。
【0026】
更に、対向基板20側には、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aを規定する遮光性の周辺遮光膜53が設けられている。又、画像表示領域の周辺に広がる周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側部分には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFT基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更に、TFT基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間を電気的に接続するための複数の配線105が設けられている。尚、走査線駆動回路104、及び配線105は、シール材52の内側の周辺遮光膜53に対向する位置に配設されている。
【0027】
又、TFT基板10上であって、後述する第3層間絶縁膜43上には、画素スイッチング用のTFTや走査線11a、データ線6a等の配線が形成された後の画素電極9aが形成され、この画素電極9a上に配向膜16が形成されている。一方、対向基板20上には、対向電極21の他、最上層部分に配向膜22が形成されており、これら一対の配向膜16,22間で、所定の配向状態が設定される。
【0028】
図3に示ように、画素電極9aは、TFT基板10上に、マトリクス状に複数配設されており、各画素電極9aの縦横の境界に沿ってデータ線6a(図3の極太破線)及び走査線11a(図3の破線)が設けられている。又、走査線11aは、半導体層1aのうちチャネル領域1a’に対向するゲート電極3a(図3の細線)に電気的に接続されている。すなわち、走査線11aとデータ線6aとの交差する箇所にはそれぞれ、走査線11aに電気的に接続されたゲート電極3aとチャネル領域1a’とが対向配置されて画素スイッチング用のTFT30が構成されている。
【0029】
図4に示すように、TFT基板10上には、下地絶縁膜12、第1〜第3の層間絶縁膜41〜43が積層されている。第1層間絶縁膜41は、例えばNSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いは好ましくはNSG等で形成されている。又、第2層間絶縁膜42は、例えばNSG、PSG,BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いは好ましくはTEOSガスを用いたプラズマCVD法によって形成されている。又、第3層間絶縁膜43は、例えばNSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いは好ましくはTEOSガスを用いたプラズマCVD法にて成膜されるプラズマTEOSで形成されている。
【0030】
又、TFT基板10と下地絶縁膜12との間に走査線11aが配設されている。この走査線11aは、入射光側からの平面視において、図3のX方向に沿うように、ストライプ状にパターニングされていると共に、データ線6aに沿って図3のY方向に延びる突出部を有している。尚、隣接する走査線11aから延びる突出部は相互に接続されることはなく、走査線11aは1本毎に分断されている。
【0031】
これにより、走査線11aは、同一行に存在するTFT30のON・OFFを一斉に制御する機能を有することになる。又、走査線11aは、画素電極9aが形成されない領域を略埋めるように形成されていることから、TFT30に下側から入射しようとする光を遮る機能も有している。これにより、TFT30の半導体層1aにおける光リーク電流の発生を防止し、フリッカ等のない高品質な画像表示が可能となる。
【0032】
又、下地絶縁膜12と第1層間絶縁膜41との間に、TFT30が設けられている。TFT30は、ゲート電極3aを含むLDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、このゲート電極3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、ゲート電極3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aにおける低濃度ソース領域1b、及び低濃度ドレイン領域1c、並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0033】
更に、下地絶縁膜12には、コンタクトホール12cvが形成されており、このコンタクトホール12cvを埋めるようにして、ゲート電極3aの一部3bが形成されている。ゲート電極3aは、コンタクトホール12cvを埋めるように、且つ、その下端が走査線11aと接するように形成されている。従って、同一行の走査線11aとゲート電極3aとは同電位となる。
【0034】
又、第1層間絶縁膜41と第2層間絶縁膜42との間に、アルミニウム(Al)と窒化チタン(TiN)を材料とするデータ線6aが設けられている。このデータ線6aが第1層間絶縁膜41に形成されているコンタクトホール81を介して、TFT30の高濃度ソース領域1dと電気的に接続されている。又、第1層間絶縁膜41に、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと、後述する蓄積容量70を構成する下部電極71とを電気的に接続するコンタクトホール82が形成されている。更に、第2層間絶縁膜42に、高濃度ドレイン領域1eと蓄積容量70の下部電極71とを電気的に接続するコンタクトホール83が形成されている。従って、TFT30の高濃度ドレイン領域1eはコンタクトホール82、中継層6a1及びコンタクトホール83を介して蓄積容量70の下部電極71に電気的に接続される。
【0035】
又、データ線6aは、走査線11aと交差するように、図3中、Y方向にストライプ状に形成されている。更に、第1層間絶縁膜41と第2層間絶縁膜42との間には、データ線6aと同一膜として、蓄積容量への中継用の中継層6a1が形成されている。
【0036】
図3に示すように、中継層6a1は、平面視では、データ線6aと連続してはおらず、データ線6aと中継層6a1はパターニング上分断されている。又、データ線6aは2層構造を有しており、下層側を反射層91とし、高反射性、及び遮光性を有する材料の一例であるアルミニウム(Al)によって形成されている。従って、この反射膜91は遮光膜としての機能も備えている。ただし、反射膜91は裏面に光が反射してTFT30に光が入射する懸念もあるため、TFT30の上方にデータ線6aが配設される場合、反射膜91の下層膜として裏面反射防止膜をさらに形成することが好ましい。TFT30とデータ線6aとの間に蓄積容量70がある場合は、蓄積容量70の下部電極70の裏面は反射率の低い材料で形成されていることが好ましい。
【0037】
この反射膜91は、入射光側からの平面視では、少なくともゲート電極3a直下のチャネル領域1a’を覆うように形成されている。
【0038】
又、第2層間絶縁膜42と第3層間絶縁膜43との間に、蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに電気的に接続された画素電位側容量電極としての下部電極71と、固定電位側容量電極を含む容量線300とが、誘電体膜75を介して対向配置されて形成されている。尚、誘電体膜75は、例えば膜厚5〜40nm程度の比較的薄い酸化シリコン膜、及び窒化シリコン膜、又はその他の絶縁性の誘電体で構成されている。この蓄積容量70によって画素電極9aにおける電位保持特性を顕著に高めることが可能となる。
【0039】
又、蓄積容量70は、図3に示すように、画素電極9aの形成領域にほぼ対応する位置に設けられている画素開口領域には至らないように形成されている(換言すれば、遮光領域内に収まるように形成されている)。そのため、液晶装置全体の画素開口率は比較的大きく維持され、これにより、より明るい画像を表示することが可能となる。
【0040】
下部電極71は、金属膜からなり画素電位側容量電極としての機能と、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能とを有している。又、容量線300は、蓄積容量70の固定電位側容量電極として機能している。この容量線300は、下層にアルミニウム(Al)層301、上層に窒化チタン(TiN)層302の2層構造を有し、TFT基板10上において、各画素に対応するように島状に形成されている。尚、下部電極71と容量線300とは、ほぼ同一形状を有するように形成されている。
【0041】
これにより、蓄積容量70は、平面視においては、無駄な広がりを有さず、即ち画素開口率を低落させることなく、且つ、当該状況下で最大限の容量値を実現し得ることになる。すなわち、蓄積容量70は、より小面積で、より大きな容量値を有することになる。又、第3層間絶縁膜43には、画素電極9aと蓄積容量70の下部電極71との間を電気的に接続するコンタクトホール84が形成されている。
【0042】
ところで、図5(a)に示すように、TFT30上に成膜されている第1層間絶縁膜41は、走査線11aの膜厚やTFT30の膜厚が加算されている分だけ断面台形状に隆起されており、反射膜91は、TFT30上に台形上に隆起されている第1層間絶縁膜41の上に形成されている。この反射膜91は線幅方向の断面において台形状に形成されており、その上面にデータ線6aが形成されている。
【0043】
又、断面台形状に形成された反射膜91の側壁が所定傾斜角度δの傾斜面91aとなっており、この傾斜面91aが入射光側からの平面視において、画素開口領域へ拡開する裾広がりに形成されている。又、この傾斜面91aの裾部91bが、第1層間絶縁膜41の隆起された側面に重ねられて、この隆起部の裾部に延出されている。上述したように、反射膜91はAl(アルミニウム)を材料としているため、光反射性が良く、その上、遮光性にも優れている。図5に示す符号AはTFT30(特にチャネル領域1a’及びその周辺領域である半導体層1a)に対する有効遮光幅を示し、Bは光透過に対する遮光幅を示す。又、Cは反射膜91の最大幅を示す。有効遮光幅Aが最大幅Cよりも狭いのは、反射膜91の裾部91b付近は膜厚が薄く遮光性が低下するためである。遮光性を有する蓄積容量70、データ線6aは遮光幅Bとほぼ同じ幅で形成されており、この遮光幅B内にTFT30(特に半導体層1a)が収容されている。従って、入射光は蓄積容量70、及びデータ線6aの表面によって反射され、入射光が直接TFT30に入射することはない。
【0044】
更に、図6に示すように、反射膜91の傾斜面91aの傾斜角度δは、この傾斜面91aで反射された光が、隣接するTFT30に入射されることなく、TFT基板10の画素開口領域を透過する角度に設定されている。
【0045】
次に、図7を参照して傾斜面91aの傾斜角度δの求め方について説明する。尚、図7では説明を簡単にするため反射膜91を単純な台形としている。
【0046】
例えば液晶装置がプロジェクタに搭載されている場合、点光源から基板垂直方向への入射光の最大入射角θiは、この入射光のF値によって範囲が限定される。F値は、点光源から投射面までの距離Lと投射面に投影される円の直径Dとの関係から、F≡L/Dであり、従って、最大入射角θiは次式から求めることができる。
【0047】
θi=tan−1((D/2)/L)
=tan−1(1/(2F))
となる。厳密には屈折率の違いによって、θiは反射面を覆う材料によって多少変化する。
【0048】
先ず、一例として入射光が反射膜91のエッジから反射する際の反射角θrを求める。傾斜面91aに入射した光は、この傾斜面91aに引いた垂線と対称な方向へ反射されるため、
θr=[θi+(π/2)−δ]+[(π/2)−δ]
=θi+π−2δ
となる。
【0049】
次いで、反射膜91のエッジと隣接するTFT30の表面とを結ぶ斜辺と隣接するTFT30間を結ぶ線との挟角Δを求める。この場合、隣接するTFT30間の距離(画素ピッチ)をLp、反射膜91の幅の半分をLw、TFT30と反射膜91の底面との距離をLdとすると、
Δ=tan−1(Ld/(Lp−Lw))
であり、反射膜91のエッジと隣接するTFT30とを結ぶ斜辺と基板に垂直な線とのなす角は、
(π/2)−Δ
となる。
【0050】
従って、反射角θrが、おおよそ、0<θr<(π/2)−Δの範囲に設定されていれば、隣接するTFT30に光が入射されることはない。その結果、反射膜91の傾斜面91aの傾斜角度Δは、0<θr<(π/2)−Δを満足させる値に設定する。この場合、好ましくは、実用的な投射レンズの入射角を考慮した場合、傾斜角度δは、δ≒π/2−θi程度が好ましく、又、反射角θrは、θr≒2θi程度が好ましい。
【0051】
従って、傾斜角度δは、
0 < θi+π−2δ < (π/2)−Δ
より、
(Δ/3)+(π/3) < δ < π/2
の範囲で設定することが好ましい。
【0052】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。液晶装置の対向基板20側から入射した光(入射光)は、対向基板20を透過し、液晶50を通過してTFT基板10側へ入射され、TFT基板10上の画素開口領域を透過して出射される。そして、TFT基板10側からの出射光を観察することで、表示画像を認識することができる。
【0053】
TFT基板10に形成されているTFT30の上層(入射方向)は、遮光性を有するデータ線6a、及び蓄積容量70で覆われ、更に、データ線6aの下層に、アルミニウムよりなる遮光性を有する反射膜91が形成されている。従って、TFT30に入射しようとする光はこれらの薄膜により遮光されるため、入射光がTFT30に直接入射されることはなく、光リーク電流の発生を未然に防止することができる。
【0054】
又、反射膜91はアルミニウムを材料として形成されているため光反射性が良く、図6に示すように、傾斜面91aに入射された光はTFT基板10の下層方向へ反射される。上述したように、この傾斜面91aの傾斜角度δ(図7参照)は、隣接するTFT30に反射光が入射しない角度に設定されているため、この反射光がTFT30に入射されることはなく、光リーク電流の発生を防止することができる。特に、反射層91をTFT30に近接する位置に設けたので、TFT30に入射される光をより確実に防止することができる。
【0055】
更に、反射膜91の傾斜面91aにて、TFT基板10に垂直に入射される光はもとより、斜め光も反射させてTFT基板10上の画素開口領域を透過させるようにしたので、有効遮光幅Aを狭めることなく、実効的な画素開口率を大きくすることができ、その分、表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することができる。
【0056】
又、本実施形態では、マイクロレンズ等の特殊なレンズを用いることなく、反射膜91の傾斜面91aからの反射光をも画素開口領域を透過させることで、実効的な画素開口率を大きくするようにしたので、相対的に製品コストの低減を図ることができる。
【0057】
ここで、反射膜91の傾斜面91aを所望の傾斜角度δに形成する方法について説明する。この傾斜面91aは、例えばドライエッチングにより形成することができる。
【0058】
すなわち、先ず、反射膜91となる薄膜を成膜した後、この薄膜に対しレジストマスクを介して酸素を含むエッチングガスによるドライエッチングを行う。酸素を含むエッチングガスを用いて薄膜をエッチングすると、レジストマスクの側端縁もエッチングされるため、薄膜のうち、レジストマスクの側端縁に相当する部分ほど多くエッチングされることになる。その結果、この薄膜からパターニング形成された反射膜91において、レジストマスクの側端縁に位置していた傾斜面91aとなる面の膜厚が連続的に変化して薄くなり、傾斜面91aが形成される。従って、反射膜91を形成する際のエッチングガスを選択することで、所望の傾斜角度δの傾斜面91aを容易に形成することができる。
【0059】
[第2実施形態]
図8に本発明の第2実施形態を示す。図8(a)は図5(a)相当の模式的断面図、同(b)は(a)の平面図である。
【0060】
本実施形態は上述した第1実施形態の変形例であり、反射膜91の裾部91bを、断面視においてTFT30の半導体層1aの位置よりも出射光側、すなわちTFT基板10の方向へ延在させたものである。尚、図8(a)の符号Hは傾斜面91aの高さを示し、HiはTFT30(特に半導体層1a)の上面と裾部91bとの段差を示す。
【0061】
本実施形態では、反射膜91に形成した傾斜面91aの裾部91bが、TFT30の半導体層1aよりも出射光側であるTFT基板10方向へ延在されているため、反射光が半導体層1a、特にチャネル領域1a’へ入射することが無くなる。その結果、光リーク電流の発生をより確実に防止することができる。
【0062】
[第3実施形態]
図9に本発明の第3実施形態を示す。図9(a)は図5(a)相当の模式的断面図、同(b)は(a)の平面図である。
【0063】
上述した第1実施形態、及び第2実施形態では、データ線6aの下層に設けた反射膜91に傾斜面91aを形成し、傾斜面91aからの反射光をTFT基板10方向へ出射させるようにしたが、本実施形態では、データ線6aの上層に形成されている蓄積容量70を上層方向隆起する台形状に形成し、その傾斜面70aにて入射光を反射させてTFT基板10方向へ出射させるようにしたものである。尚、この傾斜面70aの傾斜角度は、上述した図7に示す計算方法で導き出すことができる。
【0064】
又、第1実施形態の容量線300は、下層をアルミニウム(Al)層301、上層を窒化チタン(TiN)層302の2層構造としているが、本実施形態では、これに代えて或いは加えて上層をアルミニウム(Al)層としている。本実施形態のアルミニウム(Al)層は、単層或いは複数の積層構造の上層であってもよい。容量線300の上層を光反射性に優れているアルミニウム層としたので、傾斜面70aに入射された光をより効率よくTFT基板10の方向へ反射させることができる。
【0065】
更に、蓄積容量70を台形状に隆起させることで、蓄積容量70は傾斜面70aの分だけ容量面積が増加することになり、その分、画素開口率を低落させることなく、画素保持容量を大きくすることができる。
【0066】
[第4実施形態]
図10に本発明の第4実施形態を示す。図10(a)は図5(a)相当の模式的断面図、同(b)は(a)の平面図である。
【0067】
本実施形態は、上述した第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、データ線6aの下層にあたる反射膜91を台形状に形成し、且つ蓄積容量70を上層方向へ隆起する台形状に形成し、この反射膜91と蓄積容量70の容量線300とをアルミニウム(Al)を材料として形成したものである。尚、反射膜91と蓄積容量70とに各々形成されている傾斜面91a,70aの傾斜角度は、前述した図7に示す計算方法で導き出すことができる。
【0068】
従って、対向基板20(図4参照)側から入射した光は、蓄積容量70の傾斜面70aと、反射膜91の傾斜面91aとの双方で反射されるため、有効遮光幅Aを狭めることなく、実効的な開口率をより大きくすることができる。その結果、表示画像の高品位化、及び高輝度化をより一層実現することができる。更に、蓄積容量70を隆起させた分、画素保持容量を大きくすることができる。勿論、前述のように、TFT30とデータ線6aとの間に蓄積容量70を配置しても良い。
【0069】
[電子機器の実施形態]
次に、図11に示す投射型カラー表示装置の図式的断面図を参照して、上述した液晶装置をライトバルブとして用いた電子機器の一例である投射型カラー表示装置の実施形態について、その全体構成、特に光学的な構成について説明する。
【0070】
本実施形態における投射型カラー表示装置の一例である液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFT基板10上に搭載された液晶装置を含む液晶モジュールを3個用意し、夫々RGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。
【0071】
液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G、Bに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。その際、特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
【0072】
尚、本発明は上述した各実施形態に限るものではなく、例えば反射膜として採用する高反射材料は、高反射性、及び遮光性を有しているものであれば、アルミニウム以外に、金や銀などの金属膜、又はそれらの金属の合金膜であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明による電気光学装置は、TFT30を用いて表示用電極を駆動するものであれば良く、従って、液晶装置以外に、電子ペーパ等の電気泳動装置や、電子放出素子を用いた表示装置(Field Emission Display、及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等に適用することもできる。
【0074】
又、電子機器は、本発明による電気光学装置を備えて実現できるものであれば、上述した液晶プロジェクタ1100に限らず、テレビジョン受像機、ビューファインダ型或いはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の各種の電子機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態による液晶装置を各構成要素と共に対向基板側から見た平面図
【図2】同、図1のH-H'断面図
【図3】同、TFT基板上に形成する隣接した複数の画素について各層の要部の成膜パターンを示す平面図
【図4】同、一つの画素に着目した液晶装置の模式的断面図
【図5】同、(a)は図3のV-V線で示す模式的断面図、(b)は(a)の平面図
【図6】同、TFT基板に入射する光の出射状態を示す説明図
【図7】同、反射膜に形成する傾斜面の傾斜角度の求め方を示す説明図
【図8】第2実施形態を示し、(a)は図5(a)相当の模式的断面図、(b)は(a)の平面図
【図9】第3実施形態を示し、(a)は図5(a)相当の模式的断面図、(b)は(a)の平面図
【図10】第4実施形態を示し、(a)は図5(a)相当の模式的断面図、(b)は(a)の平面図
【図11】投射型カラー表示装置の図式的断面図
【符号の説明】
【0076】
1a’…チャネル領域、1a…半導体層、3a…ゲート電極、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFT基板、11a…走査線、20…対向基板、50…液晶、70…蓄積容量、70a,91a…傾斜面、91…反射膜、91b…裾部、1100…液晶プロジェクタ、Δ…挟角、δ…傾斜角度、θi…最大入射角、θr…反射角、300…容量線、A…有効遮光幅、B…遮光幅、C…最大幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層での光リーク電流の発生を抑制すると共に、実効的な画素開口率の向上を実現する電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の電気光学装置は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)等を画素選択用のスイッチング素子として用いるアクティブマトリクス駆動形式が多く採用されている。このTFTのチャネル領域に入射光が照射されると、光による励起で光リーク電流が発生してTFTの特性が変化してしまう。TFTの特性の変化は、表示面における画質の不均一やコントラスト比の低下、フリッカ特性の劣化等の原因となる。
【0003】
そのため、従来から、TFTのチャネル領域やその周辺領域を遮光する各種技術が提案されている。例えば特許文献1(特開2001−330858号公報)には、TFTのチャネル領域上に、遮光性を有する導電膜を積層し、この導電膜でチャネル領域を覆うことで、チャネル領域やその周辺領域を遮光する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−330858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の電気光学装置においては、表示画像の高品位化、高輝度化という要請が強く、それに対応するには各画素の開口率を大きくする必要性がある。しかし、各画素の開口率を大きくすることは、相対的に、上述した文献に開示されているような遮光膜、及び遮光機能を有する膜の線幅を減少させることになるが、TFTに対する遮光性を確保した状態で膜の線幅を減少させるには限界がある。その結果、TFTのチャネル領域、及びその周辺に入射される光を確実に遮光した状態で、表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することは困難である。
【0005】
これに対処するに、光の入射側にマイクロレンズを配設することで実効的な画素開口率を大きくする技術も知られているが、マイクロレンズを必要とする分、製品コストが高くなってしまう問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、TFTのチャネル領域、及びその周辺に入射される光を確実に遮光して光リーク電流の発生を防止することができると共に、マイクロレンズ等の特殊なレンズを用いることなく実効的な画素開口率を大きくして表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することができ、相対的に製品コストの低減を図ることのできる電気光学装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明による第1の電気光学装置は、基板上に、マトリクス状に形成された複数の走査線及び複数のデータ線と、前記走査線とデータ線に電気的に接続されたトランジスタと、前記トランジスタに電気的に接続された画素電極と、前記トランジスタの上方に配設されていると共に入射光側から該トランジスタの少なくとも半導体層を覆う遮光膜とを備える電気光学装置において、前記遮光膜が高反射材料で形成されていると共に、該遮光膜の側壁が設定傾斜角度の傾斜面となっていることを特徴とする。
【0008】
このような構成では、半導体層を覆う遮光膜を高反射材料で形成すると共に、この遮光膜の側壁を設定傾斜角度の傾斜面としたので、この傾斜面に入射された光は、画素電極の形成領域にほぼ対応する位置に設けられている画素開口領域側へ反射される。その結果、半導体層、特にチャネル領域、及びその周辺領域に入射される光を遮光して光リーク電流の発生を防止することができると共に、傾斜面からの反射光を画素開口領域へ導くようにしたので実効的な画素開口率が大きくなり、表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することができる。更に、マイクロレンズ等の特殊なレンズを用いることなく実効的な画素開口率を大きくしたので、相対的に製品コストの低減を実現することができる。
【0009】
第2の電気光学装置は、第1の電気光学装置において、前記遮光膜が、前記半導体層の上方に配設されている前記データ線によって形成されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成では、遮光膜を、半導体層の上方に配設されているデータ線で形成したので、半導体層に入射しようとする光を確実に防止することができる。
【0011】
第3の電気光学装置は、第1の電気光学装置において、前記遮光膜が、前記半導体層の上方に配設されていると共に前記画素電極の電位を保持する蓄積容量を構成する電極であることを特徴とする。
【0012】
このような構成では、遮光膜を、半導体層の上方に配設されていると共に蓄積容量を構成する電極としたので、この蓄積容量が入射光を反射させる傾斜面を有することとなり、従って蓄積容量は傾斜面が形成されている分だけ容量面積が増加し、画素保持容量を大きくすることができる。
【0013】
第4の電気光学装置は、第1の電気光学装置において、前記遮光膜が、前記データ線又は前記蓄積容量の下層に形成されていることを特徴とする。
【0014】
このような構成では、遮光膜を、データ線又は蓄積容量の下層に形成したので、遮光膜に入射しようとする光を、データ線又は蓄積容量により確実に防止することができる。
【0015】
第5の電気光学装置は、第1の電気光学装置において、前記遮光膜が、前記トランジスタの上方に少なくとも2層配設されており、一方の遮光膜が前記半導体層の上方に配設されている前記データ線によって形成され、他方の遮光膜が前記半導体層の上方に配設されていると共に前記画素電極の電位を保持する蓄積容量を構成する電極であることを特徴とする。
【0016】
このような構成では、一方の遮光膜を半導体層の上方に配設されているデータ線によって形成し、他方の遮光膜を半導体層の上方に配設されていると共に蓄積容量を構成する電極としたので、各反射膜に形成されている傾斜面により入射光を開口領域側へ効率よく反射させることができ、実効的な開口率をより大きくすることができるばかりでなく、蓄積容量は傾斜面が形成されている分だけ容量面積が増加し、画素保持容量を大きくすることができる。
【0017】
第6の電気光学装置は、第1〜第5の電気光学装置において、前記遮光膜の前記傾斜面の裾部が断面視において前記半導体層が形成されている位置よりも出射光側へ延在されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成では、傾斜面の裾部が断面視において半導体層が形成されている位置よりも出射光側へ延在されているので、反射光が半導体層へ入射することが無くなり、光リーク電流の発生をより確実に防止することができる。
【0019】
第7の電気光学装置は、第1〜第6の電気光学装置において、前記傾斜面の傾斜角度δは、基板に対して垂直方向へ入射される入射光の最大入射角をθi、隣接するトランジスタ間を結ぶ線と隣接する該トランジスタと前記傾斜面とを結ぶ線との挟角をΔとした場合、
0<θi+π−2δ<(π/2)−Δ
を満たす角度に設定されていることを特徴とする。
【0020】
このような構成では、遮光膜に形成した傾斜面の傾斜角度δを、入射光の最大入射角θiと、隣接するトランジスタ間を結ぶ線と隣接する該トランジスタと前記傾斜面とを結ぶ線とのなす挟角Δとに基づいて設定するようにしたので、反射面で反射した光は常に画素開口領域へ導かれるようになり、従って、この反射光が半導体層へ入射することが無く、光リーク電流の発生を確実に防止することができる。
【0021】
又、本発明による第1の電子機器は、第1〜第7の電気光学装置を備えて構成されていることを特徴とする。このような構成では、本発明による電子機器が第1〜第7の電気光学装置の何れか1つを備えているので、表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。
【0023】
[第1実施形態]
図1〜図7に本発明の第1実施形態を示す。図1は電気光学装置である液晶装置をその上に形成された各構成要素と共に対向基板側から見た平面図、図2はTFT基板と対向基板とを貼り合わせて液晶を封入する組立工程終了後の液晶装置であって、図1のH-H'断面図、図3はTFT基板上に形成する隣接した複数の画素について各層の要部の成膜パターンを示す平面図、図4は一つの画素に着目した液晶装置の模式的断面図、図5(a)は図3のV-V線で示す模式的断面図、同(b)は(a)の平面図である。尚、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0024】
図1〜図4を参照して本実施形態で採用する液晶装置の全体構成について説明する。図1、図2に示すように、電気光学装置の一例である液晶装置は、TFT基板10と、これに対向配置される対向基板20とを有し、両基板10,20の対向面間の画像表示領域10aの周囲に設けたシール領域がシール材52を介して貼り合わされている。更に、この両基板10,20の対向面間とシール材52とで囲まれた領域内に、電気光学物質としての液晶50が封入されている。尚、シール材52の1辺に内部に液晶50を注入する液晶注入口108が形成されており、この液晶注入口108が、内部に液晶を注入した後、封止材109で封止される。
【0025】
又、対向基板20の4隅には、上下導通材106が設けられており、TFT基板10に設けられた上下導通端子107と対向基板20に設けられた対向電極21との間で電気的に導通されている。
【0026】
更に、対向基板20側には、シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aを規定する遮光性の周辺遮光膜53が設けられている。又、画像表示領域の周辺に広がる周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側部分には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFT基板10の一辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。更に、TFT基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間を電気的に接続するための複数の配線105が設けられている。尚、走査線駆動回路104、及び配線105は、シール材52の内側の周辺遮光膜53に対向する位置に配設されている。
【0027】
又、TFT基板10上であって、後述する第3層間絶縁膜43上には、画素スイッチング用のTFTや走査線11a、データ線6a等の配線が形成された後の画素電極9aが形成され、この画素電極9a上に配向膜16が形成されている。一方、対向基板20上には、対向電極21の他、最上層部分に配向膜22が形成されており、これら一対の配向膜16,22間で、所定の配向状態が設定される。
【0028】
図3に示ように、画素電極9aは、TFT基板10上に、マトリクス状に複数配設されており、各画素電極9aの縦横の境界に沿ってデータ線6a(図3の極太破線)及び走査線11a(図3の破線)が設けられている。又、走査線11aは、半導体層1aのうちチャネル領域1a’に対向するゲート電極3a(図3の細線)に電気的に接続されている。すなわち、走査線11aとデータ線6aとの交差する箇所にはそれぞれ、走査線11aに電気的に接続されたゲート電極3aとチャネル領域1a’とが対向配置されて画素スイッチング用のTFT30が構成されている。
【0029】
図4に示すように、TFT基板10上には、下地絶縁膜12、第1〜第3の層間絶縁膜41〜43が積層されている。第1層間絶縁膜41は、例えばNSG(ノンシリケートガラス)、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いは好ましくはNSG等で形成されている。又、第2層間絶縁膜42は、例えばNSG、PSG,BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いは好ましくはTEOSガスを用いたプラズマCVD法によって形成されている。又、第3層間絶縁膜43は、例えばNSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いは好ましくはTEOSガスを用いたプラズマCVD法にて成膜されるプラズマTEOSで形成されている。
【0030】
又、TFT基板10と下地絶縁膜12との間に走査線11aが配設されている。この走査線11aは、入射光側からの平面視において、図3のX方向に沿うように、ストライプ状にパターニングされていると共に、データ線6aに沿って図3のY方向に延びる突出部を有している。尚、隣接する走査線11aから延びる突出部は相互に接続されることはなく、走査線11aは1本毎に分断されている。
【0031】
これにより、走査線11aは、同一行に存在するTFT30のON・OFFを一斉に制御する機能を有することになる。又、走査線11aは、画素電極9aが形成されない領域を略埋めるように形成されていることから、TFT30に下側から入射しようとする光を遮る機能も有している。これにより、TFT30の半導体層1aにおける光リーク電流の発生を防止し、フリッカ等のない高品質な画像表示が可能となる。
【0032】
又、下地絶縁膜12と第1層間絶縁膜41との間に、TFT30が設けられている。TFT30は、ゲート電極3aを含むLDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、このゲート電極3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、ゲート電極3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁膜2、半導体層1aにおける低濃度ソース領域1b、及び低濃度ドレイン領域1c、並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0033】
更に、下地絶縁膜12には、コンタクトホール12cvが形成されており、このコンタクトホール12cvを埋めるようにして、ゲート電極3aの一部3bが形成されている。ゲート電極3aは、コンタクトホール12cvを埋めるように、且つ、その下端が走査線11aと接するように形成されている。従って、同一行の走査線11aとゲート電極3aとは同電位となる。
【0034】
又、第1層間絶縁膜41と第2層間絶縁膜42との間に、アルミニウム(Al)と窒化チタン(TiN)を材料とするデータ線6aが設けられている。このデータ線6aが第1層間絶縁膜41に形成されているコンタクトホール81を介して、TFT30の高濃度ソース領域1dと電気的に接続されている。又、第1層間絶縁膜41に、TFT30の高濃度ドレイン領域1eと、後述する蓄積容量70を構成する下部電極71とを電気的に接続するコンタクトホール82が形成されている。更に、第2層間絶縁膜42に、高濃度ドレイン領域1eと蓄積容量70の下部電極71とを電気的に接続するコンタクトホール83が形成されている。従って、TFT30の高濃度ドレイン領域1eはコンタクトホール82、中継層6a1及びコンタクトホール83を介して蓄積容量70の下部電極71に電気的に接続される。
【0035】
又、データ線6aは、走査線11aと交差するように、図3中、Y方向にストライプ状に形成されている。更に、第1層間絶縁膜41と第2層間絶縁膜42との間には、データ線6aと同一膜として、蓄積容量への中継用の中継層6a1が形成されている。
【0036】
図3に示すように、中継層6a1は、平面視では、データ線6aと連続してはおらず、データ線6aと中継層6a1はパターニング上分断されている。又、データ線6aは2層構造を有しており、下層側を反射層91とし、高反射性、及び遮光性を有する材料の一例であるアルミニウム(Al)によって形成されている。従って、この反射膜91は遮光膜としての機能も備えている。ただし、反射膜91は裏面に光が反射してTFT30に光が入射する懸念もあるため、TFT30の上方にデータ線6aが配設される場合、反射膜91の下層膜として裏面反射防止膜をさらに形成することが好ましい。TFT30とデータ線6aとの間に蓄積容量70がある場合は、蓄積容量70の下部電極70の裏面は反射率の低い材料で形成されていることが好ましい。
【0037】
この反射膜91は、入射光側からの平面視では、少なくともゲート電極3a直下のチャネル領域1a’を覆うように形成されている。
【0038】
又、第2層間絶縁膜42と第3層間絶縁膜43との間に、蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aに電気的に接続された画素電位側容量電極としての下部電極71と、固定電位側容量電極を含む容量線300とが、誘電体膜75を介して対向配置されて形成されている。尚、誘電体膜75は、例えば膜厚5〜40nm程度の比較的薄い酸化シリコン膜、及び窒化シリコン膜、又はその他の絶縁性の誘電体で構成されている。この蓄積容量70によって画素電極9aにおける電位保持特性を顕著に高めることが可能となる。
【0039】
又、蓄積容量70は、図3に示すように、画素電極9aの形成領域にほぼ対応する位置に設けられている画素開口領域には至らないように形成されている(換言すれば、遮光領域内に収まるように形成されている)。そのため、液晶装置全体の画素開口率は比較的大きく維持され、これにより、より明るい画像を表示することが可能となる。
【0040】
下部電極71は、金属膜からなり画素電位側容量電極としての機能と、画素電極9aとTFT30の高濃度ドレイン領域1eとを中継接続する機能とを有している。又、容量線300は、蓄積容量70の固定電位側容量電極として機能している。この容量線300は、下層にアルミニウム(Al)層301、上層に窒化チタン(TiN)層302の2層構造を有し、TFT基板10上において、各画素に対応するように島状に形成されている。尚、下部電極71と容量線300とは、ほぼ同一形状を有するように形成されている。
【0041】
これにより、蓄積容量70は、平面視においては、無駄な広がりを有さず、即ち画素開口率を低落させることなく、且つ、当該状況下で最大限の容量値を実現し得ることになる。すなわち、蓄積容量70は、より小面積で、より大きな容量値を有することになる。又、第3層間絶縁膜43には、画素電極9aと蓄積容量70の下部電極71との間を電気的に接続するコンタクトホール84が形成されている。
【0042】
ところで、図5(a)に示すように、TFT30上に成膜されている第1層間絶縁膜41は、走査線11aの膜厚やTFT30の膜厚が加算されている分だけ断面台形状に隆起されており、反射膜91は、TFT30上に台形上に隆起されている第1層間絶縁膜41の上に形成されている。この反射膜91は線幅方向の断面において台形状に形成されており、その上面にデータ線6aが形成されている。
【0043】
又、断面台形状に形成された反射膜91の側壁が所定傾斜角度δの傾斜面91aとなっており、この傾斜面91aが入射光側からの平面視において、画素開口領域へ拡開する裾広がりに形成されている。又、この傾斜面91aの裾部91bが、第1層間絶縁膜41の隆起された側面に重ねられて、この隆起部の裾部に延出されている。上述したように、反射膜91はAl(アルミニウム)を材料としているため、光反射性が良く、その上、遮光性にも優れている。図5に示す符号AはTFT30(特にチャネル領域1a’及びその周辺領域である半導体層1a)に対する有効遮光幅を示し、Bは光透過に対する遮光幅を示す。又、Cは反射膜91の最大幅を示す。有効遮光幅Aが最大幅Cよりも狭いのは、反射膜91の裾部91b付近は膜厚が薄く遮光性が低下するためである。遮光性を有する蓄積容量70、データ線6aは遮光幅Bとほぼ同じ幅で形成されており、この遮光幅B内にTFT30(特に半導体層1a)が収容されている。従って、入射光は蓄積容量70、及びデータ線6aの表面によって反射され、入射光が直接TFT30に入射することはない。
【0044】
更に、図6に示すように、反射膜91の傾斜面91aの傾斜角度δは、この傾斜面91aで反射された光が、隣接するTFT30に入射されることなく、TFT基板10の画素開口領域を透過する角度に設定されている。
【0045】
次に、図7を参照して傾斜面91aの傾斜角度δの求め方について説明する。尚、図7では説明を簡単にするため反射膜91を単純な台形としている。
【0046】
例えば液晶装置がプロジェクタに搭載されている場合、点光源から基板垂直方向への入射光の最大入射角θiは、この入射光のF値によって範囲が限定される。F値は、点光源から投射面までの距離Lと投射面に投影される円の直径Dとの関係から、F≡L/Dであり、従って、最大入射角θiは次式から求めることができる。
【0047】
θi=tan−1((D/2)/L)
=tan−1(1/(2F))
となる。厳密には屈折率の違いによって、θiは反射面を覆う材料によって多少変化する。
【0048】
先ず、一例として入射光が反射膜91のエッジから反射する際の反射角θrを求める。傾斜面91aに入射した光は、この傾斜面91aに引いた垂線と対称な方向へ反射されるため、
θr=[θi+(π/2)−δ]+[(π/2)−δ]
=θi+π−2δ
となる。
【0049】
次いで、反射膜91のエッジと隣接するTFT30の表面とを結ぶ斜辺と隣接するTFT30間を結ぶ線との挟角Δを求める。この場合、隣接するTFT30間の距離(画素ピッチ)をLp、反射膜91の幅の半分をLw、TFT30と反射膜91の底面との距離をLdとすると、
Δ=tan−1(Ld/(Lp−Lw))
であり、反射膜91のエッジと隣接するTFT30とを結ぶ斜辺と基板に垂直な線とのなす角は、
(π/2)−Δ
となる。
【0050】
従って、反射角θrが、おおよそ、0<θr<(π/2)−Δの範囲に設定されていれば、隣接するTFT30に光が入射されることはない。その結果、反射膜91の傾斜面91aの傾斜角度Δは、0<θr<(π/2)−Δを満足させる値に設定する。この場合、好ましくは、実用的な投射レンズの入射角を考慮した場合、傾斜角度δは、δ≒π/2−θi程度が好ましく、又、反射角θrは、θr≒2θi程度が好ましい。
【0051】
従って、傾斜角度δは、
0 < θi+π−2δ < (π/2)−Δ
より、
(Δ/3)+(π/3) < δ < π/2
の範囲で設定することが好ましい。
【0052】
次に、このような構成による本実施形態の作用について説明する。液晶装置の対向基板20側から入射した光(入射光)は、対向基板20を透過し、液晶50を通過してTFT基板10側へ入射され、TFT基板10上の画素開口領域を透過して出射される。そして、TFT基板10側からの出射光を観察することで、表示画像を認識することができる。
【0053】
TFT基板10に形成されているTFT30の上層(入射方向)は、遮光性を有するデータ線6a、及び蓄積容量70で覆われ、更に、データ線6aの下層に、アルミニウムよりなる遮光性を有する反射膜91が形成されている。従って、TFT30に入射しようとする光はこれらの薄膜により遮光されるため、入射光がTFT30に直接入射されることはなく、光リーク電流の発生を未然に防止することができる。
【0054】
又、反射膜91はアルミニウムを材料として形成されているため光反射性が良く、図6に示すように、傾斜面91aに入射された光はTFT基板10の下層方向へ反射される。上述したように、この傾斜面91aの傾斜角度δ(図7参照)は、隣接するTFT30に反射光が入射しない角度に設定されているため、この反射光がTFT30に入射されることはなく、光リーク電流の発生を防止することができる。特に、反射層91をTFT30に近接する位置に設けたので、TFT30に入射される光をより確実に防止することができる。
【0055】
更に、反射膜91の傾斜面91aにて、TFT基板10に垂直に入射される光はもとより、斜め光も反射させてTFT基板10上の画素開口領域を透過させるようにしたので、有効遮光幅Aを狭めることなく、実効的な画素開口率を大きくすることができ、その分、表示画像の高品位化、及び高輝度化を実現することができる。
【0056】
又、本実施形態では、マイクロレンズ等の特殊なレンズを用いることなく、反射膜91の傾斜面91aからの反射光をも画素開口領域を透過させることで、実効的な画素開口率を大きくするようにしたので、相対的に製品コストの低減を図ることができる。
【0057】
ここで、反射膜91の傾斜面91aを所望の傾斜角度δに形成する方法について説明する。この傾斜面91aは、例えばドライエッチングにより形成することができる。
【0058】
すなわち、先ず、反射膜91となる薄膜を成膜した後、この薄膜に対しレジストマスクを介して酸素を含むエッチングガスによるドライエッチングを行う。酸素を含むエッチングガスを用いて薄膜をエッチングすると、レジストマスクの側端縁もエッチングされるため、薄膜のうち、レジストマスクの側端縁に相当する部分ほど多くエッチングされることになる。その結果、この薄膜からパターニング形成された反射膜91において、レジストマスクの側端縁に位置していた傾斜面91aとなる面の膜厚が連続的に変化して薄くなり、傾斜面91aが形成される。従って、反射膜91を形成する際のエッチングガスを選択することで、所望の傾斜角度δの傾斜面91aを容易に形成することができる。
【0059】
[第2実施形態]
図8に本発明の第2実施形態を示す。図8(a)は図5(a)相当の模式的断面図、同(b)は(a)の平面図である。
【0060】
本実施形態は上述した第1実施形態の変形例であり、反射膜91の裾部91bを、断面視においてTFT30の半導体層1aの位置よりも出射光側、すなわちTFT基板10の方向へ延在させたものである。尚、図8(a)の符号Hは傾斜面91aの高さを示し、HiはTFT30(特に半導体層1a)の上面と裾部91bとの段差を示す。
【0061】
本実施形態では、反射膜91に形成した傾斜面91aの裾部91bが、TFT30の半導体層1aよりも出射光側であるTFT基板10方向へ延在されているため、反射光が半導体層1a、特にチャネル領域1a’へ入射することが無くなる。その結果、光リーク電流の発生をより確実に防止することができる。
【0062】
[第3実施形態]
図9に本発明の第3実施形態を示す。図9(a)は図5(a)相当の模式的断面図、同(b)は(a)の平面図である。
【0063】
上述した第1実施形態、及び第2実施形態では、データ線6aの下層に設けた反射膜91に傾斜面91aを形成し、傾斜面91aからの反射光をTFT基板10方向へ出射させるようにしたが、本実施形態では、データ線6aの上層に形成されている蓄積容量70を上層方向隆起する台形状に形成し、その傾斜面70aにて入射光を反射させてTFT基板10方向へ出射させるようにしたものである。尚、この傾斜面70aの傾斜角度は、上述した図7に示す計算方法で導き出すことができる。
【0064】
又、第1実施形態の容量線300は、下層をアルミニウム(Al)層301、上層を窒化チタン(TiN)層302の2層構造としているが、本実施形態では、これに代えて或いは加えて上層をアルミニウム(Al)層としている。本実施形態のアルミニウム(Al)層は、単層或いは複数の積層構造の上層であってもよい。容量線300の上層を光反射性に優れているアルミニウム層としたので、傾斜面70aに入射された光をより効率よくTFT基板10の方向へ反射させることができる。
【0065】
更に、蓄積容量70を台形状に隆起させることで、蓄積容量70は傾斜面70aの分だけ容量面積が増加することになり、その分、画素開口率を低落させることなく、画素保持容量を大きくすることができる。
【0066】
[第4実施形態]
図10に本発明の第4実施形態を示す。図10(a)は図5(a)相当の模式的断面図、同(b)は(a)の平面図である。
【0067】
本実施形態は、上述した第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、データ線6aの下層にあたる反射膜91を台形状に形成し、且つ蓄積容量70を上層方向へ隆起する台形状に形成し、この反射膜91と蓄積容量70の容量線300とをアルミニウム(Al)を材料として形成したものである。尚、反射膜91と蓄積容量70とに各々形成されている傾斜面91a,70aの傾斜角度は、前述した図7に示す計算方法で導き出すことができる。
【0068】
従って、対向基板20(図4参照)側から入射した光は、蓄積容量70の傾斜面70aと、反射膜91の傾斜面91aとの双方で反射されるため、有効遮光幅Aを狭めることなく、実効的な開口率をより大きくすることができる。その結果、表示画像の高品位化、及び高輝度化をより一層実現することができる。更に、蓄積容量70を隆起させた分、画素保持容量を大きくすることができる。勿論、前述のように、TFT30とデータ線6aとの間に蓄積容量70を配置しても良い。
【0069】
[電子機器の実施形態]
次に、図11に示す投射型カラー表示装置の図式的断面図を参照して、上述した液晶装置をライトバルブとして用いた電子機器の一例である投射型カラー表示装置の実施形態について、その全体構成、特に光学的な構成について説明する。
【0070】
本実施形態における投射型カラー表示装置の一例である液晶プロジェクタ1100は、駆動回路がTFT基板10上に搭載された液晶装置を含む液晶モジュールを3個用意し、夫々RGB用のライトバルブ100R、100G及び100Bとして用いたプロジェクタとして構成されている。
【0071】
液晶プロジェクタ1100では、メタルハライドランプ等の白色光源のランプユニット1102から投射光が発せられると、3枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によって、RGBの3原色に対応する光成分R、G、Bに分けられ、各色に対応するライトバルブ100R、100G及び100Bに夫々導かれる。その際、特にB光は、長い光路による光損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123及び出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。そして、ライトバルブ100R、100G及び100Bにより夫々変調された3原色に対応する光成分は、ダイクロイックプリズム1112により再度合成された後、投射レンズ1114を介してスクリーン1120にカラー画像として投射される。
【0072】
尚、本発明は上述した各実施形態に限るものではなく、例えば反射膜として採用する高反射材料は、高反射性、及び遮光性を有しているものであれば、アルミニウム以外に、金や銀などの金属膜、又はそれらの金属の合金膜であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明による電気光学装置は、TFT30を用いて表示用電極を駆動するものであれば良く、従って、液晶装置以外に、電子ペーパ等の電気泳動装置や、電子放出素子を用いた表示装置(Field Emission Display、及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等に適用することもできる。
【0074】
又、電子機器は、本発明による電気光学装置を備えて実現できるものであれば、上述した液晶プロジェクタ1100に限らず、テレビジョン受像機、ビューファインダ型或いはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の各種の電子機器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態による液晶装置を各構成要素と共に対向基板側から見た平面図
【図2】同、図1のH-H'断面図
【図3】同、TFT基板上に形成する隣接した複数の画素について各層の要部の成膜パターンを示す平面図
【図4】同、一つの画素に着目した液晶装置の模式的断面図
【図5】同、(a)は図3のV-V線で示す模式的断面図、(b)は(a)の平面図
【図6】同、TFT基板に入射する光の出射状態を示す説明図
【図7】同、反射膜に形成する傾斜面の傾斜角度の求め方を示す説明図
【図8】第2実施形態を示し、(a)は図5(a)相当の模式的断面図、(b)は(a)の平面図
【図9】第3実施形態を示し、(a)は図5(a)相当の模式的断面図、(b)は(a)の平面図
【図10】第4実施形態を示し、(a)は図5(a)相当の模式的断面図、(b)は(a)の平面図
【図11】投射型カラー表示装置の図式的断面図
【符号の説明】
【0076】
1a’…チャネル領域、1a…半導体層、3a…ゲート電極、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFT基板、11a…走査線、20…対向基板、50…液晶、70…蓄積容量、70a,91a…傾斜面、91…反射膜、91b…裾部、1100…液晶プロジェクタ、Δ…挟角、δ…傾斜角度、θi…最大入射角、θr…反射角、300…容量線、A…有効遮光幅、B…遮光幅、C…最大幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
マトリクス状に形成された複数の走査線及び複数のデータ線と、前記走査線とデータ線に電気的に接続されたトランジスタと、前記トランジスタに電気的に接続された画素電極と、前記トランジスタの上方に配設されていると共に入射光側から該トランジスタの少なくとも半導体層を覆う遮光膜と
を備える電気光学装置において、
前記遮光膜が高反射材料で形成されていると共に、該遮光膜の側壁が設定傾斜角度の傾斜面となっている
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記遮光膜が、前記半導体層の上方に配設されている前記データ線によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記遮光膜が、前記半導体層の上方に配設されていると共に前記画素電極の電位を保持する蓄積容量を構成する電極であることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記遮光膜が、前記データ線又は前記蓄積容量の下層に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記遮光膜が、前記トランジスタの上方に少なくとも2層配設されており、一方の遮光膜が前記半導体層の上方に配設されている前記データ線によって形成され、他方の遮光膜が前記半導体層の上方に配設されていると共に前記画素電極の電位を保持する蓄積容量を構成する電極である
ことを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記遮光膜の前記傾斜面の裾部が断面視において前記半導体層が形成されている位置よりも出射光側へ延在されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記傾斜面の傾斜角度δは、基板に対して垂直方向へ入射される入射光の最大入射角をθi、隣接するトランジスタ間を結ぶ線と隣接する該トランジスタと前記傾斜面とを結ぶ線との挟角をΔとした場合、
0<θi+π−2δ<(π/2)−Δ
を満たす角度に設定されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の電気光学装置を備えて構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板上に、
マトリクス状に形成された複数の走査線及び複数のデータ線と、前記走査線とデータ線に電気的に接続されたトランジスタと、前記トランジスタに電気的に接続された画素電極と、前記トランジスタの上方に配設されていると共に入射光側から該トランジスタの少なくとも半導体層を覆う遮光膜と
を備える電気光学装置において、
前記遮光膜が高反射材料で形成されていると共に、該遮光膜の側壁が設定傾斜角度の傾斜面となっている
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記遮光膜が、前記半導体層の上方に配設されている前記データ線によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記遮光膜が、前記半導体層の上方に配設されていると共に前記画素電極の電位を保持する蓄積容量を構成する電極であることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記遮光膜が、前記データ線又は前記蓄積容量の下層に形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記遮光膜が、前記トランジスタの上方に少なくとも2層配設されており、一方の遮光膜が前記半導体層の上方に配設されている前記データ線によって形成され、他方の遮光膜が前記半導体層の上方に配設されていると共に前記画素電極の電位を保持する蓄積容量を構成する電極である
ことを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記遮光膜の前記傾斜面の裾部が断面視において前記半導体層が形成されている位置よりも出射光側へ延在されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記傾斜面の傾斜角度δは、基板に対して垂直方向へ入射される入射光の最大入射角をθi、隣接するトランジスタ間を結ぶ線と隣接する該トランジスタと前記傾斜面とを結ぶ線との挟角をΔとした場合、
0<θi+π−2δ<(π/2)−Δ
を満たす角度に設定されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の電気光学装置を備えて構成されている
ことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−89683(P2008−89683A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−267582(P2006−267582)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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