説明

電気自動車

【課題】本発明は、通常使用時の車両状態に応じて、電池パックの発生ガスに対する対応を変える電気自動車を提供する。
【解決手段】本発明の電気自動車は、各種車両状態を検出する車両状態検出手段34、電池パック14の電池異常を検出する電池異常検出手段28、電池パックの電池異常を検出したとき車両状態に応じ対応を変えて、電池パックから発生する発生ガスの車室内への侵入を抑える発生ガス対応手段30を用いた。同構成により、電池パックが電池異常を起こすと、その状態に応じて、発生ガス対応手段の対応が変わり、その状態に合わせて適切に発生ガスの車室内における侵入量を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内と連通させて電池パックを搭載した電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(ハイブリッド車や燃料電池車を含む)は、車体に搭載した電池パックから電力を受けて走行用モータを駆動している。
ところで、電池パックは、化学反応を利用して、電力を蓄えたり蓄えた電力を放出したりする際に発熱を伴う。電気自動車で用いられる電池パックは、走行に求められる大電力を確保するため、大電流が求められる。リチウムイオン電池は内部抵抗が低く、大電流を流すことが可能であるが、他の形式の電池と同様に大電流を流すと発熱する。この熱は、電池パックの性能に影響を与えるため、車載の電池パックを冷却することが求められる。
【0003】
冷却には、外気を車載の電池パックの内部へ流通させることが考えられるが、外気温が高い場合(特に夏季時)に十分でなく、外気の導入では電池パックの冷却は十分に果たせないことが多い。
そこで、電気自動車では、電池パックの内部を車室内に連通させたり、電池パックの内部を車載の空調機の冷気通路に連通させたりする構造を採用して、車載の空調機で得られる空調空気(冷気)を、間接的あるいは直接的に電池パック内部へ流通させて、電池パックの冷却を十分に行わせる技術が提案されている。
【0004】
ところで、電池パックは、ケース内に多数の電池モジュール(電池セルで構成)を収めた構造が用いられているが、安全性の確保のために、何らかの原因で短絡したり過熱したりする電池異常時を想定して、電池異常で生ずるセル内部の発生ガスを、安全弁部から電池モジュール外へ逃がす構造にしてある。
ところが、電池パックは、高い冷却性を確保するために、車室内に連通させている。このため、電池パックの内部で発生したガスが、車室内へ侵入するおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されているように電気自動車の衝突時だけの状況に絞り、電気自動車の衝突をするとき、窓を開けたり、車載の空調機を内気導入から外気導入へ切り換えたりして、乗員の居る車室を換気して、衝突に伴い電池パックから発生するガスが車室内へ滞らないようにする技術が提案されている。
【特許文献1】特開2007−99075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、電池パックから発生ガスが発生するときは、衝突時だけとは限らず、通常の状況でもあり得る。具体的には、電気自動車が起動しているとき(走行中など)や、電気自動車の電池パックを充電装置で充電しているときや、電気自動車が起動していないときでも、何らかの原因により電池パックで電池異常が生じ、電池パックから発生ガスが生じることもあり得る。
【0007】
特許文献1の技術は、衝突だけに注目した技術なので、こうした通常時の車両状態に応じた対応はできない。
そこで、本発明の目的は、通常使用時の車両状態に応じて、電池パックの発生ガスに対する対応が変わる電気自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、各種車両状態を検出する車両状態検出手段と、電池パックの電池異常を検出する電池異常検出手段と、電池パックの電池異常を検出したとき車両状態に応じ対応を変えて、電池異常によって電池パックから発生する発生ガスの車室内への侵入を抑える発生ガス対応手段とを用いた。
同構成により、通常の車両状態は、電池パックが電池異常を起こすと、その状態に応じて、発生ガス対応手段の対応が変わる。これにより、通常の車両状態における電池異常時は、いずれも適切な対応で、電池パックから発生する発生ガスの車室内への侵入量が低減される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、充電中の車両状態に適切な対応となるよう、車両状態検出手段で検出される車両状態が充電中である場合は、発生ガス対応手段が作動するより先に充電を停止する。
同構成により、充電中である場合は、まず充電を停止することで電池パックからのさらなるガスの発生を抑制することができ、ガスの発生量を抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、乗員の有無までも考慮した適切な対応が可能となるよう、車両状態検出手段が、さらに前記車室内の乗員の有無を検出する乗員検出手段を有し、車両状態および乗員の有無に応じて発生ガス対応手段の対応を変化させるように構成した。
請求項4に記載の発明は、さらに通常の車両状態や乗員に有無に対して、十分に発生ガスの対応がとれるよう、車両状態検出手段で検出する車両状態としては、電気自動車が起動している起動状態、電気自動車が充電している充電状態、電気自動車が充電をしていないときの停車状態とし、発生ガス対応手段としては、電池パック内と車室内との連通を遮断する遮断手段、電池パックの内部空気を外部へ排出する排出手段、車室内の空気を外部へ排出する換気手段とし、電池パックの電池異常時に、起動状態、充電状態および停車状態と、乗員の有無とに応じ、遮断手段、排出手段および換気手段を組み合わせて作動させる制御部を用いるものとした。
【0011】
請求項5に記載の発明は、さらに発生ガスに対する対応策が効果的に発揮されるよう、制御部としては、遮断手段と排出手段を作動させる排出モード、当該排出モードと換気手段の作動を併用する併用排出モードを採用し、これら各モードを、電気自動車の車両状態と、乗員の有無とに応じて使い分けるものとした。
請求項6に記載の発明は、さらに安全性を図るために、電池パックからの発生ガスの濃度を検出するガス濃度センサを追加したうえ、制御手段には、ガス濃度で検出されたガス濃度にしたがい、各モードの運転を制御する機能を有したものとして、ガス濃度の点からも対応するものとした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、車両状態に応じて、電池パックから発生ガスに対する対応を変えるから、通常使用時の車両状態のいずれでも、電池異常時は、適切な対応により、電池パックから発生する発生ガスの車室内への侵入を防ぐことができる。
したがって、高い安全性を電気自動車にもたらすことができる。
請求項2の発明によれば、さらに充電中か否かに応じて適切な対応が可能になるため、ガスの発生量を低下させることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、乗員の有無まで含めた車両状態を検出することが可能になり、さらなる安全性の向上が図られる。
請求項4の発明によれば、さらに通常の車両状態や乗員に有無に対して、十分に発生ガス侵入量を低減させる対応をとることができる。
請求項5の発明によれば、さらに発生ガスに対する対応策を効果的に発揮させることができるとともに防犯性も向上する。
【0014】
請求項6の発明によれば、さらにガス濃度による制御が加わることで、一層、安全性が高められるとともに防犯性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図1〜図5に示す第1の実施形態のもとづいて説明する。
図1は、本発明を適用した電気自動車の概略構成図を示している。同電気自動車について説明すると、図1中1は電気自動車の車体を示し、2はその車体1の側部に開閉可能に設けられたドアを示し、3は同ドア2の窓2aに開閉可能に設けた昇降式のウインドパネルを示している。なお、ドア2には、ウインドスイッチ(図示しない)によりウインドパネル3を昇降方向に駆動するウインド昇降装置4(パワーウインド装置)や、遠隔操作で閉じたドア2をドアロックするドアロック装置5が組み付けてある。
【0016】
車体1内の最前部には、空調機6を構成する各種機器(例えば冷凍サイクルを構成する電動コンプレッサやエバポレータ6aや循環用ブロア装置6bなど)を内部に収めたインストルメントパネル7が設けられ、最後部には荷室8(車室内)が設けられている。これら両者間(中央部)には、客室9(車室内)が設けられていて、ドア2で開閉する乗降口(図示しない)を通じて、乗員の乗降が行えるようになっている。客室9の床面には、乗員が着座するフロントシート10やリヤシート11が設けてある。
【0017】
また客室9の床下には、電池パック、例えばリチウムイオン電池で構成した電池パック14が設けられている。荷室8の床下には、走行輪たる前輪15a,後輪15bのうち、例えば後輪15bを駆動する走行用モータ部16が設けられている。
電池パック14は、走行用モータ部16の電力源である。同電池パック14は、例えば複数のリチウムイオン電池のセルを組み合わせて構成した電池モジュール18を、多数個、扁平な収容ケース19内に収め、相互を直列に接続して構成される。この電池パック14は、走行用モータ部16にインバータ17を介して接続され、電池パック14に蓄えた電力で、走行用モータ部16を駆動できるようにしている。また電池パック14は、車体1の側部に設けた充電口部1aと充電回路(図示しない)を介して接続されていて、充電口部1aから充電用の外部電力が充電できるようにしてある。例えば充電口部1aに外部充電装置12(図5に図示)を接続すると、充電が行える。
【0018】
さらに電池パック14のフロント側には冷却風導入口20が設けられ、リヤ側には冷却風導出用の排気ファン21が設置されている。冷却風導入口20は、ダクト部22を通じて、空調機6の通路部、具体的には冷凍サイクルを構成するエバポレータ6aとの熱交換で得られた冷風(空調空気)が通る通路部23に接続されていて、空調機6からの冷気が、直接的に電池パック14の内部へ導入されるようにしている。すなわち、空調機6の循環用ブロア装置6bと電池パック14の排気ファン21とが作動すると、空調機6からの冷気が、冷却風として電池パック14の内部(収容ケース19内)を流通し、当該冷気(空調空気)で、各電池モジュール18のセルが冷却される。循環用ブロア装置6bの吸込部には、外気導入用ダクト部25aから取り込まれる外気と、内気導入口部25bから取り込まれる内気とを切り換える内・外気切換装置25が設けられていて、同装置25により、内気(車室内空気)の取入れあるいは外気を取入れながら、空調運転が行われるようにしている。このような補機類(低電圧で駆動される補機全般)の運転は、電池パック14とは別に車体1に搭載されている補機用バッテリ26の電力で行われる。
【0019】
こうした電気自動車、すなわち空調空気により電池パック14の冷却を行える電気自動車には、電池パック14が電池異常を発生したとき、電気パック14のセルから発生する発生ガスが車室内へ侵入するのを抑える手段が講じられている。
これには、電気自動車の状態(車両状態)に応じて、適切に発生ガスの侵入防止を行う技術が用いられる。同技術は、電池異常を検出する電池異常検出センサ28(本願の電池異常検出手段に相当)と、車両状態を検出する機器と、車両状態に応じ車室内への発生ガスの侵入防止策の対応を変える発生ガス対応装置30とを組み合わせて実現してある。
【0020】
具体的には、異常検出センサ28は、例えば温度センサと電圧センサとガス検知センサとを組み合わせたような機能をもつセンサが用いられる。同センサは、電池パック14の収容ケース19内に配設され、何らかの原因で発生する電池異常を検出する。なお、電池異常が生ずると、セルから発生ガスが発生するので(セルは、短絡や過熱などが生ずると、内部の発生ガスを安全弁部から逃がす構造)、電池異常を監視すれば、発生ガスが生じたことが検出される。
【0021】
車両状態の検出には、電気自動車に装備されている機器、例えば外部充電装置12との通電検出を行う充電センサ34が用いられる。同センサ34により、電気自動車における通常の車両状態、すなわち充電中の状態か、そうではない電源オンの状態や電源オフの状態が検出される(車両状態検出手段)。
発生ガス対応装置30は、電池パック14と車室内との連通(ガス侵入経路)を遮る遮断手段、例えばダクト部22を遮断する常開式のシャットバルブ36と、電池パック14の内部空気を外部へ排出する排出装置37(排出手段)を用いている。排出装置37は、電池パック14に装備されている排気ファン21を流用して構成してある。
【0022】
さらにシャットバルブ36、排出装置37は、車両に搭載された制御部40(マイクロコンピュータなどで構成されるもの)によって、電池パック14の電池異常時、車両状態に応じて適切に作動させるようにしてある。すなわち制御部40には、電池パック14の電池異常を検出したとき、車両が充電中でないときは、シャットバルブ36と排気ファン31を、所定時間、作動させる設定がなされ、電池パック14内部で発生した発生ガスが車室内へ侵入するのを防ぐようにしている。車両が充電中のときは、それらシャットバルブ36および排気ファン31が作動するより先に、充電を停止させる設定がなされている。これにより、通常の車両状態下で、十分に発生ガスの対応が採られるようにしている。
【0023】
図2および図3には、こうした電池パックの電池異常時の対応に係る制御フローがそれぞれ示されている。図4および図5には、充電中でないときや充電中における車両の状態が示されている。
図2に示すフローチャートや図4に示す車両状態は、充電していないときの車両状態を示している。このときの電池異常時に実施される発生ガスの対応について説明する。
【0024】
このときECU40は、充電センサ34から出力される信号から、充電していない車両状態と判定している。このときの状態は、電源オンで起動している状態(走行中など)や電源オフで停車している状態などがある。
こうした車両状態において、今、ステップS1により、制御部40で、電池異常検出センサ28の出力信号を受け、電池異常の検知が行われたとする。すると、続くステップ2で、電池パック14の電池に異常が有るか否かの判定が行われる。このとき発生ガスの発生要因となる電池異常が有ると判定されると、ステップS10へ進む。すると、制御部40は、図4に示されるようにシャットバルブ36を閉作動させ、直ちにガス侵入経路を断ち、電池パック14の内部で生じた発生ガスが車室内へ流入するのを防ぐ。そして、続くステップS11で、電池パック14の排気ファン21を作動させる。これにより、図4中の矢印に示されるようにセルから発生した発生ガスは、電池パック14内から、強制的に外部(大気)へ排出される。
【0025】
続いて、ステップS18へ進み、制御部40は、発生ガスが電池パック14内部から排除するのに十分な運転時間となる所定時間を定める。ここでは、排気ファン21の運転終了時間t(秒)をタイマーで定める。ステップS19のタイマーで、セットした時間t(秒)が経過すると、ステップS22へ進み、排気ファン21の運転を停止する。
このように、電池異常の発生直後から、直ちに、シャットバルブ36にて電池パック14内の発生ガスが車室内へ侵入するのを防ぎ、排気ファン21にて同発生ガスを電池パック14内部から排出し続けることにより、発生ガスの車室内への侵入量が低減できる。
【0026】
また図5に示されるように電気自動車が、充電施設で、外部充電装置12を用いて電池パック14に充電している車両状態のときに、先の述べたような電池異常が発生したとする。このときには、図3のフローチャートに示されるような対応が採られる。
すなわち、ECU40は、充電センサ34からの信号により、充電中であることを検出すると、シャットバルブ36、排気ファン21が作動するよりも先に、充電を止めてから、発生ガスの侵入防止の対応に入る。具体的には、図3のフローチャートに示されるようにステップS2において電池異常が有ると判定されると、ECU40は、ステップS30に進んで、直ちに充電を停止させる。そして、充電停止後、先の図2のフローチャートと同じく、ステップS10〜ステップS22のルーチンにより、シャットバルブ36の閉作動でガス侵入経路を断ち、排気ファン21の作動で電池パック14内部から発生ガスを外部(大気)へ排出させるガス排出作業を行い、電池パック14内部の発生ガスが車室内へ流入するのを防ぐ。
【0027】
つまり、充電中の場合は、さらなる電池パック14からの発生ガスの発生量を抑制してから、発生ガスの車室内への侵入を防ぐという、充電中の車両状態に適した対応が施される。
このように電池異常時、車両状態に応じて発生ガスに対する対応を変えると、適切な対応で、発生ガスの車室内への侵入量を低減することができる。特に充電中の場合、発生ガスの侵入を抑える対応に先立ち、最初に充電を停止させる対応を採るので、充電がもたらす不用意な電池パック14からのガス発生が抑制でき、ガスの発生量を抑制することができ、一層、適切な対応となる。
【0028】
図6〜図13は、本発明の第2の実施形態を示す。
電気自動車は、車室内に乗員が居る車両状態の場合と、車室内に乗員が居ない車両状態の場合があり、乗員が居るような場合は、乗員を考慮して、車室内に発生ガスが残らないように対応し、乗員が居ないような場合は、防犯を考慮した、発生ガスの対応も求められる。
【0029】
そこで、本実施形態は、これらの要望に応えるべく、乗員の有無までを含めた車両状態に応じて発生ガスの対応を変えて、さらに電気自動車の安全性を向上させたものである。図6はこれらの対応が可能な電気自動車の概略構成図を示し、図7〜図10は同対応に係る制御フローを示し、図11〜図13はそうしたときの車両状態をそれぞれ示している。
なお、図6は、第1の実施形態における電気自動車の概略構成の大部分を流用したものなので、以下の説明において、第1の実施形態と同じ部分は、その説明を省略したり、簡略化したりする。
【0030】
まず、同実施形態の構成について説明すると、図6の電気自動車には、車室内の乗員の有無を検出する乗員センサ28が設けてある。乗員センサ29は、乗員が着座する各シート、例えばフロントシート10やリヤシート11の座面に例えば圧電センサを設けて構成され、乗員がシートに着座したか否かによる出力値の変化から、車室内における乗員の有無が検出される。
【0031】
車両状態の検出には、充電センサ34だけでなく、より車両状態が細分化されるよう、例えばインストルメントパネル7の一部に設けてあるイグニションスイッチ32も用いられる。イグニションスイッチ32を併用すると、車両状態は、電気自動車の電源オンとなる起動状態、充電している充電状態(充電中)、電源オフの車両の停止状態(充電していない)に細かく分けられる。すなわち、イグニションスイッチ32がオンであれば、電気自動車は起動状態であり、イグニションスイッチ32がオフで、充電センサ34が充電中を検出すれば、電気自動車は充電中であり、イグニションスイッチ32がオフで、充電センサ34が充電でなければ、電気自動車は停車状態と判別できる(車両状態検出手段)。
【0032】
電池異常時に作動する発生ガス対応装置30は、シャットバルブ36(遮断手段)、排気ファン21(排出手段)だけでなく、車室内の空気を外部へ排出する換気装置38(本願の換気手段に相当)、停車状態の車両を防犯するセキリュティ装置39も用いるものとした。このうち換気装置38は、電気自動車に既に装備されている機器、すなわち空調機6の内・外気切換装置25、循環用ブロア装置6b、ウインド昇降装置4(ウインドパネル3)が用いてある。つまり、内・外気切換装置25を外気導入に変え、循環用ブロア装置6bを作動、ウインドパネル3を開放させると、車室内の換気が行われる。これにより、開放した窓2aから車室内の空気が外部へ排出される(強制換気)。内・外気切換装置25を外気導入に切り換えるだけでも、車体後部に既に有る車室空気導出部1b(図13のみ図示)を流用して、自然換気が行える。
【0033】
セキリュティ装置39は、ドア2のドアロック装置5、ウインド昇降装置4(ウインドパネル3)を流用した。すなわち、車室内に乗員がいないときの換気の際に、ドア2をロックしたり、ウインドパネル3の下降量を僅かな量にしたりすることで、車室内に乗員がいない状況における安全性が保たれる(防犯)。
また制御部40には、第1の実施形態の充電中か否かだけで対応を変えるだけでなく、電池パック14の電池異常時に、起動状態、充電状態、停車状態と、車室内の乗員の有無とに応じて、シャットバルブ36、排出装置37、換気装置38、セキリュティ装置39を組み合わせて対応を細かく変える設定がなされている。
【0034】
すなわち制御部40には、シャットバルブ36と排出装置37とを作動させる排出モード、さらに排出モードと換気装置38とを併用して作動させる併用排出モードが設定されている。制御部40は、これら各モードを、電池パック14の電池異常時に、電気自動車の起動状態、充電状態、停車状態と、乗員の有無に応じて使い分ける。そして、この使い分けにセキリュティが加わる。具体的には、電池異常が電気自動車の走行中など起動状態のとき発生した場合、対応は併用排出モードを主体として行い、電池異常が充電中に発生した場合、対応は乗員の有無により、併用排出モードを主体とした対応と、排出モードを主体とした対応とを使い分ける。電池異常が停車状態のとき発生した場合、対応は乗員の有無により、併用排出モードを主体とした対応と、排出モードを主体とした対応とを使い分ける。そして、乗員が居ない状態のとき、ドアロックや窓開放量を規制する設定としてある。
【0035】
また、安全性を、一層、高めるため、電気自動車には、電池パック14内部のガス濃度にしたがい、各モードの運転を制御する機能が設けてある。具体的には、電池パック14内に、発生ガスの濃度を検出するガス濃度センサ41を設ける。制御部40は、このガス濃度センサ41で検出された濃度にしたがい各モードを制御する設定が施されていて、併用排出モードでは、ガス濃度が所定濃度より低い場合、排出モードに変え、排出モードでは、ガス濃度が所定濃度より高い場合、併用排出モードに変える。
【0036】
図7〜図10は、こうした電池パックの電池異常時の各種対応に係る制御のフローチャートが示してある。つぎに、これらフローチャートを参照して、乗員の有無までを含めた車両状態の電池異常時に実施される対応を説明する。但し、第1の実施形態と同じステップには同一符号のステップが用いてある。
まず、図7のフローチャートを説明する。今、ステップS1により、制御部40で、電池異常検出センサ28の出力信号を受け、電池異常の検知が行われたとする。すると、続くステップ2で、電池パック14の電池に異常が有るか否かの判定が行われる。このとき発生ガスの要因となる電池異常が有ると判定されると、ステップS3へ進み、車両状態の検知が開始され、続くステップS4やステップS5での判定によって、イグニションスイッチ32の状態や充電センサ34の状態を検出する。
【0037】
同ステップS4、S5により、車両状態の検出が行われる。すなわち、ステップS4でイグニションスイッチ32がオンであると、ステップS6へ進み、電気自動車は、乗員が乗車して走行などをする起動状態であると判定され、図8のフローチャートへ続く。またステップS4でイグニションスイッチ32がオフで、続くステップS5で充電センサ34が充電であることを検出すると、ステップS7へ進み、電気自動車は、充電状態あると判定され、図9のフローチャートへ続く。さらにステップS4でイグニションスイッチ32がオフで、続くステップS5で充電センサ34が充電でないことを検出すると、ステップS8へ進み、電気自動車は、起動状態や充電状態のいずれでもない停車状態と判定され、図10のフローチャートへ続く。
【0038】
そして、制御部40は、続く図8〜図10のフローチャートにしたがい、そのときの車両状態に応じた対応が施され、電池パック14から発生する発生ガスの車室内への侵入を抑える。同対応について説明する。
まず、図8のフローチャートを参照して、電気自動車の起動状態、例えば電気自動車が走行中のときに電池異常が発生した場合の対応について説明する。
【0039】
このときの車両状態(起動状態)は、乗員が乗車している状態である。このときは、まず、制御部40は、ステップS10に示されるようにシャットバルブ36を閉作動させ、直ちにガス侵入経路を断ち、電池パック14の内部で生じた発生ガスが車室内へ流入するのを防ぐ。そして、続くステップS11で、電池パック14の排気ファン21を作動させる。これにより、図11中の矢印に示されるようにセルから発生する発生ガスは、強制的に電池パック14の外部(大気)へ排出される(排出モード)。
【0040】
ついで、制御部40は、ステップS12へ進み、ガス濃度センサ41で電池パック14内におけるガス濃度を計測する。続いて制御部40は、電池からのガス発生の状況を検出するために、ステップS13において、計測したガス濃度Aが所定値以上か否かの判定を行う。
同判定から、電池パック14内部におけるガス濃度が高いと判定されたとする。このときは、電池パック14の内部でかなりの発生ガスが認められ、発生ガスが車室内へ侵入しているおそれがある。この場合、ステップS15へ進む。これにより、制御部40は、ステップS15以降のルーチンにしたがい、空調機6の内・外気切換装置25を外気導入側に切換え(ステップS16)、空調機6の循環用ブロア装置6bを作動させ(ステップS16)、ウインドパネル3を、L量(図11に図示)、下降させ、ドア2の窓2aをほぼ全開にする。これで、図11に示されるように車室内は、外気導入空気により、強制的に換気される(併用排出モード)。つまり、発生ガスが車室内に侵入していたとしても、発生ガスは、図11中の矢印で示されるように外気導入ダクト部25aから、車室内を流通して、ドア2の窓2aから車室外(外気)へ排気される外気導入空気と共に、外部へ排出される。
【0041】
また制御部40は、ステップS13において、計測したガス濃度Aが低いと判定されると、乗員には影響が無いと判定し、電池パック14内から発生ガスを排出する運転を終了させる制御に入る。具体的には、ステップS13からステップS18へ向かうルーチンに代わる。そして、排気ファン21の運転終了時間t(秒)を定める。その後、ステップS19のタイマーで、セットした時間t(秒)が経過したとする。このとき制御部40は、発生ガス状況の最終確認のため、再び電池パック14内部のガス濃度の計測を行ない(ステップS20)、続くステップS21で、再び計測したガス濃度Aの判定を行なう。ここでの判定が、ガス濃度上昇の傾向を示すと、悪化したと判定して、ステップS15以降のルーチンへ戻る。これで、制御部40は、車室内を強制換気する運転を行い、発生ガスの車室内への侵入を払拭する。また計測したガス濃度Aが低くいと、所定時間の電池パック換気運転で、電池パック14内部は問題の無い状態になったと判定し、電池パック14の排気ファン21の運転を停止する(ステップS22)。
【0042】
このように、走行中など、乗員が車室内に居るときの起動状態では、同状態に適した対応に変わり、発生ガスの車室内への侵入量を低減する。
一方、図9のフローチャートを参照して、電気自動車の充電中に電池異常が発生した場合の対応について説明する。
このときの車両状態(充電状態)は、例えば図12に示されるように充電施設に停車して、同施設の外部充電装置12で、電気自動車の電池パック14に充電している場合などを想定している。この場合、多くは短い充電時間だと、乗員は車室内に居たままであり、長い充電時間だと、乗員は車室外へ出る傾向にある。特に急速充電以外の充電時間を費やす充電の場合は、乗員が車室外へ出て車室内に居ない傾向にある。
【0043】
電気自動車が充電中の場合、制御部40は、図9のフローチャートのステップS30に示されるように直ちに充電経路を断ち、充電を停止する。ついで、ステップS31に示されるようにシャットバルブ36を閉作動させ、直ちにガス侵入経路を断ち、電池パック14の内部で生じた発生ガスが車室内へ流入するのを防ぐ。そして、続くステップS32で、電池パック14の排気ファン21を作動させる。これにより、図12中の矢印に示されるように電池パックのセルから発生する発生ガスは、電池パック14の内部から外部(大気)へ強制的に排出される(排出モード)。
【0044】
続くステップS33で、制御部40は、各シート10,11の乗員センサ29を用いて乗員の有無の検出を行う。そして、つぎのステップS34の判定で、車室内に乗員が居るときと、乗員が居ないときとで、さらに発生ガスに対する対応を変える。
乗員が車室内に居るときは、ステップS36へ進み、先の起動状態のときと同様の対応が行われる。すなわち、制御部40は、ステップS36で、ガス濃度センサ41により電池パック14内におけるガス濃度を計測する。続いて制御部40は、電池からのガス発生の状況を検出するために、ステップS37において、計測したガス濃度Aが所定値以上か否かの判定を行う。
【0045】
同判定から、電池パック14内部におけるガス濃度が高く、かなり発生ガスが電池パック14の内部で認められた場合、先の起動状態のときと同様、ステップS38へ進む。これにより、制御部40は、空調機6の内・外気切換装置25を外気導入側に切換え、空調機6の循環用ブロア装置6bを作動させ(ステップS39)、ウインドパネル3を、L量(図12に図示)、下降させ、ドア2の窓2aをほぼ全開にする。これで、図12に示されるように車室内は、外気導入空気により、強制的に換気される(併用排出モード)。これにより、発生ガスが車室内に侵入していたとしても、発生ガスは、図12中の矢印で示されるように外気導入ダクト部25aから、車室内を流通して、ドア2の窓2aから車室外(外気)へ排気される外気導入空気と共に、外部へ排出される。
【0046】
制御部40は、ステップS37において計測したガス濃度Aが低下したと判定されると、乗員には影響が無いと判定し、ステップS42へ進み、先の起動状態のときと同様、排気ファン21の運転終了時間t(秒)を定める。その後、ステップS43のタイマーで、セットした時間t(秒)が経過すると、制御部40は、発生ガス状況の最終確認のため、再び電池パック14内部のガス濃度の計測を行い(ステップS44)、続くステップS45で、再び計測したガス濃度Aの判定を行なう。ここでの判定がガス濃度上昇の傾向を示すと、悪化したと判定して、先の起動状態のときと同様、ステップS38以降のルーチンへ戻る。これで、制御部40は、車室内を強制換気する運転を行い、発生ガスの車室内への侵入を払拭する。また計測したガス濃度Aが低いと、所定時間の電池パック換気運転で、電池パック14内部は問題の無い状態になったと判定し、電池パック14の排気ファン21の運転を停止させる(ステップS46)。
【0047】
一方、乗員が車室内にいない場合について説明する。充電中の場合、乗員の多くは、充電状態を見ているために、電気自動車の近くにいる。このときは、乗員が着座していないので、ECU40は、ステップS34において乗員が居ないと判定し、ステップS34からステップS50へ進む。
すると、制御部40は、防犯のため(乗員が居ない状況のため)、各ドア2のドアロック装置5を作動させ、各ドア2をドアロックし、乗員の居ない車室内へ人が立ち入らないようにする。続いて、制御部40は、発生ガスの対応が、電池パック14内の発生ガスの排出だけですむよう、続くステップS51で、排気ファン21の運転終了時間t´(秒)を定める。同時間t´は、起動状態のときよりも長い(t<t´)。これにより、人を車室内に立ち入らせない状態にしたまま、電池パック14の内部から発生ガスは外部(大気)へ排出し続ける。
【0048】
その後、ステップS52のタイマーで、セットした時間t´(秒)が経過すると、制御部40は、発生ガス状況の確認のため、続くステップS53で、電池パック14内部のガス濃度の計測を行なう。そして、続くステップS54で、計測したガス濃度Aの判定を行なう。計測したガス濃度Aが所定値より低いと、電池パック14内部は問題の無い状態になったと判定し、ステップS55へ進み、電池パック14の排気ファン21の運転を停止させる。
【0049】
計測したガス濃度Aが高いと、制御部40は、発生ガスが車室内へ侵入しているおそれがあると判定して、ステップS60以降のルーチンへ進み、車室内のために、車室内に侵入している発生ガスを排出するモードを運転する。
すなわち、制御部40は、空調機6の内・外気切換装置25を外気導入側の切換え(ステップS60)、空調機6の循環用ブロア装置6bを作動(ステップS61)、ウインドパネル3を、L´量(図12に図示)、下降させる制御(ステップS62)が行われる。これで、発生ガスが車室内へ侵入していたとしても、発生ガスは、外気導入ダクト部25aから、車室内を流通して、ドア2の窓2aから車室外(外気)へ排気される外気導入空気と共に、外部へ排出される。つまり、車室内は、外気導入空気により、強制的に換気される(併用排出モード)。このとき、ウインドパネル3の下降量(L´)は、防犯のため、乗員が居るときの窓開放より小さく定めてあり、手や腕などが、車外から、開く窓2aを通じて、車室内へ進入するのを許さない。
【0050】
これにより、人を車室内に立ち入らせない状態にしたまま、電池パック14内部や車室内から、発生ガスは外部(大気)へ排出し続ける。
一方、ステップS63では、制御部40は、発生ガス状況を知るために、再び電池パック14内部のガス濃度Aを所定値と対比している。そして、ステップS64により、ガス濃度Aが所定値以下に下がらない限り、電池パック14内部の排気運転や車室内の換気運転を続けさせている。
【0051】
電池パック14内部のガス濃度が低下すると、制御部40は、電池パック14内部が問題の無い状態になったと判定して、ステップS65以降のルーチンへ進み、電池パック14内部の排気運転や車室内の換気運転を停止する。つまり制御部40は、空調機の循環用ブロア装置6bを停止させ(ステップS65)、続いて防犯のためウインドパネル3を上昇させて窓2aを閉じ(ステップS66)、最後に電池パック14の排気ファン21を停止(ステップS67)させる。
【0052】
このように、乗員が車室内に居る場合、あるいは乗員が車両の近くに居て補機用バッテリ26の消耗には心配がない場合の電池異常に対しては、迅速に対応に変わり、発生ガスの車室内への侵入量を低減する。特に充電中の場合、発生ガスの侵入を抑える対応に先立ち、最初に充電を停止させる対応を採るので、充電がもたらす不用意な電池パック14からのガス発生が抑制でき、ガス発生量も抑えられる。
【0053】
他方、図10のフローチャートを参照して、電気自動車の停車状態(電源オフ時)に電池異常が発生した場合の対応について説明する。
この停車状態(イグニションスイッチオフ)は、例えば図13に示されるように送迎場所に、長い時間、停車しているときや、車庫や駐車場に駐車している場合など想定している。この場合、乗員は、車室内に居るときや居ないときなど、まちまちである。しかも、乗員が不在の場合は、車両は長期に放置される状態となるために、先に述べた起動状態や、たとえ乗員が居なくとも車両の近くにいるような充電状態とは異なり、補機用バッテリ26の消耗に配慮した対応が求められる。
【0054】
図10のフローチャートは、それを配慮した内容となっている。すなわち、制御部40は、ステップS70に示されるようにシャットバルブ36を閉作動させ、直ちにガス侵入経路を断ち、電池パック14の内部で生じた発生ガスが車室内へ流入するのを防ぐ。そして、続くステップS71で、電池パック14の排気ファン21を作動させる。これにより、図13中の矢印に示されるように電池パックのセルから発生する発生ガスは、電池パック14の内部から外部(大気)へ強制的に排出される(排出モード)。
【0055】
続くステップS72で、制御部40は、各シート10,11の乗員センサ29を用いて乗員の有無の検出を行い、つぎのステップS73の判定で、車室内に乗員が居るときと、乗員が居ないときとで、さらに発生ガスに対する対応を変える。
乗員が車室内に居るときは、ステップS74へ進み、先の充電状態の乗員有りのときと同様の対応が行われる。すなわち、制御部40は、ステップS74で、ガス濃度センサ41で電池パック14内におけるガス濃度を計測する。続いて制御部40は、電池からのガス発生の状況を検出するために、ステップS75において、計測したガス濃度Aが所定値以上か否かの判定を行う。
【0056】
同判定から、電池パック14内部におけるガス濃度が高く、かなり発生ガスが電池パック14の内部で認められた場合、ステップS76へ進む。これにより、制御部40は、空調機6の内・外気切換装置25を外気導入側に切換え、空調機6の循環用ブロア装置6bを作動させ(ステップS77)、ウインドパネル3を、図11および図12と同様、L量、下降させ、ドア2の窓2aをほぼ全開にする。図8および図9の乗員有りのときと同様、車室内は、外気導入空気により、強制的に換気される(併用排出モード)。これにより、発生ガスが車室内に侵入していたとしても、発生ガスは、外気導入ダクト部25aから、車室内を流通して、ドア2の窓2aから車室外(外気)へ排気される外気導入空気と共に、外部へ排出される。
【0057】
制御部40は、ステップS75において計測したガス濃度Aが低いと判定されると、乗員には影響が無いと判定し、ステップS80へ進み、図8および図9の乗員有りのときと同様、排気ファン21の運転終了時間t(秒)をタイマーで定める。その後、ステップS81のタイマーで、セットした時間t(秒)が経過すると、制御部40は、発生ガス状況の最終確認のため、再び電池パック14内部のガス濃度の計測を行ない(ステップS82)、続くステップS83で、再び計測したガス濃度Aの判定を行なう。ここでの判定が、ガス濃度上昇の傾向を示すと、悪化したと判定して、先の起動状態、充電状態のときと同様、ステップS76以降のルーチンへ戻る。これで、電池パック14内の排出と車室内の強制換気とを続けさせ、発生ガスの車室内への侵入を払拭する。また計測したガス濃度Aが低いと、電池パック換気運転で、電池パック14内部は問題の無い状態になったと判定し、電池パック14の排気ファン21の運転を停止させる(ステップS84)。
【0058】
乗員が車室内にいない場合、車両は車庫や駐車場などで停車し、乗員は住居に入っていることが多い。このような状況の場合、ステップS73からステップS90へ進み、制御部40は、防犯のため(乗員が居ない状況のため)、各ドア2をドアロック装置5の作動でドアロックし、乗員の居ない車室内へ人が立ち入らないようにする。続いて、制御部40は、補機用バッテリ26の電力消耗を抑えて、発生ガスの排出を果たすために、ステップS91のように空調機6の内・外気切換装置25を外気導入側の切り換え(ステップS91)、換気する。すなわち、車室内の前部は外気導入用ダクト部25aと連通し、車室内の後部は図13に示される車体後部に設けてある車室空気導出口部1bと連通しているから、車室内の空気は自然に外部へ導出する環境となり、自然換気が行える。
【0059】
続くステップS92で、電池パック14内の発生ガスの排出が効果的に行えるよう、排気ファン21の運転終了時間t´(秒)を定める。このときは、各窓2aは全閉状態なので、人を車室内に立ち入らせない状態にしたまま、電池パック14の内部から発生ガスは外部(大気)へ排出され続ける。その後、ステップS93のタイマーで、セットした時間t´(秒)が経過すると、ステップS94へ進み、電池パック14の排気ファン21の運転を停止させる。これにより、発生ガスは、排気ファン21の運転、車室内の自然換気などで、車室外に排出される(図13)。
【0060】
このように乗員の有無を含んだ車両状態に応じて、発生ガスに対する対応を種々変化させると、電気自動車のさらなる安全性を図ることができる。しかも、電気自動車の起動状態、充電状態、停車状態と乗員の有無に応じて、シャットバルブ36、排気ファン21、窓開けや車室内換気機器(内・外気切換装置25との作動がなす強制換気、内・外気切換装置25との作動がなす自然換気)を組み合せると、どのような車両状態でも、発生ガス侵入量を低減させる対応が十分できる。そのうえ、シャットバルブ36と排気ファン21を作動させる排出モード、同排出モードと車室内換気の作動を併用する併用排出モードを、電気自動車の起動状態、充電状態、停車状態と、乗員の有無とに応じて使い分けると、発生ガスに対する対応策を効果的に発揮させることができるうえ、防犯性にも優れる。さらにガス濃度による制御が加わることで、一層、発生ガスに対する安全性が高められるうえ、防犯性も向上する。
【0061】
特に乗員無の状態のとき、ドアロックや窓2aの開放量を小さくすると、外部から人が入るのを防げるので、防犯性が高い。また長時間、車両を車庫や駐車場に停めておく状況(補機用バッテリ14の充電が期待できない状況)においては、車室内は自然換気に依存し、電池パック14内部の換気だけをするという対応は好適である(補機用バッテリ26の電力消耗が極力抑えられるため)。
【0062】
なお、本発明は上述したいずれの実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施してもよい。例えば上述した実施形態では、電池パックを排出する排気手段、車室内の空気を排出する換気手段は、電気自動車の既存の装備をそのまま利用したが、これに限らず、別途、機器を設けて、専用の排気手段、換気手段を構築するようにしても構わない。また本実施形態は、電池電力だけで走行を行う電気自動車に本発明を適用した例を挙げたが、これに限らず、車載充電機能をもつハイブリッド車や燃料電池車などの電気自動車に本発明を適用してもよい。またシャットバルブを閉にするとしたが、シャットバルブ閉が通常時であり、バッテリ冷却時のみシャットバルブ開にするのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電気自動車の要部の概略の構成を説明する図。
【図2】電気自動車の非充電状態における電池異常時に対応する制御を示すフローチャート。
【図3】電気自動車の充電状態における電池異常時に対応する制御を示すフローチャート。
【図4】電気自動車の非充電状態において発生ガスが排出される状況を説明する図。
【図5】電気自動車の充電状態において発生ガスが排出される状況を説明する図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る電気自動車の要部の概略の構成を説明する図。
【図7】同電気自動車の電池異常に対する当初の制御を示すフローチャート。
【図8】電気自動車の起動状態における電池異常時に対する制御を説明するフローチャート。
【図9】電気自動車の充電状態における電池異常時に対する制御を説明するフローチャート。
【図10】電気自動車の停車状態における電池異常時に対する制御を説明するフローチャート。
【図11】電気自動車の起動状態において発生ガスが排出される状況を説明する図。
【図12】電気自動車の充電状態において発生ガスが排出される状況を説明する図。
【図13】電気自動車の停止状態において発生ガスが排出される状況を説明する図。
【符号の説明】
【0064】
14 電池パック
28 電池異常検出センサ(電池異常検出手段)
30 発生ガス対応装置(発生ガス対応手段)
34 充電センサ(車両状態検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に連通させて電池パックを搭載した電気自動車であって、
各種車両状態を検出する車両状態検出手段と、
前記電池パックの電池異常を検出する電池異常検出手段と、
前記電池パックの電池異常を検出したとき、前記車両状態に応じ対応を変えて、当該電池異常により電池パックから発生する発生ガスが車室内に侵入するのを抑える発生ガス対応手段と
を具備したことを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記車両状態検出手段で検出される車両状態が充電中である場合は、
発生ガス対応手段が作動するより先に充電を停止する
ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項3】
前記車両状態検出手段は、さらに前記車室内の乗員の有無を検出する乗員検出手段を有し、
前記車両状態および乗員の有無に応じて前記発生ガス対応手段の対応を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の電気自動車。
【請求項4】
前記車両状態検出手段で検出する車両状態は、
電気自動車が起動している起動状態、電気自動車が充電している充電状態、電気自動車が充電をしていないときの停車状態であり、
前記発生ガス対応手段は、
前記電池パック内と前記車室内との連通を遮る遮断手段、前記電池パックの内部空気を外部へ排出する排出手段、前記車室内の空気を外部へ排出する換気手段であり、
前記電池パックの電池異常時に、前記起動状態、充電状態および停車状態と、前記乗員の有無とに応じ、前記遮断手段、前記排出手段、前記換気手段を組み合わせて作動させる制御部を有することを特徴とする請求項3に記載の電気自動車。
【請求項5】
前記制御部は、前記遮断手段と前記排出手段とを作動させる排出モード、当該排出モードの作動と前記換気手段の作動とを併用する併用排出モードが設定され、これら各モードを、電池パックの電池異常時に、電気自動車の車両状態と、乗員の有無とに応じて使い分けることを特徴とする請求項4に記載の電気自動車。
【請求項6】
さらに、前記電池パックからの発生ガスの濃度を検出するガス濃度センサを有し、
前記制御手段は、前記ガス濃度で検出されたガス濃度にしたがい、各モードの運転を制御する機能を有していることを特徴とする請求項5に記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−6153(P2010−6153A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165631(P2008−165631)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】