説明

電気器具のスイッチ装置

【課題】ハウジング内に配置したスイッチに、自由位置でボタンと離間間隔をもって対向する操作伝達部を設け、その操作伝達部を合成樹脂の射出成形品とし、ボタンのボタン押し操作で当該ボタンが前記操作伝達部の対向端を押すようにした電気器具のスイッチ装置において、スイッチの操作伝達部の対向端のひけを軽減しながら、ボタンと当該操作伝達部との運動伝達を容易に得られるようにする。
【解決手段】前記スイッチ10の操作伝達部15の対向端が、筒壁19の端部と、この筒壁19の内側に形成されたリブ構造20の端部とで構成することにより、筒壁19の内側に肉盗み21を形成し、ひけを軽減すると共に、リブ構造20の端部とボタン8の操作伝達部13とを、その操作伝達部13が筒壁19の内側に入り込めない関係とすることにより、両操作伝達部13、15の対向端間の運動伝達が可能な範囲が実質的に狭くならないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気ポット、電気炊飯器等の電気器具におけるスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気器具に採用されるスイッチ装置は、充電部の保護のため、ハウジング内にスイッチが配置され、ハウジング外からボタンを操作できるようになっている。ハウジング内のスイッチとボタン間の操作伝達を図るため、スイッチに、自由位置でボタンと離間間隔をもって対向する操作伝達部を設けられている。スイッチの操作伝達部を自由位置で離間間隔をもって対向させることにより、ボタン押し操作に対するスイッチ感度に余裕が与えられている。
ボタンがボタン押し操作を受けると、そのボタンは、スイッチの操作伝達部の対向端を押すようになっている。ボタン押し操作が終わると、ボタン及びスイッチは、自動的に自由位置に復帰するようになっている。
なお、ボタンとスイッチの操作伝達部との間に、ハウジング内への浸水口を覆う防水シートがある場合、ボタン側操作伝達部の対向端は、防水シートを介してスイッチ側操作伝達部の対向端を押すように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スイッチの操作伝達部は、絶縁性、加工性等を考慮し、一般に、合成樹脂の射出成形品からなる。前掲の特許文献1に開示されたスイッチの操作伝達部は、中実体で構成されている。中実体を合成樹脂で射出成形すると、ひけが発生する。一般に、家庭用電器器具のボタン押し操作に対するスイッチ感度の調整は、0.1mm程度の繊細なものであり、ひけの発生具合を見ながら、金型を修正し、所望のスイッチ感度が得られるようにしている。前記のひけが大きく発生すると、修正の難易度が上がり、金型修正を繰り返し行うことになって手間である。このため、前掲の特許文献1に開示されたスイッチの操作伝達部は、弾丸状の中実体とすることにより、ボタンとの対向端の中央から周縁部に向かって肉を落とし、ひけの軽減が図られている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−25863号公報(要約書、明細書:段落0010〜0013、図4〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前掲の特許文献1のように、スイッチの操作伝達部を弾丸状の中実体とすると、周縁部に向かって肉落としが形成される分、その対向端の中央部が小さくなり、確実な伝達が得難くなる問題がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、ハウジング内に配置したスイッチに、自由位置でボタンと離間間隔をもって対向する操作伝達部を設け、その操作伝達部を合成樹脂の射出成形品とし、ボタン押し操作でボタンが前記操作伝達部の対向端を押すようにした電気器具のスイッチ装置において、スイッチの操作伝達部の対向端のひけを軽減しながら、ボタンと当該操作伝達部との運動伝達を容易に得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、この発明は、ハウジング内に配置したスイッチに、自由位置でボタンと離間間隔をもって対向する操作伝達部を設け、その操作伝達部を合成樹脂の射出成形品とし、前記ボタンのボタン押し操作で当該ボタンが前記操作伝達部の対向端を押すようにした電気器具のスイッチ装置において、前記操作伝達部の対向端が、筒壁の端部と、この筒壁の内側に形成されたリブ構造の端部とからなり、前記リブ構造の端部と前記ボタンとを、そのボタンが前記筒壁の内側に入り込めない関係とした構成を特徴とするものである。
【0008】
スイッチの操作伝達部の対向端が、筒壁の端部と、この筒壁の内側に形成されたリブ構造の端部とからなる構成とすれば、筒壁とリブ構造の間の肉盗みにより、対向端の中央部のひけが軽減される。
前記リブ構造の端部と前記ボタンとを、そのボタンが前記筒壁の内側に入り込めない関係とした構成を採用すれば、前記の肉盗みを形成しても、スイッチの操作伝達部の対向端とボタンとの運動伝達が可能な範囲が実質的に狭くならず、ボタンと当該操作伝達部との運動伝達が容易に得られる。
【発明の効果】
【0009】
上述のように、この発明は、ハウジング内に配置したスイッチに、自由位置でボタンと離間間隔をもって対向する操作伝達部を設け、その操作伝達部を合成樹脂の射出成形品とし、ボタンのボタン押し操作で当該ボタンが前記操作伝達部の対向端を押すようにした電気器具のスイッチ装置において、上記特徴的構成の採用により、スイッチの操作伝達部の対向端のひけを軽減しながら、ボタンと当該操作伝達部との運動伝達を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る電気器具の全体構成を縦断側面で示している。
図1に示すように、実施形態に係る電気器具は、電気ポットとして構成されている。
電気器具は、外容器1の肩2に開閉自在かつ着脱自在に設けられた蓋3とを備えている。肩2は、蓋3と閉じ合うようになっており、胴4と共に、吐出口5を有するノーズ6を構成している。ノーズ6の上面は、肩2に取り付けられたパネル7からなり、そのパネル7から操作用のボタン8が露出している。
【0011】
図2は、ノーズ6の部分を拡大して示している。図3は、ノーズ6の分解斜視を示している。図4は、ボタン8の下側からの斜視を示している。
図2〜図4に示すように、ボタン8は、支持フレーム9と共に、合成樹脂で一体成形されている。スイッチ10が固定された操作基板11は、肩2のうち、ノーズ6の部分に開放された基板収納室12内に固定されている。
【0012】
ボタン8は、2箇所で支持フレーム9に連続しており、その2点を結ぶ線に沿った揺動軸、又は2点を結ぶ線上に揺動軸を有している。支持フレーム9は、パネル7と肩2との間で挟持されており、ボタン押し操作で位置ずれしないようになっている。
ボタン8は、ボタン押し操作を受けると、支持フレーム9が弾性的に撓み乃至捻れながら揺動軸回りに傾きつつ内方に押し込まれて動作位置に達し、ボタン押し操作の外力が無くなると、支持フレーム9の弾性回復で自由位置に復帰するようになっている。なお、図2は、自由位置にある状態を示している。
【0013】
ボタン8の内面中央部に、操作伝達部13が突軸状に形成されている。ボタン8の操作伝達部13は、筒軸状に形成されている。これは、ボタン8の外面中央部にひけが生じないようにするためである。
【0014】
図5は、操作基板11の分解斜視を示している。
図2、図3、図5に示すように、スイッチ10は、タクトスイッチで接点操作を行うように構成されている。このスイッチ10に、タクトスイッチの操作部14に対向する操作伝達部15が設けられている。スイッチ10の操作伝達部15は、操作基板11に爪脚部で係合一体化される取り付け板16と、操作伝達部15を取り付け板16に片持ち支持するアーム17と共に合成樹脂で一体射出成形された部品となっている。
【0015】
スイッチ10の操作伝達部15は、取り付け板16と係合一体化された操作基板11を基板収納室12の内部にねじ止めすることで固定されている。その状態で、取り付け板16の上面及び肩2の上面に防水シート18が接着されている。その防水シート18の上側に被さるように上記のパネル7が肩2のノーズ6の部分に取り付けられている。このパネル7の取り付けにより、スイッチ10の操作伝達部15は、自由位置でボタン8の操作伝達部13と離間間隔をもって対向する。
【0016】
図6(a)は、スイッチ10の操作伝達部15の上面を拡大して示している。図6(b)は、動作位置にあるスイッチ10の操作伝達部15を図6(a)中のb−b線の断面で示している。
図2、図6(a)、(b)に示すように、スイッチ10の操作伝達部15は、筒壁19の端部と、この筒壁19の内側に形成されたリブ構造20の端部とからなる。リブ構造20の端部は、横断面十字状とされており、スイッチ10の操作伝達部15の対向端は、その中央部、すなわち、リブ構造20の端部中央のひけが軽減される。
【0017】
上記の構成において、ボタン8が押されると、支持アーム9が撓んでボタン8の操作伝達部13の対向端が傾きながら下がり、スイッチ10の操作伝達部15を防水シート18を介して押す。これにより、操作伝達部15を先端部に有するアーム17が撓み、その操作伝達部15が傾きながらタクトスイッチの操作部14に接触してこれを押し下げ、スイッチの接点操作が行われる。この一連の運動伝達の中で、ボタン8の操作伝達部13は、アーム9、17の傾きにかかわらず、防水シート18を介して筒壁19の端部又はリブ構造20の端部に必ず受けられ、筒壁19の内側に形成された肉盗み21の凹所に入り込めない。
すなわち、スイッチ10の操作伝達部15の対向端とボタン8の操作伝達部13の対向端との運動伝達が可能な範囲は、筒壁19の端部まで及んでおり、肉盗み21を形成しても実質的に狭くなっていない。
したがって、この実施形態は、スイッチ10の操作伝達部15の対向端のひけを軽減しながら、ボタン8と当該操作伝達部15との運動伝達を容易に得ることができる。
【0018】
特に、肉盗み21によるひけ軽減が可能なため、筒壁19の端部は、ボタン8の操作伝達部13の対向端を対向方向に延長した領域からはみ出るように形成されている。これにより、ボタン8が大きく傾くように押しボタン操作を受けた場合でも、ボタン8の操作伝達部13の対向端と当該操作伝達部15の対向端との運動伝達をより容易に得ることができる。
【0019】
なお、筒壁19、リブ構造20は、上記のような形態に限られず、ボタン8の操作伝達部13の対向端が筒壁19の内側に入り込めない関係であれば、横断面三叉状、横断面平行状等の適宜の形態に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る電気器具の全体構成を示す縦断面図
【図2】図1のノーズ部分の拡大図
【図3】図1のノーズ部分の分解斜視図
【図4】図1のボタンを下側から示した斜視図
【図5】図2の操作基板の分解斜視図
【図6】aは図2のスイッチの操作伝達部を示す拡大上面図、bはaのb−b線の断面でボタン押し操作がなされた状態を示す作用図
【符号の説明】
【0021】
1 外容器
2 肩
3 蓋
4 胴
5 吐出口
6 ノーズ
7 パネル
8 ボタン
9 支持フレーム
10 スイッチ
11 操作基板
12 基板収納室
13、15 操作伝達部
14 操作部
16 取り付け板
17 アーム
18 防水シート
19 筒壁
20 リブ構造
21 肉盗み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に配置したスイッチに、自由位置でボタンと離間間隔をもって対向する操作伝達部を設け、その操作伝達部を合成樹脂の射出成形品とし、前記ボタンのボタン押し操作で当該ボタンが前記操作伝達部の対向端を押すようにした電気器具のスイッチ装置において、
前記操作伝達部の対向端が、筒壁の端部と、この筒壁の内側に形成されたリブ構造の端部とからなり、前記リブ構造の端部と前記ボタンとを、そのボタンが前記筒壁の内側に入り込めない関係としたことを特徴とする電気器具のスイッチ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−287980(P2008−287980A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−130771(P2007−130771)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】