説明

電気自動車

【課題】イグニッションオフ時のコンデンサの電荷をより適正な態様で処理する。
【解決手段】イグニッションオフされたときにおいて、処理モードとしてバッテリ優先モードが設定されているときには、充電条件が成立していることを条件としてリレーがオンの状態でコンデンサの電荷を昇圧コンバータを介してバッテリに充電する充電制御を実行し(S120〜S140)、その後に、空調条件が成立していることを条件としてリレーがオフの状態でコンデンサの電荷を昇圧コンバータを介して用いて空調装置のコンプレッサを駆動する空調制御を実行する(S150〜S200)。一方、処理モードとして空調優先モードが設定されているときには、空調条件が成立していることを条件として空調制御を実行し(S220〜S270)、その後に、充電条件が成立していることを条件として充電制御を実行する(S300〜S320)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に関し、詳しくは、走行用の電動機と、電動機を駆動する電動機用インバータと、二次電池と、リレーを介して二次電池が接続された電池電圧系と電動機用インバータが接続された駆動電圧系とに接続されて駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧以上の範囲内で調節すると共に電池電圧系と駆動電圧系との間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータと、駆動電圧系に取り付けられたコンデンサと、車室内の空気調和を行なう空調装置と、電池電圧系に接続されて空調装置が備えるコンプレッサを駆動する空調用インバータと、を備える電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電気自動車としては、走行用のモータジェネレータと、主電池と、主電池からの電力を昇圧してモータジェネレータに供給可能なコンバータと、主電池から見てコンバータと並列に接続されたエアコン(A/C)コンプレッサと、主電池からモータジェネレータやA/Cコンプレッサへの電力の供給や遮断を司るメインリレーと、コンバータよりモータジェネレータ側に取り付けられたコンデンサと、を備えるものにおいて、IGキーがオフされたときには、メインリレーをオフとすると共に駆動系インバータを駆動停止し、コンデンサの残留電荷がA/Cコンプレッサに供給されるようコンバータを制御することによってコンデンサの残留電荷をA/Cコンプレッサで放電させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この電気自動車では、こうした制御により、コンバータよりモータジェネレータ側(駆動系)で残留電荷を放電させるものに比して駆動系の耐久性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−230269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の電気自動車では、IGキーがオフされたときに、コンデンサの残留電荷をA/Cコンプレッサによって放電させているが、コンデンサの残留電荷をできるだけ回収したい場合や車室内の温度が設定温度に近い場合など、コンデンサの残留電荷をA/Cコンプレッサで放電させる以外の方法で処理した方が好ましい場合がある。
【0005】
本発明の電気自動車は、イグニッションオフ時のコンデンサの電荷をより適正な態様で処理することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の電気自動車は、
走行用の電動機と、前記電動機を駆動する電動機用インバータと、二次電池と、リレーを介して前記二次電池が接続された電池電圧系と前記電動機用インバータが接続された駆動電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上の範囲内で調節すると共に前記電池電圧系と前記駆動電圧系との間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータと、前記駆動電圧系に取り付けられたコンデンサと、車室内の空気調和を行なう空調装置と、前記電池電圧系に接続されて前記空調装置が備えるコンプレッサを駆動する空調用インバータと、を備える電気自動車において、
イグニッションオフ時の前記コンデンサの電荷の処理モードとして、前記二次電池の充電を優先する二次電池優先モードと、前記空調装置の作動を優先する空調優先モードと、を含む複数のモードのうち一つを設定する処理モード設定手段と、
イグニッションオフされたときにおいて、前記処理モード設定手段により前記二次電池優先モードが前記処理モードとして設定されているときには、前記二次電池を充電する充電条件が成立していることを条件として前記リレーがオンの状態で前記コンデンサの電荷が前記昇圧コンバータを介して前記二次電池に充電されるよう前記昇圧コンバータと前記リレーとを制御する充電制御を実行すると共に該充電制御の実行後に前記空調装置を作動させる空調条件が成立していることを条件として前記リレーがオフの状態で前記コンデンサの電荷を前記昇圧コンバータを介して用いて前記コンプレッサが駆動されるよう前記空調用インバータと前記昇圧コンバータと前記リレーとを制御する空調制御を実行し、前記処理モード設定手段により前記空調優先モードが前記処理モードとして設定されているときには、前記空調条件が成立していることを条件として前記空調制御を実行すると共に該空調制御の実行後に前記充電条件が成立していることを条件として前記充電制御を実行する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の電気自動車では、イグニッションオフされたときにおいて、二次電池の充電を優先する二次電池優先モードがイグニッションオフ時のコンデンサの電荷の処理モードとして設定されているときには、二次電池を充電する充電条件が成立していることを条件としてリレーがオンの状態でコンデンサの電荷が昇圧コンバータを介して二次電池に充電されるよう昇圧コンバータとリレーとを制御する充電制御を実行すると共に充電制御の実行後に空調装置を作動させる空調条件が成立していることを条件としてリレーがオフの状態でコンデンサの電荷を昇圧コンバータを介して用いてコンプレッサが駆動されるよう空調用インバータと昇圧コンバータとリレーとを制御する空調制御を実行する。一方、イグニッションオフされたときにおいて、空調装置の作動を優先する空調優先モードが処理モードとして設定されているときには、空調条件が成立していることを条件として空調制御を実行すると共に空調制御の実行後に充電条件が成立していることを条件として充電制御を実行する。これにより、処理モードに応じた態様でコンデンサの電荷を有効利用することができる。即ち、コンデンサの電荷をより適正な態様で処理することができる。ここで、「充電条件」は、二次電池の蓄電割合が所定蓄電割合未満で且つコンデンサの電圧が二次電池の電圧より高い条件である、ものとすることもできる。また、「空調条件」は、空調装置の作動要求がなされていて且つコンデンサの電荷を用いた空調装置の作動が可能である条件である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド自動車20が備える電気系の構成の概略を示す構成図である。
【図3】イグニッションオフされたときにハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるイグニッションオフ時処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、ハイブリッド自動車20が備える電気系の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸32にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸32に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、インバータ41,42が接続された電力ライン(以下、高電圧系電力ラインという)54aとシステムメインリレー56を介してバッテリ50が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ラインという)54bとに接続されて高電圧系電力ライン54aの電圧を電池電圧系電力ライン54bの電圧以上の範囲内で調節すると共に高電圧系電力ライン54aと電池電圧系電力ライン54bとの間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ55と、車室内の空気調和を行なう空調装置60と、電池電圧系電力ライン54bに接続されて空調装置60の空調用コンプレッサ61を駆動する空調用インバータ62と、高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とに接続された平滑用のコンデンサ57と、高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とに接続されてコンデンサ57の電荷を放電するための放電抵抗59と、電池電圧系電力ライン54bの正極母線と負極母線とに接続された平滑用のコンデンサ58と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
【0012】
昇圧コンバータ55は、図2に示すように、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとからなる昇圧コンバータとして構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれ高電圧系電力ライン54aの正極母線と高電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線とに接続されており、その接続点にリアクトルLが接続されている。また、リアクトルLと電池電圧系電力ライン54bの負極母線とにはシステムメインリレー56を介してそれぞれバッテリ50の正極端子と負極端子とが接続されている。したがって、トランジスタT31,T32をオンオフ制御することにより、電池電圧系電力ライン54bの電力を昇圧して高電圧系電力ライン54aに供給したり、高電圧系電力ライン54aの電力を降圧して電池電圧系電力ライン54bに供給したりすることができる。以下、トランジスタT31を上アーム、トランジスタT32を下アームと称することがある。
【0013】
エンジンECU24は、エンジン22を駆動制御するだけでなく、クランクポジションセンサからのクランクポジションに基づいてクランクシャフト26の回転数即ちエンジン22の回転数Neを演算したりしている。また、モータECU40は、インバータ41,42のスイッチング素子をスイッチング制御するだけでなく、回転位置検出センサからの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2を演算したりしている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された電圧センサ51aからの端子間電圧Vb,バッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサ51bからの充放電電流Ib,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51cからの電池温度Tbなどが入力されている。このバッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサ51bにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいてバッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。
【0014】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサ57aからのコンデンサ57の電圧(高電圧系電力ライン54aの電圧)VHやコンデンサ58の端子間に取り付けられた電圧センサ58aからのコンデンサ58の電圧(電池電圧系電力ライン54bの電圧)VL,イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,イグニッションオフ時のコンデンサ57の電荷の処理モードを指示する指示スイッチ89からのスイッチ信号などが入力ポートを介して入力されている。実施例では、処理モードとしては、迅速に放電させる急速放電モードや、バッテリ50の充電を優先するバッテリ優先モード,空調装置60の作動(車室内の空気調和)を優先する空調優先モードを有し、指示スイッチ89が操作されていないときにはバッテリ優先モードがデフォルトとして設定されており、指示スイッチ89が操作されたときにはその操作に応じたモードが設定されるものとした。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号や、空調用インバータ62へのスイッチング制御信号,システムメインリレー56へのオンオフ信号,乗員室に設けられて音声を出力するスピーカ90への信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0015】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、イグニッションオフされたときの動作について説明する。図3は、イグニッションオフされたときにハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるイグニッションオフ時処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。なお、実施例では、イグニッションオフされて本ルーチンの実行を開始するときに、システムメインリレー56はオフとしないが、インバータ41,42や空調用インバータ62,昇圧コンバータ55については駆動停止するものとした。
【0016】
イグニッションオフ時処理ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、まず、指示スイッチ89の操作状態に応じて設定されている処理モード(急速放電モード,バッテリ優先モード,空調優先モード)を調べる(ステップS100)。そして、処理モードとして急速放電モードが設定されているときには、システムメインリレー56をオフとして(ステップS110)、本ルーチンを終了する。これにより、イグニッションオフされたときのコンデンサ57の電荷は、放電抵抗59によって迅速に放電されることになる。
【0017】
処理モードとしてバッテリ優先モードが設定されているときには、バッテリ50の蓄電割合SOCを閾値Srefと比較すると共に(ステップS120)、コンデンサ57の電圧VHをバッテリ50の端子間電圧Vbと比較する(ステップS130)、ことによってバッテリ50を充電する充電条件が成立しているか否かを判定する。ここで、閾値Srefは、イグニッションオフ後にバッテリ50に充電してもよい蓄電割合SOCの範囲の上限として定められ、例えば、70%や80%などを用いることができる。ステップS120の処理は、バッテリ50に充電してもよいか否かを判定する処理であり、ステップS130の処理は、コンデンサ57の電荷をバッテリ50に充電可能か否かを判定する処理である。
【0018】
バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Sref未満でコンデンサ57の電圧VHがバッテリ50の端子間電圧Vbより高いときには、充電条件が成立していると判断し、コンデンサ57の電荷が昇圧コンバータ55を介してバッテリ50に充電されるよう昇圧コンバータ55を制御して(ステップS140)、ステップS120に戻る。昇圧コンバータ55の制御は、具体的には、コンデンサ57の電荷が昇圧コンバータ55で降圧されてバッテリ50に供給されるようトランジスタT31,T32をスイッチング制御する、ことによって行なわれる。このようにして、バッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Sref以上になるかコンデンサ57の電圧VHがバッテリ50の端子間電圧Vb以下になるまでコンデンサ57の電荷をバッテリ50に充電するのである。これにより、コンデンサ57の電荷を有効利用することができる。
【0019】
ステップS120でバッテリ50の蓄電割合SOCが閾値Sref以上のときや、ステップS130でコンデンサ57の電圧VHがバッテリ50の端子間電圧Vb以下のときには、充電条件が成立していないと判断し、空調装置60の作動要求がなされている否かを判定する(ステップS150)。この判定は、実施例では、運転者が車室内の空気調和を要求しており且つ車室内の温度が空調装置60の作動による車室内の目標温度としての設定温度とは異なるときには空調装置60の作動要求がなされていると判定し、運転者が車室内の空気調和を要求していないときや車室内の温度と設定温度とが等しいときには空調装置60の作動要求はなされていないと判定するものとした。空調装置60の作動要求がなされていないときには、システムメインリレー56をオフとして(ステップS110)、本ルーチンを終了し、コンデンサ57の電荷を放電抵抗59によって放電させる。
【0020】
空調装置60の作動要求がなされているときには、空調装置60の作動の開始を示す情報としての空調開始情報(例えば、「イグニッションオフしました。ポスト空調を開始します。」など)をスピーカ90から音声出力し(ステップS160)、システムメインリレー56をオフとし(ステップS170)、コンデンサ57の電荷を用いた空調装置60の作動が可能であるか否かを判定すると共に(ステップS180)、空調装置60の作動要求が継続している(車室内の温度と設定温度とが異なる)か否かを判定する(ステップS190)、ことによって空調装置60を作動させる空調条件が成立しているか否かを判定する。コンデンサ57の電荷を用いた空調装置60の作動が可能で空調装置60の作動要求が継続しているときには、空調条件が成立していると判断し、コンデンサ57の電荷が昇圧コンバータ55を介して空調装置60のコンプレッサ61に供給されてコンプレッサ61が駆動されるよう空調用インバータ62と昇圧コンバータ55とを制御して(ステップS200)、ステップS180に戻る。ここで、ステップS160で空調開始情報をスピーカ90から音声出力するのは、イグニッションオフされた後に空調装置60を作動させる際に乗員に違和感を与えないようにするためである。なお、スピーカ90からの音声出力に代えてまたは加えて図示しないディスプレイに表示出力するものとしてもよい。また、ステップS180のコンデンサ57の電荷を用いた空調装置60の作動が可能であるか否かの判定は、コンプレッサ61が実際に駆動されているか否かを調べることによって判定したり、コンデンサ57の電圧VHがコンプレッサ61の駆動に要する駆動用電圧以上であるか否かを判定したりすることができる。なお、コンプレッサ61の駆動用電圧は、バッテリ50の端子間電圧Vb未満の電圧であることは勿論である。さらに、昇圧コンバータ55の制御は、コンデンサ57の電荷をバッテリ50に充電するときと同様である。このようにして、コンデンサ57の電荷を用いた空調装置60の作動が可能でなくなるか空調装置60の作動要求が解除されるまで空調装置60を作動させるのである。これにより、コンデンサ57の電荷を有効利用することができる。
【0021】
ステップS180でコンデンサ57の電荷を用いた空調装置60の作動が可能でないときや、ステップS190で空調装置60の作動要求が継続していない(車室内の温度と設定温度とが等しい)ときには、空調装置60の作動の終了を示す空調終了情報(例えば、「ポスト空調を終了します。」など)をスピーカ90から音声出力して(ステップS210)、本ルーチンを終了する。この場合、システムメインリレー56はステップS170でオフとされているから、コンデンサ57の電荷は、放電抵抗59によって放電されることになる。
【0022】
ステップS100で処理モードとして空調優先モードが設定されているときには、空調装置60の作動要求がなされている否かを判定し(ステップS220)、空調装置60の作動要求がなされているときには、空調開始情報をスピーカ90から音声出力し(ステップS230)、システムメインリレー56をオフとし(ステップS240)、上述のステップS180,S190の処理と同様に、コンデンサ57の電荷を用いた空調装置60の作動が可能であるか否かを判定すると共に(ステップS250)、空調装置60の作動要求が継続しているか否かを判定する(ステップS260)、ことによって空調条件が成立しているか否かを判定し、空調条件が成立しているときには、コンデンサ57の電荷が昇圧コンバータ55を介して空調装置60のコンプレッサ61に供給されてコンプレッサ61が駆動されるよう空調用インバータ62と昇圧コンバータ55とを制御して(ステップS270)、ステップS250に戻る。これにより、コンデンサ57の電荷を有効利用することができる。
【0023】
一方、ステップ250,S260で空調条件が成立していないときには、空調終了情報をスピーカ90から音声出力し(ステップS280)、システムメインリレー56をオンとする(ステップS290)。
【0024】
ステップS290でシステムメインリレー56をオンとしたときや、ステップS220で空調装置60の作動要求がなされていないときには、上述のステップS120,S130の処理と同様に、バッテリ50の蓄電割合SOCを閾値Srefと比較すると共に(ステップS300)、コンデンサ57の電圧VHをバッテリ50の端子間電圧Vbと比較する(ステップS310)、ことによって充電条件が成立しているか否かを判定し、充電条件が成立しているときには、コンデンサ57の電荷が昇圧コンバータ55を介してバッテリ50に充電されるよう昇圧コンバータ55を制御して(ステップS320)、ステップS300に戻る。これにより、コンデンサ57の電荷を有効利用することができる。
【0025】
一方、ステップS300,S310で充電条件が成立していないときには、システムメインリレー56をオフとして(ステップS330)、本ルーチンを終了し、コンデンサ57の電荷を放電抵抗59によって放電させる。
【0026】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、イグニッションオフされたときにおいて、イグニッションオフ時のコンデンサ57の電荷の処理モードとしてバッテリ50の充電を優先するバッテリ優先モードが設定されているときには、バッテリ50を充電する充電条件が成立していることを条件としてシステムメインリレー56がオンの状態でコンデンサ57の電荷が昇圧コンバータ55を介してバッテリ50に充電されるよう昇圧コンバータ55とシステムメインリレー56とを制御する充電制御を実行すると共にその後に空調装置60を作動させる空調条件が成立していることを条件としてシステムメインリレー56がオフの状態でコンデンサ57の電荷を昇圧コンバータ55を介して用いて空調装置60のコンプレッサ61が駆動されるよう空調用インバータ62と昇圧コンバータ55とシステムメインリレー56とを制御する空調制御を実行し、処理モードとして空調装置60の作動を優先する空調優先モードが設定されているときには、空調条件が成立していることを条件として空調制御を実行すると共にその後に充電条件が成立していることを条件として充電制御を実行するから、処理モードに応じた態様でコンデンサ57の電荷を有効利用することができる。即ち、コンデンサ57の電荷をより適正な態様で処理することができる。
【0027】
実施例では、エンジン22からの動力とモータMG2からの動力とを用いて走行するハイブリッド自動車20について説明したが、エンジンを備えず、モータからの動力だけを用いて走行する単純な電気自動車に適用するものとしてもよい。
【0028】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータMG2が「電動機」に相当し、インバータ42が「電動機用インバータ」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、昇圧コンバータ55が「昇圧コンバータ」に相当し、システムメインリレー56が「リレー」に相当し、コンデンサ57が「コンデンサ」に相当し、空調装置60が「空調装置」に相当し、空調用インバータ62が「空調用インバータ」に相当し、指示スイッチ89が操作されていないときにはバッテリ50の充電を優先するバッテリ優先モードを処理モードとして設定し、指示スイッチ89が操作されたときには迅速に放電させる急速放電モードや、バッテリ50の充電を優先するバッテリ優先モード,空調装置60の作動(車室内の空気調和)を優先する空調優先モードのうち操作に応じたモードを処理モードとして設定するハイブリッド用電子制御ユニット70が「処理モード設定手段」に相当し、イグニッションオフされたときにおいて、イグニッションオフ時のコンデンサ57の電荷の処理モードとしてバッテリ50の充電を優先するバッテリ優先モードが設定されているときには、バッテリ50を充電する充電条件が成立していることを条件としてシステムメインリレー56がオンの状態でコンデンサ57の電荷が昇圧コンバータ55を介してバッテリ50に充電されるよう昇圧コンバータ55とシステムメインリレー56とを制御する充電制御を実行すると共にその後に空調装置60を作動させる空調条件が成立していることを条件としてシステムメインリレー56がオフの状態でコンデンサ57の電荷を昇圧コンバータ55を介して用いて空調装置60のコンプレッサ61が駆動されるよう空調用インバータ62と昇圧コンバータ55とシステムメインリレー56とを制御する空調制御を実行し、処理モードとして空調装置60の作動を優先する空調優先モードが設定されているときには、空調条件が成立していることを条件として空調制御を実行すると共にその後に充電条件が成立していることを条件として充電制御を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「制御手段」に相当する。
【0029】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0030】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、電気自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、32 駆動軸、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、50 バッテリ、51a 電圧センサ、51b 電流センサ、51c 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、54a 高電圧系電力ライン、54b 電池電圧系電力ライン、55 昇圧コンバータ、56 システムメインリレー、57,58 コンデンサ、57a,58a 電圧センサ、59 放電抵抗、60 空調装置、61 コンプレッサ、62 空調用インバータ、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、80 冷却水温Tw,イグニッションスイッチ、82 シフトポジションセンサ、84 アクセルペダルポジションセンサ、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 指示スイッチ、90 スピーカ、D31,D32 ダイオード、L リアクトル、MG1,MG2 モータ、T31,T32 トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の電動機と、前記電動機を駆動する電動機用インバータと、二次電池と、リレーを介して前記二次電池が接続された電池電圧系と前記電動機用インバータが接続された駆動電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上の範囲内で調節すると共に前記電池電圧系と前記駆動電圧系との間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータと、前記駆動電圧系に取り付けられたコンデンサと、車室内の空気調和を行なう空調装置と、前記電池電圧系に接続されて前記空調装置が備えるコンプレッサを駆動する空調用インバータと、を備える電気自動車において、
イグニッションオフ時の前記コンデンサの電荷の処理モードとして、前記二次電池の充電を優先する二次電池優先モードと、前記空調装置の作動を優先する空調優先モードと、を含む複数のモードのうち一つを設定する処理モード設定手段と、
イグニッションオフされたときにおいて、前記処理モード設定手段により前記二次電池優先モードが前記処理モードとして設定されているときには、前記二次電池を充電する充電条件が成立していることを条件として前記リレーがオンの状態で前記コンデンサの電荷が前記昇圧コンバータを介して前記二次電池に充電されるよう前記昇圧コンバータと前記リレーとを制御する充電制御を実行すると共に該充電制御の実行後に前記空調装置を作動させる空調条件が成立していることを条件として前記リレーがオフの状態で前記コンデンサの電荷を前記昇圧コンバータを介して用いて前記コンプレッサが駆動されるよう前記空調用インバータと前記昇圧コンバータと前記リレーとを制御する空調制御を実行し、前記処理モード設定手段により前記空調優先モードが前記処理モードとして設定されているときには、前記空調条件が成立していることを条件として前記空調制御を実行すると共に該空調制御の実行後に前記充電条件が成立していることを条件として前記充電制御を実行する制御手段と、
を備える電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−152038(P2012−152038A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9236(P2011−9236)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】