説明

電源装置

【課題】 電源装置に内蔵されているインバータ回路の導通時間が最少近傍のとき、出力電流の制御が不安定になる。
【解決手段】 商用交流電源を整流・平滑して直流電圧を出力する直流変換回路と、直流電圧を高周波交流電圧に変換するインバータ回路と、高周波交流電圧を負荷に適した電圧に変換する変圧器と、インバータ回路を制御する出力制御信号を出力する出力制御回路と、出力制御信号に応じてインバータ回路を駆動するスイッチング素子駆動回路と、を備えた電源装置において、スイッチング素子駆動回路は、出力制御信号のオンデューチイが予め定めた基準値未満のとき予め定めた第1の駆動電圧を供給し、出力制御信号のオンデューチイが前記基準値を超えたときから第1の駆動電圧を高くし予め定めた第2の駆動電圧として供給し、インバータ回路を駆動すること、を特徴とする電源装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に内蔵されているインバータ回路のスイッチング素子を駆動するスイッチング素子駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源装置に内蔵されているインバータ回路のスイッチング素子は、オンデューテイが非常に小さくなるとスイッチング素子のターン・オフの遅れにより小電流領域での安定制御が困難になる。
【0003】
図8は、従来技術の溶接電源の電気接続図である。同図において、直流変換回路は、整流回路DR1及び出力側に並列に設けた平滑コンデンサーC1から形成される。
【0004】
インバータ回路INVは、図示省略の相対向する第1のスイッチング素子TR1乃至第4のスイッチング素子TR4からフルブリッジを形成し、直流電圧を高周波交流電圧に変換して出力する。
【0005】
変圧器INTは、インバータ回路INVによって変換された高周波交流電圧をアーク加工に適した高周波交流電圧に変換し、2次整流回路DR2は、主変圧器INTの出力を整流し直流リアクトルDCLを介して消耗電極1と被加工物Mとの間に電力を供給しアークを発生させる。
【0006】
出力電流検出回路IDは、主変圧器INTの2次側の出力電流を検出して出力電流検出信号Idとして出力する。出力制御回路SCは、パルス周波数が一定でパルス幅を変調するPWM制御を行ない、出力電流検出信号Idに応じて互いに半周期ずれた第1の出力制御信号Sc1及び第2の出力制御信号Sc2のパルス幅を制御する。
【0007】
図9は、パルストランスを用いた従来技術の第1のスイッチング素子駆動回路SD1の詳細図であり、第1のスイッチング素子駆動回路SD1は、第1の出力制御信号Sc1に応じて導通する1次駆動スイッチング素子TR9と、この1次駆動スイッチング素子TR9の導通に応じて所定の電圧がパルストランスT1の1次巻線に印加し、この印加電圧に応じて誘導起電圧を発生しパルストランスT2の2次巻線に出力する。続いて、誘導起電圧に応じて2次駆動スイッチング素子TR10が遮断し、インバータ回路を形成する第1のスイッチング素子TR1に順バイアスがかかり導通する。図示省略の第2スイッチング素子駆動回路SD2〜第4のスイッチング素子駆動回路SD4は、第1のスイッチング素子駆動回路SD1と同一構成を有するので動作説明は省略する。
【0008】
次に、図8を用いて従来技術の動作について説明する。
図8に示す主制御回路SCは、出力電流検出信号Idに応じて互いに半周期ずれた第1の出力制御信号Sc1及び第2の出力制御信号Sc2のパルス幅を制御する。同図に示す主制御回路SCから第1の出力制御信号Sc1が第1のスイッチング素子駆動回路SD1及び第4のスイッチング素子駆動回路SD4に入力されると、第1のスイッチング駆動信号Sd1及び第4のスイッチング駆動信号Sd4を出力し、相対向する辺を形成する第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4を導通する。
【0009】
続いて、主制御回路SCから第2の出力制御信号Sc2が第2のスイッチング素子駆動回路SD2及び第3のスイッチング素子駆動回路SD3に入力されると、第2のスイッチング駆動信号Sd2及び第3のスイッチング駆動信号Sd3を出力して相対向する辺を形成する第2のスイッチング素子TR2及び第3スイッチング素子TR3を導通する。
(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭59−104830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図9に示す従来のスイッチング素子駆動回路は、パルストランスT2の負極側に逆バイアス電源を設けて、スイッチング素子のゲート・エミッタ間に充分な正の電圧(飽和電圧)を印加し、スイッチング素子を飽和領域で安定動作させていた。このとき、スイッチング素子のゲートに蓄えた電荷のゲートチャージ容量が大きいために放電に時間がかかりターン・オフが若干遅くなるが、インバータ回路を制御する出力制御信号のオンデューチイが比較的大きいため、このターン・オフの遅れによる影響は無視できる。
【0012】
しかし、図8に示す溶接電源において、アーク発生中に消耗電極1と被加工物Mとが短絡したとき、この短絡時にアーク電圧が、(例えば1V近傍)アーク電流が、(例えば40A近傍)のときが多々発生する。このときインバータ回路を制御する出力制御信号のオンデューチイが最少近傍まで小さくなる。このオンデューチイが最少近傍になると、スイッチング素子のターン・オフの遅れの影響が無視できず、インバータ回路を制御する出力制御信号が間欠動作に陥り、短絡時に多々発生するアーク電圧が低く、アーク電流が小さいときに安定制御ができなくなるという問題が生じてしまう。
【0013】
そこで、本発明では、インバータ回路を制御する出力制御信号のオンデューチイが最少近傍のときでも、安定制御ができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、商用交流電源を整流・平滑して直流電圧を出力する直流変換回路と、前記直流電圧を高周波交流電圧に変換するスイッチング素子から成るインバータ回路と、前記高周波交流電圧を負荷に適した電圧に変換する変圧器と、前記インバータ回路を制御する出力制御信号を出力する出力制御回路と、前記出力制御信号に応じて前記インバータ回路を駆動するスイッチング素子駆動回路と、を備えた電源装置において、前記スイッチング素子駆動回路は、前記出力制御信号のオンデューチイが予め定めた基準値未満のとき予め定めた第1の駆動電圧を供給し、前記出力制御信号のオンデューチイが前記基準値を超えたときから前記第1の駆動電圧を高くし予め定めた第2の駆動電圧として供給し、前記インバータ回路を駆動すること、を特徴とする電源装置である。
【0015】
第2の発明は、前記第1の駆動電圧は、前記インバータ回路を形成するスイッチング素子のしきい値電圧を超えた活性領域で通電する活性電圧であり、前記第2の駆動電圧は、前記スイッチング素子が飽和領域で導通する飽和電圧の値であること、を特徴とする請求項1記載の電源装置である。
【0016】
第3の発明は、前記第2の駆動電圧は、前記出力制御信号のオンデューチイが前記基準値を超えたときから前記第1の駆動電圧を所定の電圧上昇率で高くし、所定の駆動電圧に達すると前記電圧の上昇を停止しすること、を特徴とする請求項1記載の電源装置である。
【0017】
第4の発明は、前記第2の駆動電圧は、前記出力制御信号のオンデューチイが前記基準値以上のとき、前記出力制御信号のオンデューチイの値に基づいて高くなること、を特徴とする請求項1記載の電源装置である。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明及び第2の発明は、インバータ回路を形成するスイッチング素子を駆動するスイッチング素子駆動回路において、スイッチング素子に印加するゲート・エミッタ間の駆動電圧を2段階にし、例えば、第1の駆動電圧をスイッチング素子が導通を開始するしきい値電圧を超えた活性領域で通電する活性電圧とし、第2の駆動電圧をスイッチング素子が飽和領域で導通する飽和電圧とし、インバータ回路を制御する出力制御信号のオンデューチイが予め定めた基準値以上のとき、第2の駆動電圧をスイッチング素子のゲート・エミッタ間に印加し、飽和状態で導通することで、出力電流が最大定格のときでも安定制御が可能になる。さらに、インバータ回路を制御する出力制御信号のオンデューチイが最少近傍まで小さくなったとき、第1の駆動電圧のスイッチング素子のゲート・エミッタ間に印加し、活性状態で導通することで、スイッチング素子のスイッチングが速くなり、この速度アップにより出力制御信号の間欠動作が防止でき、オンデューチイが最少近傍でも安定制御が可能になる。
【0019】
第3の発明は、第1の駆動電圧から第2の駆動電圧に高くするときに、所定の電圧上昇率(dv/dt)をもたせて緩やかに上昇させることで、第1の駆動電圧から第2の駆動電圧に切換わるときに発生する出力電流のハンチングを抑制できる。
【0020】
第4の発明は、インバータ回路を制御する出力制御信号のオンデューチイが基準値以上になったとき、出力制御信号のオンデューチイの値に基づいて第2の駆動電圧を高くすることで、スイッチング素子のゲートに充電される電荷量が出力電流に応じて制御され、精度の良い出力制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電源装置の電気接続図である。
【図2】図1に示すスイッチング素子駆動回路の詳細図である。
【図3】実施の形態1のオンデューチイが大きいときの動作を説明する波形タイミン グ図である。
【図4】実施の形態1のオンデューチイが小さいときの動作を説明する波形タイミン グ図である。
【図5】スイッチング素子(IGBT)のVce−Ic特性図である。
【図6】実施の形態2に係るスイッチング素子駆動回路の詳細図である。
【図7】実施の形態2に係るスイッチング素子駆動回路の詳細図である。
【図8】従来技術の電源装置の電気接続図である。
【図9】従来技術のスイッチング素子駆動回路の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施の形態1に係る電源装置の電気接続図である。
同図において、図8に示す従来技術の電源装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行なうので説明は省略し符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0023】
図示省略のインバータ制御回路は、図1に示す第1のスイッチング素子駆動回路DK1〜第4のスイッチング素子駆動回路DK4によって形成され、図2は第1のスイッチング素子駆動回路DK1及び第2のスイッチング素子駆動回路DK2の詳細図である。
図2に示す、第1のスイッチング素子駆動回路DK1は、第1の出力制御信号Sc1に応じて導通/遮断する1次駆動スイッチング素子TR5と、この1次駆動スイッチング素子TR5の導通に応じて所定の電圧がパルストランスT1の1次巻線に印加し、この印加電圧に応じてパルストランスT1の第1の2次巻線に第1の誘導起電圧を発生すると共に第2の2次巻線に第2の誘導起電圧を発生するパルストランスT1と、第1の誘導起電圧の発生に応じて予め定めた第1の駆動電圧を通電する第1の2次駆動スイッチング素子TR6と、第2の誘導起電圧のオンデューチイを判別し、オンデューチイが所定値未満のとき、第2の誘導起電圧の供給を停止し、オンデューチイが所定値以上になったとき第2の誘導起電圧を供給するオンデューチイ判別回路GD1と、第2の誘導起電圧の供給に応じて第1の駆動電圧より高い第2の駆動電圧を通電する第2の2次駆動スイッチング素子TR7と、第1の2次駆動スイッチング素子TR6と第2の2次駆動スイッチング素子TR7との出力側をダイオードを介してオア接続し、オア演算された駆動電圧に応じてロウ・サイド動作を行なう第3の2次駆動スイッチング素子TR8とで形成される。
また、図1及び図2に示す第2のスイッチング素子駆動回路DK2、第3のスイッチング素子駆動回路DK3及び第4のスイッチング素子駆動回路DK4は、第1のスイッチング素子駆動回路DK1と同一構成であるので説明は省略する。
【0024】
図3、本発明の実施の形態1において、オンデューチイが予め定めた基準値より大きいときの動作を説明する波形タイミング図である。
図3おいて、同図(a)の波形は第1の出力制御信号Sc1を示し、同図(b)の波形は第2の出力制御信号Sc2を示し、同図(c)の波形は第1のスイッチング駆動信号Dk1を示し、同図(d)の波形は第2のスイッチング駆動信号Dk2を示し、同図(e)の波形は第1のスイッチング素子駆動回路DK1を形成する第1の2次駆動スイッチング素子TR6のゲート信号Tr6を示し、同図(f)の波形は第1のスイッチング素子駆動回路DK1を形成する第2の2次駆動スイッチング素子TR7のゲート信号Tr7を示し、同図(j)の波形は第2のスイッチング素子駆動回路DK2を形成する第1の2次駆動スイッチング素子TR10のゲート信号Tr10を示し、同図(h)の波形は第2のスイッチング素子駆動回路DK2を形成する第2の2次駆動スイッチング素子TR11のゲート信号Tr11を示す。
【0025】
つぎに、図3の波形タイミング図及び図5のスイッチング素子のVce−Ic特性図を用いて本発明の動作について説明する。
図1に示す、起動スイッチTSから起動信号Tsが出力されると出力制御回路SCは、予め定めた電流基準値Irと出力電流検出信号Idとを比較演算した値(例えば、Ir−Id)に基づいて定まる図3(a)に示す第1の出力制御信号Sc1及び同図(b)に示す第2の出力制御信号Sc2を出力する。
【0026】
図3に示す時刻t=t1において、図3(a)に示す第1の出力制御信号Sc1がHighレベルになり、図2に示す第1のスイッチング素子駆動回路DK1の1次駆動スイッチング素子TR5が導通すると、1次駆動スイッチング素子TR5は、パルストランスT1の1次巻線N1に所定の1次電圧を印加し、パルストランスT1は1次巻線N1に1次電圧が印加されると第1の2次巻線N2に第1の誘導起電圧を発生すると共に第2の2次巻線N3に第2の誘導起電圧を発生する。
【0027】
時刻t=t1において、第1の誘導起電圧に応じて図3(e)に示すゲート信号Tr6が第1の2次駆動スイッチング素子TR6に入力され導通する。第1の2次駆動スイッチング素子TR6が導通すると、第1の駆動電圧(例えば、9V)を通電して第3の2次駆動スイッチング素子TR8を遮断する。そして、第1のスイッチング素子TR1は、図3(c)に示す第1のスイッチング駆動信号Dk1が入力されて駆動する。このとき、第1のスイッチング素子TR1のゲートには、例えば、負電圧(−8V)から正電圧(+9V)の変化した第1の駆動電圧が印加され活性状態で導通する。
このとき、第1の駆動電圧(9V)は、図5に示すスイッチング素子のVce−Ic特性図より、インバータ回路を形成する第1のスイッチング素子が導通を開始するしきい値電圧を超えた活性領域のゲート電圧であり、図示省略のアーク発生中に発生する短絡状態で、アーク電圧が(例えば1V近傍) アーク電流が(例えば40A近傍)に対してアーク電流を充分供給できる値(100A)を選択している。
【0028】
時刻t=t1において、第2の誘導起電圧がオンデューチイ判別回路GD1に入力されると、オンデューチイ判別回路GD1は、第2の誘導起電圧の時間と予め定めた時間T1とを比較し(例えば、1μs)を超えたときに、オンデューチイが予め定めた基準値より大きいと判別し、時刻t=t2において、第2の2次駆動スイッチング素子TR7の導通させる図3(f)に示すゲート信号Tr7を生成して出力する。
【0029】
時刻t=t2において、図3(f)に示すゲート信号Tr7が第2の2次駆動スイッチング素子TR7に入力されて導通すると、第2の駆動電圧(例えば、16V)を通電しダイオードD2及びダイオードD3を介して第1の駆動電圧と第2の駆動電圧とのオア論理を行なって、同図(c)に示す第1のスイッチング駆動信号Dk1の電圧を(9V)から(16V))に高くする。このとき、第2の駆動電圧(16V)は、図5に示すようにインバータ回路を形成する第1のスイッチング素子TR1が飽和状態で導通する飽和電圧であり、負荷に供給する出力電流が最大定格まで供給できる値である。
【0030】
時刻t=t3において、図3(a)に示す第1の出力制御信号Sc1がLowレベルになると1次駆動スイッチング素子TR5が遮断され、パルストランスT1の1次巻線N1に1次電圧の印加が停止する。
【0031】
時刻t=t3において、図2に示すパルストランスT1の1次巻線N1に1次電圧の印加が停止すると、第1の2次巻線N2の第1の誘導起電圧と第2の2次巻線N3の第2の誘導起電圧の発生が停止する。このとき、第3の2次駆動スイッチング素子TR8に第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧の供給が停止され第3の2次駆動スイッチング素子TR8は導通する。第3の2次駆動スイッチング素子TR8は導通すると逆バイアス電源から負電圧(例えば −8V)が供給され第1のスイッチング駆動信号Dk1の電圧が、図3(c)に示すように正電圧から負電圧(例えば+16Vから−8V)に変化し、図1に示す第1のスイッチング素子TR1を遮断する。
【0032】
図3に示す時刻t=t4において、図3(b)に示す第2の出力制御信号Sc2がHighレベルになり、図2に示す第2のスイッチング素子駆動回路DK2の1次駆動スイッチング素子TR9が導通すると、1次駆動スイッチング素子TR9は、パルストランスT1の1次巻線N1に所定の1次電圧を印加し、パルストランスT1は1次巻線N1に1次電圧が印加さえると第1の2次巻線N2に第1の誘導起電圧を発生すると共に第2の2次巻線N3に第2の誘導起電圧を発生する。
【0033】
時刻t=t4において、第1の誘導起電圧に応じて図3(j)に示すゲート信号Tr10が第1の2次駆動スイッチング素子TR10に入力され導通する。第1の2次駆動スイッチング素子TR10が導通すると、第1の駆動電圧(例えば、9V)を通電して第3の2次駆動スイッチング素子TR12を遮断する。そして、第2のスイッチング素子TR2は、同図(d)に第2のスイッチング駆動信号Dk2が入力されて駆動する。このとき、第2のスイッチング素子TR2のゲートには、例えば、負電圧(−8V)から正電圧(+9V)の変化した第1の駆動電圧が印加され導通する。
【0034】
時刻t=t4において、第2の誘導起電圧がオンデューチイ判別回路GD2に入力されると、オンデューチイ判別回路GD2は、第2の誘導起電圧の時間が予め定めた時間T1が経過したときに、第2の2次駆動スイッチング素子TR10の導通させる図3(h)に示すゲート信号Tr10を生成して出力する。
【0035】
時刻t=t5において、図4(h)に示すゲート信号Tr11が第2の2次駆動スイッチング素子TR11に入力されて導通すると、第2の駆動電圧(例えば、16V)を通電してダイオードD2及びダイオードD3を介して第1の駆動電圧と第2の駆動電圧とのオア論理を行なって、同図(d)に示す第2のスイッチング駆動信号Dk2の電圧を(9V)から(16V)に高くする。このとき、第2の駆動電圧(16V)は、図5に示すようにインバータ回路を形成する第2のスイッチング素子TR2が飽和状態で導通する飽和電圧であり、負荷に供給する出力電流が最大定格まで供給できる値である。
【0036】
時刻t=t6において、図3(b)に示す第2の出力制御信号Sc2がLowレベルになると1次駆動スイッチング素子TR9が遮断され、パルストランスT2の1次巻線N1に1次電圧の印加が停止する。
【0037】
時刻t=t6において、図2に示すパルストランスT2の1次巻線N1に1次電圧の印加が停止すると、第1の2次巻線N2の第1の誘導起電圧と第2の2次巻線N3の第2の誘導起電圧の発生を停止する。このとき、第3の2次駆動スイッチング素子TR12に第1の駆動電圧及び第2の駆動電圧の供給が停止されて第3の2次駆動スイッチング素子TR12は導通する。第3の2次駆動スイッチング素子TR12は導通すると逆バイアス電源から負電圧(例えば −8V)が供給され第2のスイッチング駆動信号Dk2の電圧が、図3(d)に示すように正電圧から負電圧(例えば+16Vから−8V)に変化して図1に示す第2のスイッチング素子TR2を遮断する。そして、以後は上記と同一動作を行なう。
【0038】
上述において、インバータ回路を制御する出力制御信号のオンデューチイが予め定めた基準値以上のとき、第2の駆動電圧の(16V)をスイッチング素子のゲート・エミッタ間に印加し、飽和状態でスイッチング素子を導通することで出力電流が最大定格のときでも安定制御が可能になる。
【0039】
図4は、本発明の実施の形態1において、オンデューチイが予め定めた基準値未満のときの動作を説明する波形タイミング図である。
図4において、図4(a)の波形は第1の出力制御信号Sc1を示し、同図(b)の波形は2の出力制御信号Sc2を示し、同図(c)の波形は第1のスイッチング駆動信号Dk1を示し、同図(d)の波形は第2のスイッチング駆動信号Dk2を示し、同図(e)の波形は第1のスイッチング素子駆動回路DK1を形成する第1の2次駆動スイッチング素子TR6のゲート信号Tr6を示し、同図(f)の波形は第1のスイッチング素子駆動回路DK1を形成する第2の2次駆動スイッチング素子TR7のゲート信号Tr7を示し、同図(j)の波形は第2のスイッチング素子駆動回路DK2を形成する第1の2次駆動スイッチング素子TR10のゲート信号Tr10を示し、同図(h)の波形は第2のスイッチング素子駆動回路DK2を形成する第2の2次駆動スイッチング素子TR11のゲート信号Tr11を示す。
【0040】
図4に示す時刻t=t1において、図4(a)に示す第1の出力制御信号Sc1がHighレベルになり、図2に示す第1のスイッチング素子駆動回路DK1の1次駆動スイッチング素子TR5が導通すると、1次駆動スイッチング素子TR5は、パルストランスT1の1次巻線N1に所定の1次電圧を印加し、パルストランスT1は1次巻線N1に1次電圧が印加さえると第1の2次巻線N2に第1の誘導起電圧を発生すると共に第2の2次巻線N3に第2の誘導起電圧を発生する。
【0041】
時刻t=t1において、第1の誘導起電圧に応じて図4(e)に示すゲート信号Tr6が第1の2次駆動スイッチング素子TR6に入力され導通する。第1の2次駆動スイッチング素子TR6が導通すると、第1の駆動電圧(例えば、9V)を通電して第3の2次駆動スイッチング素子TR8を遮断する。そして、第1のスイッチング素子TR1は、図4(c)に示す第1のスイッチング駆動信号Dk1が入力されて駆動する。このとき、第1のスイッチング素子TR1のゲートには、例えば、負電圧(−8V)から正電圧(+9V)の変化した第1の駆動電圧が印加され活性状態で導通する。
【0042】
時刻t=t1において、第2の誘導起電圧がオンデューチイ判別回路GD1に入力されると、オンデューチイ判別回路GD1は、第2の誘導起電圧の時間が予め定めた時間T1(例えば1μs)以上か否かの判別を開始する。 時刻t=t1において、第2の誘導起電圧がオンデューチイ判別回路GD1に入力されると、オンデューチイ判別回路GD1は、第2の誘導起電圧の時間が予め定めた時間T1(例えば、1μs)より短いときに、オンデューチイが予め定めた基準値未満と判別し、時刻t=t2において、第2の2次駆動スイッチング素子TR7の遮断状態を継続する。このとき、第1のスイッチング素子TR1は活性状態で導通する。
【0043】
時刻t=t2において、図4(a)に示す第1の出力制御信号Sc1がLowレベルになると1次駆動スイッチング素子TR5が遮断され、パルストランスT1の1次巻線N1に1次電圧の印加が停止すると、第1の2次巻線N2の第1の誘導起電圧及び第2の2次巻線N3の第2の誘導起電圧の発生を停止する。このとき、図2に示すオンデューチイ判別回路GD1は、第2の誘導起電圧の時間が予め定めた時間T1より短いために、図5(a)に示す第1の出力制御信号Sc1のオンデューチイが予め定めた基準値未満と判別し、図4(f)に示すゲート信号Tr7が第2の2次駆動スイッチング素子TR7に入力されず、第2の駆動電圧(例えば、16V)の通電を禁止し、ダイオードD2を介して第1の駆動電圧(9V)が供給され同図(c)に第1のスイッチング駆動信号Dk1が第1のスイッチング素子TR1に入力され、時刻t=t2まで活性状態で導通を継続する。
【0044】
時刻t=t1〜t2の時間は、第1のスイッチング駆動信号Dk1の出力電圧(9V)が、図1に示す第1のスイッチング素子TR1を入力され活性状態で導通する。このとき、時刻t=t2において、第1のスイッチング素子TR1がターン・オフするときに、ゲートの電荷量が抑制されているため電荷の放電がはやくなりターン・オフも速くなる。
よって、アーク発生中に消耗電極1と被加工物Mとが短絡しアーク電圧が、(例えば1V近傍)アーク電流が、(例えば40A近傍)になり、インバータ回路を制御する出力制御信号のオンデューチイが最少近傍になっても間欠動作が防止でき安定制御が可能になる。更に、インバータを形成するスイッチング素子を活性状態で動作をすると損失が増加するが、インバータ回路を制御する出力制御信号のオンデューチイを最少近傍でスイッチング素子を活性状態で動作させるので、損失増加の影響は略零になる。
【0045】
図6は、実施の形態2に係るスイッチング素子駆動回路の詳細図である。同図において、図1、図2及び図8に示す溶接電源装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行なうので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0046】
図6に示す第2のオンデューチイ判別回路GD2は、第2の誘導起電圧の時間が予め定めた時間T1より長いとき、出力制御信号のオンデューチイが予め定めた基準値以上と判別し、時間T1が経過したときに第2の2次駆動スイッチング素子TR7を導通させると共にオンデューチイ判別信号Gd2をHighレベルにして出力する。
【0047】
図6に示す昇降圧回路DVは、第2のオンデューチイ判別回路GD2からのオンデューチイ判別信号Gd2がLowレベルのとき、直流電圧(16V)を(9V)に降圧して出力し、オンデューチイ判別信号Gd2がLowレベルからHighレベルになるとと、出力電圧(9V)を所定の電圧上昇率(dv/dt)により緩やかに上昇させ(16V)まで高くする。
【0048】
次に、動作について説明する。
図6に示す第1の出力制御信号Sc1がHighレベルになると、第1のスイッチング素子駆動回路DK1の1次駆動スイッチング素子TR5が導通し、1次駆動スイッチング素子TR5は、パルストランスT1の1次巻線N1に所定の1次電圧を印加し、パルストランスT1は1次巻線N1に1次電圧が印加されると第1の2次巻線N2に第1の誘導起電圧を発生すると共に第2の2次巻線N3に第2の誘導起電圧を発生する。
【0049】
第1の誘導起電圧に応じて第1の2次駆動スイッチング素子TR6が導通し、第1の駆動電圧(9V)を通電して第3の2次駆動スイッチング素子TR8を遮断し、第1のスイッチング駆動信号Dk1の駆動電圧を(9V)をスイッチング素子に印加させ活性状態で導通させる。
【0050】
第2のオンデューチイ判別回路GD2は、第2の誘導起電圧の時間が予め定めた時間T1より短いとき、第1の出力制御信号のオンデューチイが基準値未満と判別し、第2の2次駆動スイッチング素子TR7を遮断させる共にオンデューチイ判別信号Gd2の出力も停止する。このとき、昇降圧回路DVは(9V)の直流電圧を第2の2次駆動スイッチング素子TR7のコレクタ側に供給する。
【0051】
つぎに、第2のオンデューチイ判別回路GD2は、第2の誘導起電圧の時間が予め定めた時間T1より長いとき、出力制御信号のオンデューチイが基準値以上と判別し、第2の2次駆動スイッチング素子TR7を導通させると共にオンデューチイ判別信号Gd2をHighレベルにして出力する。
【0052】
図6に示す昇降圧回路DVは、オンデューチイ判別信号Gd2がHighレベルになると、駆動電圧を所定の電圧上昇率で緩やかに(9V)から(16V)に上昇させ、第1のスイッチング駆動信号Dk1の駆動電圧が(16V)に達すると、上昇を停止してスイッチング素子に印加して導通させる。このとき、スイッチング素子の導通は活性状態から飽和状態に移行する。
【0053】
上述より、第1の駆動電圧から第2の駆動電圧に高くするときに、所定の電圧上昇率(dv/dt)をもたせて緩やかに上昇させることで、第1の駆動電圧(9V)から第2の駆動電圧(16V)に切換わるときに発生する出力電流のハンチングが抑制できる。
【0054】
図7、実施の形態3に係るスイッチング素子駆動回路の詳細図である。同図において、図1、図2、図6及び図8に示す溶接電源装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行なうので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0055】
図7に示すオンデューチイ対応直流電源回路FVは、第2のオンデューチイ判別回路GD2からのオンデューチイ判別信号Gd2がLowレベルのとき、直流電圧を、例えば(9V)にして出力し、オンデューチイ判別信号Gd2がHighレベルになると第1の出力制御信号Sc1のオンデューチイの値に基づいて直流電圧を高くする。
【0056】
次に、動作について説明する。
図7に示す第1の出力制御信号Sc1がHighレベルになると、第1のスイッチング素子駆動回路DK1の1次駆動スイッチング素子TR5が導通し、1次駆動スイッチング素子TR5は、パルストランスT1の1次巻線N1に所定の1次電圧を印加し、パルストランスT1は1次巻線N1に1次電圧が印加されると第1の2次巻線N2に第1の誘導起電圧を発生すると共に第2の2次巻線N3に第2の誘導起電圧を発生する。
【0057】
第1の誘導起電圧に応じて第1の2次駆動スイッチング素子TR6が導通し、第1の駆動電圧(9V)を通電して第3の2次駆動スイッチング素子TR8を遮断し、第1のスイッチング駆動信号Dk1の駆動電圧を(9V)をスイッチング素子に印加し活性状態で導通させる。
【0058】
第2のオンデューチイ判別回路GD2は、第2の誘導起電圧の時間が予め定めた時間T1より短いとき、第1の出力制御信号のオンデューチイが基準値未満と判別し、第2の2次駆動スイッチング素子TR7を遮断させる共にオンデューチイ判別信号Gd2の出力も停止する。このとき、オンデューチイ対応直流電源回路FVは、オンデューチイ判別信号Gd2がLowレベルのとき、直流電圧を(9V)にして第2の2次駆動スイッチング素子TR7のコレクタ側に出力する。
【0059】
つぎに、第2のオンデューチイ判別回路GD2は、第2の誘導起電圧の時間が予め定めた時間T1より長いとき、出力制御信号のオンデューチイが基準値以上と判別し、第2の2次駆動スイッチング素子TR7を導通させると共にオンデューチイ判別信号Gd2をHighレベルにする。
【0060】
図7に示すオンデューチイ対応直流電源回路FVは、オンデューチイ判別信号Gd2がHighレベルになると、第1の出力制御信号Sc1のオンデューチイの値に基づいて、例えば 直流電圧を(9V)から(16V)に高くして出力する。
【0061】
上述より、インバータ回路を出力制御信号のオンデューチイが基準値以上になったとき、出力制御信号のオンデューチイの値に基づいて第2の駆動電圧を最適な値に設定することができる。
【符号の説明】
【0062】
AC 商用交流電源
C1 平滑コンデンサー
DCL 直流リアクトル
DV 降圧回路
DR1 1次整流回路
DR2 2次整流回路
DK1 第1のスイッチング素子駆動回路(本発明回路)
DK2 第2のスイッチング素子駆動回路(本発明回路)
DK3 第3のスイッチング素子駆動回路(本発明回路)
DK4 第4のスイッチング素子駆動回路(本発明回路)
Dk1 第1のスイッチング素子駆動信号(本発明回路)
Dk2 第2のスイッチング素子駆動信号(本発明回路)
Dk3 第3のスイッチング素子駆動信号(本発明回路)
Dk4 第4のスイッチング素子駆動信号(本発明回路)
FV オンデューチイ対応直流電源回路
GD オンデューチイ判別回路
GD2 第2のオンデューチイ判別回路
ID 入力電流検出回路
Id 入力電流検出信号
IR 出力電流設定回路
Ir 出力電流設定信号
INT 変圧器
M 被加工物
SC 主制御回路
Sc1 第1の出力制御信号
Sc2 第2の出力制御信号
SD1 第1のスイッチング素子駆動回路(従来回路)
SD2 第2のスイッチング素子駆動回路(従来回路)
SD3 第3のスイッチング素子駆動回路(従来回路)
SD4 第4のスイッチング素子駆動回路(従来回路)
Sd1 第1のスイッチング素子駆動信号(従来回路)
Sd2 第2のスイッチング素子駆動信号(従来回路)
Sd3 第3のスイッチング素子駆動信号(従来回路)
Sd4 第4のスイッチング素子駆動信号(従来回路)
TH トーチ
TS 起動スイッチ
Ts 起動信号
TR1 第1のスイッチング素子
TR2 第2のスイッチング素子
TR3 第3のスイッチング素子
TR4 第4のスイッチング素子



【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源を整流・平滑して直流電圧を出力する直流変換回路と、前記直流電圧を高周波交流電圧に変換するスイッチング素子から成るインバータ回路と、前記高周波交流電圧を負荷に適した電圧に変換する変圧器と、前記インバータ回路を制御する出力制御信号を出力する出力制御回路と、前記出力制御信号に応じて前記インバータ回路を駆動するスイッチング素子駆動回路と、を備えた電源装置において、前記スイッチング素子駆動回路は、前記出力制御信号のオンデューチイが予め定めた基準値未満のとき予め定めた第1の駆動電圧を供給し、前記出力制御信号のオンデューチイが前記基準値を超えたときから前記第1の駆動電圧を高くし予め定めた第2の駆動電圧として供給し、前記インバータ回路を駆動すること、を特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記第1の駆動電圧は、前記インバータ回路を形成するスイッチング素子のしきい値電圧を超えた活性領域で通電する活性電圧であり、前記第2の駆動電圧は、前記スイッチング素子が飽和領域で導通する飽和電圧の値であること、を特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記第2の駆動電圧は、前記出力制御信号のオンデューチイが前記基準値を超えたときから前記第1の駆動電圧を所定の電圧上昇率で高くし、所定の駆動電圧に達すると前記電圧の上昇を停止すること、を特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項4】
前記第2の駆動電圧は、前記出力制御信号のオンデューチイが前記基準値以上のとき、前記出力制御信号のオンデューチイの値に基づいて高くなること、を特徴とする請求項1記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−284709(P2010−284709A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141905(P2009−141905)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】